2022年12月
2022年12月31日
品川
日本橋を出て最初の宿場が品川。この湊町には中世すでに宿場的な機能が備えられていたという。
家康による近世の品川宿は、そうした中世の宿場町を基に造られたもので、江戸に近いこともあって、宿泊というよりむしろ休憩に多く使われたが、江戸庶民たちの遊興の場としても栄えた。しかしいまでは江戸時代の品川が吉原に次ぐ色街だったとか、桜や紅葉の名所であったといったことは忘れられている。
品川のもう一つの特徴は、数多くの名刹。品川にある寺の多くは中世の創建で、宗派も多岐にわたり宗教都市さながらだった。
中世の品川には、鈴木氏以外にも熊野方面から品川に渡り、品川湊の発展を支えた人がいたという。彼らはもともと熊野権現に奉仕する熊野地方の豪族だった。
2022年12月30日
東海道五十三次を歩く
新聞の書評か何かで紹介されていて、図書館で予約した。到着して家で読んでいると、妻がアレ？という顔をする。なんと、大学で同級生だったらしい。卒業後は交流してなかったとか。
はじめに：東海道新幹線の東京・大阪間の年間利用者数は、日本の総人口に近い
それ以外の交通手段も含めれば、数えきれない人たちが日々東海道を通っている。
2：現在の東海道にはがっかりさせられることが多い。排気ガスが充満した国道、建ち並ぶビル群、破壊された遺跡、工場の煙突から吐き出される煙、どこまでも続くシャッター商店街。
3：東海道が持つ空間的な拡がり
東西それぞれの起点が現在に至るまで日本の政治や経済、文化の中心地であり続けている。
南北各地とも強い結びつき。内陸と海岸沿いを結び付けているのは富士川、大井川、天竜川のような河川と、川沿いに発達した身延道や秋葉街道に代表される川沿いの道。
�‘�本橋
橋は花崗岩でできた石橋で二重のアーチを描き、中央には翼を持つ麒麟、四隅には獅子を乗せ橋柱が立っている。50m近くある橋の両端と中央には一里塚にちなんだ松と榎を施した燈柱が置かれ、橋に華やかな雰囲気を添えている。
2022年12月29日
経験から学習する
本書に登場する失敗製品の事例。その多くは米国と日本の事例なのだが、米国企業が「失敗を通じて学習し、その学びからより確度の高い渾身の一手をすぐに打つ」のに対して、日本企業はそのまま衰退することが多いという。
著者がそうならなかった日本企業の例として挙げているのがトヨタ。1961年6月に発表されたパブリカは、破格の安値の大衆車で389千円だった。700cc空冷水平対向2気筒エンジンの出力は28馬力だったというから、ほぼ排気量が同じ今の軽自動車（660cc）64馬力（自主規制）よりもはるかに非力。車重も580kgと軽いのは軽かった。
しかし、「開発を始めた当時（1955）と売り出したときとでは、社会環境はがらりと変わり、時代の要求とズレてしまった」（開発主査長谷川龍雄）。「所得倍増計画」の時代に質素すぎる車となって、販売は全く振るわなかった。
しかし、発売から1年後の1962年には、一つ上のグレードで大衆車の座を勝ち取る開発構想が生まれ、再び長谷川主査が起用される。1966年5月に発表された「カローラ1100cc」は「日本で初めてのフロア変速機を搭載」というから、それまではコラムシフトが普通だったのか
いずれにしても、トヨタはその頃には既にPDCAを製造現場だけではなく、経営でも回せていたのだと思う。
いずれにしても、トヨタはその頃には既にPDCAを製造現場だけではなく、経営でも回せていたのだと思う。
2022年12月28日
サムスン自動車
数年前に韓国に久しぶりに訪問。かつて学んだ新村の延世大学も30年ぶり近くで訪れた。交換留学で学生寮にいた頃は、表通りは日本とほぼ変わらないものの、一歩裏通りに入るとまだまだ発展途上国という感じだった韓国。今では、所得水準も全く日本と変わらず、そして、日本より貧富の格差が大きいので、日本より先進的な面もたくさんある。
その時、現地で見た車で惹かれたのがルノーサムスン。なかなか格好いい。韓国最大の財閥のサムスンは、1995年3月にサムスン自動車を設立する。韓国では現代、大宇、起亜に次いで4番目の自動車メーカーとなった。当時、経営危機の日産が技術供与することになり、1998発売予定の第1号車SM5は「セフィーロ」ベースにした車だった。
ところが、1997年アジア通貨危機が起こる。韓国国内市場が年間115万台に半減する。翌1998年にはさらに半減し56万台となり、新参者のサムスン自動車は、参入余地がなくなってしまう。1999年7月に法定管理申請を行い、事実上倒産。大宇自動車との合併を目指したが大宇にも余裕がなくなり白紙に。最終的にルノーが買収し「ルノーサムスン自動車」となる。
それ以降、「サムスンでは車輪が付いた製品は作らない」が不文律になる。しかし、巨大な自動車業界を諦めたわけではなく、2016年には米自動車部品メーカーHarman Internationalを80億ドルで買収し、カーエレクトロニクス部門を強化している。
2022年12月27日
「役に立たない」ロボット
失敗製品その��は、ソニーのAIBO。いや、正確には、「失敗製品」ではなく、メーカーの予想以上に売れた。25万円もするのに「役に立たない」ロボットというコンセプトはソニーらしく斬新だったが、それは世の中に受け入れられたのだ。
25万円もする「役に立たない」ロボットが17分で完売したのだ1999/6 9:00販売サイトオープン 5000体完売迄17分！＠25万円1999/11 1万体の追加販売に対して申込者13万人
しかし、生産コストは高く、ソニーにとって儲かる商品ではなかった。ソニー全社としての業績悪化もあり、AIBOは生産終了となる。ソニーはデバイス事業をけん引役に、2018年度に20年ぶりに営業最高益を更新する。その時、「復活するソニー」の象徴として再登場したのがaiboだった。家庭用ロボット需要が見えてきたこともある。2006 生産終了短期的収益が期待できない商品が、短期的収益を求められる環境に置かれてしまった。自社以外の「エコシステム」が育ち、ビジネスとして採算が取れるようになるには時間が掛かる。
2022年12月26日
セガ「ドリームキャスト」
かつてセガ「ドリームキャスト」という先進的なゲーム機があった。まだブロードバンドが普及する前の1998年に「ゲームと通信の融合」を標榜して発売。事業部長であった湯川専務本人が出演したCMが話題になる。
通信モデムを内蔵し、対戦ゲームや多人数参加型のロールプレイングゲームなど、高速回線を使ったネットワークゲームを可能にした。
1998/12年末商戦が最初の勝負時だったが、100万台目標に対して50万台の販売に終わる。人気がなかったのではなく、在庫切れのためだった。GPU改良が発売ギリギリになり、ソフトウェア開発が間に合わなかった。半導体構造が複雑になり、量産してもコスト高止まりで、作れば作るほど赤字の状態だった。
2000/3決算 449億円の赤字。3期連続赤字。大川会長個人＋親会社CSKからそれぞれ506億円（合計1013億円）を調達。入交社長は責任を取って、2000/5に社長退任。
その後も採算は改善せず、2001年1月、セガはドリームキャスト生産中止を発表。同時にゲーム機事業からの撤退を表明した。こうして、セガ自身、4期連続の赤字で単独での生き残りが困難になり、サミーとの経営統合が決まる。
・プロジェクトの工程を分解し、ボトルネックを見極める・ボトルネックの工程には、リーダーが直接関与すべき
2022年12月24日
伝説の投資家
本人が日本好きで、依頼に応えることが多いためか、日本での出版が多いジム・ロジャーズ。昔から繰り返し彼が言うのは、「大局観を磨く」ことの大切さ。投資に限らず、仕事で大きく間違えないために大切だ。
そのためにすることで彼が挙げるのもいつも同じで、「歴史や哲学を学び、日頃から将来の変化について考える」こと。彼自身は、Yale大学とOxford大学院で歴史学と哲学を専攻した。それが彼の投資での成功につながっている。誰もが学べる金融的手法で大きな差をつけることは難しい。
本書は2020年6月コロナ禍が始まった直後に出版されており、流石なのは、ずっと彼自身が弱気だった日本株で、船舶関連を3月の暴落時に買っていること。コロナによる物流の混乱、コンテナ貨物の暴騰を見越していたのか理由までは書かれていない。
興味深いのは、ロシアの農業に注目して、やはりコロナ暴落で買っていること。具体的な投資対象は書かれていないが、「肥料会社など」を買ったということ。ウクライナ戦争で明らかになったのは、石油や天然ガスだけでなく、ロシアの穀物輸出と肥料生産への依存。さすがに、ウクライナ侵攻までその時点では予想していなかったが、面白い視点。
そのためにすることで彼が挙げるのもいつも同じで、「歴史や哲学を学び、日頃から将来の変化について考える」こと。彼自身は、Yale大学とOxford大学院で歴史学と哲学を専攻した。それが彼の投資での成功につながっている。誰もが学べる金融的手法で大きな差をつけることは難しい。
本書は2020年6月コロナ禍が始まった直後に出版されており、流石なのは、ずっと彼自身が弱気だった日本株で、船舶関連を3月の暴落時に買っていること。コロナによる物流の混乱、コンテナ貨物の暴騰を見越していたのか
理由までは書かれていない。興味深いのは、ロシアの農業に注目して、やはりコロナ暴落で買っていること。具体的な投資対象は書かれていないが、「肥料会社など」を買ったということ。ウクライナ戦争で明らかになったのは、石油や天然ガスだけでなく、ロシアの穀物輸出と肥料生産への依存。さすがに、ウクライナ侵攻までその時点では予想していなかったが、面白い視点。
そして、中国への楽観論は変わらず。「世界を支配するのに最も近い国」としている。
14：危機に備える私のポートフォリオ
・通貨USD（危機の時はドル買い）
・株式（中国、ロシア農業、日本船舶関連）
18：ブロックチェーンは急成長
中国がリード。仮想通貨は無価値に。
24：日本の注目分野
�’清�
��観光
�６軌蕁奮姐饋洋嘘慇玄�け入れ）
86：世界を支配するのに最も近い国・中国
中国は本格的なリセッションに直面しても日米欧よりうまく乗り越える。
2022年12月23日
脆弱なシナリオ
GAFAの雄Googleにも、失敗製品の歴史がある。その一つが、SNSであるGoogle+。一時は、Google+アカウントを作らないと、Gmail無料の制限がかかることになり、私を含め多くのGmailユーザーがGoogle+アカウントも開いた。
しかし、時すでに遅し。既に世界的にSNSはFacebookが圧倒的シェアを握っており、そこに友達が登録していなければ、使うインセンティブがない。こうして、Google+はほとんど使われることなく数年でひっそりとサービスを停止した。
メールサービスでは同じく圧倒的だったGmailをテコに力技でSNSでも覇権を狙ったGoogle。「ユーザーがコンテンツを投稿することによって事後的に方向性が定まる」というSNSの特性を無視した、「脆弱なシナリオ」に基づく展開であったといえる。
しかし、時すでに遅し。既に世界的にSNSはFacebookが圧倒的シェアを握っており、そこに友達が登録していなければ、使うインセンティブがない。こうして、Google+はほとんど使われることなく数年でひっそりとサービスを停止した。
メールサービスでは同じく圧倒的だったGmailをテコに力技でSNSでも覇権を狙ったGoogle。「ユーザーがコンテンツを投稿することによって事後的に方向性が定まる」というSNSの特性を無視した、「脆弱なシナリオ」に基づく展開であったといえる。
��Google＋
SNSはユーザーがコンテンツを投稿することによって事後的に方向性が定まる。
企業の狙いや都合よりも、ユーザーが楽しめる場を手探りでつくっていく過程が重要。
��東芝 HD DVD
脆弱なシナリオに依存し、代替シナリオもなかった。
・低価格だけではハードウェア市場を席捲できなかった。想像以上にBlu-ray陣営の技術革新のスピードが速く、機能的に劣後した。
・ハードウェアが売れてもソフト販売につながらなかった。
2022年12月22日
攻めた失敗
世界「倒産」図鑑の続編。前著は世界の倒産した会社の要因分析だったが、こちらは「失敗製品」を分析している。取り上げられているのは、内外の20例なのだが、海外の例は製品が失敗した後も会社はそこから学んでさらに発展している例が多いのに対し、日本企業はそこから学ばず、あるいは致命傷になって、会社が衰退するケースが多い。
その第一の理由は、米国企業（本書で取り上げられているのはサムスン自動車を除いて全て米国企業）が失敗を認めて、撤退も早いのに対し、日本企業は面子に拘るためか、最後まであがく。旗色悪いと見るや、起死回生を狙って、さらに突っ込み傷を広げる。
例えば、ケース�，傍鵑欧蕕譴討い襪里�、Amazonファイアフォン。
2014年7月に、「1億を超えるアイテムを、いつでもどこでも1秒で認識できる」（ジェフ・ベゾス）と鳴り物入りで登場したが、販売不振で2ヶ月後には$199→$.99へと1/200へ値段を下げている！米国で年間$99のAmazon Prime会員が無料で付いてだから、赤字覚悟の処分価格。
2014/9 $199→$.99！（Amazon Prime $99付）2014/10 3Qファイアフォン関連損失$170M 在庫＄83M2015/9 販売中止
発売から3か月後の10月には、ファイアフォン関連で200億円以上の損失を計上し、事実上、ここで失敗を認めた。その後、積極的な販売はせず、発売から1年後にひっそりと販売中止になった。
・ユーザー視点と自社視点という「立場のバランス」が重要・同時に、現在視点と未来視点という「時点のバランス」も求められる・これらのバランスの取り方は、果敢にチャレンジしたものだけが体得できる
2022年12月21日
「脆弱シナリオ」型
東芝はタイミングも相手も悪かった。
Westinghouse「ピッツバーグ・モンロー主義」自社が持つPWRの技術に絶対的な自信を持ち、他の意見を寄せ付けない。
ベアリングス銀行「脆弱シナリオ」型
「ヨーロッパには6つの強国がある。イギリス、フランス、プロイセン、オーストリア、ロシア、そしてベアリング・ブラザーズ」（フランス首相が、ナポレオン戦争などで必要となる「戦時公債」の最大の引受人だったベアリングを称して）
エンロン6年連続「全米で最も革新的な企業」（Fortune誌）
Ｄ・Ｒ・グレッシー「不正のトライアングル」�”埓気鬚笋蹐Δ隼廚┐个任�てしまうという「機会」が存在する��不正をすれば現状の問題解決につながるという「動機」が存在する�Ｉ埓気魄�いことだと考えない「正当化」すべき理由が存在する
2022年12月20日
2022年12月19日
過去の亡霊
企業倒産を分析した本というと、私は出るたびに読んでいる。「成功はアート、失敗はサイエンス」と信じているからなのだが、本書は、日本企業に限らず、海外企業も対象になっている。著者はグロービスの元副研究科長（2015-2018）であったということなので、HBSで出ているケース教材が基になっているのかもしれない。
2章に分かれていて、最初に出てくるのが「過去の亡霊」型。「成功体験が強すぎて、そこから抜け出せずに変わる決断ができなく」て潰れるタイプだ。
一例を挙げると、英MGローバー。2000年に会社設立し、2005年に倒産してしまった。とはいえ、100年の歴史がある、イギリス自動車産業界の長い歴史を引き継いだ会社の倒産劇で、度重なる国営化や売却を経て、最終的には、「非効率体質を改善できずに倒産」した。
1988民営化Rover→British Aerospaceに買収される1989ホンダ資本参加→業績改善1994過去最高益→BMWに売却
ホンダが資本参加した時、「ローバーの従業員は昼食時にビールを飲んで、4時半には退社」するような状況で、ホンダは随分苦労して立て直していく。5年掛かって過去最高の業績が予想される中、突然、BMWに売却される。
親会社のBritish Aerospaceにしてみれば、ホンダにマイノリティ出資してもらい会社再建を果たしたうえでBMWに高値で売却したのだから、してやったり。馬鹿を見たのはホンダで、人材と技術を惜しげもなく投入して建て直し、これからという時に、漁夫の利をさらわれた格好。契約の不備があったのではないかと思う。
こうしてBMW子会社となったローバーだが、そこから経営は悪化する。BMWの買収から5年経った1999年の年間損失額は1200億円に達し、翌年、BMWはローバーを売却。MINIのブランドだけがBMWに残り、ランドローバーはフォードに、残されたMGとRoverだけで投資ファンド傘下に入り新設されたのがMGローバーというわけ。この時の売却価格は£10（1500円）であった。
倒産した2005年の一人当たり生産台数は20台であったという。量産型自動車メーカーの採算ラインは一人当たり生産台数40台といわれており、そのわずか半分。戦後、イギリスの製造業が競争力を失う中で国営化され、「親方ユニオンジャック」で生産性の改善が進まなかった。BMCミニのような画期的なクルマも生産されたものの、設計はよくても、工場の状態がひどく、生産品質も悪かった。
サッチャー政権下の民営化政策で民営化となり、資本参加したホンダの努力で立ち直りかけていたのに、残念だ。
親会社のBritish Aerospaceにしてみれば、ホンダにマイノリティ出資してもらい会社再建を果たしたうえでBMWに高値で売却したのだから、してやったり。馬鹿を見たのはホンダで、人材と技術を惜しげもなく投入して建て直し、これからという時に、漁夫の利をさらわれた格好。契約の不備があったのではないかと思う。
こうしてBMW子会社となったローバーだが、そこから経営は悪化する。BMWの買収から5年経った1999年の年間損失額は1200億円に達し、翌年、BMWはローバーを売却。MINIのブランドだけがBMWに残り、ランドローバーはフォードに、残されたMGとRoverだけで投資ファンド傘下に入り新設されたのがMGローバーというわけ。この時の売却価格は£10（1500円）であった。
倒産した2005年の一人当たり生産台数は20台であったという。量産型自動車メーカーの採算ラインは一人当たり生産台数40台といわれており、そのわずか半分。戦後、イギリスの製造業が競争力を失う中で国営化され、「親方ユニオンジャック」で生産性の改善が進まなかった。BMCミニのような画期的なクルマも生産されたものの、設計はよくても、工場の状態がひどく、生産品質も悪かった。
サッチャー政権下の民営化政策で民営化となり、資本参加したホンダの努力で立ち直りかけていたのに、残念だ。
はじめに：「売上増は七難隠す」売上が上がっている時には、失敗の要因につながるものがあったとしても全て水面下に隠れてしまう。しかし、やがてはその課題は水面下で肥大化し、企業が失敗した段階で初めて水面上に顕在化してくる。だからこそ、自分たちが成功や成長を遂げている時ほど、先人たちの失敗事例を通じて、その「水面下に潜む課題」というものにあらかじめ思いを馳せる必要がある。
2022年12月18日
生命の根源物質
昨年、SBIの株主向け会社説明会で配られた本。SBIはALAに15年ほど前から投資。
2007年 SBIバイオテック（製薬）
2008年 SBIファーマ（製薬）
2012年 SBI ALAプロモ（販売会社）
SBIバイオテックは2017年上場準備をしていたが、黒字転換のめどが立たず未だに上場できていない。同社の米子会社クォークも臨床試験で有効性が証明できず、同社への貸倒損失151億円と同社株式131億円の合わせて282億円を減損処理。
SBIはもともとITと金融に強い会社だが、北尾社長の趣味
（もともと医学部志望で慶応医学部を受けたが失敗→慶応経済）でバイオに参入。手痛い損失となった。まだ続けるのだろうか？＊生命の根源物質
動物では、ヘモグロビンの構成要素→酸素を運ぶ
植物では、Mgと結びついて葉緑素の構成要素→光合成
大量生産する方法がなかった。
14：ALA（５・アミノレブリン酸）
「コスモ石油には宝物がある」コスモ石油 岡部敬一郎会長
中央研究所 田中徹→SBIファーマ（元）副社長
15：農業用肥料ペンタキープ
コスモALA→誠和
88：コスモ石油中央研究所 田中徹
本来は太陽の光が当たらないと増殖できない光合成細菌の遺伝子を進化させる方法でその変異株を作り出し、光のない暗闇の発酵タンクの中で大量培養することに成功。
134：「健康寿命」と「平均寿命」10年の差
この差は、医療が進んでも一向に縮まる気配がない。
135：幸福寿命（伊東裕『幸福寿命』2018）
世界幸福度ランキング2020で日本は62位。
幸福は「あいだ」に生まれる。お互い同士を慮ることのできる「あいだ」。自分の楽しい過去の思い出とこれから始まるワクワクする未来の「あいだ」。
2022年12月17日
はじめて起業するあなたへ
最終章。本書のまとめになっている。
書かれていることはなかなか難しい。スピードが求められるが拙速ではいけないし、根気よくやらなければならないが、ダメなら一刻も早くピボットしなければならない。スタートアップに限らず、優れた経営者とはその見極めが正しくできる人だ。264：はじめて起業するあなたへ�，箸砲�くやってみよう行動に偏りがあると、探索を切り捨て、拡大に早急に移行したくなる。探索段階は非常に重要。満たされていない顧客ニーズを特定し、それを満たすための案を検討するために、必要な調査を行う。この調査を省略してしまうと、早々に欠陥のあるソリューションに縛られ、フライングの罠に落ちてしまう。�∈�気よく続けよう粘り強さが頑固さに変ってしまうと、フライングを見極めることができなくなってしまう。解決策がうまくいっていないことが明らかになっても、ピボットに消極的になってしまう。ピボットを遅らせると、貴重な資金を浪費し、ランウェイが少なくなってしまう。��情熱を持とう情熱が自信過剰にならないように。重要な問題に対する正しい解決策を既に見つけており、事前の調査は必要ないという確信。スタートを誤るリスク。�だ�長しよう常に成長しなければならないというプレッシャーから、顧客発見のための調査を抑制し、プロダクトの発売を早まってしまう。急成長はチームメンバーやパートナーに大きな負担を強いる。�ゥ侫�ーカスしようリソースが限られており、最も重要なことにフォーカスすべき。ターゲットとなる顧客を見つけ、彼らを魅了するプロダクトを作る。その優先順位を下げるものは全て問題。サイドプロジェクトは中止。�Ε好�ラッピーになろう質素倹約、少ないリソースでやりくりする。チームに重要なスキルが欠けているために、一貫して価値を提供できないとしたら、スキルを持った新しい従業員を雇うかどうかの決断が必要。
ただ、経営者はその判断を一人でする必要はない。重要な選択をする際にはキチンと文章化したほうがいい。特に、日本人は人間関係を優先させるので、「誰が言ったか」の方が発言内容より重要になることがある。これでは正しい判断ができないので、ファシリテーターを入れて議論するなり、文章にして客観化したほうがいい。268：スローシンキング（ダニエル・カーネマン）重要な選択をする際には、選択肢とトレードオフの分析を文章化し、チームメンバーや投資家と共有する。
2022年12月16日
失敗の仕方
ジャフコの新入社員研修の講師の一人が、バブル崩壊後倒産した北海道の建設会社カブトデコムの佐藤茂社長（当時）。ここには北海道拓殖銀行が貸し込んでいて、これが拓銀破綻の最大要因になった。
カブトデコムはジャフコと北海道銀行のJVであった北海道ジャフコの投資先。その関係で佐藤社長が新入社員研修に呼ばれていたのだが、今でも覚えているのがこの発言。
「私は事業のため多額の会社借入金の個人保証をしている。万が一の場合は自分の生命保険で借金を返せるようにあちこちの生命保険に入っている」
新入社員の私は、「経営者というのはそれだけの覚悟がいるのか
」と感心したものだが、上場すれば個人保証は外れるので、そのために上場したいという経営者もいる。実際のところは、上場できるだけのリスク管理体制が取れれば、銀行にとって大した個人資産もない代表取締役の個人保証など形式以上の意味はない。なので、実際は上場していなくても、上場企業並みの経営体制であることを認めてもらえれば、個人保証は外してもらえる。カブトデコムが解散したのは2013年と拓銀が破綻してから15年も後というのを、今回調べて初めて知った。負債総額5061億円。日本の営業は停止していたが、その間、残った米国子会社から親会社に配当して、それを細々と返済原資に充てていたという。
230：事業停止の判断はなぜ難しいのか？
�ゞ�い感情が伴う
起業家のアイデンティティはベンチャー企業に集約されている。
��遅すぎた
関係者にとっては不利益となる「空回り」
254：キューブラー＝ロス「死の受容の5つのプロセス」
�“歿�
��怒り（関係者に当たり散らす）
��取引（失ったものを説明するストーリーを構築することで、コントロール）
�ね渺機兵�尊心が低下）
�ゼ�容（私は大丈夫）
261：「私にとって、VCはあまりにも制約が大きいのです。大成功を収めるか（まれなケース）、崩壊するか（はるかに一般的なケース）という二者択一の結果を迫られます。私は、ゆっくりと利益を上げながら成長していく道を選ぶ自由が欲しい」（MOZランド・フィシュキン）
カブトデコムの名残は今でも北海道に残っていて、一番有名なのが、かつてサミットも開かれたウィンザーホテル洞爺。93年にオープンしたときは高級会員制リゾート「エイペックス洞爺」だった。
カブトデコムの名残は今でも北海道に残っていて、一番有名なのが、かつてサミットも開かれたウィンザーホテル洞爺。93年にオープンしたときは高級会員制リゾート「エイペックス洞爺」だった。
2022年12月15日
日本人で初めてのピュリッツァー賞
舞台写真のように鮮明で、劇的な浅沼稲次郎刺殺の瞬間を捉えた写真。それで日本人で初めてのピュリッツァー賞を取ったのが毎日新聞のカメラマン長尾靖。
面白いのは、長尾カメラマンは仕事熱心なタイプではなく、言われただけ、最小限の仕事しかしないので社内で有名だったという。刺殺は、会場向かって左側に陣取った愛国党員が舞台に駆け上がってビラをまいて取り押さえられた直後の隙をついて右側から舞台に上った二矢によって行われた。
そうして、伝説のカメラマンになった長尾靖。その後どんな人生を歩んだのか気になった。この成功体験でやる気になり、独立した？あるいは、単なるラッキーと覚めたまま定年まで勤め上げたのか。275：日本人で初めてのピュリッツァー賞仕事熱心で小回りのきくカメラマンは左側の通路に出て、激しい野次を飛ばしビラをまいた愛国党を撮っていた。だから、その瞬間を完璧なシャッターチャンスで捉えることができたカメラマンは、ずぼらを決め込んでいた長尾ら数人しかいなかった。しかも、彼には、当時は毎日新聞にしかなかった高性能の写真機があった。長尾の撮った写真のネガナンバーは12、それが最後の1枚だった。
調べてみると・・・そのどちらでもなかった。独立したかといえば、独立した。事件が起こったのは1960年10月12日。ピュリッツァー賞を取ったのが翌年。そして、1962年1月に毎日新聞を退職している。それで、熱心に仕事をしたのかというとそうでもないようで、それ以降、受賞歴もないし、仕事内容も「外国通信社の記事翻訳を手伝ったり、航空会社の広報誌の編集に参加したり」といった細かい仕事だったという。
生涯独身で、天涯孤独。2009年5月自宅アパートで孤独死しているのが友人によって発見された。長尾にしてみれば、平穏無事に勤めるつもりが、ピュリッツァー賞を取ったことでそれが困難になり、「しまった
」という事だったのかもしれない。257：俺だけは平気だという、過信
35年に入ってからも九州で右翼に卵をぶつけられる。
5月には衆議院前でアンモニア→結膜炎
304：叔父、村上信彦
「晋平氏は意見の相違を語り合うことを好まない。じぶんの固執した意見をもち、その境界線から一歩も他人を入れようとしない。と同時に他人の意見にも入り込もうとしない。我は我、人は人なりである。→二矢の問答無用型の性格形成
308：どんなことがあっても、自衛隊を辞めまい
自分の生き方の根幹をなしていた個人主義に徹すれば、あくまでも子供は子供であり親は親。
317：事件の翌日、九段会館で開かれた社会党臨時党大会（予定通り）
江田三郎書記長 それ以降の党の混乱と分裂の火元たる構造改革論。
325：取調べに当たった公安二課の安蔵警部と中村警部補は、17歳の少年のその冷静さに内心では舌を巻いていた。はじめは右翼特有の虚勢に違いないと思っていた。しかし、二矢の落ち着いた態度はついに最後まで変わることがなかった。
331：捜査本部は容易に共犯説を捨て切れなかった
背後関係を糾明せよという強い世論が、捜査当局に共犯を割り出さねばという十字架を背負わせた。
Harry Pot - Nationaal Archief, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=33358439による
Harry Pot - Nationaal Archief, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=33358439による
2022年12月14日
「こういう善人だから、浅沼は始末に悪い」
山口二矢がその殺人リストに浅沼稲次郎を加えたのは、師事していた赤尾敏の影響。赤尾は浅沼と不思議な因縁がある。年齢は一歳違いで、17歳の時、結核療養のため浅沼の郷里である三宅島に渡っている。そこで、浅沼の両親とも親しく付き合っていた。
赤尾敏といえば、何十年にもわたって毎日行われた数寄屋橋での演説。私も、社会人になって、あの辺りを通り、演説に遭遇することが何度かあった。「あの選挙のたびに出てくる人だ」（赤尾は衆院選、都知事選の度に立候補していたが、戦時中の翼賛選挙以外はすべて落選）といいう認識はあったが、どんな人かは本書を読むまでよく知らなかった。
まず、青年期の赤尾は社会主義者だった。関東大震災の際に軍部によって浅沼がリンチを受けているとき、赤尾も不敬罪で千葉刑務所にいた。赤尾は、左翼仲間の裏切りに幻滅し、獄中で転向する。しかし、それは「天皇制社会主義」とでもいうべきもので、これは浅沼の政治信条とほぼ同じ。
しかし、赤尾は当時から、反共反ソで親英米。翼賛選挙で全国第5位で当選するものの、戦争反対するので翼賛政治会から、中野正剛、鳩山一郎らとともに除名されている。その赤尾が最も恐れたのが浅沼稲次郎だった。
197：「こういう善人だから、浅沼は始末に悪い」赤尾のこの考え方を誰よりも純粋に、しかも過激に受け継いだのが、（中略）山口二矢。
132：大正12年関東大震災での社会主義者弾圧
戸山が原騎兵連隊の営倉から市ヶ谷監獄へとたらい回し。便の始末もできなくなるほどのリンチを受け、浅沼は一ヶ月後にようやく釈放された。釈放された浅沼を出迎えたのは友人でも家族でもなく早稲田警察の特高だった。
135：大正14年日本初の無産政党である農民労働党
書記長には27歳の浅沼が就任
「結党途上のゴタゴタを知るものは、皆しり込みして敢えて責任をとろうというものがない。そこで、窮余の策として浅沼君に貧乏くじを引かせた」（河野密）
143：父にかわる圧倒的存在
東京帝大出身の法学士は無試験で弁護士になることができた。足尾争議で逮捕された浅沼の弁護士をつとめたのも、東京帝大法学部出身の麻生（久）だった。
144：田所輝明『無産党十字街』社民、労農の党首である安部磯雄、大山郁夫と麻生を比較
「安部は牧師、大山は教師、麻生は親分。安部に敬服し、大山に感激し、麻生に惚れる。安部は信者と語り、大山はファンと踊り、麻生は子分と泣く」
148：麻生久
世を覆う愛国的風潮を逆手にとって、彼なりの革命を夢見る。
「陸軍パンフレット」承認←資本主義否定
158：戦前から戦後にかけての二度の「発狂」という地獄
「私が一番悩んだのは、戦争中は戦争に反対であったが、いやおうなしに、戦争の中に引き込まれた、その矛盾に悩みました。それから戦争が済んでですね、何といっても軍国的な生活を送ってきた者が、全然新しい社会に立つんですから、この煩悶がまた、人間的にはずいぶんありましたね。しかし、人間としてですね、悩みを持ちつつ生きるということは尊いものだと私は思っています。悩みがない人間というのは、ウソなんじゃないでしょうか。生き方にウソがあるんじゃないでしょうか」（近藤日出造との座談）
167：明治人として、天皇への敬愛の念を、社会主義者となったあとも捨てていなかった。彼の内部で、天皇と社会主義は少しも矛盾しなかったのだ。
195：日本にとって、社会党は共産党以上に危険であり、浅沼は野坂参三や宮本顕治より危険だ、というのが赤尾の信念だった。共産党も社会党もどちらも悪だ。しかし、共産党に対しては日本人の心情の奥に眠る根強いアレルギーがあるからむしろ安心できるが、社会党に対してはその本能的な拒絶の意識が欠けているだけ危ないのだ。しかも、社会党の顔ともいうべき浅沼は、人物が好く大衆に愛される特性を持っている。
2022年12月13日
雄弁会と相撲部
日経新聞「私の履歴書」にその半生を執筆した浅沼稲次郎（当時、社会党委員長）。そこに書かなかったことが３つあったらしい。
「庶子」というのは、父が認知した私生児。法律上の婚姻関係にない男女間に生まれるのが私生児だが、戦前の旧民法で、父が認知するとその夫婦の立場から「庶子」と呼ばれた。浅沼稲次郎は正室ではない母から生まれた。110：「私の履歴書」に浅沼稲次郎が書かなかったこと� 崕郢辧廚任△辰燭箸いΔ海函↓∨秬元廖↓Ｆ鹽戮砲錣燭襦嵌�狂」
当時あこがれの陸軍士官学校と海軍兵学校、両方とも落とされた浅沼は早稲田に進学する。そうした生い立ちもあったためか、政治家志望の学生が集まる雄弁会に入部する。117：浅沼が陸士と海兵を落とされつづけた理由浅沼→河野一郎（早稲田同窓生）「陸軍士官学校には合格したようで、家庭まで調査に来たんだが、庶子であるために入れなかったんだ」
浅沼は抜群の体格で、相撲部にも入部した。これが後にトラブルのもとになるのだが、その事件が浅沼を学生運動のヒーローにする。119：雄弁会は早稲田の中でも最も政治的に尖鋭な学生が集まる場所だった彼らの発する熱気に、浅沼もまた巻き込まれていった。
123：浅沼は、早稲田に入学した時、雄弁会に入会すると共に、相撲部にも入部した。あるいはボートを漕ぎ、各科対抗レースに出場しては優勝し、大隈重信に「いい体だなあ」と肩を叩かれ、讃められたりした。これだけなら、大学によくいる運動部系の右派学生と何ら変わるところがない。いや、風体からいっても、右派学生そのものだった。（中略）やがて、浅沼を学生運動のヒーローにすることになる学研事件で、学内の右派学生に最もひどいリンチを受けたのが彼だったのは「相撲部に属していながら赤の手先になりやがって」という反感を買ったためである。
2022年12月12日
17歳のテロリスト
この事件で驚くのは、浅沼稲次郎を刺殺した犯人が17歳の大学生であること。
20：二矢は16歳になって間もなく、わずかな身の回りの品を持って家を出た。「愛国運動に挺身する」といい、浅草にある大日本愛国党の本部で寝泊まりするようになった。やがて高校も中退し、右翼の政治活動に没頭していった。愛国党の党員として17歳の誕生日を迎え、家を出て1年が過ぎた。それがどういう風の吹きまわしか、一ヶ月ほど前から家に戻り、大学に入って通学するようになっていた。
今や大学生が政治を語ることもほとんどないし、ましてや、高校生が政治活動に身を投じるために高校を中退するということなど、考えられないだろう。しかし、日本にもそうした時代が確かにあったということ。
25：もしその新聞が読売でなかったらという仮定が意味を持つのは、まさにここにおいてである。なぜなら、毎日新聞には「今日の会議」といった欄はなく、朝日新聞の「きょうの予定」欄には、他のすべての会合が載っているにもかかわらず、ただひとつ「三党首演説会」だけは載っていなかったからだ。
54：父親
晋平はしつけということに関してひとつの強固な信念を持っていた。自由主義、あるいは個人主義を自分は好む。だが、それらの主義の意味するところは、自分の自由を尊重してもらうと同時に、他人の自由をも尊重するということだ。他人を不快にしないよう、少なくとも礼儀作法を守るということは自由主義、個人主義の第一歩であるはずだ。
60：昭和30年代前半「政治の季節」
柏中学（札幌）社会科の教師がソ連を礼賛。デモ参加のために授業放棄。
62：父親は自衛隊員（広報）
自衛隊を批判する人、それを二矢は左翼とみなしたが、彼らは強者だった。自分が少しも傷つかぬ位置から自衛隊を否定し、父親を否定し、だから一家を否定していると思えた。
104：6人の暗殺リスト
日教組委員長小林武、共産党議長野坂参三、社会党委員長浅沼稲次郎、自民党容共派河野一郎、同じく石橋湛山、社会党左派松本治一郎、三笠宮崇仁（反省を求める）。
2022年12月11日
2022年12月10日
ノンフィクションの金字塔
沢木耕太郎の傑作ノンフィクションと言われている本作を、今年の安倍元首相暗殺事件で思いだし、読もうと思った。単行本出版が1978年。今でもこうして文庫で版を重ねている。沢木耕太郎にとっては、これが初の長編だったらしい。
読んでみて、なるほど、圧倒される取材量と抜群の構成。殺人者とその犠牲者である主人公と準主人公の二人が立体的に描き出され、手に触れられそうに感じる。
ロングセラーの証として、この本には「あとがき」が3つもある。最初は単行本出版時、二つ目が文庫版出版時、そして三つめが私が読んだ新装版出版時だ。
あとがきI（1978
『テロルの決算』は、私にとって初めての長編である。そしてこれは、偶然のことからノンフィクションのライターとなった私が二十代の7年間に続けてきた悪戦苦闘の、ひとつの「決算」になってほしいという願望を抱きつつ取り組んできた仕事でもあった。
あとがき�供�1982）
浅沼未亡人の1970年中国訪問（すでに遠くに追いやられてしまった浅沼の死を、中国では10年経っても忘れないでいてくれた）
浅沼稲次郎の「中国と日本は、アメリカ帝国主義についておたがいは共同の敵とみなしてたたかわなければならないと思います」という言葉を、ほとんど無意味なものと化す計画を押し進めながら、浅沼その人を顕彰する集会を開く。そこに中国の冷徹さを見出すか、浅沼未亡人のように篤実さを見出すかは、その人によって異なるだろう。しかし、少なくともあの時の浅沼の行為は、だから結局、あの時の山口二矢の行為は、国際政治の前にはまったく無効だったとだけはいえる。
あとがき�掘�2008）
山口二矢は、日比谷公会堂の壇上に駆け上がり、持っていた刀で浅沼稲次郎を刺し殺した。それは、彼が望んだことを完璧に具現化した瞬間だった。山口二矢は、17歳のそのとき、完璧な瞬間を味わい、完璧な時間を生きた。
2022年12月09日
華僑の奥義
副題が、「一生お金に困らない儲けと成功の法則」で、普段ならこれを見ただけで手に取らないのだが、FBで知り合いがこの著者のことを褒めていたので読んでみる。
まず面白かったのは、「はじめに」で行われる華僑の定義。
本国では通用しない、もしくはなんらかの事情があって祖国を後にした、エリートからは程遠い人たち。帰化したり、永住権を取得したとしても、外国人として扱われる機会が多い彼らは、「勝つ」ことよりも「負けない」ことを重視する。
華僑とは、祖国を離れて海外で暮らす人々。多くは、戦前戦後の混乱期に、最初は大英帝国の労働力として、のちには内戦による貧苦を逃れて、最後は大陸の共産化から逃れるために移住した。その意味では、遠い昔に祖国を失って世界に散らばったユダヤ人や、当初は宗教的自由を求めて、後には経済的苦難から逃れるために、そして人種差別から逃れるために米国に向かった移民たちとも共通する。
移民たちは祖先から受け継げる資産が少ないので、その分勤勉で、上昇志向も強い。そこは華僑と共通するのではないか。
30：部下がおごるのは当たり前
貴重な話や経験にお金を払う。
38：借入は信用の証
お金を借りている人は、信用度が高い。
48：できる人に貢献して一緒に上がる
華僑流の賢い選択とは、できる人に貢献していく事。
62：ライバルには借りを作る
借りを大きく返して恩を売る。
64：活躍している人は操られている
脚光を浴びるのは、常に使われている人。
83：ルールを知らないとバカをみる
資本効率を上げることだけを考える。
2022年12月08日
カジノ産業
一時期盛り上がった「カジノ解禁」。
議論されていたのは、
・国内にカジノがないから、日本人が海外カジノに行ってお金を使う
・インバウンドを増やす中で、カジノもあれば、さらに経済効果が高まる
だったと思う。
しかし、事はそうは簡単ではないらしい。あれだけ勉強料を払った井川氏が言うのだから説得力がある。
290：先進国でカジノがないのは日本くらい経済効果は簡単には期待できない。・VIPがカジノの利益の大半・日本にカジノが出来ても、有名人は顔を知られてしまうから、やはり海外カジノへ・億単位の負けを外国人観光客から取り立てるノウハウがない・もし中国人の富裕層が日本のカジノで負ければ、そのままカネを返さず二度と来ない・LVやSG、マカオのカジノにはこのような不良債権を確実に回収するノウハウがある
271：2013/10喜連川社会復帰促進センター
刑務所生活は寒さと暑さとの戦い。
272：民間刑務所
食事のように公権力を行使しない部分の仕事を民間が請け負い。
→エームサービス（三井物産子会社）が食事
「エームサービスの社長は、喜連川で自分の会社が作っている食事を1ヶ月間毎日食べてみろ」
274：JASDAQプロデュースCFOだったU氏と一緒に
野村證券からプロデュースに引き抜かれてCFOを務め、会社の赤字を粉飾するよう社長から指示された。金融商品取引法違反の粉飾決算で社長ともども逮捕され、実刑判決。
288：日本のギャンブル依存疑いは536万人、成人の5%で「世界で高水準」
GSと同じくらいのパチンコ店。
289：控除率
宝くじ 55%
競馬 25%
パチンコ10~20%
カジノ 平均3%（ルーレット4% バカラ2.3%）
2022年12月07日
灰燼
2011年11月、事件の発覚で会長を辞任した時までに返済したのが106億円中、50億円。ここまでは自身の持つ自社株を、ファミリー企業に売却して捻出した。それでも足りない。当時相談役の父親が、会社に対して残額の弁済を申し立て、結局、井川家は大王製紙並びに関係会社のすべての株式を北越紀州製紙に売却することで、一審判決を前にしてすべての借金を会社に返済する。
こうして、創業家である井川家は完全に大王製紙の経営から離れることになる。だが、話はこれで終わらない。井川家の持ち株20%手にして筆頭株主になった北越紀州製紙（現・北越コーポレーション）は、当然、大王製紙との経営統合を目指すのだが、これに後を継いだ佐光社長が反対する。
出版不況に職場のペーパーレスで紙の需要は減っている。製紙には大量の熱と水が必要で、エネルギー価格の上昇でどこも収益を圧迫されている。経営統合による規模の経済追求は合理的だが、佐光社長は自分の帝国を作りたかったのかもしれない。
しかし、それも、今年、佐光正義会長再任案を総会直前に会社が撤回することで終わりを告げる。きっかけは、本書の続編『溶ける 再び』での事件後の経緯の暴露だった。
「佐光とは共死（注:一緒に死ぬの意味だろう）しても構わない」（井川高雄2019没）
230：東京地裁
東京の本丸で出世コースを着実に歩むエリート裁判官は、世間の目から見て極力無難な判決を出す。私のように”ボンボンの放蕩”が生んだ罪となれば、世の中の人々は大きな反感を抱く。たとえ法律上の理屈に合わなくとも、世論の反感を買うようなリスクを冒すことなどしないわけだ。
247：「抑鬱状態」「アルコール依存症」「ギャンブル依存症」
企業の経営者として常に強いプレッシャーにさらされながら、物事を突き詰めて考える。絶対に失敗してはならないという強迫観念にとらわれ、いつも緊張にさらされている。仕事が終われば毎晩のように六本木や西麻布の街で酒を飲み、カジノでは身を滅ぼすところまでギャンブルにのめりこんでしまう。こうした気質は、精神科医の目から見ると「病気」そのものだという。
248：アドレナリンとドーパミンが噴出
バカラに興じていると食欲は消え失せ、丸1日半何も食事を口にしなくても腹が減らない。
255：「客が勝って帰るのは怖くない。客にはいくらでも勝ってほしい。負けた客がカジノに来なくなるのが一番怖い」（カジノ王スタンレー・ホー）
256：2012年6月26日、井川家は大王製紙並びに関係会社のすべての株式を北越紀州製紙に売却→一審判決を前にしてすべての借金を返済
2022年12月06日
大王製紙のガバナンス
以前、『東大から刑務所へ』で読んだように、大王製紙の連結子会社7社からの借入は、「隠蔽でも粉飾でもなく、決算書に記載されていた」
監査法人のトーマツも2011年3月決算で2回、井川社長に借入の目的と返済予定について確認している。監査の目的は、会社財務状況が正しく記載された決算書であることを確認することなので、トーマツの仕事としてはこれでいい。できるなら、巨額の借入を本当に返せるのか、そこに疑問があれば、引当金を計上するように会社に意見すべきだったろうが、3月末時点での借り入れは23億円程度で、井川氏の個人資産（といっても大半が自社株なので換金は難しい）に見合っていた。
それ以外に、井川氏のファミリー企業に対する貸付が17億円で、実際はこれも井川氏が引き出していた。残り66億円は決算期末を過ぎてから、カジノで負けを取り返そうとしてかえって損失に拍車がかかった結果だ。
巨額借入が発覚したのは、株主総会も終わった、9月7日の社内メールの告発。最大の問題は、大王製紙には「常勤監査役が2名、そのほかに弁護士2名、元国家公務員（警察OB）１名による非常勤の社外監査役」という一部上場企業にふさわしい役員陣容でありながら、それ以前に誰も問題にしなかったことだろう。なにしろ、上場企業で取締役貸付が行われること自体異例で、まず見たことがない。しかも、23億円と巨額だったのだ。
この事件で、大王製紙に社外取締役が居なかったことが問題となり、その後、独立社外取締役の就任が上場企業では必須となる。
192：子会社7社から資金調達
2011年3月期、大王製紙の連結決算は182億円3400万円という巨額の赤字を記録した。この赤字の責任を取る形で、私は11年6月に社長を辞任して会長に退いている。
197：会長辞任の時点で、合計47億5000万円は返済していた。残りの59億3000万円は未返済のままだった。
202：11年5月にトーマツの担当者と面談
9月末までにすべての借金を返済すると回答。
212：東京拘置所
「後ろを向いてパンツを脱いで前かがみになり、お尻を広げて見せてください」
言われたとおりにしたものの、幸いにして棒まで突っ込んで身体検査がなされることはなかった。
218：取調べの可視化
協力しないことを決める。取り調べの中では、これまでつきあってきた経営者や政治家、芸能人の名前までもが否応なく飛び出す。私の特別背任事件と何の関係もない人たちの名前が、記録として残されてしまうのは不本意だ。
2022年12月05日
マカオ
マカオには行ったことがあるが、香港から日帰りで、世界遺産の歴史地区を見ておしまい。カジノに興味がないので、足を踏み入れなかった。
そのマカオに、毎週末飛行機で通っていたのが大王製紙の井川社長(当時）。井川社長はVIP待遇で、ジャンケットと呼ばれるカジノのお世話係が、飛行機代も滞在費も全部見てくれる。カジノにとっては、そこまでしても来てほしい上客だった。
そのマカオに、毎週末
飛行機で通っていたのが大王製紙の井川社長(当時）。井川社長はVIP待遇で、ジャンケットと呼ばれるカジノのお世話係が、飛行機代も滞在費も全部見てくれる。カジノにとっては、そこまでしても来てほしい上客だった。�κ�熱
163：家族麻雀
小学生時代に麻雀のおもしろさと難しさを覚えた私は、筑駒に進むと同級生と一緒に麻雀をやるようになった。（中略）1000点10円の緩いレートで、わずかな小遣いをかけて麻雀を楽しんでいた。
170：1996オーストラリアでの初カジノ
当時の私にとって、数日間で2000万円もの大金を手にしたことは、驚きと興奮以外の何物でもなかった。この大きすぎたビギナーズ・ラックが、私をカジノのおそるべき底なし沼へ引きずり込んでいくことになる。
182：マカオ
2011年4月以降、私はほとんど毎週のようにマカオへ出かけてバカラをやり続けることになる。金曜日の夕方に仕事を終えると、その足で羽田空港に向かう。金曜日の深夜にはマカオ入りし、ほとんど眠らずに勝負をし続ける。
2022年12月04日
伊予三島
井川氏は、生まれ育った伊予三島が嫌いだったという。確かに、田舎町の最大企業の御曹司ということになれば、やっかみも半端ないだろう。会えばおべっかを使われるが、裏では陰口をたたかれる。暮らしにくかったのは想像に難くない。
1964年生まれというから私と同世代。そして、私の育った香川県西部（西讚）と、大王製紙が本社を置き、井川氏が小学校まで育った伊予三島（現・四国中央市）とは40km程なので、車ですぐ。ここは江戸時代から続く製紙の町で、戦後洋紙生産が中心になってからは、パルプの匂いで街全体が臭かった。
��追憶
37：1200坪の屋敷
伊予三島は手すき和紙の産地として有名だった。大王製紙が設立されたころ、地元には数百もの小さな製紙会社があったと聞く。書道で使う藩士や奉書紙を1枚ずつ手すきで作ったり、大正年間に導入され始めた小さな機械を使って量産していく。
58：東大入学祝にBMW635
当時の価格で1000万円以上。
�し�臨
111：大王製紙の経営者
日本人が使いがちな「徹底的に」「とことん」といった情緒的な言葉も要注意だった。このような単語が飛び出す会議では、私は容赦なく発言者を叱責した。
2022年12月03日
井川意高の懺悔録
単行本は2013年、懲役4年の実刑判決が確定して出版。2011年の11月に会社法違反（特別背任）で東京地検特捜部に逮捕されてから、それまでの間に執筆していたらしい。もちろん、それを持ちかけたのは、以前から親交のあった幻冬舎の見城社長だろう。
エリエールの家庭用紙ブランドで知られているものの、会社自体が話題になることは少なかった。それが、マスコミに連日取り上げられたのは、10年前のこの背任事件。創業家の3代目である井川意高氏が海外のカジノで100億円以上「溶かして」しまい、その代金を自らが代表を務める複数のグループ会社から「借りて」いた。
�ゞ妨�
14：大王製紙社長
10年5月以来、私は大王製紙社長として、グループ企業から巨額の資金を借り入れる裏技を常態化させていた。その大半は、すでにマカオのカジノ「ギャラクシー」や「ウィン・マカオ」で失ってしまっている。11年5月の時点で、グループ企業から借り入れたカネの総額は実に50億円を超えていた。
19：カジノで負けた総額106億8000万円
マリーナ・ベイ・サンズでは1ゲームに最大で50万SGD（約3900万円）を賭けることができた。マカオのカジノでは1ゲーム2000万円程度が上限だった。
23：VIPルーム
専用の個室や駐車場。1泊30〜40万円のスイートが無料。往復のビジネスクラス飛行機代も無料。
2022年12月02日
スピードトラップ
待ちに待った最初の製品ができる。売り出す。反応はいい。売れ出す。「これはいける！」
知名度を上げれば成長軌道に乗ると思い、広告を打つ。しかし、広告で集客した顧客は、初期の顧客に比べて、リピートしたり口コミをしない。おまけに、そこに市場があることを知った競合企業が参入してくる。CAC上昇＆LTV低下が起こり、赤字に陥る。
これは一例だが、市場の規模や性格により、最適な成長速度がある。何でも、最速で行うのがベストではない。
158：RIWIテストスピードトラップを避けるために・準備はできたか（Ready?）実績のあるBMを持っているか？市場は成長し続けられるだけの規模があるか？規模が拡大したときに、価格やコストの引き下げに耐えられるだけの高い利益率があるか？・可能か（Able?）急速に拡大するために必要な人材や資金にアクセスできるか？大量の新入社員をトレーニングし、調整することができるか？・意欲的か（Willing?）起業家はビジネスを成長させることに熱心か？そうすることで当初のビジョンが前進するか？株式の希薄化、投資家が取締役会を支配することによる解雇のリスク、長時間労働などを厭わないか？・呼び込むか（Impelled?)そのスタートアップには攻撃的な競合がいるか？眠れるドラゴンを起こしてしまう危険性はないか？強力なネットワーク効果、高いスイッチングコスト、強力な規模の経済が「土地の奪い合い」を誘発することはないか？
161：スタートアップは、新たに獲得した顧客のコホートのパフォーマンスを分析し、飽和状態を追跡する必要がある
各コホートは、同じ期間に獲得された顧客。
163：NPS調査
顧客がそのプロダクトを友人や同僚に紹介する可能性を0~10の範囲で尋ねる。
「推奨派（9・10）の割合ー反対派（0~6）の割合」＞50%
＊顧客満足度やエンゲージメントは遅行指標
172：LTV/CAC=1
強いネットワーク効果を持つスタートアップの目標LTV/CACは、少なくとも最初の数年間は1.0でいい。ネットワークがクリティカルマスに達した後は引き上げる。
2022年12月01日
奇跡の連鎖
レイターステージの失敗パターンが、「奇跡の連鎖」。「大胆なイノベーションを追求するスタートアップは、多くの大きな課題に直面し、そのうちのどれか一つでもクリアできないと失敗」してしまう。
例えば、製品開発、コストコントロール、販売網、組織、資金調達など５つの課題をクリアできないと成功できないとして、それぞれの課題の克服可能性が1/2としても、1/2^5＝0.03で、成功確率は3%にしか過ぎない。
例に挙げられているのは、ベタープレイス（イスラエル）。2007年3月に設立された同社の創業者はシャイ・アガシで、前職はSAP取締役。SAPのCEO候補になるほどの能力で,SAPに入社した経緯も、もともと父親と立ち上げたベンチャーをSAPに4億ドルで売却後、SAP役員になったというもので、既に成功したシリアルアントレプレナーだった。
同社のビジネスアイデアは、EVのバッテリー規格を統一し、交換ステーションで瞬時にして交換できるというもの。EVの弱点である、航続距離と充電時間の長さを解決できるソリューションであった。誰が聞いてもいいアイデアだと思うし、アガシのビジネスマンとしての実績も申し分なかったので、創業後すぐの2007年6月には、Series Aで$110M＋追加分$50Mを集めた。これは、今に至るまで史上最大級のSeries A規模である。
しかし、ベタープレイスは、いくつかの課題を乗り越えられなかった。一つには、その経営チームがやろうとしていたことに最適であったかどうか。同社の経営陣はアガシの同族と友人で固められていた。
兄グローバルインフラ妹イスラエルマーケティンググローバルオペレーション、アライアンス、CFO：SAP出身者イスラエル事業CEO：イスラエル国防相の元少将
アガシの兄弟やアガシが認めた友人だから、おそらく優秀な人達だったのだろうが、もともとSEのアガシの周りには、ベタープレイスがやろうとしていたプロダクトや自動車業界の経験者が居なかった。そのせいで、交換ステーションの製造・設置コストを甘く見積もりすぎていた。イスラエルに設置した21台の交換ステーションの予算は30~50万ドルであったが、実際はその10倍近い$2M~$3Mが掛かった。
二つ目には、需要の予測がある。2008年の創業前、イスラエルの自動車所有者1000人に対して調査した結果は、「ベタープレイスの車を購入検討する」と答えたのは20%で、これはイスラエルの自動車市場規模からいうと10万台に当たる。ところが、ベタープレイスが閉鎖されたときの実際の販売台数は1000台に過ぎなかった。
消費者が本当に車を購入するかどうかは、実際の車を見なければ分からないし、それは、「イスラエル全土に交換ステーションがある」という前提だった。ベタープレイスが実際に設置できた交換ステーションは21か所に過ぎなかったし、購入できるベタープレイス対応車は、ルノーが製造した一車種しかなかった。
こうして、鳴り物入りで登場したイスラエルのベンチャーは破綻する。こうしたカリスマ起業家が率いるスタートアップに対して、著者は独立取締役の役割を重視する。
223：取締役会のベストプラクティスナルシストの起業家が率いるムーンショット・ベンチャーでは、取締役会の役割は特に重要。適切なボードメンバー。独立の取締役（理想的には、規模の大きなスタートアップのCEO経験者）
203：2009TIME「最も影響力のある100人」
TEDトーク：電気自動車への移行は「奴隷制度廃止に相当する」130万回再生
221：現実歪曲フィールドをもたらすカリスマ性
ナルシズムの症状の一つ。彼らはしばしば魅力的で、人の心を読み、他人をひきつける方法を知っている、熟練した演説家。
ダークサイド：ナルシストは自分の価値を誇張して考えており、その考えを強化することで頭がいっぱい。支配、権力、名声を渇望し、自分の信念と優れた能力を信じることで強い権利意識を持つ。批判に敏感で、自分の価値観に反する情報を無視する。膨らませた自我を守るために、自分のミスを認めようとせず、血管のある戦略を繰り返す。
222：エグゼクティブ・コーチ
問題は、自己愛の強いリーダーはフィードバックを求めない。
