2012年01月08日
半島を出よ

半島を出よ (上)
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「小説家には時代を読む感性が必要」というが、7年前に出版されたこの本ほど現代日本の特徴をえぐりだした小説はないのではないか。政治家必読の書。
2011年設定の近未来小説であり、偶然にも東日本大震災が起こった。平和ボケした日本で、未曽有の危機にあたって、優先順位をつけて機敏な危機対応が出来なかったことは全く小説と重なる。
p179:財政破綻寸前の預金封鎖と外国為替及び外国貿易法、いわゆる外為法の改正による海外資産凍結、インフレと金融不安、あらゆる経済活動の縮小と大量の倒産・失業、国債の暴落と外貨準備高の急激な減少等々、ただこの時点で振り返ってみると、放っておけばいずれ破たんするといわれていたことが本当に放っておかれて現実になっただけだった。経済の破綻は、国際社会の不信と疎外を生む。経済が破たんしてみると色々なことがはっきりした。日本が何によって国際的な影響力を保持していたかが明らかになったのだ。
p182:防衛庁の情報本部の中には若くて優秀な人材がいて、二年ほど前に、北朝鮮がテロで狙うとしたら離島だというレポートを出したが、政府は事実上それを無視した。日本周辺には七千近い離島があり、その中の423の島に人が住んでいる。有人の離島を北朝鮮の特殊部隊のコマンドが占拠したら、対抗手段はなかった。警察官を殺し、住民を人質にして、マスメディアに連絡して、日本政府に要求を突きつける。大規模な人員や装備は不要だ。小隊規模で、自動小銃と手榴弾があればそれで充分だろう。まさに悪夢のような事態だが、400を超える有人島をそれなりに訓練された兵士で警備するのは徴兵制が復活しない限り不可能なので、政府はそういうことは起こりえないと判断して、レポートを無視したのだった。
p244:どうして自衛隊は高麗遠征軍を攻撃しようとしないのか。福岡封鎖にこれほどの経費をかけ、甚大な被害を想定するのなら、最初から高麗遠征軍をつぶすべきではないだろうか。もし同じことが共和国で起こったら、親愛なる将軍同志は躊躇なく侵略軍への攻撃命令を出すだろう。確かに一般市民に大勢の犠牲者が出るが、経費も被害額もはるかに少ない。