2024年08月
2024年08月31日
闘いを終える
文学部の新自治会設立を妨害しようとした革マル派。新自治会の一部が武装し「行動委員会」を立ち上げ、総長を拉致して団交をもとめる。
158：武装して文学部キャンパスに登場するという二連協の決死の行動が革マル派を激怒させる自分たちのナワバリの破壊者と捉え、他大学からも動員した鉄パイプ部隊で急襲し、負傷者を多数出した挙句、各教室を回って力を誇示し、徹底的に反抗の芽を摘み取ろうとした。
第一文学部では革マル派の暴力行為によって、すでに100人近い学生たちが通学できなくなっていた。新自治会運動からも一般学生が離れていく。
巻末に、「暴力支配を象徴した人物の転身」の例が出てくる。色々な人にインタビューを申し込むが、受けてくれた人はごく一部で、ほとんどの人は返信がなかったか断られたか。177：闘いを終えるセクト間の内ゲバが激化し、それに巻き込まれるような形で武装化をめぐって自治会が分裂していく中、重ねられていた指は次第に離れてゆき、最後に、元の一人の指に戻った。そして、私は自分の指をポケットの中に戻した。
樋田氏は当時、大岩氏に脅されたことを強烈に覚えていたが、大岩氏（辻教授）はそれを覚えていないという。これは、いじめっ子がいじめたことを覚えておらず、いじめられた子は一生の心の傷になっていることと同じ構造か。205：事件当時の革マル派の一文自治会副委員長・大岩圭之助→明治学院大学教授「辻信一」コーネル大学博士号。スローライフ思想家、環境運動家。
エピローグ：大学本部は、事件の後も、革マル派が主導する早稲田祭実行委員会、文化団体連合会、さらに商学部自治会と社会科学部自治会の公認を続ける
結局、大学の「事なかれ主義」は奥島総長が就任するまで事件から20年以上続く。
1994年に奥島孝康総長が就任「革マル派が早稲田の自由を奪っている。事なかれ主義で続けてきた体制を変える」と表明し、95年に商学部自治会と社会科学部自治会の公認取り消し。1997年、早稲田祭を中止し、実行委員会から革マル派を排除。
2024年08月30日
1973新歓パンフレット「彼は早稲田で死んだ」
本書のタイトル「彼は早稲田で死んだ」は、自治会再建運動の中で作られた1973新歓パンフレットのタイトルをそのまま取っている。このパンフレットの中で、リンチ殺人事件の経緯を詳述し、既存の文学部自治会の異常さと、新自治会による再建の重要性を説いた。
しかし、ここで、新自治会設立のための行動委員会がヘルメット姿で入学式に乱入し、総長を拉致してしまう。これが、新入生たちに「反革マルもグループも政治セクトと同じ」との先入観を与える。それまで経緯を知っている在学生に支持されていた新自治会運動だが、これを機に新入生にそっぽを向かれてしまう。128：団交実行委員会という「鬼っ子」入学式で黒ヘル部隊を見た新入生たちの多くが、自治会再建運動をセクトと同一視するようになってしまう。
その翌月、新自治会運動の中心にいた樋田（著者）は、革マル派に襲撃され重傷を負う。それ以降、朝日新聞に就職しても、定年退職した今も、悪夢となって蘇るという。141：1973年5月14日法学部の学生集会後、鉄パイプでメッタ打ち1か月間歩行不能の重傷。革マル派「桶田に革命的鉄槌を下す」チラシ。
156：2J吉岡由美子「マルクスの本は読まなくても、革マル派がひどいことはわかった」その日以来、精神的苦痛などで大学へ通えなくなり、半年後、大学を中退。その後、「前衛舞踏」のダンサーになり、活動の拠点をドイツ・ベルリンに置く。
2024年08月29日
キャンパスに君臨する「独裁政府」
川田君殺人事件の後、一文学生自治会への学生抗議集会が起こる。それは、革マル派への全学抗議集会に発展し、一文学生自治会の田中委員長は、本部で抗議学生に取り囲まれ事件への責任を追求された。昼にはじまった集会が夜になろうとする頃、大学当局が警察に「革マル派の救出要請」を出す。
本書の著者である樋田氏がその中心になり、革マル派を排除した新自治会の設立を目指す。82：1P組 松井今朝子（後の直木賞作家）『師父の遺言』大学当局と革マル派との癒着。機動隊の導入によって早期解決を図る。「30人ばかりの私のクラスでは、この紛争による犠牲者が何人も出てしまった。一般学生の代表を務めたり、民青との関係があるとみられた学生は革マル派に狙われる恐れがあるため、自主退学を余儀なくされた」
早大の学生ですらない活動家が自治会幹部であるという矛盾。しかし、当時の自治会規定には、当たり前すぎて大学を除籍、あるいは停学処分になった時の資格規定がなかったらしい。そして、殺人事件まで起こした自治会の公認を大学は続けた。88：革マル派の自治会執行部が新自治会再建運動について「手続きを守れ」と主張そもそも、田中委員長をはじめとする革マル派の自治会幹部の大半は、事件直後に大学当局から除籍、ないしは無期停学処分。大学に籍のないはずの革マル派自治会役職者らが「処分は不当」として、自治会活動を継続。
89：キャンパスに君臨する「独裁政府」革マル派の自治会は、大学当局によって公認され、自治会費の代行徴収や早稲田祭開催による安定した財源。活動家によるキャンパス内の日常的な巡回、不穏分子の探索・摘発、授業への日常的な介入があり、キャンパスという「領土」を守る武装部隊も存在。
2024年08月28日
川口大三郎君虐殺事件
日本最大の学園祭として知られる早稲田祭。毎年11月の週末に開かれる早稲田祭には約20万人が訪れる。その早稲田祭実行委員会を1960年代以降長年牛耳って、活動の資金源にしていたのが革マル派だった。
40：執行部を革マル派が掌握。各ゲートでパンフレット（入場券）をチェックしている者の多くは「Z」印の革マル派ヘルメットをかぶった学生。
今は入場無料だが、90年代まで「公式パンフレット」を有料で販売。それがないと入れないので、実質的に入場料を取っていた。1972年11月8日、その年の早稲田祭終了の2日後、川口大三郎君虐殺事件が起こる。
死体は早大一文2年の川口大三郎と判明する。42：9日早朝、東大病院アーケード下で若い男の死体発見。「死因は、丸太や角材でめちゃくちゃに強打され、体全体が細胞破壊を起こしてショック死」（東大法医学教室）
革マル派は彼が対立するセクトの中核派メンバーだと誤認して、授業に向かう川口君を文学部のスロープで拉致。自治体室で詰問したうえ、隣の教室でリンチ殺害していた。47：同級生（二葉幸三）の証言2019事件の約1週間前にも、「清瀧」で一緒に飲む。「中核派とはもう接触してない」「中核派も革マル派も同じ」激しく敵対しているのは、近親憎悪みたいなもの。
57：革マル派の犯行声明川口君は中核派活動家で、スパイ行為をしていたので追求した。その過程は正しかったが、死という事態を招いた。その結果についてのみ、反省する。
つまり、「自分たちの暴力は革命理論によって管理された暴力なので正しいが、他セクトの暴力はそうではないので間違っている」という勝手な理屈である。
59：事件の実行犯は自首せず目撃者証言に基づき、1ヶ月後に漸く一文と二文の自治会関係者が逮捕される。しかし、「完全黙秘」で、立件されないまま釈放。
2024年08月27日
左翼系政治セクト
「政治の季節」終わった80年代に入学した私は、左翼系政治セクトに何があって、どういう関係かも知らないまま卒業した。当時は、それよりも、統一教会のほうがキャンパスでの差し迫った脅威だった。
26：革マル派も中核派も、「革命的共産主義者同盟」が分裂してできた組織中核派は早稲田大学出身の本多延嘉氏（1975革マル派が殺害）が率い、他セクトと協力しての激しい街頭デモや集会など、大衆闘争を重視。革マル派は指導者の黒田寛一氏（2006に78歳で亡くなるまで実質的最高指導者）の理論を絶対視する私党的性格を持ち、理論闘争と組織の維持・拡大を重視。
29：山村政明遺稿集『いのち燃えつきるとも』（五木寛之が帯文）
「同じ個人の死なら、三島由紀夫の華やかな死より、早稲田の穴八幡で独りボロ布のように死んだ山村政明の死のほうが、自分にとっては比較にならない重さで感じられている」
1970穴八幡神社境内で焼身自殺した第二文学部学生。
革マル派が主導権を握る自治会と対立。幾度となく暴行を受け、1969初夏には重傷。
「抗議・嘆願書」
革マル派の学園暴力支配により、退学に追い込まれつつある学友は少なからぬ数。
学友が自覚して立ち上がり、連帯して闘うことのみが、暴力の一掃、自治会民主化、学園改革への道。
33：暴力を黙認していた文学部当局
革マル派の自治会を公認。自治会費を授業料に上乗せして「代行徴収」。
34：革マル派に学内秩序を維持するための「番犬」の役割？
「革マル派が学内で台頭した当初、文学部の学生たちは間違いなく革マル派を支持していた。（中略）それは教授会も同じだった」（元教授）
2024年08月26日
川口大三郎君虐殺事件
16：約半世紀前、このスロープを学生たちのデモ隊が幾度となく通り、中庭では日常的に暴力事件が繰り返されていた。
1972年、早稲田大学構内で革マル派学生によるリンチ殺人事件が起こった。殺されたのは第一文学部2年の川口大三郎で、革マル派と対立する中核派だと間違われて文学部のスロープで拉致され、当時革マル派によって牛耳られていた文学部自治会室で殺された。
私は1982年の入学なので、事件が起こったのはその10年前。既に事件は風化していて、「昔、そんな事件があったらしい」程度。キャンパスには既にデモ行進もなく、誰も関心を払わないタテカンに独特の書体で書かれた「XX粉砕」とかのアジテーションが寂しく見えたことを思い出す。
私は1982年の入学なので、事件が起こったのはその10年前。既に事件は風化していて、「昔、そんな事件があったらしい」程度。キャンパスには既にデモ行進もなく、誰も関心を払わないタテカンに独特の書体で書かれた「XX粉砕」とかのアジテーションが寂しく見えたことを思い出す。
プロローグ：「知りません」「聞いたことがありません」
本書の著者は、この事件を受けて立ち上がった一般学生の代表者。革マル派の「不条理な暴力に徒手空拳で立ち向かい」始めたが、仲間は次々と革マル派に襲撃され、通学すると拉致されるので授業にすら出られなくなる。
大学構内で学生が同じ大学生によって殺害されるという重大事件なのに、作者が2020年、キャンパスを行き交う早大生に聞いたところ、10人が10人、全員が事件を全く知らないという。早稲田大学歴史館にも一切の展示は無い。
事件から既に半世紀が過ぎたが、結局、この事件を誰も総括していない。このままでは事件そのものが忘れ去られてしまうという危機感から、書いたという本書。著者は卒業後、朝日新聞記者として定年まで勤め、退職後に関係者に改めて取材して執筆。
14：「彼と添い遂げられるのは私だけ」
田中敏夫（事件当時 第一文学部学生自治会委員長・革マル派幹部→除籍→別の内ゲバ事件で服役）
75年に刑期を終えて帰郷した田中さんの実家（高崎）に押しかけて交際を迫る。
「このままでは息子はダメになってしまう。あなたさえ良かったら、頼むから一緒になって欲しい」（母）
結婚後も早稲田での出来事を、妻に語ることはなかった。
「でも、私にも、彼は最後まで、心を開くことはありませんでした」
独り言
「集団狂気に満ちていた」
「ドストエフスキーの『悪霊』の世界だった」
「全く意味のない争いだった」
「すべて私に責任がある」
世捨て人のように、ひっそり生きた。
2024年08月25日
骨髄移植
6月の丸亀高校東京同窓会で、「本屋大賞」発案者であり現在も理事を務める原俊彦さんの話を聞いた。これまでも同賞受賞作はたくさん読んでいたのだけど、これを機に、読んでいなかった本を読んでみる。
本作は映画化され（なんと、本屋大賞受賞作は全て映画化されているという）、映画の方は見ていた。しかし、原作を読んでなかったのだ。映画はほぼ原作に忠実。とはいえ、300p近い大作（字も小さい）であり、削られている部分や変更されている部分もある。
話の軸になっているのは、骨髄移植。白血病はドナーから骨髄移植を受けるしか完治する方法はない。ドナーと患者との適合性が問題で、他人の場合、その確率は数百分の一から数万分の一だという。作中では、ドナーになれるのは「50歳以下」であり、そのために、主人公は自殺を止め、自首してもう1年生きることを決める。
今回調べたところ、この年齢制限は「54歳以下」に変わっていた。以前より4歳延びたようだ。
24：取調べは一冊の本だ。被疑者はその本の主人公なのだ。彼らは実に様々なストーリーを持っている。しかし、本の中の主人公は本の中から出ることはできない。こちらが本を開くことによって、初めて何かを語れる。
2024年08月24日
キャノン機関
後に警視総監となった斎藤昇『随想十年』に占領下での話が出てくる。吉田茂と白洲次郎の命を受け、GHQケーディスの女関係捜査をしたという。GHQの占領政策を決める民生局で飛ぶ鳥を落とす勢いだったケーディスは、子爵島尾敏光夫人島尾鶴代と不倫関係にあり、それがマスコミにリークされる。
285：ジャック・C・キャノンが特務機関としてキャノン機関を設立。本部の「本郷ハウス」（旧岩崎別邸）で日常的にパーティ。常連に、国家地方警察長官の斎藤昇、内閣調査室長の村井順、安井誠一郎東京都知事、白洲次郎。
占領下の日本で、GHQ相手に単独でこんなことはできない。この背景にはGHQ内の対立があり、G2局ウィロビーの下にあるCIC（対敵諜報部隊）と白洲は通じていた。昔、ベストセラーとなった森村誠一『続・悪魔の飽食』1983にも、ウィロビーが登場する。関東軍731部隊の石井四朗の戦争犯罪を免罪したのがウィロビーで、GHQは人体実験のデータと石井のノウハウが欲しかったのだ。
今里廣記（当時日本精工会長）が記事「戦後財界裏面史”日鉄分割”」で、白洲次郎と長野重雄が対決したことをこう証言している。
310：日産2000tと日本最大の高炉2基を持つ広畑製鉄所を白洲次郎がジャーディン・マセソンに売り渡そうと吉田茂にしきりに進言していた。永野さんは「とんでもない話だ。将来の日本経済のためにも、日本の製鉄業を外国資本にまかせられるか」と怒り心頭に発していた。
白洲次郎がジャーディン・マセソンに売ろうとしていた金額は約1億円。現在の価値で約1000億円。だが実際の価値は、今日の貨幣価値で、数千億円から数兆円だったという。要するに、占領下のどさくさに紛れて、安く外国資本に売り渡そうとしていた。この話は、吉田茂がうんと言わず、1950年に八幡製鉄と富士製鉄が発足して収束する。広畑製鉄所は今も日本製鉄の高炉として現役だ。
349：北康利『白洲次郎 占領を背負った男』白洲次郎がイギリスから帰った後から母が死ぬまでの記事の欠落。白洲次郎は樺山正子と結婚した後、白洲家と絶縁？
また、白洲正子の本には、白洲文平のことは書かれているが、他の家族については一行も書かれていないという。まして、白洲次郎の兄・尚蔵のことに触れた一行もない。
350：戦中・戦後の一時期、ユダヤの魂を持つ白洲次郎なる男が占領下の東京を我が物顔で歩いていた。やがて、占領期が終わろうとする頃、白洲次郎なる男は歩く道を失くした。
講和条約の件でも吉田茂は池田勇人に相談したが、白洲次郎に相談することはなかった。
2024年08月23日
白洲次郎の秘密資金
日本の戦後研究の第一人者として知られるジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』2001にはこんな記述がある。
192：（1948年）主食料の不足は続いた。闇市は繁盛しつづけ、失業は相変わらず深刻であった。インフレは気が遠くなるような勢いで進行した。（中略）主婦たちは「埃にまみれたばさばさの髪、ぼろぼろのモンペ、くさりかかったようなうす汚い上着、・・・・・まるで泥でつくった動物人間の姿」で長蛇の列に並んだ。（中略）過去3回の冬には毎年100人近い死者を出していた上野駅周辺で、この冬死んだ浮浪者は「わずかに」9人だと報じられた。
戦後の日本は戦争国債で積みあがった政府債務と、敗戦で失った在外資産、空爆で失われた生産能力が相まってハイパーインフレーションに直面し、国民生活は塗炭の苦しみだった。
このダワー本には実在の岡野一家が例として登場する。岡野一家の月収は300〜500円。同じとき、白洲次郎は大金を妻・正子に1回（1週間）5000円を与え続けた。今の感覚なら、一般的な家庭の月収が30〜50万円の時に、専業主婦の妻に毎週生活費と遊興費として500万円を与えていたということだ。
このダワー本には実在の岡野一家が例として登場する。岡野一家の月収は300〜500円。同じとき、白洲次郎は大金を妻・正子に1回（1週間）5000円を与え続けた。今の感覚なら、一般的な家庭の月収が30〜50万円の時に、専業主婦の妻に毎週生活費と遊興費として500万円を与えていたということだ。
当時の白洲次郎は終戦連絡事務局参与として吉田茂首相配下で働いていた。国家公務員だから給料は低く、次長でも三百数十円だったというから参与の彼はもっと少なかったに違いない。この給料でどうやって現在価値で毎月数千万円に上る贅沢な生活を賄っていたのか。当然の疑問だろう。次郎は日本水産を開戦前に退職してから、表向きには働いていない。
一つには、戦前からの貯蓄があったのではないかと思われるが、北康利の本によれば、「白洲次郎は日本水産の退職金で鶴川の家（武相荘）と軽井沢の別荘を買った」とある。多少現金で残っていたとしても、米ドルにでも替えてない限り、戦後のハイパーインフレーションで円の価値は無くなっている。
一つには、戦前からの貯蓄があったのではないかと思われるが、北康利の本によれば、「白洲次郎は日本水産の退職金で鶴川の家（武相荘）と軽井沢の別荘を買った」とある。多少現金で残っていたとしても、米ドルにでも替えてない限り、戦後のハイパーインフレーションで円の価値は無くなっている。
そこで、出てくるのが、白洲次郎は裏でジャーディン・マセソンのジョン・ケズウィックのために働いていたのではないか？という疑問だ。さらに言えば、ユダヤ系のジョンは英情報局MI6極東局のトップでもあった。外貨で秘密資金を貰っていたと考える方が自然に思える。
198：徳本栄一郎『白洲次郎 知られざる素顔』2008文芸春秋
マッカーサー記念館調査→1945-46年の12月に白洲の名前はない。24時間シフトでマッカーサー一家を警護していた儀仗兵も、事前の約束なしに元帥が執務室に人を入れることはないと証言。
202：1947年6月22日 白洲がマッカーサーに宛てた手紙と贈り物
「閣下の比類なき指導力に、心からの感謝と称賛を表し、私が作った椅子をお贈りいたします あなたの最も忠実な僕（servant) 白洲次郎」
2024年08月22日
ヨハンセン・グループ
ヨハンセン・グループとは、戦時中に終戦工作を行っていた吉田茂、樺山愛輔、牧野伸顕、貞明皇太后、秩父宮雍仁らに、それを内偵していた陸軍憲兵隊が付けた符丁。「吉田反戦」をもじったと言われている。
ヨハンセン・グループは全員クリスチャンという共通点があり、元来、平和主義者であったのかというとそうでもなくて、吉田茂自身、中国での戦線拡大には積極論者であった。ただ、英米との戦争には反対しており、開戦前には日独伊三国同盟に反対し、開戦後は早期の戦争終結を目指して、近衛文麿元首相を巻き込んで、昭和天皇に奏上しようとしている。
このグループに、戦前、頻繁にロンドン出張して吉田茂が大使を務めるロンドンの日本大使館に宿泊していた白洲次郎が加わる。
51：白洲次郎はイギリスにいた1919年から帰国するまでの約10年間、一人の日本人とも会っていない
同時期に、5つ違いの兄・尚蔵がオックスフォード大学に留学していたのだが、その兄とも会った形跡がない。ここからも、兄との不仲説、さらには母親が違うのではないかという推論が出てくる。
鬼塚は、大胆にも、「白洲次郎の祖父はジャーディン・マセソンのウィリアム・ケズウィック(1834~1912)」ではないかと推論している。ケズウィックはイラン系ユダヤ人で、白洲次郎はケズウィック三兄弟の中でとりわけジョン（後のJM会長）と仲が良かった。
戦前、白洲が務めていたのは、日本水産だったが、当時白洲が外部に宛てた手紙には、日本人を常に「彼ら」(they)と呼び、ある意味「自分は日本人ではない」というスタンスを取っている。取締役を務める日本水産すらtheyと呼び、weでもour companyでもないのは、経営陣の一員としては普通ではない。107：徳本栄一郎『英国機密ファイルの昭和天皇』「余談になるが、白洲の英文レターを読んで興味深かったのは、日本人を『彼ら』（they）呼ばわりしている事だ。自らが取締役を務める日本水産すら、『自分が深く関与している会社』と片付け、一定の距離を置いている」
112：1938年2月英国大使館→ハリファックス外相「日本支配層に於ける水面下の分裂」
天皇を支持するのは元老を始め、薩摩・長州の藩閥、資本家、大地主など、すでに富と権力を保持する者だ。欧米と友好関係を保ち、現体制を維持することが彼らの利益に適うことでもあった。
これに対し、秩父宮を取り巻いたのは、桜会、神兵隊など陸軍の将校、北一輝など右翼運動家、今の天皇に不満を抱く皇族だ。彼らにとり、現状を打破するには、クーデターでの体制転覆も止むを得なかった。
114：同年3月英国大使館報告
貞明皇太后の不倫(illicit relation)を報告（牧野伸顕元内大臣）。
これをネタに吉田や樺山を脅した？→「オレンジ作戦」（日本をWW2に誘い込み、ドイツと一緒に敗北せしめる）
2024年08月21日
白洲次郎ユダヤ人説
先日の北康利『レジェンド 伝説の男 白洲次郎』を読むまで、次郎の兄・尚蔵のことを知らなかった。次郎本人の本にも、正子の本にも、あるいは武相荘を引き継いだ娘・桂子の本にも、どこにも記述がないのだ。
『レジェンド』によれば、兄・尚蔵は「オックスフォード大学を卒業したもののノイローゼになり、先に帰国」とある。病気があったので触れたくなかったのかもしれないが、留学後どころか、一緒に神戸で育っていた頃の話も全く出てこない。これは普通ではない。
これを受けて、本書の著者・鬼塚は、こう続ける。32：青柳恵介『風の男 白洲次郎』「次郎が大正8年に英国に渡り、大正14年にケンブリッジを卒業し、昭和3年に折からの金融恐慌の波をかぶり、実家が倒産し、帰国するまでの9年間（17歳〜26歳）、英国で次郎がどのような生活を送ったか、それを知る手掛かりは少ない。」
私は昔から数多くの偉人・賢人・有名人の伝記を読んできた。これらの本を読むと、青春時代をいかに過ごしたかを具体的に書いている。どんな古の人物であれ、虚偽が混じっていたとして、である。
そこで、大胆な仮説が出てくる。
アサンジ（動画）とそっくりだとは思わないが、確かに、次郎はハーフっぽい顔をしている。それで、正子も「カッコイイ」と一目ぼれした。33：白洲次郎はメイド・イン・ユダヤではないのかWikiLeaksのジュリアン・アサンジ（イラン系）そっくり。
ここからは著者・鬼塚の推測なのだが、次郎は父・文平が当時、神戸女学院（戦後に大学化）設立のために白洲家に寄宿していたイギリス人教師との間に出来た子ではないかという。だから、次郎は母親に会いにイギリスを目指したのではないか。34：牧山桂子『次郎と正子』父の生涯を通じてのイギリス人の友人、ロビンによりますと、ジローは大学に入ってきた時にはもう英語が出来たというのです。
そうかもしれないと私に思わせたのは、次郎の顔立ちだけでなく、白洲兄弟の名前だ。次郎の祖父は三田藩の家老を務めた儒学者の退蔵。兄は尚蔵。父・文平は祖父の名前から一字を取って、長男を「尚蔵」と名付けている。普通、こう来たら、次男も「〇蔵」となる。なぜ、次郎が何の工夫もない、とって付けたような名前なのか。もし非嫡出子であったとすれば、正妻の子と名前が違うのは納得がいく。37：白洲信哉（次郎の次男・兼正の長男）『白洲次郎の青春』コレッジの古文書記録部に保管されていた入学記録簿を見ると、祖父は1923年の4月19日に入学し、26年まで在籍していたようだ。1923年の新入生は69人。しかし東洋人は、祖父一人だけだった。身元引受人は、G.M.Spence（London）とある。1919年（17歳）に渡英し、入学するまでの4年ほど身を寄せた人なのかもしれない。
41：白洲正子白洲は、まったくの西洋人であった。（中略）幸か不幸か、彼は終戦時代に得意の英語で花を咲かせたものの、しょせん平和な世の中に通用する人物ではなかった。
2024年08月20日
白洲正子好み
美術品の収集家として知られていた白洲正子。しかし、それが「蒐集」にならないように警戒していたという。
6：白洲正子好み 青柳恵介白洲さんは蒐集というものを警戒していた。骨董を蒐集しようとすると、美しくないものでも自分が持っていないものを手に入れようとしたり、系統だってものを集めようとしたりするようになる。系統立てるということも研究的な態度ではあるが、美の経験とは関係がない。
9：売ってしばらく時が経過して、一向に気にならないものもあれば、あれは売るべきではなかったと後悔するものがあり、その後悔されるものの中に自分の本当の好みを見出すことだというのが持論であった。
14：長明寺参詣曼荼羅図
この作品には不思議な因縁話もある。前々からこの絵図を探していた正子は、フランス人の手に渡ったと聞いてあきらめていた。ところが、かつてフランス人に売った古美術商が、偶然再度パリでこの作品を手に入れ、今度はとあるスイス人に売ったところ、そのスイス人は果たして正子のよく知る人であった、という顛末があった。
64：「時を経て想う、父次郎と母正子」牧山桂子
一昔前は一生に一度と言われていた葺き替えですが、父が亡くなって母の存命中に一度葺き替え、それを含め、私の憶えているだけで四回ほど替えています。急激な生活様式の変化、例えば家の中で火を焚かなくなったので煙が屋根に回らなくなったこと、また暖房設備の普及で冬でも暖かく、茅の中に虫が繁殖するようになったことなどによって、茅葺き屋根はもうあまり見かけなくなりました。
なるほど、茅葺屋根は中で火をくべていたから、その煙で虫が繁殖せず、長持ちしていた。茅が燻されなくなると茅は持たなくなり、頻繁に葺き替えなければいけない。そのために、ガスの普及とともに、急速に衰えたんですね。
2024年08月19日
銀の匙をくわえて生れてきた「生粋の野蛮人」
白洲次郎と大沢商会の関係は知らなかった。大沢家とは、父・文平のころから家族ぐるみの付き合いだったらしい。当時、白洲家は関西でも指折りの資産家だったから当然か。大沢商会は明治時代に京都で時計の製造業として始まり、その後輸入卸に転じた。取扱商品を拡大し、ブランド商品の輸入販売を手掛けていた。大沢商会にとって上得意だったのだろう。
晩年、社長の大沢善朗に頼まれて白洲は非常勤取締役に就任。その甲斐もなく、1984年会社更生法となるのだが、負債額は1250億円で、これは当時、戦後第3位の記録で学生時代に新聞記事を読んだことを今でも覚えている。その後のバブル崩壊やリーマンショックで負債額に不感症になってしまったが、当時としては巨額だった。
晩年、社長の大沢善朗に頼まれて白洲は非常勤取締役に就任。その甲斐もなく、1984年会社更生法となるのだが、負債額は1250億円で、これは当時、戦後第3位の記録で学生時代に新聞記事を読んだことを今でも覚えている。その後のバブル崩壊やリーマンショックで負債額に不感症になってしまったが、当時としては巨額だった。
白洲は、倒産した大沢商会の再建を親しかったセゾングループの堤清二に依頼する。そして、その中核企業の西武百貨店には、白洲の指示で、娘婿の牧山圭男がヤナセから転職していた。それから10数年後、牧山は西武から大沢商会に送り込まれ、営業担当常務に就任している。
７：神戸一中サッカー部
キャプテンでセンターフォワードで日本フットボール大会（現在のインターハイ）参加。
11：銀の匙をくわえて生れてきた「生粋の野蛮人」
もともと白洲家は、三田藩の藩校で代々儒学を教えていた家柄。祖父の退蔵は維新後、大参事（従来の家老職）。父・文平は、ハーバード大学やボン大学で学んだ。
34：ケンブリッジ大学クレア・カレッジ入学
渡航してすぐ試験を受けて合格。神戸一中という我が国の教育水準が極めて高かったころの超エリート校。
2024年08月18日
坂バカ俳優
NHK BSで一時よく見ていた「チャリダー」。レギュラー出演の俳優（らしい）伊野学の初出版。
というから、もう16年前。ちょうど、ロードバイクが流行り始めた頃か。29：「坂バカ」の覚醒！2008NHK「男自転車ふたり旅」がきっかけ。蟹瀬一平と北イタリア。
この差は大きい。効率を測るにはパワーメーターを付けないといけない。53：ペダリング効率ペダリングにかけた力のうち、どれくらいのパワーが推進力になっているかを示す割合。プロは70%、一般の人は50%ほど。
55：力を無駄にしないコツバスケットボールでドリブルをするイメージ。力を入れるのは一瞬でいい。「下死点に来たときに靴の底のガムを剥がすイメージ」
2024年08月17日
ソアラの縁
続いて、白洲次郎の妻、白洲正子によるエッセイ「ソアラの縁」。
次郎の死後、「ソアラの岡田さん」から電話がかかってきたという。それは、トヨタ自動車の岡田稔弘で、会ったことはないが、生前の白洲次郎からしじゅう名前は聞いており、家では「ソアラの岡田さん」で通っていた。それは、豊田章一郎社長（当時）の招待で、ソアラの工場見学をしないかというもの。
「白洲さんにうるさくいわれていたソアラの改造が、ほぼ理想どおりにできました。ついてはお墓参りに新しいソアラを持って行って報告したい」
こうして、トヨタ工場に出かけた白洲正子。見学後、昼食に誘われる。そこで、自社製品に対する彼らの打ち込みように感動する。
「買った！」思わず私は叫んでしまった。これは私が気に入った骨董を買う時の口癖で、皆さんびっくりされたに違いない。私は、イキに感じたのだ。然りこうして新しいソアラは私の物になり、その年の秋には豊田さんご一家と墓参りに行った。
ちなみに、正子さんは免許を持っていない。「トヨタは将来、日本を背負って立つ企業に発展するかもしれない。その象徴的なクルマを買いましょう」と言うことだったのだ。美術品を買うのと同じだ。
以下は、岡田稔弘氏の記事から（「ベストカー」2015）。
そして当時の豊田章一郎社長と、長男で現社長の章男さん、さらに正子夫人の三名が2代目ソアラに乗り、兵庫県三田市の心月院に白洲次郎さんの墓参りに行ったのだ。その時、章一郎社長は「お陰様でノー・サブスティチュートのクルマを作ることができました」とその完成を墓前に報告したという。
2024年08月16日
お年寄りの癇癪持ち
「お年寄りの癇癪持ち」といえば、今や社会問題。私も、スーパーのレジや、図書館のカウンターで、怒鳴り声をあげているご老人を時々見かける。それはたいてい男性であり（その代わり、小売店で万引きするのは女性が多いらしいが）、私も今後、気をつけないとと思ったりする。
この「辛抱ならない」というのは、老化現象であるらしく、昔からあったのだろう。それが10年なら社会的に受け入れられたのが、寿命が延びて30年もやられると、社会問題化したということか。
白洲次郎は、お坊ちゃん育ちの怖いもの知らず。さらに、17歳から26歳まで英国留学だったので、日本の社会規範にとらわれ遠慮なしに言うから、先輩方から「バカヤロウ！」と叱られることもしばしばだったという。彼自身は、「辛抱がならないようなお年寄りの癇癪持ちみたいなのから、いろんなことを習った」と回顧しており、後年、そういう年寄りをめざしたふしもある。立場の弱いもの相手に怒鳴っている老人とはもちろん違うのだが。
不思議な人 宮澤喜一（インタビュー）
62：日米講和の下準備に一緒にアメリカ訪問
池田勇人大蔵大臣と3人。
67：「民生局の芝居」白洲次郎
70：ホイットニー民生局長
この人の様なアメリカ人には未だかつて会ったことはない。（中略）占領時代にホイットニーがマッカーサーからうけた庇護と信頼は余程のもの。
71：当時日本人の「有力者」のGHQ詣での大半はホイットニー詣でか、ケーディス参り
これ等「有力者」の卑屈さは見るだけでも腹がたった。
2024年08月15日
「占領秘話」を知りすぎた男の回想
1975年、戦後30年の節目に行われたインタビューが掲載されている（『週刊新潮』75.8.21）。題して、「占領秘話」を知りすぎた男の回想。
44：およそ占領下の思い出なぞ、不愉快なことばかりである。思い出そうとしただけでも憂鬱になる。（中略）あのころの日本の政治家や役人たちときたら、あちらさんのいうことには、なんでもご説ごもっともで、卑屈になる人間が実に多かった。われわれは戦争に負けたのであって、奴隷にされたわけでもないのに、からきし意気地がなく、どんなに無理や難題をふっかけられても、鞠躬如としてしまうのである。
よく知られているように、マッカーサー元帥は日本に上陸してすぐの昭和20年10月、近衛公と会見し、憲法改正の要を説いている。これを受けて、近衛公は自分の京大時代の恩師である佐々木惣一博士（憲法学者）に新憲法づくりを正式に委嘱している。
45：マッカーサーのこの”前言取り消し談話”「自分は近衛に憲法改正を指示した覚えはない」アメリカ国内に「新憲法を敗戦国民に作らせるとは何事」といいう批判があったともいわれるし、またこのころ、占領国側に、やがて近衛公を戦犯として逮捕しようという認識が固まりつつあったとも思われる。
この話が新聞に漏れたところ、マッカーサーは「そんなことは頼んでない」とこれを否定するのだ。その背景を白洲は上記のように説明している。それで、戦後初の幣原内閣は、松本国務大臣を責任者として「憲法問題調査委員会」を設置する。しかし、その憲法草案は、明治憲法第4条までの条項がほとんどそのまま残るなど、到底、GHQが容認するような内容ではなかった。
松本草案は昭和21年2月3日にGHQに提出されるが、GHQは直ちにこれを拒絶。そして、それから10日後、マッカーサー草案を出してくる。これについて担当したGHQ民生局のホイットニー准将は「たった1週間で作った」と吹聴するのだが、これを白洲は証拠をあげて否定する。
その年の11月、新憲法が公布されたのを記念して、政府は「銀杯一組」を作り、関係者に配った。白洲はこの銀杯をホイットニーに直接届けたらしいのだが、その時、彼はこれがもっと欲しいと言い出し、次のように説明した。
その年の11月、新憲法が公布されたのを記念して、政府は「銀杯一組」を作り、関係者に配った。白洲はこの銀杯をホイットニーに直接届けたらしいのだが、その時、彼はこれがもっと欲しいと言い出し、次のように説明した。
46：あの憲法に関係したスタッフはこのにいるだけではないんだ。日本に来てはいないが、豪州時代にこの仕事に参加した人間が、まだほかに何人もいる。
マッカーサーは、フィリピンを追い落とされて、豪州で日本侵攻作戦を練っていたときに、すでに終戦後の日本の憲法作成作業にまで取り掛かっていたわけで、カツカツで戦っていた日本との違いを見せつけられる。
12：「日本の若い人に一番足らんのは勇気だ」
（『週刊朝日』1951.11.18インタビュー）
51：日本人ぐらいおとなしい被占領国民もなかった
およそ左翼も右翼も、抵抗らしい抵抗を占領軍に示すことはなかった。
2024年08月14日
オイリーボーイ
17歳、神戸一中在学時に最初の自分の車を手に入れた白洲。父親が買ってくれたのはアメリカ製Page Glenbrook Six-38。当時の現地価格で1700円。日本に輸入すると倍位したという。これは、現在価値で5000万円＋になる。アメリカの富豪家族のようだが、戦前の日本はこれくらいの貧富の差があったということだろう。
その後、英国留学に向かった白洲。暮らし始めてすぐに手に入れたのが、Bugatti 35とBentley 3L。どちらも当時のスーパーカー。それぞれ現在価値で数億円になる。今でも名車と言われる2台だ。イギリスでもこんな高級車に乗っている人は少なく、それを東洋人が乗り回しているのだから、相当目立ったであろうことは想像に難くない。
その後、英国留学に向かった白洲。暮らし始めてすぐに手に入れたのが、Bugatti 35とBentley 3L。どちらも当時のスーパーカー。それぞれ現在価値で数億円になる。今でも名車と言われる2台だ。イギリスでもこんな高級車に乗っている人は少なく、それを東洋人が乗り回しているのだから、相当目立ったであろうことは想像に難くない。
その後昭和恐慌で、家業が倒産して、ケンブリッジ大学を中退した白洲。帰国して間もなく正子と知り合い、結婚する。この時に、次郎の父親が結婚祝いに贈ったのがLancia Lambda。これもまたイタリアの名車で、当時の東京に2台しか走っていなかったという。この辺、会社が倒産しても、個人保証を入れていなかったのか、あるいは戦前の倒産法が今ほど厳しくなかったのか。
70代になってもフェラーリや911に乗っていたという白洲。80歳になったのを機に運転を止めたという。17歳から80歳までは1919年から1982年まで。それは、世界のモータリゼーションと軌を一にしている。
2024年08月13日
吉田のトイレットペーパー
先日、武相荘を初めて訪問。それを機に、白洲次郎本を本で見る。本人の著作である『プリンシプルのない日本』は以前読んだ。
戦時中に鶴川村に引っ越した当初、「最初は生活用水は近所の小川で、お茶碗なんかは川で洗ってました」（次郎の長女・桂子）という状況だったという。
26：役人はすぐアメ公側につく
一番だらしなかったのは外務省の役人。一番馬鹿だったのは文部省の役人。
52：GHQ民生局
民主化という名のもとに、日本を骨抜きにしようと仕掛ける。
57：吉田のトイレットペーパー
サンフランシスコ講和条約での吉田首相の受諾演説を日本語で書き直す。
植民地根性極まれり！
「ようやく戦勝国と対等の立場になれる会議で、その晴れの日の原稿を、相手の承諾を得て相手国の言葉で書くやつがどこにいるんだ！」
2024年08月12日
貴族にとっていちばん大切なこと
この価値観は貴族だけでなく、イギリスの価値観として大切にされていると思う。言ってみれば、日本のカワイイ文化と対極にある。
166：貴族として暮らしていくのにいちばん大事なこと
女性であれば人前で泣かないこと。自分は何もわからないし、できない、かわいそうな女の子ですといったポーズをしないこと。
167：男性の貴族にとっていちばん大切なこと
危機に瀕してパニックに陥らないこと。危機に瀕してなおかつユーモア精神があること。
172：イギリスの大学
学期のはじめに、この学期に読むべき本のリスト（5〜15冊）。学生はリストに上げられた本を読んでいることを前提として講義。
193：日本語学習者が急増
へたをすると、日本経済が下向きになったとたんに、日本語なんか見向きもされなくなるかもしれない。
2024年08月11日
英国病の克服
イギリスの大学は、米国に比べれば安いと言われるが、それはイギリス人の場合。私が留学していた35年前は、授業料は�．ぅ�リス人、��EU国籍、��その他の三段階あった。運営補助金をもらっているのだから、税金を払っている家庭は安いという論理である。
その後ビジネススクールへの政府補助金は無くなったので、現在では同じ授業料となっているが、一般大学の授業料は今でも格差がある。こちらの同じロンドン大学のUCLに留学している日本人学生によれば、「外国人留学生は現地人の3倍（約600万円）」とのこと。
10年ほど前に、当時所属していた国立大学で試算したところ、学生一人当たりに掛かっている費用は約200万円であった（学部生の場合）。学費は当時も今も変わらず年間535,800円なので全くカバーできていない。後は、少しばかりの医学部附属病院の収益があるのみ。残りの大半は運営補助金、つまり国税で支払われていた。ちなみに、東大の場合は学生1人当たり700万円以上が投入されており、4年間で2900万円の税金がつかわれている。
先のUCL留学生も書いているが、日本の場合は、逆に留学生を優遇している国立大学が多い。留学生の授業料は日本人より安く、寮費が無料であったり、場合によっては生活費の補助迄出ている。それらは全て日本人の税金で賄われているわけで、それはおかしいと思うのは当然だろう。
企業で値付けは大変重要だ。提供するサービスにいくらの値段を付けるかそのものが、その企業の姿勢、マーケットでのポジションを決める。もちろん、それだけの価値があるかどうかを決めるのは消費者だが、コストを大きく下回る値段では早晩会社が潰れるので継続できなくなる。最初から安い値付けでは、安さにひかれた消費者（大学であれば学生）しかやってこなくなる。
国立大学は段階的に実際に掛かっている費用である200万円を賄うため、そこまで学費を値上げすべきだろうし、それで必要な学生には奨学金を充実させればいい。それでもその大学で学ぶことに意義を見出す学生を集めればいいし、コストもカバーできない大学は統合、あるいは廃止されても仕方ないだろう。何しろ、この50年で子供の数が半減しているのに、大学の数が逆に増えているというのは進学率が高まったとはいえ、おかしい。
97：英国病
労働党は、経済などということをあからさまに言うのは卑しいことであり、イギリスほどの大国であればよそからお金を借りて来たってなんとかなるのだから、自分たちで無理して働かなくてもいいのではないかという態度。
98：1970年代イギリスの大学・専門学校への進学率は7,8%
名門大学卒の人たちは、ほとんどが学者になるか外交官になるか、あるいは銀行家になるか。
→ポリテクニクと呼ばれる専門学校を増やす（サッチャー政権）
119：70年代の労働党政権下では、大学、学校、美術関係、文化関係、そして福祉関係は、経済の低調にもかかわらず、たっぷりお金を使っていた
サッチャー政権の下で自給自足へ。大学は60%は政府から、あとの40%は自分で。
企業から寄付金を仰ぐか、外国からの留学生を増やすか（留学生の学費はイギリス人の2~3倍）。
121：日産研究所
2024年08月10日
『英国貴族になった私』
6月マークス寿子さんの訃報があった。1971年に渡英して以来53年。ついに、当地で骨をうずめられた。お会いしたことはないのだが、調べてみたら、早稲田大学政治経済学部の先輩で、「英国稲門会」の会長もされていたという。
マークスさんと言えばデビュー作の『英国貴族になった私』。76年に英小売り大手マークス・アンド・スペンサー創業者の孫マイケル・マークス男爵と結婚し、男爵夫人となったのである。その後、85年に離婚しているが、結婚時に英国籍となり、一旦国籍を取得すれば自ら放棄しない限り、そのままとなる。
『英国貴族になった私』は昔読んだので、「他のを」と手に取ったのがこれ。1991年春、バブル経済絶頂の日本に3か月滞在したときの体験をもとに書かれている。20年間、毎年帰っていたが毎回3週間程度の滞在で、これほど長く滞在したのは渡英して初めてだったという。
当時、55歳。帰国するまでは、「ひょっとして、このまま日本に戻りたくなるのではないか」と考えていたというが、じっくり滞在してみると「変わってしまった」日本に違和感の方が多く、「まだ帰りたくない」と思ったという。結局、帰国の時は生涯来なかったわけだ。
7：1971年から20年滞在
日本とイギリス二つの国が、正反対に上昇と下降の途をたどる。
日本＝経済が奇跡といわれるほどの勢いで上昇
イギリス＝1960年代にはまだなんとか頑張って福祉国家としての体面を保っていたが、70年代から80年代にかけて経済的には下降線。
8：70年代初め〜イギリスの方がずっと豊かで、生活にもゆとり
1ポンド＝890円！
14：新しいモノで埋まっている
それまでは畳敷きだった家がじゅうたんや板張りの床になっていたりして、そこに新品の家具を入れる。高価なソファーやテーブルが、ほかのものとつり合っていようがいまいが、そんなことはいっこうおかまいなしに、いとも簡単に買われている。
27：東海道線のグリーン車
行儀の悪い人が多い。向かい合わせにした座席4席を一人で独占。人が来ても脇へよけようともしない。
45：イギリスを去らない理由
日本人はモノに振り回され、便利さに降り回されている。イギリス人は不便さを楽しむ。
48：老人ホームでも病院でもそうだが、常に自分でやらなければいけないという部分を残しておく。それは人間として生きていく場合、とても大事。
49：お金のあるなしにかかわらず、節度のあるお金の使い方、暮らし方が大切
品性や節度こそ人間には欠かせないものであって、お金があるからといってやたらに何でも買ったり、教養のない人が急にお金持ちになって何でも新しいものを買い、大きな家を買ってシャンデリアをいっぱいつけたりすれば、軽蔑されるだけ。
2024年08月09日
民主主義の聖書
「ポパーは誇りをもって民主主義者の名を要求し得るであろう。かれの著作は民主主義の聖書である」
（ヒュー・N・バートン946）
プラトンの政治要領は根本において「すべての市民が幸福である完全国家の実現計画」（p124)。そうすると、「賢者が指導し支配すべきであ無知な者はかれにしたがうべきである」（プラトン）ということになってしまう。
しかし、「賢者」がどんな人で、どうやって発見して、どういうプロセスで支配者にすべきかは未だに分かっていない。ましてや、当初「賢者」と思われた支配者が、やがて独裁者に変わり、集団に悲惨な結果をもたらす例は枚挙にいとまがない。
しかし、「賢者」がどんな人で、どうやって発見して、どういうプロセスで支配者にすべきかは未だに分かっていない。ましてや、当初「賢者」と思われた支配者が、やがて独裁者に変わり、集団に悲惨な結果をもたらす例は枚挙にいとまがない。
というのがポパーの回答だ。「閉じた社会⇔開かれた社会」人間であり続けようと欲するならば、ただ一つの道、開かれた社会への道しか存在しない。
19：誰が支配すべきか？
悪しきあるいは無能な支配者があまりにも大きな害を引き起こし得ないように政治的諸制度を組織するにはどうしたらよいのか。
26：政治についての二つの根源的類型
�〔閏膽腟�
流血の惨事なしに、たとえば総選挙をつうじて、取り除くことができる政府。社会の諸制度もまた非支配者が支配者を解任できるようにし、また社会のもろもろの伝統は、権力保持者が勝手にこうした諸制度を破壊できないようにしてある。
��僭主政もしくは独裁
55：王としてふるまう哲学者
王の持つ支配者としての特権は、ウソや欺瞞をなにはばかることなく使うことができる点にある（プラトン）
57：「医術の神アスクレピオスは政治家である」（プラトン）
医術の目的は、延命ではなく、国家の利害にある。
96：ユートピア社会工学
人間は歴史に影響を及ぼすことができるというプラトン流のヒストリシズム。
あらゆる合理的行為は一定の目的を持たねばならない。（中略）最初に解決すべき課題は目的の選択である。
111：プラトンもマルクスも社会全体がラディカルに作り変えられる黙示録的革命を夢見る
このラディカリズムは、思うに唯美主義に、つまり世界を現在よりも少しでもよりよく、より合理的なものにするのではなく、その醜さを完全に追い払った世界を打ち立てようとする願望と結びついている。（中略）だが、このような美的興奮は、理性によって、つまり責任感によって、そしてまた援助したいという人道主義的な衝動によって抑制されているときにのみ価値を持つ。そうでなければ、それは危険であり、一種のノイローゼとかヒステリーになりかねない。
2024年08月07日
プラトンの呪縛
本書で最初にやり玉にあがるのが、古代ギリシアを代表する哲学者プラトン。というのは、プラトンは、以下のような主張をしていた。
「すべてのうちでの第一原理は、男であれ女であれ、なんぴとも、いついかなる時にも、指導者なしでいてはならないということである。心が、真面目さゆえにせよあるいはただ戯れにせよ、自分かってに動くようになってはならない。戦時においてであれ、あるいは平和のさなかにおいてであれ、指導者（Fuhrer）に眼差しを向け、忠実に従うべきである。
指導者Fuhrerというのは、今では「総統」と訳されている。ヒトラーに使われたのがこの言葉。都市国家間で戦争が繰り返されていた古代ギリシア。プラトンの発言には、そうした時代の中で、都市国家が生き延び、そこに住む市民が、戦争に負けて奴隷にならないためには、まずは戦争に勝つことが必要だという時代背景がうかがえる。戦争に勝つには、リーダーに従わなければならないということだろう。
とここまでは弁護できるのだが、後の優生学につながる主張もしている。記録に残るところでは最古だろう。129：静止と変化プラトンは、最初の社会科学者の一人であり、もっとも影響力にとんだ人物であった。かれは＜社会学＞といいうことばがコント、ミルそしてスペンサーによって理解され意味において、社会学者であり、人間の社会生活、その発展の法則、ならびにその安定性の法則や条件の分析にみずからの観念的方法を適用し成功をおさめた。
こちらも、近世欧州まで一般的な考え方。欧州哲学の基礎を作ったといわれるのも納得。162：監視者の種族は純粋でありつづけなければならない（プラトン）経験に富んだ飼育家が犬や馬や鳥の飼育にさいして利用するのと同じ原則を支配者種族の血族保存にさいしても守るべきであると要求。
ギリシア人は戦争に負けたときだけ奴隷だが、「野蛮人」は最初から奴隷扱い。201：人間は生物学的にも道徳的にも不平等である（プラトン、アリストテレス）ギリシア人と野蛮人は自然からして（生まれつき）不平等なのであり、そしてこの対立は、生まれつきの主人と生まれつきの奴隷との対立に対応する。
308：正義の本質（プラトン）国家の安定性を維持するためには階級的特権が必要であると主張
235：プラトンの政治要領
�＼纏澆畔儔修亡悗垢襪�れのイデア論的な理論（どんな政治的変化も停止させよ！）
�⊆�然主義（自然に帰れ！）
60：未来はわれわれ次第なのであって、われわれが歴史の必然性に依存するのではない。
2024年08月06日
民主主義の基礎
世界的に選挙イヤーである今年。終わらないウクライナ戦争と、中東全体へと拡大の危険性を帯びてきたイスラエルのガザ地区での掃討作戦。
改めて、欧州戦争がなぜ起こったか、法治国家とは何か、民主主義の基礎は何かを考え直したい。
ドイツ語版第7版への序（1992）
本書の執筆を決定したのは1938年3月13日、祖国オーストリアへのヒトラーの侵攻を聞いた日であった。初稿を書き終えたのは正確に50年前のことである。本書はさまざまな出版社によって拒否された。出版されたのは、ロンドンがヒトラーの報復武器V1（無人爆撃機）とV2（大型ロケット）によって攻撃されているさなかであった。店頭に並んだのは1945年であったが、そのときはヨーロッパにおける戦争が終結を迎えつつあった。わたしはこれを戦争に奉仕するための一環として書いた。本書の趣旨は、ナチズムと共産主義に立ち向かうこと、ヒトラーとスターリンに立ち向かうこと、つまり、1939年のヒトラー＝スターリン条約（独ソ不可侵条約）に立ち向かうことであった。
15：法治国家、東ヨーロッパはそれを緊急に求めている
東ヨーロッパは食料を必要としている。事実として、それを効率的に生産できるようにするのは市場経済のみである。たしかに市場経済は西洋を豊かにした。それは、多くの労働者や多くの政治的思想家の何百年にもわたる格闘の成果であった。
16：法治国家と自由市場
民法は刑法とはまったく異なる。民法のある部分、たとえば、所有権や商法は、市場が機能するためにはきわめて重要である。民法は、必要悪としての刑法とはまったく異なって、貴重な財である。その目的は個人の自由の実現にあり、人間の暴力なき共同生活にある。
19：法治国家の奉仕者
よき法律を導入することにも困難はあるが、それよりもはるかに困難な課題は、法治国家に効力を持たせること、要するに国内に法秩序を打ち立てることである。この課題はロシアにおいてはとりわけ困難である。この国は（多くの共産主義国家がそうであるように）紙の上ではよく見える法律をもったとはいえ、それは現実には効力をもたず適用されることもなかったからである。
21：ソビエト帝国の歴史は、間違ったイデオロギーの歴史である。建国者たちは、それを科学であると、歴史の進化についての科学であると主張していた。それは、共感を、それどころか何名かの卓越した科学者からのまったき支持さええた。それはまた、誤ったイデオロギー、道を間違えた宗教が、一国において権力を握ったときに、引き起こした計り知れないほどの災害の歴史であった。
2024年08月05日
ストーリー投資
本日の日経平均株価はなんと4451円の下落。米ブラックマンデーの翌日、1987年10月20日に記録した3836円48銭安を上回る過去最大の下落幅となった。当時、私はVCの2年目。当日の引け後に、投資本部長だった後藤専務が社員全員を招集。
「今日という日は歴史的な日。この日のことを覚えておけ」
それを機に、日銀は金融緩和を進め、後から見れば、あの日がバブル経済への転換点となる。日経平均はそれからうなぎ登りとなり、1989年末の39098円。それを超えたのが今年の2月で、34年掛もかかったことになる。
はじめに：投資にいちばん大切なのはストーリー
いい投資家は優れたストーリーテラー。
ストーリー投資とは、とことん自分の頭で考え、未来を予測するストーリーという”ものさし”を手に、売買のタイミングを判断すること。
「学生時代は生物学者を目指していたが、実験に使う動物たちがかわいそうで、経済アナリストの道に」
16：テンバガー
バガーは野球で塁打を意味する。テンバガーは10塁打。1試合で合計10塁打の大活躍をする選手のこと。
31：日経新聞は後ろから読む
何が大切なニュースか自分の頭で判断するため。先入観を持たずに、隠れているストーリーを探す。
42：10倍株の共通点
�＿甬�4年間の売上高成長率が年20%以上（4年で倍）
��営業利益率が10%以上（本業でどの程度の利益が出せているか）
��上場から5年以内（上場直後は企業がもっとも成長する時期）
�ぅ�ーナー企業、または社長が筆頭株主（長期的な目線での経営）
70：株主総会での質問
・業界の市場規模をどう捉えているのか？
・競合他社に対する会社の優位性はどこか？
・3年後の市場シェアをどこまで伸ばせるか？
・そのための具体的な計画は？
92：トップの不祥事は構造的な問題
107：金融業界が舞台の映画
「大逆転」1983
「ウォール街」1987
「マージン・コール」2011＊
「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」2013
「マネー・ショート」2015
2024年08月04日
本屋大賞
「本屋大賞」20年！
丸亀高校の後輩が「本屋大賞」の発案者であり、今も賞の実行委員なのを、今年の同窓会で知ったのを機に、過去の本屋大賞受賞作で、まだ読んでなかったものを読んでみる。これまで20冊の受賞作のうち半分ほどは読んでいる。
本作の舞台は仙台。筆者は千葉県生れとあるが、1995東北大学法学部の卒業。現在も仙台に住んでいるらしい。本書は2008年の第5回本屋大賞を受賞。他の本屋大賞受賞作同様、本作も映画化されている（主演：堺雅人）。その後、韓国でも映画化。
タイトルの「ゴールデンスランバー」は、The Beatlesの名盤Abbey Roadに収録されている同名曲Golden Slumbersから。作中でも、モチーフとして何度も引用される。
25：教科書倉庫ビルの上空から降下してきたラジコンは、金田首相の乗るオープンカーに近づき、爆発
というのは、当然、ケネディ大統領暗殺を連想させる。日本で「教科書倉庫ビル」なんて聞いたことがない。ラジコンヘリというのも、今ならドローンだろう。ラジコンヘリの操縦は難しいが、ドローンは少し練習すればある程度飛ばせる。
2024年08月03日
ESG投資はナンセンス
環境問題には昔から興味があるし、自分でもできることはやってきたつもり。しかし、「ESG投資はナンセンス」というのには大賛成。
282：ESG投資はナンセンスGについては意味があるが、環境やソーシャルの問題に投資顧問会社が口をはさむべきではない。特にEは複雑。パフォーマンスの悪いアクティブ運用のマネージャーがクビにならないためにESG投資にしがみついている。彼等には複雑な環境問題を理解するほどの頭はない。パッシブ運用人気→アクティブマネージャーは人員余剰→ESG投資は必ずしもパフォーマンスを競わなくていいので投資顧問会社にとってESG投資は「渡りに船」
ESG投資で本当に環境保護になるのならやる意味はあるだろうが、ファンドが石油会社に石油権益を売らせたり、日本の商社に石炭権益を売らせたりしても、何の解決にもならない。安く買えた次のオーナーはそのまま操業するだけで石炭・石油の使用量は減らない。それどころか、次に買う会社は新興国の会社ということも多く、環境基準が守られない可能性もある。そうなれば、大資本でキチンと経営されていた時よりも環境問題は大きくなる。
283：CO2削減を本気でやろうと思えば現世代に膨大なコスト民主市議国家で誰かに強制的に何かをさせようとするなら法律によるのが基本。一部の環境団体の圧力によって特定の企業が無茶な環境対策を強制されるというのは民主的でない。
「環境問題の議論は胡散臭い」という。人類が直面する最大の問題であることは間違いないが、大きくて複雑な問題なので、ファッションのようにストローを廃止して見たり、レジ袋を止めて解決する問題ではない。
マイクロプラスチックの話も、主要な発生源が洗濯機の排水ということが分かって、聞かれなくなる。合成繊維からマイクロプラスチックが大量発生。今更、「合成繊維を使うな」「洗濯するな、洗濯しても排水を流すな」とも言えないので、マイクロプラスチックの議論は立ち消え。
2024年08月02日
Mothers（グロース）は「最悪の市場」
Mothers（グロース）は「最悪の市場」というのが面白い。昨年、市場が再編されて、従来のMothersのブランドが褪せたように思う。それ以来、東証グロース指数は、プライムを中心に株価が上昇したのに対して、下落を続けている。
146：中身が冴えない割には高PER銘柄が多く、最悪。サービス系の会社で海外展開できる会社なんてほとんどない。今は成長していてもすぐに成長が止まる。「成長するはずが成長できなかった会社」が圧倒的に多い。製品価値が海外でもそのまま伝わりやすいメーカーに対して、サービス業で海外展開できる会社はほとんどない。楽天もメルカリも、多大なリソースをつぎ込んで海外展開を図ったが、ほぼ撤退した。メルカリの場合は10年前に米進出。国内の利益を全てつぎ込み、そのため全社として赤字が続いていた。その額700億円以上。今年になって米事業の人員削減を進めており、ようやく撤退か
102：ネットキャッシュ
「流動資産＋投資有価証券x70%-負債」で簡易計算
ネットキャッシュ比率＝ネットキャッシュ/時価総額
137：割安小型成長株
多少間違いがあってもいいから早い段階で買う。成長を「見てから」買うのではなく、成長を「予想して」買う。
2024年08月01日
オリンパスの粉飾決算は有名だった
プレサンスコーポレーションは、「猪突猛進型の社長と頭脳の専務という最高のコンビ」であった。ワンルームマンション開発のため評価低かったが、毎期毎期予想を上回る実績で株価上昇。
にもかかわらず、不動産売買時の不正疑惑で社長が逮捕され、持ち株を売らされ辞任。暴落した株価でオープンハウスがTOBで手中にする。社長は裁判で無罪となったが、後の祭り。
240：オリンパスの粉飾決算は有名だった
投資銀行社員なら誰でも知っていた。MS証券に居たときに聞いたのは「飛ばしの額は500億円」。それが1000億円に膨らんでいた。昔は「飛ばし」は合法で、どの証券会社も「飛ばし」の手伝いをしていた。しかし、グレーとなり、日系の大手証券会社は撤退したが、外資系証券はまだ市場に残っていた。
原因は1980年代後半バブル時代の「特金」。保証商いで一任運用→バブル崩壊で巨額損失。営業力のある野村、日興、大和は顧客のクレームを突っぱねたが、営業力の無かった山一だけが自ら損失を被った→自ら「飛ばし」で損失隠し→破綻
249：プレサンスコーポレーション
大阪のワンルームマンション・デベロッパー。2008年PER5x。年率2割増益。アナリストフォロー無し。期初予想をコンサバに出すので、その度に株価暴落→買い増し。半期で年間利益予想を上回り暴騰→売却
