2024年09月
2024年09月30日
まきがくる
1975年、弘前大学医学部附属病院に41歳の女性が家族に付き添われてやってくる。リンゴ農家の嫁である陽子は、40歳になった時、農作業がうまくできなくなっており、整理整頓も次第にできなくなっていた。
一族のものは、「まきがきた」とささやき合ったという。その一族では、40代、50代になるとそうなるものが多かった。津軽のその地方では、家族性の病気のことを「まき」と呼んでいた。陽子の母親も50代で発症、兄や姉も同様だった。
家族はやがて陽子を家で見ていることが難しくなり、入院する。45歳で、他の患者との交流が見られなくなり、病院内で徘徊を始める。48歳でほとんど言葉を発することができなくなる。50歳で寝たきりに。54歳で、夫や娘たちが呼びかけても、反応が無くなる。55歳で口から食べれなくなり、胃ろうをつくる。
1993年に62歳で亡くなったあと、陽子の脳は弘前大学で解剖される。大脳を見た執刀医は息を吞んだという。それは「霧ヶ峰のように尖った紙のような脳」で、くるみのように縮み、脳溝がすかすかに広がっていたという。脳重量は680gしかなく、これは成人女性の平均1350gの約半分だ。
1906アロイス・アルツハイマー＠南西ドイツ精神医学会で発表
2021年、全世界で5000万人の患者。
14：1970年代まで「ぼけ」という老化に伴う自然現象
1960日本平均寿命 男性65、女性70
アルツハイマーを発症する前に多くの人は他の要因で亡くなっていた。
2024年09月29日
ファンダメンタルズ分析
元監査法人トーマツの会計士による投資本。Youtubeでも企業分析が頻繁にアップされており、大変分かりやすい。本人曰く、両親が教師で、自分も教えることに情熱があるのだという。
STEP1良い企業か？STEP2株価は妥当か？STEP3ポートフォリオを管理する
16：売上高が長期的に成長する企業
�＼�長する市場をターゲットにしている
��強者のいない巨大成熟市場でシェアを高める
�８什澆了埔譴�成熟したときに備えて、次の手を打てる優秀な経営陣がいる
169：回転期間の長期化に注意
・棚卸資産
・売上債権
224：フロー型をストック型に変換するのがブランド
ブランド力のある商品は、顧客との間に何ら契約は存在しないにもかかわらず、顧客は繰り返し、その商品を購入してくれる。
298：投資ユニバース
実際に投資するポートフォリオには10社程度を組み入れ。
投資ユニバースには20社程度を登録し、合計30社程度を定期的にチェック。
2024年09月28日
初七日法要
「初七日法要」はその名の通り、本来は「亡くなってから7日目」の法要。現在では、葬儀で集まってからまた数日後（初七日は葬儀からではなく、「亡くなってから7日目」）に集まるのは難しく、葬儀を行い、その後火葬、遺骨を迎えてその日のうちに初七日ということも多い。少なくとも、香川県西部ではそのパターンが多いと思う。
母の場合は、献体したので火葬はなく、従って遺体を徳島大学に送り出した後、直ぐに初七日を実施した。地元の人だけならいつでも集まれるが、私も含めて、参列した1/3ほどは県外から来ている。なので、亡くなって最初の一週間後、本来であれば最初の衝撃が和らいだところで、改めて振り返るという機会がないまま昨日の初七日が過ぎた。
備忘のために今の心境を書いておくと、41年前に父が急逝した時をはるかに上回る衝撃。父の場合は突然死（くも膜下出血）で全く予期してなかったので、現実感がなかなかわかなかった。現実感がなかったのは、当時19歳という年齢のせいもあると思う。子を持つ父親としての気持ちもわからなかったし、下に妹も弟もいる長男と言うこともあって、「自分がしっかりしなければ」という気持ちの張りもあった。もちろん、当時42歳の母もいた。
というわけで、前回は葬儀後の挨拶もそれなりに考えて、しっかりと出来たと思う。今回も遺族代表で挨拶することになったのだが、言葉を出そうとしたとたんに感情がこみあげて、声を絞り出すのがやっと。あれから41年もたって、もはや初老。びしっと、親戚や母に縁のあった方々に感謝し、残された遺族にも変わらぬご厚情をというべきところ、しどろもどろに。馬齢を重ねたことが明らかとなった。
母の場合は、献体したので火葬はなく、従って遺体を徳島大学に送り出した後、直ぐに初七日を実施した。地元の人だけならいつでも集まれるが、私も含めて、参列した1/3ほどは県外から来ている。なので、亡くなって最初の一週間後、本来であれば最初の衝撃が和らいだところで、改めて振り返るという機会がないまま昨日の初七日が過ぎた。
備忘のために今の心境を書いておくと、41年前に父が急逝した時をはるかに上回る衝撃。父の場合は突然死（くも膜下出血）で全く予期してなかったので、現実感がなかなかわかなかった。現実感がなかったのは、当時19歳という年齢のせいもあると思う。子を持つ父親としての気持ちもわからなかったし、下に妹も弟もいる長男と言うこともあって、「自分がしっかりしなければ」という気持ちの張りもあった。もちろん、当時42歳の母もいた。
というわけで、前回は葬儀後の挨拶もそれなりに考えて、しっかりと出来たと思う。今回も遺族代表で挨拶することになったのだが、言葉を出そうとしたとたんに感情がこみあげて、声を絞り出すのがやっと。あれから41年もたって、もはや初老。びしっと、親戚や母に縁のあった方々に感謝し、残された遺族にも変わらぬご厚情をというべきところ、しどろもどろに。馬齢を重ねたことが明らかとなった。
2024年09月27日
戦後最大の奇書
本書の一面は、戦後世界秩序の風刺。
32：人類の宇宙征服はアングロ・サクソン族によって達成されたから、英語が宇宙帝国『イース』の共通語になった。
征服された「ヤプー」はアングロ・サクソン族の狩猟対象にされる。
アングロサクソンは「新地球」に移住して、ここでも原住民だった有翼四足人を家畜化する。52：黄色猟獣ヤプン諸島から捕獲してきた土着ヤプーを狩猟する。
これなど、『ハリーポッター』に登場するホグワーツ魔法学校の人気スポーツ「クイディッチ」にそっくり。まさか、J.K.ローリングが本書を読んでいた67：ペガサス・ポロ昔の平面競技場の上空百メートルに達する空間を競技場とし、内部に回転体を包んだ重力の作用を受けない特殊球を、地上50mの高さの標穴にたたき込む三次元の馬上打球戯。
2024年09月26日
『家畜人ヤプー』
三島由紀夫が「戦後文学史上の最高傑作」と絶賛した『家畜人ヤプー』。
戸川純のバンド名がこの本から取った「ヤプーズ」とは知らなかった
そして、このボリューム。
戸川純のバンド名がこの本から取った「ヤプーズ」とは知らなかった
そして、このボリューム。151：『ヤプー』
これまでの漫画や舞台は全部、プロデュースに関わっている。映画化に関しても沼さんはすべて僕に任せていた。
160：石原慎太郎
兄弟で派手にやって、まさにこの戦後超高度情報化社会の象徴的存在。アピアランスの時代。見栄えがいいという、そこが一番の要。（中略）石原慎太郎がブ男だったら、とっくに消えている。
229：沼昭三
本名＝天野哲夫
長い間、新潮社の校閲にいた。『家畜人ヤプー』はフランスでも刊行され、マルキ・ド・サド賞を受賞。
2024年09月25日
献体
母の遺体は本人の希望で大学病院に献体された。医学部生の解剖実習に供されることになる。
41年前に父が急死したあと、「自分にもいつ何があるか分からない」と思ったのだろう、当時42歳の母は地元の香川医科大学（現・香川大学医学部）に献体会員登録をする。それで今回病状が悪化するなか、手続きを確認しようと香川大学に連絡したところ、なんと、解剖棟の改修工事で受け入れを中止していた（来年春まで）。妹が慌てて探したところ、徳島大学が「搬送費自己負担」（通常は大学負担）を条件に受け入れしてくれることになった。
実習後、遺体は大学内で焼却され、遺骨は返還されるのだが、徳島大学からは今は献体ストックが沢山あるので、「2，3年後になる」と言われた。調べてみると、今は献体希望が多いらしく、会員登録を停止していたり、献体に条件を付けたりしている大学もある。母が登録した当時は、献体の数が足らず、医学部生の実習に支障が出ることもあったのが、この40年で様変わりしたらしい。
献体に関する法律が制定されたのは1983年。これは奇しくも父が亡くなった年で、この直後に母は会員登録している。法律の制定により、「国民への周知」（＝広告宣伝）が行われたようだ。その甲斐あって、1985年から2015年の30年間で献体数は「5倍に増えた」（下図）。それ以外に、「おひとり様」の激増も背景にあるという。確かに、墓に入っても「誰も参ってくれる人もいない」となれば、献体の選択は増えそうだ。
41年前に父が急死したあと、「自分にもいつ何があるか分からない」と思ったのだろう、当時42歳の母は地元の香川医科大学（現・香川大学医学部）に献体会員登録をする。それで今回病状が悪化するなか、手続きを確認しようと香川大学に連絡したところ、なんと、解剖棟の改修工事で受け入れを中止していた（来年春まで）。妹が慌てて探したところ、徳島大学が「搬送費自己負担」（通常は大学負担）を条件に受け入れしてくれることになった。
実習後、遺体は大学内で焼却され、遺骨は返還されるのだが、徳島大学からは今は献体ストックが沢山あるので、「2，3年後になる」と言われた。調べてみると、今は献体希望が多いらしく、会員登録を停止していたり、献体に条件を付けたりしている大学もある。母が登録した当時は、献体の数が足らず、医学部生の実習に支障が出ることもあったのが、この40年で様変わりしたらしい。
献体に関する法律が制定されたのは1983年。これは奇しくも父が亡くなった年で、この直後に母は会員登録している。法律の制定により、「国民への周知」（＝広告宣伝）が行われたようだ。その甲斐あって、1985年から2015年の30年間で献体数は「5倍に増えた」（下図）。それ以外に、「おひとり様」の激増も背景にあるという。確かに、墓に入っても「誰も参ってくれる人もいない」となれば、献体の選択は増えそうだ。
2024年09月24日
コロナ禍での入院
もう終わったものだと思っていた新型コロナ。昨年5月に感染症「5類」になっても、コロナウイルスが無くなったわけではないので、季節性インフルエンザ並みに弱毒化しながらも感染は続いている（下図）。
母のパーキンソン病はコロナ下でも着実に進行し、いや、コロナで外出機会が激減したことで、加速したのではないかとも思っている。私もそれまでは、毎月東京と香川を往復していたのだが、香川県下では「東京の人と会うと2週間来院するべからず」というルールが出され（東京だからリスク高いということはあるはずがないのだが💦）、3年間、香川に行っても、母とは自宅の窓越しに数分間話すだけになった。
ようやく昨年から緩和されて、実家に入ることもできるようになった。ところが、入院すると話は別。面会できるのは「1日1回30分以内、家族2人まで」というルールがあり、東京から半日かけてお見舞いに行っても1日最大30分までしか会えない。家族4人で行けば、1日で会えず、2日に分けなければならない。
病院なので、コロナ対策に神経質になっているのは理解できる。ただ、母の場合、パーキンソン病のため、嚥下に問題があり、自宅では食べ物にとろみをつけて、介助してもらい食べていた。入院すると、介助してくれる人がいない。家族も前述の通り、滞在できないので、食事の介助ができない。
病院は母だけに摂食介助してくれないので、必然的に、入院即点滴となった。点滴では必要な栄養が全部摂れるわけではなく、母は見る見るうちに衰弱していった。医者からも、点滴では無理なので、「胃ろうしますか？」と聞かれたのだが、そこは以前からの母の意向で断った。昨日も書いたが、ここ数年、対処療法の薬もだんだん効かなくなり、全身の痛みで見てられない状態だったので、胃ろうしてまでという判断もあった。
付け加えて、人と会話できる機会が1日で最大30分であり、他の時間は独りになる。看護士は時々体温や血圧の測定に来るだけ。世間話などしてくれそうにない。これでは、孤独と刺激の無さから認知力が低下することは間違いない。母の顔から表情が消えて行った。廊下には、「医療関係者の『働き方改革』にご協力を」とポスターが貼ってある。
病院は特定の疾患を治すための施設。介護施設ではないので、介護を必要としながら治療しなければならない患者にはまことに不向き。パーキンソン病患者を受け入れてくれる介護施設もあるにはあるのだが、母の場合は、自宅で最後まで居ることを望んでいた。どうするのが良かったのか、考えてしまう。
母のパーキンソン病はコロナ下でも着実に進行し、いや、コロナで外出機会が激減したことで、加速したのではないかとも思っている。私もそれまでは、毎月東京と香川を往復していたのだが、香川県下では「東京の人と会うと2週間来院するべからず」というルールが出され（東京だからリスク高いということはあるはずがないのだが💦）、3年間、香川に行っても、母とは自宅の窓越しに数分間話すだけになった。
ようやく昨年から緩和されて、実家に入ることもできるようになった。ところが、入院すると話は別。面会できるのは「1日1回30分以内、家族2人まで」というルールがあり、東京から半日かけてお見舞いに行っても1日最大30分までしか会えない。家族4人で行けば、1日で会えず、2日に分けなければならない。
病院なので、コロナ対策に神経質になっているのは理解できる。ただ、母の場合、パーキンソン病のため、嚥下に問題があり、自宅では食べ物にとろみをつけて、介助してもらい食べていた。入院すると、介助してくれる人がいない。家族も前述の通り、滞在できないので、食事の介助ができない。
病院は母だけに摂食介助してくれないので、必然的に、入院即点滴となった。点滴では必要な栄養が全部摂れるわけではなく、母は見る見るうちに衰弱していった。医者からも、点滴では無理なので、「胃ろうしますか？」と聞かれたのだが、そこは以前からの母の意向で断った。昨日も書いたが、ここ数年、対処療法の薬もだんだん効かなくなり、全身の痛みで見てられない状態だったので、胃ろうしてまでという判断もあった。
付け加えて、人と会話できる機会が1日で最大30分であり、他の時間は独りになる。看護士は時々体温や血圧の測定に来るだけ。世間話などしてくれそうにない。これでは、孤独と刺激の無さから認知力が低下することは間違いない。母の顔から表情が消えて行った。廊下には、「医療関係者の『働き方改革』にご協力を」とポスターが貼ってある。
病院は特定の疾患を治すための施設。介護施設ではないので、介護を必要としながら治療しなければならない患者にはまことに不向き。パーキンソン病患者を受け入れてくれる介護施設もあるにはあるのだが、母の場合は、自宅で最後まで居ることを望んでいた。どうするのが良かったのか、考えてしまう。
2024年09月23日
指定難病パーキンソン病
今回の母の闘病と、その後の介護、入院、そして葬儀後の献体まで、感じたことを記憶が新たなうちに備忘として書いておく。昔なら、そうした体験を親せきや先輩方から聞きつつ心づもりをしてきたと思うが、世代間の交流が薄くなっている今日、多くの人が予備知識もないまま渦中に放り込まれる。
まず、うちの母の場合は、パーキンソン病であった。発症したのは10年程前。最初は「体が重い」と言っていたのが、次第に「体に鉛が入っているよう」と言い出し、自分で着替えが困難になった。ただ、初期のパーキンソン病は判定が難しいらしく（似た症状を示すいくつかの病気が存在）、最初に受診してから決定されるまで1年近くかかった。
パーキンソン病が確定したものの、パーキンソン病には治療法がない。だから指定難病なのだが、主な対処療法としては薬物治療によるドパミン補充がある。しかし、薬物療法の常として、段々と効かなくなってくる。そのため用量を増やしていくと、今度は副作用が出る。
そして、母の場合、これはパーキンソン病でも珍しいらしいのだが、薬が切れると体中の痛みを訴えるようになった。それも、本人曰く「刺身にされて切り刻まれているよう」という鋭い痛みらしく、体をよじって「痛い、痛い」ともだえるので、見ていられない。
このため、ここ2年ほどは、1日に8回、3時間おきに服薬していた。それでも薬が効いている時間は半分ほどで、1日の半分は、痛みに身悶えしていた。薬効が切れている間は、手が動かず自分で服用できないので、介助が必要になる。
うちの場合は、昔介護士をやっていた弟が家にいたため、自宅で介護をしていたが、夜中も3時間おきに服薬するので、介護の負担は大きい。これで「要介護度１」（最も軽い）はひどいと思うのだが、「薬が効いている間は自分で用足しも可能」ということで、ここ数年で2回介護度の再審査をお願いしてきたのだが、2回とも却下されてしまった。担当のケアマネジャーによれば、「パーキンソン病は状態の良い時で判断されてしまうので難しい」そうだ。
ということで、母が介護保険で受けていたサービスは、最後まで週2回の訪問リハビリと週1回の訪問看護にとどまった。デイサービスには一時通っていたが、頭脳は最後までクリアであった母には、子供じみた遊戯を強制するデイサービスは「人を馬鹿にしている」と馴染めずに止めてしまった。食事もマズいと。
かといって、自宅で口に合うものが食べられるかというと、それも難しい。発症とともに自分で料理ができなくなり、宅配の弁当となった。さらに、ここ2年ほどで嚥下障害が進み、通常食が無理になったので、市販の介護食が主食に。加工食品では食欲が出ず、体重は半減して骨と皮だけに。コロナ規制が緩和されてからは、たまにうちの家内や娘が行ったときに料理したが、そうしたものはよく食べた。死亡時には体重が20kg以下であった。
まず、うちの母の場合は、パーキンソン病であった。発症したのは10年程前。最初は「体が重い」と言っていたのが、次第に「体に鉛が入っているよう」と言い出し、自分で着替えが困難になった。ただ、初期のパーキンソン病は判定が難しいらしく（似た症状を示すいくつかの病気が存在）、最初に受診してから決定されるまで1年近くかかった。
パーキンソン病が確定したものの、パーキンソン病には治療法がない。だから指定難病なのだが、主な対処療法としては薬物治療によるドパミン補充がある。しかし、薬物療法の常として、段々と効かなくなってくる。そのため用量を増やしていくと、今度は副作用が出る。
そして、母の場合、これはパーキンソン病でも珍しいらしいのだが、薬が切れると体中の痛みを訴えるようになった。それも、本人曰く「刺身にされて切り刻まれているよう」という鋭い痛みらしく、体をよじって「痛い、痛い」ともだえるので、見ていられない。
このため、ここ2年ほどは、1日に8回、3時間おきに服薬していた。それでも薬が効いている時間は半分ほどで、1日の半分は、痛みに身悶えしていた。薬効が切れている間は、手が動かず自分で服用できないので、介助が必要になる。
うちの場合は、昔介護士をやっていた弟が家にいたため、自宅で介護をしていたが、夜中も3時間おきに服薬するので、介護の負担は大きい。これで「要介護度１」（最も軽い）はひどいと思うのだが、「薬が効いている間は自分で用足しも可能」ということで、ここ数年で2回介護度の再審査をお願いしてきたのだが、2回とも却下されてしまった。担当のケアマネジャーによれば、「パーキンソン病は状態の良い時で判断されてしまうので難しい」そうだ。
ということで、母が介護保険で受けていたサービスは、最後まで週2回の訪問リハビリと週1回の訪問看護にとどまった。デイサービスには一時通っていたが、頭脳は最後までクリアであった母には、子供じみた遊戯を強制するデイサービスは「人を馬鹿にしている」と馴染めずに止めてしまった。食事もマズいと。
かといって、自宅で口に合うものが食べられるかというと、それも難しい。発症とともに自分で料理ができなくなり、宅配の弁当となった。さらに、ここ2年ほどで嚥下障害が進み、通常食が無理になったので、市販の介護食が主食に。加工食品では食欲が出ず、体重は半減して骨と皮だけに。コロナ規制が緩和されてからは、たまにうちの家内や娘が行ったときに料理したが、そうしたものはよく食べた。死亡時には体重が20kg以下であった。
2024年09月22日
ポストデモクラシー
特別章�△蓮∋笋燭舛痢嵬閏膽腟繊廚魑’修気擦襪燭瓩法�
先進国の投票率はどこも下がっている。「なぜ投票率は上がらないのか」についての、著者（中島）の考察は以下の通り（p167）
�ヽ搬腓垢訖啓�由主義「官から民へ」→小さな政府→議員が決定できる物事の範囲がどんどん狭くなる�⊂�選挙区制度二大政党制が促され、与党候補と野党候補による事実上の決選投票→当選するのにマジョリティ票が必要→政策が似てくる→「誰を選んでも同じ」
これが正しいのかどうか。上記二つの変化が起きたのは1990年代後半だ。行財政改革、構造改革を掲げた橋本政権が96年成立。小選挙区制度の導入も同年だ。しかし、投票率が目に見えて下がったのは90年代前半からで、上記二つが理由だとすれば時期が合わない。
それ以前から、投票率は徐々に下がってきており、しかもそれは日本だけの話ではないので「ポストデモクラシー」なのだろう。オルテガの本書で見て来た通り、それは「大衆の時代」が始まった100年前に既に前兆があったといえる。169：主権からの疎外自分の票が政治に反映されている感覚が持てない→民主主義の空洞化（ポストデモクラシー）
170：身近な政治に参加すること地方議会や首長の存在こそが大事。地域の活動など「中間共同体」に参加する。
投票行動は若い頃からの「習慣」であるとも言えそうだ。下表を見て気づくのは、30年前の30代は、今の60代ということになるが、その投票率は同じだ。つまり、30代で投票していた人は60代になっても投票しているし、投票する習慣のない人は余程のことがない限り投票していないということ。
とすると、今の20代の低投票率は、そのまま将来の全体の投票率ということになり、現在の「1/2民主主義」が「1/3民主主義」になるのも時間の問題。オーストラリアのように「義務投票制」（無投票にペナルティ）にするか？
とすると、今の20代の低投票率は、そのまま将来の全体の投票率ということになり、現在の「1/2民主主義」が「1/3民主主義」になるのも時間の問題。オーストラリアのように「義務投票制」（無投票にペナルティ）にするか？
2024年09月21日
他者との関係性を紡ぎ直す
著者の後書きともいえる、特別章「他者との関係性を紡ぎ直すには」。
157：人は「いかなるふるまいもすべし」「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし」（『歎異抄』第13章）
人間は、業や縁というものによって動かされているのだから、どういう業や縁がやってくるかによっては、どんな行いをするか分からない。それが人間というものだ。
「私」とは確固たる存在ではなく、さまざまな可能性に開かれている。また同時に、何かのきっかけで悪行に手を染めてしまうかもしれない存在。
一見、「積極的自由」の方がよく見える。しかし、これは国家の介入を正当化し、共産国家での激しい粛清をもたらした。162：「消極的自由」と「積極的自由」（英哲学者アイザィア・バーリン）消極的自由＝古典的リベラリズムが唱えた「〜からの自由」積極的自由＝ニューリベラリズムの主張した、誰もが自由を手にするためには国家が介入して条件を整えて行かなくてはならないとする考え方
20世紀は積極的自由が猛威を振るった＝共産主義の暴走国家が経済行為だけではなく思想信条にも介入→激しい粛清
2024年09月20日
「保守」とは何か
「保守思想の父」とされているのはエドマンド・バーク（18世紀イギリス政治家）で、『フランス革命についての省察』を著した。フランス革命は生活への不満に始まり、王制を打倒して国民国家の理想を目指すが、新政府内部の抗争で悲劇に終わる。バークはフランス革命に反映された人間観へ不信を持つ。
つまり、フランス革命では、大衆社会は「こうあるべき」という理想を掲げたが、私たちの理性が完璧でない以上、一足飛びに高みに到達することはできず、逆に拙速なアプローチは大衆全体を悲劇に陥れる。だから、社会の発展は「永遠の微調整」を行うしかないと主張した。120：「私たちの理性は完璧なのか」誤謬を含んだ人間という存在が、完成された社会をつくることができるはずがない。常に暫定的であらざるを得ず、一足飛びに高みに到達できない。
124：バークはまた、「復古」「反動」「進歩」のいずれの主義に対しても懐疑的範を求めるべきことは、「過去」の厚みの中にある。
「過去を踏まえ、多くの無名の人たちが積み上げた経験値に学びながら、漸進的な改革をしていく」、これが保守の発想なのだ。
ここ数年の米政治の混乱ぶりを見ると、いよいよアメリカの民主政治の危機が迫っているのかと懸念する。130：アメリカのデモクラシーはいずれ破綻する（トクヴィル『アメリカの民主政治』マスメディア支配の時代がやってくるから。首都に拠点を置く大手のマスメディアが発展していくと、人々は中間領域に参加しなくなっていく。なぜなら、中間領域に参加するのは面倒だから。
2024年09月19日
死者の民主主義
第3章は「死者の民主主義」。オルテガは「人間は二度死ぬ」という。最初は心肺停止による肉体の死。そして、死者が忘却されたとき「真の死」が訪れる。
86：それまでのヨーロッパ社会の秩序を支えてきたのは「生きている死者」とともに歩むという感覚。
87：超民主主義
過去からの教訓や制約に拘束されない民主制は非常に危うい。過去と協同せず、現在の多数派の欲望だけから解決策を求めようとすると必ず間違える。
91：フランスの詩人ポール・ヴァレリー
「湖に浮かべたボートを漕ぐように、人は後ろ向きに未来へ入っていく」
100：民主主義と立憲主義
民主主義＝最終的に多数派によって決定される政治システム
立憲主義＝憲法が権力を縛る「多数派の支持を得たとしても、してはいけないことがある」
＊戦後日本の憲法学は、民主主義を優先
高度な政治性をもつ国家の行為に関して裁判所は判断を避ける「統治行為論」
民主主義が最上位にあることが前提だから、立法府と立法府によって選出された内閣には最高裁判所より権威があると考える。
102：「歴史を知る」ことの意味
過去をもたない、あるいは過去を忘れた人間の無邪気さと原始性への後退が始まった。だからこそ、ヨーロッパとその隣接地域でなされている二つの《新しい》政治的試み、つまり、ボルシェヴィズムとファシズムは、本質的な後退の二つの明白な事例。
104：オルテガと同時代の英作家チェスタトン
「平凡なことは非凡なことよりも価値がある。いや、平凡なことのほうが非凡なことよりもよほど非凡なのである」
107：死者の民主主義（チェスタトン）
「伝統とは選挙権の時間的拡大。伝統とは、あらゆる階級のうちもっとも日の目を見ぬ階級、われらが祖先に投票権を与えることなのである」
2024年09月18日
大衆が生み出した「超民主主義」
「保守こそがリベラル」であるというオルテガ。相手を頭から拒否したり、ラベル張りをする右翼とは違う。
54：保守的であるがゆえにリベラリズムを徹底的に擁護した。
リベラルの出発点は、ヨーロッパを二分した「30年戦争」でのプロテスタントとカトリックの対立らしい。
ここで登場するのが、「大衆」と対立する概念としての「貴族」。結局、オルテガは貴族制を推奨しているのかと思うが、オルテガの言う「貴族」は制度としての貴族ではないらしい。54：価値観の問題については、戦争をしても結論は出ず、人が傷つくだけ。→自分と異なる価値観を持った人間の存在を、まずは認めよう（リベラル）。
61：反対者や敵対者とともに統治していこうとする人間。それだけの勇気や責任感、指揮をする能力をもった尊敬に値する人間。
オルテガは、大衆は「自由主義の本質を、簡単に踏みにじってしまう」という。
65：食料が不足して起こる暴動のさいに、一般大衆はパンを求めるのだが、なんと、そのやり方はパン屋を破壊するのが常である。かれらを養ってくれる文明をまえにして、広範な、複雑な規模で反応する行動の象徴。
従って、大衆が生み出した「超民主主義」は危険である。「トポスなき人間が公権の主となることによって生まれる」ものだ。では、欧州の貴族制を否定し建国された「大衆民主主義」国家であるアメリカは様々な問題を抱えつつも、いかにして大国となったのか（当時）。これについては、19世紀のフランスの政治思想家トクヴィルが『アメリカの民主主義』でこう結論付けている。
69：「アメリカの民主性がうまくいっているのは、教会や○○協会といった中間共同体、行政とは異なる人間同士の関係性が厚いことに理由がある」
つまり、アメリカ社会に沢山ある「中間共同体」で様々な社会問題が議論され、考えが深まり、その上で、それが政治的に集約されるので、大衆が扇動されにくいというのだ。トクヴィルの名著から今は200年近く経ち、アメリカの中間共同体の機能はどうなのか？教会はかなり廃れたが、チャリティやNPOは引き続き活発なようだ。
71：大衆の熱狂が生み出す「偽りの夜明け」自分たちの言うことを聞かない少数者には、暴力をふるって従わせることで、社会を支配しようとする。
75：オルテガの「あるべき国家像」
大衆が多数派を支配する国家というものが、現代においてもっとも危険。
大切なのは国家と個人の間にある中間的な領域。
2024年09月17日
現代の野蛮人
100年前に、ヨーロッパ流の教養人の没落と、アメリカ流の「大衆」の危険性を警告していたオルテガ。
専門知識を持つ科学者を原始人、はては「現代の野蛮人」とまで呼んでいる。100年前は化学や物理学が大発展を遂げた時代だった。だが、それを制御する社会制度が追い付かない。好奇心と功名心に駆られて立ち止まることを知らない科学者達を懸念した。41：現代の科学者は大衆的人間の原型科学自体がかれらを自動的に大衆的人間に変えてしまう。科学者を原始人に、現代の野蛮人に変えてしまう。
43：ヨーロッパの退廃の直接的な原因
「知者」はまず、人間は知を完成することができず、過ちやほころびがいかに多いのかを認識しなくてはならない。総合的であろうとする人間ならば、自分の専門以外の分野や「知らない」ことに対して謙虚な態度を取るはずだが、そういう「知者」は近代にはいなくなった。実際にはほんの一部のことしか知らないのに、「俺は何でも知っている」と偉そうな顔をする人間がはびこっている。
44：バランスの崩れた専門家傾向
今日、かつてないほど多数の《科学者》がいるのに、《教養人》が、たとえば、1750年よりもずっと少ない。
31：「みなと同じである」ことを選ぶ「平均人」
「大衆とは《平均人》である」
自分の存在を意味づけられている共同体（トポス）を失った人間、それこそが平均人。
平均人の特徴の一つは、他人の意見に「耳を傾けない」こと。
33：平等という名の平均化
アメリカ的な精神がヨーロッパをも席巻している。
34：平均人とは、社会の無宿者
「私」は私と、私の環境でできているのだから、その「環境」なき人間は、「私」を失っているに等しい。揺るがない土台がなく、宙ぶらりんの虚構をむなしく生きているというのが、「大衆の時代」である現代の風潮。
35：大衆は人間というものに対する謙虚さを持ち合わせておらず、「大衆であること」に対してある種の万能感をもっている
われわれの時代の凡庸な人間、つまり新しいアダムには、自分の完璧性を疑うという気が起こらない。
36：人間は本質的に不完全なもの
真に理性的な人間とは、その理性に限界があることを理性的に把握できる人間。
38：「慢心した坊ちゃん」
自らの限界に気づかず、その能力を過信して「何でもできる」と勘違いしている。自己懐疑の精神を持たず、「正しさ」を所有できると思っている。そして、そうした大衆の「正しさ」の根拠は何かと言えば、「数が多いこと」でしかない。
39：専門家こそが大衆の原型
「専門のことしか知らない」ために複雑な思考ができなくなった専門家が社会をコントロールしようとすることによって、世の中に混乱が起きている。
＝オルテガの考える「大衆化のプロセス」
2024年09月16日
「私は、私と私の環境である」
実に専門化されている現代。その流れは、産業革命に伴う労働の「分業化」によって劇的に加速した。
それぞれの専門家は増えたが、それを統合して全体最適を的確に判断するゼネラリストは増えなかった。ここでいうゼネラリストは、知識人、教養人と言ったらいいか。あらゆる組織のリーダーに必要。特に国家のリーダーたるべき政治家には。15：専門家は間違える専門を知らないからではなく、「専門しか知らないから」。人間は非常に複雑でややこしい存在であり、その人間によって構成されている社会もまた、複雑でややこしい。それを理解するためには、いろいろな角度から物事を見て、考えてみる必要がある。
16：オルテガ『ドン・キホーテをめぐる省察』1914
「私は、私と私の環境である」
→「私」は「私」だけで自己完結するものではない。
近代の人間は、どうしても「私」は「私」を所有していると思いがちですが、実は「私」の本質は、そのほとんどが、私が選んだわけではないものによって成り立っている。
17：自分の能力を過信することへの強い懐疑
さまざまなものとの出会いによって「私」を取り囲む環境ができていき、その環境との関わりによって「私」が構成されていく。
27：ドイツの社会学者テンニエス「ゲマインシャフト」→「ゲゼルシャフト」
進化していく社会の中では、古き共同体は不要になる。
＊農村ではローカル共同体の構成員として意味づけられた存在だった彼らが、都市の労働者となり、代替可能な記号のような存在として扱われるようになる。
2024年09月15日
「超民主主義」の暴走
オルテガは100年ほど前のスペインの哲学者。当時は、第一次世界大戦を経て各国で王政が崩壊、現在と同じ民主主義国家が増えていた頃。オルテガは「大衆が社会的中枢に躍り出た時代」にあって、民主制が暴走するという「超民主主義」の状況を危惧していた。
はじめに：オルテガと現代の共通点20世紀を生きたスペインの哲学者〜リベラルと民主主義
現在の感覚では、リベラル≒民主主義だが、オルテガは「リベラル＝自分と異なる他者と共存しようとする冷静さ、寛容さ」であるとし、「大衆が支配する時代においては、そうした姿勢が失われつつある」ことを懸念していた。
民主主義＝いま生きている人間の多数決立憲主義＝いまを生きる人間が決めたことでも、してはならないことがある（死者からの制約）
憲法には先祖が経験から盛り込んだ「死者の知恵」が詰まっている。だから、立憲主義の下「死者とともに民主主義を行っていく」ことが文明の英知だとした。一方、（100年前の）近代はその英知を投げ捨ててしまっていて、「暴走」しつつあるとみていた。
実際のところ、オルテガ『大衆の反逆』が出版されたのが1930年で、これは、1922年にイタリアでファシスト党が政権を取ったのと、1933年にドイツでナチスが政権を取る間に挟まれている。スペイン内戦が始まったのは1936年だ。
2024年09月14日
大学全入時代
私立大学の59%がついに定員割れ！（本年度の入学者）。私立大学だから、勝手に赤字を出して、勝手に潰れればいいじゃないかという声もあるが、�〇篶�大学といえども文科省から運営補助金が出ている、�△海Δ靴芯螳�割れの私立大学が高卒レベルにも満たない「学士」を量産しているため、社会全体の生産性が上がらない、という点で問題があると思う。
日本大学の事件で明らかになったが、日本大学は年間90億円の私学助成を受けていた。かように、日本の私立大学は主に学生数に応じて、数十億円の助成を受けている。その総額は年間3000億円に上る。だから、税金が使われているという意味で、全国民に関係がある。
第二に、定員割れしている私立大学の多くは偏差値も低い。私も、一時、偏差値40ちょっとの地方私立大学の講師をしていたが、日本語が通じない。その何割かは中国人留学生で、驚くべきことに、その大学では「留学生割引」があって、70万円の授業料が半額になっていた。日本人学生だけでは全く定員に満たないので、不足分を留学生で埋めていたのだ。
言ってみれば、納税者の税金で、留学生の教育をしている。何人かの中国人留学生に「なぜわざわざ留学してきたの？」と聞くと、「中国ではいい大学に入れないから」と言う。中国でも大学は増えていて、入れる大学もあるはずなのだが、「いい大学に行けないなら日本に留学する方がいい」という。
留学費用はいずれにしろ親が出してくれるし、中国に帰ったとき、「日本に留学していた」方が、国内の三流大学よりいいのだそうだ。
132：イギリスでは自分の住んでいる家を勝手に変えることもできない
建て替えて前とは違う高い建物にするとか、壁の色を変えるとか、そういうことは一切できない。
133：イギリスの風景を変えたくない
自分の国を愛するということは、街や地域を含めた、その全体の風景を大事にすること。
168：大学の全入時代
ここ4，5年の間に大学の学部の数は急増。国立大学でも、公立大学でも、私立大学でも学部が次々と新設。他方、消え去った学部はたった25。
169：日本の大学総数は700近く
教育に手放しの自由競争を持ち込むのが間違い。
「子どもには自由にやらせて勉強を強制したことはありません」
186：男性側に相手がいない
女子学生のほうは勉強はできなくても自分は胸で勝負するとか、顔を整形して勝負するとか、短いスカートをはいて勝負するとかいって異常なほど自信を持っている。
193：イギリスの大学生2割がドロップアウト
銀行から無利子ローンを借りて大学進学が多いので、学位も取れなくて、借金だけ増えてしまう。ドロップアウトする学生には、親がワーキングクラスで、大学を出てない家庭の子どもたちが多い。←労働党のブレア政権が、これまで大学に行った人のいない家族の中の子どもたちを大学に行かせようと、大学を拡大。新大学の多くはかつては専門学校。
2024年09月13日
被害者の女性もあまりに幼稚で不用心
海外にも残酷な犯罪者はいる。ほとんどの国で、日本よりもはるかに多い。しかし、日本のように幼稚な、理由とも言えないような動機で犯罪を犯すのは、あまり聞かない。
40：いかに将来に希望のない若い人が多いか
ダメだダメだと思いつめていき、ダメな理由を遠い過去の出来事の中に探ったり、他人の幸福をねたんだり、あるいは、せめて悪いことをすることで”有名”になりたい、テレビに出たいなどと考え、それを心の中の生きるための炎とするのかもしれない。
41：秋田連続幼児殺害事件「畠山事件」
何をしても長続きのしなかったそれまでの人生、妊娠して仕方なく結婚、そして離婚、わが子への虐待（育児放棄）、突発的な殺害、メディアの注目を集めた演技。彼女が幼児期に経験したであろう学校でのいじめ、親や家族の無関心、まじめに生きることを教えられなかった少女時代、見栄と虚栄ですごした20代。その頂点にきたのが連続幼児殺害。
43：大阪・茨木市で42歳の男性が女性を約5か月間マンションに監禁し暴力
同じ容疑者が04年にも別の女性を監禁して死亡させる。過去9年間に少なくとも6人の女性が同じマンションで監禁された。
44：被害者の女性もあまりに幼稚で不用心
海外では誰もが知っている、女性が守るべき基本的な”用心”が知られていない。
「知らない人についていかない」「知らない人の車に乗らない」「見知らぬ人がくれた食べ物や薬を口に入れない」
2024年09月12日
「国土の均衡ある発展」の結末
29：「地方の子どもたちが、犯罪に手を染めやすい」
というのは、本書には根拠が示されてないが、感覚としては合っていると思う。なぜなら、大都市圏の人口は、首都圏3600万人、関西圏1200万人、名古屋圏600万人、札幌270万人、福岡230万人で合わせて6000万人。日本の半分だ。しかし、少なくとも報道されている少年少女犯罪の比率は大都市圏と地方が半々とはなっていない。
というのは、本書には根拠が示されてないが、感覚としては合っていると思う。なぜなら、大都市圏の人口は、首都圏3600万人、関西圏1200万人、名古屋圏600万人、札幌270万人、福岡230万人で合わせて6000万人。日本の半分だ。しかし、少なくとも報道されている少年少女犯罪の比率は大都市圏と地方が半々とはなっていない。
その理由に挙げられているのが、「ケータイ、ネット、車（高速道路）」。この「三種の神器」の共通点は、匿名性を保ちながら空間を移動できるところ。ケータイ（スマホ）とネットは全国共通だが、都会では望めばリアルに触れられるものが多いのに対して、地方ではメディアやSNSから流れる情報にあれこれ「妄想」を膨らませてしまうからではないかと思う。都会の子のほうがその点は冷静だ。
著者の意見は、これが「国土の均衡ある発展」の結末。
22：地方の東京化
地方での家族の暮らしはバラバラに。真夜中に幼児を連れてゲームセンターに遊びに行く夫婦、ファミリー・レストランで朝食を幼児と共に取る母親。
23：かつて私たちが考えていた「親」の姿や行動とはかけ離れた親
東京よりも地方都市に多くみられる。
33：静岡県で高校1年生女子が母親に毒物のタリウムを日常的に与えて毒殺未遂
母親の衰えていく様子を自分のブログで詳細にレポート。動物虐待をしたり、実験をするのが好きな女子高生。
2024年09月11日
紳士の国
「鳥肌が立つ」といいう語を「感激した」という意味で使っているのをはじめて聞いたときには、かなりショックだった、という著者。私でも違和感があったので、私の親世代（1936年生まれ）の著者にしたら、それが「ショックだった」というのも理解できる。
本書から25年、「鳥肌が立つ」の誤用はすっかり市民権を得て、国語辞典にも載っているらしい。
「教養とは自己抑制を学ぶこと」には納得。ロンドン在学中に公共の場で怒鳴り散らす人を見たことがない。いや、それも30年前の話なので、今は高齢化でいるのかもしれないが。
本書から25年、「鳥肌が立つ」の誤用はすっかり市民権を得て、国語辞典にも載っているらしい。
「教養とは自己抑制を学ぶこと」には納得。ロンドン在学中に公共の場で怒鳴り散らす人を見たことがない。いや、それも30年前の話なので、今は高齢化でいるのかもしれないが。
129：日本人は口下手？
口下手でも寡黙でもなくて、筋の通った意見が言えないだけ。それが証拠に、プライベートなおしゃべりとなると、これほどおしゃべり好きな国民はいない。公の席ではっきりとものを言うことができないのは、おそらくあとで責任問題が起きては困ると思っているから。
142：日本語が危ない！
英語の論理がわからないと言うけれど、その前に、話す場合も書く場合も、日本語で論理が組み立てられていないし、筋の通った表現になっていない。
172：「個性的」のはきちがえ
子ども同士がけんかをしたり、殴り合ったり、取っ組み合いをしたり、言い合ったり、理屈を言って相手をやっつけたりすることは、おおいに奨励すべきであって、それを抑えてお行儀のいい子供をつくるというんは、けっして教育的に効果のあることではない。
184：教養とは自己抑制を学ぶこと
イギリス人のなかでは、そういう感情の爆発や怒りや嘆きの暴発は、無教養な人、無教育な人がやるものだと考えられている。
195：使い捨てや大量消費
アメリカ的な生き方、アメリカ的な思考を尊重するだけでなく、日本の伝統を破壊し、自分自身の思考を放棄してしまった。
199：過去を否定することは、未来を否定すること
敗戦のショックで、しつけも道徳も伝統も、誇りさえも忘れてしまった。いま70歳以上の人たちが、若い世代に歴史を伝えなかったことの罪は大きい。
2024年09月10日
日本の危機の根
マークス氏が歯に衣着せぬ日本の青少年批判。イギリスはパンクの元祖だが、元が階級社会なので、大学に行く層とまた違うのは確か。
13：腐敗は日本社会全体の問題
山一証券をはじめとする金融証券会社の腐敗や、大蔵省から日銀にまでおよぶ監督官庁の腐敗は、過去にもしばしばあった一官僚の汚職などをはるかに超えて、日本社会全体の問題として考えられるべきである。
29：見るにたえない浮浪少年と売春婦風少女
あの娼婦のような厚化粧をした制服姿の中学生や高校生を見るくらい気持ちの悪いものはない。（中略）これでみんなと同じように「個性的」になったと考えて安心するのだろうか。
101：勉強の目的を問う大学入学試験
Aレベルの試験にパスすると、その成績にもとづいて大学を選び、希望する大学に申請書を提出する。大学は独自の試験はおこなわず、Aレベルの結果と内申書と面接で、入学許可か不許可を決める。
109：可愛い
可愛い女性などというのは白痴と同じだとイギリスの大学生は考えている。
2024年09月09日
実際に使える英語
今年イギリスでお亡くなりになったのを聞いて、何冊か読んだなかの一冊。
20年近く前の本だが、この点特に変わっていない。この20年で日本企業の国際化はグッと進んだ。国内市場に見切りをつけて、本格的に海外市場に取り組み始めた。同時に、欧米市場での保護主義が進んだので、これまでのように製造業も輸出で済まなくなり、現地生産に舵を切った。結果、駐在員が増え、並行して帰国子女も増えた。はじめに：中高校時代に海外へ語学研修に行った人も多いしかし、日常会話をこえた、自分の意見を述べる、議論をするなどという段になると、とたんに言葉に詰まり、支離滅裂になる人が意外と多い。
最後に：英語の達人は日本語の達人結局、思考や意思伝達の手段である言葉を大切にする人は、言葉に関心が高く、興味さえ持てば外国語のレベルも上がると思う。外国人と軽やかに口語で話すのはかっこよく見えるかもしれないが、仕事でしっかりした組み立ての文章を書いたり、交渉相手を説得することとは関係ないので、それだけで終わってしまう。
40：countable/uncountable
最近はイギリスでも、a cup of tea→a tea/teas
70：リズムが悪いと通じない
発音より大事なリズム。
135：idiomが分からなければ、簡単な文もわからない
使えるidiom。
2024年09月08日
虚人、巨人を語る
サブタイトルに「国際暗黒プロデューサー」とあるから何かと思ったが、簡単にいえば「呼び屋」。海外から音楽家にサーカス、格闘家など、色んな見世物を呼んでくる興行師。私の親の世代の方で、知らなかったのだが、1972年モハメドアリを武道館に呼んでいる。
1960〜70年代に一世を風靡した人で、芸術家、文化人、政治家など幅広い交友を誇った。その一人が三島由紀夫で、三島事件を「退屈しのぎの究極」と総括している。
この世の何が本物で嘘か、すべては虚実皮膜の狭間にある。私のしてきたすべては、「暇つぶし」。それが「虚人」の生き方なのだ。
152：三島由紀夫
三島が「戦後文学史上の最高傑作」と絶賛する『家畜人ヤプー』に関しては三島の推薦もあり、『血と薔薇』にのっけたらいいんじゃないかということになった。ところが、その作者が何者でどこにいるかも全然不明だということがあって、それでオレが作者を探し当てて連載することになった。
154：『鏡子の家』
彼は戦後のある時期まで、革命も含め、世の中に何かがおきると、そう思って、非常にスリリングな期待を世の中に抱いて色んな小説を書いたわけですね。しかし実際は何もおきずに、いわゆる相対的安定期に日本が入ってきた。何もおこらない。その絶望感から最後に三島事件を起こした。
156：三島事件
あれをもし”遊び”というのなら、ある意味最終的な究極の遊び。人生を”退屈しのぎ”という風に考えると、退屈しのぎの究極。
2024年09月07日
ロシア
ウクライナ軍がロシア領内に侵攻したことで、新局面を迎えたウクライナ戦争。ロシア軍の死傷者数は今年3月の時点で、35万5千人を超えたと推計されている（英国防省）。実は、「その大部分がロシアの少数民族、特にイスラム系民族」と言われていて、ロシア国内の少数民族の不満が高まっている。
126：ロシアにとって最大の脅威は中国ロシアに奪われた領土は取り戻せていない。1858アイグン条約→アムール川以北をロシア領に1860北京条約→沿海州がロシア領土に→ロシア最大の軍港ウラジオストク
そのロシアに兵器を供給し、ロシア産石油・ガスを安く買っているのが中国。今のところ、双方にとってメリットのある取引だが、国力は今や中国の方がはるかに大きい。中国は南シナ海に進出しようとしているが、実は、歴史上中国領土でありながら、未だに取り戻せてないのが、沿海州。ロシア最大の軍港ウラジオストクも含まれる。
134：インドの野望
モディ首相の危険なヒンドゥー・ナショナリズム。
153：日本の納税者の権利を代弁する政党が必要
岸田首相の定額減税〜約1500万の住民税非課税世帯に対しても1世帯当たり7万円を給付
もともと税金を払っていない人にまで7万円を給付！
174：過去、日本は国の借金が莫大になると、それを踏み倒す政策
明治維新（旧藩の債務整理）
戦後の新円切り替え（預金封鎖）
2024年09月06日
中国不動産バブル崩壊
このところ明白になった中国の不動産バブル崩壊。日本のバブル崩壊を思い出すが、1990-2005年に処理された日本の不良債権は約100兆円。それに対して、中国のそれは2200兆円以上で、その多くの債権を持つ地方政府も破綻状態らしい。
中国政府は、必死で経済成長を維持して、そのプラスで不良債権処理を進めようとしている。中国のGDPは18兆ドルだから、約2500兆円。最近の経済成長は鈍化しており、直近では3~5%と推定されている。ということは年間約100兆円の拡大で、そのペースでは不良債権処理に20年掛かりそう。
古今東西、内国経済が不安になると、その打開策を外に求める傾向がある。独裁政権なら尚更で、東アジアの緊張が高まっている。
56：これからコモディティはデフレ
古今東西、内国経済が不安になると、その打開策を外に求める傾向がある。独裁政権なら尚更で、東アジアの緊張が高まっている。
56：これからコモディティはデフレ
2011-13のわずか3年間で中国が使ったセメント量は６ギガトン。
米国が1900-2000の100年間で使ったセメント量が4.5ギガトン。
106：中東危機
イスラエルを支持する米国⇔イスラム諸国を支援する中国・ロシア
日本の中東石油依存度は94%＋南シナ海を通るタンカー
114：2023米国はフィリピンで4カ所の軍事基地使用権を得る
対中国。フィリピンを経済発展させる。
115：デカップリングでベトナム
2024年09月05日
地政学とマネーの未来
前作『エブリシング・バブルの崩壊』の続編。情報がアップデートされているが、論調としては同じ。
16：日本を取り巻く地政学的風向き1950-1990 戦後の好景気1990-2013 冷戦終了→低迷2013-2053 新冷戦で日本の黄金期？
FDIというと、日本企業による対外FDIが注目されることが多いが、日本への対内FDIが上昇しており（下図）、「2022日本へのFDIが対GDP比1.1%で中国を超えた」というのは知らなかった。その後のTSMCの熊本工場建設など、さらに拡大しているはず。この傾向が続けば、日本経済は当面安泰だ。
21：自動化時代において、人口減少は追い風これから人口が多い国は大変。
これは、国から地方まで少子化対策を真っ先に掲げる日本で、重要な指摘。単純労働者が必要な時代は終わっている。これから先、新しい技術やサービスを生み出せるクリエイティブクラスか、機械に取って代われない繊細なサービスを提供できる人しか必要なくなるだろう。数だけを追い求める少子化対策は税金の無駄遣いでしかない。
2024年09月04日
ローマ帝国衰亡史
17-19世紀にかけて、イギリスの裕福な貴族の子弟が、大学卒業とともに欧州大陸（主に文化先進国であるフランスとイタリア）を数ヶ月から数年間旅行したのがグランドツアー。今の日本で言えば「卒業旅行」に近い。
ギボンもオックスフォード大学卒業後グランドツアーに出かけるのだが、ギボンの大陸周遊は1763-70年の7年に及ぶ。
131：幼年に身につけたフランスの言語と風習はかねて私の心に、一層大規模かつ自由な計画にもとづいて大陸を再訪したいとの強い欲求をを生み出していた。習慣そして多分には理性の法則にもとづいてイギリス人紳士の教育は外国旅行で完結する。
パリでのギボンの観察が面白い。パリの荘厳な建物や、多彩な芸術学問、贅沢な財宝は、フランス王の権限がイギリス国王のように制限されていないためだと納得している。
132：私は毎朝多くの時間をパリとその近郊の遊覧、その建物が世に知られる各地の教会や宮殿の参観、帝室の工房、書籍や絵画のコレクション、各種の多彩な芸術学問や贅沢の財宝の見学に充当した。パリはロンドンに比して格段にこれら珍重すべき高価な物品に溢れている、何故ならばフランスの首都の富裕はその政府と宗教の欠陥にもとづいているから、と聞けばイギリス人も特に異論を唱えないだろう。ルイ14世とその後継者たちの不在によってルーヴル宮殿は未完のまま残されていたが、ヴェルサイユの砂地とマルリの沼沢地に投ぜられた膨大な国費は1人のブリテン国王の法制上の収入を以てしては到底支弁されない金額であろう。
イギリスに帰国したギボンは「ローマ帝国衰亡史」の執筆に取り掛かる。
一方、父親に倣ったのか、国会議員にも立候補する。159：ロンドン生活、議会、「ローマ帝国衰亡史」1770-83私は父親への最後の荘重な義務を果たして、時間的にも精神的にも最小限の心の余裕を獲得すると、直ちに私自身の境遇と意向に最も適合した独立の生活の計画を立て始めた。しかし網目は余りにも錯綜している上に私は極めて不手際で無能力であったために、私が農事の管理から解放されて自分の住居をベリトンからロンドンの一軒家へ移すまで2年近い歳月（1770-72）が流れ去る有様であった。（中略）このベリトンの故郷の屋敷と地所は今や私の所有となり、私は誰への気兼ねもなく自分の趣味に最も合った人々を招待できた。
164：1774年9月 下院議員私の従姉妹を娶っていたエリオット氏の友情で、私は総選挙でリスカードの都市選挙区から選出された。私は大ブリテンとアメリカの歴史的な抗争が開始されたこの記念すべき時期に下院の議席を占め、真剣かつ無言の投票で母国の利害はともかくその権利を一貫して擁護した。（中略）私が議会に席を置いた通算8回の会期は、歴史家の最初のそして最も大切な徳目たる市民的慎慮の学校であった。
2024年09月03日
ヨーロッパの共通語
オックスフォード大学とケンブリッジ大学が登場。ギボン自身はオックスフォード大学を出ている。
ギボンもスミスも18世紀の人物なので、これは当時の話なのだが、オックスフォード大学は英語圏では最も古い大学。11世紀に成立し、1167年にパリ大学がイギリス人入学を禁止したことから、パリから引き揚げてきた学生が集まって発展した。56：オックスフォード大学では公的な教授が皆すでに久しく、授業する口実さえも全く放棄しているアダム・スミス博士は彼らの怠慢の原因として、オックスフォード大学の教授連中が彼らの受講者の人数の増加や彼らの感謝の見返りに値するように彼らを促すはずの自発的な謝金の受領の代わりに、自分の努力の必要性も統制の危惧も感ぜずに定額の俸給の上にあぐらを掻いているからだ、と指摘している。
73：ケンブリッジ大学の方はその兄弟に比してまだしも修道院の悪徳に染まる程度が少なく、ハノーヴァー王家へのその忠誠心もオックスフォードよりも一歩早く固まって、不滅なニュートンの名前と哲学は彼が育った母校の大学で初めて公認されたことを付言しておきたい。
1209年に殺人罪で告発された学生二人が処刑されたのをきっかけに、大学は一時解散！この時に、オックスフォードから教員と学生がケンブリッジに移り、ケンブリッジ大学ができる。このため、オックスフォードではケンブリッジ大学をnew universityと呼ぶことがある。そのせいかどうか分からないが、オックスフォードがコンパクトな街に39ものカレッジが密集していて、半ば観光地化している。ケンブリッジ大学のほうが、田園風景の中にカレッジが点在していて、ゆったりしている。
112：これまでラテン語は教会の典礼で聖別され、さらに古代の模倣により洗練されて15・16世紀にはヨーロッパの学者たちはこの共通の学術言語で会話し執筆するという、それ以降次第に廃絶された特権を享受した。
ラテン語は古代ローマ帝国の公用語。もともとローマで使われていたラテン語が帝国の公用語になることで、ヨーロッパから中東、北アフリカまで、帝国全土の支配階級・知識階級の言葉として普及する。
113：近代になるとフランス語が、この国の文士の活躍やこの国民の社交的な風習、フランス王国の勢威そしてプロテスタントの国外亡命によって普及してきた。一部の外国人はヨーロッパへの呼びかけにこの共通な言語を使用する機会を捕え、現にドイツはその国の哲学者とその国王のそれぞれ第一人者たるライプニッツとフリードリヒの権威を引き合いに出してよかろう。
現在の世界で、英語が事実上の公用語となっているのと同様、一度広まったラテン語は、ローマ帝国が崩壊しても、カトリック教会とともに、ヨーロッパに定着する。
124：私が国民軍に負う主要な恩義は、それが私をイギリス人と兵士に仕立て上げたことである。もしも私がこの新しい顔触れと新しい知友との多面的な交際で揺さぶられなかったならば、そしてこの経験を通じて否応なしに我が国の指導者連中の性格や政党の現状、官庁内の形式、我が文民と軍事の体制の機能に直接触れる機会がなかったならば、生来内気な私は外国教育の後の長い期間ずっと祖国の中で異邦人として留まったことだろう。
18世紀のオックスフォード大学、ケンブリッジ大学でも、ラテン語は必修。その知識は、ギボンのローマ帝国研究にとても役立っただろう。
2024年09月02日
ギボン家系
『ローマ帝国衰亡史』で有名な英歴史学者のエドワード・ギボン。その自伝なのだが、これがいわくつきの書。というのは、あのギボンの自伝として長年読まれてきたのは、シェフィールド版「ギボン自伝」。
編集者シェフィールドは自分の死に際して、彼が所蔵する一切のギボン関係資料の閲覧ないし公開を遺言によって厳しく禁止。ギボン死後百年記念の19世紀末まで丸々1世紀。1894年になって、この「自伝」に関するギボンの草稿がすべての彼の他の手稿と同時に公開されたときに、文壇や学界はシェフィールドによる原文の改変や文章の任意な省略や置き換えの予想外の程度に驚愕。
編集者であるシェフィールドが自分の物でもないギボンの原文を公開禁止にできるのか？と思ったのだけど、ギボンは生涯独身で子がいなかったから、可能だったのか？
8：私の家系は元来ケント州の出であり、この地の住民は太古から愛想のよさ、勇敢さそして自由という地方的な気性を今日に伝えている。その境がサセックスと外洋に臨むこの州の南部地域は以前は広大なアンデリダ森林に一面覆われていたし、今日も依然としてウィールド地方つまり森林地帯なる呼称を保持している。
8：私の家系は元来ケント州の出であり、この地の住民は太古から愛想のよさ、勇敢さそして自由という地方的な気性を今日に伝えている。その境がサセックスと外洋に臨むこの州の南部地域は以前は広大なアンデリダ森林に一面覆われていたし、今日も依然としてウィールド地方つまり森林地帯なる呼称を保持している。
9：騎士道の時代に兵士の兜と盾を飾り立てた家紋のしるしは、今では自家用馬車を建造する財力の持ち主が各自の好みに従ってその鏡板に描いてよい空虚な装飾に成り下がっている。私自身の家紋は、まだ紋章院が血統と名前の区別を厳格にしていた時代にケント州のギボン家が使用していたのと同じ、「紺地に三つの銀色帆立貝殻に囲まれて後ろ足で立つ正面向きの獅子」である。
13：John Gibbon, born 3 November 1629
Grammar School→Jesus College, Cambridge University
一兵卒および旅行者として諸外国を遍歴してフランス語とスペイン語の知識を身に付け、しばらくジャージ島で暮らした後に大西洋を渡って新興のヴァージニア植民地に1年間以上居住（1659）。王政復古の後にイングランドへ帰国した彼は、間もなく結婚してロンドン塔に近い、後ほど私の祖父に伝えられたセント・キャサリンズ・クロイスタの家に落ち着き、やがて（1671）紋章官補たる職位と称号で紋章院に就職した。彼はこの地にあって、50年近く自分の義務と趣味が一つの仕事に結合するという稀有な幸運を享受した。彼の名前は紋章院の中で記憶され、彼の多くの手紙は今も保管されている。
14：彼（John）の兄弟たるレドンホール・ストリートの亜麻織物商マシュー・ギボンは娘一人と息子二人をもうけた。息子とは即ち1666年生まれの私の祖父エドワード・ギボンと、後にカーライルの主任司祭になったトマスである。
18：祖父エドワード・ギボン Tory
南海会社理事の最初の訴追の際に身柄を収監される。彼が宣誓にもとづいて下院に引き渡した財産額は、それ以前の不動産処分を別にして総計161,543ポンド（遺留分1万ポンド）。
19：父エドワード・ギボン1707
Westminster School => Emanuel College, Cambridge
学者及び紳士しての自由教育の恩恵。
フランス滞在後、1734年の総選挙で下院議員。Tory
2024年09月01日
ヤバいやつ
好きな作家、吉田修一のまだ読んでなかった作品。これも映画化された。
結局、犯人は何に「怒り」を覚えて、無関係の、それも親切にしてくれた被害者を殺したのか。それは分からないまま。というか、「余程の理由がなければ殺人なんてしないだろう」と思うのが、そもそも間違いなのか。
「ムショに何度も入っているから分かるんすよ。ほんとにイカれている奴ってのは、ああいう顔してんですよ。一見、普通の顔してっけど、その普通の顔で人殺すんですよ」
��54：ゲイ出会い系アプリ
このサイトを眺めていると、この中の全員と会うと思えば会えるのだと楽しくなっている反面、全員と会えるということは、結局「誰とも」会えないのと同じなのだとも思う。
��165：沖縄の台風
風があんなに恐ろしい声を上げるとは思ってもいなかった。雨があんなに感情的に降るとも知らず、空があんなに低くなるなんて想像したこともなかった。たぶん、自分は昨夜、生まれて初めて台風を見たのだと泉は思う。
��173：決して一目で凶悪そうな顔というわけではない。もっといえば、これでニコッと笑えばそれなりの笑顔にもなる。だが、罪を繰り返す者の顔には、諦念や貪欲さや幼稚さの糸のようなものが、それぞれの針で縫いつけられており、その引き攣れがある。
