2014年09月27日

揚子江流域とその奥地

中国奥地紀行1 (平凡社ライブラリー)
イザベラ バード
平凡社
2013-12-12

19世紀末のイギリス人女性旅行家(王立地理学協会特別会員)Mrs. J. F. Bishop (Isabella L. Bird)による上海から、揚子江を主に船で四川省まで遡った大旅行記。この度に、バードは1895年末から1896年6月末までの半年余りをかけている。

当時の清朝は、1840-42年のアヘン戦争に敗れイギリスに半植民地化され、さらに1894-95年の日清戦争で日本にも敗れた。1831年生まれのバードは64歳になっており、この歳で、劣悪な環境の中旅行していることに驚く。中国旅行の前には、日本や朝鮮も旅行している。

海外への旅行が、ほぼそのまま「冒険」と同義であった当時、バードの体験は貴重で、帰国後あちこちの講演にひっぱりだこになっている。その観察眼は鋭く、地理、気候、産業、商取引、政治、食、文化、風習まで幅広く公平に描かれており、そのの政治体制の変化で何が変わって、何が変わらなかったのかを考えると、中国という国の本質がわかる気がする。
37:流域の住民は、海から人跡未踏の金沙江の峡谷に至るまで、ほぼ漢族である。(中略)現王朝「清」の皇帝を輩出している韃靼族すなわち満州族は、その祖先が漢族を羊のごとくに蹴散らし、今も大きな都市の守備についているが、その多くは恩給を世襲できることが災いして、アヘンを吸う怠け者へと堕落している。

38:わが西洋思想が対面しているのが、野蛮さとか堕落した道徳観ではなく洗練された古来以来の文明であるということである。これは衰退などしてないし、不完全ながら我々が尊敬し感銘さえして当然のものを含んでいる。(中略)小作人の息子でさえも、アメリカ共和国の場合と同じように、高い地位にまでのぼりつめることが可能なのである。

41:生まれながらの商売人である。(中略)猜疑心が強く、狡猾で賄賂によって動いてしまう。だが、その悪習の実際についてここで見る必要は無い。中国人には欠けているものがいろいろあるが、「良心」の欠如や、正義を支持し悪をとがめるような啓発的な考え方が社会にかけていることはその一つである。

324:彼女たちの質問はまことに軽薄だったし、好奇心は異常なまでに知性を欠いていた。この点で日本人の質問とは好対照だった。ここには、していることに目新しさも多様さもなく、食べることと書くことだけをしている人間を何時間にもわたってジロジロ見ることに費やすという、大人としての異常なまでの無神経さが見てとれた。

364:纏足は今も流行っている。またこれまで中国では「足の大きな」女性は蔑まれたり、非国民とみられてきた。纏足をしていない娘には結婚の機会はないし、花婿は、小さいことを期待していた新婦の足が大きいとわかった時、ただちに新婦を実家に帰してしまっても、世間から非難されるようなことはない。纏足はきわめて古い時代に始まる根っからの中国固有の風習であり、満州族が中国を征服した後、「弁髪」と筒袖を押しつけるのには成功したものの、この野蛮な風習をやめさせることには完全に失敗したことは注目に値する。 


shikoku88 at 08:37│Comments(0)TrackBack(0) | 旅行

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字