2014年12月23日

半沢直樹シリーズ最新作

銀翼のイカロス
池井戸 潤
ダイヤモンド社
2014-08-01


期待していたTVドラマ「半沢直樹」は続編がないまま今年も終了。原作通りであれば、次回作は証券子会社へ出向した半沢が関わるM&A劇だ。そっちはとうの昔に読んでしまったので、今年8月に出たシリーズ最新作を読んでみる。

出向から本店の営業第二部次長として戻ってきた半沢が今回任されたのは、帝国航空の再建。 国営の航空会社だった帝国航空は民営化されてからも、その親方日の丸体質が変わらず、業績はパッとしない。折しも、世界的金融危機のあおりで旅客数が落ち込み、赤字が続いている。何度も会社再建計画が創られたが、複数ある労働組合との交渉が進捗しない。多額の年金をもらうOBも支給額の削減に反対している。

勿論、これは破たん前の日本航空(JAL)そのもの。小説の中で、半沢は、自主再建できるのに、政権交代に絡む政治パフォーマンスに利用され、銀行が債権カットを強要されることに反対する。実際のJALでも、政権交代した途端それまでの再建策が反故にされ、前原国土交通省(当時)の「私的顧問団」である「JAL再生タスクフォース」が結成され、JALに送り込まれた。そこに根拠法はなく、勝手に送り込まれた100人に上る専門家集団の費用はJALにつけ回され、その額は数カ月で10億円を超えた。一人当たり平均1000万円である。当時の報道でも、「JAL再生タスクフォースは何様なのか?」と疑問が示されている。

小説では半沢が債権カット拒否を貫き通したところで終わる。実際のJALの方は、その後会社更生法が適用され、結局、銀行団は5000億円の債権放棄を実施した。同時に、国の産業再生支援機構が3500億円を出資し、債務超過を免れた。前原大臣に乞われた京セラ創業者の稲盛和夫氏が高齢をおしてJAL会長に就任し、あっという間に再建したのは記憶に新しい。

結局、大切だったのは、再建案そのものではなく、経営者のリーダーシップと従業員の痛みを受け入れる覚悟だったのである。

18:「肝心なのは帝国航空にとって事業計画など単なるペーパー程度の重みしかないということなんです。あるいは、金融機関から支援を引き出すためのツールといっていいかも知れません。計画して約束したことをきちんと果たそうという意識も希薄で、要するに危機感がないんですよ」(中略)最後には銀行がなんとかしてくれると思い込んでいる経営者ほどタチの悪いものはない。

61:「有識者会議と煮詰めた修正再建案を白紙撤回だなんていっていますが、減便や撤退路線は、ほとんどそのままなんですよ。なにも目新しいものなんかありゃしません。国交大臣の自己満足のために、あんな横柄な連中を、しかもコストはこっち持ちで送り込んでくるんだから、迷惑以外の何物でもないですよ」

76:経営者、七つの従業員組合に分かれた従業員たち――。それぞれが独自の思惑と利害で動き、権利を主張して譲ろうとしない。表向きは会社としての枠組みを持ちながら、てんでんばらばらの方向をそれぞれが向いている。

333:「自宅から空港までのハイヤーでの送り迎えは当たり前。帝国航空勤務だといえば世間からうらやましがられ、給料も高けりゃプライドも高い。待遇や権利にばかりこだわって、決められた仕事の範囲を決してはみ出さない。そんなことをしているうちに、社会の流れから取り残され、どんどんダメになっていったんですよ。(中略)挙げ句、政治の道具にされ、経営判断の甘さが次々に露呈しても、誰も危機感さえ抱かない」 


shikoku88 at 12:15コメント(0) |  | 仕事 

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