2024年05月
2024年05月31日
iモード海外展開
2000年代に入り、iモードで絶好調のドコモは海外投資を進める。ノウハウ提供で支援しようとするも、ビジネスモデル、技術（GSM）、販売方法が違い困難であった。結果、２兆円を投資するも、マイノリティ出資で相手任せだった。
162：W-CDMAの標準化のため海外投資香港のハチソン、オランダのKPN、米国AT&Tワイヤレス。
当時、世界中に、ドコモのように「パケット通信から収益を上げている会社はなかった」。2001年、海外投資を担当する国際ビジネス部からの異動を含め、10名の社員でiモードの海外展開開始を開始する。
その後、ドコモは1.6兆円もの巨額投資損失を計上する。並の会社なら潰れている。しかし、ドコモには国内の潤沢なCFがあった。100名の社員を10年間投入したので、一人当たり年間2000万円掛かったとして年間20億円、10年間で200億円。投資額に対しては少額に見えてしまうが、これも損失。166：出資関係のない携帯電話会社へもiモードのライセンス契約→最盛期には20社＋iモードEuropeに社員100名！総契約数Max10M台＋
168：海外で成功しなかった理由�‖弍�電話機が極めて少ない・通話方式が違うので、日本のPDC機種は使えない・GSM大手のNokia, Ericsson, Motorolaはインターネットを携帯電話の世界に持ち込むことを嫌がる←コモディティ化を恐れた？��iモードを導入してくれた事業者のマーケティングをコントロールできなかった・ドコモが多額の出資をした会社でもiモードを特別扱いしなかった←マイノリティ出資
榎啓一の結論は、どれも「少し考えれば最初から分かる話」。やはり、iモードの成功で有頂天になって、判断が甘くなっていたと言わざるを得ない。
173：海外に行く前にドコモの経営幹部としっかり話をしておくべきだった。100人近くの社員の海外iモード10年の経験をドコモは生かして再度チャレンジして欲しい。
もちろん、そのツケを払ったのは、直接的にはドコモの株主であり、間接的にはドコモユーザーや1.6兆円に対する税収がふいになった日本政府であり、さらには、その恩恵を受けるはずだった国民だ。
2024年05月30日
20兆円稼いだサラリーマン
iモード開発の総責任者であるドコモ榎啓一氏による唯一のiモード本。1999年に発売されたiモードが大ヒットしている2000年にタイミングよく発表された松永真理『iモード事件』から、実に15年後の発表である。
その間に、iPhoneが世に出て、すっかりスマホの時代に。そのせいで本書もあまり話題になることはなかったと記憶している。なぜ、もっと早く出さなかったのか？
まえがき：iモード累計10~20兆円の売上
「役員にしてもらいましたが、あくまでもサラリーマンです」
それは、本人が言っている通り、ご本人はあくまでサラリーマンだから。ドコモがもっと独立性の高い会社で、集まる人も、NTTグループとしての安定性や、あるいは伸び盛りの携帯電話サービストップのドコモのブランドを求める人でなければ、その後のiモードの展開も違っていたのかもしれない。
112：iモード前の電話機売れ筋は60g前後
iモードでも100g100ccを切ることをメーカーに依頼。
113：iPhoneは売れないと思った
・大きすぎる
・操作がPCに近く難しい
・機能がPCと比べ中途半端
＊個人的には今でもケータイ＋ノートPCの方が使いやすいと思う
140：写メール
シャープの考案。ドコモに最初に提案したが、断られたためJ-PHONEへ。
176：2014年退任
ドコモエンジニアリング社長を4年。相談役を2年。誰も相談にこない相談役。
ドコモエンジニアリング社長を4年。相談役を2年。誰も相談にこない相談役。
2024年05月29日
ゲートウェイ・ビジネス
iモードのS/W開発を担当したのは、NECから出向してきたSE川端。榎部長に予算を聞いたら、「開発予算20億円」と言われて驚く（後に10億円に減額されるのだが）。
124：NEC時代にやってきた機器の開発は、せいぜい1億円のオーダー。
当然、世界初のiモードのようなシステム開発をしたことはない。一時は、「自分には出来ないからNECに帰してくれ」と榎に訴える。しかし、榎が川端に求めていたのはプロジェクト管理。
川端は仕様を決め、最も積極的にアプローチしたCTCがベンダーに決まる。ここで、世界標準WAPを使うか、HTTPにするかで議論があるのだが、WAPはソースコード非公開で、自分で勝手にいじれない。iモードのような新サービスでは、自前で手直しする必要があるだろうとHTTPに決まる。140：SEには2種類プログラムを書いたりするSEと、プロジェクトを管理するSE。川端はNECに入った時から、自分で仕事を作ってきた。
結果的に大成功したiモードだが、当時、社歴の短いドコモにおいてそれまで100~200の新サービス開発プロジェクトがあったが、成功したのはポケット・ボードぐらいらしい。いくら何でも、これは成功率が低すぎる。開発手法に問題があったと言わざるを得ない。そして、毎月莫大な使用料金が入るので、安易なGOも多かったのではないか。
あとがき：「iモード」が誕生して6年耳に当てて使うだけだった携帯電話は、今や”見る道具”。
2024年05月28日
人選の妙味
2000年にタイミングよく出版された松永真理『iモード事件』（流石は元編集者）から5年後。NTT出版から出た本書は、iモードのコンテンツを担当した松永真理ではなく、iモードのソフトウェアを作った技術者に焦点を当てている。
『iモード事件』にも登場したが、大星社長から「携帯からインターネットにつながる新サービス」立ち上げを任された榎啓一が「ドコモには居ない人材が必要」と相談したのがサンカラー（熊本）の大橋雅史社長。榎は、NTT熊本勤務時代に親交があった。普通、そんな相談を地方の印刷会社経営者にはしない。しかし、榎は大橋社長のセンスと人脈を見込んで敢えて依頼する。
90：榎から相談を受けた橋本サンカラー社長「官僚的なドコモが新事業を立ち上げるとき、頭でっかちの優秀な男は向いていない。行けば組織の壁としがらみに圧し潰される。そういう仕事には女性がいい」
そうして紹介されたのが、リクルートで看板情報誌の編集長を任されていた松永真理。後に「iモード生みの親」と言われる松永真理なくしてiモードは誕生しなかった可能性は高く、そう考えれば、ドコモにとって値千金の人材紹介。そして、おそらくは無料。
ドコモが全社の印刷業務をサンカラーに発注するくらいの貢献はある。加えて、大橋社長の携帯料金を生涯無料にしてもいいくらい。実際どうだったのか、聞いてみたい。そのサンカラーは2009年にファンド傘下となっており、事業承継だと思うが気になる。
ドコモが全社の印刷業務をサンカラーに発注するくらいの貢献はある。加えて、大橋社長の携帯料金を生涯無料にしてもいいくらい。実際どうだったのか、聞いてみたい。そのサンカラーは2009年にファンド傘下となっており、事業承継だと思うが気になる。
14：自分のもっていたイメージを具体化できないものか（大星社長）
→マッキンゼーに調査依頼
16：NTTドコモ栃木支店長・榎啓一
早大大学院（電子工学）→電電公社（線路屋）
32：ポケベルが女子高生に大人気
ビジネスマンを想定していたが。
83：NECのSE川端
コンピューターの裏側の仕事→「S/Wを収益にすべき」
2024年05月27日
iモード事件
「iモード」と言っても、若者はもう知らない。iPhoneは2007年にアメリカで発売開始。日本でも翌年に当初はSB独占で発売され、それまで明確に第3位であったSBが携帯電話三強の一角になるのに大いに貢献した。それまでは、ドコモが「世界で初めてインターネットにつながる携帯電話」iモードによって一強だったのだ。
その「iモード生みの親」によって最初に出た本書は瞬く間にベストセラーとなり、私も2000年の出版当時に読んだ。それから24年。今ごろ再び手に取ってみたのは、技術的な制約があるなかで、どうやってサービスプラットフォーム事業を立ち上げたのか、参考にしたかったため。
結論としては、チーム作りが重要とドコモの開発責任者・榎啓一が当初から認識し、「人集めはジグソーパズルをやるような感覚」で、外部からも社内からもやる気のある多彩な人間を集めたから。ドコモ初の社内公募も実施した。榎はNTT熊本支社勤務時代に世話になった地元印刷会社の経営者橋本雅史の紹介で、リクルート『就職ジャーナル』『とらばーゆ』の編集長を歴任していた松永をスカウトする。そして、松永はマッキンゼー軍団に牛耳られて暗礁に乗り上げそうだった開発チームに、学生時代にリクルートでバイトをしていて知っていた夏野剛を連れて来る。
また、ドコモだけに予算も豊富。開発を決めた大星社長（ドコモ初代社長）からは、「50億円」と言われていた。それでも世界初の事業開発に十分かどうかわからないが、少なくとも、1990年代に国内ベンチャー企業がそれだけの金額を集めるのは不可能だろう。
29：ドコモ初の社内公募（榎）
・本当に新しいことに挑戦したい人間
・ストレス耐性の強い人間
36：新しい事態に臨むとき、まず必要なのは人材を集めること
1954『七人の侍』映画の前半はリクルーティングに終始。
37：「人集めはジグソーパズルをやるような感覚」榎
榎が勘兵衛、松永は平八（腕は頼りにならないが、明るいのが取り柄。苦しいときには重宝）。
43：外部の人間であるマッキンゼーが会議の主導権
ドコモの人間は榎以外は誰も言葉ひとつ発しない。
48：マッキンゼーの分厚い立派な企画書に、自分の心が少しも動かない
「コンテンツというものはハイリスク・ハイリターンだから、とにかくどんなものでも載せる方がいい。そのなかのどれかが当たってくれればOK」
88：クラブ真理（施工費1000万円）
低いソファーで、冷たいビールを飲める会議室。
115：バンダイはいち早くiモード専用チーム
少額課金の魅力。著作権保護。
135：夏野の説得力
ザガット夫妻を説得。
143：携帯電話でインターネット接続
国際標準WAP⇔HTML/HTTP
149：コミュニケーションが最大のコンテンツ
メールを全部読めるようにするか、文字数を少なくして、その代わり料金を安くするか？
→月300円（300円なら、2，3か月使わないことがあっても、千円に満たず画面できる）
214：iモード発売1周年、入社3年でドコモ退社
5.5か月で100万台突破。1年で500万台突破。
2024年05月26日
一生お金に困らない頭
「無限大の成長マインドセット⇔底なしの負け組マインドセット」は、米国と日本にも当てはまる。あれこれ言ってもマインドセットの違いは大きい。
はじめに：投資脳
・頭脳資産
・経験資産
・金融資産
192：騙されやすい人の特徴
☐リターンのためにリスクを積極的に取り勝ち
☐まわりに相談できる相手が少ない
☐優柔不断で自分の意見を主張するのが苦手
☐自分が騙されるはずがないと信じ込んでいる
☐情報リタラシーが低い
☐決断する前に自分で情報を収集することをしない
☐頑固な性格で、周囲の言葉に耳を貸さない
☐大きな悲劇や困難に直面しており、冷静な判断力を失っている
228：腸活
目に見えて疲れにくくなる。
232：自分のイメージを常に高く持つ
言葉→行動→環境
245：Amazon Day One
１．素早く意思決定を行っているか？
２．10回のうち1回は成功する〜それを熟知しているか？
３．失敗も経験になる、を徹底しているか？
４．未来のために用意できているか？
５．そのために今、行動（投資）ができているか？
おわりに：正しい投資姿勢は正しい自己肯定感につながる
2024年05月25日
ベーシックインカム
ベーシックインカム導入には賛成。そのためには、消費税を欧州並みに20~25%にする必要があるだろうが、その代わりに所得税や法人税を下げるならありだろう。現在の社会保障は、失業手当に、公的年金、生活保護に、健康保険等、複雑極まりない。その制度維持のために、支給費だけでなく、多大な事務経費が掛かっている。全国にある年金事務所維持のためだけにいったいいくらかかっているか
これを全部、ベーシックインカムにして、他を全部廃止すれば相当な効率化が図れる。さらには、社会保障は貰っている人は大抵複数が該当することになり、それを目当てにした不正利用の温床にもなっている。そうした不公平感も、例えば「成人の日本国民は全員一月10万円支給」にすれば、失業保険も、生活保護も年金も要らない。
しかし、その効率化で権限が無くなる人たちの（潜在的な）反対はスゴイだろう（動画参照）。
170：ベーシックインカム導入で「好き」を仕事に
公的年金はだんだん縮小しながら解消し、ベーシックインカムで社会保障。
�‘�きたい人にだけ働いてもらった方が合理的
�◆崋匆颪砲箸辰凸鬚卜�たないこと」が世界をもっと面白くする
��ベーシックインカムは、生活保護よりも効率のいいセーフティネット
180：「席、倒していいですか？」非効率マナー
2024年05月24日
「常識」の99%はウソ
頭のいい人だし、「常識にとらわれない」で自分で考えるというのは、その通りなのだろう。ただし、「常識」の99%はウソとまで言われると、これは大げさ。まず大前提として、殆どの人は、考えるのが苦手。よく考えずに「非常識」なことをすれば、大抵周囲に迷惑をかけるし、犯罪になることもある。なので「疑う」ことは大事だが、思考力もないのに、何かと反発するのはやめたほうがいいだろう。
賛成：真面目に原価低減して大量生産すれば国が発展する時代はとっくに終わっているので、付加価値を出せる才能に日本で働いてもらわなければならない。その時、最大の障害が、税金の高さ。こうした人は収入が少なくとも1億円はあるので、所得税だけで50%。住民税・社会保障費を入れると70%+納税となる。今では平均所得が日本の1.5xあるシンガポールはじめ、アジア諸国の所得税率は15-25%くらい。これほど差があると、働くのは所得税の低いシンガポールや香港で、休暇は物価の安い日本で、となる。16：税金を払うくらいなら、その分をAmazonに投資したい消費税はもっと上げて、所得税や法人税はアジア諸国並みに下げるべき。
100：Wagyumafiaカツサンド専門店いちばん安い「和牛ザブトン」5000円いちばん高い「神戸ビーフ熟成」35000円
私は昔からあまり肉を食べない。趣味と言えば趣味だが、肉の大量生産にかかる資源の浪費と、そのたえめに消費される大量の家畜の命を考えると、「気楽に食べよう」とは思えない。むしろ、ホリエモンが経営するWAGYUMAFIAのように、「肉は高価な食べ物」で当たり前だと思う。109：ベジタリアンやヴィーガンなんて趣味彼らの言動は時に宗教染みており、「肉食」に対する攻撃は目に余る。
これは感じる。SNSでは、短い文章だけがやり取りされるので、まとまった文章を読解する力が失われているように思う。文章から切り取っただけの短いフレーズや、場合によっては、単語だけに反応して炎上することがあり、それを無責任に拡散する人がまた居る。125：SNS流行で新時代の「一億総白痴化」日本語を正確に読み取れない人間が増えている。
2024年05月23日
ウェスチングハウス
ここで書かれているのは、2006年に東芝が買収するはるか前のウェスチングハウスの状況。1980年代から経営は迷走し、ボロボロになっていたことが分かる。それが8800億円という高評価で買われたのだから、株主はほっとしたことだろう。東芝はまともな会社を買ったのではないという認識があったのかどうか。
120：花王1971年に社長に就任した丸田は、彼の仏教への深い傾倒を経営哲学に反映させた。
「自分はまず仏教学者であり、次に花王の社長である」（丸田社長）
彼の信条の中心となるものは人間平等の原則であり、それは個人に対する深い尊敬によって表現された。「言いたいことを言う」ことを社員に奨励。
166：Westinghouse
厳格なコントロールがマネジメントの核。10年間自由型マネジメントを試みたが、70年代半ばに業績が悪化してからは、厳格なコントロールが再評価。
167：伝統的な大企業モデルで社員の態度や行動に強い影響を及ぼす3つ目の要因
「企業と従業員の関係が契約に基づいている」
・報奨金の割合を高めた給与制度
・大がかりなリストラ、合理化、退職プログラム
172：1980年代に3人のCEO交代
100を超える事業が売却され、社員数は60%以上削減。一方で、同時期に50社を超える事業を買収。
低い生産性や低成長に対処するのに、もっぱらトップダウン型のプロジェクト志向のアプローチ。新任のCEOがそれぞれ長期的に影響力を持とうとして、戦略の継続性が無くなる。
100を超える事業が売却され、社員数は60%以上削減。一方で、同時期に50社を超える事業を買収。
低い生産性や低成長に対処するのに、もっぱらトップダウン型のプロジェクト志向のアプローチ。新任のCEOがそれぞれ長期的に影響力を持とうとして、戦略の継続性が無くなる。
2024年05月22日
3Mとノートン
ここにかつてよく知っていた会社が登場する。それが米ノートン社。セキュリティソフトの会社ではなく、1885年にマサチューセッツ州ウスターで創業された研磨材メーカーだ。酸化アルミニウムを使った人工研磨材「アランダム」を発明し、米国の産業革命に大きな貢献をした名門企業であった。
29：制度の組み込まれた3Mの起業家精神戦後、両社は規模的にはほぼ同格だったが、3Mはノートンにとって取るに足らない、新たな挑戦者にすぎなかった。しかし、1950年代半ばまでに3Mはノートンの2倍の規模となり、さらに60年代半ばには4倍、また70年代半ばには売り上げ規模で6倍、そしてついに80年代半ばには8倍の規模にまでなった。（中略）ノートンは、フランスの巨大企業サン・ゴバンに吸収される。
サン・ゴバンによる買収が行われたのが1990年。その買収がきっかけで、1991年にLBSを卒業した私はノートン社の日本での合弁会社に入社した。翌年には、サン・ゴバンの経営陣が経営改革を進めていたノートン社に出向した。
33：3Mの社内の雰囲気＝あるときは活気に満ち、またあるときは秩序のない実験であふれていた一方ノートンは、合理的かつ論理的で、きちんと組織立った企業であり、内部では生み出せない多様性を企業買収で獲得し、成長してきた。1990年代までに、3Mは”普通の人たち”の起業家精神の下で100以上のコア技術のポートフォリオを創造し、この技術ポートフォリオをテコに、65万種類にも及ぶ製品群を生み出してきた。これらの製品群は、47の製品部門の下にある3900のプロフィットセンターによって管理されている。
ノートン社はスウェーデン移民が中心になって作った会社で、当初は陶器を作っていた。陶器原料に砥粒であるアランダムを混ぜ、焼成したものが世界初の人造砥石となる。社名がアングロサクソン系のNortonであるのは、創業時に出資したオーナーの名前を取ったため。ハーバード大学がHarvardになったのと同じで、金を出す資本家が一番偉いのだという米国の伝統。
41：経営資源と責任を徹底的に分権化する「何が人間を動機づけるのか」3MやABB、ISSが、起業家精神にあふれたユニットを作り上げることに成功⇔ノートンとウェスチングハウスがこれに失敗
金属加工に欠かせない研磨材で戦前には既に世界有数の会社となっていたノートン。しかし、冒頭に書いたように、戦後は3Mにどんどん差を付けられるようになる。長年オーナー企業であったが、1985年にNYSEに上場。その後も、業績は伸び悩み、株価はさえない状況だった。それを買収したのが、欧州最大のガラスメーカーである仏サン・ゴバンで、ガラスも陶器も同じ窯業技術を使うという共通点がある。
82：情熱的な人材収集家個人の能力を開発するには、まず人材の採用を戦略的意思決定と考えること。ノートンのような企業のトップ・マネジメントは、最も優秀な人材を確保することよりも、最も効率が高い工場を造ることや、最適な流通網を築き上げることに神経と時間を使っている。
2024年05月21日
自己改革を続ける組織の条件
ウェスチングハウスの組織の特徴として、「きわめて権威的」とある。それを大枚はたいて買ったのが東芝。結果的に、ウェスチングハウス倒産のあおりで、自社までが経営危機に。買収に当たっては、対象企業の組織風土も重要。
ABBの場合は、同社の送変電・配電事業を買収して、見事に組織風土を変えて見せた。グループ全体ではなく、事業買収だったこともやりやすかった一因だと思われる。
新装日本語版への序文：「目的・経営プロセス・人」の哲学に立ったより豊かなビジネスモデル
2004年３月スマントラ死去 才能豊かで、独創的で、知的活動が旺盛な経営思想家
３：ウェスチングハウス
第一級の人材を雇用し、最高のマネジメント教育。しかし、きわめて権威的な組織によって、彼らは身動きが取れなくなり、そうした投資は無駄に。
13：マネジメントの再発見
ABBが送変電・配電事業を買収
15：ABB＝企業を可能な限り簡素化し、現地化
300億ドルの多角化されたグローバル企業⇔200人程度の組織ｘ1200社の集合体
2024年05月20日
経営とは、実行し成し遂げる芸術
「不真面目な優等生」の増殖〜まさに、JTCの欠点。結果に結びつく行動が出来てない＝低生産性。
まえがき：勤勉で、一生懸命働く。むしろ働きすぎる。基礎能力は高く、組織に対する帰属意識も強く、与えられた仕事や任務は、そつなくやり遂げる。しかし、自分や、自分が所属する組織が置かれた立場を十分に理解してはいない。
Active non-action（行動的な不行動）一生懸命行動しているようで、実際に意味のある行動をとれないでいる人がいかに社会や組織に満ちあふれているか。
１：経営とは、実行し成し遂げる芸術
20：目的意識を伴う行動をサポートする組織を築く
マネジャーが意思のある力を発揮するためには、行動するにあたって十分な自由が与えられる。
116：ノンアクションの三つの罠
�＾掬櫃気譴詬弋�
��耐えられない制約
�Ｌ郎�しない選択肢
・人と接する時間を決めておく
・要求に働きかけ、自分への期待を管理する
250：訳者あとがき
「戦略が、組織によって制約される」→競争優位ではなく、組織優位の確立こそが急務
2024年05月19日
一生RUNを楽しむヒント
昨年末の脳動脈瘤に続き（未解決）、この春から右膝が痛む。老化と言えばそれまでなのだが、色々調べたところ、変形性膝関節症らしい。趣味は？と聞かれれば、「旅行・サイクリング・読書」と答えてきたが、毎朝のジョギング（とラジオ体操）も10年続けている。早朝の公園を走るのは気持ちいいので続けたいが、膝が痛いと楽しくない。
本書は、スポーツシューズ開発を10年やったあと、RUNライターとなった方。高齢ランナーや専門家15人に何に気をつければいいか、どう走っているかなどをヒアリングしてまとめた本。スーツを着て勤務していたその昔、革靴は5組揃え、毎日履き替えていたが、ランニングシューズも履き替えた方がいいらしい。
＊年を重ねても楽しく走り続けるには？
21：身体に負担をかけず、早く走れるランニングフォーム（藤井透）
負荷が一カ所に集中するのを避ける。着地はできる限り広い面積で行う。
肩甲骨の自由な動きをキープする。
骨盤の前傾を意識する。
31：2日連続で同じシューズで走らない
着地衝撃を吸収するパーツであるミッドソールは、EVAやPUといった合成樹脂で造られている。これらの素材内部の気泡は着地衝撃によって潰れ、連続で履くと、元の形状に戻る前に衝撃を受け、劣化が早くなる。
115：ストレッチ（森川優）
2024年05月18日
家康が現代日本人に遺した最大の遺産
家康が現代日本人に遺した最大の遺産は「正直」。
236：正直さや勤勉さ、礼儀正しさ、好奇心の強さ、学びへの熱意、遊ぶ才能など、江戸人が持っていた美徳を失わないことの方が、日本の将来にとって大事。
これには納得。世界史にも稀な200年余りの太平。江戸時代を通じて、それまでの下剋上エネルギーは止められ、従順なタイプの人が増えていく。
198：徳川時代に、子孫を増やし、遺伝子を後世に残したタイプ農村にいて親の言うことを聞いて、良く学びよく働いて、村内で田畑を上手に増やしたタイプ。
しかし、そうした中でも、身分は低い商人でも、大名に貸し付けるような豪商も出てくる。身分にかかわらず、商才で稼げる道はあった。
190：朱子学
「臣子の分」人には生れついた身分がある。
208：「世直し」一揆
フランス革命でもそうだが、民衆は物価、とりわけ食べ物の価格が上がると、政権を脅かす。
235：「十両取れば首が飛ぶ」徳川時代は法が厳しい
→「お上が恐ろしいので、法度は守る」という意識
2024年05月17日
下剋上
「氏素性や官位など、天皇との繋がりで支配の正当性を主張する意識が、『暴力の中世』になってかえって根強くなる」というのが面白い。
164：氏素性家系の位置づけを表す氏、天皇から与えられた「源」「平」「藤原」「橘」などの姓。
暴力だけではいつまでも安定しないため、それ以上の何かを求めたわけだ。その頃できたおとぎ話が「一寸法師」。
166：下剋上「より高いステータスを欲する姿勢」「一寸法師」下剋上そのもの。上洛が成功へのきっかけ。身分が低く、差別を受ける鄙の人々も、天皇のいる都に行くことで、高貴な氏素性が明らかになる。
現在の少子化は、実際のところは、結婚した女性の出産数に大きな変化はないので、婚姻率の低下が主原因。これは、中世でも同じだったらしい。
177：中世も現代も、高所得の男性は多くが結婚する一方、低所得の男性は結婚率が著しく下がる社会徳川時代の安定の背景には、庶民までもが家・家族を持てた点があった。
江戸幕府になって、将軍を天皇よりスゴイ存在にするために松平家は腐心する。
178：日光が改葬地だったのは、富士山を挟むため。久能山と日光東照宮の奥の院を結ぶ線は、富士山の山頂部を通る。『聖徳太子伝暦』「太子が甲斐の鳥駒に乗って、富士山を割るように飛び越えた」東照大権現⇔天照大神
185：皇族への生殖管理
「禁中並公家諸法度」第6条「養子は連綿同性」＝皇子は摂政・関白家を継げない
＋儲君（天皇の跡継ぎ）の外は皇子・皇女は概ね出家→天皇の子孫が地方に現れないようにする
2024年05月16日
大久保は二流
岩倉使節団を日本史で習ったとき、違和感があったのが、「2年近くリーダーがこぞって国を空ける」こと。いくら飛行機の無い時代とは言え、これは異常だろう。
140：岩倉使節団2年近くリーダーがこぞって国を空ける。西洋に行ったことのある者に任せれば済む話。岩倉と大久保が、あくまで自分の手で「富国強兵」をやりたかった←権力欲
そういえば、伊藤も留学している。
141：伊藤博文ドイツ式の憲法をつくるため、1年も欧州留学。「自分が憲法を書きました」というため。ドイツ語のできる熊本藩出身の井上毅に任せればよかった。
著者は、「大久保は二流」と切って捨てる。
142：大久保は二流カリスマ性で一直線に周りを引きずりまわす西郷隆盛の横に偶然居たからこその出世。西郷や福沢は、どんな環境に置かれても「自分の力」で「自分になる」ことができる。
しかし、権力欲の強い三人がいない間に、大隈は政府改革を進める。
145：鬼の居ぬ間の洗濯岩倉使節団→大隈は、佐賀藩人脈や旧幕臣の渋沢栄一などを動かしながら、改革に着手。
もちろん、帰国した二人は面白くない。これが明治14年の政変につながる。
157：大隈参議罷免斬新論（伊藤博文）ドイツ流の立憲構想急進論（大隈重信）イギリス流の議院内閣制を主張
129：岩倉具視「薩長龍虎論」
薩長二藩は龍虎の如し。風雲にあえば、どれほどの勢いが生じるか分からない。
130：主演・薩摩、助演・長州、脇役・土佐
佐賀藩が日本で最強の火力を有する。アームストロング砲＋スペンサー銃をフル装備する武雄兵。
151：士族の商法
全人口の5%ほどの士族たちが、何の仕事もしていないのに禄←国家歳出の4割！
2024年05月15日
幕末「神君の仕組み」の崩壊
15代・慶喜は、在京中に将軍就任したため、徳川将軍が常に京都にいる状態になった。これは、幕府当初の「将軍上洛制」を否定するもので、「朝廷のある京都が政治の中心にならないように」という家康の工夫が崩壊してしまう。
「慶喜は将軍として一度も江戸に入ることなく、京都で大政奉還を行い将軍職を退いた」というのは知らなかった。
79：江戸時代、天皇の変化
将軍上洛制（1~3代）→将軍常府制（4~13代）→将軍上洛制（14代）→将軍在京制（15代）
家茂の時代に「将軍上洛制」となったのは、幕末に京都が日本政治の中心となったから。
⇔江戸初期に幕府は、朝廷のある京都が政治の中心にならないように、天皇と大名との繋がりを遮断した
・参勤交代途上、西国の大名たちが勝手に京都に入ることは認められない
・幕府は、大名が天皇の周囲にいる公家との接触を警戒
・「禁裏付」という幕府の武士が、御所の出入り口を監視（強化賞を持つ者だけが通行）
82：大名が公家と縁組
・出自のわからない大名たちが貴族らしくなる貴種性の獲得
→大名は皆公家の親戚に→「奥」に公家文化が広まる→公家文化への憧れ
＊18世紀後半（老中・田沼意次）雛人形が庶民にも広まる
平安貴族の雛遊びがルーツ→庶民にとっても天皇や御所は憧れの対象に
83：頼山陽『日本外史』
本来、日本の政権は天皇にある→尊王思想
88：長州藩、水戸藩、薩摩藩「京都手入れ」＝ロビーイング
幕府に自分の意見を通すためには、「天皇もそう言っている」と主張するのが効果的。
弁舌さわやかな賢い家臣を京都へ派遣し、天皇の側近に入説。
99：「一会桑政権論」（家近良樹）
江戸の幕府はいきなり薩長に滅ぼされたのではなく、まず一橋、会津、桑名藩に実権を奪われた。権力が江戸から京都に完全に移り、幕府の力が低下。
105：慶喜「フランス的な近代化」
薩摩藩の西郷隆盛や大久保利通は驚愕→武闘討幕
111：慶喜が大坂城から逃げた理由
西郷隆盛がイギリスを使って慶喜を脅迫
イギリス公使パークス「戦いが長引けば、諸外国はいつまでも局外中立を保てない」
世界最強のイギリス海軍が大坂湾を封鎖すれば、大坂城の慶喜は退路を失う＝負け
117：Ｘ「旧態依然とした江戸幕府は、近代化できないから滅びた」
幕府は近代化が出来なかったのではなく、むしろ幕府が先に日本を近代化しそうに見えたので、薩摩・長州が焦り、急いで戦いに持ち込んで潰した。
＊近代化を担う人材は、日本の中では幕府が最も豊富
・江戸時代を通じて、「和蘭陀通詞」と呼ばれる通訳たちを抱えてきた
・1853ペリー来航後、約10年をかけて、幕府は西洋式の軍隊を育成
・幕府が積極的に外交を担った（1860遣米使節団、遣欧使節団など）
2024年05月14日
家康の誤算
著者は、「家康の誤算」を以下のように整理する。それぞれ時代が変わっていく中で、それに対応した結果であったが、最終的に江戸幕府崩壊につながる。
しかし、�い鉢イ鰐棲里瞥�由がなく、不可解。通貨発行権を独占するのは今から見れば当然に思えるが、年貢が米であった時代、通貨発行権はそれほど重要視されなかったのか。鎖国につても、欧米列強の進出を恐れてということだろうが、それは鎖国してもしなくてもそう変わらない。オランダとイギリス両方と貿易することで、競わせることもできたはず。
薩摩が強国になれたのは、琉球を通して中国・東南アジアと行っていた密貿易による莫大な利益だ。
�＿�易制度の緩和〜有力な外様大名が生き残る
大名家のお取り潰し制度を緩めてしまったことで、薩摩の島津家や長州の毛利家などの強敵を残してしまった。跡継ぎがない場合は、容赦なく大名を改易して消滅させた（無嗣改易制）。1700年代に入ると、無嗣改易が急減。それまでは当主が亡くなりそうになったら、急に養子を取って家を存続させることは許されていなかった（末後養子の禁）。17世紀後期からその禁を緩め始める。
・1651「由井正雪の乱」（浪人が謀反を企てた事件）・・・下手に藩を潰すると浪人が増えて治安が悪化
・1702「赤穂浪士討ち入り事件」
＊薩摩藩 1749年6代目藩主・島津宗信が、子がないまま22歳で没。分家の養子に出されていた弟の重年が呼び戻される。
�⊃夕狙�度の廃止〜幕府への恐れがなくなる
1615武家諸法度「江戸参勤作法」
水戸藩と紀州藩（原則江戸に住む）は参勤交代免除。
14代家茂の時に緩められる「参勤交代で費用がかさみ、外国から日本を守るための海防費が出せない」
「大名証人制度」藩主の正室と嫡子（＋大大名の場合は、家老などの子も）江戸城内の証人屋敷に置く制度。4代家綱の時代、大大名の家老から人質を取るのをやめる。
＊大名は将軍の家来ではなく、自分は天皇の家来であり、領土の国王だと思うようになる
��城と大船の建造解禁〜軍事バランスが崩壊
1615一国一城令「一つの国に一つの城」
南九州や東北ではザル法（島津家は「麓」と呼ばれる支城を120カ所近く残す）
西洋の接近→一気に崩れる
海防の一環として築城が許される。「海軍禁止令」も安政の改革の一環として廃止。
�た靴燭閉眠澆涼鯊ぁ粗に襪了餠盡擦�
江戸時代初期、西日本では、当時の東アジア国際決済通貨である銀。金山のあった東日本では金。家康は金の小判を発行する一方で銀の仕様も認め、さらに中国の銅銭「永楽通宝」も使い続ける。
3代・家光の時に政策変更→1636「寛永通宝」鋳造→永楽通宝流通停止
＊徳川幕府から許可を取れば、大名領でも寛永通宝を鋳造できる！
大名たちが勝手に銭を造っても受け始める（贋金）。特に、「天保通宝」（小判）を、久留米半、薩摩藩、土佐藩、長州藩など西国雄藩になったほとんどが密造。
�コ宛鬚良坩堕蠅米阿�〜貿易の利潤と最新兵器
家康は鎖国してない。
2代・秀忠からカトリック教国への警戒からオランダ東インド会社を貿易窓口に。
三浦按針はイギリスとの貿易を提言→やっていれば、幕府は貿易利益を独占でき、最新兵器も導入できたはず。
�Π媚弖萃蟲ヾ悗領�化〜誰もが政治に参画
3代・家光の頃までは、大御所と将軍の意見がかなり反映。
4代・家綱は幼く、保科正之と老中たちが、政策を決める→老中が決めるのが慣例に
「世襲の弊害」何かの公職に就くには「家格」が問われる＝能力よりも家柄と先例で要職が決まる
「力がある者に権限はなく、権限がある者に力はない」
徳川政権では家康の工夫で、将軍の親戚は政治に口出しできない→大国を領有しない譜代大名と、1万石未満の旗本が幕政を担当
幕末、ペリー来航で破壊←全国大名の協力を得なくては国防ができない
→皆の政治意見を聞くことに（阿部正弘）
2024年05月13日
「神君」の仕組み
265年も持った家康の「仕掛け」。戦上手なだけでなく、制度設計に秀でた人物だったことが分かる。
まえがき：現代人も「衰え」に備えなくてはなりません。不敗の仕組みが、どうやってダメになっていったのかを歴史の実例で知っておくのです。
�＿塙�は自分の政権を長持ちさせるため、どんな仕掛けをつくったのか。
�△修痢嵜牲�の仕組み」が、どのように骨抜きにされたのか。薩長の維新は最後のトドメを刺したにすぎず、徳川政権の滅亡は長期にわたる制度疲労の結果。
�Ｆ狙鄒�権が消えてから、我々に残る「徳川の影響」。明治以後の近現代史も、我々は「家康のつくった国」と地続きで暮らしてきた。現在まで日本人は良きにつけ悪しきにつけ、「家康のつくった徳川社会」の影響を強く受けている。
25：駿府の今川家には、財力と人脈
京都や奈良から来た文化人や職人など、一流の人々との交流があるため、家康は人も物も一流を見て育っていく。
32：日本最強の野戦軍団
軍団に武田旧臣を組み入れ、野戦戦闘力が異様に向上。秀吉軍を長久手合戦で破る。長久手で見せた家康の強さを信じて、関ケ原合戦でも諸大名が家康についてきた。
42：歴代王朝が持つ「中華思想」
漢字の文明を持つ中心の「華」すなわち中国と、そこからはずれた夷の野蛮な国。文明の中心の中国が周辺の野蛮国に良い影響を与え、野蛮国は中国に従属すべきだとの考え。
43：冊封
「中華帝国」は、暦と年号を周辺の従属国に授けて使わせる。朝鮮王朝や琉球王国は中華皇帝の使いが来て国王任命式。朝鮮や琉球では、中国の年号を使用。
2024年05月12日
中国の半導体製造能力
米国からウクライナに供与されたジャベリン対戦車ミサイルは1発2000万円。
440：外国製ソフトウェアや装置へのアクセスを厳しく制限しないかぎり、今後中国は旧世代のロジック・チップの生産拡大
中国はEV向けの電源管理チップ開発に必要な材料へと、資金を投じている最中。
450：先進的な半導体製造が東アジアに集中
米政府は、アメリカに新工場を建設するようTSMCとサムソンを説得。TSMCはアリゾナ州に新工場を、サムソンはテキサス州オースティン近郊の工場を拡大。
462：ロシア軍は非精密誘導兵器に頼り続けている
シリア空爆では、投下された兵器の95%が無誘導式。
⇔1発当たり200個以上の半導体を駆使するジャベリン対戦車ミサイル
2024年05月11日
ファーウェイ排除
414：DRAM世界市場
マイクロン、サムスン、SKハイニックスの3社。台湾企業は、1990年代から2000年代にかけてDRAM事業に参入しようとしたが、失敗。DRAM市場には規模の経済性が不可欠なので、小規模メーカーが競争力を保つのは難しい。
427：半導体製造のオフショアリングの過程で、半導体産業の急所の独占が進捗
世界の半導体のほとんどは、アメリカに拠点を置くケイデンス、シノプシス、メンター（ドイツのシーメンス所有だが拠点はオレゴン）の3社のいずれかのソフトウェアを作って設計されている。インテルが自社で製造する半導体を除いて、最先端のロジック・チップはすべてサムスンとTSMCの2社だけで製造されており、両社とも安全保障を米軍に頼る国々に拠点がある。さらに、最先端なプロセッサの製造には、オランダのASMLという1社だけが独占的に生産しているEUVリソグラフィ装置が必要で、ASMLはというと、EUV光源をサンディエゴの子会社サイマー（2013年買収）に頼っている。
430：中国からのファーウェイ排除に対する反撃無し
サプライ・チェーンの分断という点では、アメリカ側にエスカレーション・ドミナンス（敵の犠牲が大きくなる形で一方的に紛争をエスカレートさせる能力）がある。
確かに、アメリカはHuaweiを国内市場から締め出したのに、中国側からいつもの報復措置はなかった。政府職員がiPhoneをつかうのを禁じたくらい。
確かに、アメリカはHuaweiを国内市場から締め出したのに、中国側からいつもの報復措置はなかった。政府職員がiPhoneをつかうのを禁じたくらい。
2024年05月10日
TSMCの隆盛
戦前に中国の銀行家の息子として生まれ、香港で育ったモリス・チャン。国共内戦に共産党が勝利したことで、運命が大きく変わる。資本家の息子として中国に居られなくなり、米国に脱出。HarvardからMITに移り、卒業。ところが、就職先がない。いくら一流大学を出ても、1958年当時、中国人移民がなれるのは、教師か研究者くらいしかなかったという。
結局、チャンは当時まだ勃興期だった半導体産業に出会い、ベンチャー企業であったTexas Instrumentsに入社する。そこで頭角を現し、副社長にまで上り詰めるのだが、社内でファウンドリー事業を提案するものの、否決される。同じころ、台湾政府から、「台湾に半導体産業を興してほしい」と頼まれ、1985年台湾工業技術研究院の院長に就任する。その時、チャンは54歳だった。
196：ミードとコンウェイの革命
一連の数学的な「設計規則」を定め、コンピューター・プログラムによる半導体設計の自動化。誰よりも興味を示したのが、国防総省。DARPAは、半導体設計プログラムに資金拠出。
228：TSMCの隆盛
モリス・チャンが台湾政府の強力な後ろ盾を得て創業。
彼が希望通りTIのCEOに就任出来ていたら、ロバート・ノイスやゴードン・ムーアと肩を並べる半導体産業の王者となっていただろう。
232：ファブレス企業
1976年当時、半導体の設計は行うが、自前の工場を持たない、いわゆるファブレス企業はまだ存在しなかったが、チャンはそうしたファブレス企業がもうすぐ現れるだろうと踏んでいた。しかし、すでに大儲けしていたTIは、まだ存在しない市場に賭けるのはリスキーだと判断した。
2024年05月09日
インテル再興
1980年代、品質で米国製を圧倒した日本製のDRAMは世界を席巻。それまでDRAMを主力製品にしていたインテルも存亡の瀬戸際に立たされる。
そうして追い込まれたインテルはCPUに移行していくのだが、そうできなかった米DRAMメーカーも多い。彼らは、半導体事業に参入したがっていたサムスンに技術移転する。184：インテル再興�―抄醗�の1/4以上を解雇。4工場を閉鎖。�∪渋い魑’修気擦襦Ｆ�本の製造手法を容赦なくコピー。
もちろん、こうしてサムスンは米国の技術にはライセンス料を払ったが、90年代になると米国の半導体貿易規制から不況に陥った日本メーカーの技術者を週末にソウルに呼ぶことを始める。就業規則違反だが、日本では事業縮小でモラルは低下していた。192：サムスンアメリカは韓国製のDRAMチップの市場だけでなく、技術まで提供。破綻の瀬戸際まで追い込まれていたSVのDRAMメーカーは、一流の技術を韓国に移転することにほとんど躊躇しなかった。
193：米半導体産業の再生アンディ・グローブのパラノイア、ジェリー・サンダースのなりふりかまわぬ乱闘、ジャック・シンプロットのやんちゃな競争心の賜物。
米半導体メーカーの経営者は役者揃い。日本の総合電機メーカーの半導体産業をろくに知らないサラリーマン経営者はなすすべもなく、「半導体敗戦」となった。
2024年05月08日
アイダホ州のハイテク企業
経営不振で、フラッシュメモリーに集中すべく売りに出た東芝のDRAM事業を2002年に買ったのがマイクロン・テクノロジー。アイダホ州の企業とは知らなかった。
170：アイダホ州のハイテク企業。アイダホ州一の大富豪、ジャガイモ長者のジャック・シンプロットがオーナー。
170：アイダホ州のハイテク企業。アイダホ州一の大富豪、ジャガイモ長者のジャック・シンプロットがオーナー。
123：HPの購買担当役員アンダーソン1980
日本製のチップをテストした結果、アメリカの競合企業よりはるかに高品質だという事実に気づいた。性能は同じ、価格も同じ。でも故障率ははるかに少ない。
173：シリコンバレーの大手企業がDRAMから撤退
シンプロットは本能的に、メモリ市場に参入する絶好のタイミングが来たと悟った。ジャガイモ農家である彼は、日本との競争によってDRAMがすっかり日用品に成り下がってしまったことを、はっきりと見抜いていた。百戦錬磨の彼は、日用品メーカーを買収する最高のタイミングは、価格が下落していて、ほかの競合がことごとく清算手続きに入っているときだと知っていた。
177：マイクロンの従業員にとっては、企業を存続させる以外の選択肢はなかった。SVなら、勤め先が倒産したらR101をひとっ走りして、次の半導体メーカーやコンピューター・メーカーに転職すればいい。対して、マイクロンはアイダホ州ボイシにあった。
2024年05月07日
世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防
序章：現在の米中対立の命運を決するのは、計算能力
第二次世界大戦を決着させたのは鉄とアルミニウムであり、その直後の冷戦を特徴づけたのは核兵器。
この半世紀で、１と０の処理や記憶にかかるコストが10億分の1になっていなければ、「ビッグ・テック」と呼ばれる巨大IT企業の数々は今ごろ存在しない。
今日の経済のなかで、これほど少数の企業に依存しきっている分野は、半導体産業をおいてほかにないだろう。実際、台湾製のチップは毎年世界の新たな計算能力の37%を生み出している。2社の韓国企業は、世界のメモリ・チップの44%を生産している。オランダのASMLという企業は、最先端の半導体製造に欠かせない極端紫外線リソグラフィ装置を100%製造している。それに比べると、OPECの産油量の世界シェアなどとたんに色あせて見えてくる。
2024年05月06日
巨艦はいかに甦ったか
はじめに：「日本製鉄って、こんな会社だったっけ？」（日経ビジネスで6年ぶりに日本製鉄を担当して）
というほど、日本製鉄は変わったという。
経営者や社員たちの顔つきや話しぶり、働き方が、6年前に比べてはるかに活力に満ちている。まるで別の会社を取材しているような感覚。
かつては、ザ「伝統的な日本の大企業」であった日本製鉄。
製造設備は巨大で、大量の原料から大量の製品を作る。もしミスが発生すれば、莫大な損失につながりかねない。だから綿密に計画し、管理を徹底する文化が根付いている。その分、どうしても保守的になりがちで、野心的な挑戦は少ない。
勿論、日本製鉄は何もしていなかったわけではない。先月の日経新聞「私の履歴書」にあったように、今から20年前三村社長になる前から、合理化も顧客に対する値上げ交渉もやっていた。しかし、経営改革が加速したのは本書のメインになっている橋本社長時代だろう。
日本製鉄にそれを決断させたきっかけは、2006年に起こった印ミッタル社による、ルクセンブルクの名門鉄鋼会社アルセロール社の買収。小が大を呑む買収で、当初成功確率は低いと思われたが、ミッタルCEOは巧みな交渉と広報戦略で買収を成功させる。アルセロールは日本製鉄が欧州で技術提携するパートナーであった。88：印エッサール買収「ウルトラC」アルセロール・ミタルCFOとのオンライン会談。「ミタル単独で入札。その際に、『日本製鉄が後でミタルに相乗りする可能性』項目」（ノンバインディング）
164：ギガキャスト（巨大なアルミ鋳造機で自動車のボディー骨格を一体成型する製造手法）
米テスラが先行。SUV Model Yで170個の部品をわずか2モジュールに。
⇔2022Lexus RX 日本製鉄の超ハイテン鋼採用（引張強度2Gパスカル）
174：油井管
地球を貫く注射針。日本製鉄は「高合金ステンレス油井管」で世界シェア7割。
1本平均12m、外径20~40cm。数百本繋いで、地下4000~1万mの天然ガスを取り出す。
270：橋本英二社長（当時）インタビュー
2019社長就任 「このままでは確実に潰れる」
危機の真因は2012年の新日本製鐵と住友金属工業の経営統合→２つの大企業がある日突然一緒になって、社員は全体感や会社が置かれている状況が分からなくなる。
276：熊本県球磨郡生まれ
実家は田舎で、周りに何にもない。自分しかいないから、苦境に陥っても人のせいにできない。
2024年05月05日
2024年05月04日
ゾーンに入る方法
デジタル機器を使わない「デジタルデトックス」が必要ですね。私は基本的に毎日、夕食後は使いません。
はじめに：集中力が高い人は「健康の幸福」「つながりの幸福」「成功・お金の幸福」すべてを手に入れることができる
集中力が低い人は、思考力も低い。優柔不断。
26：AI時代は依存症の時代
便利・おもしろい＝やめられない
35：絶好調のさらに上、ゾーン
仕事やスポーツなど、今、その瞬間に完全に集中し、普段よりも高いパフォーマンスが発揮できる。それでいて疲れ知らずで、気がつくと何時間も経っていた。
40：ゾーンに入る
�／瓦搬里鮴阿┐�
�▲好泪曚魃鵑兇韻�
�Ｍ縦蠅鯑�れない
�な�理的にきれい
�ナ�理的に集中しやすい環境
�η焼發�きれい
��流れるように作業する
�┘船腑て顱淵爛此�
��シングル佑
67：作業中にメールや電話を確認するなどのマルチタスクを行うとIQが10ほど低下する（ロンドン大学）
マリファナ（大麻）吸引した時の2倍。
79：デジタルよりもアナログ
「手書き」と「タイピング」では、手書きの方が、脳を活性化させ記憶増強効果も高い。
83：スマホ認知症
スマホを使えば使うほど集中力が低下する。
2024年05月03日
靴の履き方
３月から突然、ひざが痛くなった。朝走るときに、痛くて歩いてしまう。そこで、何冊かひざ痛の本を読んでみた。
はじめに：慢性的な「ひざの痛み」は“合っている”つもりの靴が原因太めのゆったり靴は、足を全身を、ゆがめてしまう。自分の足に合った靴に変えるだけで、その多くを改善できる。
「足の傾き具合は”靴底の減り”でわかる」という。私は、かかとの外側が減る。つまり、つま先が外股で接地しているということで、O脚、つまりガニ股だ。これは、以前、整体を受けたときにも指摘があった。
130：靴はある程度きつものを選ぶ「ある程度のきつさ」がないといけない→歩くときに足が靴の中で固定
その一因は、太めの靴と、履き方にあるというのが本書の指摘。昔の日本人の足は甲高幅広で、これは農民が多かったせいではないかという。今の日本人は裸足で肉体労働しないので、欧米人のように細長くなっている。なのに、相変わらず、幅広の靴を選ぶ傾向があり、これが変形性膝関節症の原因になっているという。
184：靴の履き方�．戰蹐繁楝里鯢海芭韻瓩討い詆�分までゆるめる�△�かとをトントンと2〜3回床に叩く→かかとをしっかり固定�９辰良�分をしっかりホールドさせるように紐を結ぶ
そういえば、靴の正しい履き方など、教わった記憶がない。小さなころから、なんとなく履いているだけ。これからは、紐靴を、毎回紐をしっかりと結んで履くことにしよう。
2024年05月02日
さらば、友よ、江藤よ！
巻末にある、石原慎太郎の追悼文。
177:一時期同じ旧制中学で過ごし、同じ地域で戦争を体験し敗戦の後の荒廃も目にして、大学は違えたがまた同じ頃文壇に登場し、その後も政治へのほとんど同じ意識を抱いてこの国を見つめてきた。
179:トインビーがその著書「歴史の研究」の中でいっているように、国家社会の衰退の原因は決して不可逆的なものではなく、それを正確に意識しさえすれば国家は必ずよみがえりもするということを江藤は説き続けてきたし、さらに国家の衰亡の最大の原因は自己決定能力の喪失に他ならないと彼は飽かずに指摘し警告してきた。
191:小林秀雄という強い感性と自意識を持つ知的な青年が、小説でも詩でも学問哲学でもなく、文芸批評という新しいジャンルの創設によってその自己表現を達成したと同じように、江藤は小林氏とは別種の論理的分析を踏まえ、その感性を加えての政治批判という未曽有の領域の開拓をしていたといえる。
2024年05月01日
幼年時代
そして、絶筆となる『幼年時代』。NHK「ファミリーヒストリー」を見ても思うのだけど、なんとなく引き継がれる「血」はあるね。
116：それにしても、何故家内がこの時期に、自分の若い頃の着物と私の生母の形見の着物の破裂を縫い合わせて、新しい鏡掛けを作って置こうという心境になったのかは、よくわからない。
131:ヘッドオブザクラス
父尭は海軍軍人ではなくて銀行員であり、その末弟裕も「正金」か「興銀」志望の帝大法学部生だったが、祖父江上保太郎は海軍関係者のあいだではほとんど伝説的な逸材とされていたからである。
141:母は華やかな印象を与える美しい女であり、聡明でもあった。だからこそ、継母との関係は、あるいは宿命的に摩擦を含んだものとならざるを得なかったのだ、と考えることもできる。
156:海軍士官が、自宅を構える土地として選んだのは、明治時代後期には青山、隠田辺りが通例であった。祖父江上保太郎も、佐世保鎮守府参謀長から本省に戻り、人事局長に栄進した海軍少将の頃、青山高樹町12番地に自邸を建てている。私は、もちろんこの屋敷を知らないが、祖父の柩は、この家から砲車に挽かれて最寄りの青山斎場に向かったのである。
