2025年09月
2025年09月30日
情報伝達速度
産業革命以前の世界では、「情報伝達は人類の歩行速度よりも遅かった」らしい。その時代、ほとんどの人間が生まれた地域で一生を過ごしていたのだから、当然と言えば当然か。
産業革命以前にも拘わらず、当時としては異常に速かったのが、日本でのコメ相場の情報伝達。「旗振り」という技術革新が起こった背景は、相場で儲けたい投機家の欲望だ。338：グレゴリー・クラーク『10万年の世界経済史』期間 行程 伝達回数 距離(km) 平均所要日数 平均伝達速度54~222年 イタリア~エジプト 23 2129 56 1.58km/h1500 ダマスカス~ヴェネチア 56 2436 80 1.27アレクサンドリア~ヴェネチア 266 2198 65 1.41
340：江戸時代の旗振り大坂からの通信速度＝和歌山3分、京都4分、神戸7分、桑名10分、岡山15分、広島40分大津の取引所の米価は、1840年以前は大坂から1営業日遅れ→旗振り導入で、同日中に値動きが同期するように
こうなると、旗振り情報を手に入れられた人だけが確実に儲け、他の市場参加者は損をしてしまう。役人が旗振り信号を「不正」行為と見做し、何度も取り締まったが根絶は難しかったようだ。
2025年09月29日
コンピューターの商業化
PCの歴史でエポックメーキングであったのがアップルのMacintosh。私もWindows95まではMacintoshを使っていた。そして、そのデビュー発表で、未だに伝説となっているのが1984年スーパーボウルでのアップルのCM。全米で最も視聴率の上がる番組でのMacintosh発表CMだ。
こう言われても、日本人には「1984」がなんだか分からないかもしれない。村上春樹の『1Q84』とはもちろん関係なくて、英作家George Orwellの小説。332：1984/1/22第18回スーパーボウル「1月24日、アップル・コンピューターはマッキントッシュを発売する。1984年が、小説『1984』のようにならない理由が分かるだろう」
私は、この小説に思い出があって、話は学部時代にさかのぼる。その時、政治経済学部の英語教員にPaul Snowden先生が居て、この先生の英語授業が気に入り、選択で一般教養のゼミも取ることにした。その課題図書がGeorge Orwellで、"Inside the Whale" "Decline of the English Murder"とかのエッセイ集であった。
それまで原書を丸ごと読んだことのなかった私にはハードルが高かったのだが、次第にGeorge Orwellが好きになり、彼の小説も読んでみることにした。最初にSnowden先生に勧められたのが"Animal Farm"（邦題『動物農場』）で、次に読んだのが"1984"。どちらも、共産主義に共鳴したオーウェルが後に幻滅して書いた「共産主義を揶揄する」本。
どちらも、英米の大学では一般教養の必読書になっていて（今はどうだか知らないが）、大卒者（＝PCの購入層）ならその内容は常識。だから、あのCMが成り立ったというわけ。日本であのまま流しても、誰も理解しなかっただろう。
304：コンピューターの商業化
1951 UNIVAC 汎用電子コンピューターとしては世界初。
310：1957FORTRAN
IBMでプログラミング言語開発のプロジェクトを主導したジョン・バッカス。
FORTRANのコンパイラは「人間によって書かれたコードと同じくらい効率的で速い」機械語を生成できた。
315：1963アメリカ半自動警戒管制組織SAGE
→IBMが民間転用 アメリカン航空の座席予約システムSABRE
318：1964ダートマス大学BASIC
コンピューターのタイムシェアリング普及で、高速翻訳が求められた。
334：1987年の時点で、MSの売上の半分はマッキントッシュ用ソフトウェア
マイクロソフトは1981年にマッキントッシュ用のOSの一部を開発する契約を結んでいた。
2025年09月28日
ギックリ腰の駆け込み寺
「ギックリ腰の駆け込み寺」という（セルフ？）プロデュースをしている品川区の鍼灸師による本。今年6月に人生3回目のギックリ腰となり、再発防止のため、そしてまたなってしまった時の緩和措置を知りたくて読んでみる。
初めてギックリ腰になったのは10年ほど前。MTBで山を下っていて、枝を避けようと上半身をひねったとき。2回目は自宅で、立ち上がろうとした拍子に。今回は、旅行先で山に登り、展望台で寝そべって休憩してから立とうとして。いずれも同じ箇所。
ということで、原因にはいろいろある。まえがき：男性の体の悩み第1位が腰痛（女性は肩こりに次いで第2位）疲労（筋肉の緊張、骨格のゆがみ、自律神経の乱れ、血流不足、むくみ）→腰痛
これなど、今回、汗が引いて体が冷えたのが原因に思えてくる。46：冷たい食べ物や飲み物は体を冷やしてしまう冷たい食べ物、飲み物→胃腸が冷える→腰も冷える→ギックリ腰の引き金
76：背骨を整える
背骨を整えるだけで骨のゆがみが整い、筋肉の緊張がほぐれ、神経伝達や血流がよくなり、内臓も正常に動き出す。背骨は脳神経ともつながっているため、頭もスッキリし、精神面も安定する。
84：腰痛改善エクササイズ
第一歩は「背骨」を動かすこと。
137：ギックリ腰に効く特効ツボ
手の甲（腰腿点）
人差し指と中指、薬指と小指の骨の付け根の間。
2025年09月27日
コンピューターの黎明期
「史上最初のコンピューター・プログラマー」が女性であったというのは興味深い。しかも、ビクトリア朝の伯爵夫人で、父親はかの有名なバイロン卿だ。
284：Ada Lovelanceバベッジの共同研究者であり、最良の紹介者。
289：IBM
1930年代までに、IBMは年間30億枚のカードを販売しており、それは収益の10%、利益の30~40％を占めていた。装置をリースすることで固定収入を確保し、パンチカードで利益を上げる。
290：Harvard Mark1（リレー式）
1886年にバベッジの息子ヘンリーによってハーバード大学に寄贈されていたバベッジの計算機関の断片をハーバードで真空管を研究する大学院生ハワード・ハサウェイ・エイケンが見つける。
294：弾道計算
典型的な射撃表には、約3000の弾道データが記載されていた。弾道１つあたり７つの変数を持つ常微分方程式を積分する必要があり、これにはアナログ式の微分解析機で10~20分を要した。
296：ENIAC（真空管式）
約17千本の真空管＝信頼性が低い。
300：改良版EDVAC
プログラム内蔵式のコンピューター。
2025年09月26日
西野流呼吸法
90年代、よく聞いた「西野流呼吸法」。当時は若かったので、あまり興味がなかったのだが、歳を取りあちこち不調になってくると健康維持への関心が自然と高まる。
1966年2月8日に15歳でデビュー（11PM）した由美かおるは、「33年間ボディーサイズが変わらない」
本書の執筆時点で48歳の時だ。その由美かおるが30歳を過ぎた頃に出会い、以来毎日欠かさず続けているというのが「西野流呼吸法」。
本書の執筆時点で48歳の時だ。その由美かおるが30歳を過ぎた頃に出会い、以来毎日欠かさず続けているというのが「西野流呼吸法」。読んでみると、その手法は、古来から武道で言われている呼吸法と同じ。考案した西野晧三氏がバレエ、合気道を学ぶ中で生み出したという。
23：足裏呼吸
「息を足の先から吸って徐々に吸い上げ、肩から手の先にいきをスーッと流すようにすると体が浮いたようになり、いつまでも好きなポーズをとっていられる」（世紀のバレリーナと言われたアンナ・パブロワ）
24：荘子
「真人の息は踵を以てし、衆人の息は喉を以てす」
26：規則正しく、毎日3回きちんと食べる
但し、腹七分目。
2025年09月25日
技術革新と歩んだホモ・サピエンスの20万年
「世界初の株式会社を作ることができた背景には、簿記・会計知識の普及」があったという指摘は面白い。確かに、世界にまたがる巨大組織がどこでどう動いているかが数字で分かって、経営ができるようになった。
『スムマ』は複式簿記をヨーロッパ中に広めた最初の本となったが（本全体としては広く数学を扱っている）、以降も複式簿記の教科書が次々に作られて、ヨーロッパでは中産階級以上の人々にとっては基礎教養の一つになったという。
�／洋爐寮戸�学に影響を与えて、生物学的に進化させた発明
例）火の管理・利用
�⊂霾鵑鯡閏膕修靴身�明
人類の歴史のうち、文字のない時代のほうが圧倒的に長かった。
��人類にはできなかったことをできるようにした発明
例）北欧ヴァイキングの優れた船→活動範囲が広がる
�た洋爐砲任�ることをより効率よくできるようにした発明
例）コンピューター
46：ヒトは哺乳類のなかでは極めて暑さに強い動物
皮膚１㎠あたりの毛根の密度は、ヒトとチンパンジーにさほど違いはない。私たちの表皮が露出しているのは、毛の1本ずつが細いから。また、汗腺も発達しており、大量の汗をかくことで体温を下げることができる。
127：1453コンスタンティノープル陥落
十字軍を組織するための資金源として、贖宥状が盛んに発行される。グーテンベルクも教会からの要請に応え、贖宥状を印刷。
142：1671鴻池両替店「算用帳」
江戸時代の日本でも、独自に複式簿記を発明。
143：オランダ東インド会社
世界初の株式会社を作ることができた背景には、簿記・会計知識の普及。『スムマ』以降も複式簿記の教科書が次々に作られて、ヨーロッパでは中産階級以上の人々にとっては基礎教養の一つに。
2025年09月24日
7年4ヶ月一人旅
世界一周95,000kmの自転車ひとり旅も終盤。北米・南米・欧州・アフリカと回って、最後はユーラシア大陸。
264：イスラム教徒の、とくに田舎の人々は、ときどきこっちがドキッとするくらい、いい顔で笑う。慈悲に満ちたような、その笑顔を見ていると、宗教がいい形で人の心に作用しているな、と思う。イスラム教には客人をもてなすようにとの教えがあり、シリアでもトルコでもよく人の家に招かれ、泊めてもらっていたのだ。
そのシリアが、2011年から14年間も内戦が続いたのには心が痛む。中東では、シリアの隣パレスチナでやはりイスラエルの圧政が続く。ガザでの死者は6万人を超えている。
その後も日本帰国まで旅は続き、結局7年4ヶ月かかっている。当初予定の倍以上だ。その間の最も大きな変化はインターネットだったという。旅をスタートした1995年時点ではまだインターネットサービスはほとんどなく、進めている間に飛躍的に発展した。275：ブハラ（ウズベキスタン）出ようとすると、名残惜しさがつのってついつい腰が重くなる。こうして、3年半の予定だった旅が、もうすぐ6年になろうとしているのだ。「今日一日ぐらい」が2年半も積もったことになる。
307：エピローグどこに行ってもチャリダーは見かけたし、世界一周をやっている人も数え切れないくらいたくさんいる。旅をとりまく環境は昔とは大きく変わり、インターネットによって情報があふれ、世界中の道は整備が進み、旅はどんどんしやすくなっている。
解説（椎名誠）
・スケール
7年4ヶ月という一人旅は世界のいろいろな旅の記録の中でもなかなか見ない。いや、旅の時間的長さという意味では、実際にはそれ以上の人がいるのをたくさん知っている。ただそれは往々にして旅先のその土地にしばらく住み着いてしまったりして時間がかかるケース（中略）。その意味でこの著者の体験記は記録的だろうと思う。
・観察力
旅の合間に出会うたくさんの人々を、必要以上の意味づけをせず、かなりさりげなく、しかし結果的にはいきいきと正確にとらえ、そのひとつひとつのエピソードがドラマをはらんできちんと描写されている。
・自分の思考を深めている
自分の体を必死に動かし、いくつもの「へこたれ」や「闘志」や「耐え」や「挑み」の感情を持った上で出会った風景でないと、風景はその人に語り掛けてこないという厳しい物理的な現実。
2025年09月23日
アフリカ編
1995年にアラスカを出発し、北米と南米を縦断。南米の最南端パタゴニアから飛行機でヨーロッパへ渡り、欧州各地を巡った石田氏はアフリカに上陸。
インドでもよく聞く睡眠薬強盗。安宿に泊まるなら気を付けないといけない。216：ナイロビタケシが睡眠薬強盗にあったという話を旅人づてに聞いた。同じ宿で仲良くなった現地の人間にもらったクッキーに睡眠薬が入っていて、食べた数分後には意識を失い、翌朝気が付いたらズボンやバッグに分散して隠し持っていた現金約25万円と、カメラなどの貴重品がなくなっていたらしい。
255：自分の前にあるのは、一本のレールなんかじゃない。道は無数に枝分かれして広がっているのだ。どこへ向かうかは自分しだいなのだ。「なんとかなるだろう」じゃだめだ。
旅の途中、幾度となく生命の危険にさらされた石田氏。日本式に「なんとかなるだろう」ではダメだと悟る。常にリスクに敏感になり、危ないと思ったら、行動を起こすことだ。
258：ピラミッド月見作戦閉門の午後5時が近づくと、小さい砂丘の裏に身を潜めた。これで監視人からは見えないはずだ。5時になって最後の観光客が出ると、ひっそりした空気があたりを包んだ。太陽が沈み、ピラミッドは淡いピンク色に染まっている。そのすぐ横に奇妙なものがあった。巨大な、信号機の赤のような光。それが地平線からゆっくり昇ってくる。
2025年09月22日
自炊の欧州
大学を出て３年余りしか働いておらず、貯蓄のすべてを世界一周のための特注自転車と装備品に費やした石田氏。しかも、装備品は全部ペルーの砂漠で強盗に奪われている。
従って、必然的に貧乏旅行。基本はテント泊でたまにバックパッカー用の安宿。問題は特に物価の高い北欧である。
世界一周の時期は1995~2002年。東欧は共産主義体制が崩れて資本主義への移行の時期。物価は上がり、所得格差は大きくなった。148：ノルウェーメシは当然自炊だ。動物性タンパク質の補給は釣りにかかっている。ノルウェーの海岸一帯は、氷河に削られてできた巨大な谷に海が入り込んでいる、いわゆるフィヨルドという地形が続く。その迷路のような入り江が魚にとって格好の住処になるのか、それとも単に人がいないからなのかはよくわからないが、ときに魚は入れ食い状態になった。
そのうちの一人のおじさんからキノコを買いお金を払おうとしたら怒られる。言葉が通じないので、「もっと出せ」ということかと思い、余計に払おうとしたら、さらに怒られる。そして一言「プレゼント」。この片足のおじさんは、「お前のような貧乏旅行をしている若者からお金を取れるか」と怒っていたのだった。158：ワルシャワ歩道には腕や足のない物乞いがたくさんいた。障害を持った人はひとり残らず路上に出ているんじゃないかと疑いたくなるような光景だ。
167：ドイツ日本を出て2年と5ヶ月。旅の最初のころのような、みずみずしい感覚はなくなっていた。毎日ただ漫然とペダルをこいでいるだけだ。”非日常”だった旅の日々が、すでに、”日常”になってしまっているのだ。（中略）ロンドンに行こう、とおもった。（中略）オランダ、ベルギー、フランスと走ったあと、船でイギリスに渡った。ロンドンならいくらでも仕事がある、と以前会った旅人から聞いていたのだ。
ロンドンでは聞いていた通り、わずか数日で日本食レストランでのアルバイトが決まる。ロンドンで半年アルバイトしてお金を貯め、「日常」を取り戻した後、再び「旅」を再開する。
2025年09月21日
ティカル遺跡群
アラスカから世界一周を始めた石田氏は、北米大陸を南下。メキシコを経て、南米を走る。
ペルーの砂漠で拳銃強盗に襲われ、身ぐるみ剥がされる。パスポートも奪われたので、再発行のため首都リマの日本大使館へ。
さすがにこの時は、死んでたかもしれないという恐怖と、日本で数十万円掛けて準備した装備品も失い、意気消沈したという。
それでも気を取り直して、現地で手に入るものを買い、無いものは日本から送ってもらって再開。ついに、南米の最南端、パタゴニアに到達する。
67：モニュメントバレー
ビューとは小山のように巨大で、艶のある色をしていて、獣が静かな寝息をたてながら眠っているようだった。ナバホ族たちはここに神がいると信じているそうだが、この景観を目の当たりにすれば、誰だったそう思うんじゃないだろうか。
92：ティカル遺跡群
現存するマヤのものでは最古で、また最も美しいといわれている。数々のピラミッドを建てたあと、人々は忽然とこの地から姿を消すのだが、彼らの消息をはじめ、ピラミッド群がどんな目的で造られたかなど、すべては謎に包まれている。これを見るために、ぼくは2500キロもの遠回りをしてユカタン半島を走ってきた。
137：サンチアゴ
キヨタくんも「いやいや、じつは俺だって」と、ベネズエラの山中で強盗に襲われ、猟銃で撃たれて弾のひとつが肩をかすめていったという話を、とてもうれしそうに語った。
142：パタゴニア
南米を走るチャリダーは国籍を問わず、その数は非常に多い。しかもほとんどの者がウシュアイアを目指すので、ルートが重なり、よく再会を繰り返す。
144：ウシュアイア
アラスカをスタートして1年9ヶ月、自分の足で大陸を縦断し、世界最南端までやってきたという実感は、どういうわけかあまりわいてこなかった。
2025年09月20日
世界一周自転車ひとり旅
愛読している『サイクルスポーツ』に連載されている国内サイクリング紀行「僕の細道」。その作者が夜に出たのが7年かけた世界一周サイクリング記録の本書。
1995-2002末の7年5か月
1969生れ(26-33歳)
走行距離 94494km
訪問国数 87か国
パンク回数 184回
スポーク折れ 8回
使用タイヤ 37本
大学を出てメーカーの営業職に着いた石田氏。大学時代は日本一周サイクリングを成し遂げている。仕事は順調だったらしいが、世界を見てみたいという想い断ちがたく、3年余りで退職して世界一周準備し、出発地のアラスカに飛ぶ。
11：装備40kg
バッグが６つ。キャンプ用具に防寒具、着替え、文庫本に辞書、カメラ、工具、薬。
装備40kgはすごい。これだけの荷物と体重（書いてなかったが、仮に70kgとして合計110kg）。これを乗っけて悪路を行く自転車の自重は20kg以上。もちろん、電動アシストはない。
13：「金出しな」
アラスカに到着。道を聞いた、アメリカに来て初めて会った現地の人間から言われた台詞。
32：ジョン・ハッチ（Whitehorse, Yukon）
「もし、お前が本当のユーコンを知りたいのなら、一週間ほどカヌーで旅をすることだ」
「一日や二日じゃだめだ。四日目からようやく森の静けさを感じるようになる」
「五日目には動物たちの息づかいを感じるだろう。六日目、河の流れと一体になり、そして七日目にようやく本物のユーコンを知るのだ」
40：テスリン河という支流にかかる橋からスタートして、コースなかばで本流のユーコン河に合流。そこからさらに下流のカーマックスという町まで下るというもの。全行程360キロ。そのあいだ、道と河が交差するところはない。
45：3日目キングサーモンの群れ
最初それが目に入ったときは一瞬、丸太が川底に転がっているのかと思った。それぐらい、デカい。
2025年09月19日
新冷戦のスタート
AIバブル説のエミンさん。ITバブルのチャンピオンだったCISCOが、その後低迷し、未だに当時の株価を抜けない。当初インターネットルーターを独占していたのがコモディティ化したからなのだが、それと似たようなことがAIでも起こるという。
215：生成AIはコモディティ化
Deep Seek Shock設計情報を公開（オープンソース）。
ただ、ITバブル崩壊後も、インターネット産業は拡大。主役が交代しただけなので、AIでもそれは起きるだろう。
218：Open AI
インターネット上のありとあらゆるウェブサイトのデータを盗み取って開発。何の許可も取らず、何の著作権料も払わず、それらを縦横無尽に使って自分たちのAIモデルを開発。
233：2025/2/28米ウクライナ首脳会談
ゼレンスキー大統領の方が上？もともとコメディアンは頭の回転が速くないと務まらない商売のうえ、彼は弁護士資格も持っている秀才。
241：NVIDIAファンCEO
市場操作が巧み。シンガポールの売上が1年で3x（エンドユーザーは中国）。
242：シリアはエネルギールートの要衝
歴史的に貿易ルートの交差点。アフリカｘシルクロード。アナトリア半島を通して欧州。
1286BC古代エジプトとヒッタイトの戦争（カデシュの戦い）は記録に残された世界初の戦争。
250：シリア内戦は新冷戦のスタート
地政学的に二つの「断層」＝エネルギールート・貿易ルート
2025年09月18日
竹のカーテン
チャーチル英首相が第二次世界大戦後のソ連による欧州分断を例えた「鉄のカーテン」。エミンさんは、今「竹のカーテン」がユーラシア大陸に降りようとしているという。
今回は、まだ、インドがどちらに入るのか、あるいは、これまで通りの独自外交路線を貫くのかなどまだ不透明。また、経済圏としてほぼ自給自足になっていた旧共産圏と、現在の輸出立国の中国を同一視するのは難しい。
ただ、その時、日本が東西相互の貿易の「迂回先」になれるかどうかは、今後の日本経済にとって重要だ。
ただ、その時、日本が東西相互の貿易の「迂回先」になれるかどうかは、今後の日本経済にとって重要だ。
187：新NISA
毎月1兆円以上のキャピタルフライト。
199：日本円の価値保証＝日本保有の米国債
200：日本の政治は全部「左派ポピュリズム」
自民党は外交的には右派だが、経済的には左派。
205：ロシアの海外資産凍結→ドル覇権を揺るがす
米国と対立したら、自分の資産を凍結されるかもしれない。
2025年09月17日
PER水準
エミンさんの結論はいつも、日本株強気。「米国他世界各国の株式バブル崩壊で、日本にマネー還流」というものだ。
米国株はバブルなのか？PERで見てみると、米国大型株の代表指標であるS&P500の予想PERは約20倍。過去平均は15倍で、おおよそ12~18倍の範囲で推移している。これからすると、現在のPER水準は歴史的に見て高いということになる。ちなみに、日本の予想PERは15xなので、過去30年平均からすると高いが、世界的には低いほう。
その株高を引っ張っているのは、GAFAMに加えて半導体のNVIDIA。この分野では米国企業に対抗する会社が見当たらず、ほぼ独占状態となっている。従って、利益率も成長性も高く、そうであれば、予想PER20xも正当化できる。
脅威としては、米中摩擦で、中国に対する先端AIチップの販売を禁止したこと。中国はもともとAIで米国と並ぶ先進国だが、貿易制限でAIチップの開発にも力を入れることは間違いない。日本も軍事同盟国として、アメリカに言われれば同意するしかなかったのは、これまでの歴史が示す通り。その時は、日本企業も影響を受けることになる。
147：2024/9/3NVIDIA▲9.5%＝40兆円
米国株の一銘柄の下落としては過去最大。
USTRがシンガポールを中国へのバックドアとしているNVIDIAを規制の対象にするのでは？
164：米国商業用不動産2023~▲11%
過去最大の下げ幅。米国社会の構造変化（リモートワーク＆EC）。
166：バブル崩壊→米国10年債👆もしくはアップル社債
利回り4%＋
170：ローマ帝国
膨張した軍事費を賄おうと貨幣の銀含有量を減らす→インフレ→貨幣経済崩壊
2025年09月16日
円キャリートレード
円キャリートレードとは、低金利の円で借り入れを行い、それを投資リターンの高い国々（ここ数十年はアメリカ）で運用して、資金運用にレバレッジを掛けること。
126：円キャリートレードの膨張→円安米国にとって最後の砦のジャパン・マネー。
円キャリートレードが増えると、円をドルに転換して運用するので、膨大なドル買い円売り需要が発生する。「双子の赤字」を重ねる米国にとって、中国が米国債残高を減らしている中で、資金供給してくれる貴重な金づるだ。ただ、日本の長期金利も上がりつつある。これが2%になれば、為替リスクを取るほどの米国との金利差が無くなるので、円キャリートレードが崩壊することになる。これが、米国株式のバブル崩壊につながるのではないかという。
106：過去30年間米国の景気後退、バブル崩壊はすべて共和党政権時
1990-1991 パパ・ブッシュ政権
2001ITバブル崩壊＆2008GFC ジョージ・ブッシュ政権
2020コロナショック 第一次トランプ政権
＊民主党政権が経済立て直し→株式バブル→共和党政権で崩壊
108：2025/2米PER27
112：ドルが基軸通貨
ジャブジャブにマネーサプライを増やせる。
113：2022/7~2024/9逆イールド（米10年国債金利ー2年国債金利）
逆イールドが発生してから1~1.5年後に景気後退（逆イールドをいったん解消した後）。
2025年09月15日
米国大統領政治のリミット
数百万円の「疑惑」でも政治生命が絶たれる日本。その目からすると、選挙資金が数百億円という米政治は異常に映る。
さらに、トランプ大統領の場合、他の人なら非難されるような公私混同もあからさま。53：米国大統領政治のリミットを試しているコンフリクト（利益相反）がどこまでなら許されるかに挑戦。大統領職と自身のビジネスとのバウンダリーがなくなった。公私混同が当たり前。
54：大統領就任前日に自分とメラニア夫人の名前でミームコイン販売詐欺容疑で捜査を受けていた中国人資産家チャンポン・ジャオ氏が$75M（100億円）購入。その直後、ジャオ氏の捜査停止。トランプ夫妻にはトークンの75%が入る。
ジャオ氏（Binanceオーナー）は2024にマネロン違反で禁錮4ヶ月の判決を受けた犯罪者であったが、100億円の賄賂で捜査停止。その後、トランプファミリーがBinanceへの米国事業へ出資することで、トランプ大統領就任後に恩赦を得た。
アメリカの自動車工場組立工の平均給与は1000万円を超えている。日本の倍だ。この水準では、自動車はじめ、製造業の競争力は難しい。ステイタスで買われる一部の高級車を除けば、コモディティ化したため、価格競争力が無ければ売れない。60：日米の平均年収格差2.5x米国の製造業復活は有り得ない。
所得格差の大きな米国では、連邦所得税の大半を高所得者が払っている。トランプ大統領はそれでなくても大赤字の連邦政府で連邦所得税を減税した。この収入源の部分を追加関税で補おうとしている。関税は所得水準に関わりなく物価高として消費者に転換されるので、消費税と同じ効果がある。
昔のアメリカは、日本同様、顕著な累進課税制度を取っていた。それが、レーガン政権下での所得税減税で下がり、その後も下がって、現在では最高税率が33%となっている（これに州の所得税が加わる〜税率は州によって違う）。96：連邦所得税1960 40万ドル以上の年収に対して91%1980年代まで70%台2017 33%
99：2021/1/6米連邦議会襲撃事件クーデターをしかけたトランプを刑務所送りにできなかった。大統領就任初日に裁判で有罪となった約1600人に大統領発動で恩赦。長期刑を受けていた14人も釈放。
2025年09月14日
Manifest Destiny
アメリカには建国以来の「米国例外主義」がある。
43：マニフェスト・デスティニー「米国はとてつもないことを達成する運命にある」
どこに国にも、「我が国は特別」という思いはあるものの、他国との違いは「自分たちが白人文明を広げるのが正義」だと信じていること。それが「他国からどう思われようが（神の意志なので）構わない」という態度につながる。
世界はこの4月、突然の「トランプ関税」の発表に驚いた。軍事同盟国にも事前の交渉はなし。関税率の「根拠」とされたのは上記の計算で、そこには他国がアメリカに課している関税率もなければ、現在有効な貿易協定も一考だにされなかった。これが、米ドルと米国債への信頼に懸念をもたらすのはいうまでもない。17：トランプ関税日本→米国輸出 1482億ドル対米黒字 685億ドル685/1482=46%
45：貧富の差が拡大する米国米国右派政権がうまい具合に反移民思想とナショナリズムをミックスして、白人貧困層を味方につけた。
2025年09月13日
高金利・高インフレ時代の到来
好きなエコノミストの最新刊。ともすれば日本悲観論に傾きがちな私に、エミンさんは希望を与えてくれる。
はじめに：2025/4/2トランプ大統領「相互関税」発表「この数十年間、米国は敵と友人問わず外国に略奪され、レイプされ、搾取されてきた。外国のリーダーは、われわれの職を奪い、外国の詐欺師は工場を荒し、外国のスカベンジャーはかつてきれいだったアメリカンドリームを壊した」
世界主要国のリーダーによるここまでゼノフォビックな（外国嫌い）内容の演説は約100年ぶり。前回は、その後、関税の引き上げ競争になり、経済が停滞して、世界恐慌になった。それが第二次世界大戦につながる。
4：1930スムート・ホーリー法フーヴァー大統領がサインした関税法→世界貿易を衰退させ、大恐慌が深刻化
これは知らなかったが、財政赤字が拡大している米連邦政府にとって、貴重な税収減である関税を廃止することは民主党にとっても難しそうだ。連邦所得税を引き上げることは政治的に難しいが、安い外国製品から「国内産業を守るため」といえば、それが最終的に消費者負担になるとしても、通りやすい。
第一次トランプ政権は中国製品に3000億ドルの関税民主党は当初、この政策を猛烈に批判していたが、バイデンが大統領になった後も、これらの関税を撤廃せず。撤廃するどころか、3000億ドルのうち150億ドル分については追加関税を導入。中国製のEVに100%、太陽電池に50%、EVバッテリーに25%の追加関税を掛けたのもバイデン政権。
2025年09月12日
「思考しないことが凡庸な悪を生む」
隠岐の島にある海士町。離島の常で、過疎化が進みつつあったが、2002年に当選した山内道雄町長の下で大胆な改革が始まる。2004年には「海士町自立促進プラン」が策定された。
研修生の一部が定住を始めると、他のIターンも増えて来る。237：海士町の挑戦�“�想を変えてみる研修生制度。住居と最低限の暮らしを保証し、一定期間島に住んで、島のいいもの、おもしろいことを見つけてくれないか。いいアイデアは商品化。
239：海士町の挑戦�⊃卦貊嗣韻砲茲襦崕狼通閏膽腟繊�外から来た人が活躍する一方、元々の住民とは距離感があるのが各地。海士町では、新旧住民が一緒になって町の未来を論じ合っている。
252：ハンナ・アーレント『イェルサレムのアイヒマン』
「思考しないことが凡庸な悪を生む」
世の中には巨大な悪がある。それを行うのは悪魔のような人物に違いないと思いがちだけれど、実は違うのかもしれない。多くの場合、悪を実行する人間は、アイヒマンのようにごくごく平凡な人。このような平凡な人が思考を放棄したとき巨大な悪が生まれる。
254：世界に住むのは一人ではなく、複数の人間
世界に存在する多様な人間のあり方を否定するのは暴力。複数の人が一緒に生きていこうとするのが政治であり、それが脅かされることで大量虐殺を繰り返したのが20世紀。
2025年09月11日
選挙制度
「多数決は正しいのか？」は難しい。その前提になるのは、参加者が一定以上の見識を備え、かつ、組織の未来について真剣に考えて、他の参加者としっかりとかみ合った議論ができる場合だろう。早い話、企業で経営決定を社員全員でやればうまくいくかといえば、そうはいかない。稀に実験的に行う企業もあるが、それは、小規模で前述の前提がある程度満たされる場合に限られる。
米政治がダイナミックなのは、強大な権限を持つ大統領にあるが、それは大統領の暴走にもつながるのは現状の通り。177：民主主義＝多数決？・多数派は正しいのか・少数派の権利を守るのが民主主義？
フランスが「半大統領制」というのは知らなかった（動画）。また、「決選投票制」というのも面白い。米大統領選がこの方式なら、2016年のトランプ勝利はなかったと推定される。181：漁夫の利を生む選挙制度2016米大統領選挙棄権をしたサンダーズ支持者は多かった（トランプは論外だが、ヒラリーに一票を投じる気もなかった）→民主党の票が割れる
206：フランス大統領選の2回投票制多数決の一回勝負の危険性を踏まえたうえで、その弊害を取り除こうとするもの。恐怖政治に行き着いたフランス革命の反省。
2025年09月10日
ルソー『社会契約論』
土井隆義（筑波大学教授）の『友だち地獄』には、「空気を読む」世代のサバイバルが描かれている。
「同質的な集団だからこそ、微妙な違いがクローズアップされる」ので、いじめが発生するという構造だ。129：教室内は特殊な空間同い年の人たちが40人近くも集まって、ずっと一緒にいる。だからこそどうしても、そこにいじめみたいな状況が出てきてしまう。客観的に見ればかなり同質的な集団の中で、むしろ極めて微妙な違いがクローズアップされる。
スタンフォード大学のグラノヴェター教授が発見したのは、「弱いつながり」の大切さ。例えば、転職の相談をするにしても、同質な集団では個々人が持っているネットワークも似通っているので、新たな情報は出てきにくい。時々しか会わない親戚とか知人の方が、「そういえば」「それなら」という話が出てきやすい。132：マーク・グラノヴェター「弱いつながり」が大切転職成功の秘訣を分析→薄い関係の知り合いからの情報が重要
ジャン＝ジャック・ルソーは、「女性関係が賑やかで、たくさん子どもをつくって、片っ端から孤児院に送り込んだ。ただの一人も育て上げることがなかった。彼自身が永遠の子どもみたいな人」だったらしいが、それはそうとして『社会契約論』。
142：ルソー『社会契約論』・人間はなぜ他の人間といっしょに社会を作らなければならないのか・国家は、なぜ必要なのか・各人がすべての人と結びつきながら、自分自身にしか服従せず、以前と同じように自由であることは可能か
「社会契約」とは、「全員が自由で平等、そしてその一人ひとりがしっかり判断をしないとダメ。その上で、一つの政治的な社会をつくって、そのメンバーになる」ことが必要だと考えた。
152：イマヌエル・カント「啓蒙とは何か」1784「啓蒙というのは自分の頭の中にある理性のスイッチを入れること」肝心なのは勇気。みんな自分の理性を使うのを怖がっている。自分でものを考えるのを恐れている。自分の理性を使うことから逃げてはダメ。
162：政党モデル
世の中にはさまざまな意見や利害を持つ人がいて、その存在を正面から認めることから政治を考えようとするのが政党政治。
166：パラグ・カンナ『「接続性」の地政学』
インド出身の国際関係・戦略論の専門家。
人と人、物と物とが世界各地で新たに結びついてきているか、その現実によって世界の地政学は大きく変わる。
2025年09月09日
ベーシック・インカム論
大都市で高度成長が始まったのは朝鮮戦争が契機だが、それは徐々に全国に広がっていく。1970年代、小学校の私のクラスは45人だったと記憶しているが、クラスで母親が専業主婦だったのはただ一人。そこは新家で農地を持たず、父親は勤めに出ていた。一般的だったのは、先祖伝来の田畑を一家で耕しつつ、父親が勤めにも出るという兼業農家。母親もパートに出ている家も多かった。77：日本は20世紀半ばまでは、女性が働いて当たり前の社会それが変わったのは高度成長期から。
工業化・商業化で賃金が上がると、いよいよ農業との収入格差が広がる。こうして、日頃の農作業は祖父母に任せ、田植えや稲刈りの時だけ、機械導入で済ませようとする兼業農家が増える。しかし、農機具を購入するには資金がいる。それでは収入に見合わないと、祖父母の引退を機に、農業を止めてしまう家が増える。99：ジョン・ロールズ『正義論』1971社会的正義のための３つの原理�（薪�な自由の原理��機会均等の原理�３丙晃桐�「最も不遇な人の利益を最大にする」
BIは、財源的に可能かの問題もあるが（仮に成人1人に年間100万円なら、100兆円で現在の国家予算と同額だ）、BI導入の代わりに、年金は要らなくなる。生活保護も不要だ。その他、社会保障関連で重複して支出されている費用も不要になる可能性がある。例えば、生活保護を受けていれば医療費も免除されているが、あれこれ複雑で重複した制度を単純化することで、行政のスリム化が可能になる。そう考えれば、検討用地はありそうだ。110：ベーシック・インカム論（BI）政府がすべての国民に、最低限の生活を送るのに必要な金額を定期的に支給する。AIとBIはセット？AIの時代にこそBIが必要。
114：日本人は矛盾している北欧型の福祉国家が好きだけれど、税金を払うのはいや。
2025年09月08日
「人と一緒にいること」の政治学
私は大学での専攻が経済であったが、政治経済学部だったので、選択科目で政治学も取れた。その最初の授業で教わったのは、「政治とは利害の調整」であること。後にビジネススクールで経営学を学ぶうち、「関係者の利害調整をしながら、全体最適を図る」の方が政治の定義としてはよいように思ったが。はじめに：「人と一緒にいる」のは素晴らしいことであると同時に、時としてつらいこと人と人には、いつも「違い」があり、「違い」があるからこそ、人といっしょにいることは面白いし、楽しいけれど、時には対立が起き、すれ違いが生じる。
さらには、何をもって「全体最適」とするのかという問題がある。ブロッホを参考にすれば、「未来への希望」を実現するためにということになる。エルンスト・ブロッホ『希望の原理』1959希望とは「まだ―ない」もの。未来への希望こそが、人や社会を変えていく。
トクヴィルはフランス貴族出身の裁判官だったが、フランス革命に遭遇。フランス政府からアメリカの刑務所制度研究のためにアメリカに派遣される。その後のフランス革命混乱の中で、親戚が多数処刑され、リベラル思想の研究者になる。アメリカ訪問時の印象と考察から書かれたのが名著『アメリカのデモクラシー』。35：アレクシ・ド・トクヴィル『アメリカのデモクラシー』1835これまで貴族は、世の中の貧しい連中を自分と違う種類の人間と思ってきた。貴族は貴族、平民は平民で、全く違う人間だと思っていた。でも自分自身がアメリカに来てみて、そんなことはないと気づいた。
アメリカ民主主義が「近代社会の最先端」と評価するだけでなく、「多数派による専制政治」であり、その多数派を形成するのは新聞（マスコミ）であり、当時の新聞は倫理規定もなく、部数を伸ばすために平気で捏造記事や一方的な記事も書いたことから、その先には「経済と世論の腐敗した混乱の時代が待ち受けている」という予言もしている。37：「なんであの人はあんなにいい思いをしているのに、自分はこうなのか」平等化時代の個人は、他人に対してより厳しい見方をするとトクヴィルは言う。
41：BREXIT「外から入ってくる移民のせいだ」所得階層別に見ると、お金持ちから上位中間層までは、半数以上が残留派。下位中間層以下ではその比率が下がり、最も所得の低い人たちでは残留派はわずか36%。
それは、今の米国政治の混乱を正に予測していたともいえるのだが、政治的にはもっと成熟していると考えられていた英国でも10年前にブレグジットが起こった。離脱派が「イギリスはEU加盟で損をしている」と幾つかの例を挙げて離脱を訴えたのだが、それは国民投票後に嘘だと判明する。実際に離脱後は、与党（当時）が予測していた通り景気は低迷。離脱でイギリスが国際政治的に地位が上がることも当然なく、後の祭りとなった。
2025年09月07日
サーバントリーダーシップ
経験学習理論では、「良質な失敗経験」を追い求めることが大事だという。人は常に、成功よりも失敗から多くを学ぶ。
「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」は有名なリクルートの社訓だが、受動的に「良い経験を得られる機会」を座して待つのではなく、能動的に自ら「良質な経験を得られる機会」を創り出していく姿勢が必要なわけだ。303：学習＝経験を通じて自分の信条・習慣・思考様式を変化させることで、同じインプットに対して、より良いアウトプットを出せるようになること学習というのは「自分という認知システムが変容すること」であり、その変容によって「世界がそれまでとは違って見えるようになること」。
「流動性知能」とは、過去の経験に囚われずに問題解決する能力で、新しいものを生み出すのに必要。これは早くも20歳前後でピークに達するという。一方、「結晶性知能」は、これまでの経験から出てくる知恵のようなもの。こちらは、経験から学ぶことで出てくるものなので、歳を重ねることで高まっていく。332：「流動性知能」と「結晶性知能」流動性知能は20歳前後にピークに達し、40代以降は急速に低下する。GAFAMの創業経営者の創業時の年齢の平均は23歳。
338：グリーンリーフ『サーバントリーダーシップ』扉私は自分の人生をこの仮説に賭けてみたい。
グリーンリーフは当時、世界で最も大きな企業であったAT＆Tの管理職を勤めながら、在野の研究者としてサーバントリーダーシップの研究に打ち込む。50代のタイミングで、当時としては珍しかった早期退職によってAT＆Tの職を辞してから、応用倫理研究センターというシンクタンクを設立し、以降、1990年に亡くなるまで、ハーバードをはじめとした大学での教鞭や執筆、あるいは独立系の組織・人材コンサルタントとしての活動を通じて、サーバントリーダーシップという概念の普及・啓蒙に務めた。
2025年09月06日
リアル・オプション
経営でも人生でも、大事なのは「オプション・バリュー」。常に選択肢を複数持つこと。
ある時点においては、いったん選択したことに集中しなくてはダメだが、常に「ダメな場合はどうするか」は考えておく必要がある。262：リアル・オプション不確実性が増す状況において基本的に求められるのは「選択と集中」とは真逆の考え方である「保留と分散」。
短期的な経済利益を目指すと、道を踏み外すことになる。それにしても、HBS卒業生は並外れて成功意欲が強いためか、同窓会のたびに「○○がXXで捕まった」という話になるという。そういえば、サントリー会長を辞任した新浪さんもHarvard MBAでした。272：バランス・スコア・カード（Robert Caplan/David Norton）単に財務的成果のみに焦点を与えるのではなく、組織の戦略をより中長期的で多角的な視点から捉え、評価することを目的とする。
282：クレイトン・クリステンセン『イノベーション・オブ・ライフ』スキリング以外にも、将来を嘱望されながら社会に羽ばたいていった彼の同窓生が、しばしば人生を「はなはだしく踏み外している」。
2025年09月05日
創造性理論
「短期決戦論」で対米戦争に突入した大日本帝国など、これか。半年後にミッドウェイで大敗を期した時、早くも「短期決戦」は不可能になったが、代替案が無いまま、悲惨な長期戦に移行していく。194：バーナード・モントゴメリー目標を達成するための「複数の選択肢の組み合わせ」を戦略という。ひとつの選択肢しかなければそれは戦略ではない。
198：リスクとリターンの性質の違う仕事を組み合わせる�．螢好�とリターンのバランス��長期・短期のバランス��ライスワークとライフワークのバランス
� 岼堕蠹�だけれども大化けするリスクのない仕事」を持ちながら、片方に、「不安定だけども大化けするリスクのある仕事」を持つというアプローチ、というのは、勤め人にとって一番身近なのは副業。今では公式に副業を認める会社も増えたので、会社を辞めずに試してみることができる。
著者の場合は、転職したBCGでマネージャーとして活躍。次はパートナーか？というところまで来たが、高給を貰いながらも忙しそうなので、成りたいと思わなかったという。209：なぜコンサルティング会社のパートナーは、職位が上がれば上がるほど、忙しそうなのか？自分の時間を他人に売るというコンサルティングのビジネスモデルの構造上、自分の価値が上がれば上がるほど、機会費用が大きくなるから。
この指摘は面白い。天才は常に素晴らしいアウトプットをしているから天才なのではなく、大量のアウトプットをし続けられるから天才なのだ。226：大量のガラクタを生み出すのが戦略の前提アインシュタインの残した300の論文のほとんどは、現在、誰からも参照されていない。バッハの残した1000以上の曲のうち、今日でもコンサートで演奏されているのは定番の30~50曲程度。エジソンに至っては取得した1000以上の特許のうち、実際のビジネスに繋がったものは10~20程度。＊歴史に残る天才であっても、傑作といわれるようなアウトプットは全体の数％程度でしかない。
256：最もリターンの期間が長いのがリベラルアーツ私たち人間にとって、長らく有効であったものほど、将来にわたって長らく有効なものである確率が高い。人類が残してきた「古典」や「名作」と呼ばれるもの、いわゆるリベラルアーツに親しむことが、実はもっともNPVの大きい時間資本の使い方。
2025年09月04日
RBV「手に入らない資源や能力」
山口氏が勧めているのは、「得意なこと」を追求するのではなく、好きで「長く続けられること」。孔子も2500年前に同じことを言っている。
1911年アムンゼンとスコットの南極点到達レースでは、民間の冒険家で「北極点に行くため」として資金を集めたアムンゼンが、ノルウェーを出発後に行く先を変更。イギリス軍の士官として万全の装備で臨んだスコットに勝ったのは、「内発的動機」と「外発的動機」の違いからではないかという。176：孔子「論語」これを知るものはこれを好むものに如かず。これを好むものはこれを楽しむものに如かず。
182：アムンゼンが「内発的動機＝興味や好奇心や向上心など、内面から湧き出る欲求によって喚起された動機」で動いていたのに対して、スコットは「外発的動機＝金銭や地位や名誉など、外側から与えられた刺激によって喚起された動機」で動いていた。
経営戦略で言われるResource Based View（RBV）。どんな経営資源を持っているかで勝負が決まるという考え方だが、他社では「手に入らない資源や能力」が大事であることは言うまでもない。
また、「強みは何か」は危険な問いだという。それは自己評価は高くなりがちで、客観性が無いから。・有用性・希少性・模倣困難性・代替不能性
190：コーネル大学心理学教授David Dining/Justin Kruger「ダイニング＝クルーガー効果」「成績の悪い生徒ほど自己評価が高い一方で、成績上位の生徒は自己評価が控えめ」
2025年09月03日
ポジショニング
110：私たちの人生は「膨大な仮説の集合体」としてまずはスタートし、その仮説をひとつひとつ検証し、破棄・修正することでしか前に進んで行けない。
つまり、適応戦略が必要なのだが、それにしても、仮説を持っているのといないのでは、適応が大きく違う。仮説を持っていないと、自分の考えが間違ったかどうかが分からないので、修正ができない。
これは今になって実感。若いときには、「どこにいても自分の力で何とかなる」という自惚れがあったが、世の流れに逆らうのは天才でも難しい。早い話、同じビジネススクールを出ても（一発勝負の入試で、卒業時の品質も保証できない日本の大学はそもそも玉石混交なので話が成り立たない）、どの国で働いたか、どの業界で働いたか、で大きな差が出ている。122：ポジショニング「しかるべき時に、しかるべき場所にいること」が重要。
1991年の卒業だったので、世はまさに「冷戦の終わり」と「新自由主義」。「米国一強」が確定し、卒業後米国および欧州で金融の中心であったシティで働いた同級生は皆ブラックカードだ。その間、バブル崩壊の中で、雇用維持を最優先にした日本はずっとデフレ経済に苦しみ、賃金は全く上がらなかった。
日本経済の強さに対する「ジャパン・バッシング」から、台頭する中国の陰で存在感を失い「ジャパン・パッシング」へ。
141：AIによる代替への３つの対抗策�＼飢鬚里△觧纏�を避ける��感性的・感情的な知性を高める�Ｌ簑蠅鯆鶺�する力を高める
著者の結論は、「教養」しかない。教養つまり、「リベラルアーツ＝自由に思考するための技術」である。
2025年09月02日
「タイミングの問題」
人生を失敗できない「プロジェクト」と考えるなら、そもそも何をもって人生が「成功」なのかをまず決めないといけない。山口氏は、以下の3要素が揃うことが「成功」なのではないかという。
これには概ね賛成。要するに、社会に役立てる能力を磨き、そのことで社会的信用を得て、経済的安定を得ること。恋愛はどうなんだ？という話もあるが、そこはこの本の対象外。64：３つの資本とウェルビーイングの関係自己効力感→人的資本（知識・スキル・経験等）社会的つながり→社会資本（信用・評判・つながり）経済的安定→金融資本（現金・資産）
これは戦略論として本質的。例えば、「背水の陣」の語源となった前漢時代の戦い。劉邦の部下であった韓信将軍はたった1万の兵で、20万の兵を抱える趙を討つように命じられる。城で迎え撃つ趙に対して、韓信はわざと川の前に陣を敷く。これは退路がないので「孫氏の兵法」でダメな戦術と言われている。86：長期の合理優れた戦略とはしばしば「短期的に見ると不合理に見えるのに、長期的に見ると合理的」であり、「部分で見ると不合理に見えるのに、全体で見ると合理的」。
これを見た趙軍は、「兵法も知らない素人将軍」と判断。数でも勝っているので、これを一気に殲滅しようと城を出て打って出る。退却すると溺れ死んでしまう韓信軍は奮戦し、その間に、城の後ろに隠れていた２千の騎兵隊が城に入って占領。騎兵隊が掲げた漢軍の赤い幟を見て、趙軍は崩れてしまう。正に、この策は、「長期の合理」あるいは「部分では不合理だが、全体では合理的」であった。
似たようなことは、成長市場にどう「乗るか」にも言える。早すぎれば、技術の確立や市場の立ち上がりが困難で、遅すぎれば、競合が多くなり、経営資産が多いところが有利になる。そのタイミングをうまくとらえるには、「微分のレンズ」で社会の変化を捉えることだという。変化率を見て、コア人材がどう動いているかを注視する。100：成長市場が「爆発的に成長している期間」は「一瞬」誰もが「時期尚早である」と考えるタイミングで大胆な意思決定をしなければ、キャズム前後の「一瞬」を捉えてアドヴァンテージを得ることはできない。
107：YouTube「タイミングの問題」回線スピードの向上や録画品質の向上といった環境面での変化が起きたことで、それまで非常にスジの悪いビジネスだった動画共有プラットフォームが、ある時期から持続可能なビジネスに変わった。
大成功したYouTubeは実は、創業時にVCから200回以上も出資の要請を断られている。それ以前に登場した動画共有プラットフォームはことごとく失敗していたからだ。だが、YouTube創業時には、回線スピードや録画品質の向上と言った事業環境の変化が起きていた。
2025年09月01日
「人生というプロジェクト」
という本。著者は、はじめに：ライフ・マネジメント・ストラテジー経営戦略論をはじめとした経営学のさまざまな知見を、個人の「人生というプロジェクト」に活用するためのガイドを提供する。
大学で哲学と美術史を研究したのちに広告代理店の電通に入社し、20代に宣伝・広告のプランニングに携わった後、外資系コンサルティング（BCG）の世界に身を移し、以後は20年にわたって、顧客企業の経営戦略の策定、企業変革の支援、組織開発・経営人材育成等のプロジェクトに携わってきた。
という有名な経営コンサルタントだ。
マネジメントの語源は、「思い通りにならないものを、とにかくなんとかする」。「Will to manage＝経営する意思」こそ、経営者に求められる資質の根幹と言える。これを言ったのは、シカゴの一会計事務所にすぎなかったマッキンゼーを世界的なコンサルティングファームへと変貌させた中興の祖マーヴィン・バウアーらしい。
マネジメントの語源は、「思い通りにならないものを、とにかくなんとかする」。「Will to manage＝経営する意思」こそ、経営者に求められる資質の根幹と言える。これを言ったのは、シカゴの一会計事務所にすぎなかったマッキンゼーを世界的なコンサルティングファームへと変貌させた中興の祖マーヴィン・バウアーらしい。
23：難しい時代の到来
「登山の社会」→安定した低成長「高原の社会」
�，�つてのような高度成長社会に戻す？
�▲璽軅�長社会に合わせて制度や仕組みを再構築する
25：「つなぎ目の社会」に怒る精神の後退と自己の喪失
社会のステージが古い段階から次の段階へと移行する「つなぎ目の社会」において、それまでの規範や制度のアップデートが追い付かず、「規範の解体＝アノミー」が発生する（社会学の開祖の一人エミール・デュルケーム）
26：「居場所の選択」で人生が全く変わる社会
「ポジショニング」が人生に大きな影響を及ぼす。
37：人生というプロジェクト
私たちは自分自身の「人生というプロジェクト」の唯一の責任者であり、リーダー。そのような立場にある私たちが、自己のわがままに忠実になった「発言」し、「離脱」することによって、最終的には組織や社会にとってもより良い状態が生まれる。
38：二極化する人生論・キャリア論
「マキャベリ的人生論」
残酷な社会ゲームを冷徹に戦って生き残り、経済的・社会的成功を手に入れろ
「ルソー的人生論」
経済的・社会的成功の虚像に囚われず、自分らしく生きて本当の豊かさを手に入れろ
＊どっちもダメ！
41：「二律背反」を壊すのがイノベーション
「アリストテレス的人生論」
自分らしいと思える人生を歩み、経済的・社会的にも安定した人生を送る。
