2024年10月
2024年10月31日
「薄葬化」
香川の郷里でもコロナ以降「家族葬」が増えた。それ以前から葬儀会場での通夜・葬儀が増え、昔のように自宅に自治会が集まり、大勢で手伝うことも無くなった。
これを著者は「薄葬化」という。団塊世代の薄葬傾向が顕著で、「自分の葬式は家族葬がいい」と回答した団塊世代は86%にも上るというから、ますます「薄葬化」は進みそうだ。全く葬儀を行わない「直葬」希望も53%らしい。
「薄葬化」の原因として以下が考えられるという。
・長寿化
・核家族化
・マネー
長寿化で、最後まで自宅で暮らすことが難しくなり、晩年を高齢者施設で過ごす老人が増えた。そうすると、長年暮らした地域社会から断絶することになり、亡くなった時には家族葬ということになる。
長寿化で、最後まで自宅で暮らすことが難しくなり、晩年を高齢者施設で過ごす老人が増えた。そうすると、長年暮らした地域社会から断絶することになり、亡くなった時には家族葬ということになる。
182：9割が家族葬か直葬
「通夜・告別式は近親者のみで行います。香典や供花は謹んでご辞退申し上げます」
2017年 ある大企業（連結社員数約5500）の3年間の不法通知を集計→95%が家族葬・直葬
「薄葬化」
地域で、死者が出れば回覧板などでその死を告知するとともに、町内会が葬式を取り仕切ったもの。そこに会社関係や交友関係も葬式の手伝いに加わり、大勢で見送った。昔は弔いの社会基盤がしっかりしていた。
2024年10月30日
蛮行に潜むソ連特有の事情
「ソ連は自国の市民の人権すら尊重する国ではなかった。そうした国家が占領地の住民や捕虜を丁寧に扱うことはない」というのは、従業員満足度が低い会社では顧客満足度が上がらないのと同じ構造。
壮大な社会実験だったとはいえ、こうした社会主義国家が70年間もの間、世界の2大大国の一つとして存在したとは今から考えれば不思議。
140：スターリンは、無断退却や、捕虜になることには厳罰で臨んだ
占領地における強姦や略奪に厳しい処罰が下されることがほとんどなかった。
141：蛮行に潜むソ連特有の事情
1930年代の大粛清や、「矯正」の名のもとに行われていた強制労働など、ソ連は自国の市民の人権すら尊重する国ではなかった。そうした国家が占領地の住民や捕虜を丁寧に扱うことはない。
162：日本赤十字社総裁 高松宮宣仁親王 『高松宮日記』
「北鮮に侵入せるソ兵は白昼街道にて通行中の婦女を犯す」「元山か清津にては慰安婦を提供を強いられ人数不足せるを籤引きにて決めたり。日本婦人の全部は強姦せらる」
241：日本の復讐を防げ（スターリン）
�‘�本の民主化の推進→GHQ下でソ連はほとんど意見を通せず
��対日同盟網の構築→中ソ友好同盟条約
�Ｆ邀鯊世叛蘚舂鹽腓諒珊腆�FDRの了解
�ぅ轡戰螢⇒淮陰�60万人が抑留
2024年10月29日
日本人狩り
1945年8月23日、スターリンは50万人の日本人将兵をソ連へ送ることを命じる。ところが、既に関東軍は8月15日のポツダム宣言受諾で南に退却した部隊も多く、その「ノルマ」が満たせない。そこで「員数合わせ」として民間人が標的になったという。
51：満州国の構造
�ヾ愿豬海遼詢修亘�州国の統治も「兼業」し、戦闘という本来の任務に集中できなくなっていた
�∨�州国の大多数の住民にとって、民意を汲まない満州国を支えるメリットは乏しかった。実際、日ソ戦争で関東軍に協力したのは日本人のみ。いかなる軍隊も住民の協力なくして総力戦は戦えない。
60：大本営の作戦計画
ソ連軍が兵力を集結させていることは、東京の大本営も認識（1945春）。
ソ連との開戦は「絶体絶命」「本土に於いて勝つことを第一義とし、多方面は之を成立せしむる為に持久す」（参謀第一部長宮崎周一中将）
119：マッカーサーの指揮は拒否
関東軍が停戦しても、ソ連軍の攻勢は止まらず。極東ソ連軍には、まだ最高総司令官のスターリンから停戦命令が下りてなかった。8/14日本政府がポツダム宣言受諾を再度申し入れても、ソ連政府は無視。
130：1945/8/14チベット仏教の寺院「葛根廟」草原
ソ連軍が避難民を銃撃し、戦車で踏みつぶす。避難民約1000人が死亡。
2024年10月28日
帝国日本最後の戦い
日ソ戦争：1945年8月8日から9月上旬まで満州・朝鮮半島・南樺太・千島列島で行われた第2次世界大戦最後の全面戦争である。短期間ながら両軍の参加兵力は200万人を超え、玉音放送後に戦闘が始まる地域もあり、戦後を見据えた戦争だった。これまでソ連の中立条約破棄、非人道的な戦闘など断片的には知られてきたが、本書は新資料を駆使し、米国のソ連への参戦要請から各地での戦闘の実態、終戦までの全貌を描く。
はじめに：1945年8月8日ソ連は日本へ宣戦布告
・なぜ、ソ連は第二次世界大戦の終わりになって参戦したのか
・日本はなぜこの直前まで、ソ連に期待して外交を続けていたのか
・玉音放送が流れた8月15日以降も、なぜ日ソ両軍は戦い続けたのか
＊日本ではいまだに正式な名称すらない
3：戦争を演出したアメリカ
1941年7月10日FDR→ウマンスキー駐米ソ連大使
「貴国の航空機が、天気のよい風の強い日を選んで、厚紙でできた日本の街に大量の焼夷弾を降らせてくれればと願う」
5：友軍である中国（重慶国民政府）の軍隊が頼りなかった
9：1945
ヤルタ会談
2/8FDRとスターリンは参戦の見返りについて、おおむね合意（南樺太返還と、千島列島の引渡し）。
12：原爆はアメリカ外交の「切り札」
開発が成功するかは断言できない。そのためアメリカは、ソ連参戦というカードも必要とした。
22：1941日ソ中立条約
1939/9不可侵条約を破棄してポーランドに侵攻
同年11月フィンランドとの不可侵条約も破棄して領土割譲させる
2024年10月27日
沖縄の軍用地主
同じく真山仁による沖縄を舞台とした小説。自衛隊機の墜落と、ある「軍用地主」一家での殺人事件が並行して発生する。自衛隊機のパイロットは航空自衛隊のエースパイロットで、米国製のAIアシスト付き最新鋭戦闘機を操縦していた。主な任務は、西南諸島で頻繁に挑発行為を繰り返す中国軍機。
日本は敗戦後、航空機の開発製造をしばらく禁止され、さらには兵器開発も禁止されたことで、日米安全保障条約もあり、戦闘機は基本的に米国製となった。いくら同盟国でも、米軍が最新鋭機を供与することはなく世代の古い機種となる。また、その場合でも、運用する自衛隊が点検も整備もできず、米メーカー技術者しか触れないブラックボックスが存在するという。
10：沖縄では、ローティーンになると家出を繰り返し、夜の街を彷徨う少女が多い。
29：軍用地主
沖縄にはありがちな放蕩三昧を繰り返す御曹司。
306：基地反対デモ
デモの主力は県民ではない。本土から来たプロの活動家。
2024年10月26日
民主主義とは
『ハゲタカ』著者による政治小説。東南アジアにある架空の国、メコン共和国を舞台にしている。読んでいくと、ミャンマーがモデルになっていることが分かる。
その国は地下資源が豊富で、そのために大国に翻弄されてきた。単なる貧しい国なら誰も関心を持たないが、資源豊富なゆえに、かつてその国を植民地としていた英国も利権を保全するために引き上げず、米国は新たに利権を得ようと自らのいいなりになる新大統領を据えるため、有力候補をCIAを使って暗殺する。
28：解釈という盾
憲法「法律でこれを定める」
40：米中関係を敵対的だと考える者が多いが、その実、覇権国家である両国は、とてもよく似ている。したがって、互いに牽制はしつつも、共存共栄という現実路線を選択することが多い。
52：日本国憲法が様々な解釈を許すのは、多神教的なアジア思想である日本が、一神教を信奉する西洋的発想に基づく憲法を受け入れたことによる化学反応。
137：冴えない直情型の一将軍を大統領にしたのは英国政府
大統領となって、莫大な富で私腹を肥やしている。その資産は、世界中の租税回避地に分散している。
256：日本では、平和で自由で豊か過ぎて、政治に関心がない。一方、メコンは恐怖と不自由と貧しさのために、政治に関心を持たない。
2024年10月25日
日産の「内なる国際化」
東大経済学部を出て1977年に日産自動車に入社した西川氏。その背景には、父型の祖母と離婚した祖父・居村淳一の影があったという。
65：大正期に東京帝国大学工学部大学院（博士）→渡米し米フォードでエンジニア→帰国してフォード車の組み立て事業「芝浦自動車」を起こした起業家。昭和恐慌で破綻。
大正期に東大で工学博士というからエリート中のエリート。それが官僚になるのでもなく、財閥系企業医はいるのでもなく、渡米し、人種差別の激しいアメリカでフォードのエンジニアとなる。そこで自動車製造を学び、帰国してフォード車の部品を輸入して組立工場を始める。今でいうところのノックダウン生産だ。それが昭和恐慌で車が売れなくなり経営破綻。妻は実家に帰り、そこで育ったのが西川氏の父だった。
購買部に配属されて驚いたのが、上司や先輩が、何の下調べもせずに毎日下請け工場に行っては、あれこれ適当な指摘をしたあげく、結局は「安くしろ」としか言わないことだったという。これでは建設的な話し合いにならないと、下調べをして仮説をもって訪問したところ言われたのが上記。これでは、真面目に仕事をしていたトヨタと差がつくのは当たり前だ。73：1977日産入社 購買部門配属日産の人間は威張るのが当たり前。「日産さんの購買の方とは長く付き合ってきましたが、あらかじめ資料を作ってきていただいたのは西川さん、あなたが初めてですよ」
国内でトヨタに徐々に差を開けられていた日産は、80年代から海外に活路を求める。当初は国内生産していた車を輸出していただけだが、85年のプラザ合意以来、円高が急伸。海外生産に舵を切る。それは90年代になって拡大するのだが、一方でバブル崩壊で国内販売が激減。国内工場の稼働率が落ちて、大赤字に陥る。91：1990年代前半に海外生産を拡大バブル崩壊後、国内販売が激減。従来は日本から輸出していた分を海外生産に急激に置き換え。海外販売全体に占める海外生産の比率 1/3→2000年には2/3に
1999年ルノーが37%の日産株式を引き受けることで資金を注入。日産は経営破綻を免れるのだが、その時の社内は上記のような状況だったという。西川氏も転職を検討している。103：買収された企業にみられる典型的な反応ルノーから乗り込んできたゴーンチームに対して、ひたすら媚びを売る連中もいれば、面従腹背で裏に回って愚痴をこぼす者もいた。こんな情けない風景を目にしながら仕事をするのは実に嫌なもの。
105：1999/10日産リバイバルプラン海外事業の運営に課題があると分かっていながら、なに一つ有効な手が打てず、ずるずると収益悪化の一途をたどった灰色の1990年代から一転、私がずっと感じていたもどかしさ、モヤモヤが次々と晴れていった。
137：日産CEOゴーン
「私にとっては、日産の目標達成こそが重要であり、ルノーと仲良く仕事ができるかどうかなどはどうでもいい」
155：ルノーにおけるゴーン
カリスマとして祭り上げられ、周囲との距離はどんどん離れていった。
181：2019ルノーでもゴーンの不正発覚
さらにオランダにあるルノーと日産の合弁会社RNBVを舞台にしたゴーンの不正摘発。
196：マクロンチーム
グレッグ・ケリーがゴーンの威光を笠に着て、交渉チームを仕切ろうとする。
おわりに：ヒーローは内部では帝王と化し、外部ではメディアにカリスマとして持ち上げられる
現場から遊離し、裸の王様に。
内なる国際化：外国人幹部、あるいは外部からの日本人幹部の積極登用が急激に進む
ハイリスク・ハイリターンの欧米型の人材確保や登用が大幅に進んで人事制度の中核となり、旧来の日本型システムがその下に入るような形で進めらてしまった。
2024年10月24日
ゴーン事件
著者は2017年にカルロス・ゴーンから日産社長を引き継いだ。その翌年秋「ゴーン事件」が明るみになる。その根本原因として、西川氏は次のように言う。
ゴーン会長に代わってリーダーになれる人材が、私を含めた日産の日本人社員、役員の中からなかなか現れなかった。結果として、ゴーンのトップ在任が18年の長きに及んでしまった。（はじめに）
1999年にルノーが日産株式37%を取得する前に日産は経営危機に陥っており、その間に、目端の利く社員は転職してしまった。西川氏も「日産リバイバルプラン」が成功するまでの10年間、給料は上がらず、ボーナスはほぼ出なかったという。
ゴーンは1999年のCOO就任後、筆頭株主のルノーを背景に、日産で絶対的な権力を握った。それは、経営危機の回避を回避し、日産を再び成長軌道に乗せるために必要な緊急措置だった。しかし、V字回復があまりにうまくいったため（その内容はかねてから日産社内で検討されていたことであったが、日本人経営者は組合の反対からそれが実行できなかった）、絶対権力体制が長く続くことになる。はじめに：日本企業は製造業を中心とした企業単位の団体戦で勝ち抜き、今の地位を確立。欧米では1990年代以降、旧来の大手製造業に代わって新世代の起業家が次々とIT企業を生み、世界規模の企業に成長させていった。（中略）つまり欧米では抜きんでたリーダー起業家が次々と生まれる環境の下、いわば個人戦で世界を席巻している。
日産再建の成功で、ゴーンは2005年にルノーのCEOにも就任する。ルノーと日産はともに上場企業であり、ルノーが日産の37%（後に買い増して43%）を持つとはいえ、残りはその他少数株主が保有しているわけだから、利益相反がないように、両者の代表者は別でなければいけない。東証にも新規上場の際はそのルールがあるのだが、日産はもともと上場していたので、それを黙認してしまった。これは、東証の職務怠慢ではないだろうか14：ゴーンと私は「対立関係」にあったのか内部調査と検察の捜査で露呈したゴーンの背任行為は、明らかな確認犯。発覚した不正行為の悪質さは彼らの想像をはるかに超えていた。
絶対権力は絶対腐敗する。東証がCEO兼任を黙認せず、ルノーCEOに就任するなら日産の代表は辞任しなければ上場廃止にするとしていれば、その段階で日産社長は交代し、ゴーン事件もなったと思われる。「帝政」が長く続いたため、「取り巻き」連中ができていき、ゴーンに意見できる人がいなくなった。17：ゴーンの主張する「日産の陰謀」説西川によるクーデター？ゴーンが日産の再建に乗り出した後、最初の何年かはパトリック・ペラタ氏をはじめ優れた側近が彼を支えていた。ゴーンに意見できる存在がいた。次第にゴーンが偉くなりすぎたのか、周りにはイエスマンが増えて行った。「日産よりゴーンさんが大事」そう考える取り巻き連中が幅をきかせるようになった。
ルノーは民間会社だが、1945年以降長い間フランス政府の国営企業であった。1996年に民営化されるのだが、その際にミシュラン北米事業のCEOであったゴーンをルノーにヘッドハントしたのも高級官僚出身のシュバイツァー会長であった。現在でもフランス政府が筆頭株主で、経営陣の多数が官僚出身だ。26：2018春の状況長年の懸案であるルノーとのアライアンスの将来形についても、フランス側からゴーン会長（日産の会長とルノーの会長兼務）への圧力が増していた。
そこで、フランス政府はルノーのゴーンCEOに圧力をかけ、日産を子会社化しようとする。目的は、日産の持つ技術開発力であった。しかし、これにはフランス政府に間接的に支配されることになる日産経営陣が反対する。29：アライアンスの競争力源泉の一つは日産の技術開発力経営統合しても、若くて優秀な人材を引き付けられるか？
この状態で、日産は再び経営不振に陥る。それは、ゴーン事件の後も続いている。ゴーンが長期的な競争力強化を後回しにして、短期的な成果を上げることを優先したため、日産は深刻な打撃を受けた。どこか新たな強力なパートナーと組まない限り、日産の再復活はないと思われる。32：ゴーンからアライアンス優先の強引な指示日産は何事もルノーと相談しなければ動けないという状態。
43：ガバナンスの課題日産の43%の株を持っているルノーのトップが日産のトップを兼任→一人に権力が集中
2024年10月23日
飽和資本主義の行方
高齢化で膨張する社会保障費。どう考えても、受給者の負担を増やさないとバランスが取れないのだが、結局、被雇用者の社会保険料の値上げで対処してきた。このため、平均的な給与所得者の税負担率30%＋社会保障費20%で、可処分所得が半分ほどしかない（子育て世帯は優遇措置あり）。
円安で一部の輸出企業は潤っているが、国全体としてどうなのか？何しろ、エネルギーの90%、食料の65%を輸入している日本なのだ。138：合成の誤謬を助長するbad policyが今も繰り返される2000年代に、政府は高齢化で膨張する社会保障給付への対応として、被雇用者の社会保険料の値上げで対処した。政治的反発が最も少ないところから財源を確保したともいえるのだが、グローバル競争が強まる中で、企業部門では人件費負担の重い正規雇用を非正規雇用に代替する動きが始まっていた。（中略）そのことが生産拠点の海外シフトを促し、国内では正規雇用を非正規雇用で代替するインセンティブをさらに強め、結果として、個人消費を抑制させる要因になったと見られる。
140：円安政策そもそもすでに完全雇用にある中で、円安によって自国民の実質購買力を抑制し、外国人にサービスを安く供給することが、果たして一国の経済厚生の改善をもたらすのだろうか。全体のパイがほとんど変わらない中で、個人消費を犠牲にし、サービス輸出を拡大させただけではないのか。
141：「失われた40年」に？
2012年末のアベ政策のスタート段階から、日本経済の長期停滞の原因には、分配問題が大きく絡んでおり、円安政策や法人減税で企業部門を利しても問題解決にはならず、むしろそうした家計を犠牲にする政策が問題なのだと主張してきた。
145：長期停滞を考える上で重要な自然利子率
国内経済の自然利子率が低いため、企業は自然利子率の高い海外経済でビジネスを活発化している。裁定によって利鞘を稼ぐというのがビジネスの鉄則、資本主義の鉄則。
254：物価は数倍に？
現在の中央銀行のB/Sの膨張、あるいは統合政府の負債の膨張から推計すれば、物価水準が4〜6倍にジャンプする可能性がある。たとえば物価水準が4倍になることで、現在、250%の公的債務の対GDP比が60%程度まで低下し、持続可能性が回復されるということである。
もちろん、国債バブルの崩壊後、それが逆バブルの過程に入れば、数倍の物価調整では済まされない可能性もある。その分水嶺となるのは、危機が始まった際、政府が財政健全化にコミットできるか否かであろう。
2024年10月21日
ウォール街のワルツ
原題は、The Wall Street Waltz（ウォール街のワルツ）。ウォール街200年のワルツの系譜、つまり、チャート見本を集めた本。ウォール街ではこうした呼吸とステップでワルツが踊られており、そのことを学んで一歩ずつステップを踏めば、「足元をすくわれない」（＝大損しない）。
政治家に経済を立て直すことはできない。彼らが事態を悪化させることしかできないのは、われわれが世界的な金融経済の一部だからだが、ほとんどの人たちにはそれが見えていない。（中略）みんな政府の赤字や負債は心配しても、本当に命取りとなるのは癌細胞のように大きくなってく政府だということに目を向けようとしないのは残念なことだ。（まえがき）
ウォール街でみんなが勝つことはできない。ダンスフロアではだれかが笑い者になれば、ほかの人はすたーのように見えるとみんな思っている。そんなことには耐えられないと思っても大丈夫。ウォール街のワルツは簡単なステップで一歩ずつ進めていくことができる。ウォール街でカギとなるのは華麗に踊ることではなく、単純なステップでいいから足元をすくわれないようにきちんと踏んでいくことだ。（まえがき）
2024年10月20日
お山の大将
バルミューダ躍進のきっかけが『アメトーーク！』でTKO木本氏が紹介した同社の第一号製品だとはしらなかった。
112：第一号商品「グリーンファン」を『アメトーーク！』で紹介。当時のバルミューダは社員が3名。この製品がダメだったら会社をたたむつもりだった。オンエアの翌日には初回生産分が完売し、家電量販店からの注文の電話が鳴りやまず。
これも、木本氏の性格で、何にでも興味を持ち、詳しくなって、人にあれこれ教えてあげるのが好きなのだという。
家電芸人としては、バルミューダの恩人となったが、投資話ではこれが裏目に出た。173：お山の大将「自分が一番詳しい」という知ったかぶり人に相談されることが多い人生。投資話の一連の流れを作った張本人。
今では、「人をイジるよりも、どうやってイジってもらうか」だという。233：人から「すごい」と思われたい「なにかをおすすめする役」からも降りる。
235：仕事を再開してからは、こればかりを意識している。今回の騒動を含めて、もともとあまり見えないようにしていた天然の部分。
2024年10月19日
自分は特別
長年続いている早朝勉強会で著者に会う機会があり、著書も読んでみる。恥ずかしながら、バラエティー・お笑いの類は全く見ないので、TKOも名前を知っていただけ。
芸能界に居れば、そして売れ始めればなおさらちやほやされる。もともと面倒見のいい「長男気質」である木本氏には取り巻きも多かった。はじめに：19歳で大阪松竹芸能の養成所に入所以来、定職に就いたことがなく、芸能の世界しか知らない。思い起こせば、自らそれを引き寄せてしまった。
誰でもクラスの人気者になりたいが、木本氏の場合は、どんなTV番組が面白いか、次はどの曲が流行るかなど、クラスで「マウントを取る」ための努力は全く苦にならなかったという。46：子ども時代マウントを取るためならば、あらゆる行動が屁でもない。
それは大人になっても変わらず、それが芸能界での成功にもつながるわけだが、「仲間」には自分で調べていいと思ったものは「一緒に楽しもう」「一緒に儲けよう」と勧めていた。逆に、親しい人から薦められると、向こうも善意で勧めてくれていると疑いもしなかった。83：人から信用されること⇔人を信用することFXの運用を任せていたAとは、家族ぐるみの付き合い。こちらはファミリーと思って信頼していたし、向こうも同様だと疑いもしない。
最初のFXは、詐欺ではなく、当初はうまくいっていた運用に途中から失敗。損を取り返すために、より大きなリスクを取り、結果どうしようもなくなるという、プロ運用者でも陥るパターン。一時連絡が取れなくなっていたが、その後見つかり、今では少しずつ返済しているという。92：FXの損失を不動産で取り返すつもりが他のメンバーも出資を決め、僕を含めた4人からBに渡った総額は5億円（自身は10M）。
94：詐欺師は詐欺師の顔で近づいてこない
その後に引っかかってしまった不動産投資は、最初から詐欺で、特殊詐欺に引っかかった高齢者が（リストが出回っていて）「取り返しましょう」と再び狙われるパターン。気持ちの焦りに付け込まれる。
なぜ自分は2回も引っかかってしまったのか？イベントで木本氏は、子供のころからの気質に加えて、「自分は芸能人だから特別なのだ」という感覚も告白していた。「特別な人だから、特別な儲け話が来るのも不思議ではない」という感覚だ。
2024年10月18日
株主総会にはその企業の真実がある
私も総会日程が重ならない限り、なるべく出席するようにしている。残念なことに、まだまだほとんどの会社が平日の10時開催であり、かつ上場企業の7割くらいが3月決算なので、どうしても6月後半に集中する。結果、総会日が重なってしまうことが多い。
本書では、昨年バルミューダの佐藤取締役が退任したときに、パイオニアから創業間もないバルミューダに佐藤取締役が転職してからを振り返る挨拶があったエピソードが出てくる（53p）。このように、退任者の挨拶の時間を設けている会社はわずかで、そうすると、本当に円満退社なのか、という疑問も出てくるケースがある。
今年出た中で驚いたのは「デルソーレ」。業務用ピザ生地でシェアトップの会社（スーパーで売っている「手伸ばしナン」も）。スタンダード市場の小型銘柄なので、普通サイズの貸会議室で行われ、スーツ姿の社員あるいは取引先と思われる株主が目立つ。彼らが前方に陣取っており、「まだこんな総会をやる上場企業があったのか」と懐かしく思ったほど昭和。
当然？私以外に質問をする株主はいなかった。それだけならまだしも、ごく一般的な質問であるのに、議長である社長が質問に答えず、全部CFOに振ってしまった。社長は基本的な数字も、財務方針も把握しておらず、財務担当者に任せているようだ。同族企業であるので、やる気がないのかもしれない。
あるいはわざと一般株主に背を向ける態度で株価を下げ、MBOを狙っているのか
18：企業には法人格という人格
数字だけいくら見たところで、その会社がどんな会社か、本当のところまでは分かりません。
20：社長が総会を欠席！
名古屋本社のIT企業。上場してお金が入ってきた事で遊び回るようになり、まったく経営に興味を持っていない。
57：事業報告がスライド上映
株主としては、やはり社長が直接話す言葉を聞きたい。
155：上場したばかりで「要注意」
オーナー企業の社長が上場後まもなく会長に就任するケース。2度と浮上せず。
2024年10月16日
イベント投資
8月に行った日経IRフェアでパネルディスカッションに参加されていた方。そのゆったりした語り口に惹かれ、著書を読んでみる。その風貌とは違い、実は、元SEらしく、データ分析に長けていることが分かる。
保有株を誰に売って利確させようとしているのか？商売と同じで、株式投資は仕入れて（より高く）転売しないと利益が出ない。そうすると、これも商売と同じで、そもそも仕入れるときに「誰に売るのか」を考えるべきだという。正直そこまで考えたことはなかった。53：個人投資家に売るのか、機関投資家に売るのか自分が持っている株式を、どの投資家に売って利益を確定させようとしているのか。個人投資家は懐具合次第。機関投資家は、一定のルールに沿って機械的に売買。→マーケットが低調なときには機関投資家を相手に、逆にマーケットが活況なときには個人投資家を相手にしたほうがいい
55：個人投資家の懐具合買い建ての「信用評価損益率」▲20~▲15% 相場低迷期＜▲10% 相場悪い▲3~▲3.5% 相場高揚感
123：株価の動きには3か月ごとに特徴
1Q 年明け最初の取引でご祝儀相場があるものの、前年末の上昇の反動で下げ。特に2月が低調だが、3月に入ると徐々に上昇。3月末権利の配当や株主優待取りを狙った個人投資家の買い。国内機関投資家の期末決算を気にした自己保有株式の買い。
2Q 3月に入ってからの上昇トレンドは４月くらいまで続く。GWを挟んで株価は下落へ。
「鯉のぼり天井」
3Q 1年のうちで最も相場の方向感が見えにくい。相場がダレる。9月は配当取りがあるので、再び株価は上昇トレンド。
4Q 海外勢の決算対策売りで、相場は全体的に軟調。個人投資家による節税売りも出やすくなる。ただ、11月下旬以降は、決算期を終えた海外勢が再びマーケットに戻って来るため少しづつ上昇。12月「掉尾の一振」。
2024年10月15日
『洟をたらした神』（吉野せい）
『自分思い上がってました日記』北尾修一2023
北尾さん、結局、がん告知から入院までの2か月余り、それまで通り毎日飲んでいる。一方で、朝5時に起きて10km走ったり、走らない日には腕立て伏せ50回x10セット
にビリーズブートキャンプなど、運動には熱心。
私も、クリニックで脳動脈瘤の診断が出た後、大学病院で受診するまでの間、「禁酒になったらどうしよう」と思うと、酒が頭から離れなくなり、毎日飲んでしまった。しかし、小心者なので、自宅で毎晩一杯だけ（笑）。
FIRE本に限らず、日本の出版業界の節操のなさはどうなんだろう。出版危機から焦りがあるのか、ちょっとでも売れそうだと2匹目のドジョウを狙った本が大量に出る。一層出版不況を煽る結果になっていると思うのだが。
下の本、「この著者の子どもには絶対生れたくないと思ってしまった」の理由が書かれていなくて、気になった。読んでみるか『洟をたらした神』はもちろん。
にビリーズブートキャンプなど、運動には熱心。私も、クリニックで脳動脈瘤の診断が出た後、大学病院で受診するまでの間、「禁酒になったらどうしよう」と思うと、酒が頭から離れなくなり、毎日飲んでしまった。しかし、小心者なので、自宅で毎晩一杯だけ（笑）。
FIRE本に限らず、日本の出版業界の節操のなさはどうなんだろう。出版危機から焦りがあるのか、ちょっとでも売れそうだと2匹目のドジョウを狙った本が大量に出る。一層出版不況を煽る結果になっていると思うのだが。
下の本、「この著者の子どもには絶対生れたくないと思ってしまった」の理由が書かれていなくて、気になった。読んでみるか
『洟をたらした神』はもちろん。109：7月31日 FIRE本『貯金ゼロの元浪費家・３児の父が子育てしながら成功できたしあわせFIRE』（みもじ）
KADOKAWAっぽい本。先日のひろゆき本と同じく、情報量が薄いのでさーっと読める。売れりゃ何でもいいのか。あと、この著者の子どもには絶対生れたくないと思ってしまった。
110：8月1日 向坂くじらさんに勧められた『洟をたらした神』（吉野せい）
凄すぎる。大正時代の開拓農民の暮らしを追体験した。こういうの読むと、SNSとかまじでどうでもいいな。
148：8月21日 入院 ナースステーション
現在飲んでいる薬（無し）、喫煙歴（大昔に止めています）、飲酒歴と来たので、酒だけは毎日飲んでますと答える。
「昨夜も飲みました？」
「はい」
「どれくらい飲みました？」
「・・・・・言いたくないです」
「大体でいいので教えてください」
「たぶん、日本酒4号くらい」
2024年10月14日
恵比寿盆踊り
『自分思い上がってました日記』北尾修一2023
「恵比寿盆踊り」って、そんなに盛り上がっているんだ
「恵比寿盆踊り」って、そんなに盛り上がっているんだ
84：7月13日 大原扁理・稲垣えみ子
「冷蔵庫と病院が人間社会をダメにした」「食べ物や命を不自然に延命させることの功罪」
88：7月16日 向坂くじらセルフライナーノーツ「狂ったままで踊りを終えろ」
ひょっとしたら自分は今、天才と仕事をしているのかもしれない。
92：7月19日 映画『君たちはどう生きるか』
本当につまらなかった。（中略）アニメだから絵で描けば何でも表現できるわけで、あれを現実に作り上げるホドロフスキーの凄さを再認識しただけだった。
105：7月28日 恵比寿盆踊り
人生最後の盆踊りのつもりで踊る。恵比寿盆踊り恒例の「ラヴィアンローズ」「ヘイ、ミスター恵比寿」どちらも最高の曲だ。2時間以上踊り続けて汗だくで帰宅。
2024年10月13日
インフォームドコンセント
『自分思い上がってました日記』北尾修一2023
「インフォームドコンセント」として定着した感のある医療上の「説明を受けて納得したという同意」。もともと訴訟社会である米国で、医療訴訟を避け、あるいは医療提供側の裁判を有利にするために始まったが、いつの間にか日本でも当たり前に。
北尾氏も、病院のオリエンテーションで、あれこれ最悪の事態を説明され、気分が悪くなる。奥さんが同伴してなければ、「怒って席を立っていた可能性大」という。
そもそも専門家である医師と、素人である患者の間には、情報の非対称性がある。どこまで事細かに説明すべきなのか。単に病院の責任回避になっていないか。考えてみると、難しい。
北尾氏も、病院のオリエンテーションで、あれこれ最悪の事態を説明され、気分が悪くなる。奥さんが同伴してなければ、「怒って席を立っていた可能性大」という。
そもそも専門家である医師と、素人である患者の間には、情報の非対称性がある。どこまで事細かに説明すべきなのか。単に病院の責任回避になっていないか。考えてみると、難しい。
13：6月9日 尻の穴にずぼっと指を入れられる
「痛てててってててて！！！！！！！」と恥も外聞もなく絶叫する。「わかりました、けっこうです」と言われ終了。カルテに「痛がるので諦めた」と書かれたのを、医師の手元のPC画面で確認。この段階で精神的にはすでにギリ。
15：帰り道、雨が降っていた。そのことに頭が爆発しそうなほど感動する。
地球最高。宇宙最高。いる間に堪能しなければ。
完全に情緒不安定だ。
27：6月14日 Gさんと代官山クラフトビール
被害者しぐさばかりで、自分の加害者性に無自覚な人が増えたねえ、嫌な渡世だねえ、みたいな話をする。全員が自分は被害者だと思うようになったら社会はどうなるのか。被害者意識をくすぐるような本を刊行している版元/編集者は、自分が世の空気を悪くしていると分かっているのか？いや、むしろ弱者の立場に寄り添った良い本を出していると思っているんだろうな。自分はそこに与せず、自分の加害者性やどうしようもなさを自覚し、死ぬまでやっていきたい、みたいなことを話した。
57：6月29日 病院オリエンテーション
途中から渡された紙資料を正視できなかった。怖すぎて。医師には最悪の事態を伝えないといけない義務がある、そのことは頭では分かるけど、「これ、おれが知っていないとダメですかね⁉このオリエンテーションのせいで体調悪くなりそうなんですけど⁉」と口から出そうになる。
2024年10月12日
百万年書房
『自分思い上がってました日記』北尾修一2023
いつもだとAmazonで本のタグ付けをしているのだけど、今回は非売品なので、Amazonで売ってない。帰国早々、姫路に引っ越した長女のところに遊びに行った次女が、「面白かったから」と渡された本。
著者は「百万年書房」という「ひとり出版社」を経営する編集者。本篇は、大腸がんが見つかり、その手術のため入院するまでの2023年6月6日から同年8月21日までの2か月余りの日記。
私も昨年来、脳動脈瘤が見つかりしばらく禁酒・禁フライトだったり、膝関節症でしばらく走れなかったり（リハビリして今は騙しだまし）、同郷で40年来親しくしていたＡ先輩が亡くなったり、ついには先月、長年パーキンソン病で闘病していた母も死に、イヤでも自分の年齢と年代（親しい人がだんだんといなくなる）を痛感する出来事が立て続けに起こった。なので、読んでいて初めて大病したという著者の揺れ動く心持に共感した。
いつもだとAmazonで本のタグ付けをしているのだけど、今回は非売品なので、Amazonで売ってない。帰国早々、姫路に引っ越した長女のところに遊びに行った次女が、「面白かったから」と渡された本。
著者は「百万年書房」という「ひとり出版社」を経営する編集者。本篇は、大腸がんが見つかり、その手術のため入院するまでの2023年6月6日から同年8月21日までの2か月余りの日記。
私も昨年来、脳動脈瘤が見つかりしばらく禁酒・禁フライトだったり、膝関節症でしばらく走れなかったり（リハビリして今は騙しだまし）、同郷で40年来親しくしていたＡ先輩が亡くなったり、ついには先月、長年パーキンソン病で闘病していた母も死に、イヤでも自分の年齢と年代（親しい人がだんだんといなくなる）を痛感する出来事が立て続けに起こった。なので、読んでいて初めて大病したという著者の揺れ動く心持に共感した。
5：自分と百万年書房はしばらくこのまま続くと過信していた
2年続けて健康診断の消化器検査がE判定だったので、勇気を振り絞って恵比寿のクリニックで大腸内視鏡検査を受けたら、数十分後、「がん腫瘍がありますね」と医師からフランクに告げられた。
マジか、貴様誰にでもこんな軽いノリでがん告知するんか⁉
と、そっちに驚いた。
6：帰りにアトレ恵比寿3階の君嶋屋で日本酒750mlを3本買い込む。「手術日までは禁酒」と言われたけれど知るか。がん患者だ好きにさせろ。
10：6月28日朋世の誕生日。思いついて、近所の老舗レストラン（アントニオ南青山）を予約
なんか、おれは朋世に、自分のことを良い人だったと記憶に留めてほしいと思っているっぽい。何だこの「誰かの良い思い出になりたい欲」は。おもろいな自分、と思う。
2024年10月11日
先入観
第四部は「先入観」。ロッキード事件捜査には、いくつもの「先入観」があった。
・東京地検特捜部は、間違わない
・巨悪を眠らせないためには、手段を選ばなくても良い
・裁判所は常に公平である
・角栄は、カネ塗れだから、丸紅から賄賂をもらっているに決まっている
・総理は、何にでも口利きが出来るから、職務権限なんて問題ない
・国会での態度が、若狹の本性だ
事件の背景には、米国の世界最強の軍事国家でありながら、特殊な歴史的成り立ちと独特の政治観がある。
542：正義と必要悪の衝突米国は、不思議な国だ。世界中の誰よりも「正義」という言葉が好きで、いかなる時も、正義は自分たちにあると信じて疑わない。日本に落とした二発の原子爆弾、ベトナム戦争や、現在沸騰中の米中貿易戦争。たとえ世界中を混乱に巻き込む行為であっても、米国自身は、常に完全無欠の正義なのだと信じて攻撃のトリガーを引く。そして自国の富や国民を毀損しないよう、モンロー宣言のような自分勝手なルールを、一方的に打ちたてたりもする。
544：事件当時、米国の必要悪「冷戦の勝利」
1965インドネシア軍事クーデター スハルト大統領「インドネシア共産党員狩り」
犠牲者は50万人とも、300万人とも。殺害された中には、民主化を進めようとした活動家や学生、政治活動には無縁の国民も。CIAが関与。
558：戦後続く米日主従関係
「『日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書』によって、米国の国益を利する規制緩和や新制度を次々と日本に押し付け」（関岡英之『拒否できない日本』）
実際には、両国が相互に規制緩和を求めているのだが、日本の要求はほぼすべて黙殺。
570：角栄を葬った怪物の正体「世論」
米国、三木総理、検察庁、そしてメディアはそれぞれが欲しいものを手に入れるために、角栄を破滅の淵に追いやった。角栄にとっては、余りに理不尽で不運な事態が、重なった。
だが、角栄を破滅させた本当の主犯は、世論。かつては今太閤として持て囃した国民こそが、角栄を葬った。
573：世論の昂り
「田中さんは有罪にならなければならないという世論の強い意志をひしひしと感じていて、裁判所内に検察の捜査を疑うような空気は生まれなかった」（元最高裁判所判事 磯部逸夫）
596：アメリカ・ファーストの伝統
2001.9.11同時多発テロから一ヶ月も経たないうちに、首謀者の軍事基地はアフガニスタンにあるとして、チェイニーは攻撃を決定。さらに、イラクに大量破壊兵器が存在するとして、宣戦布告。その後、CIAはイラクは大量破壊兵器を保有していないとチェイニーに伝えたが、その報告は無視されている。史上最強の副大統領と呼ばれたチェイニーは、同時多発テロの影響で米国が弱体化するのを嫌って、一方的に敵国を決めつけ、徹底的に破壊した。
2024年10月10日
児玉誉志夫とは何者なのか
小学校の頃に初めて聞いた児玉誉志夫の名前。戦後の政界ではよく知られた存在であったらしい。貧しい生れで、戦前は労組活動に参加していた児玉。しかし、共産党の活動方針に次第に疑問を持つようになる。
392：「ただしい労組の活動は、きわめて有意義であるし必要。だが、争議のばあいなどに、なぜ赤旗を掲げ、『われらの祖国ソビエト』という、奇怪なスローガンを使わねばならないのか」
児玉はその実行力を見込まれ、上海をベースに日本海軍の物資調達を担うようになる（児玉機関）。敗戦時、大陸には莫大な物資が残っていたが、児玉はそれを売りさばいて帰国する。元は海軍の資金で買い集めたものなので、売上を海軍に返そうとする。海軍の元責任者に会ったところ、「海軍はもうない。その資金は、日本再興のために、使ってくれ」と後を託される。鳩山一郎の自由党結党にその資金が使われたのは有名な話。
児玉誉志夫はCIAの協力者、つまり、米国のスパイだったというのは、もはや定説。しかし、それは米国の意向を受けて動いていたということではなく、活動資金を貰っても（自分の考えで）日本の国益に合わない場合は動かなかったようだ。そうした児玉の動きをなじるCIA報告文章が残っているが、それでも全体として、児玉の働きはプラスだったようで、協力関係は長く続いた。397：児玉とは何者なのかフィクサー、黒幕、右翼、国士、総会屋の親玉、暴力団のまとめ役、闇の紳士・・・。児玉誉志夫という人物は、様々な顔を持つが、共通するのは恩義を忘れない男であるといいう点。思想よりも、自身が世話になった人物への恩返しを最優先する。その行動規範は、正義であるか否かが全てであった。尤も、児玉の正義とは、彼独自の価値観によるものだったが。
409：NYT記者ティム・ワイヤー『CIA秘録』戦後、GHQで日本人スパイをリクルートし、運営したのは、チャールズ・ウィロビー少将。ウィロビーは、マッカーサー最高司令官の情報参謀として、参謀第二部部長を務めた。
2024年10月09日
全日空社長・若狹得治
2010年に戦後最大の負債を抱えて会社更生法を申請し、倒産したJAL。そのごJALは会社再生のため不採算路線から撤退。一方、それまでも健全な経営を維持していたANAは、その間も海外路線を拡大し、現在では会社規模で日本の航空会社は1位がANA、2位がJALとなっている。
今のJALがあるのも、ロッキード事件の渦中に巻き込まれながら、踏ん張った若狹社長（当時）のお陰というのが今もANA経営陣の認識ということ。若狹社長は運輸官僚時代から、「日本航空一社では、国鉄のような弊害が起きる」と懸念し全日空の存在意義を説いていた。（本所次郎『麒麟おおとりと遊ぶ』）
284：𠮷永祐介なくしてロッキードなし
1932岡山県出身。岡山大学法学部卒。
主任検事としてロッキード事件に深くかかわる。
特捜部副部長のポストにありながら、77年1月27日から始まる丸紅ルート初公判で、公判検事として法定にも立っている。通常、東京地検では、取調べから起訴までの過程は特捜部や刑事部が、公判については後半部が担当するが、ロッキード事件だけは特別扱いとして、𠮷永は公判でも陣頭指揮を執った。しかも、𠮷永以外の公判立会検事も、全員特捜検事という前代未聞の態勢が敷かれた。
296：メディアや世間の先入観「前社長（大庭）によって、一旦はDC-10に決定していたにもかかわらず、後任社長（若狹）は（丸紅から請託を受けた政治家の口利きに屈して）トライスターに決めた」
若狹は、そのプロットを断固たる態度で否定。その瞬間、若狹は「悪い奴」となった。一方、筋書に添って証言した大庭は、「善き人」となった。
307：若狹得治（運輸次官→全日空社長）
若狹と面識があった者の多くが絶賛。
「荒っぽいところもあるが有能」「一見野人風だが実は細心な神経ももちあわせ」（「週刊文集」1974/2/4）
310：運輸事務次官時代
佐藤栄作総理に「全日空は事故ばかり起こしている。日本の航空会社は一社でいい。日本航空と合併せよ」と命じられても、競争のない業界は腐敗し劣化すると譲らず、全日空を存続させた。
313：若狹に対する評価が好転
社長以下役員の大半が逮捕されながらも、若狹の頑張りで、全日空は経営危機に陥ることもなく事業を拡大。
2024年10月08日
現代の魔女裁判
日本社会でしばしばいわれる場を支配する「空気」。ロッキード事件では、この「空気」が田中角栄に逆風となった。まず、次の首相になった三木武夫が前首相を徹底追及することで自らの不人気をかわそうとした。
一部には角栄復権待望もあったようだが、三木首相はロッキード事件を追求することでそれが田中角栄だけの問題であるという構図を作ろうとした。一方、当時の運輸省は、「日本の航空会社は1社で十分」という方針で、日航・全日空両社とも社長は運輸省からの天下りであった。171：角栄復権待望我が道を行く「クリーン三木」は独善的で、いつまでも評論家的なスタンスから離れられずに、政がまるで他人事のようだ。だから、決断と実行の男、角栄が懐かしい。
179：社長をはじめ、幹部の多くが、運輸省からの天下りで、両社の経営方針は、運輸省によって決められていた。（中略）全日空の大庭社長は、日航に吸収合併されるための先兵として、全日空に押し込まれた、いわば松尾（日航社長）の子飼いであった。
それに抵抗したのが、全日空社長を継ぐ、やはり元運輸次官の若狹社長。若狹社長は運輸省では珍しく、「市場競争のため2社必要」というのが持論であった。ロッキード事件では、全日空で「一旦はDC-10に決まっていたエアバスを白紙にし、トライスターに変更した」のが問題とされた。しかし、その決定は政治力も何も関係なく行われていた。
185：エンジン脱落事故や、貨物室の扉が開いて墜落寸前になるというトラブルが相次いでいたDC-10は、安全性に問題あり機種選定委員の指摘によって却下されている。安全面でDC-10を白紙化したのは全日空自らの決断なのだから、総理が介入するまでもなかった。
通常ではありえない裁判手続きが、関係者も「まさか」と思っているうちに繋がっていく。それは、決定者たちも「空気」に縛られ、自分がその空気（この場合は、多分に「世論」）に逆らって世間を敵に回したくないことから進められたようだ。本音では、自分以外の「誰かが止めてほしい」と思っていたのかもしれない。
191：「ほとんどすべての人が報道された事実をすべて真実として受取り、被告人らに対する烈しい憤りと憎しみの感情がひろく行きわたった。このような憎悪の感情の高まりが常に裁判への無言の圧力になっていたように思われる」（中央大学法学部教授・橋本公亘『判例時報』1137号）
253：佐藤昭『決定版 私の田中角栄日記』
「俺が普通の者ならまだいい。しかし、日本国の総理大臣が外国の企業からカネを受け取っていたとなれば、これは国の恥だ。後世まで歴史を汚すことになる。だから、何としても冤罪は晴らさなければいけない」日本国総理大臣の尊厳のためにも、俺は戦わなければならない」
276：最高裁判所 丸紅ルートの被告全員に有罪判決
角栄以外の被告が、検面調書で罪を認めている。尤も、彼らは法廷では調書の内容を否認。にもかかわらず、裁判所は、それらの証言を一切採用しなかった。
2024年10月07日
戦後最大のミステリー
総理大臣経験者が初めて逮捕されたロッキード事件。一審は有罪判決。上告されて争われているうちに田中角栄本人の死去で終了するという、なんともピリッとしない幕切れとなる。
「フワフワと現れて、フワフワと消え去った事件」とは、ロッキード事件丸紅ルートの判決を担当した元最高裁判事・園部逸夫が本書執筆に当たって2018年に語ったこと。被告死亡で結論が出ないままの裁判。これを、著者は「昭和を正しく検証できないのに、現代を語れるのだろうか」という問題意識で調査を開始した。
この裁判は、何から何まで異例だった。まず、贈賄罪で元首相を裁こうというのに、賄賂を送った側のロッキード社員は予め東京地検が「免責保障」をし、さらに裁判所もそれを追認している。
この裁判は、何から何まで異例だった。まず、贈賄罪で元首相を裁こうというのに、賄賂を送った側のロッキード社員は予め東京地検が「免責保障」をし、さらに裁判所もそれを追認している。
この何が何でも、田中元首相を逮捕して有罪にするという背景には、田中の後に首相になった「クリーン三木」の不人気があった。政治改革を掲げた三木は田中を徹底的に追い込むことで、支持率低迷の打開策としたのである。48：当時の米国刑法では、海外での利益供与は罪に問われず⇔日本の法律では、外国人でも日本の公務員に賄賂を渡せば贈賄罪コーチャン「尋問に応じて、賄賂を渡した事実を証言しても、逮捕・起訴されない」保証を検察庁に要求→東京地検は、ロッキード社コーチャン、ウィリアム、エリオットを超法規的に「免責」保障。
55：三木首相の猛進フォード米大統領に親書を送り、関係書類開示を要求「灰色高官の名前があれば、公開する」被告の有罪が確定して初めて犯罪者とする法治国家の基本を否定。
80：「角さんの立法でうなったのは、常にその施策を行うための財源にまで目を向けることだ。いかにも実業家としての感性があった。カネがなければ、事業はできないという感覚を持った稀有な議員だった」（元通産省事務次官・小長啓一）
99：深刻な米国の貿易赤字（70年代）
日本と欧州が戦後復興。中でも、対日赤字が深刻。64年までは日本側の大幅な輸入超過→65年から対米黒字→71年25億ドル（7750億円当時）
102：アメリカ外交の巨人キッシンジャー
権謀術数に長けたキッシンジャーは、ニクソンの頭脳そのもの。
戦後27年を経ても、日本はアメリカの植民地であり、徹底的に尽くして当然（米国政府）。
127：日本列島改造論
計画推進するには莫大な予算が必要。角栄が総理として初めて編成した73年度予算で、過去に例のない超大型予算14兆円（前年当初予算比＋25%）→インフレ加速&地価高騰
＊老人医療費無料
2024年10月06日
生体触媒
「酵素」は食べ物を燃やすための生体触媒らしい。西洋医学の薬はピンポイントで効かせるコンセプトで作られるため、「体内でさまざまな触媒（酵素）が機能しているのに、この働きの一部を止めてしまう」。だから、症状には効いても、体調が悪くなるなどの副作用が出る。
136：生体触媒
呼吸によって取り込んだ酸素で、食べたものを燃料にして、ゆっくりコントロールしながら燃やしている。そのために必要なのが生体触媒（酵素）。
161：「ダイセルいのちの森づくり」
小河義美社長＝ダイセル初の理系社長
165：大陽日酸
世界屈指の安定同位体供給会社。日本初の重水素リサイクル装置を開発。
京都府笠置町で森林化学産業実装化のための試験。
176：ネオニコチノイド
哺乳類や動物にはほとんど影響がない殺虫剤。だが、昆虫に影響→生態系に連鎖的な影響。
20202EU禁止。日本はこれから。
2024年10月05日
森林化学
藻類からSAFを作るよりかは、木材チップから作る方がよほど現実的に思える。製材過程の廃棄物としても出るし。
29：日本の化学産業は、自動車、電機と並ぶ「三大ものづくり産業」
営業利益率が高い化学会社
１．信越化学工業
２．デクセリアルズ
３．JCU
４．日産化学
48：ポリエステル繊維
細かい三次元構造の糸を使うことで、着心地が良く速乾性の高い服に。
51：1990年代後半 塩ビの償却からダイオキシンが発生するという風評被害
やめなかった信越化学工業や東ソーは今や高収益会社。
＊高温で燃やせばダイオキシンはほとんど出ないし、ダイオキシン自体の発ガン性も誇張された。
76：公害問題を乗り越えた製紙、塩ビ
製紙業の場合、1tの紙をつくるのに、昔は100tの水→現在10t（再利用）。
83：有明海のノリ
近年、下水の浄化能力が高すぎて不作。成長に必要な窒素やリンまで流れてこなくなる。
88：木材チップから再生可能な航空燃料SAFをつくる
パルプ→セルロース→グルコース（ぶどう糖）→＜発酵＞→エタノール(約20%）→エチレン→ポリエチレン→SAF
2024年10月04日
アリセプト承認
アリセプトの独自臨床試験Phase3を強引に主張したエーザイ米子会社のロジャーズ。内藤社長の決断でGOとなる。欧米60サイトで臨床試験が始まり、ロジャースは頻繁に欧州出張する。彼女がその際、超音速機コンコルドを使っていることを知り本社は仰天する。本社規定では、役員以外First Classは使えないのに、コンコルドの料金はFirst Classより高い。
結局、「次回からコンコルドを使ったら、差額は自払い」で落ち着くのだが、規定になければ（コンコルドは本社規定に想定されてなかった）勝手に使ってしまうのは、いかにもアメリカ人。それも、日本企業だからとなめられていた気はする。
いずれにしても、結果良ければ全てよし。アリセプトの臨床第三相試験は成功し、ファイザーがとてつもない好条件を出す。エーザイは製薬メーカーとして躍進する。
123：臨床第三相
欧米で全部で60サイト。プラセボ、5mg、10mgの三群間二重盲検試験。12週間投与の患者数468人、24週間投与の患者数473人。
132：米第三相成功
アルツハイマー治療薬の新薬ということで、エーザイの前には世界の製薬会社が門前市をなす状況。
ファイザーがとてつもない好条件を出し、1994年ファイザーと共同販促、自社売上計上の契約（米、英、独、仏）。
180：1997/4杉本八郎がエーザイ筑波研究所に副所長として戻る（7年間人事部の後）
1980年代、早朝から深夜まで土日もなく働いていた。毎月残業は100時間＋
2000年〜夕方5時を過ぎるとみな帰ってしまう
268：遺伝性アルツハイマー病の治験
井原涼子は、勉強で苦労をしたことがなかった。桜蔭高校からストレートで東京大学理科三類に進み、気が付くと父親の足跡をたどっていた。
井原康夫＝セルコーとともにハーバード大学で研究し、神経原繊維変化の成分がタウであることを同定。2007年に、東大を定年となり同志社に移る。薬学部の岩坪威が井原の研究室を継ぐ。
2024年10月03日
米独自臨床
エーザイ飛躍の転機になったのが、E2020（アリセプト）のアメリカでの独自臨床試験実施。自由診療で薬価の高いアメリカは、世界でダントツに大きい医薬品市場なので、世界の製薬会社はアメリカでの臨床試験を優先する。
しかし、掛るコストも莫大で、臨床試験に失敗し、承認されなければ掛かった数百億円の費用がムダになる。当時のエーザイは、弱小の国内製薬企業にすぎず、渉外部はあくまでリスクの低い他社への「導出」を主張していた。これは、臨床試験をその候補薬に興味を持つ他社にやってもらい、承認された場合には、通常その会社が販売も手掛ける。導出元の企業は売上に応じて、そこから数％のライセンス料を貰うことになる。つまり、自社で臨床試験を手掛ける場合に比べて、失敗した場合のリスクがない代わり、実入りも少ない。
導出に反対したのが、臨床開発のためのエーザイ米子会社にスクイブとロシュから移ってきた研究者二人。最終的には、内藤社長が米国独自臨床第三相を決断し、1993年12月に開始される（5mg＆10mg）
89：E2020
1990/5臨床第二相2mg/回に制限（第一相で10mgで副作用（吐き気・興奮））→有意差を得ず
92：1988臨床開発のための米子会社
他の企業が、ゴルフ場を買ってマネーゲームに狂奔していた時代に、エーザイはこつこつとためてきた内部留保で海外に研究拠点をつくった。
94：スクイブとロシュから移ってきた研究者が突破口を開く
Tightration＝人間の神経には、徐々に慣らしていくと、副作用が抑えられ、その薬本来の作用が現れて来る。
106：自分で第三相をやりたいロジャーズが策
E2020第二相成功時点でスクイブが「導出」オプション契約。
シャロン・ロジャーズが策→整理してない「生データ」を見せる→オプション行使せず！
2024年10月02日
創薬の「聖杯」トランスジェニック・マウス
今は、高校生物でもトランスジェニック生物を学ぶらしい（動画）。
60：創薬の「聖杯」トランスジェニック・マウス
60：創薬の「聖杯」トランスジェニック・マウス
突然異変の見つかった病気では、その遺伝子をマウスの受精卵に注入することで、病気の症状を呈するマウスをつくれる。このマウスで薬が効くかどうか、副作用はどうなるかを動物実験。
111：アセナ・ニューロサイエンス
1987ケビン・キンセラとハーバード大学のデニス・セルコーが西海岸で創業。
アルツハイマー病のトランスジェニック・マウスを開発＆ワクチン療法の発見
112：1994イグザンプラーという東海岸の医療系ベンチャーが倒産
マウスの「ウェスタン・プロット」（脳のタンパク質を抗体で染めだしたもの）にアセナの抗体が反応していた。イグザンプラー社自体を買収→マウスが生きているうちに！
116：「聖杯」を独占
外販せず→批判集中→大学の研究者に限って出す（生殖腺を取り去ったオスのみ）
1996アイルランドの製薬会社エランが6億ドルでアセナを買収。
2024年10月01日
エーザイ「アリセプト」
新薬の成功確率はたったの4%でしかない（探索研究でプロジェクトになる段階から）。探索研究から商品として流通するまでの開発の平均年数13.5年であり、臨床試験に掛かる費用は数百億円以上（対象疾患による）。
年を追うごとにかさんでおり、今では臨床試験に千億円以上掛かることも珍しくない。つまり、成功確率も考えると、一つの新薬で数兆円の売上にならないと、ビジネスにならないわけだ。これが、最近の新薬が驚くほど高額な理由。
年を追うごとにかさんでおり、今では臨床試験に千億円以上掛かることも珍しくない。つまり、成功確率も考えると、一つの新薬で数兆円の売上にならないと、ビジネスにならないわけだ。これが、最近の新薬が驚くほど高額な理由。
従って、製薬会社の研究所に配属されて40年間働いても、殆どの研究者は、一つの新薬も開発できないまま定年退職を迎える。そんな中、在社中に二つも新薬をあてたのが。エーザイの杉本八郎氏（動画）。しかも、杉本氏が開発した「アリセプト」は、2020年にバイオジェンの「アデュカヌマブ」が申請されるまで、アルツハイマー病の唯一の承認薬として年間3000億円を売り上げた。文字通りのブロックバスターであった。
杉本八郎氏は、都立科学工業学校を卒業し、1961年にエーザイ入社。家が貧しく大学に行けなかった（入社後、働きながら1969中央大学理工学部で学士）。当時のエーザイは「ゾロ」、つまりジェネリック専門会社で、新薬開発はしていなかった。高卒の杉本は研究補助として入社。当時の研究員は50名（補助含む）。それが、2021年現在では1730名。「アリセプト」のヒットが大きい。
26：セレンディピティー
『セレンディップの三人の王子』
セイロンの3人の王子が、当初は予想をもしなかった出来事に出会い、その偶然から大きな幸運をつかんでいく様を書いた童話。
37：アセチルコリンエステラーゼ阻害剤BNAB
飯村洋一（新入社員）CADD
川上善之（分析研究所）立体構造解析
46：左遷人事
研究所の忘年会で杉本が山津を殴る（山津はライバル部長で事あるごとに杉本の研究を妨害）。1990年明けの異動で、杉本は人事部へ（部下のいない担当課長）。
