2014年07月09日
空飛ぶタイヤ
三菱自動車のリコール隠し事件に題材を得た小説。「半沢直樹」と同じ作者で、流石、読ませる。中学生の末娘が先に読んで面白そうだったので、借りてみた。
ドキュメンタリーではないので、内部の動きがこの小説に近いものがあったのかどうかは不明。しかし、事故原因を特定していたにもかかわらず、多大な費用の掛かるリコールを避けるため事故をユーザーの「整備不良」とし放置したため、事故再発を防げず、ついには死亡事故を起こしたという「結果」は事実のままである。
外から圧力の掛かることの少ない組織が、組織目的を忘れ、内向きの政治に明け暮れるというのは日本で繰り返されてきた問題。三菱自動車がそうなりやすかったのは、唯一の財閥系自動車メーカーとして、販売台数の半分がグループ用であるなど、慢心しやすい体質であったというのは正しいだろう。
小説では、流石の財閥グループも同社を見捨て、同業他社に吸収合併されてしまう。実際の三菱自動車はグループの支援を得て、再建途上である。昨年もリコール問題が出ているが社風は変わったのだろうか?
上112:ホープ自動車という、時として官僚以上に官僚的といわれる社風の中では、社員の関心事はひたすら、外にではなく、内へと向く。上183:ホープグループの親方企業、ホープ重工の元自動車部門という伝統は曲がりひねくれて、「俺たちは偉いんだ」という根拠もなく勘違いしたエリート意識へと直結している。上208:要するに、一つの社名の下、様々な部門がお互いの利益を確保するためにしのぎを削り、権謀術数からみあっているのがこのホープ自動車の体質なのである。
下36:徹底した階級意識と選民意識。この従業員35000人の集団に蔓延するその感覚は地下水脈のように組織の根底を流れる血脈であり、それは否定するより克服して慣れるしかない代物なのだと。
