2020年04月
2020年04月30日
なぜ、組織は「病んでいく」のか？
LBSの同窓生である上村紀夫さんによる待望の初出版。医学部を出て外科医として働いた後、LBSに留学。日本ではまだ数少ないMBA医師で、卒業後、産業医として企業のメンタル対策をコンサルティングする株式会社エリクシアを設立した（2009)。
組織活性というと、プラス感情を生み出す施策に目が向きがちだ。ノー残業デーや、リモートワーク、フレックス制の導入など、「働きやすさ」を実現するための施策は一時的なプラス感情を生み出すが、それは長続きしないという。与えられることはすぐに「当たり前」となり、中長期的にはプラス感情は生み出さない。むしろそれが失われた際のマイナス感情が大きくなってしまう。
それでも多くの企業が導入するのは、「マイナス感情を解消するより、何かを足す施策の方が手っ取り早く、かつ『時代の流れに乗っている感』を経営・人事層は持つことができる」からだという。しかし、マイナス感情に蓋をしたままでは、一時しのぎにしかならない。
マイナス感情の蓄積は自然には解消せず、放置すれば増幅し、それは組織に伝播し、やがては組織崩壊につながる。
はじめに：マイナス感情の蓄積業種や業態等により、組織の病巣はそれぞれ異なるものの、それらを生み出す原因は共通している。序章24：なぜ、組織は「病んでいく」のか？�〜反イ�病んでいくメカニズム�∩反イ痢嵒汰磧廚鮴攴�する方法27：プラスを生み出す施策はすぐ「当たり前」化するマイナス感情を解消するより、何かを足す施策の方が手っ取り早く、かつ「時代の流れに乗っている感」を経営・人事層は持つことができる。29：マイナス感情は組織全体に広がっていくマイナス感情の蓄積は自然には解消せず、放置すれば増幅する。31：「みんなを救う施策」は誰も救わない置かれている状況が変われば、抱える悩み、つまり、抱えるマイナス感情が異なる。33：組織改革の基本WHO：誰に向けた施策なのかWHAT：どの課題にアプローチしたいのかHOW：どのようにアプローチするか
2020年04月29日
コメ先物市場
女性FPはたくさんいるが、商品先物取引を得意にしているのはこの「リカちゃん」しかいないだろう。いわゆる「こうすれば、儲かる」系の本ではなく、先物取引の仕組み、役割から、その歴史まで書かれたマジメな本。
2011年に関西商品取引所（現・大阪堂島商品取引所）と東京穀物商品取引所に米先物が試験上場される。米の先物取引が日本で復活したのは、戦争拡大で国家統制が強まった1939年だったので、実に72年ぶりのことだった。銘柄は、新潟コシヒカリ、あきたこまちに続いて、先日宮城県産ひとめぼれも上場された。
どうしてこれほど長く、復活しなかったのか。戦時下の1942年に導入された食料管理制度の影響が大きい。戦時体制を支えるための制度だったが、食糧難が続いた戦後もそれが残る。そこまではいいのだが、1960年代になって輸入食料が増え、米が余り出しても残る。その時点で廃止しすれば、補助金を出して減反政策を進めることなく、市場に任せることができたが、政治と農家票が結びつき、日本の農業は自立する機会を失った。
その結果、日本人の米消費量は減り、パンは増えている。「日本人の主食はコメ」を取り戻すには、先物市場も含めて市場原理が正常に機能する必要がある。
はじめに：300年前の江戸時代に、世界に先駆けて商品先物市場を創設したのは日本コメの価格変動をリスクヘッジするために商人たちが創り上げた。39：大阪堂島商品取引所米先物市場2014-2019の間に玄米重量で42000tの米が受け渡し決済。70：「デリバティブの父」レオ・メラメドCME市場創設にあたり、江戸時代の大坂堂島米会所のシステムを参考にした。第二次世界大戦中、杉原千畝氏が発行した「命のビザ」で日本に逃れ、その後、渡米したユダヤ人。日本の先物市場発展への貢献で2017旭日重光章受章。75：米の先物市場大正時代後期より、戦争を背景に、国家統制が強くなり、1939年商品取引所閉鎖。終戦後、商品取引所は再開されるが、コメの先物取引は復活しなかった。77：2011年試験上場米の価格決定権を失いたくない米生産者団体の反対農家などの生産者、流通業者の参加数85(当初)→161（2019)
2020年04月28日
つぎの世紀のリスクとマネジメント
第8章はRobert Shillerによる「つぎの世紀のリスクとマネジメント」。ケース＝シラー住宅価格指数を生み出した研究者として有名だ。
人は測れないものはコントロールできない。だから、継続的にデータを集めることは大事だ。消費者物価指数が取られ始めたのは1913年にアメリカでらしい。20世紀はインフレの時代だったから、それ以来、労働契約に消費者物価指数が取り入られた。
現在も経済指標として最もよく使われるGDPは1930年の大恐慌の時代から使われ始めた。デジタル化された社会では、より多くのデータがより簡単に入手できるようになる。ただ、そのためには、基礎となるIDを全員が持ち、それが社会のあらゆる場面で使われる必要がある。
日本でいえばマイナンバーなのだが、諸外国では50年以上前にどこでも導入されているのに、日本はその導入に野党が「国民背番号制」と反対し、導入に何十年もかかった。しかも、制度導入後もいまだに国民の半分もカードを持ってない。だから、今回の10万円の給付にも驚くべき手間が掛かる。これを機に、「給付はマイナンバーカード保持者に限る」とすればよかったのにと思う。
人は測れないものはコントロールできない。だから、継続的にデータを集めることは大事だ。消費者物価指数が取られ始めたのは1913年にアメリカでらしい。20世紀はインフレの時代だったから、それ以来、労働契約に消費者物価指数が取り入られた。
現在も経済指標として最もよく使われるGDPは1930年の大恐慌の時代から使われ始めた。デジタル化された社会では、より多くのデータがより簡単に入手できるようになる。ただ、そのためには、基礎となるIDを全員が持ち、それが社会のあらゆる場面で使われる必要がある。
日本でいえばマイナンバーなのだが、諸外国では50年以上前にどこでも導入されているのに、日本はその導入に野党が「国民背番号制」と反対し、導入に何十年もかかった。しかも、制度導入後もいまだに国民の半分もカードを持ってない。だから、今回の10万円の給付にも驚くべき手間が掛かる。これを機に、「給付はマイナンバーカード保持者に限る」とすればよかったのにと思う。
197：ほとんどの人には、今後100年の間の世界を見舞うリスクについて考える習慣がない。だからどうしても、ひとりよがりに陥りやすい。どういうことか理解するために、長い歴史の観点からリスクについて考えてみるとよい。ジャレド・ダイヤモンド『文明崩壊』198：チャールズ・マン『1491』先コロンブス期のアメリカ大陸は、私たちが従来想像するよりもはるかに文明が進歩してたところで、人口も多かった。そこからは、1492年以降にアメリカ先住民を見舞った崩壊は、思っている以上に大きかったことがわかる。結局のところ、これからの100年間で環境が壊滅的な被害を受けたり、大きな戦争や伝染病が発生したり、技術革命のおかげで一部の地域が経済的に極端に有利になったとき、どんな変化が起きるのかについては想像するしかない。201：ビッグデータはリスク阻止のための大きな機会を創造するより良いデータを集めて金融のリスクマネジメントに役立てる仕組みの利点は、時間をかけて育まれてきた。今から100年前の1913年にアメリカでは、（労働）契約を締結する際の基準として消費者物価指数が計算され始めた。1930年の大恐慌の時代には、国民総生産という概念がはじめて導入され、これを活用したリスク管理ツールが今では登場し始めている。206：この100年間で真に評価できるのは、国際金融機関の発達だろう。1930年には国際決済銀行、1944年には世界銀行が設立され、いまでは世界銀行グループへと発展した。1959年には米州開発銀行、1966年にはアジア開発銀行、1985年には国際スワップ・デリバティブ協会、1995年には世界貿易機関、2001年には国際会計基準審議会が設立される。220：変化の時間枠本章で私はリスク管理に生じる変化について論じてきたが、変化の多くは非常に長い時間をかけて進行していくだろう。それは歴史を見れば明らかだ。たとえば保険の原理は昔からあった。すでに2000年前、古代の世界で何らかの保険商品は考案されていた。やがて1600年代に確率論や保険数理学が誕生すると、やっと盛んになり始めた。そして20世紀に入り、人口の大半に定着したのだ。
2020年04月27日
新「わが孫たちの経済的可能性」
1930年に出版されたジョン・メイナード・ケインズの『説得論集』に「わが孫たちの経済的可能性」というエッセイが収録されている。
「このなかでケインズは、生きるために戦う段階から生きるために学ぶ段階へと進歩した、そんな100年後の未来を思い描き、興味深い予測の数々を紹介している」（編集者によるまえがき）
・生活水準は4~8倍程度にまで向上
・週労働時間は15時間程度
これが一つのきっかけになって、本書のアイデア「経済学者、未来を語る」が生まれたという。それぞれ、現在を代表する経済学者によって書かれた興味深い論考があるのだが、先週のThe Economist『2050年の技術』の紹介で疲れてしまった💦 ごく一部だけ紹介することにする。
第5章の執筆者はスペインの経済学者であるAndreu Mas-Colell。数理経済学・マクロ経済学の権威で、彼の教科書Macroeconomic Theory（共著）は世界中の経済学部大学院で使用されている。
143：古典的な課題の未来ケインズにとって、大きな課題は生活水準、すなわち貧富の問題だった。彼は楽観主義者だったが、お人よしではなかった。100年後の未来はバラ色だと予測する一方、進歩の速度は複数の条件に左右されるものだと十分に認識していた。具体的には三つの条件を挙げている。人口増加が抑制され、科学が確実に進歩を遂げ、戦争や内戦が回避されること。146：新たな課題１．太陽は未だに存在しているのだから、私たちには無尽蔵のエネルギー源がある。２．環境問題に関しては、私たちは発想を改めなければならない。環境を一つのコンセプトとしてとらえるのではなく、多面性を認めたうえで検討していくべき。＊変化のペース。エネルギーの生産や利用に関して新しい技術に順応する際の費用便益をきちんと分析するためには、移行コストを含めなければならない。152：認証経済今後は能力や権力や信頼性に認証が必要な時代。氾濫する未加工の情報にラベルを付ければお墨付きを与えるようなもので、情報には大きな価値が備わる。（たとえばブランドのように）製品そのものが認証の機能を備えている時もあるし、第三者から認証される可能性も考えらえれる。
2020年04月26日
高度経済成長前の東京
事件が起こった1963年は私の生まれ年なのだが、TVが初めて一般家庭に普及しだした時に起こった大事件はお茶の間の話題を独占した。団塊の世代以上の日本人が必ず覚えている大事件だという。何か起きるたび、事件には素人の芸能人や作家を出演させて、ああでもない、こうでもないと意味もなく論じるワイドナショーもこれが初めてだった。
小説で興味深かったのは、当時の東京の描写。翌年の東京オリンピック開催準備で、東京は大変身を遂げつつある。戦後の風景は日毎に消されていく。
そんな中で、複雑な地権関係で開発されずに残ったのがアメ横や新宿ゴールデン街。
321：これまで一般市民には無縁だった凶悪犯罪が、電波を通じて茶の間に飛び込んできた最初の瞬間だった。414：「三光町の旧青線地帯は、今ではゴールデン街なんて名前がついて安酒場の長屋ですが、空き家も多く、ヒロポンの取引場になったりしてます。それ以外にも、隣接する西大久保の旅館街に行けば、空襲で焼け残ったビルが、持ち主がわからないまま放置され、ルンペンが住み着いています」471：戦後十余年、日本は新興宗教が花盛りだった。駅前で、繁華街で、いつも怪しげな僧侶が経を唱えている。戦争で三百万人も死ねば、誰だって神にすがりたくなるのだろう。496：テレビはネタがなくなると、芸能人や作家を出演させて、ああでもない、こうでもないと論じ合っている。新聞は警察批判を繰り返し、捜査方針に疑問を投げかけていた。ミキ子が知る限り、ひとつの事件がここまで社会の関心を引くのは初めてのことである。584：新聞では宇野寛治の子供時代を掘り返し、親から当たり屋をやらされた過去など、犯人の特異な人格がいかに形成されたかに焦点を当てる記事が目立つようになった。鬼畜の所業を目の当たりにしたとき、何か理由を見つけないと、人は不安で仕方ないのだ。
2020年04月25日
吉展ちゃん誘拐事件
昭和38年（1963）、村越吉展という4歳の幼児が誘拐され、殺害された「吉展ちゃん事件」については、「ノンフィクションの傑作」と言われる『誘拐』を以前読んだ。今回は、同事件をベースに書かれた小説。実力のある作家によって書かれ、グイグイ読ませる。
この異様な事件については『誘拐』を読んだときに書いたが、以下に再掲する。
・日本で初めて報道協定が結ばれる
・公開捜査に移った後、TVとラジオで犯人からの電話音声を公開し、情報提供を求める（実際、「そっくりだ」と警察に申し出たのは犯人の実兄だったが、証拠不十分でその時点では逮捕に至らず）
・警視総監自らがマスコミを通じて、犯人に「親に返してやってくれ」と呼びかける
・迷宮入り寸前で捜査担当者を総入れ替えし、3回目の捜査で別の犯罪で逮捕され服役中だった真犯人を逮捕
・これまで「通話の守秘義務」に阻まれて電話の逆探知が出来なかったが、この事件を機に、郵政大臣通達が出され、可能になる
・1965年3月この事件を主題とした楽曲『かえしておくれ今すぐに』発売
・事件解決をうけて1965年7月5日NHKが放送した『ついに帰らなかった吉展ちゃん』は関東地区で59%の視聴率（今日に至るまでワイドニュースの視聴率日本記録）
12：礼文島は、南の香深と北の船泊に分かれていて、かつては別々の村だったが、昭和31年に合併し、その後、島全部が礼文町となった。ただ昔からの住人は、礼文町と言われてもピンとこない。元々、香深は津軽からの入植者が主で、船泊は富山と秋田からの入植が主だった。間には山があり、地形的な隔たりもあってか、付き合いはあまりない。115：三河島一帯は戦前から朝鮮人が集落を形成し、独特の雰囲気を醸し出していた。唐辛子の匂いが四六時中漂い、朝鮮語がけたたましく飛び交っている。221：今年の春、黒澤明監督の映画『天国と地獄』が封切られて大ヒットし、それを真似た誘拐事件が全国で多発していたからだ。この問題は国会でも取り上げられ、映画の公開中止が取り沙汰された。222：帰化は、ミキ子のこれまでの人生で、思い出したくない出来事のナンバーワンである。父の死後、母が親子まとめて帰化申請すると、真っ先に乗り込んできたのは民族団体の幹部たちだった。母を取り囲み、「裏切り者」「申請を取り下げろ」と怒鳴り続け、何時間も圧迫を加えた。
2020年04月24日
教育格差をこうして縮める
第16章の執筆者はThe Economistマネジメント担当エディターのエイドリアン・ウールドリッジ。
過去30年の生産性向上の果実は、ほとんどがトップ1%の富裕層が抱え込んできた。これまでのテクノロジーは格差を拡大させる大きな要因で、「優秀な知識労働者」は、その生産性を大きく高めることができるのに対し、再現可能な数式に落とし込める仕事は機械に取って代わられるか、賃金の低い他国に移っていったからだ。
だが、こうした格差問題を解決できるのもテクノロジーである。たとえば教育は、すでに高質なオンライン講義を無料で配信したり、個々の生徒に合わせて指導内容をカスタマイズすることが可能になっている。
327：ハーバード大学の学生の保護者の平均年収はいまや45万ドルを超える。一方、それ以外の教育機関では質の劣化が見られる。ヨーロッパ大陸諸国は大学を無料化し、あらゆる学生に門戸を開いていることを誇りとしているが、ユーロ圏の大学で世界ランキングのトップ30位に入っているところは一つもない。多くが学術機関としてはほとんどスラム化している。329：幼児教育をサポートしてくれるデバイス中産階級の母親は、子供が子宮にいるうちから健康的な環境を与えるよう努力する。また中産階級の子供が生後最初の2年間で語りかけられる言葉の数は、労働階級の子供と比べて数百万語多いのが一般的だ。
2020年04月23日
プライバシーは富裕層だけの贅沢品に
第14章の執筆者ははThe Economistデジタルプロダクト・シニアエディターのケネス・ツール。
既に、データベースは一般的な医師より優秀な診断を下せる。「診断を下す際にコンピュータに頼るのは当たり前になり、それを利用しないと医療過誤訴訟のリスクを背負い込む」ことになるだろう。
・19世紀が蒸気、20世紀が石油で動いていたとすれば、21世紀の動力源はデータである。・ビッグデータの活用により、私たちの生活はあらゆる面で「容易に、安価に、潤沢に」なる。・データベースは世界一優秀な医師になる。診断を下す際にコンピュータに頼るのは当たり前になり、それを利用しないと医療過誤訴訟のリスクを背負い込む可能性がある。・専門性の高い訓練を要し、不確実な状況下で判断や意思決定を下さなければならないすべての職業は、人間よりアルゴリズムを使ったほうが優れた結果が出るようになる。・教育は、一人ひとりの生徒に合わせた教材・指導速度のカスタマイズが可能になる。・法曹界でもアルゴリズムは契約書の草稿を作成したり、保釈金を定めたりするのに利用される。だが、人間の裁判官は依然として必要とされ続けるだろう。・ビッグデータから導き出されるパターンは膨大かつ曖昧なもので、人間の理解を超えている。社会は効率性の向上を手にするが、それと引き換えにシステムの背後にある因果関係の理解をあきらめることに慣れていく。・企業や個人の情報資産を預かる「データ銀行」が誕生する。・FacebookやGoogleは、私たちが進んでデータを吐き出さなければ有料化する。プライバシーは飛行機のビジネスクラスや別荘のように、贅沢品となる。
2020年04月22日
曲がる弾丸と戦争の未来
「海軍が購入する有人爆撃機はほぼ確実に、F35で最後になる」（2015年レイ・メイバス米海軍長官）
軍事用ドローンの進歩を考えれば、当然だろう。有人爆撃機や戦闘機はパイロットの養成と、パイロットを守るための装備で莫大な費用が掛かる。人命が失われることに対する政治的リスクも高いので、出動には慎重にならざるを得ない。
「2050年には昆虫のように飛ぶスパイ用モデルから、犬のような姿で落ち葉や木材を燃料にしながら何カ月も移動し続ける補給用あるいは攻撃用モデルまで、さまざまなドローンが活躍する」だろうという。
既に、米軍は世界中どこであれ、攻撃する側の自分たちの安全を心配することなく、ドローンで攻撃できる。今年正月には、イランのソレイマニ将軍をリーパー無人機で暗殺した。対戦車ミサイルなどの武器を搭載して、14時間は飛べるという。
心配されるのは、これによって攻撃のハードルが下がること。作戦に失敗しても、自分たちの命が危険に晒されることはない。目標設定して、後は画面でモニターするだけなので、ビデオゲームそのままで、罪悪感も希薄になるだろう。
既に、米軍は世界中どこであれ、攻撃する側の自分たちの安全を心配することなく、ドローンで攻撃できる。今年正月には、イランのソレイマニ将軍をリーパー無人機で暗殺した。対戦車ミサイルなどの武器を搭載して、14時間は飛べるという。
心配されるのは、これによって攻撃のハードルが下がること。作戦に失敗しても、自分たちの命が危険に晒されることはない。目標設定して、後は画面でモニターするだけなので、ビデオゲームそのままで、罪悪感も希薄になるだろう。
233：ロシアの誘導ミサイル「クラブ」海面を何百キロも切るように進み、障害物を迂回し、対抗手段をよけ、音速の3倍のスピードで船体に激突してから450kgもの爆薬を爆発させる。（中略）4発のミサイルを積んだクラブの発射装置は一般の商用コンテナに偽装され、商用船、列車、トラックなどにひそかに積めるようになっているのが売り。237：西欧諸国の軍事的優位性「主体性」抑圧的政府によって統制されたり、歪曲されたりしていない情報に触れ、処理することになれている。（中略）新たなテクノロジーの登場により、戦場での勝敗を左右するのは、命令への盲目的服従から、詳細な情報と精密兵器を使いこなす能力へと変化する。241：「西欧諸国が高度な軍事テクノロジーの研究開発にいそしむのは、戦闘意欲の低下をごまかすため」（イスラエルの軍事史家マーチン・ファン・クレフェルト）意欲低下を顕著に示すのが、イラク、シリア、リビアでのISに対する各国政府の及び腰な対応。衰退期のローマ帝国は蛮族との戦闘より、戦闘に使う石弓の改良に熱心だった。
2020年04月21日
車は編まれ、住宅は印刷される
第10章の執筆者は、The Economistイノベーション担当エディターのポール・マーキリー。
冒頭、BMWi3の例が出て来る。2013年に発売されたBMW初のEV車。EVであるだけでなく、スーパーカー並みのカーボンモノコックを採用しており、ライプチヒに風力発電機が並ぶ専用工場まで建てた。
BMWの未来を担うクルマになるはずだったが、商業的には完全に失敗。当時600万円という値段はBMW顧客層からすれば高くはなかったが、航続距離が短かった。初期型の航続距離は130-160kmで、これは当時の日産LEAFと変わらないが、LEAFであれば350万円で買える。当時のEVでは遠出は不可能なので、ドライブ好きな元来のBMWファンからはそっぽを向かれ、日常使いのエコ派からは値段で選ばれなかった。
マイナーチェンジで航続距離は伸び、発売から7年になる古い車にも関わらず、ようやく販売数は伸びているようだ。一方、BMWは「後継モデルは創らず、当面i3製造を続ける」という。i3開発に掛かった投資を考えれば当然だろう。
211：BMWi3i3の製造においては、従来のプロセスや材料を使う場合よりエネルギー消費は50%、水の消費は70%も少ない。213：「材料のゲノム」プロジェクトCAローレンス・バークレー国立研究所 "Materials Project"スーパーコンピュータを使い、約10万種類もの既存の化合物や今後登場が予測される化合物の性質を集める。222：海外流出した製造業の多くは国内回帰する新たな材料や新たな製造技術の登場で、製造業の柔軟性が高まる。特に製品のカスタマイズ化が容易になり、製品を少量でも効率的に作れるようになる。この結果、企業は製品を販売する市場の近くにいるほうが有利になる。市場に合わせて製品に修正を加えたり、トレンドの変化に機敏に対応したりすることができるからだ。
2020年04月20日
太陽光と風力で全エネルギーの3割
中身が濃くて読み飛ばせないので疲れてきた(笑)。第8章「医療はこう変わる」をスキップ。
今後、世界において再生可能エネルギーが電力供給の主流になるのは間違いないが、現在、風力、太陽光、原子力など炭素排出ゼロの技術において世界をリードしているのは中国だという。原子力発電所に関する規制が緩く、従って建設コストが安いため、新たな原発をわずか平均5.5年で建設している。エネルギー需要がうなぎ上りなので、再生可能エネルギーへの投資も潤沢だ。
日本は人口減少と生産拠点の海外移転で進み、エネルギー需要も現象している。地震と台風があるから風力発電に向く土地も少ない。太陽光パネルの値段は毎年下がっているので、本命は、各戸での太陽光発電＋EVによる蓄電ということになるか。
192：2015年新規発電容量の90%が再生可能エネルギーその半分以上が風力。ドイツとCAは、電力の約30%が再生可能エネルギー由来。温室効果ガスの2/3は、エネルギーの生産と消費によって占められる。196：風力発電次世代型タービンの登場で、アメリカ国内の風力発電に使える土地の面積は190万㎢に。2008年時点で旧式タービンによって使用可能だった面積の約3倍。202：原子力発電現在建設が進められている63基の原子炉の大半は、中国、インド、ロシア。何れも規制上の障壁が低く、それゆえに建設コストも低い国々。主に、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、日本にある老朽化した200基近い原子炉は、これからの20-30年でおそらく廃炉。206：エネルギー不足ではなく、エネルギーが潤沢にある世界が実現中国が風力、太陽光、原子力など炭素排出ゼロの技術において世界をリード。2040年には中国の電力産業からの炭素排出は5%減少するのに対し、インドのそれは3倍になる可能性（Bloomberg New Energy Finance)
2020年04月19日
Le Mans '66: Ford V Ferrari V Reality
昨日、映画「 Ford V Ferrari」で、「シェルビーのピットでのFerrari妨害は本当か？」と書いたが、実話を基にした映画でどこまでが史実で、どこが脚色なのかは気になるところ。昨年先行公開された米国で大ヒットした映画なので、いくつかその点について解説している人がいる。
例えば、上のYouTubeを見ると、多くの点が実際とは違っているという。しかし、大きなのはこれだけかと思う。
・1965年のル・マンにKen Milesは参加している
映画では、「ケンはチームプレーヤーではない」というフォード社の判断で、チームで一番速いドライバーであるにもかかわらず、ケンは1965年のル・マンを走れない。それでも怒らずに、「ギヤボックスの過熱に気を付けて」とアドバイスしてチームを見送るのだが、それが原因でリタイヤするというのが筋書き。
実際はケンは1965年のル・マンに出走し、ギヤボックス故障でリタイヤしている。映画では、ケンの無念を際立たせるためにこうしたのだろう。また、同様に、1966年にも、フォードの反対でケンは出れないはずが、シェルビーがヘンリー・フォード�兇膨消免修靴董◆�Daytonaでケンが優勝したらル・マンに出走させる」との言質を取り付けるように描かれているが、実際は、すでにDaytonaでケンは優勝しており、66年のル・マン出場は既定路線であったようだ。
それより驚いたのが、スタート後GT40のドアが閉まらず、丸々一周片手でドアを押さえながらケンは運転しなければならなかったこと。そんな馬鹿なと思ったが、これは本当に起こったことだそうで、映画の通り、このためにたった一周でピットに入り、序盤で時間をロスすることになる。
2020年04月18日
FORD V FERRARI
U-NEXTは月額固定料金だが、新作は追加課金がある。新規加入ポイントを使って今年1月に日本公開された（米国は昨年）「フォード vs フェラーリ」を鑑賞。
1960年代、ベビーブーマーの若者向けにアピールしたいFordは、国際レースへの参戦を決断。経営危機に陥っていたFerrariを買収しようとするのだが、これをFiatにさらわれてしまう。まぁ、買収していたとしても、企業文化があまりに違いすぎて、うまくいかなかったと思うが。
仕方なく自社開発を決め、惜しみなく金をつぎ込んでル・マン24時間レースに臨む。そこで手を組んだのが、ル・マンでアメリカ人ドライバーとして唯一優勝経験のあるキャロル・シェルビー（1959アストン・マーチン）だった。彼が白羽の矢を立てたのは気難しいイギリス出身の中年ドライバーKen Miles。彼らが開発したFord GT40は、1966-69年4年連続で優勝を果たす。
どこまで本当か知らないが、初めてル・マン優勝した1966年のレースで、シェルビーは隣のFerrariピットの妨害をする。隙を見てストップウォッチを盗んだり、ピットレーンにナットを転がして、「車のナットを締め忘れたのではないか」と慌てさせたり。本当なら、まずいでしょう
絶対王者に挑んだ、男たちの大逆転の実話。
かつてレーサーとして活躍し、今は気鋭のカー・デザイナーとしての日々を送るキャロル・シェルビーのもとに、アメリカ最大の自動車メーカー、フォード・モーター社からオファーが届く。それは、ル・マン24時間耐久レースで絶対王者に君臨していたイタリアのフェラーリ社に勝てる車を造ってほしいという、不可能とも思える内容だった。さっそくシェルビーは凄腕のイギリス人ドライバーのケン・マイルズを口説き、2人でレーシングカー、フォードGT40の改良とテストを重ねていくが…。
2020年04月17日
食卓に並ぶ人造ステーキ
第7章の執筆者はThe Economist科学技術担当エディターのジェフリー・カー。彼もThe Economist Radioでおなじみ。
人造肉については、良く報道されているように、Beyond Meatなど上場企業も出てきている。細胞培養する方法と、Beyond Meatのように植物から作る方法がある。
扱いは小さかったのだが、私が興味を持ったのは、「都市の魚工場」。魚の養殖はここ数十年で拡大を続け、2015年の養殖魚の生産量は、牛肉の生産量を上回っている。日本食の世界的普及などで世界の魚消費が増えると同時に、乱獲で魚の天然資源が減っている。
魚類は摂取した栄養を肉に転換する効率が非常に高い。これは、哺乳類が温血動物であるのに対し、魚は冷血動物で、体温を保つのにエネルギーを使わないからということ。
対抗馬は人造肉で、魚が畜産肉に比べて効率がよくても、細胞培養や穀物から大量に造られるようになれば、養殖用の大型水槽とエサが必要な陸上養殖は敵わないかもしれない。しかし、食物は嗜好品でもあるので、魚への需要が無くなることはないだろうから、陸上養殖拡大の可能性はある。
日本はもともと養殖大国なので、期待したい。
・2050年には、世界の陣王は100億人近くに達する。しかし、農畜産業の進歩により食糧難は起きず、一人当たりのカロリー摂取は今よりもむしろ増加する。・農業は、機械化や自動化がはるかに進み、工場に近いものになっている。ロボット式のトラクターやコンバイン収穫機、作物の成長をモニタリングするドローンや衛星が登場する。また、農薬の散布や雑草の除去はカメラ付きの専用ロボットが担当する。・土壌を豊かにする能力を持つ、操作された微生物が土にまかれる。・遺伝子操作され、栄養素を自ら作り出す大麦が作られる。・穀物は、光合成を大幅に加速させることで、成長が早まる。・窓のない建物の中で、水も栄養素も照明も徹底管理された都市型野菜工場が普及する。また、同じく都市の建物内でマグロなどの魚の養殖が行われることで、魚が動物性タンパク質の主要な供給源となるかもしれない。・生身の動物を一切必要としない、細胞培養による動物性食品の製造も進む。少なくとも、ステーキと牛乳は工場で大量生産されるようになる。・その流れのなかで、あらゆる「人造」食品に反対する人々と、生身の動物を使った畜産、特に放し飼いではない畜産業のあり方に反対する人々の間で対立が起きる。最終的には動物愛護派が勝つだろう。・アフリカなどの貧しい国々では、これまで先進国の農業で起きていたのと同じように、小規模自作農の統合が進む。
2020年04月16日
政府が「脳」に侵入する
第6章の著者は、科学者であり、起業家でもあるロバート・カールソン。バイオテクノロジーへの投資会社バイオエコノミー・キャピタルのMDを務める。
前半は、『マトリックス』や『攻殻機動隊』の世界どおり。その世界が技術的にはすぐそこまでやってきている。
個人的に興味をひかれたのは、後半の「酵素の研究によって、まだ存在していない材料が大量に見つかる」であったり、「特定の燃料や化学物質を生み出す人工微生物」。この分野は、発酵食品を伝統的に多く取り入れてきた日本の得意分野でもある。
・現在、米国防高等研究計画局（DARPA)は、デジタル装置を人間の大脳皮質につなげるプロジェクトに6000万ドルを投じている。その神経インターフェースは「皮質モデム」と呼ばれている。・病気になったり老化した組織は、3Dプリンターで作られた新品の組織と交換できるようになる。こうした再生医療の確立により、人間の寿命は大幅に延びる。・ゲノム編集により、まずは遺伝性の病気の根絶が目指される。その後、研究者はアルツハイマー病やさまざまな癌、心臓疾患のリスク抑制に取り組む。・個人が自分のゲノムを操作することも可能になる。だが、遺伝子操作によって健康状態、知力や身体能力、そして容姿を改造する自由をどこまで認めるのかは議論の的になる。とはいえ、多くの人の需要に突き動かされ、確実に実用化は進む。・人間の脳はインターネットと直接つながる。脳と宇宙を隔てる壁は消え、様々な体験が可能になる。しかし、ウイルス攻撃やパスワード管理など、セキュリティ上の問題が浮上する。・脳はアップデート可能なものになるが、高機能な最新版は財力のある人間しか手に入らないかもしれない。新たな「デジタルデバイド」が生じる。・酵素の研究によって、まだ存在していない材料が大量に見つかる。・複雑な有機飼料を食べ、特定の燃料や化学物質を生み出す人工微生物が自律的ロボットに組み込まれ、製造業のあり方は根本的に変わる。
2020年04月15日
宇宙エレベーターを生み出す方程式
第5章の著者は、MIT物理学教授のフランク・ウィルチェック。2004年のノーベル物理学賞受賞者だ。日本語訳の著書も数冊出ている。
まず、「20世紀に物理学の世界で何が起きたのか？」というと、「われわれは、原子物理学、材料科学、化学、そして実現可能なあらゆる工学において、その土台となる正確で完全な方程式を、今日すでに手に入れている」のだという
（え、そうなの
）であれば、正しく計算すれば、何が可能で、何が不可能かは全て分かってしまうということになる。その結果、「タイムマシンや光速を超える情報伝達は実現しないが、老化や疾病は克服できる」という。
そして、宇宙エレベーターや、量子コンピュータ、脳と同じ機能を持った3Dコンピュータ、知覚中枢の拡張も。宇宙エレベーターが実現すれば、さらに宇宙旅行のハードルが下がる。
98：20世紀に物理学の世界で何が起きたのか？われわれは、原子物理学、材料科学、化学、そして実現可能なあらゆる工学において、その土台となる正確で完全な方程式を、今日すでに手に入れている。108：暗黒物質と暗黒エネルギーは有益な資源となるか？天文学者はなた、電子、光子、グルーオンやクォークでできた通常の物質は宇宙の重量の4%に過ぎないことを示す、説得力のあるエビデンスを収集してもいる。残りは「暗黒物質」（約25%）と「暗黒エネルギー」（約70%）である。暗黒物質も暗黒エネルギーもこれまでのところ、通常の物質遺体するかすかな重力的影響を通じてのみ存在が確認されている。122：人間の知能もAIも、「論理的あるいは科学的な『である』命題をいくら積み重ねても、倫理的な『べき』命題は導けない」（デビッド・ヒューム）「理性は感情の単なる奴隷であり、それ以外の何物でもない。感情に奉仕し、従う以外のことはできない」
2020年04月14日
なぜデジタル革命では生産性向上がみられないか？
第4章は、The Economist経済コラムニストのライアン・アベントによる。著書に『人間の豊かさ：21世紀の雇用とその欠如』がある。
よく言われるパラドックスに、「我々は何十年にもわたってコンピュータに投資してきているのに、なぜ生産性が上がらないのか」というのがある。「第二の波」PCから数えても、デジタル革命が始まって既に50年経つのに、労働生産性の改善はアメリカでも微々たるものだ。日本はさらに悪い。
では、デジタル革命に意味はないのかというと、そうではない。著者は過去の「まったく新しい大きな可能性をもったテクノロジーが出てきた時、われわれがその活用方法を見いだすまでには時間がかかる」という。そして、それは数十年単位になる。シカゴ大学のチャド・シバーソンは、電化時代の労働生産性の伸びと、これまでのIT時代のそれを比較したところ、両者のパターンは驚くほど似通っていた（p85）。
政府のデジタル革命が、エストニアやシンガポール、スウェーデンなどで早いのは偶然ではない。どこも小国で(人口1000万人以下）、国家としての意思決定が速いのと、それが徹底できるから。例外的に大国でありながら早いのは中国で、これは政治体制として国民のコンセンサスを必要としないからであるのは言うまでもない。
83：電気も自動車も成長率を押し上げるには長い時間がかかったまったく新しい大きな可能性をもったテクノロジーが出てきた時、われわれがその活用方法を見いだすまでには時間がかかる。91：働く場所や労働時間を自由に選べるような仕組みを構築する社会的適応には、先例がある。産業革命が始まったばかりの頃、工場の雇用の伸びは社会の適応能力を超えてしまった。労働者は都市部のスラムに押し寄せたが、そこにはきれいな水、まっとうな住居やごみ処理などの生活インフラが整っていなかった。悲惨な生活環境によって数百万の労働者が命を落とした。労働者の組合化、社会不安、政治改革、そしてときには革命によって長い年月をかけて成長の恩恵を幅広く分配するための社会制度が整っていった。92：新たなデジタル・テクノロジーが19世紀と20世紀の社会制度という壁にぶつかっていた。新たな改革や投資が行われなければ、各国は大量の不完全雇用者やスキルの低い労働者を抱えたままになる。そうした労働者は賃金を押し下げ、優れたロボットや思考能力を持つコンピュータの普及の妨げとなる。
2020年04月13日
AIを制する者は誰か？
第3章の著者はアン・ウィンブラッド。米SFを拠点とするハマー・ウィンブラッド・ベンチャーパートナーズの創業パートナーで、30年以上にわたりソフトウェア業界を代表する起業家兼投資家として活躍。
米VC業界で、ソフトウェアへの投資が拡大したのが比較的新しいという指摘は面白い。「企業の最大の資産であるソフトウェア技術者が知らぬ間にごっそり逃げ出してしまうのではないかといった不安や、この新たな産業におけるビジネスモデルが未熟であったことなどが原因」だったと書かれている。結果、1980年代末から1990年代初頭にかけても、ソフトウェア産業への投資は年間4億から5億ドルにとどまっていたという。
1995年にソフトウェア会社への投資額はようやく10億ドルを越えた（435件）。そこから急成長が始まり、2015年にはアメリカVCの総投資額580億ドルのうち、230億ドルをソフトウェアが占めるようになっている（1800件）。
ちなみに、日本の2018年度におけるVC総投資額は1640億円（前年度比20%増）で、IT関連(多くがWebサービス）54%、バイオ・ヘルスケア関連19%、製品・サービス11%、工業・エネルギーその他11%であった。
ちなみに、日本の2018年度におけるVC総投資額は1640億円（前年度比20%増）で、IT関連(多くがWebサービス）54%、バイオ・ヘルスケア関連19%、製品・サービス11%、工業・エネルギーその他11%であった。
第1の波：メインフレーム型コンピュータ〜IBM第2の波：PC〜Microsoft第3の波：Web1.0〜Amazon, Google第4の波：Web2.0（Cloud, Mobile)〜Apple, Google, Amazon(AWS), Facebook, Salesfoce第5の波：Big Data, Analytics, Visualization第6の波：IoT, Smart Machine第7の波：AI62：それまでの波の乗数効果もあり、回を重ねるたびに指数関数的に強さを増してきたMicrosoftが10億ドル企業になるまで15年1998年設立のGoogleは5年で10億ドルFacebookは4年強で10億ドル1994年創業のAmazonは売上が100億ドルに達するまで13年第4の波のAWSは2006年の事業開始から10年で100億ドル75：機械学習市場規模2020年までに400億ドルアプリケーションの60%はAmazon, Google, IBM, Microsoftのプラットフォーム上で動く。75：AIの波の勝者決まるには、あと数十年はかかる。ビッグデータとIoTの可能性をどこまで引き出せるかが、勝負の鍵。
2020年04月12日
映画「コンテイジョン」
今回のコロナ禍を予告していたと話題になっている映画「コンテイジョン」（2011)。私も気になり、思わずU-NEXT契約をしてしまう（無料トライアル中）。
中国発の新種ウイルスが飛行機の乗客を通して瞬く間に世界中に広がるのも同じなら、今回初めて聞いた米CDC（Center for Disease Control)やWHOなど出て来る専門機関も同じ。大都市が封鎖され、アメリカでは暴動が発生する。
よくある陰謀ものではなく、政府機関や国際機関は正しく行動し、事態の鎮静化に努める。一方、「政府は隠している」とネット上でデマを流し、大衆を扇動する人が出て来るのも今回実際に起こっている通り。「気味が悪いほどそっくり」なのだ。
当たり前だが、情報を一番持っているのはトップ。日本政府であれば安倍首相に一番情報が集まっているのは間違いない。世界中が（ほぼ）初めての事態に遭遇しているのだから、後から見れば、「ああやって置いたほうがよかった」というのはあるだろうが、ここは一番情報が集まっている政府の方針に従うしかないだろう。
組織のトップに立ったことがある人なら分かるが、何をやっても必ず批判は出てくる。民間企業なら、「嫌なら辞めて」と言えるが、民主主義国家ではそうは言えないし、また全ての情報を明らかにできないこともある。
映画では、致死率20-30%との想定で、新型コロナウイルスよりはるかに強力。ワクチンが開発・製造されるまでに、世界で2600万人が死亡する想定となっている。発生源は中国(香港？）の農村での豚とコウモリの接触による新種ウイルスの誕生だった。
2020年04月11日
アメリカン・グラフィティ
3月末で前職を辞めたので、本来であれば、次どうするかで連日人に会ったりしているところだが、アポは蒸発。香川を離れるので、予定されていた送別会のためにしばらく残っていた。結果、映画を見る時間が増えた。一日中読書というわけにもいかないので、夜は映画ということになる。
「アメリカン・グラフィティ」（1973)をBSでやっていた。ジョージ・ルーカス監督・脚本。ルーカス監督は処女作が興行的に失敗し、製作方針を変えて、自分の高校生活をベースにした大衆受けする青春映画にした。本作は大ヒットし、出世作となった。製作はフランシス・フォード・コッポラ。USC映画学科で友達だったらしい。
時代は1962年。驚くのは、高校生が普通に車に乗っていること。運転免許が取れるのは分かるが、当時すでに、富裕な家庭の子供は、自分の車を持っていた。あるいはアルバイトでお金をためて。これを見た世界中の人がアメリカの豊かさに驚いたはずだ。
2020年04月10日
ムーアの法則の終わりの先に来るもの
第2章は、こちらもThe Economist Radio(Podcast)でおなじみのティム・クロス。1965年にインテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが発見した「ムーアの法則」はあまりにも有名。
「ムーアは集積回路に搭載できるコンポーネントの数は毎年倍増する、と指摘した。その後倍増のペースは2年に一度と修正されたものの、『ムーアの法則』は自己実現型予言としてコンピューティング産業そのものの進歩のペースを規定してきた」
「半導体チップのコンポーネントの微細化は世代を追うごとに困難になってきている。トランジスタの回路が原子数十個分の大きさになった今、さらなる微細化の余地はなくなりつつある」
だが、コンピュータの高速化はまだ続くと考えられる。それは、これまで置き去りにされてきたプログラミングの質の向上や、専門性の高いチップの設計・採用が進むからだ。「ムーアの法則」が生きている間は、プログラミングを見直すより、ハード性能向上に頼るほうが確実で手間がかからなかった。
これからのコンピューティング能力は、データセンターの中に置かれる。クラウドコンピューティングによって、コンピューティングは電気や水のように、必要に応じて使う公益サービスになると考えられる。
40：2015年、すでに年間売上高550億ドルを超え、世界の半導体業界のリーダーとなっていたインテルは、新たなマイクロプロセッサ「スカイレイク」を発表した。スカイレイクには15-20億個のトランジスタが組み込まれているとみられる。14nm幅で配置されたトランジスタは小さすぎて目には見えない。可視光線の波長よりもはるかに小さいのである。43：ムーアの二つ目の法則「（チップの工場である）ファウンドリーのコストは4年ごとに倍増する」じっさい今日のファウンドリーのコストは100億ドルに近い。45：特定用途向けのチップが活躍する今日のスマートフォンには1971年のアメリカ中のコンピュータを足し合わせたほどの計算能力があるが、それを1回のバッテリー充電で1-2日は使えるようになった。
2020年04月09日
MEGATECH: Technology in 2050
イギリスを代表する経済誌『エコノミスト』による予測。他の類書と違うのは、編集スタッフに加えて、各界の専門家にも執筆依頼していること。
第一章は「日本のガラケーは未来を予測していた」は同誌副編集長兼デジタル戦略責任者のトム・スタンデージによる。
2000年初頭、シリコンバレーの『WIRED』誌では、「日本の女子高校生ウォッチ」なるコラムが人気を博していたという。日本の多機能ガラケーとそれを使いこなす女子高生は、未来を先取りしていると考えたのだ。それは、iPhoneの未来を予測していた。
SF作家ウィリアム・ギブソンの有名な言葉に「未来はすでにここにある。均等に行き渡っていないだけだ」というものがある。「テクノロジーの懐胎期間は驚くほど長い。突然登場するように見えて、実はそうではない」のだ。だから、「現在」の最先端の使い方を知ることは未来予測につながる。
トムが他に、「未来を創造するための三つのツール」として上げているのは、「テクノロジーの過去」と「未来に目を向ける」。新しいテクノロジーが出現した時の人間の反応と、それが普及するまでの過程にはどの時代にも驚くほど共通点がある。だから、「テクノロジーの過去」を知ることは未来予測に役立つ。
最後に、「未来に目を向ける」では、いかに過去のSF作品が正しく未来を予測していたかを語る。子どもの頃熱心なSF読者だったというイーロン・マスクは、「未来という枝分かれしていく可能性の流れ」の全体像をとらえるのに役立つといっている。1990年代のフリップ開閉式の携帯電話は、1960年代のTV番組『スタートレック』に登場する携帯通信機に触発されたように見えるし、同番組にはコンピュータと直接会話する場面も出てきた。今なら、Amazon Echoだ。
トムが他に、「未来を創造するための三つのツール」として上げているのは、「テクノロジーの過去」と「未来に目を向ける」。新しいテクノロジーが出現した時の人間の反応と、それが普及するまでの過程にはどの時代にも驚くほど共通点がある。だから、「テクノロジーの過去」を知ることは未来予測に役立つ。
最後に、「未来に目を向ける」では、いかに過去のSF作品が正しく未来を予測していたかを語る。子どもの頃熱心なSF読者だったというイーロン・マスクは、「未来という枝分かれしていく可能性の流れ」の全体像をとらえるのに役立つといっている。1990年代のフリップ開閉式の携帯電話は、1960年代のTV番組『スタートレック』に登場する携帯通信機に触発されたように見えるし、同番組にはコンピュータと直接会話する場面も出てきた。今なら、Amazon Echoだ。
22：15年前、スマートフォンの登場を予測していた人々は、日本の女子高生に注目した。23：新たなテクノロジーが引き起こしたとされる問題が、往々にして人間の性によるもの「犯罪者ほど科学の最新の成果を積極的かつ迅速に取り入れる集団はない」（1888年シカゴの警察官）29：未来を創造するための三つのツール・テクノロジーの過去・現在・未来に目を向ける
2020年04月08日
明るい未来
最終章は「明るい未来」を作るための提言。
「集団の活動に大きな変化が必要な際には、すべては必ず個人が変わることから始まる」ということで、個人の内面を変えるための「10段階」が提案されている。
その第一が、「自分の死は不可避だと自覚せよ」。今回のコロナ騒ぎによる買い占めなど見苦しい行動を見ても、個人利益の行き過ぎを感じる。人間が病気で死ぬのは当たり前なのだから、常識的な行動を行っていれば十分だろう。どうせ、いつかは死ぬのである。
そもそも特定環境を除けば感染確率は低いし、致死率はさらに低い。なのに、他人に迷惑をかける必要はない。日本では年間137万人が死んでいて、都内では12万人、毎月1万人が死んでいる。
180：自分自身に働きかける集団の活動に大きな変化が必要な際には、すべては必ず個人が変わることから始まる。個人の内面が変わらなければならないのだ。自分自身に働きかけるとは、世界がまだ暮らせる場所であるようにするために、世界に働きかける心構えをもつことである。10段階�ー�分の死は不可避だと自覚せよ�⊆�己を尊重しろ、自分自身のことを真剣に考えろ�Ｊ僂錣蕕覆ぜ�分を見つけろ�ぢ昭圓�行おうとすること、そして世界の行方について、絶えず熟考しながら自分自身の意見をまとめろ�ゼ�分の幸福は他者の幸福に依存していることを自覚せよ�κ�数の人生を同時かつ継続的に送る準備をせよ�Т躓 �脅威、落胆、批判、失敗に対する抵抗力をつけろ��不可能なことはないと思え��実行に移す��最後に、世界のためにも行動する準備をせよ提案�ヽ惺擦篷［Г龍飢塀颪覆鼻△い燭襪箸海蹐法⇒�他主義、寛容な精神、誠実さを養うための学習を取り入れろ。��国連総会の下に、次の３つの機関を設立せよ・世界の現実を把握するために組織改革された安全保障理事会・世界中の30歳未満の若者をメンバーとする次世代議会・世界環境裁判所��世界的な紛争が勃発するリスクと闘え�に，了拉曚繁塾呂鰺淦�する合法的な手段を強化せよ。とくに、女性や子供に対する暴力を撲滅する。�ダこΨ从僂力�携を組織せよG20の現在の権限を、改革された国連安全保障理事会に譲渡し、この理事会に常任理事会のポストを設け、その信頼できる人物に既存の国際金融機関の監督および調整のための手段を付与する。��世界通貨を導入せよ全ての人に万国共通のベーシックインカムを保障するため。ベーシックインカムの支給はIMFが管理する。�Ь�規模農家の農地を守るために、農地に関する所有権を世界的に強化せよ。�╂儷謀�な経済を推進するための世界的な基金を創設せよ。利他主義に基づく活動、とくに次世代に役立つ活動を応援する。��新たな技術進歩を世界中の人々が利用できるように支援せよ。��最後に、今までに述べたことに対する取り組みの進行状況を、企業、都市、地域、国、世界という単位で、客観的な指標を用いて計測せよ。
2020年04月07日
99%が激怒する
「民主主義は最悪の政治形態らしい。ただし、これまでに試された全ての政治形態を別にすれば」
というチャーチルの言葉は有名だが、個人の自由が行き過ぎると本当に最悪の政治形態になる。
今回のコロナ騒ぎで震源地の中国が比較的短期間で封じ込めに成功したのに対し、それを見て十分に対策を取る時間のあったはずの民主主義国家は対応が遅れた。日本は特に現行憲法の下で、国であれ、自治体であれ、「要請」は出来ても、命令はできない。
「長期的な課題に対処できない、不人気な決定は下せない」といった民主主義の欠点を補うため、選挙制度の改革は必須だろう。例えば、子供に選挙権を認め、それを親権者が行使できることにすれば、高齢者に偏った投票者数をある程度是正できる。税収が上がらなくて困っている今日、納税額によって追加数を認めれば、現役世代の投票率の低さを補い、納税へのインセンティブにもなる。検討価値ありだと思うのだが・・・。
146：個人の自由の正体個人の自由が行き過ぎると、個人的な楽しみが際限なく正当化される。そうなると誰もが自分のことにしか関心を抱かなくなる。第一に、次世代に自由を保障するためなら、自分の命をなげうってでも成し遂げようとするものは現れなくなる。どんな人生であっても称賛に値し、すべての死は非業であり、個人の悲劇は国民的物語になる。死はまったく許容できないものになるのだ。152：市場民主主義という理想の再考民主主義の社会では、長期的な課題に対処できない、不人気な決定は下せない、技術進歩を一部の人のためにしか利用できない、気候変動に対処できない、移民を制御できない、社会の調和を保てない、国民の声を広く反映させられない、ましてや将来世代を考慮できない。164：世界大戦を勃発させる6つの起爆剤（確率の高い順）�‥譟ζ逎轡奮い隆躓�中国の現体制は、2022年に人口規模で追い抜かれるインドとの競争に脅威を感じる。中国の隣国は、中国が南沙諸島に人工島を建設していると主張するように、中国は世界最大勢力の座を早急に手に入れようとするために、尖閣諸島などがある日本の領海に人工島をつくるなど、挑発的な行動に出る。アメリカは日本を支援する一方、中国は北朝鮮を支援する。北朝鮮はアメリカに対して本格的な核攻撃を開始するかもしれない。(中略）北朝鮮は核兵器を使って日本も攻撃しようとする。��旧ソビエト連邦における危機ロシアの人口は減少し、高齢化する。イスラーム系国民がロシア人口の10%に達し、極東地域では中国系国民が多数派になる。潜在的な敵に囲まれるロシアは、率先して、あるいは脅威を感じる反応として、孤立状態を打ち破り、この包囲網を突破しようとする。まず、ロシアはシベリアの管理を巡って中国と衝突する。シベリアは温暖化の進行によってまもなく肥沃な大地になる。ロシアはクリミアとウクライナ東部の独立派の拠点地域を結ぶ細長い一帯を、またしても占領するだろう。アメリカとヨーロッパは、ロシアのこうした侵略を思いとどまらせるためにウクライナへの支援を強化する。��パキスタンの核戦略パキスタン出身のテロ集団がインドに攻撃を仕掛けるのであれば、インドの精鋭部隊は従来型の攻撃を開始し、国境近くに位置する核弾頭が格納してあるパキスタンの軍事基地を掌握しようとする。そうなれば、パキスタンはインド軍の侵攻を食い止めるために、自国の戦略核兵器を利用する武力行使を決断する。�っ翕譴隆躓�シリア政権は2030年以前に崩壊する恐れがある。シリア政権が崩壊すれば、イラン政権は強化され、レバノンで内戦が起き、パレスチナはイスラエルを追い出そうとする。イラクは、トルコ、ロシア、アメリカ、クルド、イランが衝突する場になる。�ゥ汽悒訝楼茲肇▲侫螢�の角における危機2030年、サヘル地域の国々とアフリカの9つの破綻国家の混乱は先ほど述べた。（中略）北アフリカとヨーロッパに向かう移民が大量に発生する。それらの地域から数千万人が移民となるのだ。�Εぅ好蕁璽犢�イスラーム国の戦略は、自分たちの影響力を拡大するために、一度は占領したが失ったイラクとシリアの領土の一部を、おもに非組織的な戦闘員を使って再び占領することと同時に、民主主義を動揺させ、民主主義国家が外国人を締め出すように仕向けることだ。彼らの目的はイスラーム教徒と非イスラーム教徒を敵対させることであり、またヨーロッパとアメリカで深刻な内戦が勃発する環境を作り出すことだ。
2020年04月06日
憤懣が世界を覆い尽くす
『FACTFULNESS』にあった通り、世の中、パンデミックや株式市場の暴落など（今回は両方だ
）非常事態は時々起きるものの、全体としては改善に向かっている。少なくとも、この数十年は。ただし、その改善は自然とそうなったわけではない。関係者や関係機関の意思と努力があって初めて実現したことだ。フランスの知の巨人ジャック・アタリは、警鐘を鳴らす。何もしなければ、2030年には世界はこうなってしまうと。
アメリカは圧倒的な軍事力を持つ一方で、国内の貧困も、国民の健康状態も中等教育も改善できてない。世界トップランクの大学がアメリカに集中するなか、「成人人口の21%は、10歳児向けの文章を理解できず、中等教育を終えた若者の19%は文字の読み書きができない」という。大国で、また連邦国家であることから、先進国と後進国両方の特性を兼ね備えた「危うい」国なのだ。
単一市場には成功したものの、単一政治には程遠いEUからはついにイギリスが抜けた。南ヨーロッパの若年層の長期失業者は深刻で、「2013年では、ギリシャがおよそ60%、スペインが50%、イタリアが40%だった」という。当然、治安は悪くなる。
�機（椅陲�世界を覆い尽くす37：アメリカの軍事力アメリカの軍事予算は、アメリカを除く上位9か国の軍事予算を合わせた額よりも大きい。アメリカ軍は、世界160か国にある800の軍事基地に駐留しており、世界中の外国の軍事基地の95%はアメリカ軍のものだ。アメリカは6970個以上の核弾頭を保有しているようだ。78：超大国アメリカの危うい経済成長アメリカの貧困層は公式の数字で4780万人だ。これはアメリカ人口の7人に1人に相当する。2009年から2016年にかけて失業率は半減したが、生産年齢人口に占める就業者の割合は、1977年以来、最低である。アメリカでは、成人女性の40%、成人男性の35%、子供と若者の17%が肥満だ。アメリカでは文字の読み書きができない人々が3200万人近くいる。これはアメリカ人口の10%に相当する。成人人口の21%は、10歳児向けの文章を理解できず、中等教育を終えた若者の19%は文字の読み書きができない。82：政治力のないヨーロッパヨーロッパの若年層の長期失業者の割合は、2008年から急増した。2004年の平均20%から2014年には34%にまで達したのである。2013年では、ギリシャがおよそ60%、スペインが50%、イタリアが40%だった。ようするに、EUは共通の法律のない単一市場は失敗する運命にあることを証明したのである。中央銀行を統一するだけでは、法の支配は共通化されない。
2020年04月05日
2050年衝撃の未来予想
苫米地英人による、2050年の未来予想。この苫米地氏、不思議な経歴。
「MITを経て上智大学外国語学部英語学科卒業後、三菱地所へ入社。2年間の勤務を経て、フルブライト留学生としてイエール大学大学院に留学、人工知能の父と呼ばれるロジャー・シャンクに学ぶ。同認知科学研究所、同人工知能研究所を経て、コンピュータ科学の分野で世界最高峰と呼ばれるカーネギーメロン大学大学院哲学科計算言語学研究科に転入。全米で4人目、日本人としては初の計算言語学の博士号を取得」とある。
MITから上智に転入？したというのも不思議（逆なら分かるが）。認知科学者（機能脳科学、計算言語学、認知心理学、分析哲学）、計算機科学者（計算機科学、離散数理、人工知能）と名乗っている（本書 著者紹介）。
内容はかなり冗長で、話があちこちに飛ぶ。この10年は年数十冊のペースで出版されているようで、口述筆記なのかどうなのか、いずれにせよライターが書いたものとも思われる。
どこかで読んだような話が多いのだが、特徴的だと思ったのは2点。
・MUFJコインを高く評価している
・ロシアが台頭すると予測
MUFJコインは、三菱UFJファイナンシャルグループの暗号通貨。ブロックチェーンの安全性・汎用性に加え、MUFJという巨大資本の信用力から普及する可能性があるとしている。MUFJの資金量172兆円は、オーストラリアやロシアのGDPより多く、MUFJ口座数4000万はBitcoinユーザー1300万人より多い。
そして、ロシア。天然資源に恵まれているのは昔から変わらないとして、地球温暖化で広大なシベリアが生活に適した土地になるという。私は、その前に、シベリアの永久凍土が溶けてメタンガスが大量に大気中に放出される方が心配だが。
MUFJコインについては、初めて勤めたのが三菱地所だったこと、ロシアについては、数学者が多いので、MITやカーネギーメロンで同僚がいたのかもしれない。ロシア人の性格を思うと、数学者や物理学者には向いているとしても、実務をきちんと回すようには思えないのだが。
はじめに：未来を知って、よりよい未来に変えたいと思うのならば、すでに一部の人たちが描いた現実である5年後10年後の予想など意味がありません。そうではなく、少なくとも今まさに開発中の技術の特許が切れる20年先、さらに、その技術が一般化し、社会に本質的な変化をもたらす30年先、40年先を予想しなければ意味がないのです。16：2050年には「60代、70代は働き盛り」「90代でも若造」の時代日本人の平均寿命の推移男性 女性1925年 42歳 43歳1960年 65歳 70歳2014年 80歳 87歳＊89年間で男女ともに約2倍！49：MUFJコインの革新性ブロックチェーンの安全性・汎用性に加え、MUFJという巨大資本の信用力MUFJ資金量172兆円＞オーストラリアやロシアのGDPMUFJ口座数4000万＞Bitcoinユーザー1300万人153：サイバー攻撃2009年イランの遠心分離機へアメリカとイスラエルがサイバー攻撃「ゼロデイ攻撃」OS内部のバグを利用してOSに侵入→アンチウィルスソフトの乗っ取り。その気になればサイバー攻撃によって電力供給などのインフラを破壊したり、ミサイル発射装置を誤作動させることも可能。160：2050年に向けての戦争はハッキング合戦国歌を超越した通貨発行権を握るサイバー企業vs物理空間の通貨価値を保持しようとする国家171：日本独自のOS、制御システムの開発サイバー攻撃の中で最も強力で警戒すべきは「ゼロデイ攻撃」172：ポストサイバー攻撃はマインドハッキング人間の精神に直接働きかけ、意識を操作、破壊する技術。218：日本にしか果たせない役割日本ほど安定した状態を維持してきた国家は世界に存在しない。2000年以上前から続く天皇制を、ほとんどの国民が違和感なく受け入れている。これほど精神的に安定した国民性は、世界中どこを探しても存在しません。だからこそ、世界でただ一国だけ、戦争放棄を訴えられるのです。227：アメリカは世界のリーダーを辞めた代わりにリーダーを引き受けようという国〜イスラム、ロシア
2020年04月04日
アラバマ物語
退職とほぼ同時にコロナ騒ぎ深刻化であれこれ予定も中止となり引きこもりがち。気晴らしに先月BSで録っておいた映画「アラバマ物語」（1962)を見る。有名作品だが初めて見た。
原題は、"To Kill a Mockingbird"。「モッキンバード（マネシツグミ）を殺すこと」と物騒だ。作品前半で、主人公の弁護士アティカス・フィンチ（グレゴリー・ペック）が銃に興味を持っている息子に、彼の父親から言われた話としてこういう。
「家の中のものに決して銃口を向けてはいけない。裏庭で空き缶を撃つのはいいだろう。だが、そのうち、鳥を撃ちたくなる。それも、Blue jay(アオカケス)くらいならいい。だが、モッキンバードを撃つのは罪だ。モッキンバードは美しい歌声を聞かせてくれる無害の鳥だからだ」
モッキンバードは、アラバマ州に隣接するミシシッピ州やテネシー州の州鳥でもあり、カントリーミュージックでもよく登場するという。アオカケスには可哀そうだが。
要は、モッキンバードは罪のない弱い立場の人、つまり映画の中で無実の罪に陥れられる素朴な黒人男性を象徴している。舞台は1930年代の大恐慌時代のアメリカ南部。南北戦争が終わっても黒人への偏見は残り、おまけに大恐慌で白人農家も貧しくなっているのでスケープゴートを求めているのだ。
そこに淡々と、弁護人としての仕事を全うしようとする弁護士。主人公アティカスの人気は非常に高く、映画公開から40年経った2003年のアメリカ映画協会が選んだヒーロー部門で1位となっている。何のアクションもない映画の主人公が、インディー・ジョーンズやジェームズ・ボンドを抑えての快挙だ。2008年にはやはりアメリカ映画協会によって、最も偉大な法廷ドラマに選ばれている。
2020年04月03日
リーダーの「悪い癖」
2007年に出たロングセラー。著者のMarshall Goldsmithは「コーチングの神様」らしい。エグゼクティブ・コーチングの第一人者として、先日亡くなったジャック・ウェルチ元GE会長をはじめ、世界的大企業の経営者80人以上をコーチしたという。
多くの人は「もっといい人」になろうとする。この目標を達成するもっと簡単な方法は、「嫌なヤツであることをやめる」ことだという。
確かに、リーダーシップの方法は人によって違い、自分の個性に合った方法でなければ、無理があって続かない。それよりも、ほとんどの人にとって「嫌なこと」を止めるほうが効果的だ。
●リーダーの「悪い癖」・極度の負けず嫌いどんな状況においても、必要以上に「勝とう」とする。他人を不愉快にさせる行動の大半は、この悪癖から生じる。・何か一言、価値を付け加えようとする人の意見に対して、「それよりもいい方法がある」などと口を挟む。これによって、相手の意欲を削いでしまう。・人を傷つける破壊的コメントをする「それは余り賢くないな」他人を見下し、傷つける。・批評家「うまくいくわけないよ。その理由はね」・言い訳失敗すると、他人のせいにしたり、生まれつきの資質のせいにしたりする。・すまなかったという気持ちを表さない許しを乞うとプライドが傷つくため、謝罪するのを拒む。・感謝の気持ちを表さない提案を受けたり、褒められたりしても「ありがとう」と言わない。
2020年04月02日
「あの人」の裏の顔
「サイコパス」とは、「平気でウソをつき、不正がバレると、自分が被害者であるかのように振る舞う」ような人で、もともと、連続殺人犯などの反社会的な人格を指した。ところが、最近の脳科学の進歩で、必ずしも冷酷な殺人犯ばかりではないことが明らかになった。
それどころか、大企業のCEOや弁護士、起業家など、出世した人にはサイコパスが多いという（米国の場合）。犯罪を犯さなければ個性の範疇とも考えられるので、人数の推定には幅があるが、カナダの犯罪心理学者ロバート・ヘアは全男性の0.75%（犯罪レベルに限定）、心理学者マーサ・スタウトはアメリカ人口の4%（グレーゾーン含む）と推定している。
興味深いのは、シリコンバレーの起業家に求められる気質は、サイコパスの性質にピッタリだということだ。
それどころか、大企業のCEOや弁護士、起業家など、出世した人にはサイコパスが多いという（米国の場合）。犯罪を犯さなければ個性の範疇とも考えられるので、人数の推定には幅があるが、カナダの犯罪心理学者ロバート・ヘアは全男性の0.75%（犯罪レベルに限定）、心理学者マーサ・スタウトはアメリカ人口の4%（グレーゾーン含む）と推定している。
興味深いのは、シリコンバレーの起業家に求められる気質は、サイコパスの性質にピッタリだということだ。
�‐錣縫好螢襪魑瓩瓠⊆ 垢吠儔修�起こる状況に惹かれる
�▲襦璽襪鮟纏襪擦此▲薀佞憤媚弖萃蠅�許される状況を好む
�Ｂ梢佑鰺�用し、仕事をさせることが得意
サイコパスは、「高いプレゼンテーション能力を持ち、巧みに人の心理を操る」。しかし、口ばかりうまくて、地味な仕事は苦手なので、精査して見ると意外と業績は低かったりする。シリコンバレーでは変化スピードが速く、メッキが剥がれる前に状況とポストが次々と変わっていくので、気づかれないままトップまで上り詰める可能性が高いらしい。
著者は、Apple共同創業者のスティーブ・ジョブズを、「世界で最も洗練された勝ち組サイコパス」だと考えている。
「彼は卓越したコンピュータの知識があるわけでもなく、実務的なビジネススキルさえ持ち合わせていなかったが、天才的なプレゼンテーションとネゴシエーションの才能によって全世界の人々を虜にした。一方で、アップルの元技術者や妻子に対する容赦のない振る舞い、追い詰め方は相当なものだったことが知られている。利用できると感じた人間には『すばらしい』と言ってすり寄り、しかし、利用し終わった人間や対立した相手には舌鋒鋭く攻撃し、古い知り合いを切り捨てていった」
サイコパスは、「高いプレゼンテーション能力を持ち、巧みに人の心理を操る」。しかし、口ばかりうまくて、地味な仕事は苦手なので、精査して見ると意外と業績は低かったりする。シリコンバレーでは変化スピードが速く、メッキが剥がれる前に状況とポストが次々と変わっていくので、気づかれないままトップまで上り詰める可能性が高いらしい。
著者は、Apple共同創業者のスティーブ・ジョブズを、「世界で最も洗練された勝ち組サイコパス」だと考えている。
「彼は卓越したコンピュータの知識があるわけでもなく、実務的なビジネススキルさえ持ち合わせていなかったが、天才的なプレゼンテーションとネゴシエーションの才能によって全世界の人々を虜にした。一方で、アップルの元技術者や妻子に対する容赦のない振る舞い、追い詰め方は相当なものだったことが知られている。利用できると感じた人間には『すばらしい』と言ってすり寄り、しかし、利用し終わった人間や対立した相手には舌鋒鋭く攻撃し、古い知り合いを切り捨てていった」
・サイコパスは冷酷な殺人犯ばかりではない大企業のCEOや弁護士にサイコパスが多いという研究結果も。・顔の横幅の比率が大きい男性ほどサイコパスである可能性が高い顔は、男性ホルモン（テストステロン）濃度が高いほど横に広くなる。そしてテストステロンの分泌が多いと、競争心や攻撃力が高まる。・サイコパスの身体的特徴の一つ＝心拍数が低いモラルに反する行動を取ろうとする時、心拍数が上がると、不安感情が喚起され、行動に抑制がかかる。心拍数が低く、しかも上がりにくいと、反社会的行動を取りやすい。・感情を伴う「熱い共感」を持たないサイコパスの脳の「偏桃体」の活動が、一般の人より低い。・出世した人にはサイコパスが多い高いプレゼンテーション能力を持ち、巧みに人の心理を操る。一方、経営管理やチームでの作業といった地味な仕事が苦手。・シリコンバレーの起業家に求められる気質は、サイコパスの性質に合致�‐錣縫好螢襪魑瓩瓠⊆ 垢吠儔修�起こる状況に惹かれる�▲襦璽襪鮟纏襪擦此▲薀佞憤媚弖萃蠅�許される状況を好む�Ｂ梢佑鰺�用し、仕事をさせることが得意
2020年04月01日
YES!を引き出す60の秘訣
![影響力の武器 実践編[第二版]:「イエス! 」を引き出す60の秘訣](https://m.media-amazon.com/images/I/51sm6l2HvkL._SL160_.jpg)
「人の心を動かし、承諾を得るためには、何をすればいいのか?」
説得に関する科学的研究を元に、YES!を引き出す秘訣が多数(60)紹介されている。それぞれ実例が示されているので、理解しやすい。
「妥協の選択」は、日本でも昔から商売の現場で「松竹梅」と言われてきた。つまり、消費者に三段階の選択肢を与えることで、中間価格の商品が売れるようになる現象だ。面白いのは、元の商品の価格を変えなくても、高級品を作ることで、中間価格の商品が売れだすということだ。さらに、「こんなに高いもの誰が買うの？」と作り手が思うようなものでも、たまに売れるので、全体の売上は二重に上がる。
「審査を受ける順番が結果に影響」では、コロンビア大学のアダム・ガリンスキー教授が実施したプリンストン大学の雇用記録調査が紹介されている。過去5年間に実施された面接を調べたところ、そのほとんどで最後に面接を受けた人が採用されていたという。
これには自身にも覚えがあり、選考で、最初の方は、後でもっと良い候補者が現れた場合に評価に差をつけられるように辛くしがちだ。また、自分が考えている理想的な候補者と比べてしまう。数名面接した後は、「このレベルの人が来る」という基準ができるので、それまでに面接した以上の人が来れば、その人を選ぶことになる。
「機長症候群」は組織にとって怖い問題。通常は、チームのメンバーが、正当で博識な権威者であるリーダーに従うのは正しい。しかし、リーダーが常に正しい判断をするとは限らない。ある研究では、「資格や経験のある看護士が、担当医師が絡んでくると、患者に対する責任を放棄してしまう」ことが明らかになっている。ある心理学者は、22のナースステーションに、自分がその病院の医師だと告げたうえで、明らかに間違いだと分かる量の薬剤投与を看護師に指示した。この実験では、95%のケースで看護士は医師の指示に疑問を呈さずに、言われた通りにしようとした。
リーダーはこうしたことが起こり得ると認識して、常日頃からメンバーがリーダーに意見するのを促さなければならない。
「妥協の選択」は、日本でも昔から商売の現場で「松竹梅」と言われてきた。つまり、消費者に三段階の選択肢を与えることで、中間価格の商品が売れるようになる現象だ。面白いのは、元の商品の価格を変えなくても、高級品を作ることで、中間価格の商品が売れだすということだ。さらに、「こんなに高いもの誰が買うの？」と作り手が思うようなものでも、たまに売れるので、全体の売上は二重に上がる。
「審査を受ける順番が結果に影響」では、コロンビア大学のアダム・ガリンスキー教授が実施したプリンストン大学の雇用記録調査が紹介されている。過去5年間に実施された面接を調べたところ、そのほとんどで最後に面接を受けた人が採用されていたという。
これには自身にも覚えがあり、選考で、最初の方は、後でもっと良い候補者が現れた場合に評価に差をつけられるように辛くしがちだ。また、自分が考えている理想的な候補者と比べてしまう。数名面接した後は、「このレベルの人が来る」という基準ができるので、それまでに面接した以上の人が来れば、その人を選ぶことになる。
「機長症候群」は組織にとって怖い問題。通常は、チームのメンバーが、正当で博識な権威者であるリーダーに従うのは正しい。しかし、リーダーが常に正しい判断をするとは限らない。ある研究では、「資格や経験のある看護士が、担当医師が絡んでくると、患者に対する責任を放棄してしまう」ことが明らかになっている。ある心理学者は、22のナースステーションに、自分がその病院の医師だと告げたうえで、明らかに間違いだと分かる量の薬剤投与を看護師に指示した。この実験では、95%のケースで看護士は医師の指示に疑問を呈さずに、言われた通りにしようとした。
リーダーはこうしたことが起こり得ると認識して、常日頃からメンバーがリーダーに意見するのを促さなければならない。
・妥協の選択商品について複数の選択肢を検討するとき、消費者は最小限必要なものと最大限手に入れたいものの中間を選ぶ傾向。よって、高価な商品を先に提示すると、中間価格の商品の魅力が高まり、売れ出す。・審査を受ける順番が結果に影響選好プロセスにおいては、初めの方よりも終わりの方で登場する方が、優位に立ちやすい。人は始めの方に辛い点数をつけがち。早い段階では求めている理想と比べがち。・消費者はCSRに取り組む企業の製品をより高く評価することがあるこうした組織の善行の影響は、製品やサービスに関する知識があまりない消費者に対して最も大きくなりやすい。・オークションで開始価格が低いほど最終的な落札価格が高くなることがある�ヽ�始価格が低いほど、参加ハードルが低くなる。��入札件数が増えると、これから入札しようという人に対する「社会的証明」（他人の行動を指針とすること）となる。�Ａ瓩�から入札した人は、たびたび自分の入札価格を更新する傾向がある。すでにかけた時間と手間が無駄にならないよう、価格を上げてでも、落札しようとする。・機長症候群チームのメンバーが、正当で博識な権威者であるリーダーに盲従してしまう。・交渉ごとに悲しみはご法度悲しみは、人の行動に影響を与える。悲しい気分だと、買い手は、同じ品物を普段より高い値段で買う。売手は、同じ品物をより安い値段で手放してしまう。重大な決定や交渉を行う時は、事前に自分がどんな状態か把握しておくことが大切。
