2021年11月
2021年11月30日
学習性無力感
「学習性無力感」（経験から学んだ無力感）は、「頭が３つあるモンスター」だという。
私たちの感情を変えて服従に向かわせ、何かを試そうとさえできないほどモチベーションを下げ、考え方すらも変えてしまって、自分のそれまでの経験を他の環境にも金科玉条のごとく一般化して当てはめてしまう。
しかも、いったん生じると克服するのはかなり難しい。
32：ポジティブ感情はパフォーマンスを上げる
32：ポジティブ感情はパフォーマンスを上げる
目の前のタスクに対処するために、恐怖や脅威に邪魔されることなく認知的リソースをうまく終結させられる。
40：目的のある幸福について点数が高いことと免疫力の高さとが相関
幸福でも人生の意義に乏しい人々の遺伝子発現パターンは、人生の苦難に耐えている人々と同じ。
45：学習性無力感
経験から学んだ無力感は、頭が３つあるモンスター。私たちの感情を変えて服従に向かわせ、何かを試そうとさえできないほどモチベーションを下げ、考え方すらも変えてしまって、自分のそれまでの経験を他の環境にも金科玉条のごとく一般化して当てはめてしまう。
2021年11月29日
Alive at Work
先月行われたWAC（LBSの世界同日同窓会）でオンライン講演していたケイブル教授の話が面白かったので、本を読んでみる。2年前に和訳も出ていた。
産業革命時に発明された企業の管理方法は人間の本能に反するもので、そのような管理下に置かれた従業員は多かれ少なかれ「学習性無力感」に陥り、自分の仕事を楽しめず、生産性も向上しない。このような旧態依然の管理方法から脱して、従業員の生産性を高めるための方法。
毎日つまらなく過ごしたいと思っている人はいない。にもかかわらず、世界規模で行われたギャラップ調査では、「80%の労働者が仕事で自分のベストを発揮できないと感じており、70%は仕事に意欲的に取り組めていない」という。労働人口の圧倒的多数は自らの仕事に「没頭・熱中・尽力」していないのだ。
8：従業員たちの努力が足りないからこうしたネガティブな反応が起こっているのではない。彼らはやる気を感じたい。自分の職業に意味を見出したい。
10：探求脳（Seeking system）
多くの組織は「探求脳」と呼ばれる従業員の脳の一部の作用を不活性化している。「探求脳」は、世界を探索し、周囲の環境について学び、自らの境遇から意味を引き出すために、自然なインパルスを発している。
12：恐怖脳（Fear system）
組織は従業員の「探求脳」を不活発にし、「恐怖脳」を活性化させて、彼らの知見を狭め、服従を助長してしまう。
2021年11月28日
「正直な人」の不正
従業員による職場での盗みや詐欺による損害額が、「強盗、押し込み、窃盗、車の盗難を合わせた被害額（2004年160億ドル）より劇的に大きい」というのに驚愕。年間およそ6000億ドルと推定されるというから（大半は見過ごされ、事件にならない）、「アメリカじゅうの常習犯が死ぬまでに盗める金額より大きい」ということになる。
小さなものだと、会社の備品を家に持って帰るなど。店でわざわざ買うより、「ペン一本、消しゴム1個ぐらいいいだろう」というやつだ。大きなものになると、企業役員が過去の日付に改ざんしたSOを使って不正にキャピタルゲインを得るなど、こちらは億円単位となる。
共通しているのは、「たいていの不正行為は現金から一歩離れたところでおこなわれている」ことだという。心理学の実験でも、同じように盗める環境があるとき、大半の人は現金を盗むのはためらうが、モノだと簡単に盗んでしまうのだという。
何百億円という仮想通貨が盗まれる事件が相次いだのも、サイバー空間でハッキングにより盗むことに良心的呵責が少ないからだろう。それによって誰かが苦しむのを想像できると不正を行わないが、誰も直接困りそうにないと思うと、普通の人がやってしまう。
キャッシュレス化でさらにこうした経済犯
小さなものだと、会社の備品を家に持って帰るなど。店でわざわざ買うより、「ペン一本、消しゴム1個ぐらいいいだろう」というやつだ。大きなものになると、企業役員が過去の日付に改ざんしたSOを使って不正にキャピタルゲインを得るなど、こちらは億円単位となる。
共通しているのは、「たいていの不正行為は現金から一歩離れたところでおこなわれている」ことだという。心理学の実験でも、同じように盗める環境があるとき、大半の人は現金を盗むのはためらうが、モノだと簡単に盗んでしまうのだという。
何百億円という仮想通貨が盗まれる事件が相次いだのも、サイバー空間でハッキングにより盗むことに良心的呵責が少ないからだろう。それによって誰かが苦しむのを想像できると不正を行わないが、誰も直接困りそうにないと思うと、普通の人がやってしまう。
キャッシュレス化でさらにこうした経済犯
355：共有地の悲劇
今日では、心理学者、経済学者、環境保護論者が同じ基本原理を表すのに「共有地の悲劇」ということばを使っている。
374：「正直な人」の不正
従業員による職場での盗みや詐欺は、年間およそ6000億ドルと推定。この数字は、強盗、押し込み、窃盗、車の盗難を合わせた被害額（2004年160億ドル）より劇的に大きい。アメリカじゅうの常習犯が死ぬまでに盗める金額より大きい。
407：たいていの不正行為は現金から一歩離れたところでおこなわれている
企業は会計で不正をするし、企業の役員は過去の日付に改ざんしたSOを使って不正行為をする。
2021年11月27日
行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
入門「行動経済学」の名著。「はじめに」に書かれている、筆者が心理学研究者（のちに経済学も学び行動経済学者に）を志したきっかけがなかなか凄まじい。
良く知られたように、イスラエルは国民皆兵制で、女性も含めた全国民は青年期に兵役義務がある。ＮＹでユダヤ人として生まれ、イスラエルで育ったアリエリー青年は、18歳の時イスラエル軍にいた。
夜間に戦場を照らすためにかつて使われていたマグネシウム光が炸裂し、わたしは全身の70%に三度のやけどを負った。
重度のやけどを負ったアリエリー青年はそれから3年間、全身を包帯に覆われたまま病院で過ごしたそうだ。
友人や家族と同じ毎日をすごすことができなくなり、社会から半分切り離されたように感じた。そのため、以前は自分にとってあたりまえだった日々の行動を、第三者のように外から観察するようになった。まるでべつの文化から来たよそ者のように、自分やほかの人のさまざまな行動について、なぜそうするのかを考え始めた。
ようやく長期の退院が出来るようになったアリエリー青年は、テルアビブ大学で学び始める。その最初の学期に取った授業が、その後の人生を決めた。それは、ハナン・フレンク教授による大脳生理学の授業だった。アリエリー青年は、疑問や異説に対するフレンク教授の姿勢に感銘を受けた。
フレンク教授が案を気に入ってくれたので、それからの3か月間、わたしは50匹ほどのラットの脊髄に手術でカテーテルを挿入し、そこからさまざまな物質を与えててんかんの発作を起こさせたり、緩和させたりすることになった。
＊人間の行動は、予想可能な非合理性を持つ
⇔経済学：人間の合理性を基盤
28：物事を相対的な優劣で判断
ほかのものとの相対的な優劣に着目して、そこから価値を判断する。
47：給料と相対性
幹部の報酬が一般に公表されるようになると、マスコミが定期的にCEOの報酬ランキング特集を組むようになった。公になったことで幹部の報酬が抑えられるどころか、アメリカのCEOたちは自分の収入をよそのCEOの収入と比べるようになり、その結果、幹部の報酬はうなぎのぼりに上昇した。
291：知識が先かあとかで経験が変わる
前もっておいしそうだと信じたときは、たいてい、やはりおいしいということになり、まずそうだと思ったときは、やはりまずいということになる。
2021年11月26日
人口増は諸悪の根源
日本が明治以来100年以上に渡って移民を送り出す国だったことを大半の日本人は忘れてしまっている。最後の移民船「にっぽん丸」が横浜港を出港したのは1974年だ。その後もしばらくは、飛行機で移民が続いた。
それまでの論調は、「日本は人口が多すぎて、永遠に豊かになれない」というものだった。中国が一人っ子政策を最近まで採っていたのと同じで、日本は産児制限こそしなかったが、その代わりに移民を世界に送り出していたのだ。
それが、高度経済成長期を経て、成熟社会となり、経済成長が低迷した途端、人口減が経済低迷の理由となった。すでにこれだけの資本蓄積を果たした日本経済だから、GDP2年分にあたる1000兆円の貯蓄が消費や投資に回れば、普通の経済成長に戻るのは間違いない。
それが、政府が所得格差是正とかいうので、貯蓄の大半を持つ高齢富裕層が将来に不安を感じ、使わない。また、金利が低すぎて、利子が付かないのも使わない一因だ。金利を下げても、将来に希望が持てなければ消費も投資もしないのは企業も個人も同じ。今の状況だと、金利を上げる方が景気が良くなると思う。
写真：移民船「にっぽん丸」（旧ぶえのすあいれす丸」
198：「日本が大いに発展したこの黄金の15年間は、巧みな運営ばかりでなく多分に幸運に恵まれていたともいえるのである。驚きべきことには、つい最近まで予言者たちはすべて、日本はかならずや世界で最も不幸な国の一つになるといっていた。(a)甚だしい人口の過剰、(b)どうにもならぬ耕地の不足、(c)天然資源の極端な貧しさ、これらは日本の伝統的な不利とされ、この弱点の故に、島国日本は永遠の貧困を宿命的に負わされるだろうと、深刻な表情の経済専門家たちも予言していた」（The Economist 1962/9/1-8 "Consider Japan")
218：人口増が諸悪の根源
長期視点で歴史を振り返れば、「人口増が諸悪の根源」という期間の方がはるかに長い。
かつての日本では、移民と言えば日本から海外に移住する人を意味していた。
247：経営リーダーを論じる際に、同時代の人はしばしば背景錯誤に陥る
・その人の仕事の中身で評価されるべき
・HPフィオリーナやXEROXバーンズの事例→実績あげてないのに称賛された
256：シリコンバレー礼賛
空間軸上での文脈剥離の典型例。シリコンバレーという１つの地域が立脚している文脈を十分に理解せず、そこに行けば何かいいものが手に入ると考えてしまう。
高度成長期の日本が置かれた文脈を無視して、当時の「人口ボーナス」だけに目を向けてしまう（時間軸での文脈剥離）。
2021年11月25日
シリコンバレー礼賛
「同時代性の罠」の最後は、「遠近歪曲トラップ」。つまり、「遠いものほど良く見え、近いものほど粗が目に付く」というバイアスのこと。その典型例として、「シリコンバレー礼賛」が挙げられている。
20年以上に渡って、何万人という日本人がシリコンバレーに視察に行ったがシリコンバレーの産学官連携やVCによるリスクマネー供給といった表面だけ見て帰ってきて、それをまねようとする。しかし、イノベーションを生み出すシリコンバレーのエコシステムは「超多産多死による高速の新陳代謝」に支えられている。「超」どころか、普通の「多産多死」すら受け入れられず、役割の終わった赤字会社を倒産させないために30年間補助金を出し続けてきた日本政府にそれができるのか？
産業構造の転換を図るなら、失業率が一時的に高くなるのはやむを得ない。欧米の失業率は悪い時には二桁になる。日本はリーマンショックや今回のコロナでも他国に比べれば低いままだ。その分、産業構造の転換が遅れて、経済は低迷したままだ。
虫のいいことばかり考えず、現実に目を向けた方がいい。
産業構造の転換を図るなら、失業率が一時的に高くなるのはやむを得ない。欧米の失業率は悪い時には二桁になる。日本はリーマンショックや今回のコロナでも他国に比べれば低いままだ。その分、産業構造の転換が遅れて、経済は低迷したままだ。
虫のいいことばかり考えず、現実に目を向けた方がいい。
195：原点は軍需
黎明期のシリコンバレーを支えたのは、東西冷戦下での軍需産業。
Fairchild→ミサイル用半導体
HP→軍需用レーダー測定機器
263：起業家精神と大企業経営の哲学とは根本において相反している
大きなリスクを取って一発当てる仕事と、莫大な資産を委託されて大企業を動かしていく仕事とは、その性格や求められる資質、能力が根本的に異なる。
2021年11月24日
ビジネスに「革命」はない
SDGsが、「現時点での『同時代の空気』のヘビー級チャンピオン」には、大賛成。大半の企業も、あるいは人も、都合よく切り取って利用しているだけで、「持続可能な成長」を理解しているとは思えない。
例えば、肉食は現在の畜産では持続可能ではないことが明らかになっている。食肉を作るのに、家畜を何年も育てなければならない。それには、大量の餌が必要だ。餌を作るには、大量の水と土地が必要で、そのために人類は大量の木を伐り、砂漠を広げてきた。
SDGsを標榜するなら、安心して食べられる肉は増えすぎたイノシシくらいだろう。あるいは、化石燃料を大量に消費する飛行機に乗るのも良くない。まして、新幹線がガラガラで走っているときなら尚更だろう。
例えば、肉食は現在の畜産では持続可能ではないことが明らかになっている。食肉を作るのに、家畜を何年も育てなければならない。それには、大量の餌が必要だ。餌を作るには、大量の水と土地が必要で、そのために人類は大量の木を伐り、砂漠を広げてきた。
SDGsを標榜するなら、安心して食べられる肉は増えすぎたイノシシくらいだろう。あるいは、化石燃料を大量に消費する飛行機に乗るのも良くない。まして、新幹線がガラガラで走っているときなら尚更だろう。
163：SDGs
現時点での「同時代の空気」のヘビー級チャンピオン
誰も反対しない。高校野球のチームが「行くぞ、甲子園！」と掛け声をかけているようなもの。
170：シェアリングエコノミー
レンタルビデオやコインパーキングは立派なシェアビジネス。
「トキワ荘」は日本で最も成功したシェアハウス？
174：発明とイノベーションは似て非なる概念
イノベーションの本領は実社会へのインパクト。フルスケールで市場化され、人々の生活が変わるところまでいかなければ「イノベーション」にはならない。
1927年 フィロ・ファーンズワースがTVを発明（発明者）
1939年 TV放送の仕組みを作り、消費者に向けた放送を始めたのはデヴィッド・サーノフ
TVやカメラといったハードウェアの要素だけでなく、放送局、番組コンテンツ、広告を束ねた産業化に成功（イノベーター）。
177：「大きな変化」は振り返ったときにはじめて分かる
ビジネスの世界に限って言えば、言葉の本当の意味での「革命」はほとんどあり得ない。
2021年11月23日
運命の受容と反抗
柴田錬三郎の話。『眠狂四郎』シリーズの剣豪作家というイメージだが、実は、他の多くの作家同様、当初は純文学を目指していたらしい。
一方で、
ので、大衆小説家となり、成功する。154：純文学という枠組みにどこか居心地の悪さを感じていた「雑文書きにでもなると、自分は相当な才能ではないか、といういささかのうぬぼれがあったが、一流の作者になるには、何かが欠けている、という意識があった。これは、どうにも、払いのけられなかった」
しかし、そこには未練もあり、それが折に触れて、激しい純文学批判として表出したというのが沢木耕太郎の分析。
156：柴田錬三郎にとって「大衆小説家」になることはやはり断念することであった『地べたから物申す』などでの激しい純文学批判は、それ自体正当な側面を持っているが、断念という契機を考えなければ理解できない強いこだわりが感じられる。
2021年11月22日
世界で一番読まれている経済学の教科書
私が大学で経済学を学んだ時の教科書はサミュエルソンだった。MITで長年教え、1970年にノーベル経済学賞を受賞した。その前年にノーベル経済学賞ができたのは、サミュエルソンのためであるという説もある（サミュエルソンの受賞は2年目）。
今、世界で一番読まれている経済学の教科書はこれらしい。確かに、読んでみると、サミュエルソン『経済学』よりかなり分かりやすい。日本の大学でもこれを使っているのだろうか？
4：経済学とは、社会がその希少な資源をいかに管理するかを研究する学問人々がどのように意思決定するのかを研究する。どれだけ働き、何を買い、どれだけ貯蓄し、その貯蓄をどのように投資するのか、といったことを研究する。
5：人々はどのように意思決定するか
�／諭垢魯肇譟璽疋�フに直面している
�△△襪發里糧駘僂蓮△修譴鯑世襪燭瓩吠�棄したものの価値である
�９舁�的な人々は限界原理に基づいて考える
�た諭垢呂気泙兇泙淵ぅ鵐札鵐謄�ブに反応する
13：人々はどのように影響しあうのか
�ジ魄廚呂垢戮討凌諭垢鬚茲衙�かにする
�δ名錙∋埔譴老从儚萋阿鯀反イ垢詢漂�である
�Ю�府が市場のもたらす成果を改善できることもある
Uber：経済学者たちは、特需型値上げ制度が、消費者の厚生を高めているか尋ねられ、85%がイエスと回答した。
21：経済は全体としてどのように働いているか
�┛豺颪寮験菴綵爐蓮∈癲Ε機璽咼垢寮源最塾呂飽預犬靴討い�
��政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する
��社会派、インフレと失業の短期的トレードオフに直面している
2021年11月21日
絶望に効く心理学
ホロコーストを生き延びた心理学者として名高いビクトール・フランクル。彼の心理学は、「絶望に効く心理学」ともいわれる。本書はフランクル研究者である著者（明治大学）が彼の言葉をまとめたもの。
フランクルの言葉の稀有な点は、その言葉がダイレクトに悩める人のこころに届き、響き、魂を鼓舞する力を持っているところだ。フロイトやユングやロジャーズの本の読者の中心は、心理療法家、心理士、セラピスト、精神科医などのいわば同業者である。フランクルの著作の読者には、もちろんこれらの人もいるけれども、その主たる読者は、悩める人、本人である。（あとがき）
はじめに：フランクルの思想のエッセンス
・どんな時も、人生には、意味がある。
・なすべきこと、満たすべき意味が与えられている。
・この人生のどこかに、あなたを必要とする「何か」があり、あなたを必要とする「誰か」がいる。
・そしてその「何か」や「誰か」は、あなたに発見され実現されるのを「待って」いる。
・「何か」があなたを待っている。
・「誰か」があなたを待っている。
・私たちは、常にこの「何か」「誰か」によって必要とされ「待たれている」存在なのだ。
・だから、たとえ今がどんなに苦しくても、あなたはすべてを投げ出す必要はない。
・あなたがすべてを投げ出しさえしなければ、いつの日にか、人生に「イエス」ということのできる日が必ずやって来るから。
・いいえ、たとえあなたが人生に「イエス」と言えなくても、人生のほうからあなたに「イエス」と光を差し込んでくる日が、いつか、必ずやってくるから。
31：感受性の豊かな人が、頑丈な人より、生き延びることが出来た
感受性の豊かな人の方が体の丈夫な人よりも収容所での過酷な生活に耐えうることが多かった。
80：苦悩そのものに意味がある
苦悩なくして人間は成長しえない、苦悩そのものが人間のなしうる最も人間的な行為。
しかし、自己愛的な、「苦悩のための苦悩」は、人生を停滞させるだけ。
「正しく悩みぬかれた苦悩」だけが、人に成長をもたらす。
125：重要なのは仕事の大きさより「自分の使命」を果たせたかどうか
135：幸福の追求は幸福を妨げる
「幸福になりたい」「自分は幸せでいたい」という願いを抱き、その願いの実現に向けて「幸福」を追求していくと、ひとは果てしない欲望ゲームの虜となって、絶えずむなしさ、満たされなさを抱え込んで「永遠の欲求不満状態」に置かれてしまうという幸福の逆説性。
195：あなたの内側を見つめるのをやめてください
大切なのは、あなたの心の中に潜んでいるものではなくて、未来であなたを待っているもの。
2021年11月20日
ETFはこの7本を買いなさい
「バンガード・グループから、世界初の個人向けインデックスファンドが発売されたのは1976年」ということなので、それから45年経つ。「株式市場のような効率市場では、インデックスを上回るアクティブ運用は難しく、長期においては不可能」という前提に、徹底的にコストを抑えた負けないためのファンド。
それでも、米国においてインデックスファンドがアクティブファンド残高を上回るには何十年か掛かったし、日本においてインデックスファンドが人気になったのは最近のこと。
さらに、現在はインデックスファンドよりさらに低コストのETFが登場し、人気になっている。どちらも積み立てに向く商品で、私は毎月自動で買うために今もインデックスファンドを中心に運用している。証券会社によってはETFも含めて個別銘柄の積み立てができるところがあるので、そうしたところに口座を開けば、ETFを使って積み立てのポートフォリオが組める。
ひと工夫して、インデックスを上回る成績を目指した「スマートベータETF」も紹介されている。登場して間もなく、過去５年間くらいの検証しかできなかったが、今のところ、インデックスとの差は生まれていない。
29：インデックスを上回ったアクティブファンドの割合（2016年末までの10年間）
米国籍米国株式ファンド 28%
欧州籍グローバル株式ファンド 2%
41：国内株式インデックスファンドとETFの信託報酬
インデックスファンド 0.56%
ETF0.14%
48：ETFを選ぶポイント
・純資産額が大きい
・出来高が大きい
・乖離率（基準価格と市場価格の差）
83：東証上場のスマートベータETF
好配当 NEXT FUNDS野村高配当70連動型
ROEや営業利益 NEXT FUNDS JPX日経インデックス400連動型
最小分散 iシェアーズMSCI日本株最小分散
123：お薦め国内外ETF スタンダード運用 積極運用
�．哀蹇璽丱覲�式 VT 30% 40%
�∪菴聞饐�型株式 IJR 10% 10%
�９馥盂�式 1348 10% 20%
�た袈醜餝�式 VWO 10% 30%
�ナ胴餾跳堯�AGG 20%
��先進国債券 BNDX 10%
�Э袈醜餾跳堯�VWOB 10%
過去15年間 リターン6% リスク11% リターン7% リスク16%
2021年11月19日
飛び道具トラップのメカニズム
どういう場合に、「飛び道具トラップ」が作動するのか？それが、かなり具体的に示されていて、おもしろい。
83：飛び道具トラップのメカニズム・その時点で広く共有されている「同時代の空気」→トラップ作動の土壌・具体的な成功事例→新兵器？・飛び道具サプライヤーのあおり・短縮語やアルファベット3文字の略語が定着すると要注意・安直な模倣が「手段の目的化」を招く
最近定着した「アルファベット3文字」といえば、SDGsが筆頭だろう。国連が音頭を取っていることもあり、国連至上主義の日本人にはまことに受け入れやすい。「その時点で広く共有されている『同時代の空気』」も正に当てはまる。
SDGsの基本姿勢は「多様性を受け入れる」ことのはずだが、今や「SDGsでなければ人にあらず」的雰囲気なのは、皮肉だ。
88：トラップに陥りやすい人
�‐霾鵑紡个垢覺凝戮�高い人
��考えが浅い人
��せっかちな人「すぐに役立つものほど、すぐに役立たなくなる」
�す圓�詰っている人（成熟企業の経営者など〜打開策を見出そうとするが、戦略構想を思いつかない）
�セ詭遒龍垢ぁ崔甘�者」（ITやHR分野に多い〜自分の担当領域のことで頭がいっぱいで、商売全体がどのように動いてはなぜ儲かるのか、自社文脈の総合的な理解を欠いている）
「代表取締役担当者」肩書は代表取締役社長でも、その実、社長のルーティン業務を粛々とこなしているだけ。
＊むやみに情報感度が高く、せっかちに成果を求める担当者と、危機感を持ちつつも特段の構想も戦略もなく焦っている「代表取締役担当者」、これが最悪の組み合わせ
90：飛び道具トラップを回避する
�ー�社の戦略ストーリーを固める
�∋�例文脈を理解する
�Ｈ瑤啼散颪鮹蠑櫺修掘∀斥�でその本質をつかむ「優れた戦略に一般解はない」
�ぜ�社に導入すべきかどうか
2021年11月18日
激動期トラップ
商社のこれからの未来はどうなるか？楠木教授によれば、
156：「商社3.0」というものはなく、2.0でおしまい
もし3.0があるとすれば、商社が内部に抱えている事業が資本もオペレーションも独立し、それらを束ねてきた「総合商社」というヒト・モノ・カネの大きな受け皿がなくなるとき。
ということ。
確かに、法整備やDXで取引コストが下がってくれば、企業は利益の源泉となる事業のコア部分以外は内部に抱え込まず、外注したほうが安くなる。とすれば、総合商社のようにヒト・モノ・カネの「大きな受け皿」を抱えるメリットは何か？ということになる。
現在の総合商社は、私の理解では、「オペレーションもできる事業投資会社」。その意味で、買収ファンドとの違いは、
�’禺�した企業ごとに必要な経営人材を労働市場から揃えるファンドに対して、グループ内の人材で対応
��投資家から資金を預かっている運用しているファンドと違い、資金回収に期限がないので、長期にわたり保有できる、
ということになる。
�，砲弔い討蓮▲廛躔弍朕雄犹埔譴�存在することが外部化の前提となり、「だから、総合商社という日本独自の形態が日本だけで続いてるのではないか」というのが、私の仮説。
�△砲弔い討蓮∈任眄�功した投資会社として有名なウォーレン・バフェットのバークシャーハサウェイが正に当てはまる。期限がないことで、損切が遅れるケースもあるだろうが、良い事業を永久に持ち続けられるというのは大きなメリットだ。
バフェットはそういう理解で、日本の商社に投資したのかもしれない。
145：2015年にグーグルは個人向けのグーグルグラスの発売中止を決定し、ブームは過ぎ去る。普及に至らなかった原因としては、人間が本来的に持っている連続性からして、ユーザーが技術の非連続性を受け入れられなかったことにある。
151：「商社8.0」論
1.0 貿易権益を外国商社が牛耳る時代（明治時代）
2.0 日本人が外国商社を国内から駆逐した時代（大正〜戦前）
3.0 繊維取引で世界展開を試みた時代（1950年代）
4.0 非繊維取引＝総合化に活路を見出した時代（1960年代）
→伊藤忠と丸紅が総合商社化
5.0 資源開発で明暗が分かれた時代（1970年代）
→三菱商事LNG成功、三井物産IJPC失敗、安宅産業NRCで倒産
6.0 「財テク」に活路を見出した時代（1980年代）
→高度成長の終焉を受けて、各商社が金融取引で利益を捻出
7.0 資源開発に活路を見出しt時代（2000年代）
→三菱・三井・住友が資源価格の高騰で恩恵
8.0 商社のこれからの未来（2010年代）
161：インダストリー4.0
独自性を追求する企業にとって「迷惑な話」→ブーム鎮静化
企業経営者の論理と心理からすれば、「スマートファクトリー」はスマートな選択ではない。
162：「掛け声ここに極まれり」ソサイエティー5.0
政府による政策提言は古今東西「バラ色の未来」に向けた「掛け声」
第5期科学技術基本計画（2016~2020）の「ソサエティー5.0」は、底が抜けている。
2021年11月17日
「戦略が先、ITは後」
90年代に一世を風靡していたのがERP(Enterprise Resources Plannning)。企業活動を全体的に統合できるソフトウェアで、欧米で採用企業が相次いだ。同市場を作ったともいえる独SAPに続き、OracleやPeople'sなど各社が参入した。
欧米で流行れば、日本でも流行るのは、明治維新以来繰り返されている。「秘密兵器」と期待されたERPを採用する日本企業も相次いだ。ところが、ここで落とし穴がある。
37：秘密兵器と期待されたERP欧米におけるERP活用の最大の眼目は人員削減によるコストダウン。日本の大企業にとって人員削減の回避が至上命令。ERPの設計思想と日本企業の現実のあいだの根本的ミスマッチ。
業務効率化のため「ERPに業務を合わせる」て人員削減をするのが、欧米企業の導入目的だったが、日本企業では人員削減をゴールにできない。結果、「ERPを導入する」けれども「業務にERPを合わせる」という「悪いところ取り」になってしまう。始まりのところで手段が目的化してしまう「負の連鎖」が起こった。
ERPに先駆けて、SIS（Strategic Information System）という流行もあった。この時も、多大な開発費を掛けたのに、効果が上げられない企業が相次いだ。一方、SISの成功例と言われる、花王、7-11、ヤマトの事例共通点は「明確な意図を持った戦略がSISに先行していた」ということだ。
「長期利益の獲得→戦略→情報システムがどうしても必要」という流れで考えられており、成功した企業は流行っているからと安易に飛びついた企業ではなかった。あくまで、「戦略が先、ITは後」なのだ。
43：ERPのレガシー化巨額の資金と期間を費やして導入したERPが業務の標準化による効率化や経営の見える化、内部統制強化などに全く役に立たないばかりか、バージョンアップのたびに膨大な追加コストがかかる。（日経クロステック2013/12/26「ERPレガシーの悲惨」）
2021年11月16日
「飛び道具トラップ」�．汽屮好�リプション
この数年、とても流行ったのが「サブスクリプション」。日本語に直せば「定期購入」。何のことはない、昔からある、新聞の定期購読や通販の定期購入のことなのだが、米国から入ってきた「サブスクリプション」と言われた途端、何か万能薬のように響いた。
その時に、サブスクリプションの成功例として必ず上がったのが、Adobe。PDFで知られる同社だが、イラストレーターが仕事で使う専用ソフトで圧倒的シェアを誇る。その分、価格が高く、代表的ソフト2種セットで30万円くらいしていた。それだけするので、イラストレーターとしてやっていくとまだ覚悟を決めてないユーザーにとってはハードルが高い。そうした人は、安い他社製品を使うため、高収益なものの売上は伸び悩んでいた。
そこで、2013年にサブスクリプションに完全移行する。パッケージ販売を中止し、クラウド提供で月額課金にしたのだ。これによって、初心者にも敷居が低くなり、シェアは一層上がった。もちろん、本職のイラストレーターはこれがなくては仕事にならないので、使い続けている。こうして、Adobeはサブスクリプションの成功例となった。
これをまねて、日本でも雨後の筍のように、スーツや日本酒のサブスクリプションが始まったが、ほとんどが失敗してしまった。Adobe製品の場合は、「それがなくては仕事にならないもの」であり、サブスクリプションにすることでユーザーのすそ野が広がったが、スーツや日本酒はもともと何十万円もするものではなく、買いたい人が普通に買っていた。それを月額料金でスーツが取り換えられたり、毎月違う酒が届きます、と言われてもユーザー層を広げることにはつながらなかった。
つまり、Adobeのサブスクリプション成功は、「Adobe製品の粘着性の高さ」が前提となっており、業界シェアNo.1企業だからできた戦略ということになる。
21：サブスクリプション
Adobeの成功
・PhotoshopやIllustratorは「それがなくては仕事にならないもの」
・価格が高い（Photoshop＋Illustratorセットで30万円）
・新しく入って来るユーザーにとってはハードルが高い→他社製品→伸び悩み
＊2013年サブスクリプションに完全移行（パッケージ販売を中止）
23：AOKI suitsbox 月額7800円〜 2018年開始から半年で撤退
日本酒のサブスクリプションSAKELIFE 事業譲渡
利用する顧客が徐々に日本酒に詳しくなり、情報の非対称性解消→卒業
⇔Adobe製品の粘着性の高さ
26：エレベーターもサブスクリプション（保守点検必須）
各社とも厳しいシェア競争→低収益
どの企業も同じサブスクリプションモデル⇔戦略の本質は競合他社との違い
27：サブスクリプションは古くから存在する課金方式の一つ
新しいトレンドでも最新のビジネスモデルでもない。
2021年11月15日
近過去の歴史に学ぶ経営知
昔、購読していた「日経ビジネス」。しかし、何年かして、似たような記事の繰り返しなのに気づき、止めてしまった。業界や時代が違えど、既視感がある。さまざまな事例が紹介されていても、それほど深い分析になっていないので、ヒントにはなれど、そのまま使えるわけではない。
雑誌なので、そんなものなのだろうが、本書の共著者である楠木教授は、「新聞・雑誌は寝かせて読め」という。すぐに読むのではなく、何年か後に、記事を「史料」としてあたるのだ。いわば、現実のビジネスをリアルに振り返り、何が本質であったかを検証する「逆タイムマシン経営論」である。
驚くべきことに、ほんの10年、20年前でも、後から振り返ればおかしなことがたくさんあることに気づく。本に真っ先に挙げられている例に、自動車業界の「400万台クラブ」がある。20年余り前、EV時代を控え、増大する研究開発費を負担するためには、「年間400万台生産しない自動車メーカーは淘汰される」と言われた。
MBはクライスラーを合併し、「世紀の大合併」と言われた。小規模の英国メーカーでは、RRをBMWが、BentlyをVWが、JLRはインドのタタが買収した。「世紀の大合併」は「世紀の大失敗」となり、10年後に合併を解消し、MBは大損害を被った。結局、無傷で残ったのは、「400万台クラブ」を信じず、自主路線を貫いたところであった。
これは、「同時代性の罠」から来ていて、その時代の雰囲気から、皆がよく考えもせず、同じ行動をとってしまう。同時代性の罠には3種類あり、それを本書は章立てて解説していく。
同時代性の罠�“瑤啼散颯肇薀奪廖覆修了�々の飛び道具めいた言説）��激動期トラップ（「今こそ激動期」という思い込み）�１鷆疣超淵肇薀奪廖福岷鵑い發里曚瀕匹�見え、近いものほど粗が目に付く」というバイアス）
はじめに：新聞・雑誌は寝かせて読め
誰かが考察をした歴史書ではなく、「史料」に直接あたるのが逆タイムマシン経営論。
同時代性の罠：典型例「400万台クラブ」20世紀末
増大する研究開発費を負担するためには、「年間400万台生産しない自動車メーカーは淘汰される」→買収合戦→ほぼ失敗→無傷で残ったのはトヨタやホンダなど自主路線を貫いたところ
＊因果関係の理解において錯乱している（台数は「原因」である以上に「結果」）
2021年11月14日
読書の黄金時代
ここまで読んできた「日本の本の歴史」。結論は、20世紀は読書にとって「特殊な時代」であったこと。
それまでは、本は高価なものだし、誰もが学校に通って文字が読めるわけではなかった。20世紀は人類史上初めて訪れた「読書の黄金時代」であった。
あとがき：20世紀という特殊な時代本の大量生産と読み書き能力の飛躍的向上によって、知識人と大衆、男と女、金や権力を持つ者ともたいな者の別なく、社会のあらゆる階層に読書する習慣がひろがり、「だれであれ本を読むというのが基本的にいいことなのだ」という新しい常識が定着した「読書の黄金時代」。
240：本というメディアが歴史上はじめて、「物質の本＝その最高形態としての紙の本」と「物質ではない本＝電子の本」という二つの方向に分岐
248：青空文庫 1997~富田倫生の呼びかけではじまる
著者の死後50年たって著作権が消滅した作品をボランティアの手で電子化し、綿密な校正をへて、無料でダウンロードできるようにした日本で最初の私設電子公共図書館。
読書習慣が消えてしまうことはない
終わったのは本そのものではなく、あくまでも、映画、テレビ、ラジオ、演劇、舞踊、音楽、絵画、写真、デザインなど、さまざまなメディアが織りなす網の目の中心に本がどっしりと位置するという＜黄金時代＞の構図。
2021年11月13日
昭和軽薄体
「本ばなれ」「活字ばなれ」の歴史は意外と長い。
185：1947年岩波書店『西田幾多郎全集』
発売前夜から同書店のまえに徹夜の長い行列。
当時の人々の新しい本への飢餓感。大正教養主義の記憶。
218：人が本を読まなくなった
「本ばなれ」「活字ばなれ」という言葉がマスコミや出版界周辺でさかんに使われるようになったのは、あの「雑高書低」という言葉が流行したのとおなじ70年代の終わりごろ。
223：「昭和軽薄体」（読むマンガ）
1977『チューサン階級の冒険』嵐山光三郎、1979『さらば国分寺書店のオババ』椎名誠（「昭和軽薄体」の命名者）、赤瀬川源平、南伸坊、松村友視、林真理子、橋本治、糸井重里。
226：黄金時代の終わり
1996年、それまで右肩上がりで伸びてきた書籍の年間実売総金額が1兆931億円到達〜翌年から下降
マンガのピークは1995年、雑誌は1997年。
若い読者が激減。結果として読者の高齢化。
2021年11月11日
百万（国民）雑誌の登場
現在の書籍・雑誌の出版数は55年前の水準。紙媒体が減る一方、電子出版が増え、販売金額では下げ止まりの傾向もみられる。マンガは既に電子出版の方が金額が大きい。
日本は永らく、出版大国だったが、そうなったのは大正時代らしい。震災の翌年1924年（大正13年）に講談社が大衆総合誌『キング』を創刊し、『キング』はのちに日本初の百万部を売った。そして、1926年（大正15年）、改造社が『現代日本文学全集』63巻配本開始し、全国的な「円本ブーム」を引き起こす。
円本とは、昭和初年代に刊行された1円均一の全集本のことで、初任給が75円の時代に、長編小説を3点ほど詰め込んだ量の函入り本が1円だったという。今の感覚で言えば、一冊3000円くらいで安くはないのだが、それまで本はもっと高かったという事だろう。
安い本が可能になった一因は、用紙の値段が下がったから。
安い本が可能になった一因は、用紙の値段が下がったから。
20世紀初め、日露戦争によって自国領となった樺太の広大な針葉樹林帯に、複数の製紙会社が木材パルプの大工場をきそって建設する。それをきっかけに日本の製紙業はめざましい発達を遂げ、早くも大正のなかばには世界でも有数の製紙国になる。
124：百万（国民）雑誌の登場
�／椋劼陵眷�1924年（大正13年）に講談社が大衆総合誌『キング』を創刊
��1926年（大正15年）、改造社が『現代日本文学全集』63巻配本開始→全国的な「円本ブーム」
��1927年（昭和2年）人類の知的資産を安価な小型本として大衆に「岩波文庫」発足
＊日本人の読書環境がガラリと一変
129：『キング』発行部数
1926 90万部
1928 140万部
130：円本
昭和初年代に刊行された1円均一の全集本。
初任給が75円の時代に、長編小説を3点ほど詰め込んだ量の函入り本がわずか1円。
131：亜米利加型の宣伝手法をとことん模倣した『キング』「円本」
予約購読の締め切り日を限定した上で、その日にむけて何週間も前から朝刊も夕刊もなく広告を打ち続け、読者の気持ちをいやが上にも煽り立てる作戦。それを中心に、電通と組んで、ポスター、パンフレット、立て看板、大幟などをつかって壮烈な宣伝キャンペーン。
151：野間も岩波も出版業を始める以前は、中学や女学校の教師
「内外の古典を読んで自らの品格を高める」という教養主義的読書の理念に共鳴し、さらに一歩進んで、そうした読書週間を「少数者の書斎と研究室」などの「狭き堂宇」（「読書子に寄す」）から、より広々とした世界に解き放とうと考えるにいたった。すなわちエリート的な教養主義の民衆化・大衆化。
173：世界有数の製紙国
20世紀初め、日露戦争によって自国領となった樺太の広大な針葉樹林帯に、複数の製紙会社が木材パルプの大工場をきそって建設する。それをきっかけに日本の製紙業はめざましい発達を遂げ、早くも大正のなかばには世界でも有数の製紙国になる。百万雑誌や円本の大量生産が可能になったのも、そのおかげだったのか。
2021年11月10日
日本出版史上空前の大ベストセラー
『学問のすゝめ』は第17編まで発刊され、全部あわせると340万部。当時の日本人口3480万人に対し1/10、全国民の10人に一人が読んだ勘定になる。当時の識字率や、海賊版の出回り、さらに書き写した人もいることを考慮すれば二人に一人くらいは読んだのではないかという。その基本の精神は「独立自尊」。読者の中心は、元武士（推定200万人）や、その子弟であった。
66：サムライの読書
「およそ書を読むにはまず手を洗い、心を慎み、姿を正しくし、机のほこりをはらい、書物を正しく机の上において座って読むがよい」（貝原益軒『和俗童子訓』松田道雄現代語訳）
70：正座
江戸時代のはじめに徳川幕府が大名などの上級武士にむけて制定した武家儀礼によって成立。それが中級や下級の武士をへて一般庶民の間にまでひろまったのが江戸中期。
「正座」の言葉が定着したのは、明治期の礼法教科書をへて、大正から昭和初期。
90：福沢諭吉『学問のすゝめ』1872-1876
日本出版史上空前の大ベストセラー（300万部以上）
読者の中心は、元武士（推定200万人）や、その子弟。
当初は木版→1874第4編活版→翌年の第10編木版→第11編活版→第12-16編木版→第17編活版
2021年11月09日
本の大量生産開始
本の大量生産が始まったのは、寛永時代（1624-1645）らしい。徳川時代になって数10年経ち、幕府に対する最後の大規模な反乱である島原の乱（1637-1638）が鎮圧され、幕藩体制が固まるころだ。世の中が落ち着いて本を読む余裕ができた。
活版印刷は、戦国時代に、イエズス会の宣教師によって、布教のために長崎・五島列島に持ち込まれていた。おもに平仮名と少数の漢字によって活版本が刊行されていた（きりしたん版）。
しかし、当時は活字がたくさんあるわけでもなく、本を作るには、ページごとに活字を組みなおさなければならない。それでは時間が掛かるので、木版が主流になった。
56：きりしたん版
1590イエズス会の宣教師たちがグーテンベルク式の活版印刷機と活字鋳造機を長崎・五島列島の拠点に持ち込み、おもに平仮名と少数の漢字によって活版本を刊行し始める。
62：本の大量生産開始
木版に必要とされる初期投資を回収するには、主として非営利事業だった古活字本の数倍、ときには10倍以上の部数を売りさばかなければならない。寛永期にはいると、営利目的の町場の書肆（しょし）が続々と出現し、今日にまでつづく本の大量生産と安定した流通網に向けての動きがこの国でスタートする。
64：1682井原西鶴『好色一代男』
再刷ののち、おなじ大坂の大手書肆に版木を売りわたし、それから10年以上も再刷が繰り返される。
2021年11月08日
世界の経営学の英知
帯には、「世界の経営学の英知はこの1冊で完璧に得られる」
「完璧に」かどうかは、読み手次第だが、世界のビジネススクールで教えられている「世界標準の経営理論」を網羅した、経営理論の辞書のような本。800pを超える大著で、これを読破するのは骨が折れる。
130：マルク・ファン・エッセン『同族企業の方が非同族企業よりも業績が良い」2015
日本の同族企業のなかで特に業績が良いのは、「経営者が婿養子の場合」（ピカス・メロトラ2013）
・所有と経営の一致→目的の不一致がない
・創業家から選ばれる経営者の能力が高いとは限らないが、婿養子ならこの問題が解決できる
191：バーニー2007「ある国で起業が活性化するかどうかは、その国の倒産法に影響される」
・撤退オプション←倒産手続きの煩雑さ
235：両利きの経営＝知の探索と深化のバランス
人・組織は認知に限界があるので、知の探索をして認知の範囲に出て、知と知を新しく組み合わせる必要がある。一方、そこで生まれた新しい知は徹底的に深掘りされて、収益化につなげる必要がある。
242：構造的な両利きの成功例（マイケル・タッシュマン＆チャールズ・オライリー）
�／靴靴ど�署に必要な機能をすべて持たせて、独立性を保たせること
�▲肇奪廛譽戰襪任蓮△修凌卦�部署が既存の部署から孤立しないように、両者が互いに知見や資源を活用しあえるよう交流を促す
・日本企業でイノベーションを促すためには、評価制度の見直しが不可欠
既存事業と同じ評価制度を使っていては、知の探索は続かない。
365：ダイバーシティ経営
�．織好�型の多様性は組織にプラスの影響を及ぼす（知見、能力、経験、価値観など）。
�▲妊皀哀薀侫�ー型の多様性は組織にプラスの影響を及ぼさない。それどころか、場合によってはマイナスの影響（性別、国籍、年齢など）。
2021年11月07日
読書の過去・現在・未来
日本人がいつ読書をはじめ、本との付き合いがどう変遷してきたかをたどる。
まず、文字が日本に入ってきたのは、405年百済からまねかれた学者・王仁によって。王仁は『論語』10巻と『千字文』1巻を持参した。これが、おそらく、日本に入ってきた最初の「本」ということになる。上野公園に王仁博士の碑がある（写真）。
平安時代中期には、いま私たちが「読書」とふつうに呼んでいる行為がこの国に根付き始めたらしい。漢字の草書体から独自につくられた表音文字としての平仮名によって、「日本のルネサンス」を象徴する源氏復興、和歌の爛熟、連歌ブームなどが起こる
ただ、平安時代の建物は、寝室を中心とした「寝殿造り」で、部屋には間仕切りがなかった。障子やふすまで独立した部屋が出来たのは、室町時代。「畳敷きの部屋、角柱、床の間、引き違いのすすま、違い棚など、今日まで続く和風建築の基本がかたちづくられ」（書院造り）、落ち着いて読書ができるようになった。
ただ、平安時代の建物は、寝室を中心とした「寝殿造り」で、部屋には間仕切りがなかった。障子やふすまで独立した部屋が出来たのは、室町時代。「畳敷きの部屋、角柱、床の間、引き違いのすすま、違い棚など、今日まで続く和風建築の基本がかたちづくられ」（書院造り）、落ち着いて読書ができるようになった。
4：はじまりの読書〜平安時代中期
いま私たちが「読書」とふつうに呼んでいる行為がこの国に根付き始めたのは、おおまかにいって、菅原道真から同じ血筋の菅原孝標の女にいたる150年ほどのあいだのこと。
19：文字との出会い
405 百済からまねかれた王仁が『論語』と『千字文』をもたらす。
遣隋使や遣唐使にしても、最大の目的の一つは、出来るだけ大量の本を中国から持ち帰ること。
30：書斎の誕生
寝殿造りと書院造りの最大の違いは、前者の「局」に代わって、壁や引き戸で周囲から劃然と区切られた「部屋」が、この国の建築に本格的に登場したこと。それにともなって畳敷きの部屋、角柱、床の間、引き違いのすすま、違い棚など、今日まで続く和風建築の基本がかたちづくられ、そのことで「じぶんだけの閉じた小さな部屋」という菅原道真の夢がやっと現実のものになった。
42：漢字が読めない知識人
「日本のルネサンス」を象徴する源氏復興、和歌の爛熟、連歌ブームなどは、どれもが漢字ではなく、漢字の草書体から独自につくられた表音文字としての平仮名によって支えられた。
2021年11月05日
成長国投資ETF・ADR活用法
MONEX証券等で、米国株投資の講師として活躍されている岡元兵八郎氏。ETFを調べようと検索したらヒットしたので7年前の本だが読んでみる。
米国株の話は全くなく、新興国株式の投資手段としてのETF・ADRであった。それも、当時話題のBRICSより更にリスクの高いフロンティア市場に投資できるETFや個別株を紹介している。その頃は新興国株式の方が話題だった。
ところが、その後先進国優位の市場環境になる。米国ではシェール革命が進み、何十年ぶりかに純石油輸出国になる。世界石油市場では原油が余ることになり、石油価格は暴落。もともと強かったIT産業の強さが際立った。日本では「異次元の金融緩和」でアベノミクス相場が始まる。
その結果、米国株投資に宗旨替えしたようだ。
10：人口が減る国が成長できるはずがない
日本の人口は2004年に1億2784万人で過去最高。
64：Ajinomoto Malaysia Berhad(KLSE）
味の素が50.08%所有。
2012年までの13年間のトータルリターンは256%(複利年10%）配当利回り4.76%
72：フィリピン
世界トップ20の巨大モールが５つもある。
77：Overseas Pilipino Workers
近年では21億ドルを超え、GDPの1割。
100：チリ国債の格付けは日本国債と同じ
224：ETF (Exchange-Traded Fund)
リアルタイム売買可能。投資信託に比べて運用管理費用が安い（＜1%）
225：国内ETFor海外ETF？2013年11月
東証147本（海外インデックス関連31本）
米国1441本（外国株関係440本）
世界4721本
231：ベンチマークの違い
世界株式 ACWI 先進国23＋新興国21＝世界株式市場時価総額の85%
FTSE Emerging Index VWO
MSCI新興市場バリュー EVAL
2021年11月04日
戦う経営トップの条件
「リーダーが誕生するには、その人を支援してくれる人との出会いが欠かせない」
というのはその通りだと思う。社内の抵抗を押し切って、必要な改革を強力に進められるようなリーダーは、若い頃から社内で煙たがられることが多い。陋習や官僚主義に染まっている人から見れば、面倒くさい目障りな存在でしかない。
放っておけば、そんな人は潰されるか、嫌になって、辞めていく。それを庇護して、活躍の場を与えれる名伯楽がいるから成果を上げ続けられ、やがて実績が立場を守ってくれるようになる。
たまに、スーパー公務員とか言われる人の記事をよく読むと、例外なく上司に恵まれた人だ。「俺が責任を取るからやってみろ」というタイプ。尤も、言葉だけの上司もいるので要注意だ。
149：プロジェクトチームは機能重視で構成する
チーム構成についてはラインの肩書などは考慮しない。優秀ならそれでいい。
153：CIはムダ
社長になる前の1980年代後半CIに40億円。
社名のロゴをつくって、看板や名刺を変えたことぐらいで、その他には何も実がない。
余計な会議を何度も開き、時間も労力も無駄。
�Ю錣Ψ弍張肇奪廚両魴�
195：経営者に必要な５つの資質
判断力、先見性、決断力、執行能力、誠実さと温かさ。
214：名伯楽
改革には強力なリーダーが必要だが、リーダーが誕生するには、その人を支援してくれる人との出会いが欠かせない。
山本五十六長官←米内光政大将
2021年11月03日
会社を改革するために戦う
どれだけ徹底してできるかは別として、書いてある内容は「よくある話」。だが、一つだけ、他の経営書と違うのは、人事ローテーションを否定しているところ。
一般的な経営論では、人事ローテーションは、�，い蹐い蹐雰亳海鬚気擦匿雄爐魄蘋�する、�∨椰佑�マンネリにならないため、�Ｉ埓桔瓢漾△里燭疝�効とされている。ところが、金川会長は、「仕事ができる人に長くやってもらう」という。
合理的な仕事をするには、少数精鋭が原則となります。そして、少数精鋭を実現するためには、社員をプロへと育てなければなりません。それには、なるべく長く一つの仕事をやらせ、その分野の能力を磨いてもらうのが合理的です。（p191)そうして、「まったく異なる部門間の異動はムダ」「意味もなくローテーションさせるのは、最も悪い人事」と続く。
実は、人事ローテーションは終身雇用を前提とした日本企業独自のものなので、欧米では見られないものだ。経営幹部を事業部間で異動させることはあるが、それは将来の経営トップ養成のためで、一般社員をローテーションさせることはまずない。本人が社内公募を見て応募して変わるくらいだ。
こうした欧米企業との共通点が信越化学にみられるのは、常に余剰人員を抱えず、少数精鋭の経営を貫いているからだろう。そして、「一つの仕事を本当に成功させることが出来る人は、ほかのことをやっても出来るもの」だから、経営幹部になってから必要ならローテーションするという。これも欧米企業と同じ。
103：会社を変えられる人の条件
�＿饉劼鬚匹κ僂┐襪里�という目標をはっきりと持っている
��現状を正確に判断できる
104：悪い常識を覆すのが社長の仕事
社員の意識改革。常識を疑う。
108：体を張って陋習と戦う
�仝帖垢了纏�のやり方にはびこっている陋習
�∩反イ鮃田床修気擦覺盈充腟�
120：仕事ができる人に長くやってもらう
一つの仕事を本当に成功させることが出来る人は、ほかのことをやっても出来るもの。
126：実績主義
成功のカギとなった人物の存在を決して見逃さない。
必ず社員の功績をしっかりと見ておいて、その功を称える。
133：新しいテーマは社長が決める
日本企業は意思決定の際にやたらと多数決を行いたがる傾向。
134：事業化を研究者任せにしない
事業化には、豊富な経験に基づいた手腕や経営センスが必要。
136：新規事業で不要なこだわりと、必要なこだわり
必要＝事業への情熱
不要＝メンツ
2021年11月02日
「私のボスは株主」
もともと商社で勤めていた金川会長。商社では代理店になっているメーカーの商品を売るしかなく、メーカーに商品改良を依頼しても埒が明かないことから、35歳の時に転職したのが信越化学工業。上場企業とはいえ、オーナー企業で、創業家の社長だった。
そのせいかどうかわからないが、プロ経営者として、「私のボスは株主」との意識を常に持っていたという。今は、「ステークホルダー経営」とかESGが人気だが、これは株主至上主義が徹底されていた欧米で起こった反動で、そもそも株主があまりにないがしろにされてきた日本企業が、「やっぱり」とようやく是正が進んでいた株主重視を止めるのは道理に合っていない。
��自分流の経営で戦う「私のボスは株主」
69：会社の目的は株主に報いること
経営者である私のボスは株主。
企業統治の大前提からしても、従業員は企業の一部であって、決してボスではない。
87：スピードが市場を制する
300mmウェーハを他社に先駆けて市場投入
事情をよく知らない人の一般論などは重要ではない→トップが全責任を負う
少数精鋭の設計建設部隊→3か月で工場完成
96：正々堂々と戦う
一番いけないのは、自分が温かい人間だからというのを、仕事で成功しない理由にしてしまうこと。
99：慎重は期するが、人の善意を信じる
人間はミスを犯すものだという前提で体制を構築する。
2021年11月01日
危機と戦う経営
名経営者と言われる、信越化学中興の祖、金川会長による経営書。さすが戦争体験もある（旧制6高受験に2回失敗したおかげで学徒出陣は免れたが、岡山で空襲経験）戦中派で、一言で言えば、経営者の覚悟を求めている。
経済合理性を求めて必要なら職を賭して取締役会と戦い、人員整理をしなくていいように、最初から必要最小限の人員で会社を回す。業界世界第一位の高収益企業ながら、本社は賃貸。工場設備は最新鋭だが、事務所は最低限。
常に備えができているから、信越化学は、世界が大不況に喘いでいた2009/3、2010/3においても黒字を確保できたという。塩ビと半導体ウェーハーというシクリカルな業種としては驚異的だ。また、早い段階から生産拠点を複数化し、リスク分散していたため、東日本大震災においても、被災した工場の生産分を海外も含めた他の工場で賄い、供給を切らすことがなかった。
社長に就任したのは1990年、64歳の時で、伝統的上場企業の経営者としては普通。それまでは、信越化学創業家の小坂家から経営者が出ることが多かった。以来30年にわたって社長・会長を務め、その間に会社時価総額は100倍以上になった。ちょうど、日本経済が「失われた30年」の間だ。
序章：危機と戦う経営
20：安定的に利益を上げるには、経営者の先見性が大切
時流の変化をいち早く感じ取り、それに素早く対応できなければならない。
22：日本の企業経営者よ、共に戦おう
危機を乗り越え、会社を救えるのは経営者しかいない。
会社の体質を変え、不況や天災に強い組織へと生まれ変わらせて世界を目指す戦い。
�ヾ躓，叛錣Ψ弍�
27：国と社会があってこその企業
32：天災に早くから備えていた
日本は地震国だから、早い段階から生産拠点を複数化し、リスク分散していた。
65：危機でも利益を出す
経営者の執念。
