2020年08月
2020年08月31日
ペスト
コロナ特需があったものの一つに、伝染病関係の本や映画などの作品がある。フランスのノーベル賞作家カミュの傑作と言われる本書のその一つ。有名作品だが、例によって読んだことがなかったので、酷暑の中、家に閉じこもって読んでみる。
作品としての評価は専門家に任せる。裏表紙の紹介にはこうある。
アルジェリアのオラン市で、ある朝、医師のリウーはネズミの死体をいくつか発見する。ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。外部と遮断された孤立状態のなかで、必死に「悪」と戦う市民たちの姿を年代気風に淡々と描くことで、人間性を蝕む「不条理」と直面したときに示される人間の諸相や、過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。
第二次世界大戦直後の1947年に発表された本書は、伝染病との闘いというモチーフを使って、戦争がもたらした「不条理」に対する人間の諸相を描いたものらしい。大戦中をオラン市の私立学校で教えながら、カミュはレジスタンス運動も行っていた。そこで体験したものが描きこまれているのだ。
大戦中にオランでペストが流行った事実はないが、それより100年近く前の1849年にコレラ流行で1772人が犠牲になったそうだ。不思議なのは、作品では、オラン市自体はペストで都市封鎖されるのだが（もともと中世からの城郭都市で、門を閉じれば完全封鎖できる）、市民生活は通常通りなこと。むしろ交通が閉ざされ、市内の映画館やカフェは以前よりも賑わうのだ。
ペストの致死率は新型コロナとは比べ物にならないほど高い。治療を受けた場合でも10%、治療を受けない場合には60−90%である。いくらペストの場合の感染は主にネズミを宿主としてノミだとしても、患者からの飛沫感染もあるということだから、市内の娯楽が賑わっていたというのは不自然な気がする。それとも、日本のように「要請」くらいじゃ、市民が従わないから、欧米はロックダウンしなければならないのか
94：申告の義務制と隔離は続行される。患者の出た家々は閉鎖され消毒されねばならず、近親者は一定期間の予備隔離に服し、埋葬は死によって営まれ、その条件はいずれ発表されることとなった。一日遅れて、血清が飛行便で到着した。95：電車は相変わらずラッシュアワーには満員であり、昼間は空っぽできたなかった。（中略）夜になると同じ群衆が街頭をうずめ、映画館のまえには行列が続いた。112：ペストの第三週には302名の死亡者が数えられたという報道などは、想像力に十分訴えてこなかった。一方からいえば、おそらく全部がペストで死亡したものでないかもしれない。また別の方からいえば、市中で誰一人、ふだんのときには毎週何名ぐらいの人が死んでいるものか、知っているものはなかった。市は20万の人口を持っていた。350：投機がその間に介入して来て、通常の市場には欠乏している第一級の必需品などがまるで作り話みたいな値で売られていた。貧しい家庭はそこできわめて苦しい事情に陥っていたが、一方富裕な家庭は、ほとんど何一つ不自由することはなかった。
2020年08月30日
大和朝廷の東国支配最前線基地
何十年ぶりかで鹿島神宮へ。レイラインハンターの内田さんに案内していただく。2週間前にサイクリングで近くまで行ったとき、途中で新品の輪行袋を落としてしまうという失態。輪行で帰れずに、自転車を内田さん宅に預けて帰ったのだけど、そのおかげで鹿島神宮を訪問できた。
ここが日本統一(征服）を目指す大和朝廷の東国支配の最前線基地であったことは有名な話。そのため、通常は南向きに建てられる社殿が北向きに、当時まだ日本の先住民族である縄文人の居住地であった東北を睨むように造られている。ご祭神は、日本建国・武道の神様である武甕槌大神（タケミカヅチ）だ。
さらに、鹿島神宮と富士山を結ぶ線は、「立春と立冬の入日」なのだそうだ。このレイラインの下には後年造られた江戸城と明治神宮もある。これは偶然なのか、意図されたものなのか。
江戸城を造営した徳川家康は、当時、鹿島神宮の本殿を寄進した。大変立派な神殿で、これは現在、奥宮として移築されている。そして、現在の本殿は二代将軍秀忠によって寄進された。
2020年08月29日
コロナ被害度と経済被害度(各国）
先日、OECDから第二四半期のGDP速報値が発表された。大半の国でかつてないほどGDPが落ち込む一方、他国に比べてそれほど落ち込まなかった国や、中には中国やベトナムのようにプラスだった国もある。
常識的に考えれば、コロナ被害が大きかった国ではロックダウン等で経済被害も大きく、そうでなかった国は経済被害も少なくて済んだはずだ。実際、上図の通り、近似線は右肩下がりで、相関係数＝-0.75と強い負の相関が認められる。
グラフを眺めると「異常値」とも言えるほどこの近似線から外れた国がいくつかある。一つのグループは、右上にそれている国で、アメリカとスウェーデン。もう一つのグループは左下にそれている国で、日本とタイだ。これらを除けば、ほぼ完ぺきな相関関係となる。
アメリカはコロナをバカにしていたトランプ大統領によって初期対応が遅れ、人的被害が拡大した。にもかかわらず経済の落ち込みは少なく、株式市場に至っては過去最高値を更新し続けている。GAFAMに代表されるDX銘柄がコロナ時代の勝者と見なされ、実際、稼ぎまくっているからだ。
スウェーデンは欧州では唯一ロックダウンを実施せず、国民の自主性に任せた感染対策を取った。その結果、介護施設での集団感染を中心に犠牲者が出たものの、経済被害は最小限で済み、学校も閉鎖されることなく通常通りの授業を続けた。首都ストックホルムでの免疫獲得者は40%に達したと推定され、「集団免疫をほぼ獲得した」と公衆衛生局が7月に発表している。スウェーデンの貿易依存度は63%と高く（日本は29%）、EU諸国を中心とする貿易相手国の経済が落ち込めば、自国は大丈夫でも、影響は受けてしまう。
スウェーデン同様にロックダウンをしなかったにも拘わらず、「緊急事態宣言」でロックダウンした欧州並みに経済が落ち込んだのが日本。コロナによる人的被害は欧州各国に比べて二桁少ないのに、経済被害は欧州並みということで、政策的に言えば、最悪である。
同様に、人的被害が少なかったにも拘わらず、経済被害が大きかったのがタイで、こちらは、観光産業が壊滅的被害を受けたからだ。例年タイを訪れる外国人観光客は4000万人近くに上り、インバウンドブームに沸いた日本より多い。観光業はGDPの20%を占める一大産業だ。これが今年消滅しているのだから、影響は大きい。
タイは気の毒だが、日本は言ってみれば、自分で自分の首を絞めている。店を休業させるために補助金を出し、自粛ポリスを生み出し、税収を消滅させた。これでは、戦時下の「非国民」と同じだ。国家破綻まで突き進むのか。
2020年08月28日
Accountable Government
「説明責任を果たす政府」
「誰のために」かといえば、最初は貴族で、後に民主化されて「国民」となった。
それが最も早かったのは英国で、6世紀末にはそれまでの同属集団から、キリスト教の影響下に平等で個人主義的な社会体制に変わっていった。13世紀には議会が定期的に開催されるようになり、当初は主に裁判のためであったが、徐々に、議会は国王とともに統治を担うようになった。
欧州の政治形態の発展は、次の4つに分類される。
１．弱い絶対主義
フランスやスペイン。議会による説明責任は確立されなかった。
２．絶対主義
ロシア。君主による絶対支配。中国に似ている。
３．議会による説明責任が確立されるが、国家として機能しなくなる
ハンガリー。強くて団結したエリートによって君主を憲法統制下におく。だが、憲法によるチェック機能が強すぎて、国家として一致団結して機能しなくなる。
４．議会による説明責任が確立されるも、国家として機能する
英国。強い議会が君主に説明責任を認めさせるが、国家としての一体感を失わない。
あくまでも、いい塩梅の英国であった。
330: Sometimes in the middle of the first millennium B.C., China made a transition from warfare based on small numbers of aristocrats riding chariots to much larger mass infantry armies based on general conscription. A similar technological transition took place in Europe in the twelfth and thirteenth centuries, as horse-mounted, heavy knights were replaced by large infantry armies using bows and pikes.372: Early modern France and Spain were examples of weak absolutism and failed accountability. The states were formed in the sixteenth and seventeenth centuries were absolutist because their monarchies centralized power in a way that was not formally accountable to a parliament or any other representative body.386: The Russian Federation, particularly since the rise of Vladimir Putin in the early 2000s, has become what some political scientists label an "electoral authoritarian" regime.404: We noted in chapter 16 how tribal social organization had broken down in Europe under the impact of Christianity long before the modern statebuilding project began. Nowhere was this process more advanced than in England, where, starting with the mission of St. Augustine of Canterbury in the late sixth century, extended kin ties were replaced by a far more individualistic form of community.407: In English history, the rule of law emerged well before there was anything like political accountability, and the latter was always closely tied to the defense of the law.413: English parliaments had begun meeting regularly since the thirteenth century on a far more regular basis than their French, Spanish, or Russian counterparts. Their original function was, as noted, judicial, but over time they came to play a much broader political role as joint rulers with the king.417: The Glorious RevolutionThe denouement of prolonged struggle between king and Parliament was the Glorious Revolution of 1688-1689, which forced James II to abdicate.422: We have now covered five European cases leading to four divergent outcomes with regard to accountability and representative institutions. France and Spain saw emergence of a weak absolutism, in which no principle of parliamentary accountability was established. Both states archived this result by selling themselves off piecemeal to a wide variety of elites, whose privileges and exemptions protected them - but not the rest of their societies - from arbitrary state power. In Russia, a more thoroughgoing Chinese-style absolutism was established, in which the monarchy could dominate its own elites by conscripting them into state service. In Hungary, a strong and cohesive elite succeeded in putting constitutional checks on the power of the monarch and established a principle of accountability. But these checks were so strong that they hobbled the ability of the state itself to function cohesively. Finally, only in England did a powerful Parliament succeed in imposing a principle of accountability on the king, but in a way that did not undermine a powerful and unified sovereignty.426: Strong AbsolutismRussia was able to establish a strong form of absolutism much closer to that of China for reasons that become apparent when comparing its development to that of France or Spain.1. Physical geography of Russia - a flat, open steppe with few physical barriers to cavalry-based armies - made it vulnerable to invasion from the southwest, southeast, and northwest, often simultaneously.2. very little time elapsed between the lifting of the Mongol yoke and the state-building project undertaken by Moscow.3. Russia had no tradition of rule of law comparable to that of Western Europe.4. physical geography necessitated formation of a serf-owning cartel, and tightly bound the interests of the entire elite, nobles and gentry, to those of the monarchy.5. certain ideas simply failed to penetrate in Russia to the extent they did in lands farther to the west.This began with the idea of the rule of law but extended to the whole complex of ideas coming out of the Reformation and Enlightenment.
2020年08月27日
法による支配
「法による支配」が近代国家の要件だとすれば、それを世界で最初に確立したのは秦・漢時代の中国だった、というのがこれまでの話。
ところが、一方で、「法の下の平等」を受け入れてないのも中国政治の特徴だという。これまでどの政権も、法による「完全な」支配を認めず、法に支配されない特権階級が存在する。現在の中華人民共和国にも憲法はあるが、中国共産党には憲法の規定は適用されない。
PART THREE The Rule of Law264: The Catholic church declares independenceThe Catholic church's declaration of independence from political authority came in the late eleventh century, led by a monk named Hildebrand who later became Pope Gregory VII from 1073 to 1085.276: In China, religion didn't reflect social and cultural consensus, but tended rather to be a source of social protest. This was true from Daoism in the Han and Buddhism in the Tang Dynasty, to the Christian-influenced Taipings in the nineteenth century, to Falun Gong today.290: With the possible brief exception of the late-twentieth-century Republic of China, no Chinese government has accepted a true rule of law. While the People's Republic of China has a written constitution, it is the Chinese Communist Patty that is sovereign over the constitution.310: The Ming Dynasty was the last fully indigenous regime to rule China until the twentieth century, in which the traditional Chinese political system developed to its greatest extent. It was characterized by institutions that in retrospect were amazingly modern and effective, and others that were unbelievably backward and dysfunctional.312: Of the three components of political development that we have been following - state building, rule of law, and accountability - the Chinese got the first right at a very early point in their history. In a sense, they invented good government. They were the first to design an administrative system that was rational, functionally organized, and based on impersonal criteria for recruitment and promotion. Perhaps because Chinese society is so familistic, Chinese state builders saw their particular task as freeing the government from patrimonial or nepotistic influences that were the source of enormous corruption.
2020年08月26日
近代国家を最初に樹立した中国
中央集権的な官僚制度を最初に確立した中国は、兵士の動員率もずば抜けていた。ローマ帝国が人口の5%くらいを戦時に兵士として動員していたのに対し、中国を最初に統一した秦は8-20%を動員していたという。
動員数が多いから、犠牲者も多くなる。紀元前217年に起こったカルタゴとのトラシメヌス湖畔の戦いの犠牲者は5万人とされているが、秦の場合、紀元前293年の戦いでは24万人、紀元前260年の戦いでは45万人が死んだと記録されている（中国なので誇張もあるかもしれないが）。
秦がこうした大規模で効率的な官僚システムを作れたのは、法家の考え方を取り入れたからだった。それまでの中国は他国同様、同族を中心とする社会だったが、これは腐敗につながり、大きな国にはならない。そこに「法による統治」を持ち込んだのが秦であった。
以来、現在に至るまで、中国の歴史は、「法家と儒家との対立の歴史」だという。そして、漢族としての共通文化、歴史認識、共通言語が確立したのも、秦とそれに続く漢の時代であった。こうした共通文化の認識は、国が滅んでも残り、時代を経てまた漢族による統一国家が造られることになった。
106: From the standpoint of political development, the critical aspect of European feudalism was not the economic relationship between lord and vassal but the decentralization of power it implied.111: When compared to other warlike societies, China's bloody record during the Eastern Zhou stands out. One scholar has calculated that in the 294-year duration of the Spring and Autumn period, more than 1,211 wars were fought between and among Chinese "states." Throughout this entire period, there were only 38 years of peace. More than 110 political units were extinguished during this time.Compared to other militaristic societies, China under Zhou was remarkably violent. By one estimate, the state of Qin succeeded in mobilizing 8 to 20 percent of its total population, compared to only 1% for the Roman Republic and 5.2% for the Greek Delian League. Rates of mobilization were even lower in early modern Europe. Casualties were also of unprecedented scale. Livy reports that the Roman Republic lost approximately 50,000 soldiers in their defeats at Lake Trasimene and Cannae; a Chinese memorialist claims that 240,000 soldiers died in one battle in 293 B.C. and 450,000 in another in 260.113: The Growth of BureaucracyIt is safe to say that the Chinese invented modern bureaucracy, that is, a permanent administrative cadre selected on the basis of ability rather than kinship or patrimonial connection.119: Confucianism vs. legalismThe policies implemented by Shang Yang in Qin were justified and turned into a full-blown ideology known as Legalism by later writers like Han Fei. Much of China's subsequent history up through the Communist victory in 1949 can be understood in terms of the tensions between Legalism and Confucianism, a tension that revolved in part around the appropriate role of the family in politics.135: The nature of Han governmentIn the year 5 B.C., when the registered population of China was sixty million, there were already about 130,000 bureaucrats serving in the capital and provinces. Schools were set up to train young men, beginning at age seventeen, for government service, where they would be tested for their ability to read different styles of script, to keep accounts, and the like.149: Why China reunified has implications for contemporary developing countriesDuring Qin and Han dynasties, China developed a common culture in addition to creating a strong state... China was defined by a shared written language, a classical literary canon, a bureaucratic tradition, a shared history, empirewide educational institutions, and a value system that dictated elite behavior at both the political and social levels. That sense of cultural unity remained even when the state disappeared.150: China and India are differentThe default Chinese political condition over the past two millennia was to be a centralized bureaucratic state punctuated by periods of disunity and decay; India's default situation was to be a series of small, squabbling kingdoms and principalities, punctuated by a brief periods of political unity.
2020年08月25日
政治の起源
暇なので、たまには原書でと思って、読んでみる。仕事で使わないと、どうしても語学力は落ちてくる。日本語版も出ていて『政治の起源』。
筆者の関心は、「社会はどうやって部族社会から国家社会に移行したのか」「慣習からいかに近代的所有権は発展したのか」「どうやって正式な法制度は誕生したのか」にある。一言でいえば、それが現代政治なのだ。
第一章は「近代国家誕生前」。中国が2000年以上も前に、中央集権的な官僚システムを生み出し、広大な国家を統治していたことに改めて驚かされる。
PREFACE
I began to wonder how any society had ever made the transition from a tribal- to a state-level society, how modern property rights had evolved out of customary ones, and how formal legal systems, dependent on a kind of third-party enforcement that does not exist in traditional Melanesia, first made their appearance.
PART ONE Before the State
3: During the forty-year period from 1970 to 2010, there was an enormous upsurge in the number of democracies around the world. In 1973, only 45 of the world's 151 countries were counted as "free" by Freedom House, a nongovernmental organization that produces quantitative measures of civil and political rights for countries around the world. That year, Spain, Portugal, and Greece were dictatorships; the Soviet Union and its Eastern European satellites looked like strong and cohesive societies; China was caught up in Mao Zedong's Cultural Revolution; Africa saw consolidation of rule by a group of corrupt "presidents for life"; and most of Latin America had fallen under military dictatorship.
5: A third category of concern has to do no with the failure of political systems to become or remain democratic but rather their failure to deliver the basic services that people demand from their governments. The mere fact that a country has democratic institutions tells us very little about whether it is well or badly governed.
9: rates of intergenerational social mobility are far lower in the United States than many Americans believe them to be, and lower than in many other developed countries that traditionally have been regarded as rigid ans stratified.
13: Political institutions are necessary and cannot be taken for granted. A market economy and high levels of wealth don't magically appear when you "get government out of the way"; they rest on a hidden institutional foundation of property rights, rule of law, and basic political order.
16: The story of how political institutions developed cannot be told without understanding the complementary process of political decay. Human institutions are "sticky"; that is, they persist over time and are changed only with great difficulty. Institutions that are created to meet one set of conditions often survive even when those conditions change or disappear, and the failure to adapt appropriately entails political decay.
21: China succeeded in developing a centralized, uniform system of bureaucratic administration that was capable of governing a huge population and territory when compared to Mediterranean Europe.
42: Political power is ultimately based on social cohesion. Cohesion may arise our of calculations of self-interest, but simple self-interest is frequently not enough to induce followers to sacrifice and die on behalf of their communities. Political power is the product not just of the resources and numbers of citizens that a society can command but also the degree to which the legitimacy of leaders and institutions is recognized.
55: Depending on climatic conditions, hunger-gatherer societies have a population density from 0.1 to 1 person per square kilometer, while the invention of agriculture permits densities to rise to 40-60 per square kilometer. Human beings were now in contact with one another on a much broader sale, and this required a very different form of social organizations.
73: Keenley notes that in cross-cultural surveys, from 70 to 90 percent of primitive societies - at the level of band, tribe, or chiefdom - have engaged in warfare in the past five years, compared to 86 percent of states.
93: The Chinese developed an explicit antifamilistic political doctrine, and its early rulers sought to undermine the power of entrenched families and kinship groups in favor of impersonal administration. This state engaged in a nation-building project that created a powerful and uniform culture, a culture powerful enough to withstand two millennia of political breakdown and external invasion.
2020年08月24日
「俺の」はどうなっている？
先日読んだ川上昌直教授のBM本その２。川上ゼミの学生による研究事例が多数含まれていて、ゼミに参加している雰囲気で書かれている。川上先生による「講義→ゼミ生発表→講評」といった感じ。
そのゼミ生発表の一つが、「俺のイタリアンはなぜ繁盛店になれたのか？」だった。「俺の」の顧客価値は以下の通り。
WHO：美味しいものを低価格で食べたい人
WHAT：一流の料理人がつくる高級食材を使った低価格な料理
HOW：他店よりも安い価格
これを支えるプロセスだが、原価率の高い料理（飲食店平均は30%以下に対して、60%以上）を、立食形式にして回転率を上げてカバーしている。同じ店舗面積で椅子がある店の3倍入店できるとともに、長居しにくいので、回転率が上がる。この相乗効果で2011年に新橋でオープンした「俺のイタリアン」は1年後には月商1560万円の繁盛店となった。
ところが、この数年、あまり話題にならない。私も「俺のGrill&Bakery大手町」を何度か利用したが、全席椅子席であり、当初のコンセプトとは違い、普通の店になっている。新規出店数を見ると、以下の通りで、2015年以降勢いがなくなっている。何が起こったのか？
2011 イタリアン、焼き肉
2012 フレンチ、おかもと
2013 焼き鳥、割烹
2014 おでん、そば、うなぎ、スパニッシュ
2016 Bakery&Cafe
2018 Grill&Bakery、ビストロ＆Bakery
調べてみると、2015年に、安田副社長（野村證券出身）、森野専務（店舗開発）、能勢取締役（「シェ松尾」元シェフ）、島田取締役（和食担当）全員が辞任している。言ってみれば、取締役全員が創業者の坂本社長（ブックオフ創業者）に反旗を翻したことになる。
上記取締役以外にも、当時の看板シェフが次々と辞めている。大前研一氏は、当時その状況を見て、やはり有名シェフにとって、高回転低価格で提供するという「格式の低い業態に嫌気がさした」のではないかと見ている。
その後5年経って、現在の状況、今後の戦略は気になるところ。最近では、業態を広げるよりも、原点であるイタリアンやフレンチで、地方FC展開を進めているようだ。なるほど、これなら、「俺の」コンセプトからブレないし、FCなので自前の資金が要らないうえ、それぞれの地方初なので地元で際立つことが出来る。
40：BMの描き方「９セル」縦軸と横軸の整合性をとりつつ、きっちり9マスを埋めることで「儲ける仕組み」を完成させる。これまで「利益の議論」がBMにおいておざなりにされていた。48：片付けるべき用事（Job）顧客価値提案では、ニーズを探るのではなく、「未解決の用事」に注目する。ニーズは、モノがある程度はっきりした状態で、顧客が持つ欲求。134：現状の打破は利益の再設計から価値提案が煮詰まったら、「利益」に目を移す。既存製品をベースに利益の取り方を変えてみて、それに合わせて顧客価値提案を調整する。
2020年08月23日
日本最大級の偽文書
学校教材や市町村史にも活用されてきた歴史資料が、後世の偽文書だった
しかも、それらはたった一人の人物によって創られたものだった。椿井政隆（1770-1837）が創り、近畿一円に流布し、現在も影響を与え続ける数百点にも及ぶ偽文書「椿井文書」。
ニーズがあればそれに応えようとする事業家？はいつの世にもいる。江戸時代後期に山城国相楽郡椿井村（現・京都府木津川市）に生まれた椿井政隆もその一人であったようだ。
江戸になって太平の世の中が続くと、実力主義ではなくなってくる。そうすると人が求めるのは「家柄」とか「由緒」といったちょっと自尊心をくすぐられ、自慢できる要因だ。あるいは、村同士の争いで、自らが有利になるような「歴史的証拠」を求める。こうしたニーズに抜群の技量で応えたのが椿井政隆だった。
こうした偽歴史文書は数多く、戦前から研究者の間では要注意とされてきた。ただ、歴史学の常として、偽文書自体が研究対象となることはなく、代々研究者の間で無視されてきたのだという。戦前は特に研究者は限られていたのでそれでよかったらしい。
長年研究者の間で無視されてきた椿井文書は、戦後、高度経済成長期に「復活」することになる。それを主導したのは、ベッドタウン化で新旧住民をつなぐ「地域の歴史」が欲しい地方自治体で、その片棒を担いだのは戦前から戦後の研究者の交代で、「偽文書注意」が引き継がれなかった若手歴史学者だった。
経済成長のおかげで進学率が高まり、研究者の数も大幅に増えたのはほとんどの学問で同じ。その分、競争も激しくなったため、研究分野を絞って、専門分野しかしらない研究者が増えてしまった。歴史学もしかりで、幅広く見ればすぐわかる矛盾に気づかず、偽文書を取り入れてしまったのだという。そして、一旦論文として受け入れられると、それが繰り返し引用されることになった。
4：歴史学の問題点を映す「鏡」研究が蓄積されることで専門性は高まるが、その結果として分野ごとに個別分散化し、蛸壺的な研究になってしまいがちである。このような問題は、歴史学でもつとに指摘されている。（中略）すなわち、近世や近代にその地域で起こったことを気にしないまま、古代や中世を直視してしまう。あるいは、地域に残された文書群を見ることなく、古代や中世の活字資料だけに頼ってしまう。12：椿井文書の特殊性内容がバラエティに富んでいることである。本書では、椿井政隆が偽作したものを総称して椿井文書と呼ぶが、そのなかには差出人を偽装した偽文書だけでなく、由緒書や系図・絵図の類も多く含まれる。しかも椿井政隆は、同一人物による作ではないように見せかけるため、いくつかの筆跡を使い分けている。そのうえ、椿井文書は近江・山城・大和・河内の各地に大量に分散している。192：戦後歴史学での忘却戦後歴史学は、皇国史観に基づく歴史学からの脱却を目指して出発する。その動きが、京大においては西田直二郎の教職追放という形に帰結する。そのため、京大では彼の文化史学が継承されることはなかった。（中略）椿井文書について議論していた京大出身の若手研究者たちが、関西から離れてしまったのも不幸であった。194：自治体史への採用昭和40年ころから、全国各地の地方自治体において、自治体史の編集が活発に行われるようになる。不幸なことに、戦前から戦後にかけての研究者の世代交代によって、椿井文書の存在もほとんど忘却されたころに、各地で古文書の悉皆調査が始まるのである。そのため、この事業のなかで次々と再発見された椿井文書は、あまり警戒されることなく活用されてしまう。216：椿井政隆の着眼点や椿井文書の作成手法椿井政隆はあらゆるジャンルの史料を複雑に関係づけることで、偽文書に信憑性を帯びさせていたのであった。しかも、椿井政隆は村と村が対立しているところに出没し、論争を有利に導くような偽文書を作成することで村々の欲求に応えていた。219：椿井文書は特殊事例か椿井文書は、かなり大がかりな事例ではあるが、その供給量に見合うだけの需要が、当時の社会には存在したと想定することもできよう。（中略）近世にはたわいのないものまで含めると、偽文書は無数に存在する。
2020年08月22日
復活の日
コロナ禍で急に注目された古い小説。初版は1972年というから大阪万博の後で、石油ショックの前。高度経済成長で日本は浮かれていた時だと思う。そんなときに出た人類が滅亡するという話は、翌年出た『日本沈没』と並んで、筆者を流行作家にした。
かくいう私も、映画『日本沈没』しか見ていなかったが、今回、「誤って拡散した細菌兵器で人類が滅んでしまう」という本書を読んでみる。
話は、アメリカが宇宙で採取したウイルスをイギリスが盗んだところから始まる。同盟国とはいえ、国益をかけて、利害が衝突することもある。それをもとにイギリス陸軍研究所でつくり出されたのが最強最悪のMM-88と言われるウイルス核酸。これを盗み出した飛行機がアルプス山中で墜落。ウイルスは3か月で世界中に拡散し、人類は死に絶える。
唯一生き残ったのが、世界から隔離され、各国の南極基地で越冬していた約1万人。人類はここから復活できるのか？という筋書き。
話には、米軍が朝鮮戦争で細菌爆弾を使用したとか、訓練中のB47が米本土で水爆を誤って落とした（安全装置が働いて不発）とか出てくるのだが、本当か？
調べてみると、米軍が朝鮮半島で細菌爆弾を使用したのは事実らしい。しかも、そのもとになっているのは旧日本軍の731部隊で、研究者が戦後、免責の代わりに米軍の細菌戦研究に協力させられている。
1957年の水爆落下事件は確認できなかったが、類似の以下の事件を参考にしていると思われる。
・1958 SC上空を飛行中のB47から核爆弾が落下
・1961 NCを飛行中のB52が空中分解し、水爆が落下
・1968 水爆4発を積むB52がグリーンランドで墜落
冷戦時代、第三次世界大戦勃発以外にも際どい事故が何度もあったわけで、これまで大きな事故なく生き残れたのは幸運だったというしかない。また、今回のコロナでも「中国の軍研究施設からウイルスが漏れた」との事故説は今もある。
75：ワクチン製造
卵に菌種を植え付けて、ワクチンを作るまで100日も掛かる。
103：朝鮮戦争で細菌爆弾使用
岩国基地で細菌戦の訓練を受けたB26が、1952年1月、10個の細菌爆弾を北朝鮮に投下したとアメリカの飛行士が証言。
297：1万人対16人
南極には、米英ソ、それにノールウェーをふくめて全部で16名の女性がいた。そしておそらく、この16名の女性が、人類にのこされた最後の女性かもしれなかった。
323：核ノイローゼ
1957年、訓練中のB47が、東部NJの上空で、水爆を誤って落とすという事故。安全装置がかかっていて爆発しなかったものの、後の調査で、6つの安全装置のうち、５つまでがこわれていて、最後の一つで爆発が防がれたことが判明。
2020年08月21日
経営戦略としての産業医
今年の6月に出版された、「企業におけるメンタルヘルス」に関する最新刊。著者は、1975〜1989年生まれの若手医師らで、東大病院精神科の医師と労働衛生コンサルタント二人。
この20年くらいのメンタル疾患の増え方は凄まじい。一つには、平成の経済の低迷、子供に「優しい」ことを第一とする社会環境、そしてメンタル疾患自体が社会的認知を得たということなのだろう。そうでなければ、職場環境が今より悪かった昭和の時代から倍増していることの説明がつかない。
「ストレスチェック」は2015年11月から50人以上の事業所では義務化された。しかし、導入企業を独自に調査したところ、およそ3つの対応に分かれている。
�〆把禪造離好肇譽好船Д奪�を自社で実施
�∪賁膓伴圓飽様蠅靴謄好肇譽好船Д奪�と組織分析を実施
�７弍勅圓琉媼韻�高く、場合によっては社内に専門化を抱えて、ストレスチェックのデータを積極的に活用し、メンタル疾患発生を予防
本書で紹介されている研究結果を信じれば、「健康経営」のROIは高く、��を実施た方がよさそうだ。ただし、評価基準が難しく、認知度が高まることで一時的に相談件数や受診件数が増えるのが普通。また、企業業績によっても職場のストレス度合いが変化するので、効果を測るのは難しい。
はじめに：経営者のメンタルヘルスに対する意識の高さが、その企業のメンタルヘルスの質を規定している＊意思決定者たちは、メンタルヘルス問題の存在を踏まえた上で、企業経営を行っていく・人事担当者は、メンタルコストも織り込んだ、より高い次元の採用コストを試算する・労務担当者は、メンタル不調者の対応に追われるのではなく、未然に防ぐための積極的な施策に思いを馳せる・経営者は、従業員のメンタルヘルスに、高い意識を持ち、深い敬意を払う19：メンタル疾患の増加・精神疾患受診患者数 H14 258万人 → H29 419万人・内うつ病など「気分障害」 71万人 → 127万人・労働災害中精神疾患請求件数 H26 1456 → H30 182025：うつ病の一般化と社会の関係「1998年ごろからうつ病の認知度とうつ病の罹患者が飛躍的に増加した」（北中淳子『うつの医療人類学』）112：健康経営の歴史1990年代にアメリカで生まれた健康経営論は、日本において2000年代ごろから産業界や行政において注目されるようになり、2014年ごろから経済産業省を中心とした政策展開が活発になるのと合わせて一般的な認知度が向上した。アメリカでは民間の側から広まっていき、一方、日本では経済団体や行政といった、上からの啓蒙によって一般に広まった。114：生産性の向上Absenteeism：体調不要などによる欠勤、あるいは長期休業Presenteeism：何らかの疾患や病状を抱えたまま出勤することにより業務の効率が低下している状態「健康経営評価指標の策定・活用事業 成果報告書」（東京大学健康経営研究ユニット）企業の健康関連コストAbsenteeism：5%Presenteeism：80%医療費：10%傷病手当金・労災給付金：数％127：健康と生産性の関係「運動不足、高ストレス、生活習慣病、喫煙・飲酒などの従業員個人の健康リスクが増加すればするほど、Absenteeism、Presenteeismが上昇。147：コンプライアンス遵守を超えた体制の戦略的整備常時50人以上の従業員が従事する事業所は、ストレスチェックの実施義務。しかし、これらの結果を集団ごとにストレスの傾向などにまとめた集団分析は、努力義務。170：メンタルヘルスに関する効果が出るのに数年を要することがある、他の要因に左右されやすいメンタルヘルス研修などの場合は、啓蒙が進んだ結果、一時的に相談件数や医療機関への受診数が増える。業績が悪化すれば、従業員の精神状態に影響を与える。218：コンサルに相談する前にできること�々埓�機関に相談都道府県の産業保健総合支援センター近隣の労働局や労働基準監督署�⊆�社で採用・契約している産業医労働安全衛生法に基づく国家資格である労働衛生コンサルタント労働衛生コンサルタントは、労働安全衛生法上、衛生管理者としても選任可能（専属でなくてもよい）。
2020年08月20日
従業員の健康は企業収益向上につながる
アメリカでも日本でも、「健康関連コストの中でPresenteeismの損失額が最大」というのは興味深い。ここ数か月調べていたのは、職場で精神疾患をどう予防するかと、なってしまった後の対策。しかし、最も大きなコストは、精神疾患に至らないまでも、やる気をなくしたままただ職場に出ているだけの人たち。生産性が低く、別名「ぶら下がり社員」だ。
同様に、日米両国の研究で、企業の健康投資は十分なリターンがあるという（上図）。Johnson&Johnsonの調査では、「健康投資$1に対して投資リターン$3」で、ROI=3xだ。人材の流動性が低い日本では、よりPresenteeism（生産性が低い社員が辞めずに勤務を続けることの弊害）関連損失が多く、もっとROIは高いかもしれない。
はじめに：健康経営とは「従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考え方の下、健康管理を経営学的な視点で考え、戦略的に実践すること」（経済産業省）49：従業員の最大の健康関連コストは、医療費ではなく、Presenteeism(Loeppke 2009)職場には出勤してはいるものの、病気やけがなど何らかの健康問題の存在によって、業務の能率が落ちている状況。52：Newsweek Japan 2011 「儲かる『健康経営』最前線」米J&Jが世界250社・約11万4000人に健康教育プログラムを提供して、投資に対するリターンを換算。健康投資（人件費、保健指導等利用費、システム開発・運用費、設備費）期待される効果（生産性の向上、医療コスト削減、モチベーションの向上、リクルート効果、イメージアップ）＊健康投資$1に対して投資リターン$355：日本でもアメリカの先行研究のように、健康関連コストの中でPresenteeismの損失額が最大H27年度健康寿命延伸産業創出推進事業「健康経営評価指標の策定・活用事業」（東大ワーキンググループ）74：一度精神疾患に罹患すると、健康状態が良好な時のパフォーマンスにまで回復する確率が低い良好な健康状態を維持しなければ、給与をもらい長く働くことが困難。134：離職率全社員の離職率だけでなく、3年以内離職率も測定。健康に起因した離職率とそれ以外を区別。
2020年08月19日
「クラッシックカー」を目指すのが予防医療
岡山大学医学部卒業後、同大学病院の麻酔科で働いていたという医師によって書かれた本。その後、「予防医療」実践のために独立したという。
「クラッシックカー」を目指すのが予防医療、というのは分かりやすい。例えば、60歳の人は、言ってみれば、60年物の中古車と同じなのだ。ぞんざいに使っていれば、とっくの昔に廃車になっている。しかし、きちんと手入れをしていれば、60年経っても、トラブルもなくきちんと走れる。もちろん、無茶な走り方はせず、スピードの出しすぎや長時間運転はしない。
クラシックカー市場では、そうした何十年も前の車が高値で取引されている。性能は現在の大衆車にも敵わない。走れるように維持するだけでもお金がかかる。それでも、現在の車にはないものを求めて大金を払う人がいて、しかも、値上がりし続けている。
そうした魅力ある「クラシックカー」になりたいものだ。
クラシックカー市場では、そうした何十年も前の車が高値で取引されている。性能は現在の大衆車にも敵わない。走れるように維持するだけでもお金がかかる。それでも、現在の車にはないものを求めて大金を払う人がいて、しかも、値上がりし続けている。
そうした魅力ある「クラシックカー」になりたいものだ。
序文：国も私たち国民も有効な手立てを講じないまま、問題を先送りしてきました。その結果、２０１８年、見事に予想通りの事態が訪れました。社会保障は毎年４０兆円近い税金での補填なしには成り立たない状況。これを赤字国債で補っているのです。年金受給年齢も７０歳になり、いずれ年金はスズメの涙ほどになり、生涯現役で働かなくては生活できない時代がすぐそこまで来ています。30：やるべきことは労働環境改善と社員の健康増進サポート長時間労働を減らしハラスメントをなくす。37：1人の社員が3か月病欠すれば、最低でも300万円の損失・技術、ノウハウの損失・社員教育にかけた費用・後を穴埋めするための負担47：予防医療にかかる費用は治療費の1/100「会社は社員を、家族のように大切にする」48：健康経営で生産性を1.5倍に健康経営実践5年で、社員の生産性は約1.5倍に上がる63：医療費はもっと抑えることができる医療費が安いということで、じゃぶじゃぶと医療保険を利用している。67：予防医療で健康人口を増やし医療費を削減60歳の日本人が使う医療費は年間平均60万円。100：「クラッシックカー」を目指すのが予防医療60年物の中古車。きちんと手入れをしていれば、トラブルもなくきちんと走れる。走り方も優しく、スピードの出しすぎや長時間運転はしない。144：起床から12時間が過ぎたら「酒気帯び運転」状態起きてから集中力が続くのは12時間まで。起床15時間後の仕事の質は飲酒運転状態。221：命令されたこと、頑張ることは続かないフィットネスクラブ入会者は、かなりやる気になって始めているのに、1年もたたないうちに50%近くが退会、2年経つとなんと90%が退会してしまいます。ジョギングシューズ購入者も一緒です。やる気満々で買ったのに、1年後に使っている人は2%程度という驚きの数字。
2020年08月18日
帝国と疾病
「牛痘に罹った人は天然痘にならない」
酪農地帯の英バークレイで生まれたジェンナーが、そうした現象から、天然痘ワクチンを思いついたのは1773年、故郷に戻って開業医として仕事を始めて間もなく。これをまとめた論文が英国王立協会に提出されたのが1797年だが、これは「不完全」としてコメントもなしにつき返される。
いずれにしても、種痘を発明したのはジェンナーということになっているが、実は、人痘種痘はユーラシア大陸の各地で古くから実施されていたらしい。牛痘は安全だが、人痘種痘は重症化して死亡することがあった。
しかるべくウイルスをしみ込ませた綿切れを鼻腔内に挿入するなど、進歩した中国式の方法についての報告は、すでに1700年ロンドンに達していたという。中国の諸文献によると、この予防法は11世紀にインドとの国境地方から来た漂泊の一賢人によって伝えられたという。
ウイルスどころか、細菌の存在も知られてなかった当時。中国で既に天然痘の対策が行われていたのは流石だ。
酪農地帯の英バークレイで生まれたジェンナーが、そうした現象から、天然痘ワクチンを思いついたのは1773年、故郷に戻って開業医として仕事を始めて間もなく。これをまとめた論文が英国王立協会に提出されたのが1797年だが、これは「不完全」としてコメントもなしにつき返される。
いずれにしても、種痘を発明したのはジェンナーということになっているが、実は、人痘種痘はユーラシア大陸の各地で古くから実施されていたらしい。牛痘は安全だが、人痘種痘は重症化して死亡することがあった。
しかるべくウイルスをしみ込ませた綿切れを鼻腔内に挿入するなど、進歩した中国式の方法についての報告は、すでに1700年ロンドンに達していたという。中国の諸文献によると、この予防法は11世紀にインドとの国境地方から来た漂泊の一賢人によって伝えられたという。
ウイルスどころか、細菌の存在も知られてなかった当時。中国で既に天然痘の対策が行われていたのは流石だ。
�ぅ皀鵐乾訥觜駛峩修留洞舛砲茲觴隻促丱薀鵐垢侶稱�10：アジアを横断する陸上の対象交通の発展・強化勢力が絶頂に達した1279年から1350年まで、この帝国群の版図は中国全土とロシアのほとんど全土、さらに中央アジア、イラン、イラクを包含した。そして、一日優に百マイルずつ何週間も走り続ける騎馬飛脚や、もっと緩慢な歩みではるばる遠い距離を行き来する隊商や軍隊などの織りなす一大交通網が、この帝国群を1350年代までひとつに結んでいた。そのころになると中国に反乱が勃発し、1368年にモンゴル人はこの最も豊かな征服地から完全に放逐されたのであった。55：14世紀ヨーロッパペストに対する反応をお祭り騒ぎに解消しようという最初の重要な本能的行為は、醜悪かつ極端な形を取った。ドイツとドイツに隣接する地方では、鞭打ち苦行者の集団が、お互い同士血みどろに打ち合うことと、ユダヤ人を襲撃することで、神の怒りを和らげようとした。ユダヤ人は、ペストの毒を故意にばらまいた下手人と見なされて、迫害されるのが常だったからである。鞭打ち苦行者は教会と国家の既存の権威を一切認めず、資料を信じるなら、彼らの祭祀はしばしば参加者の集団自殺の観を呈したという。61：教会特有のどうしようもない硬直性とは打って変わって、諸都市の行政当局特にイタリアのそれは、激越な悪疫の挑戦にかなり素早い対応を見せた。行政官は実際面でいかに対処すべきかを習得していったのだ。埋葬措置を指導し、食料の供給を確保し、隔離検疫を設定し、医者を雇い入れ、その他流行時における公的、私的な行動規制を定めるなど、大わらわの活躍を示した。（中略）この活力こそ、1350年から1550年の2世紀間に、ヨーロッパの諸都市、特に上に立つ世俗の権力との争いはあまり無かったドイツとイタリアで、都市国家が一種の黄金時代を迎えた原動力だった。�ヂ舁里鯆兇┐討留嵒存魎�92：もし天然痘があのとき突発しなければ、コルテスの勝利は不可能だったインカの王は首都を離れ北方で軍の指揮を取っている間にこの病気で死に、王位継承者も死に、正式の後継者がいなくなった。そこで内戦が勃発し、このようにインカ帝国の政治構造が危殆に瀕していた正にその時、ピサロと命知らずの彼の手下がクスコに到着し財宝を強奪したのである。��1700年以降の医学と医療組織がもたらした生態的影響155：天然痘での細菌戦争1763年、ジェフリー・アマースト卿は、天然痘の病毒をしみ込ませた毛布を敵のインディアン部族にばらまくよう命令を発し、しかもこの命令は実行された。158：人痘種痘実は、人痘種痘は、アラビア、北アフリカ、ペルシャ、インドなど広範囲な地域にわたって、民衆のレベルではすでによく知られ、実行されていた。しかるべくウイルスをしみ込ませた綿切れを鼻腔内に挿入するなど、進歩した中国式の方法についての報告は、すでに1700年ロンドンに達している。中国の諸文献によると、この予防法は11世紀にインドとの国境地方から来た漂泊の一賢人によって伝えられたという。そして以後、非常な普及を見たとも言われている。
2020年08月17日
人類の歴史を大きく動かした感染症
紹介に、「従来の歴史家が顧みなかった流行病に焦点をあてて世界の歴史を描き出した名著」とある。原著がアメリカで出版されたのは1976年で44年前のことになる。それまで、疫病が人類史に与えた影響について正面から取り上げた本はなかった。この本が嚆矢となり、現在では研究が進んでいる。
1970年代にエイズが突然爆発的に出現した原因は、「ゲイ解放運動の結果、男性同性愛者間の性的乱交が増加した」ことと、「麻薬使用者の間で安価なプラスチック製の注射器が普及した」ことだという。つまり、エイズウイルスはそれまでも存在したが、「ヒトの行動様式に変化が生じて、宿主から宿主へウイルスの移動が容易になった」のだ。
それから50年。LGBTは学校の教室で教えられる程になり、市民権を得た。これはさらにヒトの行動様式を変え、また新たなウイルスが流行するのか。振り返れば、人類の歴史は感染症に定期的に影響を受けてきた。そして、医学がこれに対抗しようと介入すればするほど、病原菌の生物学的進化の速度をますます早める。
一番いいのは、密集して生活しないことと、一人一人が免疫力を高めることのようだ。
13：医学者たちは、自分たちの強力な介入の手を強めれば強めるほど、病原菌の生物学的進化の速度をますます早めるという、思ってもみなかった結果を生じ、次々に現れる薬品の攻撃に耐えうる頑健さを、病原菌に与えているという事実を認め始めている。
15：1970年代にエイズが突然爆発的に出現した原因
ヒトの行動様式に変化が生じて、宿主から宿主へウイルスの移動が容易になった。
�．殴げ鯤�運動の結果、男性同性愛者間の性的乱交が増加した。�▲悒蹈ぅ鵑寮徒�注射その他の麻薬の使用増加で、安価なプラスチック製の注射器が普及した。
19：今日の飛行機による旅行は、この疾病均質化の過程がますます加速されて続いていくことを保証する。（中略）あるひとつの新しい、そして特に適応のうまくいった感染症が出現すると、それはまたたく間に地球全体に広がる。
21：今日人類が自然の生態系に介入していることが主な原因で、生物進化は最高速度で進行している。
25：なぜエルナンド・コルテスは600人に足りぬ部下で、数百万の民を擁するアステカ帝国を征服できたのか？
インディオは倒すが、スペイン人には痛くも痒くもない病気の与える、心理的効果。このようは不公平は超自然の力によってしか説明できない。どちらの側が神の恩恵に浴しているかは、一目瞭然。
�ー輓勅圓箸靴討凌洋�
57：初めての完全な人間と言い得るわれわれの先祖は、ポピュレーションの増加を抑制する基本的な調整機構を失ってしまった。それに代わる人口抑制の手段として、人間の人間による殺戮ということが恐らく起こった。
�⇔鮖忙�代へ
91：住血吸虫症とそれに類した寄生虫症の古代における分布状況如何の問題はさておき、確実なことは、どこであろうとこれが蔓延したが最後、その地の農民層は無気力で衰弱しきった存在に化してしまいがちだった。
吸虫類とそれに類する寄生虫症がもたらす肉体的疲労と慢性的な不快感は、人類が怖れなければならない唯一の大型肉食獣、すなわち戦争と征服を目的として組織され武器を携えた同類たる人類による、侵略行為の成功を招来するものだった。
��ユーラシア大陸における疾病常生地としての各文明圏の間の交流
227：日本列島は13世紀になって、中国のそしてその他文明世界の疾病パターンに、ほぼ追い付いた。だがそれに先立つ600年もの間、繰り返される疫病流行のために日本は、世界のもっと人口密度が高くまたあまり孤絶していない場所に比較して、恐らくずっとひどい被害を受けた。
2020年08月16日
効率ばかり追って幸せですか？『モモ』
『モモ』はさすがに読んだことがある。NHK「100分de名著」でちょうど今月取り上げられている。映画化もされた。
人間の時間のとらえ方が一神教と仏教で違うというのは面白い。一神教ではゾロアスター教に始まり、キリスト教、イスラム教と「天地創造から始まって最後の審判で終わり」という、まっすぐで直線的な時間の理解をしている。
ところが、仏教では、時間は円環している。「ずっと回り続けることはしんどいので、どこかで逃げ出す」というのが「解脱」なのだそうだ。
231：小さなモモにできたこと、それはほかでもありません、あいての話を聞くことでした。ほんとうに聞くことのできる人は、めったにいないものです。233：教育の二つの考え方�／祐屬篭�っぽの器だからいっぱい教えないとダメ�⊃祐屬�本来持っている力をいい形で引き出すこと（シュタイナー）247：終わりとは何か人間の時間のとらえ方�〇呂泙蠅�あって終わりがあるというまっすぐで直線的な時間の理解ゾロアスター教→キリスト教・イスラム教「天地創造から始まって最後の審判で終わり」�∋�間は円環している、回っている（仏教）ずっと回り続けることはしんどいので、どこかで逃げ出す（解脱）250：「オソイホド ハヤイ」（カメのカシオペイア）浦島太郎を竜宮城に連れて行ったのもカメでしたが、モモを時間の国に連れていくのもカメ。「ゆっくり急げ」（ローマ帝国初代皇帝アウグストゥス）
2020年08月15日
毒があるから心に残る『ギルガメシュ王ものがたり』
『ギルガメシュ王ものがたり』は、世界で一番古い物語だという。紀元前3000年期に、メソポタミアで生まれた、世界最古のシュメール文明が生み出した文学作品。メソポタミア文明といえば楔形文字だが、実際に、楔形文字で粘土板に書き残されたものが、アッカド人、バビロニア人、アッシリア人へと伝わり、当時のリンガ・フランカ（国際共通語）であったアッカド語に翻訳されて小アジアに伝わったというのだから、これを現代人が読めるのは奇跡的だ。
一体、粘土板が何枚要ったのだろう
200：人間は一人では生きられないギルガメシュは、大きく、つよく、なんでももっていましたが、しあわせではありませんでした。友だちがいなかったからです。ギルガメシュは、いつも、ひとりぼっちで、そのために、だんだん気むずかしく、ざんこくになっていきました。203：エンキドゥは、言葉を覚えることによって人間らしくなる人は言葉を使って初めて人になる。自分の思考を整理するためには言葉が必要。225：『ギルガメシュ叙事詩』は、人生におけるあらゆることが詰まった物語強い男性でもときには女性に弱くなるとか、嫉妬は怖いとか、あるいは好敵手の存在が自分自身を成長させること、自然と文明の対立、動物と人間の関係、友情の大切さ、何かを得るためには必ず試練を経なくてはならないこと、人生のすべてはトレードオフであること、自分のやりたいことを最後までやりきるには強い意志が必要なこと、そして人間は成長していく動物だということ。だからこそ『ギルガメシュ叙事詩』は、聖書やギリシャ神話にも影響を与え、ヨーロッパ文明のベースとなった。ものすごく内容が豊かな人類共通のテクスト。
2020年08月14日
『さかさ町』で、頭と心をやわらかくする
『さかさ町』は知らなかった。アメリカでは1958年に刊行され今に続く児童書のロングセラーだが、日本で刊行されたのは2015年。道理で知らないわけである。これほど時間がかかったのは、日本では売れないと思われたのかもしれない。
あらゆるものが「さかさ」で「あべこべ」な町。抱腹絶倒なのだが、常識にとらわれない新事業を考える訓練にもなりそう。まさに、逆転の発想だ。
「学校は、いい子だけが行くところ、悪い子は、学校には行けない」なんて実行したら面白そう。昔は学校に行きたくて仕方なかったという。貧しい家の子は小学校を出れば働かなければならなかった。それが、戦後、中学校まで義務教育となり、さらには高等学校に行くのは当たり前になった。途端に、優秀な卒業生を長年送り出してきた地域の商業高校や工業高校のレベルが下がり、卒業生が嘆いている。
あらゆるものが「さかさ」で「あべこべ」な町。抱腹絶倒なのだが、常識にとらわれない新事業を考える訓練にもなりそう。まさに、逆転の発想だ。
「学校は、いい子だけが行くところ、悪い子は、学校には行けない」なんて実行したら面白そう。昔は学校に行きたくて仕方なかったという。貧しい家の子は小学校を出れば働かなければならなかった。それが、戦後、中学校まで義務教育となり、さらには高等学校に行くのは当たり前になった。途端に、優秀な卒業生を長年送り出してきた地域の商業高校や工業高校のレベルが下がり、卒業生が嘆いている。
117：あらゆることがさかさ。ものの見方も全部ひっくり返っている。看板はさかさになっていて何が書いてあるのか分からない。家は屋根が下。車はエンジンが後ろ。119：子供がはたらき、おとしよりはあそんでもいい。「たのしいですよ、はたらくって」121：産業構造の転換GAFAの時価総額は、日本の国家予算より大きい。GAFAの仕事は、世の中に新しい価値を創出すること。だから楽しく仕事をする方が効率がいい。125：病院患者さんは待たなくていい。お医者さんが待つ。健康は人がお医者さんにお金を払うから、病気になったらお金を払わなくていい。薬も一回目はおいしいけれど、治らなかったらどんどんまずくなる。127：学校は、いい子だけが行くところ、悪い子は、学校には行けない
2020年08月13日
どんな人生にも雨の日があるから『アンデルセン童話』
『人形姫』などで知られる『アンデルセン童話』。アンデルセンは生まれが貧しく、十分な教育を受けられなかった。そのため、彼の書く文章には単純なスペルミスがあったりして、母国デンマークでの評価は、海外で名声を高めてからも、なお高くなかったという。
独学で学んだアンデルセンは、ことさら「旅」を愛した。1831年、26歳の時に訪問したドイツを皮切りに、68歳まで、なんと30回も海外への旅に出ている。北はスウェーデン、東は、イスタンブール、黒海、南はシチリア、マルタ島、西は連合王国（英国）やポルトガルまで。飛行機はおろか鉄道も整備されておらず、乗合馬車の時代にあって、いくら欧州は地続きだとはいえ、これはスゴイ。
先日、予定通りスウェーデンで9か月の滞在を終えて帰国した彫刻家に会った。滞在の終盤にコロナ禍が発生。しかし、よく知られた通り、スウェーデンは当初から集団免疫作戦をとっており、市民生活は最後まで変化がなかったという。会社も学校もこれまで通り。帰国したら、統計的にはるかに感染リスクの少ない日本のほうが「あれもダメ、これもダメ」と制限されているのに驚いたという。
コロナ禍は学校教育の機会や旅行による体験の機会も奪っている。「可愛い子には旅をさせよ」は、リスクをとっても旅行による得難い体験したほうがいい、ということだったと思う。昔の旅行は今と違ってけた違いに危険で、旅先で頓死ということも多かった。それに比べれば、PCR検査を受けてその結果が出るまで数日間隔離で済む程度なら、海外旅行にもどんどん出かけたほうがいい。
97：独学で学べる人は強いアンデルセンは生まれが貧しく、十分な教育を受けられませんでした。彼の書く文章には単純なスペルミスがあったりして、母国デンマークでの評価は成功してからでもなお高いとは言えなかった。貧しい靴職人の息子としてアンデルセンが生まれたのは、1805年。（中略）グリム兄弟は高等教育を受けた知的な人たちでしたから、そういう意味では対照的。アンデルセンは独学で学ぶ。人間が賢くなるために必要なのは、＜人、本、旅＞103：どんな人生にも雨の日はあるここまで自己を犠牲にしてもなお実らないという物語が読み継がれているのは、やはり世の中には理不尽がたくさんあるから。それを暗くつらく書いてあれば逆に落ち込むが、美しく清らかに書いてあるので、読んでいると自分の気持ちが浄化できる。＜カタルシス＞
2020年08月12日
アラブ人ってほんとにすごい『アラビアン・ナイト』
カトリック教会が支配したヨーロッパ中世は暗黒時代ともいわれるが、その間に政治経済・芸術文化の中心だったのがアラブ社会だ。そして、その頃書かれたのが『アラビアン・ナイト』。
一言でいえば、「アラブ社会はおもしろい」という。気候の厳しいアラブ釈迦では農業は成立せず、遊牧民がほとんど。そして、遊牧の生産性は低いから、商人でもある。イスラム教は「商人の宗教」と言われるらしい。
フランス料理の源流が『アラビアン・ナイト』の時代のバグダードの洗練された宮廷料理にあり、キリスト教文学の最高傑作ともいわれるダンテ『神曲』がムハンマドが天国を旅した物語を下敷きにしているとは知らなかった。
それどころか、キリスト教を国教としたローマ帝国が、529年にアテナイの最高学府アカデメイアやリュケイオンを閉鎖。追放された学者が向かったのが、サーサーン朝ペルシャであった。ヨーロッパで潰えた古代ギリシャやローマの学問はペルシャのジャンディ・シャプール（大学）で生き残ったのだ。
イスラムというと原理主義者のイメージがあるが、元来は、オープンで先進的な宗教であったようだ。
一言でいえば、「アラブ社会はおもしろい」という。気候の厳しいアラブ釈迦では農業は成立せず、遊牧民がほとんど。そして、遊牧の生産性は低いから、商人でもある。イスラム教は「商人の宗教」と言われるらしい。
フランス料理の源流が『アラビアン・ナイト』の時代のバグダードの洗練された宮廷料理にあり、キリスト教文学の最高傑作ともいわれるダンテ『神曲』がムハンマドが天国を旅した物語を下敷きにしているとは知らなかった。
それどころか、キリスト教を国教としたローマ帝国が、529年にアテナイの最高学府アカデメイアやリュケイオンを閉鎖。追放された学者が向かったのが、サーサーン朝ペルシャであった。ヨーロッパで潰えた古代ギリシャやローマの学問はペルシャのジャンディ・シャプール（大学）で生き残ったのだ。
イスラムというと原理主義者のイメージがあるが、元来は、オープンで先進的な宗教であったようだ。
66：アラブ社会はおもしろい遊牧民には商人が多い。イスラム教は「商人の宗教」と言われていますが、『アラビアン・ナイト』にも農民はあまり出てきません。67：料理も、文学も、音楽もアラブがすごい現在では洗練された料理として絶対的な地位を誇るフランス料理が、もとはフィレンツェのメディチ家の料理だということはよく知られています。メディチ家のカトリーヌがフランス王フランソワ1世の息子アンリに嫁ぐことが決まったとき、カトリーヌは片田舎のパリには行きたくないと渋った。そこで叔父のローマ教皇クレメンス7世は、一緒に料理人を連れていかせました。このフィレンツェのメディチ家の料理は、もとはイスラム帝国アッバース朝の宮廷料理でした。アラブの世界が最も勢いのあった『アラビアン・ナイト』の時代のバグダードの洗練された宮廷料理が、イタリア経由でフランスに入ったということです。69：キリスト教文学の最高傑作ともいわれるダンテ『神曲』天国や地獄を巡る旅というモチーフは、実はアラブ世界の物語から出ている。ムハンマドが天国を旅した物語を下敷きにしている。71：4世紀後半ローマ帝国キリスト教を国教に古代オリンピックを廃止するなど焚書坑儒。聖書以外は勉強したらダメ。529アテナイの最高学府アカデメイアやリュケイオンを閉鎖。追放された学者が向かったのが、サーサーン朝ペルシャ。古代ギリシャやローマの学問はペルシャのジャンディ・シャプール（大学）で生き残る。80：盗賊をやっつけたのは、アリ・ババの女奴隷モルジアーナ身分は奴隷だが、イスラム圏の奴隷は『アンクル・トムの小屋』の奴隷とは違い、鞭で打たれて農作業を延々とやるわけではない。お手伝いさんのような存在で、差別的な扱いはない。アリ・ババはモルジアーナの働きに感謝して、息子の嫁に迎える。82：アラブ人はもともと人口が少ないので、人種について寛容優秀な官僚が必要ならペルシャ人、優秀な軍隊が必要ならトルコ人。
2020年08月11日
ハチャメチャだけど愉快痛快『西遊記』
昨日は鎖国時代のチベットに仏教の原典を求めて潜入した明治時代の日本の僧侶の話だったが、こちらはその1300年前の唐時代、同じく仏教の原典を求めて天竺（インド）に旅行した玄奘三蔵の話。
玄奘三蔵は17年間にわたる旅の記録を『大唐西域記』として残した。これらを基に16世紀明代に創作されたのが『西遊記』で、ご存じの通り、「ハチャメチャだけど愉快痛快」で長年にわたり何度も舞台化、映画化、TVドラマ化された。原作者は、ここでは呉承恩とされているが、これには異論もあるようだ。
いずれにせよ、出口先生は、教養を学ぶには児童書がいいという。それは、「短時間で読めるのに、専門書より深い」から。短時間で読めるのはいいとして、「専門書より深い」のは、長年読み継がれている児童書には民衆に支持される何かがあるから。
第一章の『西遊記』の魅力は、予定調和的なところがなく、本音の世界を描いているところだという。本で読んだことがないので、読んでみたくなった。
玄奘三蔵は17年間にわたる旅の記録を『大唐西域記』として残した。これらを基に16世紀明代に創作されたのが『西遊記』で、ご存じの通り、「ハチャメチャだけど愉快痛快」で長年にわたり何度も舞台化、映画化、TVドラマ化された。原作者は、ここでは呉承恩とされているが、これには異論もあるようだ。
いずれにせよ、出口先生は、教養を学ぶには児童書がいいという。それは、「短時間で読めるのに、専門書より深い」から。短時間で読めるのはいいとして、「専門書より深い」のは、長年読み継がれている児童書には民衆に支持される何かがあるから。
第一章の『西遊記』の魅力は、予定調和的なところがなく、本音の世界を描いているところだという。本で読んだことがないので、読んでみたくなった。
39：予定調和的なところがない43：表の世界に対する、裏の世界、つまり本音と建前でいえば、本音の世界を描いている。46：原作者〜呉承恩官吏の家に生まれ、子供のころから秀才と言われながらも科挙の試験に何度も失敗し、60歳過ぎてようやく官吏になれた。
2020年08月10日
雲と水との旅をするなり
今日は「山の日」。山に関する特別な出来事があったわけではないが、「海の日」ができたのに合わせて、何となくできてしまった祝日。せっかくなので、明治の終わりに、仏教の原典を求めて当時全くの秘境であったチベットに潜入した河口慧海の本を読んでみる。
河口慧海（1866-1945）仏教学者・探検家
河口慧海（1866-1945）仏教学者・探検家
仏教の原典を求め日本人として初めてチベット・ラサへ潜入。ナルタン版大蔵経の仏典を入手、チベットの文化、仏教の研究・紹介に努める。
人物について聞いたことはあったが、文献を読むのは初めて。河口慧海研究の第一人者である著者の遺作（本書校了中に逝去）となった。
仏教の原典を求めてチベットへ、と聞けば、誰もが思い出すのは『西遊記』に出てくる三蔵法師（玄奘三蔵）。玄奘がインドを目指したのは唐王朝が成立したばかりの629年。まだインドにも仏典が残っていた。しかし、その後、インドで仏教は衰退。河口慧海は、仏教の原典が残っているといわれたチベットを目指したのである。
しかし、当時のチベットには、交通手段もない上、鎖国していたので、街道からは入れない。そこで、徒歩で（時々、ヤクは使ったようだ）ヒマラヤ山脈の山々を越えて入国する。それも、２回も。
帰国後出版された『西蔵旅行記』（1904)は、いち早く英訳"Three Years in Tibet"(1909)され、「日本では考えられないような取り扱いを受けた」とのこと。日本人のチベットへの関心は「秘境にある神秘の国」くらいだろうが、欧米、特にイギリスにとっては、「グレートゲーム」でロシアと中央アジアの覇権を争っている中、一大関心事であったのは間違いない。
その後のチベットがどうなったか。ブラッド・ピット主演の映画"Seven Years in Tibet"は見ておいて損はない。タイトルも、河口慧海の本の英訳から来ているのかもしれない（原作はドイツ語だが同じ意味）。
はしがき：海外では唯一といっていいほど、旅行記はいち早く英訳され、日本では考えられないような取り扱いを受けた。秘境と呼ばれるチベットに対する興味もあったが、それよりチベットの事情、政治、国際関係、ダライ・ラマ、宗教、社会など、明らかにした点、学術的な文献として評価された。しかもその状態は百年をはるかに超えた現在まで続いている。『チベットの三年』は何回も復刻出版され、中国語の他、英訳からの重訳であるがネパール語、オランダ語、フランス語に訳された。37：1897年6月26日、日本を発った河口慧海は、6年後、インド、ネパール、チベットの旅行を終えて、1903年5月10日帰朝した。新聞記者たちの大攻勢にあって、その夜は神戸に泊まり、翌日出迎えの友人信者たちと大阪に向かい、難波の瑞龍寺に立ち寄り、昼食の接待を受け、講演をしている。74：ネパールのムスタン地方ツァーラン村で10月滞在チベット語を完全にマスター。チベット人の風俗習慣を身につけた。さらに石を背負って山登りのトレーニングをした。
2020年08月09日
ウイルスとの共生
「病原体の根絶は、マグマを溜め込んだ地殻が次に起こる爆発の瞬間を待つように、将来起こるであろう大きな悲劇の序章を準備するにすぎない。根絶は根本的な解決策とはなりえない。病原体との共生が必要だ」というのが、著者（長崎大学熱帯医学研究所教授）の結論。
「長い目で見たとき、強毒ウイルスは、自らの生存を支える宿主集団を巻き込みながら消えてゆき、潜伏期間が長く、感染効率と致死性の低い弱毒ウイルスが優位となる。このようにして、ウイルスとヒトとの間にある種の安定した関係が築かれていく」だけでなく、「ウイルスのように宿主の存在なしには生存できない病原体への選択圧は、最終的には宿主の環境へ適応度を高める方向に作用する」（ジョン・メイナード=スミス）という。
つまり、ウイルスはヒトが環境適応度を高める手助けをするので、ヒトは積極的にウイルスを取り入れているという見方もできるそうだ。感染症を無くそうという努力は、「川に堤防を築くようなもの」だという。
「大惨事の保全」（歴史家ウイリアム・マクニール）
人類の皮肉な努力としてマクニールは、アメリカ陸軍工兵団が挑んだミシシッピ川制圧の歴史を挙げる。ミシシッピ川は春になると氾濫し、流域は洪水に襲われた。1930年代に入り、アメリカ陸軍工兵団は堤防を築き始め、ミシシッピ川の封じ込めに乗り出した。おかげで毎年の洪水はやんだ。しかし川底には年々、沈泥が蓄積し、堤防もそれにつれて高く鳴っていった。堤防の嵩上げは続いている。しかし、この川が地上100mを流れるようなことにはならない。いずれ破綻をきたす。そのとき、堤防建設以前に彼の地を襲っていた例年の洪水など及びもつかないような、途方もない被害が起こる。
129：ポリオ・ワクチン1954年には、ジョナス・ソークが開発した不活化ポリオ・ワクチンの大規模野外実験が始まった。体内に入っても増殖しないため、安全性が高いが、免疫の持続時間が短いという欠点がある。不活化ワクチンは、通常、数回の接種が必要になる。1950年代後半には、アルバート・セービンによって、弱毒性ワクチンが開発された。これによって、世界標準ワクチンが確立した。広範な大衆運動によるワクチンの開発、それによるポリオの制圧といった成功体験は、その後のアメリカ社会の医療・医学に対する考え方に大きな影響を与えた。現在でも、インフルエンザに対するアメリカの対応はワクチンが主体となっている。1960年代半ば以降の天然痘根絶計画に対するアメリカの貢献の背景にも、こうしたポリオワクチンによる成功体験があるような気がする。190：長い目で見たとき、強毒ウイルスは、自らの生存を支える宿主集団を巻き込みながら消えてゆき、潜伏期間が長く、感染効率と致死性の低い弱毒ウイルスが優位となる。このようにして、ウイルスとヒトとの間にある種の安定した関係が築かれていく。191：病原体とヒトとの共進化ウイルスのように宿主の存在なしには生存できない病原体への選択圧は、最終的には宿主の環境へ適応度を高める方向に作用する。（ジョン・メイナード=スミス）194：感染症のない社会を作ろうとする努力は、努力すればするほど、破壊的な悲劇の幕開けを準備することになる。大惨事を保全しないためには、「共生」の考え方が必用。
2020年08月08日
感染症と文明
新型コロナ「感染者」が再び増加している。正確には、「PCR陽性者」判明数であって、「感染者」数でもなければ、もちろん、「発症者」数でもない。新型コロナウイルスは、「初期から中盤までは暴露力（体内に入り込む力）は強いが、伝染力と毒性は弱く、かかっても多くの場合は無症状か風邪の症状程度で終わるおとなしいウイルス」ということ。（国際医療福祉大学 高橋泰教授）
では、なぜそれほど恐れられているかと言えば、1万〜2.5万人に一人という非常に低い確率ではあるが、サイトカイン・ストーム（免疫暴走）や血栓形成という状況を引き起こし、重篤化し、場合によっては死に至らしめるからだ。日本を始めアジア諸国は欧米の1/100ほどの死亡率（人口比）で済んでいる。どうやらそれは、自己免疫力の違いにあるというのが、高橋教授の「感染7段階モデル」。
急に世間からの注目を集めている感染症だが、これを機に、岩波新書で「感染症と文明」の歴史を俯瞰してみる。まず、感染症が発生する前提として、文明の発達がある。人類が狩猟採集を続けていれば、感染症は発生しなかった。感染症はヒトが野生動物を家畜化したときから始まっている。イヌあるいはウシに起源を持つウイルスが種を越えて感染し、適応した結果、ヒトの病気となったのだ。
さらに、農業が始まり、人類は初めて都市に住むようになった。感染症が社会に定着するためには、最低でも数十万人規模の人口が必要だという。それ以下の人口集団では、感染は単発的なものにとどまり、恒常的に流行することはない。数十万人規模という人口規模を持つ社会は、農耕が始まり文明が勃興することによってはじめて地上に出現した。
5：フェロー諸島の麻疹1781年に流行して以来、1846年までの65年間、麻疹の大規模な流行はなかった。その間、一度も麻疹が持ち込まれなかったわけではなかろう。しかし、それが流行を引き起こすことはなかった。理由の一つに集団免疫の存在があったことは間違いない。8：麻疹と人類史麻疹は、人類最初の文明が勃興した頃、イヌあるいはウシに起源を持つウイルスが種を越えて感染し、適応した結果、ヒトの病気となった。ヒトが野生動物を家畜化し、家畜化した動物との接触が感染適応機会の増大をもたらした。ティグリス川とユーフラテス川に挟まれたメソポタミア地方（肥沃な三日月地帯）が、麻疹誕生の地となった。理由は、この地が人類史上初めて麻疹の持続的流行を維持するに十分な人口を有したからにほかならない。麻疹が社会に定着するためには、最低でも数十万人規模の人口が必要だという。それ以下の人口集団では、感染は単発的なものにとどまり、恒常的に流行することはない。数十万人規模という人口規模を持つ社会は、農耕が始まり文明が勃興することによってはじめて地上に出現した。10：紀元前3000年ごろメソポタミアに誕生した麻疹が、20世紀半ば、グリーンランドを最後についに「処女地」をなくす。麻疹が地球の隅々まで到達し定着するのに要した時間は、約5000年だった。15：病原体の根絶は、マグマを溜め込んだ地殻が次に起こる爆発の瞬間を待つように、将来起こるであろう大きな悲劇の序章を準備するにすぎない。根絶は根本的な解決策とはなりえない。病原体との共生が必要だ。55：中国初のペスト2010年10月31日Nature Genetics論文世界各地から収集した17株のペスト菌の遺伝子配列から、ペスト菌の共通祖先が中国に起源を持つ可能性が高いこと、その菌が「絹の道」を通してユーラシア大陸の西側にも達した可能性があること、さらに、中国明代に実施された鄭和の大航海もペスト拡大に寄与した可能性。58：ユスティニアヌスのペストペストは、542年から750年にかけて、首都コンスタンティノープルを繰り返し襲った。特に542年の流行は「ユスティニアヌスのペスト」と呼ばれ、最盛期には首都コンスタンティノープルだけで一日1万人以上が死亡したという。ペストは港から内陸へと広がり、地中海世界人口の1/4が死亡した。（中略）これが契機となって、東ローマ帝国は衰退し、以降、西アジアに本拠地を置くイスラム教徒が、地中海世界で活発に活動を開始することになる。64：ボッカチオが描いたペスト『デカメロン』は、1348年に流行したペストから逃れるために邸宅に引きこもった男3人、女7人の計10人が退屈しのぎにした小話を集めたという趣旨の物語である。10人がそれぞれ1日1話を語る全100話は、艶笑に満ちた恋愛話や失敗談からなる。人文主義文学の傑作とされているが、作品の背景には、ペストに喘ぐ当時の社会状況が色濃く反映されている。113：1894年香港ペスト流行国際調査団が組織され、現場に派遣された。そのなかに、一人の日本人と、一人のスイス生まれのフランス人がいた。名前を北里柴三郎とアレクサンドル・イェルサンといった。前者はコッホの弟子であり、後者はフランスの細菌学者パスツールの流れを汲む。北里は、香港に到着後、間を置かずペストの病原菌を発見し、その結果を「ペスト菌」として、イギリスの医学雑誌『ランセット』の1894年8月号に発表した。遅れて、イェルサンもペスト菌の発見を報告した。両者の違いは、ペスト菌がグラム染色によって陽性に染まるか染まらないかの違いであった。（中略）結果からいえば、イェルサンの報告が正しかった。
2020年08月07日
無限にためて瞬時に引き出す
まず、御年80歳の野口先生の好奇心が衰えず、AIにブロックチェーンと次々と最新の技術を学び使いこなそうという姿勢に驚かされる。今回は、「AI時代の整理法」である。
25年前に出た『「超」整理法』はベストセラーとなり、それまで研究者であった野口先生の名前が世間に知られることになった。私も、当時、『「超」整理法』を読み、それ以来、「分類」せずに「ファイル押し出し法」で書類管理している。
『「超」整理法』の主目的は、いかに必要な書類を残しつつ、「どんどん溜まる書類をどう捨てるか」だった。これは野口先生のオリジナルだったが、コンピュータサイエンスでキャッシュ管理に使われるLRU（Least recently used）と同じだと後から気づいたという。つまり、「最後に使われてから最も長い時間が経ったもの」を不要として捨てるわけだ。
今回の大転換は、「捨てる」という考えを捨てる、こと。一つには、「情報が増える度合いがあまりに速いため、捨てようとしても、追いつかない」。一方で、「デジタル情報については収納場所の制約がない」。そして、適切なキーワードさえつけておけば、膨大なデータから瞬時に必要なものを見つけることが出来る。であれば、「どれを捨てるべきか」と悩むより、捨てること自体諦めてしまう方がいいという考えだ。
「AI整理法」で多用されているのは、画像認識のGoogle Lens。私はiPhoneを使っているので、撮った画像を一旦Google Photoに保存し、それから認識させる必要がある。Androidならカメラを向けるだけで認識させられるようなので、このためだけにでもAndroidにしたくなった。
42：「捨てる」ことをやめて「検索する」捨てる努力をせずに、検索できる仕組みを作る。情報が増える度合いがあまりに速いため、捨てようとしても、とても追いつかない。デジタル情報については、収納する場所の制約を考える必要がない。43：画像認識をうまく使うGoogle Lensが大きな実用価値を持つのは、文字の認識。53：「何がいらないか」分からないから、苦労している整理法のほとんどは、「いらないものは捨てましょう」→馬鹿げている94：写真を検索するインデックスを作るPCに写真を映し出し、スマホ音声入力でメモを取る→写真を（間接的に）検索できる193：「別人になった数人の私」が協力して仕事をする完全に体系だった論述になっていなるわけではないが、しかし他の人に見せられる程度の段階になっているものを残す。他の人というのは、時間が経った後の自分自身でもある。１人の人間が2人分、3人分の仕事をできるようになる。文字は、時間を隔てて別人になってしまった自分自身との間の、伝承や継承をも可能にする。244：名簿は不要「名簿を作る」というのは、電話や手紙で連絡をしていた時代に必要だった作業。メールが主たる連絡手段になった現代では、名簿は不要の存在。271：知識が増えれば創造が容易になる人間が新しいアイデアを発想するためには、内部情報との照合が必要であり、それを持っている人ほどたくさんの発想が出来る。新しい情報に接したとき、それにどのような価値を認めるかは、それまで持っていた知識による。新しい情報に接しても、知識が少なければ、何も感じない。
2020年08月06日
農業地域の経済力
第14章は、「農業地域の経済力」（佐々木達）。世界の農業を大まかに分けると、アジア型、ヨーロッパ型、新大陸農業国型ということになる(上図）。
アジア型は単位面積当たりカロリーの高い水田稲作なので、土地生産性は高い一方、人口密度が高いので、労働生産性は低い。
新大陸農業国型は、土地の値段が安いので、広大な耕作地を大規模な機械化農業で運営する。従って、土地生産性は低いが、労働生産性は高い。
興味深いのは、ヨーロッパ型で、土地生産性と労働生産性両方ともかなり高いのだ。土地生産性でアジアに敵うわけはなく、労働生産性で規模の違う新大陸に敵うわけもない。結局のところ、これは生産した農作物が高く売れていることを意味する。
236：世界の中の日本農業アメリカ、カナダ、オランダ、ドイツ、中国等は輸出額も輸入額も上位。<産業内貿易＞日本は、産出額では世界第9位に位置しているものの、輸出額では第56位、輸入額では第5位。238：日本型食生活→欧米型動物性たんぱく質や油脂類を多く消費するパターンへ変化。
2020年08月05日
グローバル化時代の都市と都市ネットワーク
第9章は、「グローバル化時代の都市と都市ネットワーク」（小原丈明）。
世界都市ランキングの主要なものは、
・The World According to GaWC
・Global Cities Index
・Global Power City Index
の３つだが、全て、
Tier 1: London, NY
Tier 2: Paris, Tokyo, Singapore, Hong Kong
となっているそうだ。
東京も、パリやシンガポール、香港と並んで、第2位グループに付けている。とはいえ、近年、
となっているそうだ。
東京も、パリやシンガポール、香港と並んで、第2位グループに付けている。とはいえ、近年、
・本社数の減少
・経済指標での地位低下
・近隣の東アジア大都市との競争
で、都市ランキングでの地位低下だという。
中国が香港の政治統合を早める動きで、香港の地位低下が今後予想される。既にアジアの国際都市としての地位はシンガポールがNo.1になっており、中国の玄関口としての香港が役割を終えると、シンガポールの独り勝ちになるか？
Withコロナが大都市の役割にどう影響を与えるかも気になる。大都市への集中は止まるのか？それとも、文明誕生以来続いてきた都市集中が変わることはないのか？
で、都市ランキングでの地位低下だという。
中国が香港の政治統合を早める動きで、香港の地位低下が今後予想される。既にアジアの国際都市としての地位はシンガポールがNo.1になっており、中国の玄関口としての香港が役割を終えると、シンガポールの独り勝ちになるか？
Withコロナが大都市の役割にどう影響を与えるかも気になる。大都市への集中は止まるのか？それとも、文明誕生以来続いてきた都市集中が変わることはないのか？
158：都市間競争の激化と格差の拡大�＼こε垰圓里△訝羶換颪箸修亮�辺国との格差の拡大�∪こε垰圓里△觜颪砲�ける国内での地域間格差の拡大��世界都市内部での格差の拡大160：「世界都市」東京都市ランキングでの地位低下161：各区の世帯収入2013千代田区 654万円世田谷区 425渋谷区 498足立区 315葛飾区 357江戸川区 345
2020年08月04日
サービス経済化と広がる地域間格差
この6月に出版されたばかりの、経済地理学の大学教科書。ジオパーク活動で面識のある新名先生（高知出身）も一章かかれているので読んでみる。
第3章は、「サービス経済化と広がる地域間格差」（加藤幸治）。先進国はどこも都市化が進んでいる。これは、所得水準が向上すると、より「質の高いサービス」を求めるようになることからすると、当然なのだ。
実は、日本は都市化率が欧米に比べると低い。欧米を旅行するとわかるが、都市を一歩出れば田園風景が広がるのに対して、日本は都心の密度が低い代わり、スプロール化が激しく、東京などは100km圏まで市街地が続く。
これは、高度成長以降の地域格差を都市で上がった税収を国が地方交付税交付金として地方に配ることを続けてきたからだ。このため、日本は世界で例外的に、国中どこへ行っても、比較的均質なインフラが整っている。しかし、人口減少社会になると、へき地の社会インフラを今まで通り維持するのは不可能だ。
48：所得水準の上昇がサービス需要の拡大をもたらす（ペティ・クラークの法則）所得水準が向上すると、より「質の高いサービス」を求めるようになる。51：サービス利用のための移動コストサービス＝貯蔵も輸送もできない55：サービスを求めた人口移動人口集積＋日常的流入→複数のサービス供給者→差別化→「質の高い」ものを選択することが可能
2020年08月03日
「良いものをつくっているのに売れない」
こちらも、BBTナイトGymで教えている講師の方。エイトブランディングデザイン代表。講義が面白かったので、著書を読んでみる。
いろんなブランドデザインをされているが、最もよく知られているのは西澤社長のデビュー作でもあるCOEDOだろうか。コエドブルワリーは川越に本社のある地ビールメーカーで、当初のポジショニングは、1990年代後半からの規制緩和で日本中に登場した数ある地ビールの一つに過ぎなかった。
その後ブームの沈静化とともに、単に高いだけの地ビールは次々と淘汰されていく。危機感を抱いた朝霧社長は社内改革を推進し、その一環としてエイトにパッケージデザインのリニューアルを依頼した。それを「パッケージデザインだけではダメです。ブランディングしないと！」と押し返したのは西澤社長の手腕。
結果的に、COEDOは、数ある地ビールメーカーの一つから、海外にも打って出られる「プレミアム」ブランドとなった。ベースとなったのは、本場のドイツから学んだこだわりのモノづくり。ブランディングに成功したことで販売量が増え、350ml缶で300円という、「ちょっと高いが許せる」価格帯になっている。
日本には、良いモノを作っているメーカーは沢山あるという。しかし、モノづくりで終わってしまっていて、その良さが消費者に伝えられていない。「伝えるべきことを整理して、正しく伝えていくこと」がブランディングだ。
＊ブランディングデザインが、日本のモノづくりを強くする。はじめに：デザインとは究極のモノづくりデザインはお客様がはじめてモノにふれるコンタクトポイント。「選べる豊かさ」「モノからコトへ」という時代の中でコンタクトポイントになる→デザインがお客様に選んでもらえるだけの情報を備えていなければならない。12：ブランディングとは、「差別化」企業のコミュニケーション活動を変化させる。モノをつくるだけでなくブランディングにより「伝えるべきことを整理して、正しく伝えていくこと」＝差別化14：差別化の第一歩は「良いところ探し」と「違うところ探し」二つのポイントの重なる部分を明らかにし、その中でも最も重要な一点が何かを見極める＝フォーカスポイント16：ブランディングデザイナーと経営者がタッグを組むデザイナーの具現化能力が経営者のビジョンと掛け合わさることで、ブランディングの精度が格段に向上する。17：デザインがもたらすのは「かけ算」の効果ブランドは「継続すること」が大切で難しい。価値あるものしかブランド化できない。ブランディングに必要な、３つのもの�．肇奪廚稜�い思いブランディングはモノを通した、人と人とのコミュニケーション活動。�◆嵶匹ぅ皀痢廚任△襪海���プロフェッショナルチームブランディングはトータル戦。ブランドの核となるブランドコンセプトを創る→グラフィックとして具現化させる。高い専門性をもった各分野のデザイナーの力を一つにまとめ、ある一定の方向性にコントロールする。
2020年08月02日
茂木佐邸
長い梅雨が明けた土曜日、千葉県野田市へ。キッコーマン発祥の地であり、現在も本店と中央研究所、そして野田工場が置かれている。
ここにある国の登録有形文化財が「茂木佐邸」。茂木佐家はキッコーマン創業家の一つで、茂木本家である茂木七左衛門の初代・次男が分家独立した家。天明2年（1782)から醤油醸造業を始めている。
海運の便がよく、醤油の原料である関東平野の小麦と大豆を集約するのに容易で、かつ、出来上がった醤油を大消費地である江戸に江戸川を高瀬舟で下って、朝出れば夕方配達することが出来たという。塩をどこから仕入れていたかの説明がなかったが、利根川を使って銚子あたりからだろうか。関東の醤油づくりは銚子のほうが早いが、利根川から野田で江戸川に入って10日〜1か月掛かったという。これでは、野田の醤油に勝てない。
大正6年（1917）、野田と流山にあった醸造家8家が合同して「野田醤油株式会社」となる。これがのちに社名変更して現在のキッコーマンとなるのだが、この社名の元となった商標「亀甲萬」を合併前から使っていたのが、茂木佐家であった。説明では、明治時代から海外に輸出しており、8家の中で最も知名度が高かったのが「亀甲萬」だったから選ばれたということだったが、確かに8つの商標の中で、一番印象に残るデザインだ。
代々続いた商家らしく、建物は派手さはないが風格がある。よく見れば、瓦はもちろん、柱や天井、障子に電灯まですべて特注で、質にこだわっている。建築の途中で関東大震災があり、基礎や設計を見直したこともあり、完成には数年を要した。その結果、現在に至っても不具合が生じてないという。
驚いたことに、この有形文化財は、野田市の現役「市民会館」であり、見学も無料である上(ボランティアガイドあり）、部屋の時間貸しも行っている。その料金が一時間100~200円という低料金（市民の場合）
夜間の貸し出しや市外の団体はこれに割り増しが付くが、それでも、一番広い10畳の「松の間」で1時間400円。日本を代表するお金持ちが贅を凝らして作った邸宅がいくら何でも安すぎて、これではありがたみが感じられなくて心配になる。せめて、日々の必要経費がまかなえるだけはもらうべきではないか。
因みに、7年前、第26期竜王戦が開かれたのもこの一時間200円の松の間。市が誘致したので、無料だったかもしれないが(笑)。
2020年08月01日
儲かる人、損する人
1987年に書かれた本書。これからバブル経済に向かってまっしぐらというときに書かれている。
さすがだと思うのは、石井氏が証券会社の社長でありながら、初心者に「買うな」と言っていること。バブル相場中に株式投資を始めた人は上層相場しか知らず、ほとんどの人がバブル崩壊で大損した。
そして、石井氏は予言するのである。日本だけが経済成長を続けることはあり得ず、株式相場も1，2年のうちに天井を打つ。西ドイツは1963年から20年間高値を抜けなかった、米国も「株式は死んだ」と言われた1970年代、10年間高値を抜けなかった。日本も今後そうした相場になる、と。
流石の石井氏も、まさか30年以上も高値を抜けないとは予測できなかったようだ。それだけバブルが大きく膨らみすぎだということだし、もう一つには、西ドイツや米国が経済低迷の時期を経て、産業構造の転換を図ったのに対して、日本政府は雇用維持を最優先としたため、既に競争力を失った産業に人材が留まることになった。そして、それを求めたのは国民だった。
182：儲かる人、損する人儲かるタイプは、まず記憶力がよいとか努力家であるとか、あらゆる分野においても通用する定石的なものがあります。やはり優れたところがないと神様はそうそう儲けさせてはくれません。そういう定石を身につけておればあとは精神的なものです。頭とシッポはヒトにくれてやる、そういう鷹揚さのある人。その次は儲けても私生活などの面で決して驕らない人。そしてぼやいたり、愚痴を言ったり、泣き言を言わない人。183：初心者は次のチャンスを3年前とか5年前なら私も声を大にしてお勧めしてもよいのですが、今の相場、どう見ても私の言った五合目以内とは思えないでしょう。だから私は初めての人に対してはもう買いなさんな、証券市場に今から参入するのはよした方がよいですよという気持ちです。（中略）いずれは日本も欧米並みの経済成長、株式市場にはまり込んでゆくのではないでしょうか。たまたま、今、日本経済は戦後の努力の収穫期といった意味で特異な株高が展開されつつあります。しかし、日本だけが今後も神がかり的に発展することはあり得ないわけですから、あと何年持つか、私は、1，2年と思いますが、趨勢として欧米型の株価変動の時代に入らざるを得ないでしょう。西独が1963年に頭をつけて20年近く抜けなかった、米国も10年近く新値を抜けなかった、今それらが上昇してはいますが、そういう株価変動の時代になるのは間違いないと思います。186：投資家がセールスマンに勧められて5銘柄を一定の単位数ずつ買った。三つ当たって二つは損したというようなとき私なら見込み違いの二つをぶん投げてあたっているほうの銘柄を書いたすべきだと思います。優等生を買うべきです。これは非常に簡単な投資戦術の方法と思うのですが、意外に多くの人がこの逆をやります。（中略）残ったのはカスばかり。優等生は旅に出てしまったが、まだまだ上がるというようなことにしばしばなるのです。188：資本調達市場としての役割日本経済の大発展は株式会社制度の普及・発達によるところが大きい。この制度が発達していない国は一般に経済の発展が遅れています。それでは株式会社制度とは何かということですが、これは紙切れ（株券）と引き換えにおカネを出してくれる冒険心の強い人がまず存在する。そして、集めたおカネを種銭にして銀行がカネを貸してくれる。そういうシステムが日本にはあるということです。
