2023年04月
2023年04月30日
『香川1区』
地方で自民党は強い。市議→県議→国会議員とピラミッド型の組織があり、それはアバウトながら、アバウトなゆえに最大公約数を飲み込む。だから、強い。
『なぜ君』がヒットした故に、映画スタッフの立場も違ってくる。今起こっている選挙に影響を及ぼすようになるのだ。171：『香川1区』始動選挙を丸ごと取材したドキュメンタリー映画。長年小川さんの高い壁として立ちはだかってきた平井さん（初代デジタル大臣）の強さ、自民党の強さとは何なのか。
『香川1区』を取り始める前、映画の取材に快く応じて、「こうした映画のおかげで国民が政治に関心を持ってくれればいいこと」と言っていた対立候補の平井大臣は、選挙が始まると態度を一変する。175：ドキュメンタリーの当事者に『なぜ君』では私は純然たる「取材者」であり「記録者」であったのが、『香川1区』では私たちスタッフや映画の存在が、ドキュメンタリーの「当事者」になった。選挙戦が本格化すると、「小川さんを応援したい」と県外からボランティアが100人＋
もちろん、映画を作ったのは大島監督の勝手であって、小川議員ではない。平井陣営のスタッフから取材妨害も受けたらしい。比例復活で当選を果たしたとはいえ、小選挙区で平井大臣に連敗していた小川議員が望んだ7回目の衆議院議員選挙「香川1区」。176：平井さんが『なぜ君』を強く批判「私は観ていないがあれはPR映画、相手候補のコマーシャルだ」「あんなことが許されるなら、全国の国会議員が映画を作る」
'21年10月31日に投開票された衆院選の結果は、小川淳也9万267票、平井卓也7万827票。2万票近い大差をつけて小川氏が圧勝した。かたや平井氏は、比例復活でかろうじて当選と相成ったのだ。（週刊女性PRIME）
2023年04月29日
『なぜ君は総理大臣になれないのか』
ドキュメンタリー映画として異例の大ヒットとなった『なぜ君』。
169：2020公開ロングランキネマ旬報ベスト・テンの文化映画第1位をはじめ、『なぜ君』は3つの映画賞を受賞。劇場動員数3.7万人＋14プラットフォームでのレンタル＋Netflixサブスク配信
138：「ある政治家の挫折」
猛反対する家族を説得した言葉「このままでは死んでも死に切れん」
144：希望の党騒動
希望の党から出馬「今回の判断、決断は・・・・・無所属でもよかったと思う？」
151：小川さんの政治活動を十数年追った「大河ドキュメンタリー」
ラストだけは、初出馬の時から変わらぬ家賃4万円台の集合住宅で暮らす小川さんの姿。
167：ドキュメンタリー映画の重要な原則（大島渚）
「記録する対象への愛、強い関心、執着であり、今一つはそれを長期にわたって行うということ」
2023年04月28日
映画に挑む
映画で採算を取るのは厳しい。大島新の場合、独立第一作と第二作は、赤字となった。第三作目の『カレーライスを一から作る』で初めての成功。
これは、探検家・医師で、当時は武蔵野美術大学教授でもあった関野吉晴さんの課外ゼミの記録。ムサビの学生が、文字通り「カレーライスを一から作る」。つまり、米や鶏、野菜にスパイスを一から作るのだ。
農業経験がない学生が米や野菜を作るだけでも大変なのだが、最大の問題は肉。雛から飼っている鶏は学生に懐く。それを、殺すか殺さないかで議論。殺したくない学生も毎日、誰かが殺した肉を食べている。
112：『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』
初めて思い切りバットを振る。賞も取ったが、赤字。
119：『園子温という生きもの』でまた失敗
2012『ヒミズ』『希望の国』
名前に乗った企画はダメ。
126：『カレーライスを一から作る』で初めての成功
133：2018『ぼけますから、よろしくお願いします。』で大逆転
フジテレビの名物ディレクター信友直子さんが、これまでのディレクター人生の集大成のように、年老いた両親にカメラを向けてさらした老々介護の厳しい現実。
136：動員数20万人という大ヒット
泣きながら撮った場面を、「いいシーンだ」と思っている彼女がいる。
極めて近い虫の目と、遠くから俯瞰した鳥の目を持った特別な作品。
2023年04月27日
「右手に花束、左手にナイフを」
ドキュメンタリー映画監督としての大島新を有名にした『なぜ君は総理大臣になれないのか』。当初は映画にするつもりもなく、奥さんの同級生が官僚を辞めて出馬するというのを聞いて、奥さんの実家である高松に行ったときになんとなく記録していたらしい。
96：『なぜ君』小川淳也さんと妻の明子さんは、私の妻の高校の同級生（高松高校）。「小川君っていう、野球部で、めちゃくちゃ勉強ができてさわやかな好青年が、東大を出て官僚やっとったんやけど、あっちゃんの猛反対を押し切って出馬するんやって」
86：「何を恥ずかしいと思うか」
被写体が涙を流したときに、カメラを素早くズームインしてアップで撮ったカメラワークを良しとするかどうか。中野（伸二）さんと私も、こういうカメラワークは「恥ずべきこと」と思っていた。
89：「右手に花束、左手にナイフを」
取材における被写体との距離の取り方。
2023年04月26日
「心のヌード」を撮る
ドキュメンタリーは好きなので、TVで見る半分はドキュメンタリー。TV東京の経済番組中心。友人が「カンブリア宮殿」や「ガイアの夜明け」のディレクターを担当しているという理由もある。
14：誰かが企画を「買って」くれなければ、作品として成立しない
TVの場合は、「放送したい」と言ってくれるテレビ局が、映画の場合は「上映したい」といてくれる映画館がないと、発表する場がない。
28：「カメラマンは運動神経がいい人がいい」（大島渚)
私が好きなカメラマンは、「文脈を理解してくれる」「世界を私と同じように見ている」といったことに加え、運動神経がいい人ばかり。
35：ドキュメンタリーは被写体の「心のヌード」を撮る
そのためには、取材者もまた心を裸にしなければならない。
59：視聴者との乖離
太田氏に対する思い入れが強過ぎた。その部分が微に入り細をうがち過ぎて、一部の格闘技好きでないと、何の話をしているのかさっぱりわからない構成になっていた。
横山さんからは「普遍性」といいうことを何度も説かれる。多くの視聴者に「自分にもあてはまる」と共感してもらえるような部分があるか否か。
63：ドキュメンタリーを作るコツ
虫の目と鳥の目の両方を、ディレクターの中にどう同居させるか。
73：日常的にドキュメンタリーに携わるとしたらプロデューサーになるしかない
実際に現場で取材して制作を担当するのは制作会社のスタッフやフリーのディレクター。
局内で制作しているのは1割程度、9割がたは外部制作。
2023年04月25日
自らを鏡にした映像制作史
大島渚の息子にして、ドキュメンタリー動画の大家。ついでに言うと、二浪で早稲田に入り、一留で卒業しているので、退学に次ぐ早稲田の王道。さらに、名門サークル「探検部」出身だ。
フジテレビを経て1999年フリーとなり、MBS『情熱大陸』、NHK『課外授業ようこそ先輩』、フジテレビ『ザ・ノンフィクション』など数多くの番組を演出・プロデュース。2009年映像制作会社ネツゲンを設立。映画監督作品に『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』『園子温というもの』『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』。映画プロデュース作品に『カレーライスを一から作る』『ぼけますから、よろしくお願いします。』『私のはなし 部落のはなし』など。
と紹介にはある。
はじめに：BRUTUS2021年12月1日号
「沸騰！ドキュメンタリー好き」特集。
ドキュメンタリー映画の製作・公開本数は増加傾向
かつては「観客動員1万人で立派な数字」と言われていたのが、3万人、5万人を動員する作品が毎年のように登場。
テレビマンは長年培った習性から、観客の想像力にゆだねるようなスタイルの作りはできない
1990年代からテレビドラマの「劇場版」が公開され、そのわかりやすさから「あれは映画じゃない」と言われながらも、観客を動員し、スタンダードになってきたような状況が、20年遅れでドキュメンタリーの世界にも及んでいる。
2023年04月24日
理事を楽しむ
「一度は試してみる」をモットーとしているので、理事になってくれと言われたときも、その後理事長を頼まれたときも、「まぁ、一度やってみるか」で現在に至っている。
理事の時は隔月の理事会と、会計担当だったので、月に一度の収支を見ていた。3年前に理事長になったが、やはり代表になると負担がかなり違う。管理会社に日常業務は任せているとはいえ、業務委託だから、判断が必要なこと、支出の伴うことは、全部こちらに回って来る。毎週、何かある。住民の方が直接相談に来ることも稀にある。
自分が住んでいるところに必要な仕事で、嫌いではないが、やはりこれを無償で続けるのは難しい。理想的には、定年退職したばかりで判断力があり、時間に余裕のある人がいいが、そうした人は既に理事長経験者で、世代交代で新しく入る住民は現役バリバリの子育て世代が多く多忙だ。
本書はマンション理事入門に良い本だったが、理事長報酬に関しては触れられていない。マンションがその価値を維持できるかどうかは管理組合が機能しているかどうかによるところが大きく、管理組合を代表する立場の理事長の責任と負担もかなり大きい。それを無償で何年も続けるというのは無理がある。
各管理組合で決めればいい事ではあるが、自分が当事者なので、「自分に払ってくれ」とはなかなか言い出せないのが実情ではないかと思う。国が指針を出してもいいと思うが、どうだろう。
88：理事を楽しみ、会議を楽しくする
・茶菓の効果
・おしゃれな服装
・女性の参加
・歓談の有効性
127：マンションはコンクリートでできている
そもそもコンクリートとは？
コンクリート＝ポルトランドセメント＋砂＋小石＋水を加えて攪拌
セメント＝石灰石＋粘土＋珪石＋鉄原料＋石こう
130：鉄筋コンクリートの強みと弱点
強み＝高強度、耐火性
弱み＝経年劣化（鉄筋コンクリート自体のアルカリ性が失われること）
168：マンションの寿命
・コンクリートの劣化状態次第
・建て替えの可能性検討
170：大規模修繕工事を成功させる
�ヽ擇靴気留藹�
�◆峪�前方針書」の作成
��スケジュールの作り方
2023年04月23日
分譲マンションの歴史
今日のNIKKEI The Styleで特集されていたビンテージマンション。定義では、1962年の区分所有法ができてから、バブル経済が始まるまでの約25年間のようです。
37：分譲マンションの歴史
1925（大正14）お茶の水文化アパートメント（日本初の純洋式集合住宅）
・関東大震災後の住宅供給←国の機関が建設・管理
1955住宅公団→2DK団地建設
・各戸に風呂、水洗トイレ、ダイニングキッチン＝庶民の憧れの的
1953「宮益坂アパート」日本初の分譲マンション
・東京都建設局
1956「四谷コーポラス」民間初の分譲マンション
・総戸数28戸の住宅専用マンション
・3LDK230万円→限られた富裕層向け
1962「建物の区分所有等に関する法律」（区分所有法）制定
・区分所有者というマンションに特化した権利の目的が確定
・マンションの一住戸が不動産物件として扱える土台
2023年04月22日
マンションの価値は理事で決まる
「日本人がマンションに住むようになって半世紀余り」なのだという（はじめに）。半世紀たって、都市部ではマンションに住むのが当たり前になった。
一方、古くに分譲されたマンションでは、
一方、古くに分譲されたマンションでは、
・住み手の高齢化
・世代交代
・建物の老朽化
が進んでいる。
かく言う私も、東京に住むマンションの理事になって5年。理事長になって3年になる。分譲されたのは1965年だから、もうすぐ還暦。この辺では最初に建ったマンションで、当時の名士がこぞって購入したとか。そう、当時はマンションに住むこと自体が憧れだったのだ
それで、勉強のために読んだのが本書。第１章が「集合住宅の始まり」。中国客家の福建土楼にはぜひ行ってみたい。
かく言う私も、東京に住むマンションの理事になって5年。理事長になって3年になる。分譲されたのは1965年だから、もうすぐ還暦。この辺では最初に建ったマンションで、当時の名士がこぞって購入したとか。そう、当時はマンションに住むこと自体が憧れだったのだ
それで、勉強のために読んだのが本書。第１章が「集合住宅の始まり」。中国客家の福建土楼にはぜひ行ってみたい。
�―犬泙辰銅蕕�
中国客家の福建土楼
・中国の歴史のほとんどは内乱の歴史
・円形住宅は平等意識の現れ
・住居と防衛要塞を兼ねる
�⊂覯篠�の地域共同住居
江戸時代の長屋
・助け合いの人間関係
・超狭小住宅（約6畳の専有部分に釜戸や流し、水瓶を置いた土間があるため、畳部分は4.5畳ほど）
・優れた防犯・防災システム⇔プライバシーという概念のなさ
・自治管理と地域密着
�９睫�度生産共同住宅
軍艦島の集合住宅
・1890（明治23年）三菱社が島を所有
・1897〜1931にわたって6回の埋め立て工事→3倍の面積に
・日本初の鉄筋コンクリート造の集合住宅（1916「30号棟」）
・島内で生活がほぼ完結する都市機能
・2001三菱マテリアル→長崎市に無償譲渡
2023年04月21日
Post-Truth: Some fake news lasts for ever
「真実を超えるもの」
それは、人間の創造性。人は物語を創作し、それを信じることを力としてきた。それが、ただに都合のいい考えでも。
269: Russian nationalists can excuse this lie by arguing that it served a higher truth.
271: China itself has long denied that Tibet ever existed as an independent country. British settlement in Australia was justified by the legal doctrine of terra nullius (nobody's land), which effectively erased 50,000 years of Aboriginal history.
The post-truth species
In fact, humans have always lived in the age of post-truth. Homo sapiens is a post-truth species, whose power depends on creating and believing fictions.
272: When a thousand people believe some made-up story for one month - that's fake news. When a billion people believe it for a thousand years - that's a religion.
276: In Mein Kampf Hitler wrote that 'The most fundamental principle is borne in mind constantly - it must confine itself to a few points and repeat them over and over.'
281: If you want power, at some point you will have to spread fictions. If you want to know the truth about the world, at some point you will have to renounce power.
Scholars throughout history faced this dilemma: do they serve power or truth? Should they aim to unite people by making sure everyone believes in the same story, or should they let people knew the truth even at the price of disunity? The most powerful scholarly establishments - whether of Christian priests, Confucian mandarins or communist ideologues - placed unity above truth. That's why they were so powerful.
2023年04月20日
War: Never underestimate human stupidity
本書が出版されたのは2018年なので、ロシアによるウクライナ侵攻のだいぶ前。しかし、2014年にクリミア半島を併合していたので、その話が出てくる。
イスラエル人であるハラリが米国とNATOの政策のまずさを指摘し、「NATOを東欧に拡大しないというロシアとの約束を反故にし、ロシアの弱さに付け込んで、ロシアの中東権益を無視してセルビアやイラクに侵攻。これでは、ロシアに軍事力に頼るしかないと突き付けているようなものだ」と指摘しているのが興味深い。
200: Whereas in early agricultural societies human violence caused up to 15%, today it is responsible for only 1%.
205: The USA and NATO took advantage of Russian weakness, and despite promises to the contrary, expand NATO to eastern Europe and even to some former Soviet republics. The West went on to ignore Russian interests in the Middle East, invaded Serbia and Iraq on doubtful pretests, and generally made it very clear to Russia that it can count only on its own military power to protect its sphere of influence from Western incursions.
206: Putin's Russia lacks a universal ideology. During the Cold War the USSR relied on the global appeal of communism as on the global reach of the Red Army.
209: At the Battle of Hastings in 1066 William the Conqueror gained the whole of England in a single day for the cost of a few thousand dead. Nuclear weapons and cyberwarfare, by contrast ,are high-damage, low-profit technologies.
2023年04月19日
大阪は＜本音の街＞
大阪に住んだことがないのだが、訪問すると楽しい街だ。庶民的で、物価が安く、人懐っこい。
ところが、大阪出身の友達に聞くと、住むと大変なところもあるのだという。彼は東京の女性と結婚したが、奥さんは大阪を嫌っているらしい。曰く、プライバシー感覚がなく、適度な間隔を空けずに、どんどん食い込んでくるのだという。一家で帰省するたび、親せきが集まり、あれこれずけずけ言ってくるので、気が重くなるという。
大阪的には、嫌ならそういえばいいということになるのだが、東京育ちからすると、「言う前に配慮ができないデリカシーのない人」ということになってしまう。
305：大阪
ところが、大阪出身の友達に聞くと、住むと大変なところもあるのだという。彼は東京の女性と結婚したが、奥さんは大阪を嫌っているらしい。曰く、プライバシー感覚がなく、適度な間隔を空けずに、どんどん食い込んでくるのだという。一家で帰省するたび、親せきが集まり、あれこれずけずけ言ってくるので、気が重くなるという。
大阪的には、嫌ならそういえばいいということになるのだが、東京育ちからすると、「言う前に配慮ができないデリカシーのない人」ということになってしまう。
305：大阪
なんとも知れないコンクリートの建物群は、以前はキタだけにあったのだが、ミナミもそうなった。東京の悪い部分の模倣である。その東京の醜悪なビル群はアメリカの悪い部分の模倣である。
306：大阪は＜本音の街＞
1970年の万博までは、ぼくもほぼそうだったと思う。万博から街の姿が変わり、＜人の目にどう映るか＞を気にするようになった。
314：みずから石松をイメージした、やすしは生き方そのものが時代遅れ
＜遅れてきた軍国少年＞がそのまま育ち、まっすぐ＜漫才道＞を信じた。師匠の横山ノックも相方のきよしも人生のステップとしか見なかった漫才という古い芸を蘇らせ、その中に生きた。
2023年04月18日
天才漫才師の死
横山やすしの父は戦死し、やすしは大阪で遊郭を経営していた女性に育てられる。実母は産後の肥立ちが悪く、その女性に赤子のやすしを預けて実家の沖ノ島（高知）に疎開していた。
261：やすしが実の父母に甘えることなく育ったこうした育ち方をした男は、�…垢犬討�ら、他人の気をそらさない��甘えられる相手を探し出し、徹底的に甘え、勝手なことを言う。やすしはこのタイプ。初対面の相手が敵か味方かを瞬時に見抜くやすしは、次にその＜味方＞が甘えられる相手かどうかを考える。小当たりに当たってみて、弾かれる相手だと、甘えるのをやめてしまう。
271：1988木村一八 タクシーの運転手を殴り重傷を負わせて、現行犯逮捕
274：横山やすしは＜自滅型＞
すべてが彼自身の＜思い込み＞に発している。
284：1992殴られて帰宅（重傷→言語障害）
297：1996死去（51）
アルコール性肝硬変
2023年04月17日
世渡りの天才
昨年10月、日経新聞の「私の履歴書」に執筆していた西川きよし。言わずと知れた、横山やすしの相方だが、1986年3月、参院選に出馬表明する。
223：「老人福祉のために政治家になりたい。実は長年の夢だった」やすしは＜漫才の天才＞だったかも知れないが、世渡りの天才は西川きよしである。世の人が公に反論できない口実を作る。
コンビ解消をきよしから言いだせば、大衆を敵に回す。＜やす・きよコンビをこわした男＞という汚名が生涯つきまとう。西川きよしは「うまい逃げ道」を見つけたのであった。もちろん、「私の履歴書」ではそんなことは一切書かれていない。
232：「なんの思想もない」（横山やすし）きよしの出馬が、きよし自身の保身、生活の安定、やすしからの逃亡を目的とすることを、やすしは誰よりも見抜いていた。
2023年04月16日
漫才ブーム
話はこの辺からドロドロしてくる。1970年12月タクシー運転手への傷害事件で、謹慎処分となったやすし。この時やすしは、無免許運転なのに、接触したタクシーが許せず（追いかけて）わざわざ名乗り、逮捕されている。
やすしは仕事から干され、相方の西川きよしはコンビ解消を所属する吉本興業に申し出る。それが許されなかったきよしは、それを隠して「復帰を待つ」と宣言し、単独での司会などの仕事を広げていく。
192：「14年前のあの事件の時な。相方（西川きよし）がじっと、わしの復帰を待っとったというのはきれいごとや。正味の話、相方はわしとのコンビ解消を会社に申し出た」（横山やすし）
61：『上方芸能』木津川計
「過去、テレビは芸を食いつぶし、育てなかった。あるのは視聴率に対する関心だけだった」
68：漫才ブーム
クリエイティブな要素がこれほど少ないブームもテレビ史上珍しい。視聴者を莫迦にしているともいえるが、そんなものを喜んでいた視聴者にも問題がある。
2023年04月15日
漫才の誕生
漫才コンビ「やすし・きよし」の二人の共通点
もちろん、二人は吉本興業所属の漫才師だから共通点は多いのだが、性格は全く違ったという。しかし、二人とも生まれは高知なのだ。これは、＜しゃべくり漫才＞の誕生と深く関わっている。今で言う漫才が誕生したのは、昭和恐慌の時代。漫才は「大阪の大衆」相手に誕生したが、ここでいう「大阪の大衆」とは、四国・九州・広島などから大阪に出稼ぎに来た人々のこと。
48：この人たちは、ある程度の予備知識を必要とする落語の妙味がわからない。レベルの低い大衆を笑わせたのは万歳で、吉本興業では林正之助が万歳部門を担当。映画の入場料が40銭の時代に、林正之助は＜十銭まんざい＞を始める。やすしの一家も、きよしの一家も、高知で食べていけなくなり、大阪に出てきた家族であった。
27：人気が出る直前の横山ノックに弟子入りしたのは、やすしの＜漫才師としての勘＞
一般的な意味では、やすしは世渡りが下手だが、こと漫才となると鋭い。
28：＜コンビ別れの名人＞と＜元（吉本）新喜劇の役者＞
やすしは絶体絶命、きよしも不器用でクビ寸前と、両者が危機にあったのがよかった。
37：＜しゃべくり漫才＞の本格派
1973年にコンビが復活してから、70年代一杯が彼らの最良の時だった。
2023年04月14日
2023年04月13日
人も組織も、いますぐ変わるべきこと、変わらないこと
昨年、グラットン教授がコロナ後初めて来日。忙しい中、LBS日本同窓会でも講演。
私はグラットン教授がLBSで教え始めた最初の年の学生で、当時はまだ講師か助教授だったと思う。あれから33年今でも第一線で活躍しているのが素晴らしい。
はじめに：人も組織も、いますぐ変わるべきこと、変わらないこと
私はグラットン教授がLBSで教え始めた最初の年の学生で、当時はまだ講師か助教授だったと思う。あれから33年
今でも第一線で活躍しているのが素晴らしい。はじめに：人も組織も、いますぐ変わるべきこと、変わらないこと
コロナ前の働き方を続けるのか、それともこれをきっかけに、仕事のあり方を大胆にリデザイン（再設計）し、仕事をより有意義でより生産的なものに変え、より機敏で柔軟性の高い働き方に移行するのか。
変革のプロセス「凍結・解凍」モデル（心理学者クルト・レヴィン）
平常時の組織「凍結」
外部からの脅威→「解凍」状態へ
パンデミックで、世界中の企業が同時に「解凍」プロセスを「集団的な経験」。
こうした選択をおこなう際に、自社のパーパス（存在意義）と能力について考える必要仕事のあり方を設計し直すことにより、どのようなパーパスを強化したいのか。新しい働き方をデザインすることを通じて、どのように自社の重んじる価値を追求し、生産性を高められるのか。自社のパーパスのために、いまどのような能力を育みたいのか。
2023年04月12日
「いばらの道」を選ぶな
「三つ子の魂百まで」では実証されているんですね
21：3歳の時に観察された性格は26歳の時に報告された性格の特徴と驚くほど共通していた。23年間にわたるNZでの1000人の子供研究。
５：弱点を直すことを中心に回っている世界で生きることには、もううんざりしていた。社会は常に人々の短所に焦点をあてる。世界中の人々は皆、その考えから離れられないようだった。しかし、私たちはもっと大事なことを発見した。短所ではなく長所を伸ばすことにエネルギーを注いだ方が、人は何倍もの成長を手にすることができるのだ。
６：毎日強みに取り組む機会がある人は、ない人よりも6倍も意欲的かつ生産的
13：欠点を克服することは私たちの文化の基礎
本や映画、そして昔話も、100万分の１の確率しかなかった大どんでん返しの話であふれている。このことは才能を存分に発揮している人を称賛するよりも、能力不足を乗り越えて人たちを祝福する風潮を生み出している。
16：何にでもなりたいものには「なれない」が、本当の自分を大きく飛躍させることが「できる」
19：「ほとんどの人は、自分が何が得意かを知っていると思っている。しかし、たいていは間違っている。・・・それでもなお人は、強みによってのみ何かを成し遂げることができる」（ピーター・ドラッカー）
2023年04月11日
「強み」とは
バフェットはちょうど今日、5大商社への追加投資を表明しましたね。
「私は毎日朝から晩までこの世で一番好きなことをしている。ただそれだけのこと」（ウォーレン・バフェット＠ネブラスカ大学）
24：1956年にわずか$100の最初の投資をして以来、ウォーレン・バフェットが辛抱、実務、信頼という3つの信念を曲げたことは一度もない
異なる戦略がどれほど魅力的に見えても信念に反することにはいっさい手を出さなかった。
25：成功への秘訣とは、自らの強みを見つけ、それを活かした人生を築く能力を身につけること
28：「強み」とは
常に完璧に近い成果を生み出す能力。
34：才能、知識、技術の三つが組み合わさって初めて強みが生まれる
才能＝無意識に繰り返される思考、感情、行動のパターン。
知識＝学習と経験によって知り得た真理と教訓
技術＝行動のための手段
2023年04月10日
強みを見出し、活かす
先月、「最高の人生」ワークショップを丸亀で開催。LBS同窓生の竹田さん他が講師。主催を私が担当し、参加人数が限られることから、公募はせず、私の知り合いだけに告知。
それに先立ち、私自身、ストレングスファインダーを知らなかったので、まず読んだのが、娘が職場で同診断を受けたときに買っていた本書。続編が出ているのだが、20年前に出たオリジナルの方。診断を受けるため、「新版」も買ったが、著者が変わり、内容も違う。ストレングスファインダーがどういものであるかについては、初版の方が詳しい。
はじめに
7：強み革命
自ら選んだ分野で並外れた才能を発揮し、常に満足を得るには、その強みのパターンを知らなければならない。
8：ちがいを活かす
従業員の性格や能力は一人ひとり異なる。
9：「最も得意な仕事をする機会に毎日恵まれているか」（Gallup調査63か国、101企業で働く1700万人以上の従業員）
・恵まれている 20%
12：すぐれたマネジャーの共通認識
�／佑虜庸修楼貎佑劼箸蠧伴�のものであり、永続的なものである。
�∪�長の可能性を最も多く秘めているのは、一人ひとりが一番の強みとして持っている分野である。
2023年04月09日
その後のGE
GEの看板事業は、ジャック・ウェルチの時代から、発電機、ジェットエンジン、医療機器に加えて金融だった。GEの錬金術は、安定したCFを生み出すメーカーとして安いコストで資金を調達し、それを金融事業でレバレッジを掛けることだった。
これまで本書で見てきた通り、2008年の世界金融危機でGEは破綻の淵に追い込まれ、結果、「自分たちは銀行ではない」として加盟すらしてなかったFDICによる保証で生き延びる。その結果、銀行としての金融規制を受けるようになり、金融事業で稼げなくなった。
次いで、2011年の福島原発事故で原子力発電の建設が止まってしまう。さらには2020年の新型コロナウイルスで航空機が飛ばなくなり、販売よりもメンテナンスで儲けていたジェットエンジン事業が大打撃を受ける。
結果、医療機器事業の一部を売却。そして、今年、医療機器事業は会社分割された。次は、発電機事業とジェットエンジン事業がそれぞれ独立する予定になっている。コングロマリットとしてのGEは解体された。
468：パンデミック
安定した収益源として期待されていたGEのジェットエンジン事業に打撃。
471：SEC調査終了
フラナリー退任後の2020年12月、GEが2億ドルの和解金を支払うことに同意して、3年以上続いたGEとSECのせめぎ合いが終わった。
472：SECの調査結果
人材を適切に管理する会社でも、事業を効率的に進める会社でもなく、規制当局への提出書類や公式声明の中で嘘をつき、増大するリスクを無視し、リスクを隠蔽するために奔走した企業の姿。
476：企業監査スタッフ（CAS）解体
CASは長年、野心的な経営幹部を選抜する試験場のような役割。過酷なリーダー養成プログラム。
公式の情報ネットワークと並行して存在する、CFO直属の神経回路に終止符。
2023年04月08日
取締役会の責任
GEの問題が誰の目にも明らかになったのはイメルトが去った後。イメルト在任中は、会計操作、借金を重ねての配当金支払でGE神話をなんとか取り繕うとしていた。
イメルトはCEOの座に2006-2017年の間留まり、その間の報酬総額は1億6800万ドル（≒220億円）に上った。461：イメルトが去ったあとの1年間で、1400億ドル以上の市場価値が消滅2001年に破綻したエンロンの2倍以上。リーマン・ブラザーズの損失さえ小さく見える。
これは、前任のジャック・ウェルチ時代が20年も続き、その間の業績がとても良かったため取締役会が骨抜きになったのだろう。人間万事塞翁が馬。良いことが続く中で、次の問題の種が蒔かれている。454：なんといっても責任が重いのは、CEOを監督するための取締役会GEのビジネスに関する経験も知識もない取締役もいれば、会議中に目を覚ましていることさえできない取締役もいた。多くの取締役がGEの破綻を目にして、「こんなことになるなんて、私たちにわかるはずがない」とつぶやいた。
455：取締役会長兼CEO会長が自分の好みに合わせて取締役を選び始めたら、取締役会は劣化する一方。1人の人間に権力を集中させ、株主の声を聞かないのは、最低のガバナンス。
462：ウェルチは、株価上昇の恩恵もあって巨額の報酬を得たが、引退後もさまざまな特典
会社負担のマンハッタンの高級マンション
社用機の利用
スポーツやオペラのチケット
ヨーロッパから届けられる生花
専属シェフ
2023年04月07日
GE初の社外出身ラリー・カルプCEO
イメルトの跡を継いだフラナリーだが、在任期間14か月で解任される。GEの長い歴史の中で最短任期とと人気となった。フラナリーはイメルトが残していったGEの問題点に向き合ったが、解決策を持たなかった。
後任にはGEと同じくコングロマリット経営のダナハーで実績を残したラリー・カルプが就任した。創業以来、社内出身者がCEOを務めてきたGEで初の外部からの登用となった。カルプCEOは、「GE三分割案」を打ち出し実施中。今年初めには、第一弾として医療機器事業が会社分割され、GE株主にはGE Healthcareの株式が配分された（その分、GEの株価は下落）。その後、両社とも株価推移は順調で、会社分割の効果が出ている。
419：スタブ保険
記者もアナリストも投資家も、GEはとっくに保険事業を売却して、GEキャピタルのリスクを軽減したものと思っていた。その点をはっきりさせるために、イメルトと彼の経営陣は、GEは保険事業から撤退したと何度も明言したはずだ。
GEはたしかに保険事業から撤退したが、事業の最悪の部分をだれも引き取ってくれなかったため、実は依然として大きなリスクを抱えていたのである（介護保険）。
429：GEの取締役会は、CEOが会長
コーポレートガバナンスの基本原則に反している。雇われる立場のCEOが、自分を雇ってくれる取締役の責任者であってはならない。取締役のなかには、イメルトに異議を唱える者もいたが、たいてい徒労に終わり、冷ややかな目で見られるか、場合によっては解任された。
441：フラナリーの解任→ラリー・カルプCEO
在任期間14か月というのは、GEの長い歴史の中でも最短。
450：Market for truth（真実が語られる場）カルプCEO
GEは運輸交通事業を売却し、大失敗した石油・ガス事業からも撤退。膨大な負債を軽減するために、GEヘルスケアのバイオ医薬品事業を210億ドルで売却。
2023年04月06日
新CEOジョン・フラナリー
遂に、ジェフリー・イメルトの強気の姿勢も、糊塗し切れなくなった業績悪化で続けられなくなる。新しくCEOとなったフラナリーはこう掲げた。
No more success theater
「見せかけの成功は追うな」
壊れたS/Wを動いているように見せかけることはやめる。なりふりかまわず企業買収を進めることはやめる。あいまいな概念や数値指標に、さも価値があるようなふりをすることはやめる。マーケティング・ストーリーに固執することはやめる。無謬の組織というイメージにしがみつくことはやめる。もう、GE神話に頼ることはやめる。
404：新CEOジョン・フラナリー
GEのような複雑な組織では、一度決定したことには徹底的にコミットしなければ、プロセスが泥沼化してしまう。フラナリーは、自分の考えが間違っていないか、社外の人間によく意見を求めた。しかし、意見を聞きすぎて進むべき道がわからなくなり、結果的に優柔不断になってしまうことが多かった。
405：CFOボーンスタイン辞任
CFOの突然の辞任は、倒産という深刻な事態の前触れであることが多い。
411：イメルトのピボット戦略の失敗
フラナリー「ここ数年、わが社はFCFを上回る配当金を支払ってきました」
株主に配った現金が、余剰収益ではなく借金であった。
415：イメルトの最悪の失敗プロジェクト
タイミングを間違えた何件ものディールのせいで、油田掘削とフラッキングは、いまやシュルンベルジェとハリバートンという２つの巨大企業に支配されていた。
2023年04月05日
GEの自社株買い
上場企業が自社株買いをするのは、株価が本来価値よりも大幅に安いと考えられるとき。通常は、自社事業に投資して拡大再生産するわけだが、自社事業に成長余地が無い場合など、必要以上に現金を貯めこむと資本効率が落ちてしまう。
そこで、余剰資金を使って自社株買いをおこなう。ROIC＜資本コストであれば、自社株買いをした方がいい。自社株買いには、自社の株価が安すぎるというアナウンスメント効果もある。
イメルトの時代、GEは低迷する株価で自社株買いを大々的に行った。しかし、その後の業績悪化で、市場から買い取った自社株は大きな含み損を抱えることになる。
352：シーメンスCEOジョー・ケーザー
イメルトと違って、ケーザーはコングロマリット・モデルを評価しておらず、GEとは逆の方向にシーメンスを牽引し、そうは言わなかったが会社を分割していった。
355：イメルトが設定したゴールに届かない数字を提示した部下は、「そんなに弱気だったのか？」と問い詰められた
厳しい真実や悪いニュースを口にする者はいなくなった。
358：帳簿上の利益への依存
2016GEパワーは、すべてのサービス契約をくまなくチェックして、今後発電事業者から支払われるはずの金額を調べ上げた。そのうえで彼らが使った戦略は、機械のアップグレードを割引価格で提供することと引き換えに、契約期間を延長するというものだった。長いものでは、2050年までという契約もあった。これほど長期の契約になると、前提条件を少し調整するだけで大きな利益（帳簿上の）が得られる。
386：イメルトは2機のコーポレートジェットで世界中を飛び回った。CEO在任中のほとんどの期間、イメルトがどこか外国に飛ぶときは、彼を乗せた機体のあとを、誰も乗っていないボンバルディアやガルフストリームが追いかけた。（中略）国家元首でもそこまでしないのは、実用的な意味がないからだ。わざわざ帯同しなくても、異常が起こればそこで別の機体を調達すれば済む話だ。
400：自社株買いのために、何十億ドルもの現金
イメルトの在任中、GEは1000億ドル以上を使って自社株を購入。大半が大きな含み損。
2023年04月04日
「干からびた獲物」
アルストム買収は難航する。アルストムは競争力を失い、リストラのための一時費用もひねり出せず、工事着手金で資金を確保するために安値受注を繰り返し、泥沼に入っていた。それをGEが買収してリストラしてくれるというのだから、アルストム株主にとっては良い話だった。
しかし、フランスの名門企業ということで政治問題化する。フランス政府は「アルストム法」とも言われた海外企業によるフランス企業買収を難しくする法案を通す。リストラ計画を緩和するなどしてやっと承認を得ても、さらに、米国の独占禁止法とEUの承認も受ける必要がある。
結局、これらをクリアするのに1.5年掛かり、2015年11月に買収を完了した時には、アルストムは「干からびた獲物」だった。当初予定されていた買収効果は全く実現できなかった。
333：2014春アルストム買収合意買収が期待した効果を上げなかったことを批判されると、「タイミングが悪かった」と言って責任を否定。天然ガスによる発電の安定的増加を信じていた世界が、こんなにも早く再生可能エネルギーや蓄電池に注目するようになるとは、だれも予想できなかったと言い訳した。
334：反対意見を許さない組織
思ったことを正直に言えないという、GEに染みついた見えない危機。
社員は究極のボスであるイメルトに異議を唱えなかったし、ましてや彼が力を入れている戦略が失敗に終わる可能性を口にすることなどなかった。
344：GE本社移転Fairfield, CT→Boston, MA
GEのロビイストが州政府に求めていたのは、増税案の大幅な変更ではなく、GEキャピタルが抱えている数十億ドルの繰越欠損を無期限に認めること。ダン・マロイ州知事の予算担当者は、その要求はのむから州にとどまって欲しいと求めたが、GEはそれを拒否した。
＊GEが州に収める税金はほとんどの年で$250の申告手数料だけ。GEが新税制を嫌ったのは、個人の富裕層（GE幹部）に対する税負担が大幅に引き上げられたため。346：2016イメルト「株主への手紙」
「世界は複雑だが、GEはシンプルで競争力がある。世界は不確実だが、GEはビジネスサイクルを厳格に管理できる。世界にはリスクが多いが、GEには強靭な文化と多額のキャッシュがある」
2023年04月03日
GEデジタル
ジェフリー・イメルトが鳴り物入りで発表したGEのIoTプラットフォームPredix。
実際のところは、IoTという波に乗ろうとしただけで、経営陣はソフトウェアというものを全く分かっていなかった。そこで、子会社GEデジタルに任せることにする。320：Predix大量のデータを活用した機械学習は、医学の研究や治療の質を向上させると煽った。セールストークは立派だが、ゴールは遠かった。サンラモンのデジタル本隊も、各事業部内のデジタル部門も、具体的に何ができるのか、手探り状態だった。実際のところ、プレディクス導入後のプログラミング作業は、顧客に押し付けているに等しかった。
316：GEデジタルGEデジタルの経費は、取締役会の承認を得るという建前だったが、実際にはCEOのルーや、各工業系事業部の中のデジタルチームにほぼ一任されており、2016年には50億ドルに迫る勢いで急増。これはジェット機のクリーンエンジンの開発費のおよそ半分に相当し、GEの基準に照らしても巨額。
GEは100年の経験がある発電機のタービンや、タービン技術から発展したジェットエンジンのことはよくわかっていたが、ソフトウェアは未経験だ。なのに、発電機やジェットエンジンのように、金さえかければ完成すると考えていたようだ。
322：GEはプレディクスの開発に大量の資金を投入したが、一貫した戦略と考え抜かれたプロセスがなかったGEは、小さなチームに開発させ、製品の進化に合わせて規模を拡大していくのではなく、必要性もよく分からないうちに大きな組織を立ち上げてしまった。そのため、開発を最初からやりなおしたり、作業と体制を調整する必要が生じて、何度も中断や遅延が発生した。
323：「何を売ろうとしているのかわからない」
GEは、あらゆるデジタルデータが集まるエコシステムを構築し、顧客が機械をプレディクスに接続するだけで多様なメリットを享受できるソリューションを提供したいと考えていた。だがプログラマーたちは、イメルトや上層部はプレディクスに熱心な割にはソフトウェア開発というものを理解しておらず、それが計画の進展を妨げていると感じていた。
2023年04月02日
妹ヘニーと夫ビショップの死
イザベラ・バードの最愛の妹であったヘニー。二人とも結婚しないまま、子供の時からずっと一緒だったのだ。
初期の作品は、彼女へ旅先での出来事を手紙形式で書いている。そのため文体も生き生きとしているのだが、1880年にヘニーを病気で亡くした後、後期の作品はそうした親しい人に書いている感じではなくなる。
妹を亡くしたイザベラの「悲観と罪の意識はほとんど異常」だったという。翌年に妹の主治医であるジョン・ビショップと結婚するのだが、「このときすでにイザベラは50歳、ビショップは40歳」だったというから、晩婚であった。
そして、結婚生活は5年で終わる。ビショップが病死したからなのだが、イザベラにとっては幸いでもあった。というのは、結婚してからは夫を置いて大旅行に行けなくなったからだ。
290：夫ビショップ「イザベラの心の中には私の手に負えないライバルがいて、それは中央アジアの高原である」
289：『日本奥地紀行』
彼女を単なる「女性冒険家」ではなく、極東の社会・政治に関して鋭い洞察力と観察力をもって描写した作家として、一般大衆の心をしっかりととらえた作品。
303：妹ヘニーと夫ビショップの死
イザベラは物寂しく虚ろな心で、世界でもっとも寂しく空虚な場所と言われていたチベットへ向かっていた。
305：初期の作品に比べて、ヘニーの死後に書かれた三つの大作は重苦しく、高い評価をえるものではなかった。それらは次第に横柄な感じになり、人々の生活を律する道徳、政治、社会に対する洞察を深めてはいるが、一方では彼女の周辺にいる個々の関りについては淡々としている。
309：カシミール山脈越え
「夜9時前に就寝、朝6時に紅茶とトーストパンで食事、身支度と荷造り、7時にくだんのアフガン人と馬の世話係と出発。クーリーに使用人用のテント、米と固ゆで卵、冷やした紅茶、サクランボなどの入った弁当箱と私の用のコルク製のマットレスを8マイル運ばせます。10時に休憩してテントを張り、2.5時間の昼寝ということになります。そしてこれを繰り返すのです」
340：グレート・ゲーム
中央アジアはロシアの「広大な武装キャンプ」
訳者あとがき：西洋という文明によって押し流され、次第に失われつつある自然が辛うじて残っていたのがマレー半島であり、当時のアメリカであり、サンドウィッチ諸島であり、日本でいえば奥羽地方と北海道。
2023年04月01日
ヴィクトリア時代
牧師の長女として1831年ヨークシャーに生まれたイザベラ・バード。身長151cmであったというから、当時としても小柄で、虚弱体質。成人してからも、体調不良で昼頃になるまで起きることができない有様だったという。
従って、遠出などままらなかったが、30代後半にして、海外旅行に出かけたのは「医師の勧め」。普通、そのような状態で、しかも、当時の平均寿命からいえば、もう人生の終盤に差し掛かっている女性にそんな勧めを医者がするのか
と思う。しかし、当時はヴィクトリア時代。イギリスの高度成長期であり、大英帝国の絶頂期であった。時代の雰囲気であったのかも知れない。
210：マレー半島
彼女たちが恐ろしい様相に見えるのは、話すときに口の端から真っ赤な滴りが流れ落ちるからで、まるで口の中が血であふれているように見える。これは彼女たちがビンロウの種子を常時噛んでいる習慣があるからで、中国人がアヘンを喫し、スコットランド人がウィスキーを飲むようなもので、この種子は刺激的でささやかな贅沢、かつ必要不可欠なものなのである。
248：父エドワード
カルカッタで弁護士をしていたのだが（中略）、妻子をコレラで失ったのをきっかけにイギリスに戻って牧師になり、牧師の娘であるドーラ・ローソンと再婚した。
250：突出した知性と洞察力
それにふさわしいと思われる早期教育を実施。幼児向けの絵本の類を読むことを一切禁じ、幼児言葉を使うことも許さなかった。
264：父親の死
牧師館にいられなくなったバード一家は、1860年になるとエディンバラのキャッスルテラスに移り住むことになった。そこはつつましやかな牧師の未亡人と繊細な2人の未婚の娘が住むのにふさわしい、質素できちんと整備された厳格な住居であった。
275：医師の勧め「旅へ行きなさい」
自分の真の幸せとやりがいを、魅惑的なサンドウィッチ諸島と危険なロッキー山脈の旅に見出したのである。驚くべきことに、1870年の夏には支えなしには枕から頭も上げられなかった虚弱な女性が、3年後には「太平洋のマッターホルン」と呼ばれたマウナ・ロアの登攀に成功し、さらにロッキー山脈では馬を駆って野生の牛を追い回すまでになるのである。
