2025年03月
2025年03月31日
生成AIを武器にする
毎年出ているらしいが、自分で読んだのは初めて。10の経営論点に分けて、状況と論点が整理されている。なるほど、毎年11月に出版される本書を手に、「年末年始に頭を整理する」のに好評というのもうなずける。
第一章は「生成AIを武器にする」。事業を変革する「大玉案件」が成功の鍵だという。
22：AIが仕事に与える影響「不安を感じる」（BCG調査2024）
日本が最多の28%（米23%、英18%、仏17%、独16%、インド13%）
29：小規模言語モデル（SLM）⇔LLM
国内ではSakana AIが日本語など特定言語に対応してSLM開発。
31：データが競争優位性を決める
自社が持つデータを活用して、いかに高度な手を打っていくか。
33：AI導入・活用・の前提となる黄金比
AIアルゴリズム 10%
テクノロジー 20%
ビジネス変革 70%
2025年03月30日
現代の日本の病的な「専門家信仰」
後半の６ジャンル。音楽や文学、詩まで入っているのが興味深い。こうした教養があってこそ、「専門家信仰」を超えられる。
272：音楽〜全体構想の良し悪しを直感的に判断できる力を高める
「良い戦略は、全体として美しい音楽のような調和を持っている」（大前研一）
277：脳科学〜人間がしばしば起こすエラーを正確に理解・予測する
人間の「不合理さ」には一定のパターンがある。
282：文学〜「実のある嘘」から人間性を深く理解する
�，茲蠅茲�世界や人間を理解するための情報
�◆崋造里△覬海鮓�抜けるようになる」（村上春樹）
287：詩〜レトリックの引き出しを増やして「言葉の力」を身につける
歴史に名を残したリーダーは巧みなメタファーでビジョンを伝えた。
293：宗教〜特定の組織や個人の思考・行動パターンを理解する
イノベーションがプロテスタントの国から生れたのは偶然ではない。
イノベーションが起こりやすい組織は、全般に「上下間の風通し」がいい。
298：自然科学〜新たな発見や仮説がビジネスの問題解決の糸口になる
昆虫の研究が組織の生産性の洞察へとつながる。
おわりにかえて：現代の日本の病的な「専門家信仰」
組織内の若手や非専門家ら部外者の意見や提案を、専門家の印籠のもとに「素人の戯言」と一蹴し、結果として世界の進化を阻むことに少なくない貢献をしている。
2025年03月29日
「知的戦闘力を高める」教養
ここから11ジャンルにおける読むべき名著が紹介されている。各ジャンルごとに9冊なので、これを全部読むと99冊
誰もが来たことのある古典が多いのだが、古典過ぎて読んだことがないものが多い
誰もが来たことのある古典が多いのだが、古典過ぎて読んだことがないものが多い262：経営学〜思考プロセスを追体験しながらビジネスの基本言語を学ぶ簡易版の解説書をいくら読んでも経営のリタラシーは高まらない。古典・原典をじっくり読み、そこに展開されている思考プロセスを筆者と同じように追体験することで「経営の考え方」「ビジネスを考えるツボ」を皮膚感覚で学び取っていくということにこそ意味がある。
245：歴史〜人類のらせん状の発展から未来を予測する力を身につける
�〔椶料阿乃�きていることを正確に理解することができる
�¬ね茲鰺渋�する能力が高まる（弁証法）
251：経済学〜競争に勝ち続けるためにマーケットの原理を知る
�．咼献優垢箸いΕ押璽爐隆靄椒襦璽襪魑�定している
ビジネスにおける競争のルールを規定しているのは市場。
�◆峅礎諭廚箸いΤ鞠阿遼楴�
257：哲学〜いまのルールに疑問を感じ、自分の頭で考える力を鍛える
欧米のエリート養成機関では18世紀以来、哲学は歴史と並んで、もっとも重要視されてきた。
�，海寮こΔ呂匹里茲Δ砲靴得�り立っているのか？
�△修寮こΔ涼罎如∋笋燭舛呂匹里茲Δ砲靴得犬�ていくべきなのか？
267：心理学〜人間がどう感じ、考え、行動するかという「不合理性」を知る
「人間のすべての知識のなかでもっとも有用でありながらもっとも進んでいないものは、人間に関する知識であるように私には思われる」（ルソー『人間不平等起源論』）
2025年03月28日
教養＝「知の武器」
第5章は「なぜ教養が『知の武器』になるのか？」。
ところで「教養」の原語はLiberal Arts。つまり「自由の技術」という意味らしい。これは、「真理はあなたを自由にする」という新約聖書ヨハネ福音書第8章32節に語源がある（ｐ230ｐ）。
ところで「教養」の原語はLiberal Arts。つまり「自由の技術」という意味らしい。これは、「真理はあなたを自由にする」という新約聖書ヨハネ福音書第8章32節に語源がある（ｐ230ｐ）。
198：本を「ノート」だと考えてみる
「本はすでにテキストが入ったノートである」松岡正剛
212：転記の際は、ビジネスや実生活にとっての「示唆」を書き出す
�〔滅鬚�った「事実」
�▲咼献優垢篌太験茲紡个垢襦崋┷供�
�６饌療�な「行動」の仮説
240：パラダイムシフト
「その領域に入って日が浅いか、あるいはとても若いか」のどちらか（トーマス・クーン『科学革命の構造』）
243：現在の脚本を離れて、新しい世界の脚本を描くのに必要な技術
大根役者が、大根役者である自分に失望せず、この世界の中に居残りながら決して耽落もせず、いかに内部から世界をより良い世界に変えていけるか。
2025年03月27日
生産性の高いインプットの技法
本論第2章は「生産性の高いインプットの技法」。前章で、自分がどこで勝負するかの「戦略」の重要性を説いているが、では、その長期戦略に沿って体系的にインプットしていくべきかというと、それは無理だという。
特に、若いうちは興味のままに「短期目線」であれこれ読んで、あれこれやって、その中から「これじゃないか」というものを探す時期だ。社会的責任は最小限だし、機会費用も安くて済む。95：インプットは「短期目線」でいい長期目線の読書は、ことリベラルアーツに関連する読書には必要ない。結局のところキャリアは予測できないし、するべきでもない。
かつて、米Business Week誌が、スティーブ・ジョブズに、「あなたはどうやってイノベーションを体系化したのですか？」と聞いたことがあるという。その時、ジョブズは間髪入れず、こう答えたそうだ。「そんなことはしちゃだめだ！」
これは、あの有名な"Connecting the dots"の話そのまま。
104：「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎ合わせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです。だから、我々はいまやっていることがいずれ人生のどこかでつながって実を結ぶだろうと信じるしかない」スティーブ・ジョブズ＠Stanford
2025年03月26日
戦う武器をどう集めるか？
本論第一章は「戦う武器をどう集めるか？」。まずは自分がどんな戦いをするか決めなければ、どんな武器が必要かは分からない。そこで「戦略」が必要なのだが、「戦略」は荒い方向性だけでいい、という。
45：細かいものである必要はない。むしろ精緻にしない方がいい。
63：戦略の設定は「テーマが主、ジャンルが従」
テーマとは、自分が追求したい「論点」のこと。
65：ショーペンハウエル『読書について』
読書は、他人にものを考えてもらうことである。本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。
74：ジャンル選びは「自分の持っているもの」を起点に考える
キャリア戦略にも関わることだが、多くの人は「自分が持っているもの」を活かそうとせず、「自分が欲しいもの」を追求してしまう。でも、そうやって追求したものが、その人のユニークな強みになるかというと、これはもうまったくならない。
2025年03月25日
知的戦闘力を高める
という著者。ちなみに、広告代理店とは電通で、その後のコンサルティングファームというのはBCGだ。通常、このパターンだと電通とBCGの間にMBAを取っておく人が多いが、山口氏の場合は、そのまま転職している。はじめに：20代を広告代理店で、30代を外資系戦略コンサルティングファームで、40代を組織・人材を専門領域とするコンサルティングファームで働いたのちに独立し、現在はフリーの立場で独立研究者・著作家・パブリックスピーカーとして活動しています。さて、そんな仕事人生を歩んでいる私ですが、これらの仕事をするために一般的に必要とされている科目であるマーケティングや経営学、あるいは組織論や心理学について、学校で正式に学んだことは、実は一度もありません。つまり、すべて独学です。
氏に拠れば、世に独学を教える本は数多くあれど、そのほとんどが�△痢屮ぅ鵐廛奪箸鬚匹Ω�率的にするか」に偏っているという。しかし、独学を「知的戦闘力の向上」が目的だとすれば、�＼鑪�なしには��何をインプットするかが決まらない。戦略とは、自分の強みを生かして、誰を相手にどこを戦場に選ぶかだ。独学を「システム」として捉える�＼鑪��▲ぅ鵐廛奪��Ｃ蠑櫺宗�構造化�ぅ好肇奪�その内容が高い歩留まりで整理・ストックされ、状況に応じて自在に引き出して使うことができなければ、「知的戦闘力の向上」は果たせない。
いまこそ求められる「知的な革命家」学問を学んだ末に「社会をより良い場所にしていく」ための知的武器が手に入るかというと、まったくそうではない。むしろ、現在のシステムが抱えている問題をより強固に固定することになってしまう。
いま「独学」が必要な４つの理由
�｜亮韻良堽瓢饂魂�
学校で学んだ知識は急速寺時代遅れになる。
�∋唆半�発の時代
破壊的イノベーション。
��人生三毛作
労働期間は長くなるのに企業の「旬の寿命」は短くなる。企業や事業の「旬の期間」というのはざっくり言って10年程度。
「旬の企業」のうち、10年後にも旬を維持できているのはそのうちの約半数であり、さらに20年後になると1割程度の企業しか残れない。（日経ビジネスｘ帝国データバンク調査）
�ぅ�ロスオーバー人材
２つの領域を横断・結合できる知識が必要となる。
現在の高等教育機関のほとんどは「専門家の育成」を前提にしてカリキュラムを組んでいる→世界中の組織で「領域横断型の人材が足りない」
2025年03月24日
権力争い
いじめは何も日本の専売特許ではない。アメリカでもよくあるのだが（映画にもときどき出てくる）、職場での権力争いに絡むいじめはむしろ競争の激しいアメリカならでは。
275：サンドラはNYC検視局の弁護士で、愛想の良い50代の女性だった。つい先日、彼女の愚痴を聞いたばかりだった。職場で仲間外れにされるとか、みんなが集まる時に声をかけてもらえないと言っていた。
そのサンドラ弁護士は、9.11後の慰労クルーズの日を選んで、自殺する。それも検視局前の公道で。彼女の最後の抗議だった。
それも乗り越え、著者のブッチャーは管理職に昇進する。「でもなんでパーティの日を選んだんだ？まるでパーティをぶち壊そうとしているみたいじゃないか」「なんでこんなところでやったんだよ？検視局前の道でやるなんて。こんな人目に付く場所で」
286：大勢の人が私の仕事ぶりを評価してくれた。彼らは労働条件が改善したことや、昇進の機会が増えたことを認めてくれた。だが敵もできた。たとえばある部署のトップは無能だったが、公務員だったために解雇できなかった。そこで彼女を事務職に移動させた（ちなみに給料は前職と同じ10万ドルだ）。（中略）退職に値したが、そこまで厳しく罰しなくてもいいとわたしは考えた。そして彼女と降格されたもう一人の職員は、物議を醸しだすような出来事が起きるたびに、『ポスト』紙に電話をかけて、わたしに関する根も葉もない噂話を売り込んだ。
公務員の立場を利用して、仕事ができずに居座るというのは世界共通らしい。優秀な管理職となったブッチャーは、さらにDNA研究所の暫定所長を任される。
案の定、縄張りに入られたDNA研究所の反発は凄まじく、ブッチャーは「内部告発」で公聴会の場に引っ張り出される。287：研究所の所長は、数十人のスタッフに残業させて、かの技術者が扱った800個以上のキットを再検査することにした。その結果、誤って陰性と判断されたケースがさらに見つかった。証拠からは新たに27人のDNAサンプルが見つかった。証拠が他の証拠と混同されたケースや、不適切な場所に置かれたケースは19件あった。（中略）局長は所長を停職処分にし、わたしに暫定的な所長として働いてくれないかと尋ねた。科学者でもない職員が、国内最大規模のDNA研究所を運営するのは異例で、物議を醸すものだった。だがハーシュは、研究所に調査官を入れて問題を深く掘り下げようと決めていた。
294：公聴会は魔女狩りであり、茶番であり、子供じみた権力の誇示だった。おまけにビュッフェでもあった。事実、わたしが尋問を受けている間に委員会は昼食を取り、わたしにはわざと昼食を出してくれなかった。
そんなある日、ブッチャーはうつ病になる。そして、検死局の職を辞すことになる。
298：うつ病はどんどん悪化して、やがてすべての瞬間がもの悲しい灰色に染まり、喜びがあとかたもなく消えてしまった。何をやっても楽しいと思えなくなった。
2025年03月23日
自殺の名所
投身自殺の名所マリオット・マーキス（ミッドタウン）。何十年にもわたり幾人となく飛び降りているし、しかも、ホテル吹き抜けの中をロビーまで落ちるので、何千人という宿泊客が目撃してきたはずだ。しかし、未だに通常営業しているというのは、やはり欧米人の死体に対する考え方の違いを感じる。
234：ホテルのロビーは広くて高い吹き抜けになっていて、ガラス張りのエレベーターと屋内バルコニーにぐるりと囲まれていた。（中略）マリオット・マーキスで投身自殺した人の身体は、バルコニーの手すりやエレベーターシャフトにぶつかったり、はね返ったりしてあちこちが砕けてから、衝撃で怯えている客の足下に落下することが多い。
225：職務記述書
法医学調査官の理想的な候補者は、どんな恐怖を目の当たりにしても、傷つくことなく現実世界を動き回れる能力を備えている人です。
226：ウォール街にある職場の25階から、歴史あるトリニティ教会の墓地へと飛び降りた男性
（検死中）見世物を隠されたことに不満を抱くブーイング。
228：カトリック教会は1983年まで自殺したものを神聖な教会の墓地に埋葬するのを禁じた
commit suicide → die by suicide
suicide attempt → unsuccessful suicide
2025年03月22日
毎日殺人事件
NYCでは毎日殺人事件が起こる。死体調査官の仕事は、毎日遺体を見ることだ。
210：歯を磨く、コーヒーとマフィンを買う、惨殺された遺体を見る、新聞を読む、射殺死体を見に行く。殺人は日常茶飯事になり、周囲の人はみな殺すか殺されるかのどちらかだと思うようになった。
ドラッグがあふれるようになって以来、ドラッグビジネスに絡む殺人が増え、それは自ら手を下すのではなく、殺人のプロを雇うため、解決が難しくなったという。
中には医師がその立場を利用して金儲けのために殺人を起こすこともある。216：ビジネスがらみの殺人これまでの事件では、殺人者と被害者が顔見知りで個人的なつながりもあった。加害者が傷ついたか、怒ったか、強欲になったか、頭がおかしくなったために殺人が起きた。被害者と加害者との間にはつながりがあり、そのおかげで事件を解決しやすかった。市内でドラッグがあふれるようになって以来、ビジネスの戦略として人を殺すようになり、殺人事件の発生率が急激に上がった。殺人が職業化されて、知らない人に殺しを依頼するようになった。私情はない。あくまでビジネスとして。
223：ジェームズ・ワット医師「医療ネグレクト」1972年、彼は職業倫理に背く行為をおこなったとして、CA州の医師免許を剝奪された。さらに他の州でも、患者に違法にLSDを使用した罪で起訴されている。にもかかわらず、彼がNY州の正式な医師免許を手にしたのは、各州が独自に医師会を運営しているからだ。やぶ医者は、患者を傷つけるか殺すたびに、他の州で医師免許を取って開業できるのだ。
2025年03月21日
Lower East Side
NYには何度か行ったけど、マンハッタンだけ。次回は他の地域にも行ってみたい。
142：Lower East Sideとても若い人たち、とても老いた人たち、とても貧しい人たちが住むエリア。（中略）東欧からやってきた移民たちの名残が今も残っている。その近くのチャイナタウンでは、アメリカに来てまだ日が浅い移民たちが、一つの部屋に8人で暮らし、四方の壁に二段ベッドを並べていた。
次に紹介されたいたのが、1990年代にイースト・ハーレムで起こった暴行殺人事件。
実は、彼女は最初の犠牲者ではなく、7件もの同様の事件が起こっていたが、それが同一犯であるとは分からなかった。レイプして殺されるのはイースト・ハーレムでは日常茶飯事なので、注目されなかったのだ。179：ジョハリス・カストロコンピューター・サイエンスを専攻するその19歳の大学生は家族の自慢だった。（中略）検死の結果、ジョハリスはレイプされ、首を絞められたあと、火をつけられたことがわかった。火傷は生前のものと死後のものの両方があり、つまりジョハリスは生きている時に火を放たれたということだ。
181：1991~98年にかけて、イースト・ハーレムの同じ地域で同じような暴行事件が少なくとも7件あり、そのすべてが一人の残忍な男と関係していた。被害者はみな前途有望な若い少女たちで、全員が乱暴にレイプされ、3人が残酷に殺されて無造作に捨てられた。なぜそれが新聞にされなかったのか？なぜ市民に警戒するよう注意を呼び掛けるか、大規模な捜査が必要だとの声が上がらなかったのか？（中略）被害者たちの母親や父親は近所にポスターを貼って協力を求めたが、何も起きなかった。（中略）モンスターはまだ野放しの状態だった。
同一犯と分からなかったのは、彼が名前を変えていたから。米国では社会保険ナンバーで身分確認できるはずだが？
182：アーロン・キー最初の事件から8年後の1999年、警察はようやく似顔絵付きの指名手配ポスターを貼り、11000ドルという情けないほどわずかな賞金を提示した。（中略）最初の殺人事件が起きた1991年に彼は取調べを受けたが、当時は別名を名乗っていた。（中略）この小さな違いのせいで、性犯罪者が公営住宅の肥沃な狩り場を自由に歩きまわることができた。
2025年03月20日
無謀な行為による死亡
110：NYCでは毎年地下鉄サーフィンで死亡または負傷する事件が400件ほど報告されている。
という「地下鉄サーフィン」（動画）。走っている地下鉄の屋根に乗って、スリルを味わうと同時にSNSでバズらせることを目的にしている。
バカじゃないか
と思うのが普通の人だが、米駐在中も、「やはりアメリカ人はリスク許容度が違う」と思ったことがしばしば。遺伝的にも違うそうで、アメリカ人には「冒険遺伝子」が多いそうだ。故郷でどれだけ困っていたか知らないが、リスク覚悟で海を渡った人たちの子孫なのだから、当然だろう。
バカじゃないか
と思うのが普通の人だが、米駐在中も、「やはりアメリカ人はリスク許容度が違う」と思ったことがしばしば。遺伝的にも違うそうで、アメリカ人には「冒険遺伝子」が多いそうだ。故郷でどれだけ困っていたか知らないが、リスク覚悟で海を渡った人たちの子孫なのだから、当然だろう。17世紀、アメリカ＝新世界はヨーロッパ人にとって「空想の場所」であり、「熱病が生み出す夢、神話、楽しい妄想、幻想の場所」だった。新世界を目指す者たちは「スリルと希望に満ちたフィクションを信じるあまり、この夢が叶えられなければ死ぬ覚悟で、友人、家族、仕事、分別、イングランド、既知の世界など、あらゆるものを捨てて旅に出た。そして大半が本当に死んだ」。（橘玲）
68：アメリカでは毎年6000件もの殺害事件が未解決
プロファイラーに作業をしてもらうための材料を提供するのがわたしの仕事。文章は綿密に、監察は鋭く。被害者の手の置き方の特徴や腹部に刺さった刃物の角度をきちんと撮らないと、法執行機関が凶悪な犯罪者を特定して逮捕するのに必要な情報を入手できなくなる恐れがある。
71：マンハッタンで二人目の女性死体調査官
一人目は一ヶ月ちょっとで辞めてしまった。
99：無謀な行為による死亡（death by misadventure）
死亡者は19歳の少年。土曜日に初めて銃を購入。日曜日の朝、彼はイースト・ヒューストン通りでその拳銃を友人たちに見せびらかした。目撃者たちの話によると、彼は銃の撃鉄を起こして、カウボーイのようにくるくる回した。すると指から拳銃が抜け落ちて飛んだ。たまたま撃鉄が道路に当たって発砲し、巡り巡って彼の眉間に命中した。つまり彼の最初の一発は、ベストショットにしてラストショットでもあったということです。
104：人間は快楽のためにとんでもないことをやって、翌日はまじめくさった顔で仕事へ行く
異常で危険な行為を試した挙句に亡くなった人を何百人も見たあと、わたしはあらゆる人々を疑いの目で見るようになった。
2025年03月18日
法医学調査官
各国の異状死における解剖率は、以下の通り。 日本 11％ アメリカ 12.5％ イギリス 45.8％ フィンランド72.8％ スェーデン 89.1％
ここに出ている統計では、日本が一番低い。本書にある通り、検死専門の検死局を持つアメリカが日本並みに低いのは驚くばかり。それだけ殺人が多いということだ。
46：車に乗る時にシートベルトで肩と腰を固定することが義務付けられたのは、監察医が書いた車の衝突事故による死者や負傷者の報告書がデータとして取り上げられたおかげ。
47：NY Post「地獄の天使」
入局間もない頃に見学した検死の一つは、中年男にレイプされ、絞殺されてゴミ箱に捨てられていた8歳の女児。男は、一緒にハイになろうと、女児の母親に50ドルを渡した。ところが母親がそのお金を持ち逃げしたため、男は激怒して彼女の娘を連れ去った。
56：タトゥー
目尻に一滴の涙のタトゥーがありますが、これは人を殺したか、あるいはギャング仲間の死を悼んで入れたものでしょう。胸にある５つのギザギザがついた王冠のタトゥーからして、所属しているギャング団は＜ラテン・キングズ＞でしょう。
63：NYC検視局はNYPDと緊密に連携していたが、どちらも独立した機関
検視局「正義に仕える化学部隊」
遺体は法医学調査官の管轄で、現場は警察の管轄。
2025年03月17日
NY死体調査官が見た5000の死
NYCで死体調査官をやっていた女性が見た5000人の死にざまを書いた本。米国では日本と違い、死因を調査するのは検死局で、事件を調査するのは警察と担当が分かれているらしい。日本では事件の一部として死因があり、どちらも警察の管轄。
そのせいか、法医解剖医は不足状態で、全国で150人しかいない。その結果、異常死でも司法解剖されるのは一部で、解剖率は先進国最低だ（動画）。
そのせいか、法医解剖医は不足状態で、全国で150人しかいない。その結果、異常死でも司法解剖されるのは一部で、解剖率は先進国最低だ（動画）。
1 縊死した男の怒り
9：NYC検死局（OCME）の法医学調査官（MLI）として、わたしは死亡事故や自殺や殺人などが起きた現場を詳しく調査して、死者がなぜ、そしてどうやって死に至ったのかを突き止める。
11：一度死者のにおいを知ってしまうと、花屋にいても嗅ぎわけられるようになる。にんにく入りのストロベリーミルクシェイクみたいな、どことなく苦みのある奇妙にあまいにおいだ。この仕事に就いて数週間も経つ頃には、NYのどのブロックを歩いていても、腐乱死体がある建物を嗅ぎわけられるようになった。
14：自ら人生を絶つ理由は深いものだ。自殺の引き金となったと思われる出来事もわからない場合が多い。
16：病理学者のスケジュールはきっちりと組まれていて、検死、薬毒物検査、組織検査、脳解剖などで多忙を極める。言うまでもなく、事務作業も膨大にある。
2025年03月16日
谷崎潤一郎賞受賞作
「ごく平凡な中年夫婦が、船旅の途中で海難事故に遭い、どことも知れぬ無人島に流れ着く。やがてそこに（中略）23人の青年たちが（中略）やはり漂流してやってくる。そして更に、ホンコンと呼ばれる謎の中国人男性が11人、ボートで島に置き去りにされてゆく。夫婦の妻である『清子』以外は、全員が男性である。彼ら島をトウキョウと名付け、それぞれに生活を始める」（解説）
という話。当然、主人公は、32人中の島民中たった一人の女である清子。その設定が絶妙。
12：今年で46歳になったが、髪が薄くなった以外、衰えはない。そんな自分を巡って、どれほどの死闘が繰り広げられたか。清子はまたしても笑いを浮かべた。人が死んだり、怪我したり。これほど男に焦がれられた女が世界に何人いるだろう。
「忘れかけていた自らの『女』をいやがうえにも意識させられることになった彼女は、セックスを武器に、トウキョウの女帝として君臨していく」（解説）。そこには、軟な現代日本の揶揄も入っている。
18：トウキョウ対抗したくとも行動が付いていかない。というか、やり方がわからないのだった。その点、ホンコンにはヤンというリーダーがおり、誰もがヤンの命令に従って動いていた。11人の男たちはヤンを頂点とした、サバイバルのための軍隊だった。
予算が倍増される自衛隊だが、本当に抑止力になっているのか。抑止力とは「実際に戦ったら、負けるか、負けないまでも相当な損害を与えられる」と相手が信じることなので、正直、不安。
2025年03月15日
亀田総合病院
2000年初版の古い本だが、最近どこかで誰かが記事を書いていたので、読んでみる。同年に映画化もされている。
主人公はバブル経済崩壊で会社を潰してしまった元不動産会社社長。バブル期には羽振りが良く、運転手付きのベンツで、友達を引き連れ銀座で豪遊していた。それが、倒産後、クモの子を散らすように人は寄り付かなくなり、数百万円はただ酒を飲んでいたであろう友達も、そんなことは忘れたかのように振る舞う。
そんな時、心臓病を患う一人暮らしの母親が入院。主治医は、心臓の3本の冠動脈すべてが動脈硬化で狭窄しており、手術も無理と匙を投げる。しかし、「この人なら手術できるかも」と紹介されたのが、千葉の「鴨浦」にあるという「サン・マルコ記念病院」に勤める米国帰りの外科医。もちろん、架空の病院だが、勝浦の亀田総合病院がモデルであることは明らか。
107：「大学病院ではね、自分の考えを述べて教授の権威や病院のアイデンティティーを脅かしてはならない」
168：俺はろくでなしだけど、ひとでなしじゃねえんだ。
267：心臓から送り出される血液は1分間に約5リットル。1日に約7200リットル。めかたにすると7.5トン。
2025年03月14日
引退のタイミング
往年の名女優・高峰秀子。文筆家としても有名で、数々の名著を残している。楠木教授は高峰秀子好きのようで、本書にもあれこれ引用されている。
175：畑村洋太郎『回復力 失敗からの復活』
失敗直後はエネルギーが抜ける一方だが、エネルギーが戻ってくると自然と困難に立ち向かえるように人間はできている。エネルギーが抜けている状態の時にじたばたするのが一番よくない。遠回りのようでも、エネルギーが戻ってくるのをひたすら待つのが最善の策。
186：「言ってわかる人には言わないでもわかる。言わなきゃわからない人には言ってもわからない」（高峰秀子）
187：「美しい景色を探すな。景色の中に美しいものを見つけるんだ」（ゴッホ）
最先端な事象ではなく、ありふれた景色の中に本質や論理を見つけ出す。
232：引退のタイミングは自分で決めるまでもなく、お客さまが決めて下さる
「引退です、なんていうのはおこがましい。そのうち誰からも必要とされなくなるんだから、そうしたら煙のように消えてなくなればいいじゃない」（高峰秀子）
2025年03月13日
「品の良さ」
「欲望に対する速度が遅い」
立川談志は「品の良さ」をこう定義したらしい。その定義に楠木教授は感心したという。
152：品が良いということは、お釈迦様のように世俗的な欲望から解脱してしまうことではない。普通に良くはある。ただそれをなりふり構わず取りに行かない。欲望が「ない」のではなく、あくまでも欲望に対する速度が「遅い」ということ。
AI時代、こうなりそう。
165：これからの世の中で、もっとも価値がありそうなのは、頭の認知能力よりも他者に対する共感や関係構築などの社会的能力。
さて、コロナから正常化する中で障害になっているリモートワーク。一度自宅で働くことの便利さに慣れてしまうと、なかなか出勤するのにはヨイショがいる。アメリカの調査では、このままリモートワークを続けられるなら、「25%給与カット」があってもそちらを選ぶ人が多いという。
166：仕事にとって最も大切なもの人間洞察。リモートワークは、直接・間接、意識的・無意識のうちに人間の人間に対する洞察能力を毀損する。
2025年03月12日
サーブ権はこちらにある
「アウトサイドイン⇔インサイドアウト」
「マーケットイン⇔プロダクトアウト」に近いと思うのだが、著者は、経営者の意思を重要視していて、「自分の側からまずサーブを打つべき」だという。経営者は、それも創業者はやりたいことでなければ、結局は続かないからそれは重要だと思う。
その後は、小年期の話。95：サーブ権はこちらにあるアウトサイドイン＝環境動向や今後の見通しをできる限りすべて知っておいて、そのうえで「良いもの」を選択しようインサイドアウト＝直感が先にあって、その後で外部に目を向けるテニスに例えれば、商売はプロダクトとマーケットのラリー。ただし、サーブ権がどちらにあるのか、これが大きい。
だから、就職に当たり、会社勤めはとてもできないと思ったので、大学に残って研究を選んだということ。研究者なら、「一人で仕事ができる。上司も部下もいない」。99：チームワークが大の苦手中学や高校の頃は、運動会とか文化祭がダメ。（中略）みんなで「イエーイ」って盛り上がるだけで、気持ち悪くなる。
143：石上賢介『57歳で婚活したらすごかった』タイプはそれぞれ違っていても、出会った女性たちは例外なく現実的だった。（中略）問題は現実的すぎるとこと。これは民主主義が機能し過ぎるとポピュリズムになるという成り行きと近似。
2025年03月11日
ルーティン
還暦とともに発病し、万一の場合、自分は何を残すのかと考えた。1年後には長年闘病していた母も死んでいよいよ残りの日々を意識した。
70代、80代と言わずとも、既に50代、60代で明確に違う気がする。早ければ、50歳で役職定年となり消化試合みたいに過ごしている人もいれば、いよいよ役員となり経営の前線で働いている人もいる。経営層となると単に売れるとか開発できるだけでなく、会社全体の方向性を考えるのに教養が必要なのは言うまでもない。52：高齢化問題の最終解は教養歳を取っていくといよいよ知性の勝負になる。70代、80代になると人間のレベルに差が出てくる。よく生きている人と、そうでもない人の違いが露骨に表れる。長い人生の中で、一方は好循環を、他方は悪循環を起こすので、どんどん差が開いていく。
81：ファーストリテイリング柳井正さんのルーティン早朝に出社し、過密なスケジュールで次から次へと仕事をし、午後4時にはさっと帰ってしまう。（中略）ある日のこと、帰りがたまたま一緒になり聞いてみた。「毎日夕方にお帰りになって、ご自宅では何をなさっているんですか」「僕の歳になって、朝早くから4時まで集中して働いた後、家に帰ってすることといったら休むこと以外に何があるんですか」
ファーストリテイリングとは、もちろん、ユニクロの親会社。以前は、長時間労働と言われた日本企業だが、当時から日中は結構ゆったりとやっていた。お昼時間はしっかり1時間ある会社が多いし、公園に行けばさぼっている営業マンが寝ていたりする。英米はホワイトカラーは最初から勤務時間は関係なくて成果主義なので、日中は目を三角にして仕事をしていて、ランチなど勤務机でサンドイッチというのがざら。
私もほぼ同じ（笑）。ベッドで本を読まない代わり（布団なので、読めない）、10時に寝て素直に5時に起きる。還暦を過ぎてから明らかに眠りが浅くなっていて、それまでほとんど見なかった夢を毎晩見る。目覚めが悪い💦82：ルーティン9:30にはベッドに入る。ほとんど小学生のような生活。ベッドでしばらく本を読んだりするが、遅くとも11時前には眠る。この歳になると5時には起きてしまう。そこからもうひと踏ん張りして6時まで寝る。
2025年03月10日
ブランディングよりブランデッド
もともと雑誌に連載されていたコラムを再編集したもので、他の著作と違い、筆者の少年時代の話とか日頃の生活ぶりなど、人間・楠木健が垣間見れて面白い。
まずは、「はじめに」で、絶対悲観主義者であるという。
つまり、常に最悪を想定しているから、「落ち込むことはない」ということのようだ。冒頭、ゴーン事件が登場する。悲観主義＝根拠のない楽観主義最初のところで「うまくいく」という前提を持つからこそ、「うまくいかないのではないか」と心配や不安にとらわれ、悲観に陥る。
筆者の興味は、ゴーン氏ではなく、ゴーン氏に対する日本人の反応だったという。32：ゴーン氏その人はタダの「強欲な人」成功→自己中心→全能感→自己合理化→暴走という成り行きの典型。興味深いのは、この犯罪者にして逃亡者を、擁護するどころか肯定的に評価する人が日本に散見されたこと。
要するに、ゴーン事件をネタにもっともらしく「制度が悪い（＝だから自分も不遇だ）」と自分のうっぷん晴らしをしているだけで、確固たる卓見があるわけではない。33：「日本が悪い」ゴーン氏のトンズラについて「日本のセキュリティが甘い」と批判している人は、ちょっと前は「長期勾留は人権無視。日本の司法制度は前時代的」とか言っていた。ゴーン氏のような自己中心的な人物はちょっと目を離すと証拠隠滅や逃亡を図る。リスク回避のために拘束しておく必要がある。だから勾留という制度があるが、いざ逃亡ということになると、今度は裁判所を甘いと批判する。
ごもっとも。なんだか費用かけてPRすれば自然とブランドができるかのような話を聞くが、それは大抵無駄に終わる。語るべき商品やサービスがあって、それを長年に渡る高い品質と時代に合わせた革新ができて初めてブランドとなる。41：ブランディングよりブランデッドブランドというのは、振り返った時にそこにあるもの。毎日の商売の積み重ねでだんだんと信用が形成され、気がついてみるとその総体がブランドになっている。（中略）ブランドはある一時点での顧客認知の大きさではなく、顧客の中に積もり積もった価値の総体。
44：ゴルゴ13は究極のブランデッドの体現者SNSを駆使したブランディングに余念がないゴルゴ13には仕事を頼む気にはならない。
2025年03月09日
新大久保駅事故
2001年1月に新大久保駅で起こった人身事故。線路に転落した男性を助けようと韓国人留学生・李秀賢さんとカメラマンの関根史郎さんが犠牲となった。報道では、異国で犠牲となった韓国人留学生に関心が集中した。たくさんの見舞金が釜山のご両親に届けられ、それを基に日本留学生のための奨学金も作られた。李さんが留学していた日本語学校には寄付で記念公園ができている。
その一方で、関根さんの方は忘れられた感があった。この本を読むまでは。主人公の世之介は、大学卒業後カメラマンになる。そして（作中では代々木駅となっているが）韓国人留学生と共にこの事故で死ぬのである。世之介のモデルが関根さんなのは間違いない（と法政大学・田中総長も書いている）。
韓国紙の特派員も後から調べようとしたが、関根さんについての資料が少なくて、詳しいことは分からなかったという。
関根さんは1953年、神奈川県川阪市に生まれ、大学で写真学を専攻し、写真作家として活動していた。彼の写真集には山や花、子どもが特に好きだと記されている。当時は70代の老母と共に暮らしていた。事故直後、シン（李さんの母親）さんが関根さんの母親に電話をかけ、哀悼の意を伝えたという新聞記事が残っている。
402：大切に育てる
「大切なもの」を与えてやるのではなく、その「大切なもの」を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやること。
414：世之介は代々木駅で起こった事故で亡くなっていた
貧血を起こし線路に落ちた女性を助けようと、韓国人留学生の若者と一緒に自分も線路に飛び降りたのだという。
427：室田の作品は一昨年フィリピンでアキノ大統領が誕生した時のもの
表舞台というよりも、それを支えた民衆にレンズは向けられており、眺めているだけで写真から彼らの怒号が聞こえてきそうなものばかりだった。
2025年03月08日
青春小説の金字塔
長崎出身で市ヶ谷の大学に通う主人公「横道世之介」。当然、長崎出身で法政大学に進学した著者自身をモチーフにしている。
1968年生まれで、上京するのが1987年。私とはちょうど5年違うが、重なっているので、小説のそこかしこに懐かしい描写がある。先日閉鎖されたアルタではその後超長寿番組となる「笑っていいとも！」が毎日制作されていたし、Filofaxのシステム手帳が流行り（私も一度使ってみたが、重いしかさばるので半年で元に戻した）、イタ飯が流行っていた。
7：4月（上京）
若者の目の前には、新宿アルタの大画面がある。振り返れば高層ビルがあり、あっちにもこっちにも地下へ通じる階段がある。人も多い。高校の全校集会より多い。
10：東久留米市
家賃4万円で風呂付且つ鉄筋マンション。
73：先に空いている日を言い合えば早いのに、なぜか互いに分厚い皮のシステム手帳を広げ、スケジュールが埋まっている日を羅列する。
131：カプリチョーザ
人気店らしく、すでに階段まで行列が伸びている。
2025年03月07日
「スキルのデフレ化とセンスのインフレ化」
おわりに：山口周「スキルのデフレ化とセンスのインフレ化」はあらゆるジャンルで進行している。
つまり、スキルは発展途上国の高学歴層がリモートで参入してきたり、AI等でどんどん代替できていくので、価値は下がる一方。逆に、スキルを統合して結果を出すことのできるスキルが求められている。
「スキルとセンス」の問題もまた「部分と全体」の問題と置き換えて整理できる。「部分」なくして「全体」はあり得ない。しかし、いくら「部分」の品質を高めても「全体」としてのシステムのパフォーマンスが向上するとは限らない。むしろ部分への注意が高まることで視野が局所化してしまえば、システム全体としてのパフォーマンスは低下してしまう。
そのような歴史上の人物として挙げられているのが、小林一三。阪急グループの創業者で、鉄道沿線の都市開発を鉄道事業と合わせて行うビジネスモデルを発明した。今に続く宝塚も沿線開発のために考えられたアトラクションだ。
274：いま求められているのは「儲かる仕組み」と「社会課題の解決」を「全体」として構想し、その構想によって人のモチベーションを引き出せるような人物（例）小林一三こういう経営者はスキル教育をいくらやっても排出することは難しい。構想力は数値化することができないし、体系的な教育方法もない。（中略）まずはこの時代における「センスの重要性」を認識すること。
276：ZOZO前社長の前澤友作氏が123億円で落札したジャン＝ミシェル・バスキア
アカデミックな絵画技法を学ばず、ストリートアートをそのままアトリエに持ち込んで世界的な評価を獲得。現在のアートの世界では正統派の絵画スキルよりも人を魅了する一発のコンセプトを生み出せるセンスが重要。
2025年03月06日
アウトサイド・イン vs. インサイド・アウト
234：一流、二流、三流（山口周）
二流の人というのは「自分が二流だということをわかっている」けれども、三流の人は「そういう意識がない」。一流の人になるともう、二流とか三流などという評価自体がどうでもいい。
253：どうやって自分の土俵を見極めるか（楠木）
メタセンス。土俵を外してみて、「ああ、この辺が自分の土俵なんだな」ということがだんだんわかってくる。
262：自己の自由意思（楠木）
アウトサイド・インの人は「どうなるんでしょう？」ということを知りたいけど、インサイド・アウトの人は「それはどうなるかわかんないけど、自分はこうしようと思う」と試行する。意思が先にくるのが仕事ができる人。
堀場雅夫『イヤならやめろ！社員と会社の新しい関係』
仕事というのは自由意思でやるもの。
2025年03月05日
アムンセンとスコットの違い
1909年にアメリカの軍人ロバート・ピアリーが北極点に到達する。イヌイットは何千年も前からイヌぞりで北極圏を行き来していたので、人類最初ではないのだが、彼らは北極点がどこか知らなかったし、日常のことなので記録を残していない。
それはともかく、北極点到達が達成されたことで、世界の関心は南極点一番乗りに移る。これで困ったのが、「北極に行く」と言って資金を集めていたアムンセン。本来なら、「残念ながら一番乗り出来ませんでした」と投資家に資金を返すところだが、アムンセンは「北極点一番乗りはできなかったけど、まだまだやることはある」と言い訳して、予定通り出航。出航してから、「やっぱり南極に行く」と方向を変えている。ちなみに、船員たちも二番煎じの北極点より、一番乗りして歴史に残る可能性がある南極を喜んだらしい。
「憎まれっ子世に憚る」の典型みたいなアムンセン。勝因は最初からイヌぞり一本で、オペレーションをシンプルに絞ったところにあった。198：アムンセンとスコットの違いロバート・スコットはイギリスのエリート軍人で、イギリス海軍から支援された動力ソリに雪上車、馬、軍艦と準備万端で南極点到達を目指した。結果的に全滅。何もかも揃っているエリート軍人とペテン師でアマチュア探検家のアムンセン。でも結果的にはアムンセンはあっという間に南極点に行って帰って着ちゃう。
201：イヌぞりに食料を大量に積んでいくけど、食べていくうちにどんどん荷物が減る。さらにデポに荷物を置いていくんで、どんどん軽くなる。イヌもそんなに必要なくなってきて、イヌも食料として食べる。計画的にイヌも食料にして食べて減らしていって、最後はギリギリの頭数のイヌぞりで帰ってくる。
一緒にソリを曳いていた仲間が次々に食べられるのに、明日は我が身と知りながらそれでもソリを曳く犬は哀れ。北極圏12000kmをやはりイヌぞりで単独行し、北極点に到達した植村直己はどうしたのか、今更ながら気になる。
212：「修行」というセンス錬成法（楠木）錬成の古典的な手法が修行。つべこべ言わずに10年、まずこれをやれと。修行というのは事後性を克服するために人間社会が編み出した方法論。
2025年03月04日
どこで勝負するかという「土俵感」
「GEはセンスのタグ付けで組織を作っていくことに血道を上げている会社」だという（楠木）。
100：若い頃から「こいつはセンスがいい」とタグ付けしている。担当者の仕事はスキルでなんとかなるけど、経営の巧拙にはセンスがモロに出る（山口）。
それでも左前になったのは、成功し過ぎた上の「成功の呪縛」か。
これもセンスの問題。117：どこで勝負するかという「土俵感」（楠木）全方位的にセンスがある人というのはいない。本当にセンスがある人というのは単にセンスがあるだけではなくて、自分のセンスの「土俵」がよくわかっている。これが自分の仕事なのかどうか、そうじゃないのかという直感的な見極めが実にうまい。
160：「ビーム社買収のシナジー効果は？」「シナジーなんかない。はいどうぞ、というようなそこにあるものじゃない。だからオレがつくりに来た」（新浪剛史）
2025年03月03日
「仕事ができる」人
一橋大学ビジネススクールの経営学者である楠木健と、独立経営コンサルタントである山口周の対談集。
話は、「仕事ができるということは、その仕事に対するセンスがないとダメだ」というところから始まる。一般的にセンスは教えられない。しかし、環境を与えれば「育つ」人は育つ。武道や宗教で言えば、「修行」か。はじめに：「この人じゃないとダメだ」と思わせる、それが「仕事ができる人」（楠木健）「あれができる・これができる」というスキルを超えた仕事能力。それを総称して、「センス」と呼ぶ。センスは直接的には育てられない。だからと言って、生得的な「天賦の才」ではない。育てられないけど、育つ。センスは自ら錬成するもの。
27：スーパーカブがこれまでに世界で作られたモビリティ商品の中で、もっとも累積で売れている。世界生産台数が1億台＋。しかも、現役の商品として今でも日々記録を更新し続けている。1957年の最初のモデルと基本的に同じ技術や構造をそのまま維持している。
28：「用の美」
大衆に向けたマス・プロダクションだけれども、役に立つを突き詰めていった先の美意識。ユニクロはそこを目指している。
44：弱い人ほど「法則」を求める
スキルとかサイエンスというようなのは、本質的にコモディティ化する。誰がやっても一緒になってしまう。
2025年03月02日
紫綬褒章
10年前に紫綬褒章を受章した桐野夏生。
主婦の犯罪を描いた「OUT」で、「殻を破ったかな」と手応えを感じ、作家としての自由を得た。（日経新聞インタビュー2015）
という。
115：これまでも何度か艶夢を見たことはあった。しかし、恐怖と背中合わせの恍惚は初めてだった。
132：物欲が一渡り満足すると、今度は別の欲望が刺激される。
283：自分の中にも佐竹に誘発されるものがあった。佐竹になら殺されてもいい、と密かに思っている部分が。
2025年03月01日
日本推理作家協会賞1998
先日来読んでいる桐野夏生。90年代たくさん来ていた日系ブラジル人の出稼ぎ。その後の円高で工場は海外に移転し、国内製造業が衰退。彼らの多くは帰国した。一方、親に連れられて来日、日本で育った子供たちの中には日本に定着した人も居る。
46：ヨシエ
働き者の女房は便利な存在だが、怠け者の夫にとっては目の上のたんこぶにもなる。（中略）ヨシエが姑によく仕え、家計を助けて内職をしたり、家のことを一生懸命やればやるほど、夫はヨシエを鬱陶しがったものだ。
働き者の女房は便利な存在だが、怠け者の夫にとっては目の上のたんこぶにもなる。（中略）ヨシエが姑によく仕え、家計を助けて内職をしたり、家のことを一生懸命やればやるほど、夫はヨシエを鬱陶しがったものだ。
118：雅子
「あんたと同じ。亭主がいて子供がいて仕事があって、でも孤独で」
205：邦子は、自堕落で無責任なところがクラゲの軟骨のように透けている
ちょっと目を離せば文房具を持って帰り、私用電話をかけまくり、無断欠勤しても平気な奴らだ。使い込みなどばれなきゃ構わないと思っている。自分が経営者なら絶対に雇わないタイプだ。
220：カズオは25歳で、2年間という期限付きのデカセギ
父の祖国はその血を引くカズオをパトリシオとは認めてくれなかった。カズオは空港で、街で、自分をガイジンとして見る目に遭うたびに叫びたかった。「俺は半分日本人だ。日本の国籍を持っている」と。
