2023年03月
2023年03月31日
アルストム買収
アルストムとGEがもともと歴史的に又従兄弟のような間柄にあったとは知らなかった。
228：アルストム買収
228：アルストム買収
アルストムは米国の基準で見るとかなり肥大化した組織。同じ額を売り上げるのに要する従業員の数がGEの4倍。資金繰りに困っているようだが、解雇や工場閉鎖は行っていなかった。
231：2013最大級のディール案を本社に提出せよ
米国で最も有名な工業会社の実態は、収益の上がるジェットエンジンや電力事業が接ぎ木された銀行。銀行と見られることは、イメルト以下GEの経営陣が最も重視している指標の一つである、「マルチプル」にとって大きな問題。
235：倍賭けの「ピボット」
これまで何度も失敗してきた戦術だが、イメルトは同じことをもう一度、倍賭けでやることにした。まず一度目のターンで、巨大な事業を買収して機械やサービスから得る儲けを増やし、新たなCFをつくる。次に、そのキャッシュと売上げを使って、さらに大きな二度目のターンを行う。二度目のターンのことは、GE本社とGEキャピタルの一握りの幹部しか知らない。
242：新CFOジェフ・ボーンスタイン
相互に関係がない複数のビジネスを抱えるコングロマリット経営に何の意味があるのか。この方式は多くの点で実用的でなく、管理も難しく、ほとんど絶望的だ。
283：アルストムとGEは、ともにトムソン・ヒューストンという電気会社と歴史的なつながりがあり、又従兄弟のような間柄
1892年にトムソン・ヒューストンとエジソン・ゼネラル・エレクトリックが合併してできたのがGE。そして、そのGEがフランスに設立した子会社のコンパニー・フランセーズ・トムソン・ヒューストンと、フランスの企業が合併してできたのがアルストム。イメルトにとってこの買収の最大の魅力は、ガスタービン市場の有力プレーヤーであるシーメンスや三菱重工に対して、圧倒的な優位を獲得できること。
287：はじめに買収額ありき
GEが最終的にアルストムに提示した入札価格では、企業価値とした金額の半分以上が、「コストシナジー」によって得られる期待値。つまり、GEが買収する価値の半分以上は、ディール成立後にGEが行う人員整理や工場閉鎖によるコスト削減で実現するということ。
2023年03月30日
CMOベス・コムストック
ハドソン川上流にあるGEハドソンフォールズ工場では、長年に渡り発電所設備を作ってきた。そこで優れた絶縁体として使われてきたのがPCBである。後に発がん性があることが分かり、1979年に連邦法で禁止されるのだが、それまでの間、GEはPCBをハドソン川に投棄してきた。
米環境庁であるEPAは1980年にCEOに就任したウェルチの時代から、ハドソン川に堆積したPCBを浚渫するよう交渉してきたが、ウェルチは一貫してこれを拒否した。当時は違法ではなかったという論理だが、「PCBはハドソンフォールズ工場敷地の土地に浸出し、20年間以上にわたって川にしみ出していた」。
これはイメルトCEOになっても変わらなかったが、EPAもこれ以上汚染を看過できないと考え、浚渫計画を縮小することで妥協する。イメルトは、これを逆手に、環境問題に後ろ向きなGEというイメージを変えることを決意し、「戦略とはすぐれたストーリーのこと」を信奉するCMOベス・コムストックにこれを委ねる。
コムストックと広告代理店BBDOは"Ecomagination"という造語を作る。エコとイマジネーションをくっつけた造語でCMを制作する。BBDOでは、「コムストックが使える広告予算は青天井だ」とささやかれた。
208：GEは、PCBが全面的に禁止される2年前の1977年に河川への投棄を中止したが、PCBはハドソンフォールズ工場敷地の土地に浸出し、20年間以上にわたって川にしみ出していた。
212：2002ウェルチ〜ハドソン川の底を浚うというEPAの計画「狂気の沙汰」
「ハドソン川は回復した」
「そもそも自分は、PCBが人体に有害だとは信じていない」
219：Ecomagination
イメルト「本質的には、たくさんの製品やサービスを売るための方法」
「どんなグリーンでも、グリーンはグリーンだ」
222：CMOベス・コムストック
スリムで魅力的な中年の女性で、NBCで頭角を現したのち、GEでマーケティングのトップに立った。(中略）黒革のバイカージャケットを好み、静かな物腰に似合わず高尚で派手なレトリックを駆使して話すコムストックに、イメルトは早くから注目していた。
2023年03月29日
2010ドッド＝フランク法
2010年、国際金融危機（GFC）への反省から「ドッド＝フランク法」が成立する。これは、「企業を税金で救済することが二度と無いよう、金融システム全体を刷新するもの」で、金融機関の管理が厳しくなった。FRBの監視下に置かれることになったGEは以前のような会計操作ができなくなった
GEは厳密には銀行ではなく、GEキャピタルは長年に渡って貯蓄貸付監督局（OTS）による規制を受けてきた。OTS解散後、GEはFRBの監視下に置かれることになった。
196：メディア事業からの撤退
イメルトの一貫性のない戦略の表れ。イメルトは、ヴィヴェンディからユニバーサルを買収。2008年半ばにはPEと組んで、35億ドルも投じてウェザー・チャンネルを買っていた。
199：原点回帰
NBCU売却。1985年にGEがRCAを買収してNBCの経営権を得たとき、GEの主要事業部門は電力、航空機エンジン、そして医療機器などの工業製品。紆余曲折を経て、GEは原点に立ち返ろうとした。
201：イメルトの得意とする話し方
自社の失敗を認めたうえで、それでも競合企業よりはましであり、GEは彼らとは違う、と胸を張る論法。
203：SEC調査結果
GEは会計規則を限界まで拡大解釈し、数億ドルもの利益を水増し計上していた。GEは5000万ドルの罰金を支払うことに合意し、二度と不正を行わないと約束した。意図して実際と異なる業績を報告した行為に対するものとしては、罰金額は小さかった。
2023年03月28日
リーマンショック
2002年にPIMCOのビル・グロスがGEの財務の危険性を指摘してから6年。リーマンショックで警告は現実になる。
その危機を救ったのは２人。一人はバフェットで、もう一人はFDICだ。FDICは本来、銀行の預金者保護のための仕組み。1口座当たり$250Kまで銀行が潰れても、FDICが補償してくれる。そうした安心があるから、銀行の取り付け騒ぎを予防できる。
しかし、FDICの保証を受けられるのは商業銀行で、FDICへの加盟と引き換えに、厳しい財務的な制限を受ける。GEはジャック・ウェルチ以来何十年にもわたって、収益の半分以上を金融事業で稼ぎながら、自分たちはメーカーであり、それに付随する金融事業だから、銀行ではないと言い張ってきた。
当然、FDICには加盟しておらず、その保証プログラムの対象ではない。しかし、巨大企業GEが倒産することで、信用不安がさらに広がることを恐れた米連邦政府はGEをFDICの対象にすることを後付けで認める。
172：リーマンショック
PIMCOのビル・グロスが2002年に警告していたことが現実になろうとしていた。グロスはCPに依存するGEの財務の危険性を指摘していた。多くの金融サービスファンドに義務付けられている緊急対応策を、GEはしっかり整えていなかった。
181：守護聖人バフェット
バフェットは30億ドルのGE優先株を購入し、年間3億ドルの配当を受け取る権利、さらに5年間にわたってGE普通株を1株$22.25で30億ドルまで購入する権利を求め、それを得た。この取引はわずか数日で成立した。
184：FDIC保証プログラム
外からの助けは必要ないと繰り返し主張していたGEだが、結局、政府保証を利用して4328種類もの債権を発行し、1310億ドル近い資金を調達。発行数第2位のシティグループでさえ、1655種類しか発行していない。
2023年03月27日
JPモルガン
長年に渡って投資銀行（証券会社）アナリストの最上位格付けを維持したGE。それは、債券王ビル・グロスが2002年に「GEの安定した収益は企業買収の産物であり、その資金のほとんどは自社株とCPで賄われている」ことを指摘してからも数年間続いた。
GEの業績が誰の目にも悪くなってから、JPMorganは格付けをOverweightからNeutralに落とした。「中立」だからそれでも控えめなのだが、GEを設立したのはJPMorganその人であり、長年に渡って、買収・売却のアドバイザーとしてJPMorganに多大な利益をもたらしていた。
建前としては調査部門と投資銀行部門は独立しているのだが、低い格付けにしてGEが喜ぶはずがない。
「激しい競争環境下で成功のハードルは高く、悪い報告を上げにくい状況が生まれると、上層部との間で必要なコミュニケーションが妨げられ、手遅れになるまで放置される危険がある」
154：イメルトの不動産事業
2000年にはすでに2000億ドル以上の不動産を保有。
2005/12アーデン・リアルティを32億ドルで買収→保有総額500億ドルに
2007年末 800億ドル（半分は不動産の株式保有）
155：ジョン・フラナリー
人生の大半をCTで過ごしたフラナリーは、2005年、GEキャピタルのAP地域の責任者として、家族とともに日本に赴任。
164：自前のアナリストを抱える投資家は、水で薄めた銀行のレポートをあてにしていない
それでも銀行のアナリストを切らないのは、投資先企業とのつながりを維持するため。
2023年03月26日
金谷カッテージ・イン
日本を代表するクラッシック・ホテルの一つである金谷ホテル。日光東照宮の雅楽師であった金谷善一郎が当地を訪れたヘボン博士を自宅に泊めたことがきっかけで外国人相手の民泊を始める。今後、日光を訪れる外国人が増えるはずだから、外国人相手の宿泊業をやるといいと勧められたのだ。
金谷は自宅を改造して「金谷カテッジイン」とした。そこに泊まったのが日本各地を旅行していたイザベラ。イザベラの旅行記を読むと、それから150年経っても、日本人としての気質はそう変わっていない気がする。特に、イザベラが通訳として雇った伊藤に対しての感想が面白い。
156：イザベラが日本にやって来たのは最初の鉄道が敷設され、銀行、新聞、郵便局、工場などができつつあった頃である。農民は子供たちに西洋の知識を身につけさせるために、新しく増築された学校に送り出し、水田の上をはしっている電線を通って伝えられているメッセージが見えないものかと、時々目を上げて眺めていた。
157：日本はすでに世界各地を旅行する人の旅程に組み込まれていた
日本の評判はエキゾチックであり安全であり、ロマンチックでありながら野蛮な危険はなく、美しいがそうかといって近づきがたいほど畏敬の念を起こさせるものではなく、そこに住んでいる人々は清潔で礼儀正しいというものだった。
158：日本領事館ハリー・パークス公使
「若作りで中年に入ったばかり、体形はやせ型、行動的で知的、青い瞳を持ち、明るい髪と微笑み、温和な雰囲気を漂わせた完全無欠なイギリス人」
163：日光金谷カッテージ・イン
ほっそりとした白い花瓶にアザレアの花が一輪差してあり、繊細な装飾で飾られた茶だんす、黄土色の生地の上に霞がかかったような風景が描かれている掛軸〜この部屋はあまりに素晴らしいので「インクをこぼしたり、布団にへこみをつけたり、障子を破ってしまうのではないか」とイザベラはいつも心配になるほどであった。
167：煙草はポルトガル人によって16世紀に日本に持ち込まれたものだが、今ではほとんどの男女がパイプで煙草をたしなんでいる。大抵の医者はイザベラに煙草の効用をしきりに言い建てる。
168：人力車「二つの車輪がついている乳母車」
伝統的な日本のイメージによく出てくるものだが、これが発明されたのは約8年前に過ぎない。
173：通訳として雇われた伊藤
彼は頭が切れて自惚れの強い、がにまたの若者で、砂糖菓子と茶屋の娘が大好きな男。
「私たちの感覚によれば、道徳的感覚が全く欠如している」
彼は熱烈な愛国主義者で、心のなかでは西洋人を忌み嫌っている。
181：アイヌ人
強情で騒々しく、好奇心の強い日本人から離れていると、日本人よりも穏やかで天真爛漫な彼らといる方が心が平穏だった。
183：浄土真宗の高僧である赤松師
彼は理知的で深い教養を持った精力的な人物で、英語を自由に使いこなし、明るく鋭いユーモア心のある瞳をしていた。（中略）彼らはどちらも「神なき実利主義」が国内に蔓延していることを憂え、見境なく普及していく西洋科学思想の教えが仏教徒やキリスト教信者の信心を蝕んでいるのを嘆き悲しんでいた。
2023年03月25日
サンドウィッチ諸島
マウナ・ロアの噴火は見てみたい🌋
23：1873サンドウィッチ諸島（現在のハワイ州の一部）
「天国に一番近い島」「神に祝福された島」「エデンの島」
51：ハワイの外国人行政官
ハワイの閣僚の多くは、アメリカの法律家、宣教師、ビジネスマン、教員などであり、彼らは新しい部署の長として当時としては破格の年間$4000もの俸給を得ていた。
27：ハワイの捕鯨産業
マーク・トウェインが来た1866年でも話題は捕鯨一色。
「何もしないという能力が次第に私の中に発達してきたように思います。これは恐ろしいことで、気持ちを奮い立たせて温泉に行く時以外は何もする気になりません。連れと私はベランダに座って夢想に耽り、長くなっていく影を見つめ、ココナッツミルクを飲みながら不意に太陽が姿を消して驚いていると、出たばかりの月がゆっくりと太陽に代わりギラギラ光る先方60マイルの地点に、マウナ・ロアの荘厳な炎が14千フィート近くも上空にまで吹き上げています」（イザベラ・バード『ハワイ紀行』）
77：マウナ・ロアの噴火口近くでキャンプ
至る所に「溶鉱炉のようにいくつも列をなして」火が燃え上がり、孤立し、「惑星に似て瞬くこともなく」上空に向けて黄金色の小麦の束を放り投げているようだった。
2023年03月24日
エリート養成プログラムCAS
20年に渡って君臨したジャック・ウェルチが次期CEOに指名したのがジェフ・イメルト。彼は自分と似た押しの強いタイプのイメルトが気に入っていたのだが、時代は変わろうとしていた。
103：イメルトは体育会系の粘りと押しでセールスマンとして成功
買う側に回ったイメルトは、価格は二の次で、戦略的ストーリーや既存事業との適合性を重視。買収した企業をいかに統合するか、それによって新しい市場への扉が開けるか、という展望だけが大事で、価格が理由で手を引くことはなかった。
114：CMOジル・コムストック(37）
マーケティング担当者がGEの成長戦略を実行する責任者に。
会社が行うすべてのことの背景にストーリーが求められ、すべての意思決定と戦略がストーリーに沿うことを要求された。ストーリーと戦略は密接不可分だと、コムストックは考えた。
116：イメルトは、ウェルチが取り除いた官僚機構の階層を元に戻す
イメルトは、自分は人気のなくなったコングロマリット構造を正当化する、新たなビジョンを確立しつつあると思っていた。
124：エリート養成プログラムCAS（Corporate Audit Staff)
年間200人ほどしか加わることができない。GEの上層部は、ほとんどがCAS修了者。
数か月単位でGEの各事業所をまわって、財務、オペレーション、その他の必要なあらゆることを監査。プログラム責任者はGE本社のCFO直属。
「監査」とおいう名目でGEの四半期ごとの利益を膨らませる会計上の調整方法を見つける。
135：独立監査人KPMG
KPMGは、CASの協力を得て帳簿をチェックしていた。GEの経理担当者は、KPMGの監査人は彼ら自身の本社の判断より、GEの会計判断に同調する傾向があることを見抜いていた。
137：2007SEC調査
調査が始まるとすぐに、数々の疑わしい慣行が見つかった。GEは、投資家保護のために義務付けられている会計処理のルールを拡大解釈したり、裏をかいたり、ときには無視していた。
2023年03月23日
封じられた「打ち出の小槌」
イメルトがCEOを次いで間もない2002年、「債券王」ビル・グロス（PIMCO共同創業者）から手榴弾が投げつけられる。
「GEは長年、謎に包まれている」「私たち機関投資家は、なぜこの会社が毎年、あるいは四半期ごとに、15%の利益成長を続けられるのか、不思議に思っています」
ビル・グロスは、「GEの安定した収益は企業買収の産物であり、その資金のほとんどは自社株とCPで賄われている」ことを指摘。「信用の裏付けが十分でない」として、PIMCOではGEの長期債も短期債も買わないことを宣言した。
短期借入やCPで巨額の資金を調達し、それをより高い長期金利で貸し出すことで桁外れの利益を上げていた、GEキャピタルの核心を突いた。
GEはウェルチCEOの時代を通じて、この「キャピタルの打ち出の小槌」を利益調整に用いてきた。GEは銀行ではなく工業企業だからこそ高く格付けされ、そのおかげで安く資金を調達できていた。
96：GEは収益を維持するために複雑な操作を必要としていた
ビジネスの現場は、エンロン、タイコ、ワールドコムの3社が不正行為によって破綻した後、危険の度を増していた。新しい会計規則が導入され、SECから頻繁に情報開示が求められた。
2023年03月22日
会計トリック
上から下まで、計画数字の未達が即キャリアの終わりを意味するGEでは、「四半期末が近づくと、経営陣は当然のように、土壇場での調整や目まぐるしい事業部間取引を行った」という。
45：GE Plasticsウェルチを恐れ、売上原価を下げるために在庫の数字を調整して、利益を膨らませていた。（中略）彼らは事業の結果を正直に記録して四半期ごとに報告するのではなく、まず利益目標を決めてから、その数字をつくるために必要な帳簿上の調整を行っていた。
この構造は、東芝やカネボウで起こったことと何ら変わりがない。さらに、GEには合法的に利益を確保できる打ち出の小槌があった。
75：買収による利益確保GEは、工業分野の企業としては異例の高さを誇る株価収益率(PER）を価値の高い通貨として、企業買収を進めることができた。株価収益率の低い企業を単に買収するだけで、自動的に利益を上げることができた。
これは、どういうことかというと、ジャック・ウェルチの最盛期、GEのPERは40xもあった。GEがPER10xの企業を買収すれば、一株当たり$1の利益が$10の株価になっていたものが、$40で評価される。利益を$3増やしたのと同じ効果があった。
こうして、ウェルチCEO在任20年間で約1000件、月平均4件の企業買収を行い、その総額は1300億ドルを超えた。しかし、それだけでは巨大なGEが継続して利益を上げ続けるには足らない。そこで使われたのは、これも、日本で「飛ばし」として有名になった、オフバランス化だ。
こうして、ウェルチCEO在任20年間で約1000件、月平均4件の企業買収を行い、その総額は1300億ドルを超えた。しかし、それだけでは巨大なGEが継続して利益を上げ続けるには足らない。そこで使われたのは、これも、日本で「飛ばし」として有名になった、オフバランス化だ。
77：Edison Conduit特別目的会社会計上、この会社はGEから独立しており、GEのB/Sにも載っていない。問題は、GEがこの会社を支配し、GEキャピタルが保証しているにも関わらず、投資家がその存在を知らないということ。
しかし、それはエンロン事件で終わりを告げる。最盛期には1000億ドル（13兆円）以上の利益を上げ、「自他ともに認める天才企業」であったエンロンが、大規模な不正会計の発覚により、一瞬で倒産してしまう。同事件への結果、再発防止策としてサーベンス・オクスリー法（SOX法）が施行される。
79：SPC02年の報告書では、複数の特別目的会社に合計550億ドル以上の資産があることを開示。特別目的会社への資産売却によって、13億ドルの利益を得たことも明らかに。
82：「ジェフ(イメルト）に降りかかった最悪の出来事は9.11じゃない。サーベンス・オクスリーだ」（GEのある取締役）
SOX法によってGEは、投資家に報告する利益をこれまでのように操作することができなくなった。
2023年03月21日
ニュートロン・ジャック
1980年から20年間もGEのCEOを務め、「経営の神様」とも言われたジャック・ウェルチ。その前半では、日本企業と比べて競争力のなくなっていた家電製品事業などで大リストラを繰り返し、建物を通り抜け中の人間を殺傷する中性子爆弾になぞらえて「ニュートロン・ジャック」の異名をとった。
そうして、依存度を高めていったのがGEの金融部門であるGE Capital。GEは製造業であるという繕いで金融機関に課せられる厳しい規制を逃れながら、「実質的には、米国で最も大きく、最も謎めいた銀行の一つになっていた」。
29：GE Capital最盛期には、GEキャピタルはGEの総利益の半分以上を生み出していた。米国で最も有名な製造企業は、実質的には、米国で最も大きく、最も謎めいた銀行の一つになっていた。
27：「プランニングは要らないからプランを出せ」（ジャック・ウェルチ）
産業系事業では5ヵ年計画は不可欠だと考えるものが多かったが、ウェルチは「bullshit(無意味)」だと切り捨てた。
28：「成長の遅い経済で速く成長する」（ジャック・ウェルチCEO就任1年目）
CEO在任20年間で約1000件、月平均4件の企業買収を行い、その総額は1300億ドルを超えた。
30：ランク・アンド・ヤンク（ランク付けして引っこ抜く）
管理職に部下のパフォーマンスの年間ランキングを作成させ、下位10%の社員にはその旨を通知し、改善がなければ解雇する。常にプレッシャーをかけられ、社員の緊張感は高まる一方。
34：「GEの取締役の役割＝拍手喝采」
取締役会は、会長でもあるウェルチの指揮にほぼ従った。ウェルチ時代に新に就任したある取締役は、CEOが取締役会を支配してること、取締役会で議論がほとんど行われていないことに驚いた。
2023年03月20日
巨大企業が崩壊するとき
30年前から20年前にかけて、優良企業の名を欲しいままにしていたGE。GE出身だというだけで転職市場ではプレミアムが付いた。それが、経営危機に陥って10年。その転落は速く、いったい何があったのか？と思っていたビジネスマンは多いと思う。
その疑問に答えた力作。著者はWSJで長年GEを追ってきたジャーナリスト。GE誕生から書き起こしているのだが、衝撃だったのは、「GEの生みの親は、トーマス・エジソンではなく、JPモルガン」であること。GEは発明王トーマス・エジソンを創業者だとして「利用」してきたが、実はそうではなかったのだ。
GE誕生の秘密を知ると、ジャック・ウェルチ下の王者GEの利益が実は金融事業拡大によってもたらされ、GEの凋落が始まったのも、拡大した金融事業が逆回転を始めたことによるものだったのも、因果と言えば因果である。
6：スケネクタディNY1892
GEの最盛期には4万人以上の男女が働いていたが、2017年にはその数は1/10に。
14：GE Power
投資家には、パワーは手堅く利益を上げているように見えたが、そう見えたのは、将来の儲けを前借して現在の問題を隠す、会計上のトリックに過ぎなかった。
17：The meatball
1892年の創業以来、GEは単なる企業ではなく、米国そのものを代表する企業であり続けた。何十万人もの従業員にとっては人生の当たりくじ、株主にとっては損をする心配のない賭けだった。幹部社員にとってはエリート養成機関であり、そのうちの一部の者にとっては巨万の富に続く道でもあった。GEは米国に電気を供給し、最大のマシンを動かし、社会に深く根を下ろした。GE意外にそんな企業はない。
19：GEの生みの親は、トーマス・エジソンではなく、JPモルガン
GEの誕生は、その後の歩みも含めて、発明の才よりも資金力によるものだった。GEはエジソンとはほとんど関係がない。GEの誕生は、電気技術の開発には莫大な資金が必要なことを知っていた金融界の大物たちが、電気の分野の先駆者たちを取り込んだ結果だ。
20：モルガンは資金力にものを言わせて、競合する複数の会社を合併させた。エジソンは、会社の財務状況が悪化していたため、買収に応じざるを得なかった。偉大な発明家は、GEの名前だけの初代取締役となり、宣伝のためのお飾りになった。
2023年03月18日
旅に生きた英国婦人
イザベラ・バードの著書はこれまで読んだこともあったが、評伝は初めて。著者は日本に住んだこともあるイギリス人女性で作家・ジャーナリスト（UCL PhD）。
まず、「彼女が真価を発揮するのは実に40歳を過ぎてから」であることに驚く。「晩年型の典型的なケース」（序文）なのだ。それまでは病弱で、そのため、結婚もしていなかった。それが、療養のため医師に旅行を薦められ、それを機に旅行家として開眼する。いつの間にか、病気まで気にならなくなる
。
まず、「彼女が真価を発揮するのは実に40歳を過ぎてから」であることに驚く。「晩年型の典型的なケース」（序文）なのだ。それまでは病弱で、そのため、結婚もしていなかった。それが、療養のため医師に旅行を薦められ、それを機に旅行家として開眼する。いつの間にか、病気まで気にならなくなる
。序文：「どんなことにも手を出し、どこへでも足軽く飛んでいく」女性
30年間にもわたってアジアやアメリカ大陸の遠隔地を旅し、19世紀後半のもっとも有名な旅行家として高い評価を受けている。
地元でのイザベラは信心深い牧師の長女であり、エディンバラの博愛主義を遵守する淑女であり、同地の立派な医師の妻となった後まもなく寡婦になった。
15：1872年の真夏、おとなしそうで知的な風貌をしたずんぐりした体型のイギリス人のオールドミスが、病んだ身心を治療するためにオーストラリア行きの船に乗り込んだ。それまでのこの女性の半生は、ヴィクトリア時代の中産階級に属する牧師の義務に忠実な娘として、平穏無事な生活を送っていた。
15：1872年の真夏、おとなしそうで知的な風貌をしたずんぐりした体型のイギリス人のオールドミスが、病んだ身心を治療するためにオーストラリア行きの船に乗り込んだ。それまでのこの女性の半生は、ヴィクトリア時代の中産階級に属する牧師の義務に忠実な娘として、平穏無事な生活を送っていた。
2023年03月17日
INVESCOの新入社員研修
タイトルは「投資の極意」なのだが、内容はごく初心者用。これから投資を始めたいという人向けになっている。著者は世界的な投資会社インベスコのファンドマネージャーで、ロンドン・NYでも10年間働いてきたという。
なので、内容的には得るものはなかったが、アクティブファンドの役割を強調しているのが興味深かった。
194：パッシブファンドがすべてになったら、何百年も社会を豊かにしてきた仕組みは崩壊してしまうパッシブファンドは、アクティブファンドのファンドマネージャーたちの日々の精査によって求められた企業の株価を参考に、規模の大きい企業順につくられた株価指数に乗っかる仕組み。
様々な研究によって、「長期的にはアクティブファンドはパッシブファンドに勝てない」ということが明らかになっているのだが、その最大の理由は、コスト。証券取引所などによって決められた指数を自動的に売買するのとは違い、アクティブファンドでは企業調査やポートフォリオマネジメントに人件費がかかる。
そのコストは平均して年間1~2%と単年度で見ればそう大きくはない。だが、これが複利で掛かって来るので、何十年間も運用する場合はその差は数十％にもなる。これを、運用の上手さで市場を上回る成績を上げるのは至難の業なのだ。
ところが、そもそも株価指数はどうやって作られているかというと、上場している企業の中からそれぞれのテーマに応じた代表的な企業群で構成される。その「代表的な」を形成しているのは、アクティブファンドの企業評価活動の成果であり、アクティブファンドがなければ正確な株価指数は形成されないという主張である。
この理論が正しいとすると、人々がパッシブファンドばかり購入するようになると（現在その傾向）、市場の価値評価能力が落ち、効率市場ではなくなる。そうすると、アクティブファンドの活躍の場面が増え、アクティブファンド有利になるはず。アクティブファンドの活動が活発になると、そうした市場の非効率性は低迷し、再びパッシブファンドが有利に。
結局、そうして均衡点を探すことになりそう。
そのコストは平均して年間1~2%と単年度で見ればそう大きくはない。だが、これが複利で掛かって来るので、何十年間も運用する場合はその差は数十％にもなる。これを、運用の上手さで市場を上回る成績を上げるのは至難の業なのだ。
ところが、そもそも株価指数はどうやって作られているかというと、上場している企業の中からそれぞれのテーマに応じた代表的な企業群で構成される。その「代表的な」を形成しているのは、アクティブファンドの企業評価活動の成果であり、アクティブファンドがなければ正確な株価指数は形成されないという主張である。
この理論が正しいとすると、人々がパッシブファンドばかり購入するようになると（現在その傾向）、市場の価値評価能力が落ち、効率市場ではなくなる。そうすると、アクティブファンドの活躍の場面が増え、アクティブファンド有利になるはず。アクティブファンドの活動が活発になると、そうした市場の非効率性は低迷し、再びパッシブファンドが有利に。
結局、そうして均衡点を探すことになりそう。
38：人的資産＝将来の見込収入の現在価値Gary S. Becker 人的資本で1992ノーベル経済学賞受賞・幼児期のしつけや読み書きを教わることの重要性・人種や国籍によらない、教育の重要性・男女を問わず、意思のある人の社会参加・大人になっても、教育で人の価値は高まる・人への投資で、社会がどんどん豊かになる
2023年03月16日
IT企業への投資のポイント
「IT企業への投資のポイント」（167p）というのがある。ほぼ賛成。
��のFCFは、成長企業ではマイナスのことが多い。先行投資しているからだ。しかし、先行投資は目論見通り将来の利益につながるとは限らない。行っている投資が、「しっかりと検証された成功確率の高いもの」なのか、甘い見通しのまま自社に都合よく考える「確証バイアス」に陥っていないか、見極める必要がある。
この見極めは難しいので、失敗を避けるには、安定した事業を持つ会社を選ぶのが一番だ。バフェットも、「株を買うなら、どんな愚か者にも経営を任せられる優れた会社の株を買いたいと思うでしょう。なぜならいつかは愚かな経営者が現れるからです」（『バフェットの株主総会』）と言っている。
�．咼献腑鵝併屐砲�大きいこと
結局、経営者の考える事業の「器」の大きさまでしか事業は育たない。経営の目的が、目の前のお金でなく、社長の原体験に根差していること。
�△い蹐い蹐焚礎祐僂魑杣�できていること
経営陣の経歴がある程度、分散している。
��お金の使い方が上手なこと
ベンチャー企業は、えてして、その事業面にばかり目が行ってしまい、資本政策がおろそかになりがち。
�せ�業が安定していること
3年間の平均FCFがプラスで、社歴が10年以上あること。
�ゴ覿箸瞭睇瑤凌諭△修隆覿箸班佞�合う人がしっかりしていること
監査法人や証券会社を確認する。
2023年03月15日
NOVAがGABAを買収していた！
Case5として挙げられているのが英会話スクールのGABA。2006年から2011年まで東証マザーズに上場していた。2011年末にニチイ学館の完全子会社となり、上場廃止。さらに、昨年NOVAの子会社になっていた
本書でGABAと対比されているのが、同業で業界トップだったのに経営破綻したNOVA。15年前に破綻したNOVAにGABAが買収されたとは、本書の内容には直接関係ないが、気になる。
まず、英会話教室の特殊性から。本書が出た2008年当時、英会話を中心とする「語学ビジネス」は漸減していたとはいえ、年間5000億円を超える市場規模があった。多くの国では、日本同様、義務教育そして、その後の高等教育で英語を習う。それだけで、必要最小限は用が足りるので、卒業後もお金を出して習いに行こうという人はまずいない。
諸外国にも、仕事用にビジネスレベルの英語なり現地語を教える教室はある。しかし、日本のように、仕事で使うわけでもないのに、何十万円も払って、趣味のように英会話学校に行く人は存在しない。
これが戦後何十年も続いた日本の特殊性で、GABAもNOVAもGIOSもそうした特殊市場の中でやってきた会社だ。ところが、本書が出た後、業界のルールを変える変化が起こる。それが、レアジョブのようなオンラインサービス。それまでにも、NOVAが「お茶の間留学」と銘打ち、オンラインでの講座を提供していたが、講師は日本に来ている外国人のため、受講料は相変わらず高かった。
それが、フィリピンなど、英語がネイティブだけど人件費が日本の1/10という国とつないで、オンラインで授業を受けられる。背景には、その間にブロードバンドが普及し、リアルタイムで動画がスムーズに見られるようになったことがある。NOVAの元祖「お茶の間留学」は9万円する専用TV電話装置を使っていた。現在の新「お茶の間留学」はZoomを使っているので、初期投資は不要だ。
本書では、GABAの事業価値を、「毎年教室が3か所純増する」という前提で120億円と算定していたが、昨年NOVAに売却された時点での教室数は36か所で、2008年の33からほとんど変わっていない。売上はGABAのHPによると2022/3で63.7億円で、本書に出ている2008/3の81.8億円からかなり減っている。
さらに、電子公告されているB/Sの推移をみると、繰越利益剰余金が過去5年間で、
55→53→48→17→17（億円）
と継続的に下がっており、コロナ前で毎年数億円の赤字を計上。コロナになってレッスンを休止したことで、2021/3には30億円の赤字（おそらく評価減）になったものと思われる。教室数は、NOVAによる買収後、赤字教室を閉鎖したようで、現在27か所だ。
現在のNOVAを運営しているのは、2007年に破綻したNOVAを事業承継した元・がんばる学園。もともと学習塾を運営していた。2010年に英会話教室老舗のジオスも事業承継。2014年には格安オンライン新興勢力に対抗して同様のサービスも開始している。そこが、回りまわってGABAも買収したというのは興味深い。
95：NOVAに引っ張られていた市場
NOVAは積極的にTV広告
GABAは電車の中吊りやウェブ主体
NOVAのTV広告で、英会話を学ぼうという気になる→調べてGABA
96：GABAの強み
カフェのような教室でのマンツーマン授業
2023年03月14日
優良だけど投資に適さない会社
Case1として挙げられているのがスターバックスコーヒージャパン（SBJ）。1995年に米国スターバックスと日本の現地パートナーであるサザビーの合弁会社として設立された。その後、破竹の勢いで成長し、2001年には当時のナスダック・ジャパン（後にJASDAQに統合）に上場した。
その後も業績は順調に伸びたものの、株価はIPO天井となり、一度も上回ることなかった。2015年に米国スターバックスがTOBし、上場廃止となっている。本書は2008年段階なので、まだ上場していたときだが、SBJが投資には向かなかった理由を分析している。
米国スターバックスとサザビーは50:50でSBJを設立したが、米国スターバックスとのFC契約はFC本部である米国本社に有利にできていた。主要な仕入れ先は米国本社に限られ、売上の5.5%がライセンス料として取られる上に、出店ノルマもあった。「年内にこれだけ出店しなければならない」という契約条項で、達成しなければペナルティがある。
SBJ上場時、上場理由は「新規出店資金調達のため」とされたが、そもそも、米国スターバックスもサザビーも上場企業であったから、SBJが別途上場して資金調達する必要はほとんどない。親会社が貸し付けるか、親会社が保証して銀行から借りればいい。
つまり、新規出店資金というのは建前で、上場の本当の理由は、経営者や従業員へのSO報酬（上場しなければ意味がない）や、株主である米国スターバックスおよびサザビーリーグの利益確定であったことは明白だ。
SBJは第一にFC本部である米国スターバックス、第二に大株主であるサザビーのために存在していたわけで、その成果配分を決めるのは彼等であった。「個人投資家は自らの利益還元についての発言権がない」のである。
最終的には、2014年に米国スターバックスがFC契約破棄をちらつかせて、強引に完全子会社にしてしまった。売上1000億円を超え、利益率も高いSBJは世界のスターバックスの中でも優良会社であったはずで、上場後も39.54%を維持していたとはいえ、利益の60%を（サザビーも入れて）外部に出すのはもったいないと思ったのは間違いない。
最後まで持っていた個人株主は、TOBでプレミアムが付いたが、公募価格を上回ることはなかった。子会社、特にFCは本部の権限が強い場合が多く、少数株主の利益が守られることは少ない。なので、米国市場ではほとんどない親子上場が、日本で認められるなら、自らの利益のためにやってしまうのが米国企業。
34：出店ノルマ
米国スターバックスとスターバックスジャパンの間に、「年内にこれだけ出店しなければならない」という契約条項。＋売上の5.5%がライセンス料（2008 50億円）
35：成果配分の構造
出店ノルマは5年ごとに店舗数の見直しが入るが、その決定権は大株主である米国法人。
コーヒー豆やコーヒーカップなど重要な商品はすべて米国スターバックスから購入（2008 67億円）。
2023年03月13日
会社の本質を見抜く
2008年初版なので、もう15年前の本。しかし、取り上げられている事例はともかく、分析手法は今でも通用する。
はじめに：投資をするにあたり知りたいのは２つだけ�，修硫饉劼鯑阿�すメカニズム＝価値の源泉��会社の妥当な「値段」
ブルーマーリン・パートナーズ 企業分析力養成講座
2023年03月12日
何歳からでも体が若返る
6年前に参加したWASEDA HEALTH STUDY。校友とその配偶者を対象として、20年間にわたり、ライフスタイルと健康寿命との関係を調査する長期研究。5年毎に所沢キャンパスに出向いて健康＆体力調査を行う最もヘビーなDコースを選択したのだが、昨年の2回目はコロナで延期に。
その時、骨密度を初めて測った。他に、MRIによる内臓脂肪量や筋量の測定。マスクを着けて酸素吸入量を測りながら自転車をこいだのも初めて。結果、体力年齢は35歳ということに
ただ、自分でも実感しているのだが、その後、食生活が悪化している。一番の原因はコロナで家にいる時間が増えたこと。以前は、週に2回程度外食するときに吞んでいたくらいで、家では基本的に飲まなかったのが、コロナ後、晩酌の習慣が出来た。おまけに、在宅勤務で、間食が増えた。
これではいけないと、手に取ったのが本書。タイトルが秀逸。実際、増刷を続けている。私の場合、「嗜好品はお菓子とアルコール、どちらか1日1回」が一番難しそう
今後、晩酌は隔日にして、飲む日はお菓子を止めたい。20：散歩とウォーキングは別物
歩幅を広げる（身長の半分）
息切れしないように歩く。
37：目標心拍数＝最大心拍数の何％で運動するか
最大心拍数≒220-年齢
全身持久力の向上を狙ってウォーキングをするのなら、最大心拍数の60~80%。
68：老化は足腰から
NEAT（非運動性身体活動代謝）が基礎代謝の次に大きい（20~30%）
立ったり歩いたり、階段の上り下りなど日常生活で消費されるエネルギー。
94：尿漏れ防止に骨盤底筋群を鍛える
おならをガマンするように、肛門を絞めながらお腹の中に引き込むような自覚。
177：食後の有酸素運動で高血糖を避ける
209：嗜好品はお菓子とアルコール、どちらか1日1回
両方とも1日で摂っていいわけではない。
2023年03月11日
日本の食料安全保障
日本の食料自給率は先進国最低。人口が870万人と、東京都よりよほど小さく、山国のスイスより低いというのは衝撃的だ。いざ輸入が止まれば、2/3の国民が飢えることになる。
しかも、この数字には、輸入に99%頼るエネルギーが考慮されていない。石油が入らなければ、トラクターもコンバインも動かないから、労働生産性は著しく落ちるだろう。
結局、江戸時代に達成し、そして安定していた3000万人が日本列島で自足自給できる人口ということになる。
208：20世紀の飢餓の大半は戦争、部族紛争、権力闘争など人為的な原因
世界では今まさに、戦争の危機、世界分断の危機、地球温暖化の危機、資源の危機。
209：カロリーベース自給率2021
コメ 98%
野菜 75%
魚介類 53%
畜産物 64%（資料の輸入分を差し引くと16%）
小麦 17%
油脂類 3%
213：極端に低い飼料原料の自給率2020
トウモロコシ（飼料用）0%
大豆 21%
217：飼料の国内増産は可能
畜産と連携して、畜産の糞尿を堆肥にしてトウモロコシや大豆などへの肥料にする。
畜産糞尿の利用→化学肥料の節約、土地有機質の向上による地力の回復、GHG排出の削減
2023年03月10日
「マルサスの罠」
「マルサスの罠」（Malthusian trap)とは、英国の経済学者トマス・ロバート・マルサスが1798年に発表した論文で指摘した「食料生産は人口増加に追い付かない」という予測。
人口は幾何級数的に増加するが、食料生産は土地資源の制約を受けるため算術級数的にしか増加せず、やがて一人当たりの食料供給量は生存に必要な最低水準を割り込み、世界の人口は生存ぎりぎりの水準で止まる。
これは自明のように思われたが、「マルサスの罠」を打ち破ったのは20世紀の化学肥料と農薬の発明だった。これによって、単位面積当たりの収量が飛躍的に増えたのだ。特に1960年代アジアでは「緑の革命」が進む。これによって、増加し続ける人口にもかかわらず中国とインドは穀物自給を達成する。
196：高収量品種←化学肥料＋水（灌漑設備）アフリカでは国内権力闘争、部族紛争が続き、農業軽視。
197：1961~2020耕地面積当たりの化学肥料使用量
アジア全体 8kg→187kg/ha（22x）
中国 7kg→337kg/ha（48x）
インド 2kg→193kg/ha（92x）
2023年03月09日
穀物増産より輸入依存を選んだアフリカ
毎年のように飢饉が起こるアフリカ諸国。同じように欧米の植民地であったアジアでは、インドにしろ、ベトナムにしろ、それほど大きな食糧問題は抱えていない。なぜ、そうした違いが出たのか。まず、アフリカ諸国には下記のような問題があるという。
�々駝厩餡箸箸靴討隆霹廚�脆弱だった。植民地支配による負の遺産。�⊃¬叡六�代の経済構造のもたらした後遺症。植民地時代には宗主国の企業は綿花、コーヒー、ココアなど商業作物の生産に集中し、国内の大規模農園は大半が搾取的なプランテーション農業。��アフリカ諸国の政権の基盤が主に都市部にあり、政策が「都市偏重」になっている。
インドもイギリスの植民地として、綿花、茶、砂糖などのプランテーション農業が営まれ、欧州市場に輸出されていた。
「もともと茶葉を産出しないイギリスで庶民までが紅茶好きになったのはコロニアリズムの習慣であるとともに、インド人の低賃金労働による茶摘みが支えた」。
「もともと茶葉を産出しないイギリスで庶民までが紅茶好きになったのはコロニアリズムの習慣であるとともに、インド人の低賃金労働による茶摘みが支えた」。
ガンジーは「国産愛用」による、宗主国からの経済的独立をまず目指した。その象徴として、ガンジーはイギリスで紡績された綿製品ではなく、自ら糸車を回して、綿を紡いだ。その精神を受け継いだネルーが独立後、食糧の自給自足を目指す。アフリカと異なり、穀物生産重視し、現在では自給率98%となっている。
・インドは植民地になる前にマハラジャなど各地に土候的王族が割拠する時期やムガール帝国など統一王朝による国家が確立されていた。・植民地時代に優秀な官僚や行政機構、法体系が形成され、独立後そのまま統治機関として機能した。・ガンジー、ネルーなど理念とカリスマ性のある政治家の存在
加えて、1960年「アフリカの年」頃に続々と植民地から独立したアフリカ諸国を先進各国が支援する。その10年程前に独立したインドと違って、その頃には旧宗主国である欧州各国も戦争からの復興が進んでいたからだが、これが国際社会から巨額の援助資金となる。
1985~95年の10年間に受け取ったODA資金が対GDP比率で20%を超える国はアフリカの1/3に当たる17カ国にも上る。援助依存症と低い国際穀物の輸入コストにアフリカ諸国の政治家が甘えたことで、未だにアフリカ諸国は経済的＝政治的に独立できずにいる。
1985~95年の10年間に受け取ったODA資金が対GDP比率で20%を超える国はアフリカの1/3に当たる17カ国にも上る。援助依存症と低い国際穀物の輸入コストにアフリカ諸国の政治家が甘えたことで、未だにアフリカ諸国は経済的＝政治的に独立できずにいる。
2023年03月08日
2023年03月07日
食肉の消費拡大が飢餓を生む
生活が豊かになると食肉消費量が増える傾向にあり、この50年間で5倍になった。しかし、食肉生産は環境に多大な負担をかける。
そもそも、穀物生産にも大量の水を消費するので、食肉が拡大すると、必要な飼料がその何倍も増え、環境負担はけた違いに増す。大豆ミートの必要性が言われる所以だ。63：食肉の飼料効率（食肉1kgの生産に必要な穀物量）牛肉11kg豚肉6kg鶏肉4kg
59：飼料作物の生産地図
トウモロコシ主要生産国〜米国、中国、ブラジルの3カ国で世界生産量の6割
生産量で世界最大の穀物トウモロコシ「工業化された農業の代表」
米中西部の穀倉地帯
GMOトウモロコシが数百km四方にわたって栽培され、化学肥料と農薬を科学的に散布、ドローンや大型農業機械で播種、収穫まで行う。
60：大豆
2020年生産量は3.5億万t＝1980年の4.4x
年平均伸び率3.8%（トウモロコシ2.7%）
ブラジルと米国で世界の66.3%
72：漢字の「家」
豚の上を屋根が覆っている意味で、人間とひとつ屋根の下に暮らす姿を象形化。
2023年03月06日
侵略された「世界のパンかご」
ウクライナのことを初めて知ったのは、中学校の社会科授業だったと思う。いわく、肥沃な黒土に覆われたヨーロッパの穀倉地帯であり「世界のパンかご」。考えてみれば、ゲルマン民族の生存圏を求めて東に侵攻したナチスドイツも、当時ソ連邦の一部だったウクライナの穀倉地帯を確保することが主要目的の一つだった。
ロシアが2021年2月に軍事侵攻したことで、穀物輸出大国のロシアとウクライナが輸出を減らすことになり、小麦価格は高騰した。この両国で世界の輸出小麦の27.9%（5532万トン）を占め（2020）、これは1人100kgの年間消費量（成人男性必要カロリーの約半分）として5.5億人分にあたる。
このウクライナに急接近していたのが、「一帯一路」戦略を掲げる中国。2013年には「中国−ウクライナ友好協力条約」を締結した。この一環で、ウクライナ農業インフラ整備に中国が30億ドルを融資し、それでトウモロコシの中国輸出が急拡大した。輸入されたトウモロコシは、豊かになって消費が増えている食肉の飼料に使われている。
プロローグ
2022ウクライナ侵攻
「アフリカの角」エチオピア、ケニア、ソマリア4期連続の干ばつで1300万人が飢餓に直面
近代戦争では、敵の継戦能力を弱めるため、インフラ破壊が常態化
深刻な問題
�々鯤�輸出大国のロシアとウクライナが輸出を減らす
��化学肥料生産でロシアおよび同盟国のベラルーシが高いシェア（特にカリウム）
�Ｃ狼絏甲伐修硫誕�（欧州で記録的な猛暑＆少雨、米国、オーストラリア、中国で干ばつ）
19：ウクライナの「チェルノーゼム（黒土）」
平坦な国土の7割が肥沃な黒土であるチェルノーゼム。
22：途上国の農業は「規模の経済」が直接影響する穀物ではコスト競争力が弱い
米国、カナダ、オーストラリアでは、数百ha〜数千haの巨大農場を個人農家が経営。
27：「援助慣れ」がアフリカの農業を破壊
1970~90年代人道的な食料支援が繰り返し実施。
農民が自ら耕作するよりも支援食料に依存し、農業が衰退。
＊現在では、WFPは支援食料をできるだけ途上国から調達
28：自壊したソ連農業
コルホーズ（集団農場）、ソフホーズ（国営農場）などによる集団化で生産意欲が減退。
1932~34ウクライナでの過酷な作物取り立てで300万人以上が餓死する大飢饉。
2023年03月05日
祇園では長女が大黒柱
その祇園も、外国人観光客が増えすぎて、大変らしい。写真を撮るだけで、大してお金を落とすわけでもない。外国人観光客用の体験お茶屋をつくって沢山お金を取ればいいと思うが、もうあるのだろうか？
94：昭和19年「決戦非常時措置要綱」
全国の花街や劇場が営業停止。
98：京大生が憧れ
ラグビー部の城山さんがアイドル。
京大生の中でもお坊ちゃまが祇園に来ていた。
お父さんが祇園で遊んでいて、息子も祇園の方が安心。
124：祇園では長女が大黒柱
たとえ弟や妹と父親は違っても、母親がおんなじ姉弟。その面倒は一切合切、長女が見なければならない。
164：舞妓の誓い
・私たちは常に美しく優しく親切にいたしましょう。
・私たちは祇園の伝統を誇りとし、心の修養につとめましょう。
・私たちは善良の風俗をみださないよう、清潔でありましょう。
・私たちは京都の国際的地位を認識し、新知識の吸収に意を用い、視野を広めましょう。
・私たちは常に良き風習を造り、皆さんから愛せられましょう。
198：一力亭と大石内蔵助
老舗中の老舗のお茶屋といえば、一力亭。忠臣蔵で有名に。
大石内蔵助が主君の仇討をごまかすために遊んでいた（『仮名手本忠臣蔵・一力茶屋の場』）
「大石忌」
3月20日の命日にお師匠さんによって『深き心』という舞。舞妓や芸妓が『宿の栄』という舞。最後に、抹茶や手打ちそばが振る舞われる。
2023年03月03日
干支の知恵
![強運をつくる干支の知恵[増補版]](https://m.media-amazon.com/images/I/51IaSRHSd5L._SL160_.jpg)
SBIグループでは毎年最初の出社日に年賀式を行う。そこで北尾社長が話すのが、「今年の世相」。干支学をもとに30分くらい話すという。本書では、干支学が何なのか（易占とは異なる）ということと、実際に年賀式で北尾社長が話してきた内容が収録されている。
これが、結構当たっている。圧巻なのは2011年の年相。
「過去の辛卯の年を見ると、自然災害など天変地異の異常や予期せぬ出来事が起こりやすい。特に注意すべきは地震。地下に蓄えられたエネルギーが地上に向かって動き出す」
これが、結構当たっている。圧巻なのは2011年の年相。
「過去の辛卯の年を見ると、自然災害など天変地異の異常や予期せぬ出来事が起こりやすい。特に注意すべきは地震。地下に蓄えられたエネルギーが地上に向かって動き出す」
干支の干は「幹」や根。支は「枝」。根から生じる枝葉花実。
14：中国の古代人は様々な法則を自然界から学んだ
自然界の法則を知ることが神（天）の意志を知ることであり、その法則に従って生活することが最も幸せ。
42：西洋では、人間は自然の支配者
「産めよ、増えよ、地に満ちよ、地を従わせよ、また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ」（『旧約聖書』「創世記」）
50：殷の時代の古代中国人
羊を飼いながら中国に入った遊牧民族。
2023年03月02日
エピローグ：VCの未来
本書のテーマは、初回に書いた通り、「米VC産業には、それが産業として発達した歴史的な背景がある」ということ。
だから、他国がまねようとしても、成功できないのだ。VCだけがあれば成り立つのではない。435：VC業界は1946年、ARD設立が始まり（通説）米国では、それよりもずっと以前から、資本市場がダイナミックに機能し、仲介業者を使ってアーリーステージのリスク資本から金銭的リターンを得ようとする多くの試み。ロングテール型投資というコンセプトは、初期の捕鯨産業の時代に始まり、アントレプレナー・ファイナンスの支援を受けて多数のスタートアップ企業が生まれている今日まで、脈々と受け継がれている。
長期にわたって高いリスクを取るVC投資だが、それに見合ったリターンがあるかといえば、米国でもそうではないらしい。436：VC業界は、20世紀半ばに突然変異のように出現したわけではないリスク資本の取り扱いをめぐって米国に長く培われてきた伝統を受け継いでいる。
ロングテール型の投資から利益を得るのは、どんな時でも難しい。著者が米VCの原型として挙げている19世紀の捕鯨産業でも、トップクラスの捕鯨エージェントと平均的なエージェントでは大変な差があり、業界平均のリターンはリスクの割には大したことがない。437：2005Yale大学基金デイビッド・スウェンセン「長期間で見ると、スタートアップ企業への投資家は、非常に高いリスクを取っているにもかかわらず、（平均すると）公開市場並みのリターン程度しか得ていない」
20世紀前半は、ロックフェラーやホイットニーなどの大資産家が誕生した時代だが、それら資産家は有望分野へのPE投資を始める。彼らのVC投資リターンは上場株式リターンを上回らなかったようだ。440：捕鯨エージェントGideon Allen & Son1830-188764回の捕鯨航海で実現した平均リターンは歴史的に実に目覚ましい。同期間のNYSE年複利リターンの7.84x＊経験の乏しいエージェントの平均リターンはこれよりもはるかに低い
ローランス・ロックフェラー20世紀初頭から半ばにかけてのハイテク・セクターだった航空分野に投資上場株式のリターンに対する比率は0.59xJ.H.ホイットニーも、VC投資からはなかなか成果を出せず、次第にレイターステージへと重点を移す→PE投資の分化
443：「我々はただ、企業を設立してNYSEへの上場を目指せばよかった・・・・・今のように、何が何でも”リターン、リターン、リターン”と叫ぶ必要はなかった」（伝説のベンチャーキャピタリストArthur Rockが1960年代から70年代のVC投資を振り返って）
445：VC業界では組織上のイノベーションがほとんどなされていない
GPの人材資本が組織資本（組織内に積みあげられた業務プロセスや知的財産）の2〜5倍必要。
2009アンドリーセン・ホロウィッツ
起業家向けに豊富な「プラットフォーム」を用意して、人材紹介からマーケティングに至るまでのさまざまなサービスを提供。管理手数料をGPの利益とするのではなく、生産性の高い活動に回すことで、ポートフォリオ企業の業績を高める。→VC専門化への新しいステップ？
448：シリコン・バレーは生き残れるか？
Arthur Rock、Tom Perkins、Don Valentineは有利な起業の環境を求めて東海岸からSVに移り住んだ。
�ヾ覿抜屬�バリューチェーンでつながっている
�▲魯ぅ謄�の専門知識を持った人材の層が厚い
�Ｃ療�アイデアが自由に行き交う土壌がある
＝「マーシャルの要因」（Alfred Marshal『経済学原理』1890）
2023年03月01日
シリコンバレーは模倣できるか？
興味深い洞察。
１．VCの投資スタイルの圧倒的な利益は頻繁には実現せず、実に散発的で、特定の企業や期間に集中している
業界全体としては圧倒的なリターンを実現する体系的な方法が進化してきたというよりも、むしろリスクへの慣れという文化が生まれ、ロングテール投資を志向する行動バイアスが進んだ。
２．VCの具体的な業務の進め方は、半世紀前とはかなり異なっている
組織構造や戦略のイノベーションはある程度あったものの、それほど多くはない。
３．VCを核とする起業家精神の中心としてSVが発展してきたのは、その歴史的背景と深い関係
それを他の地で模倣しようとしてもたいていは失敗する。
４．VC業界が機関化してきた
個人投資家から機関投資家への主役交代。
米政府（政治家）＝最大のVC
・機関投資家によるハイリスクな投資への制約緩和
・投資利益への税制改正
・高度技能移民を増やす
→SVの発展
５．VC史は白人男性の活動と実績に集中
アメリカのビジネスと金融エリートの人員構成がそうなっていることの裏返し。
