2020年02月
2020年02月29日
山水郷をSociety 5.0の「はじまりの場所」に
山形県鶴岡市の成功例は、ベンチャー業界でもよく知られる。何しろ、人口13万人の地方都市から６つのバイオベンチャーを輩出している。それは、慶応義塾大学が2001年に先端生命科学研究所を設立したからで、地方から自然発生したわけではない。山形県と鶴岡市が熱心に誘致した結果だ。
日本海に面し、庄内藩の城下町として栄えた町はきっといいところだと思うが、同じような地方都市は全国にたくさんあるだろう。日本を代表する高等教育機関が最先端の研究所を設立したことで、それを学びたい研究者や学生が鶴岡に集積し、その結果、これだけの成果が生まれた。
世界的に見ればトップクラスの大学は地方都市に多い。Oxford, Cambridge, Harvard, MIT, Stanford, Princton, Yale, etc. 皆、大学街と呼ばれるような地方都市ばかりだ。先端生命科学研究所の冨田所長が「独創的な仕事は、こういう場所でやるべき」というのにも頷ける。
日本では大都市の大学が学生に人気だが、それはほとんど勉強しなくても卒業できる日本の大学の特殊性からだろう。勉強せずにアルバイトで小遣いを稼ぎ、遊びたいなら都会の方が便利に決まっている。これからは、そうもいかないから、地方に最先端の研究所が出来るケースは増えると思う。地方都市にとっては誘致のチャンスだ。
188：在日英国人が経営するWalk Japan1週間のツアーで50万円。「東京、京都はもういいから、日本の原風景が見たい」223：Collaborative Consumption "What's mine is yours" (Rachel Botsman & Roo Rogers 日本版『シェア』)「信頼できる大人だけが参加するコミュニティ」の成立がシェアビジネスの前提条件。シェアビジネス興隆の背後には、「つながる経済」への憧れ？242：物語の呪縛国がつくった立身出世の物語を内面化してきた私たちは、山水郷に象徴される田舎や地方は「格下」で、都市のほうが色々な意味で優れた場所と見る癖。243：慶応義塾大学が山形県鶴岡市に先端生命科学研究所（2001）「独創的な仕事は、こういう場所でやるべき」→６つのバイオベンチャー「本当に素晴らしい人が、地方の最先端企業に就職して、仕事はエキサイティング、プライベートはスローライフという一粒で2度おいしい生活を送る」290：コマツのローカル化・地元回帰「生活コストの安い地方で雇用を増やした方が将来とも競争力を維持できる」（坂根正弘「私の履歴書」）コマツの賃金体系は、勤務地によって変わることはないので、東京より生活費の安い北陸のほうが可処分所得は高くなる。260：孤立と自立山水の恵みをふんだんに享受できるので山中での自立した暮らしが可能。先人達が植え育てた森があり、開墾した田畑があり、用水や堤や道があるから暮らせる。郷土とは、そういう先人達の努力が積み重なってできたもの。280：第4次産業革命と山水郷第4次産業革命やSociety 5.0の実現によってどんな国、どんな社会をつくりたいのかが結局のところよくわからない。そういう状態では個人の人生を重ねようがないし、人生を意味づけてくれる物語にならない。遅れを取り戻すには、いち早くAIやIoTを実装し、実践を積み重ねてデータを集めるしかない。既に中国等で実現されていることができないのは、行政の仕組みや規制に原因。新しいことをやろうにも、既存の法律や制度、或いは既得権益を持っている事業者などが邪魔して思うようにできない。283：山水郷をSociety 5.0の「はじまりの場所」にする�〇蛙絛燭録邑�規模が限られているために合意形成や社会の統制がしやすい�∋蛙絛燭浪歛蠕菴蔽楼茵船蹈椒奪箸篌�動化、遠隔医療・遠隔教育などを取り入れないと社会に必要なことが維持できない�４�得権益を持つ人がほとんどいない�たА垢丙て颪�あるとはいえ、山水の恵みと人の恵みでとにもかくにも生きていける世界が山水郷にはある（天賦のベーシックインカム）
2020年02月28日
捨てられた山水郷
欧米の軍事力・産業力に驚いた日本は、明治期になって「富国強兵」政策を進める。その元手になったのは、山水郷の天然資源であり、農産品だった。
明治期の輸出品目をみると、以下の通り。生糸が明治時代を通じて最大の輸出品だが、初期にはお茶も多かった。山水郷からの輸出が「天賦のキャピタル」として、明治時代の近代化を担ったのである。
明治期の輸出品目をみると、以下の通り。生糸が明治時代を通じて最大の輸出品だが、初期にはお茶も多かった。山水郷からの輸出が「天賦のキャピタル」として、明治時代の近代化を担ったのである。
133：明治期の国家と企業にとって「天賦のキャピタル」であった山水森林資源、水産資源、水資源、鉱物資源、化石資源として原材料やエネルギー源となり、あるいは換金されて、国家や企業の資本蓄積に貢献。148：捨てられた山水郷1960年代石油によるエネルギー革命（1962年原油輸入自由化）燃料としてだけでなく、あらゆるものの原料に→大量生産・大量消費社会日本の近代化を支えた木材、生糸、農産物、石炭等の山水郷の産物は、外国産品との競争に負け、需要が激減。149：人の移動も沈静化2016年度 東京圏在住者のうち東京圏出身者が占める割合 67%（国立社会保障・人口問題研究所）1976年度 26.2%（厚生省人口問題研究所「第1回人口移動調査」）154：拡大造林荒廃林地の復旧造林が一段落した1960年代になると、広葉樹林や雑木林をパルプ用に皆伐し、その跡地にスギ・ヒノキ・カラマツ等の針葉樹を植える「拡大造林」を国が推進。エネルギー革命で利用価値がなくなった薪炭林や農用林を、需給が逼迫していた建材用の針葉樹林に林種転換するための政策。多様性に富んでいた雑木林・広葉樹林が、林齢も樹種も単純な針葉樹林一斉林に換えられたために、山水郷の風景は一変。→国土の約3割がスギ・ヒノキを中心とする人工林169：里山の奥山化かつての里山は疎林で、頻繁に人が出入りしていたため、獣が寄り付くことはなかった。今は鬱蒼とし、人も寄り付かない。獣にとって絶好の隠れ処であり、棲息地。宅地化スプロール的に拡大し、郊外や地方都市では住宅地が奥山化した里山に隣接。かつては、宅地と里山との間には農地があって、野生と人の世界との緩衝地帯。
2020年02月27日
世界で最も豊かな狩猟採集民
日本の縄文人は「世界で最も豊かな狩猟採集民」（ジャレド・ダイアモンドUCLA教授）というのが興味深い。これまでの世界の常識は、「食うや食わずの狩猟採集時代を経て、農耕が始まって、比較的安定して食料確保が出来るようになり、貧富の差が生まれた」というものだ。
ところが、ダイアモンド教授の最新説では、「縄文時代が1万年以上も続いたのは、農耕に移行するのが遅れたからではなく、山水の恵みがあまりに豊かで、狩猟採集生活でも十分に豊かな暮らしが送れたから」と推定している。専門家による研究でも、「縄文時代は1日4時間労働で幸せに暮らせた」という説もある。
102：縄文人の心得山水郷が中世まで一等地であり続けたのは、そこが何より暮らしやすい場所であったから。�／�料・水・燃料等の、人の生存に必要な資源が豊富←森�⊃紊貿困泙気譴覆ぁＦ�本列島の大部分は、葦が生い茂る低湿地・氾濫原。それに対し、山麓部や台地の周辺部は、湧水や沢水が豊富な割に乾燥していて水害と無縁。106：日本の縄文人は「世界で最も豊かな狩猟採集民」（ジャレド・ダイアモンドUCLA教授）仮説：縄文時代が1万年以上も続いたのは、農耕に移行するのが遅れたからではなく、山水の恵みがあまりに豊かで、狩猟採集生活でも十分に豊かな暮らしが送れたから。113：3000万人を支えたポテンシャル江戸時代最初の100年間で耕地面積はほぼ2倍。通貨に等しいコメを生み出す新田開発は、均衡を掘るのと同じ。人口 1200万人（1600）→3100万人（1720) 人口学者 鬼頭宏115：3000万人の定常状態その環境で収容できる飽和点に。3000万人が生きるのに必要な食料とエネルギーと資材とを山水の恵みで自給しながら幕末まで150年間。それまで中国等から輸入していた産品の輸入代替が進み、日本独自の文化が花開く。この列島にはそれだけのポテンシャルがある。118：「平地人」と異なる世界山水の恵みを生かすための手業・知恵を持つ人が専門分化し、多様な生業が生まれる。林業、マタギ(猟師）、木地師(ろくろをつかって木製の日用品をつくる）、炭焼き、たたら師（製鉄師）などが職業として成立。125：自立経営が育んだ多様な生業と人材各藩の運営は藩主の裁量。藩は、百姓から徴収する年貢を歳入にして、藩の経営。全国に300余りで、今の都道府県より小さく、市町村よりは大きい。年貢は自主財源にできたものの、幕府に対する義務(軍役、労役、江戸勤め）が負担。新田開発は17世紀後半には開発余地がなくなる→商品作物栽培、特産品の開発、地場産業の育成。藩士の子弟教育のための無償の藩校。藩校とは別に、庶民の子弟教育のために郷学とよばれる学校を農山村に設立した藩も。＋民間人によって設立された寺子屋・手習所（幕末期には全国で15,000以上）。
2020年02月26日
この国で生き続けるために
その名も、『日本列島回復論』。当然、『日本列島改造論』(田中角栄）を意識している。著者は東大農学部を出て、林野庁に勤務。Yale大学経済学修士。現在は日本総合研究所のコンサルタントだ。
「日本列島改造論」は、「国土を大改造することで、均衡ある発展が可能になると信じた田中角栄の構想の壮大さとその背景にある郷土や地方への思い」に「今読んでも心を動かされる」（はじめに）というが、「山を削り海を埋め立て道路をつくる列島改造の論理では、地方の現実を変えることができなかった。むしろ道路をつくるほど人が出ていくという皮肉」に終わる。
どこがいけなかったと言えば、明治以来の「欧米に追い付け追い越せ」も、昭和の列島改造も、自己でない何者かになることを目指す「改造の論理」であって、改造の論理の根底にあるのは自己否定である。
「不都合なもの、不便なものはなきものにしようとする。そういう自己否定の上にこの国の未来はない。否定ではなく、改造でもなく、この列島の存在をまるごと引き受けて生きる。置き去りにしてきた存在も含め、ともに生きようとする努力の先に、この国ならではの未来が開けてゆくはず」
「不都合なもの、不便なものはなきものにしようとする。そういう自己否定の上にこの国の未来はない。否定ではなく、改造でもなく、この列島の存在をまるごと引き受けて生きる。置き去りにしてきた存在も含め、ともに生きようとする努力の先に、この国ならではの未来が開けてゆくはず」
この発想が、「回復」で、障碍者ケアにおける回復の考え方を参考にしたという。障碍者ケアの世界では、かつては、できるだけ健常者に近づくことが回復の目標だった。しかし、病気と違って治らないのが障害だから、健常者を目指すことには限界がある。そこで近年は、障害を所与とし、他者との関係を再構築しながら、自立して生きられるようになることに回復の目標を置くようになってきているらしい。このアプローチでは、障害はハンディではなくアイデンティティであり、「新しい人生の物語を編み上げてゆく過程こそが回復」だという。
経営におけるリーダーシップ論でも、自分以外の何者かになることは勧められない。それには、しょせん無理があるからだ。自分の個性、特性を活かした、自分らしいリーダーシップを発揮するしかない。ただし、効果的なリーダーシップを発揮するためのスキルは学べる。
しばらく忘れられてきた「国土の7割を占め、縄文時代から人が住み続けてきた山水郷」に焦点を当てて、「日本列島の『回復』を図る」というアプローチは正しいと思う。
60：ユニクロ世界同一賃金導入「将来は年収1億円か100万円に分かれて、中間層が減っていく」（柳井正）グローバルな資本主義社会においては、格差の拡大は不可避。101：山水郷海に囲まれ、7割が山に覆われている日本列島は、都市部や平地農村を除けば、ほとんどの地域が山水郷。離島や半島の大部分、中山間地域と漁村、全て山水郷。中山間地域に位置付けられるのは国土の65%、そこに住むのは1474万人（総人口の11.5% 2010年農林水産省推計）漁村の人口が234万人（2010年水産省調べ）中山間地域＋漁村＝1700万人(13%)かつての日本では、大半の人が山水郷を暮らしの場とし、仕事の場としていた。生活・生産の中心があった山水郷は、少なくとも中世までは一等地。この状態に変化が訪れる契機となったのが明治の近代化で、本格的な転機となったのが戦後の高度経済成長。高度経済成長期以降、都市を目指す人の流れが加速し、山水郷は急速に衰退。山水郷がマイナーな存在になったのは、たかだがここ6，70年、明治の近代化から数えてもせいぜい150年間。それまでの圧倒的な期間、山水郷はこの列島に暮らす人々にとって、なくてはならない存在。その事実を現代の日本人はほとんど意識していない。国土の7割を占め、縄文時代から人が住み続けてきた山水郷は、日本という国を語る上で欠かせない存在。国土を国の身体ととらえれば、日本という国の身体は大半が山水郷でできている。そして、この国の歴史もまた、山水郷とともにある。
2020年02月25日
宇宙創生の円環
第二部は「宇宙創生の円環」。考えてみれば、「処女出産」とは不思議な話。これによって、神話は何を言おうとしているのか
�⊇莉�出産158：母なる宇宙世界を生み出す父である精霊は、世界の母を介して変形し、地上でさまざまな形で経験される。世界の母とは、『創世記』第一章二節で言及されている要素の擬人化であり、そこには「神の霊が水の面を動いていた」と書かれている。ヒンドゥー教の神話では、世界の母は女性の姿をしていて、その姿を通して「自己」は万物を創ったとされる。より象徴的に言うと、世界の境界を示す「空間、時間、それから因果性」の枠、つまり宇宙という卵の殻だ。さらに抽象的にとらえるなら、「自己孵化する絶対者」を誘惑して創造という行為に向かわせる者と言える。179：処女母の民話ブッダはミルクのように白い象の姿で天から母の子宮に下った。アステカのコアトリクエ、「ヘビのスカートをはく地母神」は、羽の塊の姿になった神に言い寄られた。オウィディウスの『変身物語』にはいろいろな仮面をかぶった神に悩まされるニンフが数多く出て来る。牡牛、白鳥、黄金になったユピテルである。間違って葉や木の実を飲み込んだり、そよ風を一息吸ったりということでも準備の整った子宮は十分受胎できる。子を産む力というのはどこにでも存在する。そして気まぐれ、あるいは時の運命によって、英雄的救世主か世界を破滅させる悪魔のどちらかを身ごもる。それは誰にもわからない。エピローグ：神話と社会282：季節の祝祭さまざまな儀礼によって、人々は季節ごとの仕事に専念できるようになる。一年という驚きに満ちた円環の間には、困難や喜びの人々のもとを訪れる。この円環は、人間という集団の生の円環につながるものとして祝われ、描き出され、表現される。
2020年02月24日
科学と宗教というおかしな夫婦
第5章は、「科学と宗教というおかしな夫婦」。科学と宗教というと、普通、正反対の印象だ。科学は実験によって真実を明らかにする活動で、一方、宗教ではその教義に疑問を呈することはないように思う。
しかし、ハラリは、「近代と現代の歴史は、科学とある特定の宗教、すなわち人間至上主義との間の取り決めを形にするプロセス」だという。「現代社会は人間至上主義の教義を信じており、その教義に疑問を呈するためにではなく、それを実行に移すために科学を利用する」。
それは、「科学と宗教は集団的な組織としては、真理よりも秩序と力を優先する」からだ。「21世紀には人間至上主義の教義が純粋な科学理論に取って代わられることはなさそうだ」と予測するが、一方で、「科学と何らかのポスト人間至上主義の宗教との取り決め」に移行する可能性を指摘する。
環境破壊は、人間至上主義の表れだろう。
220：物語は人間社会の柱石の役割を果たす。歴史が展開するにつれ、神や国家や企業にまつわる物語はあまりに強力になったため、ついには客観的現実まで支配し始めた。人びとは偉大な神セベクや天命や聖書を信じたおかげで、ファイユームの湖や万里の長城やシャルトルの大聖堂を造ることができた。だが不幸にも、こうした物語をむやみに信じたせいで、人間の努力はしばしば、現実の生きとし生けるものの暮らしを向上させるのではなく、神や国家といった虚構の存在の栄光を増やすために向けられることになった。227：宗教とは社会秩序を維持して大規模な協力体制を組織するための手段である231：科学は人間のための実用的な制度を創出するには、いつも宗教の助けを必要とする。科学者は世界がどう機能するかを研究するが、人間がどう行動すべきかを決めるための科学的手法はない。243：宗教は何をおいても秩序に関心がある。宗教は社会構造を創り出して維持することを目指す。科学は何をおいても力に関心がある。科学は、病気を治したり、戦争をしたり、食物を生産したりする力を、研究を通して獲得することを目指す。科学者と聖職者は、個人としては真理をおおいに重視するかもしれないが、科学と宗教は集団的な組織としては、真理よりも秩序と力を優先する。したがって、両者は相性が良い。真理の断固とした探求は霊的な旅で、宗教や科学の主流の中にはめったに収まりきらない。244：近代と現代の歴史は、科学とある特定の宗教、すなわち人間至上主義との間の取り決めを形にするプロセス現代社会は人間至上主義の教義を信じており、その教義に疑問を呈するためにではなく、それを実行に移すために科学を利用する。科学と人間至上主義を結びつける契約が崩れ去り、まったく異なる種類の取り決め、すなわち、科学と何らかのポスト人間至上主義の宗教との取り決めに場所を譲る可能性。
2020年02月23日
物語の語り手
第4章「物語の語り手」。
約5000年前に書字が発明されるまでは、物語は口伝された。人間の記憶力には限界があるから、神話はたいてい短い。正に、『千の顔を持つ英雄』の世界。
書字が発明されて、初めて、複雑な物語を創作することができるようになる。と同時に、貨幣も発明された。貨幣によって物の価値は数字に置き換えられ、そして、文字で記録され、計算ができるようになった。
「両者のおかげで、何十万人もの人から税を徴収したり、複雑な官僚制を組織したり、巨大な王国を打ち立てたりすることが可能になった」
193：オオカミやチンパンジーのような動物は、二重の現実の中で暮らしている。一方で、彼らは木や岩や川といった、自分の外の客観的なものをよく知っている。他方で、恐れや喜び欲求といった、自分の中の主観的な経験も自覚している。それに対して、サピエンスは三重の現実の中で生きている。木や川、恐れや欲求に加えて、サピエンスの世界にはお金や神々、国家、企業についての物語も含まれている。194：12,000年前に始まった農業革命共同主観的ネットワークを拡大・強化するのに必要な物質的基盤を提供。農耕のおかげで、込み合った都市の何千という人や、訓練された軍隊の何千という兵士を養うことが可能になった。196：シュメール人この障害がついに取り除かれたのは、シュメール人が書字と貨幣の両方を発明した、およそ5000年前だった。同じ親から同じ時に同じ場所で生まれた、書字と貨幣というこの結合体双生児は、人間の脳によるデータ処理の限界を打ち破った。両者のおかげで、何十万人もの人から税を徴収したり、複雑な官僚制を組織したり、巨大な王国を打ち立てたりすることが可能になった。198：書字が発明される前、物語は人間の脳の限られた容量の制約を受けていた。人々が覚え切れないような、あまりにも複雑な物語を創作することはできなかった。だが、書字の発明によって突然、極端に長く、入り組んだ物語を生み出すことが可能になった。
2020年02月22日
古代の雄大な神話が今なお社会に息づいているのは日本だけ⁉
「古代の雄大な神話が今なお社会に息づいているのは日本だけ」だと著者はいう。本書が出版されたのは1949年のことで、調査のほとんどは戦前だったはずだ。大日本帝国憲法では、主権は天皇にあり、（近代国家では）その通りだろう。国家元首が「神の子」であるとしているわけだ。
果たして、今でも「神話が息づいている」と言えるのか？初詣の習慣が衰えず、パワースポットがブームになったりと、先進国では意外と健闘しているほうではないか。一般参賀者数の推移をみても、近年増える傾向にある。外国人の友人に聞くと、テクノロジーと伝統が混在しているところが面白いという。
�５�還39：古代の雄大な神話が今なお社会に息づいているのは日本だけなにしろ、天皇はアマテラスの直系の子孫であり、かつ、皇室の祖先であるアマテラスは、日本の伝統的な神道の神々の中で、最高神の一柱として崇められているからだ。アマテラスの冒険には、今日広く知られている男性太陽神の神話に出て来る冒険とは、一味違う世界の捉え方が感じられるだろう。それは、太陽の光というすばらしい贈り物へのある種の愛情であり、目で見えるようになったものに対する温かい感謝の念である。こうしたとらえかたは、かつては多くの民族の宗教観に見られたに違いない。64：キリストの変容イエスは、帰還の案内人であり、道であり、天啓であり、道づれである。弟子たちは、イエスの教えを受けた者であり、自分たちは秘義の導師ではないとしても、一つの世界に二つの世界が存在する矛盾の一部始終を体験するよう、手引きされた者たちである。ペトロは、怯えるあまり口を滑らせた。自分たちの目の前で肉体が消滅し、天の声が聞こえたこと。自分たちがひれ伏し、身を起こしたときには、扉は再び閉じられていたことを。�じ�95：洗礼式は教会へのイニシエーションイエス:はっきり言っておく。人は、新たに生まれなければ、神の国を見ることはできない。ニコデモ：年をとった者が、どうして生まれることができましょう。もう一度母親の胎内に入って生まれることができるでしょうか。イエス：はっきり言っておく。誰でも水と霊とによって生まれなければ、神の国に入ることはできない。
2020年02月21日
なぜ、人間は地球を完全に支配できたか？
第三章「人間の輝き」。人間の身体能力は他の動物に比べて高いわけではない。
伝統的な一神教では、人間だけが不滅の魂を持っており、だから、ほかの動物を支配してもいいのだとした。
「ところが、最新の科学的発見はみな、この一神教の神話をきっぱりと否定している」
これまでに行われたすべての研究が、動物だけではなく、人間にも「魂」を発見できてない。
それでは、なぜ人間は地球を完全に支配できたか？それは、人間だけが「共同主観」を持っており、「大勢で柔軟に協力できる地球上で唯一の種」だからだという。なるほど、アリやミツバチは共同作業で巣を作ることはできるが、新たな社会制度を作ったり、株式会社を作ることはない。
伝統的な一神教では、人間だけが不滅の魂を持っており、だから、ほかの動物を支配してもいいのだとした。
「ところが、最新の科学的発見はみな、この一神教の神話をきっぱりと否定している」
これまでに行われたすべての研究が、動物だけではなく、人間にも「魂」を発見できてない。
それでは、なぜ人間は地球を完全に支配できたか？それは、人間だけが「共同主観」を持っており、「大勢で柔軟に協力できる地球上で唯一の種」だからだという。なるほど、アリやミツバチは共同作業で巣を作ることはできるが、新たな社会制度を作ったり、株式会社を作ることはない。
128：人間がこの世界でいちばん強力な種ホモ・サピエンスは、自分がひときわ高い道徳的地位を享受し、人間の命はブタやゾウやオオカミの命よりもはるかに価値があるとも考えたがる。129：伝統的な一神教サピエンスだけが不滅の魂を持っていると答える。肉体は衰え、やがて朽ちるが、魂は救済あるいは永遠の断罪に向かって旅を続け、楽園で永久に続く喜びを経験するか、あるいは地獄で未来永劫、悲惨な状態にとどまる。ブタやその他の動物は魂を持たないので、この壮大なドラマには参加しない。ところが、最新の科学的発見はみな、この一神教の神話をきっぱりと否定している。（中略）人間には現に魂があるという部分も切り崩されている。165：ホモ・サピエンスが大勢で柔軟に協力できる地球上で唯一の種今日、人間は地球を完全に支配しているが、それは個々の人間が個々のチンパンジーやオオカミよりもはるかに利口だったり手先が器用だったりするからではない。188：共同主観他の動物たちが人間に対抗できないのは、彼らには魂も心もないからではなく、必要な想像力が欠けているからだ。ライオンは走ったり、飛び跳ねたり、鉤爪で引っ掻いたり、噛みついたりできる。だが、銀行口座を開いたり、訴訟を起こしたりはできない。
2020年02月20日
人類の「ワンマン・ショー」
第二章は「人新世」で、人とそれ以外の動植物の関係。「他の動物たちにしてみれば、人間はすでにとうの昔に神になっている」という。
その変化をもたらした第一段階は、農業革命。それまでの長い狩猟採集時代は、世界中どこもアニミズムで、自然の猛威を恐れ、自然の恵みに感謝し、したがって自然を崇拝して大事にしていた。自然を支配した第一歩が農業革命で、人類は食物を自分で栽培できるようになった。そして、家畜を飼い始める。
家畜は人間にとっての奴隷と同じで、飼い主のために労役を提供し、食物を提供する。それまで野生動物は敬われていたが、敬われているものを自由に使い、殺すわけにはいかない。動物の残酷な利用を正当化する宗教革命が起こる。「人間と神の対話」を中心とする一神教の誕生だ。
今日、世界の大型動物（体重数kg以上）の9割以上が、人間か家畜だという（下図）。野生動物は1割以下になっており、この世界は今や、人類の「ワンマン・ショー」だ。
93：他の動物たちにしてみれば、人間はすでにとうの昔に神になっているグリム兄弟や赤ずきんや大きくて悪いオオカミ縁の地であるドイツには、今日、何頭のオオカミが住んでいるのか？100頭に満たない。それに対して、ドイツには500万頭の飼い犬がいる。合計するとおよそ20万頭のオオカミが依然として地球上を歩き回っているが、飼い馴らされた犬の数は4億頭を上回る。世界には4万頭のライオンがいるのに対して、飼い猫は6億頭を数える。122：農業革命は経済革命であると同時に宗教革命でもあった。新しい種類の経済的関係が、動物の残酷な利用を正当化する新しい種類の宗教的信念とともに出現した。123：500年の孤独近代の科学と産業の台頭が、人間と動物の関係に次の革命をもたらした。農業革命の間に、人間は動植物を黙らせ、アニミズムの壮大なオペラを人間と神の対話劇に変えた。そして科学革命の間に、人類は神々まで黙らせた。この世界は今や、ワンマン・ショーになった。
2020年02月19日
テクノロジーとサピエンスの未来
ベストセラーになった『サピエンス全史』の著者による、「人類の未来」。
「人類は自らにとって最悪の敵であり続けた、飢饉と疫病、戦争を克服しつつある。この三つの問題を克服した我々は、今後不死と幸福、神性の獲得を目標とするだろう。人類は自らをアップグレードし、ホモ・サピエンスをホモ・デウス（神）に変えるのだ。生物工学や情報工学などのテクノロジーを用いて、世界を、そして自分自身をも、思い通りに作り替え、創造することを目指すのである」
第一章は、「人類が新たに取り組むべきこと」。
「エピクロスはおよそ2300年前、快楽を過度に追求すればおそらく幸せではなく惨めになるだろう、と弟子たちに警告した。その2世紀ほど前、ブッダはそれに輪をかけて過激な主張をし、快感の追求はじつは苦しみのもとにほからなない、と説いた」
戦後の経済繁栄の中で、あらゆる調査は、一定以上の経済発展と人間の「幸せ」には相関関係がないことを示している。アメリカは1950年代から10倍は豊かになったが、幸福度は変わっていない。
「韓国は1985年には比較的貧しい国で、厳格な伝統に縛られ、独裁的な政権に支配されていた。ところが現在では、経済大国の一つに数えられ、国民の教育水準の高さは世界でも指折りで、安定した、割に自由主義的な民主政権を持っている。とはいえ、1985年に10万人に約9人の韓国人が自殺したのに対して、今日では年間の自殺者数は10万人当たり36人にのぼる」
9：20世紀の中国でも、中世のインドでも、古代のエジプトでも、人々は同じ三つの問題で頭がいっぱいだった。すなわち、飢饉と疫病と戦争で、これらがつねに、取り組むべきことのリストの上位を占めていた。人間は幾世代ともなく、ありとあらゆる神や天使や聖人に祈り、無数の道具や組織や社会制度を考案してきた。それにもかかわらず、飢饉や感染症や暴力のせいで厖大な数の人が命を落とし続けた。10：今日、食べ物が足りなくて死ぬ人の数を、食べ過ぎで死ぬ人の数が初めて上回っている。感染症の死者数よりも、漏水による死者数のほうが多い。兵士やテロリストや犯罪者に殺害される人を全部合わせても、自ら命を絶つ人がそれを数で凌ぐ。18：スペインの艦隊が到着した1520年3月にはメキシコには2200万人が暮らしていたのに、同年12月にまだ生きていたのは、わずか1400万人だった。だが、この天然痘も最初の一撃にすぎなかった。スペインから来た支配者たちがせっせと蓄財し、先住民たちを搾取している間に、インフルエンザや麻疹（はしか）その他の感染症の致命的な波が相前後してメキシコを襲い、1580年には人口はとうとう200万人を切った。21：過去数十年間で最悪の医療上の失態に思えるエイズの悲劇ですら、医学の進歩の表れと見ることができる。1980年代初期に初めて大規模な発生が起こって以来、3000万人以上の人がエイズで亡くなり、それ以外にも何千万人もの人が身体的にも精神的にも深刻な痛手を受けてきた。25：戦争はかつてないほど稀になった。古代の農耕社会では死因のおよそ15%が人間の暴力だったのに対して、20世紀には、暴力は死因の5%を占めるだけだった。そして21世紀初頭の今、全世界の死亡率のうち、暴力に起因する割合はおよそ1%にすぎない。26：核兵器のおかげで、超大国の間の戦争は集団自殺という狂気の行為になり、したがって、この地上で屈指の強国はみな、争いを解決するために、他の平和的な方法を見つけることを強いられた。同時に、世界経済は物を基盤とする経済から知識を基盤とする経済へと変容した。45：アメリカの独立宣言が保証しているのは、幸福追求の権利であって、幸福になる権利そのものではない。ここが肝心なのだが、トマス・ジェファーソンは国民の幸福を国家の責任にはしなかった。むしろ彼は、国家の権力を制限しようとしていたにすぎない。47：伝統的な社会と比べて先進諸国のほうが繁栄していて、快適で、安全であるにもかかわらず、自殺率がずっと高いというのは不穏な兆候だ。ペルーやハイチ、フィリピン、アルバニアでは、毎年自殺する人は10万人当たり5人程度だ。一方、スイスやフランス、日本、NZのような豊かで平和な国では、毎年10万人当たり10人以上が自ら命を絶っている。55：イラクではアメリカの兵士の12%が、アフガニスタンでは17%が、戦争のプレッシャーと苦悩に対処しやすくするために睡眠薬か抗うつ薬を服用した。恐れ、うつ、トラウマは、砲弾や仕掛け爆弾や自動車爆弾の類が原因ではない。ホルモンや神経伝達物質や神経ネットワークが引き起こすのだ。
57：エピクロスはおよそ2300年前、快楽を過度に追求すればおそらく幸せではなく惨めになるだろう、と弟子たちに警告した。その2世紀ほど前、ブッダはそれに輪をかけて過激な主張をし、快感の追求はじつは苦しみのもとにほからなない、と説いた。快感は儚く無意味な気の迷いに過ぎない。私たちは快感を経験した時にさえ、満足したりせず、さらにそれを渇望するだけだ。59：人間を神へとアップグレードするときに取りうる道は、次の三つのいずれかとなるだろう。生物工学、サイボーグ工学、非有機的な生き物を生み出す工学だ。64：人間を神にアップグレードすることについて語るときには、聖書に出て来る全能の天の父ではなく、古代ギリシアの神々やヒンドゥー教の神々のようなものを考えたほうがいい。ゼウスやインドラと丁度同じで、私たちの子孫には、依然として短所や風変わりな点や限界があるだろう。だが彼らは、私たちよりもずっと壮大なスケールで愛したり、憎んだり、創造したり、破壊したりでいるだろう。
2020年02月18日
クイ・ボノ？
Qui bono?とは、ラテン語で、「誰が得をするの？」という意味らしい。つまり、その現象が起こっている「動機は何か考えろ」ということで、どんな投資家にとっても根幹をなす大事な認識だという。仕事としての投資の現場を既に離れたソープは、今度は、その認識を世の中を変えることに使っている。
今回のアメリカ大統領選を見ていても思うのは、選挙活動に他国とはけた違いの巨額資金が必要なこと。左派で社会主義的政策をかかげる候補者でも何十億円という資金を集めており、最終的には数百億円になりそうだ。4年前の大統領選では、トランプ大統領は、「自分は大金持ちだから寄付に頼らなくていい。だから、寄付者に左右されない」と言って当選した。
このアメリカの複雑怪奇な大統領選選挙制度。国内でも、変えるべきだという声は多いと聞いているが、結局はそのままになっている。クイ・ボノ？と考えれば、選挙制度改革で二大政党政治が終わる懸念を持つ共和党と民主党が、この点では協調しているのかもしれない。
186：寄付で母校のレベルを上げる2003年UCIに寄付をして数学の講座をつくってもらう。大学には寄付講座があったけれど数学科には一つもなかった。私たちはバークシャー・ハサウェイのClass A株を寄付した。193：債権の帝王ビル・グロスデューク大学の4年生は億万長者になり、世界にその名を知られる人になった。William H. Gross, Gross, 人呼んで債権の帝王ビル・グロスだ。グロスと奥さんのスーはすでに医療にかかわる慈善活動に何千万ドルも寄付をしてITだからUCIのあるグループがグロスと昼ごはんのアポを取りつけ、彼とスーが1000万ドルを寄付してくれて、CIRMも助成する新しい幹細胞研究センターの後援者として先頭に立ってくれないか、私が話をすることになった。223：ほとんどの人には確率がわからない今日、公共政策の大きな問題の一つは、特定の治療の費用と便益のトレードオフである。厳しい選択になることもある。薬物抵抗性が非常に強い結核に罹った誰か一人の命を救うために50万ドル使うか、それとも同じ額で一人分10ドルのインフルエンザ・ワクチンを5万本買って、学校に通う子ども50人の命を救うか。そういう選択をするとき、統計学が助けになる。227：クイ・ボノ？「動機は何か考えろ」（『あわれなチャーリーの年間 チャールズ・T・マンガーの頓智と叡智』）私が政治にコネを持つお金持ちと呼ぶ人たちがアメリカの経済と政治を一手に握っているという認識。私たちの社会に何が起きているか、なぜ起きているかを理解するためにはこの認識が必要。彼らは選挙活動に献金したり仕事をあっせんしたり投資で儲けさせたりなんてやり方で政治家を買う。富める者である彼らは権力者を使い、国を動かしている。今後もそうだろう。2008年から2009年、金融危機で政府が彼らを救ったとき、私はそれを目の当たりにした。229：法律を簡略化して、公務員を減らせないか？CAを含め、独自の所得税の体系を持つ州は多い。体系は連邦レベルの所得税法に似ているけれど、中身は大きく違っていて、州に住む人が税還付を求めようと思ったら国税の時と同じぐらい細かくてややこしい書類を完璧に作成して提出しないといけない。これは変えた方がいい。つまり、個人に課される収税を単純化して国税の一定割合にするのだ。
230：教育が過小評価されている
アメリカでは政党同士の対立が行き着くところまで行き着いていて、かつては可能を可能にする技術だった政治が、可能を不可能にする技術になってしまった。決して折れない派閥同士の争いが手詰まりに行き着いたことは、ローマ帝国の凋落をもたらしたものの一つである。
2020年02月17日
情報の「食物連鎖」
「市場に勝つために必要な4つの条件」はとてもためになる。
ウォーレン・バフェットの名言に、「ポーカーを始めて20分経っても、まだ誰がカモか分からない人は、自分がカモなのだ」というのがある。情報の「食物連鎖」もこれに近い。
155：クローズドエンド・ファンドPOGが40%ディスカウントの一口6ドルで取引されていてNAVは10ドルだったとして、受益権を十分たくさん買い占め、ファンドをオープンエンド・ファンドに転換する動議を出し、それを可決させることができれば、投資家は純資産価値で資金を解約できる。この場合、一口6ドルで買って10ドルで解約するわけだから利益は4ドル、6ドルに対して67%だ。クローズドエンド・ファンドが大幅なディスカウントで取引されているときはPNPにとってチャンスだった。頭の固いファンドの運用会社からは強烈な抵抗にあったけれど、私たちはこの取引を成功させて儲けることができた。164：実際の市場の4つの特徴�‐霾鵑涼罎砲蓮△燭泙燭淦気靴せ�に正しい場所にいた一握りの人たちにまず伝わるものがある。ほとんどの情報は、まず限られた数の人たちの耳に入るところから始まり、それから段階を踏んで幅広くたくさんの人たちに拡散する。�△�金のことになると、私たちはそれぞれみんな、限られた形でしか合理的でない。��市場参加者は典型的に、証券の適正価格にかかわる情報の一部しか持ってはいない。情報を処理するのにかかる時間も、情報を分析する能力も、そのときどきの状況で一般的に大きく異なる。�ぞ霾鶲譴弔紡个垢詒娠�として現れる売買注文は、時には数秒のうちに洪水のように押し寄せ、そういう場合には価格は新しい水準へジャンプする。価格の推移にはギャップなどが生じる。しかし、だいたいの場合、ニュースに対する反応は数分、数時間、数日、あるいは数か月にわたって徐々に進む。165：市場に勝つために必要な4つの条件�［匹ぞ霾鵑�早く手に入る。手に入った情報が十分によい、あるいは十分に早いことは、どうすればわかる？間違いないと思えないなら、おそらくいずれでもない。�⊆�制心を持った合理的な投資家である。論理と分析に基づいて動き、売り文句や思いつき、情緒に動かされない。自分にエッジがあるかもしれないと思っていいのは、筋の通った理由があって、自分で考えた反証に耐えられた場合だけだと仮定する。自分にはエッジがある、大きな自信をもってそう言えないかぎり、賭けに出てはいけない。�Ｍイ譴進�析の方法を見つける。この本に書いてきたように、私に実績をもたらした方法には、統計的裁定取引、転換社債のヘッジ戦略、ブラック=ショールズの公式、そしてブラックジャックでのカード・カウンティングがある。勝てる戦略には、ほかにも、才に恵まれた一握りの人ならできる優れた証券分析や、優れたヘッジファンドの手法などがある。�ぞ攘瑤硫然覆�歪んでいることがわかっていて、人々がそれを利用しているなら、彼らの取引で歪みは消える傾向にある。ということは、いちばん早く取引を始めた人がいちばん儲け、その後に続く取引で価格の歪みは減ったり消えたりする。167：情報の「食物連鎖」市場に勝つには自分がよくわかっている範囲内、自分の能力で評価できる範囲で投資に集中するべき。「自分の土俵」自分の持つ情報が最新で正確で、大事なところでは完全でないといけない。情報は「食物連鎖」をたどって流れ落ちていく。情報を最初に手に入れた人たちが「食べる側」、あとから手に入れる人たちは「食べられる側」。
2020年02月16日
菩薩の両性具有
「男らしい観世音菩薩と女らしい観音という、菩薩の両性具有」
男でもあり女でもある神は、神話の世界では珍しくないという。「それは、物質的な経験を超えて、二元性が残る象徴的な世界へと心を誘うからである」と説明されている。
・ズニ族（Native American）の村で崇められる主神アウォナウィロナは、万物を創り万物を包み込む神で、男女両性
・中国年代記に登場する万物の源、太元玉女は、その姿に男らしい陽と女らしい陰を併せ持つ
・イヴという女性の面が切り離されて別の形になる前の創造されたときのアダムは両性具有
・ギリシア神話の愛の神エロス（プラトンによれば、最初に登場した神）も、女であり男
�―侘�91：冒険への召命運命が英雄を召喚し、精神の重心を自分が居る社会の周辺から未知の領域へと移動させることを意味する。宝と危険の両方がある運命の領域は、さまざまな形で表現される。遠隔の地、森、地下王国、波の下や空の上、秘密の島、そびえたつ山の頂上、そして深い夢の中などだがそれは常に、妙に流動的で多様な形になるもの、想像を超える苦難、超人的な行為、あり得ない喜びがある場所である。英雄は自らの意思で出立し、冒険を成し遂げることができる。�▲ぅ縫轡─璽轡腑�146：試練の道境界を越えた英雄は、妙に流動的で曖昧な輪郭の夢の風景に入っていく。そこでは、次から次へと襲ってくる試練を乗り越えていかなければらならない。これは神話の冒険では人気の場面である。そこから、試されたり試練を与えられたりする奇跡を題材にした世界文学が生まれた。英雄は、この世界に来る前に出会った、自然を超越した者から助言や魔除け、使いの精を与えられ、それによって知らないうちに助けられていく。この世界に来て初めて、恵み深い力が、超人的な経験をする自分をいたるところで支えてくれることに気づく、といってももいいだろう。166：女神との遭遇悪しき母は、貞節で怖い女神ディアナ（アルテミス）のような、手の届かない偉大な女神像の根底にある。ディアナは若い狩人アクタイオンを完全なる破滅に追いやったのだが、この話は、抑えつけられた心や肉体の欲望の象徴に、どんな強い恐怖の一撃が潜んでいるかを表している。206：ユダヤ教やイスラム教の儀式の中に、割礼の儀式が今日まで残っている、というのは興味深いが、どちらも厳格な一神教である公式の神話から、女性に関する要素はご丁寧にも一掃されている。「他の神々と結び付ける罪をアッラーは許さない」とコーランにある。「異教徒たちは、アッラーを忘れて、なんと女の神を拝んでいる」228：男らしい観世音菩薩と女らしい観音という、菩薩の両性具有男でもあり女でもある神は、神話の世界では珍しくない。いつもどこか神秘性を伴って登場する。それは、物質的な経験を超えて、二元性が残る象徴的な世界へと心を誘うからである。255：イニシエーションを受ける資格のある者は、神を見ることが許される神は自分の姿を真似て人間を創るときに人間を男と女に分けた。男の右手には男の片割れである稲妻が握られ、左手には女神を象徴する鈴を持つ。稲妻は方法と永遠であり、鈴は「光に照らされた心」である。
2020年02月15日
心を揺さぶる物語の基本構造
「世界最古の英雄譚といわれるギルガメッシュの冒険からオデュッセウスの苦難の旅、ブッダの修行、イザナギとイザナミの物語まで、古今東西の神話や民話に登場する『英雄』たちの冒険を比較すると、心を揺さぶる物語の基本構造が見えてくる」
神話学者キャンベルによる古典的名著の新訳版が出たので、読んでみる。原著は1949年に出版され、世界中のクリエーターに多大な影響を与えてきた。ジョージ・ルーカスは大学でキャンベルの授業を受けて大いに感動し、それをそのまま適用して「スター・ウォーズ」の脚本を書いたと言われている。そういわれてみれば、東西古今の神話も「スター・ウォーズ」も、物語の基本構造は同じなのだ。
それは、簡略に言えば、「出立→イニシエーション→帰還」というパターン。「スター・ウォーズ」でいえば、�．襦璽�が自らの出自を知り故郷の星を出る→�◆屮侫�ース」を学ぶ→��ジェダイの騎士として反乱軍とともに戦い、帝国軍に勝利する、という構造になる。
単純だが、人類が何千年も引きつけられてきた「形は変わっても驚くほど中身は変わらない同一のストーリー」なのだ。
14：序文最初に学ばなければならないのは象徴が何を表すかということに関した決まり事で、この謎を解く鍵としては、精神分析ほど最新の方法はないと思う。これが最適ではないとしても、ひとつの手法として使ってもいいだろう。そして次は、神話や民話を世界中からたくさん集め、象徴に自らを語らせることである。そうすればすぐに類似点が明らかになり、そこから、人が地上で何千年も暮らす中で土台となった基本的な真実が、広大で驚くほど一貫した内容であることがわかってくる。17：神話と夢私たちの前にあるのは常に、形は変わっても驚くほど中身は変わらない同一のストーリーであり、これから知られたり語られたりすること以外にも経験されるべきものがあることが執拗に暗示されている。18：神話は、宇宙の尽きることないエネルギーが人間の文化的な現象に流れ込むときの、秘密の通路と言っても言い過ぎではない。宗教、哲学、芸術、原始時代や歴史時代の人間の社会形態、自然科学や科学技術における主な発見、眠りを苦しめる夢そのもの、それらが神話と言う根底にある魔法の輪から湧き上がるのである。25：未開の民族や過去の大文明にあったとされる変わった儀礼の数々儀礼の目的と実際の効果は、意識下の生き方のパターンだけでなく無意識下の生き方のパターンに変化を求める、変容と言う超えにくい敷居を人々にまたがせることだとわかる。いわゆる通過儀礼は、未開社会の生活においてはそのような重要な位置を占め、形式に則ったきわめて厳しい分離の行為をなすのが特徴である。これによって、通り過ぎた段階の心構えや執着や生活パターンから、心は根本的に切り離される。
2020年02月14日
資本家のウッドストック
類い希な数学的才能の持ち主で、クオンツ投資の創始者であるソープだが、バリュー投資の権化バークシャー・ハサウェイの古くからの投資家でもある。1983年から投資を始め、その後も買い貯め続けたという。当時の株価$1000弱は、1969年にバフェットがそれまでのバフェット・パートナーシップを清算した直後の株価42ドルから既に14年で23倍になっていた。
現在の株価は33万ドルで、なんと一株3500万円相当。1983年当時一株10万円ぐらいでいくら買ったのか不明だが、仮に100株1000万円としても、35億円ということになる。
17：ミルケンのやったこと実業界の満たされないニーズと切実な需要を満たしたミルケンのグループは、ウォール街最大の資金調達マシンになった。そんな発明にアメリカ株式会社の守旧派支配層は怒り狂った。ドレクセルが一見際限なく生み出す現金に支えられた起業家の大群が敵対的買収の大波を起こしたとき、守旧派は最初、ヘッドライトに照らされた鹿みたいに立ちすくんだ。古い会社の多くは格好の標的だった。経営陣は株主から預かった資本でろくな投資をしていなかった。資本がもらたす収益は月並み未満だったから株価は安かった。買収する側はリストラを断行して収益率を引き上げ、そんな企業の価値を大幅に高めることができた。43：ベストな相手を数学で選ぶ「秘書問題」「結婚問題」何人かの人を面接してそのうち１人を選ぶとする。また、一度に考えるのは1人だけで、一度退けた人のことは二度と考えないとする。最適な戦略は、まず候補のだいたい37%までは受け流して、そののちに現れた中でその最初の37%よりもいい人が出てきたらその人を選ぶ、というものになる。誰もその条件を満たさなければどん詰まりで、リストの最後の人を選ぶことになる。88：資本家のウッドストック株主総会は日曜日の朝で、私たちはその前の木曜日に現地に飛んだ。日曜日か月曜日にばらばらに帰る計画だった。30年前には小規模だった株主総会は、「バークシャー・ハサウェイで億万長者」組も登場する、何日にも及ぶお祭りになり、非公式に「資本化のウッドストック」と呼ばれるようになっていた。91：バークシャーの3つの柱バークシャー・ハサウェイは単純にいい銘柄を探し出して買っていた1960年代から大きく３つの部分からなるコングロマリットに変貌していた。１つめはコカ・コーラ、ジレット、ワシントン・ポストといった会社の普通株のポートフォリオだ。２つめはウェスコ・フィナンシャル、ワールド・ブック・エンサイクロペディア、クレイトン・ホームズといった100%子会社や被支配会社である。2003年の年次報告書にはそうした会社が63社掲載されている。従業員は合わせて17万2000人で、バフェットとマンガーは彼らを社員16人に「膨れ上がった」社屋から指揮している。３つめにしてたぶんいちばん大事なのが保険部門で、ガイコと再保険会社のジェネラル・リがその大部分を占める。
2020年02月13日
クオンツ革命
マイロン・ショールズは、オプション価格を割り出す「ブラック＝ショールズ」モデルでノーベル経済学賞を受賞した（共同研究者のフィッシャ・ブラックは1995年死去したため受賞対象にならず）。
その方程式が学会で発表されたのは1973年だったが、それ以前から同じモデルを実践で使っていたのがソープ。1969年に運用が始まった彼のファンドPNPで使っていたのだが、顧客利益を守るために発表してなかった。
マイロン・ショールズは1994年LTCM設立に参加する。LTCMは当初4年間驚異的な数字をたたき出すものの、原資産から得られる利幅は薄く、多大なレバレッジを掛けて収益を上げていた。これは、過去データから十分に安全という計算の元行われていたが、1997年のアジア通貨危機、それに続く1998年のロシア財政危機で流動性が確保できなくなり破綻した。
ソープは、金融モデルに正規分布を使うことの危険性に既に1980年代に気づいており、「学会の株価モデルにそんな限界があるのを1984年の指標プロジェクトの一環ですでに知っていた」という。そのため、1987年のブラックマンデーも、10年後のアジア通貨危機＆ロシア財政危機も無傷で乗り超えた。
325：ブラックとショールズの先へフィッシャー・ブラックとマイロン・ショールズが彼らの公式を論文で発表したとき、すでに同じ式を使っていた私は、PNPのトレーディングのエッジを保つためにはワラントやオプション、転換社債、その他のデリバティブ証券を評価する武器を早く向上させて、論文を発表して学会でのし上がろうとがっついている博士号待ちの軍団が今後押し寄せてくるのに立ち向かえるようにしかといけないと痛感した。私たちの投資家の利益を守るには重要な結果は秘密にしておかないといけないが、ほかの人たちもそう経たないうちに発見しそうなそれほど重要でないアイディアは発表してもいいだろうと思った。330：3年で48.9%の利益1973年の初めから1976年10月までの3年と10か月で、PNPの有限責任パートナーたちは48.9%の利益を得た。そのあいだ、世間の投資家は株式市場で荒波に揉まれていた。S&P500は最初の2年間で38%下がり、その後の1975年から1976年10月で61%上がった。合わせて立った1%の上昇だ。一方、PNPは全四半期で利益を挙げた。��躍進339：10年で409%の利益1979年の11月1日、PNPを立ち上げて10年が経った。S&P500の年率リターンは4.6%で、小型株は8.5%で、どちらのリターンもPNPよりずっと変動が激しかった。私たちはこの10年、累積で409%のリターンを挙げた。年率では報酬差し引き前で17.7%、差し引き後で14.1%だ。最初に預かった資金は140万ドルだったが2860万ドルにまで増えた。345：1987年10月19日ブラック・マンデーこの分布は過去の価格変動に、小さいものからまあまあ大きなものまで、よく適合した。でもこの分布は、ものすごく大きな変化が起きる可能性を大幅に低く見積もった。ブラック＝ショールズのオプション価格公式みたいな金融モデルも対数正規分布を使っている。私たちは、学会の株価モデルにそんな限界があるのを1984年の指標プロジェクトの一環ですでに知っていた。過去の株価データにもっとよく適合するやり方も見つけていた。相対的に大きい、めったに起きない変化に関しては特によく適合していた。だから、大暴落が起きてびっくりはしたけれど、ほとんどの人みたいなショックは全然受けなかった。
2020年02月12日
ウォール街〜地上最大のカジノ
Edward O. Thorpは最も初期のヘッジファンド創設者の一人だ。ヘッジファンドは、多額の成功報酬を取るPEファンドの意味で使われることもあれば、「リスクがヘッジされ」マーケット状況に左右されない、絶対利益追求型ファンドという本来の意味で使われることもある。ソープが1969年に創ったPrinceton Newport Partnersは後者で、数学的理論の裏付けでヘッジされた世界初のファンドだろう。
元々は、ソープが大学での研究で、ワラントを使ったヘッジ戦略を発明したことにある。これを実践し、実際に年に25%の利益を挙げていたという。これが勤務先のUCIで評判となり、「私は最低投資額$25,000で何人かのお金を預かり、『市場をやっつけろ』に書いたワラントのヘッジ戦略で運用した」とある。
やがて、『市場をやっつけろ』を読んだ証券マンから、「販売とファンド管理は自分がやるから、運用政略をやって欲しい」と持ち掛けられ、創ったのがPrinceton Newport Partners。ファンド本社があったのがPrinceton, NJで、ソープが居たのがNewport, CA。
運用収益が、大学の給与を大幅に上回るようになったソープは、学内の派閥争いに嫌気がさしたこともあり、長年親しんだ教員生活を辞めることを決断する。
273：ヘッジ戦略ワラントを、そのワラントで買える株式を購入してヘッジすれば、2つのリスクが大部分相殺し合う。過去のデータを使ったシミュレーションでは、最適化を使った私たちの方法で、低いリスクで年に25%の利益が上げられるとの結果が出た。1929年の株式市場の大暴落とその後の基幹も含めてそんな結果だった。理論を追従すると同時に、カショーフと私は自分たちでヘッジしたワラントに投資し、実際に年に25%の利益を挙げた。��史上最高の投資家276：知り合いのお金を預かる私の投資家としての評判はUCIで静かに広まり、友達や大学社会で生きる人たちが自分のお金を運用してくれないかと頼みに来るようになった。私は最低投資額$25,000で何人かのお金を預かり、『市場をやっつけろ』に書いたワラントのヘッジ戦略で運用した。294：マーケットニュートラル1969年に設立した当時、Princeton Newport Partners（PNP)は革新的なアイデアだった。私たちは、まだ市場に導入されて間もない、ほかの証券に転換できるワラント、オプション、転換社債、優先証券といったデリバティブ証券に投資し、ヘッジすることに特化していた。323：さよならUCI大きな組織につきまとう１つの問題は、構成員の大部分が他人の邪魔はしないのがいいと決め込んでしまうことだ。そうして道理が通らなくなるのである。(中略）最初、私はUCIのビジネススクールに移った。数理ファイナンスを教えるのは楽しかった。でも派閥と後ろから弾が飛んでくるのは数学かと変わらなかった。
2020年02月11日
Yashima Clean Day
NPOアーキペラゴが主催する「瀬戸内クリーンアップ」。世界に誇れる瀬戸内海の環境を守ろうと、ゴミ拾いイベントを年間を通して実施している。今日は、屋島の突端、長崎ノ鼻へ。
昨日までしばらく寒かったが、今日は天気が良く、風もない。長崎ノ鼻から見る瀬戸内海は晴れ渡り、絶景。ところが、一たび海岸に降りるとご覧の通り(写真）。
ビニール紐に、カップ麺容器、ペットボトル（蓋だけ多い）、ストロー、ライター。漁具の巨大発泡スチロールに、カキ養殖用スペーサー、漁網。自動車タイヤや、ゴルフボール、注射器まである。数十個のゴルフボールは、香川に多いため池を利用したゴルフ練習場から海に流れ出たようだ。
約30人が90分間わき目も振らず熱心に拾い集め、その数ゴミ袋80袋分。ある程度の大きさがあれば拾えるが、既に日光にさらされて弱くなり、波で洗われて破砕されたゴミが多い。数cm以下になると、拾うのが難しい。数mm以下のマイクロプラスチックになると、人手で拾うのは不可能である。
アーキペラゴでは、以下を推奨している。何れもちょっとした心がけで出来ること。
・マイボトル、マイカップ
日本のペットボトル回収率は約85%。この数字は世界的に見ると高いが、日本で年間に使用されるペットボトルの本数は230億本もある。一人当たり約200本
ということになる。そして、年間30億本が回収されず、山河に捨てられ、海に漂っていることになる。デポジット制を導入している欧州諸国では回収率はもっと高いので（ドイツ・オランダで99%）、日本も導入すべきだろう。・エコバッグ
海ゴミの大きな発生要因の一つであるレジ袋を削減する。野生動物の誤飲の元にもなっている。よく年間使用量305億枚という数字が出て来るが、あれは10年以上前に業界団体が推測した数字で、しかも、滅多に見ることのないLLサイズ（9.9g）換算での数値ということ。一般的なLサイズ（6.8g）で現在の数値を計算し直すと、636億枚と推定されている。一人当たり年間500枚くらい使っている計算になる。
2020年02月10日
偶然を支配した男
企業のBMを分析し、業績を予想して投資する手法を「ファンダメンタルズ」という。それに対して、企業業績などしょせん予想できないものとして、株価をデータとして数理的に分析し、数式によるモデル（アルゴリズム）に従って投資する手法を「クオンツ」という。
その「クオンツ」族の創始者が本書の著者、Edward O. Thorp。元々、UCLAやMITで学んだ数学者だったが、「ギャンブルで勝てるはずがない」という一般常識に挑戦すべく、分析の上、ブラックジャックに的を絞る。必勝法を編み出し、遂にはラスベガスのカジノで立ち入り禁止になる。立ち入り禁止になったので、その手法は、『ディーラーをやっつけろ』（1962）で公開され、100万部を超えるベストセラーになった。
次に挑んだのが、ルーレットで、このために世界初のウェアラブルコンピュータまで制作している。「コンピュータはトランジスタ12個を使っていてタバコ1箱ぐらいの大きさだった。入力はコンピュータを身につける人の靴に隠したスイッチを、足の親指で押して行う。コンピュータは予測を無線で送信する」
LAの労働者階級の家で育ち、父親はガードマンだったという。小さい頃から非常に頭が良い上、行動力がある。成績は最優秀だったが、家が貧乏だったため、レベルの低い地元の公立高校にしか行けなかった。
それでも、その落ちこぼれ校から学校設立以来初めての全米化学コンテストでの受賞者となり、カリフォルニア大学の奨学金を得ている。一時期は火薬製造にハマり、黒色火薬から始まって、最終的には爆発力の高いニトログリセリンまで制作して、近所で何度も実験している。日本でなら間違いなく逮捕されそうな高校生だ。
はじめに：言葉で考える人もいるし数字で考える人もいる。映像で考える人もいる。私はどれもやるけれど、加えてモデルでも考える。モデルは現実を単純化したものであり、市街図のようなものだ。市街図があれば街のある場所から別の場所へどう行けばいいかわかる。
10：環境のなせる業で、私はだいたいが独学であり、おかげで人と違う見方をするようになった。第一に、カジノを打ち負かすなんて無理だというような、たくさんの人が受け入れている見方だからといって自分も受け入れる代わりに、まずは自分で調べる。第二に、新しい実験を考案して自分で仮説を検証し、純粋に考えだけでたどり着いた結論、たとえばワラントの価値を評価する公式をお金儲けに使う。第三に、何か有意義な目標を持ったら、現実的な計画を立てて成功を手にするまでやり続ける。第四に、いつも合理的であるよう努める。
18：今日の世界には２つのグループがあり、まったく異なるやり方をしている。１つめは経済学者のやり方で、決まって何度も吹き飛ぶか、そうでなければ、直接的に投機で稼ぐのではなく、お金を管理する手数料でお金持ちになるやり方だ。(中略）２つめはソープをはじめとする情報理論の人たちのやり方で、トレーダーや科学者検トレーダーはこちらを使っている。
��科学が遊び場
65：落ちこぼれ校から化学コンテスト受賞
私は教科書を最初から最後まで読んだ。夜は読んだことを頭の中で復讐しながら眠りに落ちた。これは習慣になり、当時も今も、学んだことをよく理解し、ずっと記憶にとどめておくのにこのやり方をするととてもうまくいく。
�ぅ薀好戰�ス
117：自分に有利なときだけ賭ける
お金持ちになれるいちばん確実なやり方は、ギャンブルや投資では自分にエッジ（勝算）があるときにだけプレイすること。
143：偉い学者が他人の研究をパクる
科学の世界では、物事が発見されるタイミングというのがあり、複数の研究者がほとんど同時にそれぞれ独自に同じことを発見するということがある。ニュートンとライプニッツが微積分、ダーウィンとウォレスが進化論を同時期に発見した例がよく知られている。私がブラックジャックの研究をするのが5年早かったら実現は難しかっただろうし、5年遅かったらずっと容易だった。コンピュータの計算能力も使いやすさもずっと高まっていただからだ。
235：世界初のウェアラブル・コンピュータコンピュータはトランジスタ12個を使っていてタバコ1箱ぐらいの大きさだった。入力はコンピュータを身につける人の靴に隠したスイッチを、足の親指で押して行う。コンピュータは予測を無線で送信する。
2020年02月09日
ベルリンの壁崩壊
ベルリンの壁がなぜ崩壊したか？つまり、なぜ、ソ連を中心とする「東側」共産圏が崩壊したかだが、つまるところ、経済崩壊による財政破綻だった。
共産主義の仕組みでは、成果を上げても収入が上がるわけではない。それよりも、体制派か反体制派化の方が問題で、ささいなことで逮捕され、まともな裁判もなく牢獄や強制収容所に送られる。だから、仕事の成果を上げることではなく、「政府が何を考えているか」に神経をとがらせている。
こうして、共産圏の生産性は落ちていき、農産物は農場で腐り、小売店では食料が不足し、結果、大量の食糧をアメリカを中心とする西側諸国から買わざるを得なくなる。ソ連圏だけの支払ならお金が足らなくてもルーブルを刷れば当面はしのげるが、西側陣営から買うには米ドルが必要だ。
長年、ソ連からの経済支援と軍事協力で成り立っていた東欧諸国だが、もはやクレムリンにそれを支える経済力はなくなる。経済支援がなくなった東欧の経済状態は悪化し、政府への不満は募る。そして、それが1980年代後半に自由化への要求となって噴出した時、ソ連にかつてのように戦車を送って阻止する力はなくなっていた。
174：ポーランドヨハネ・パウロ二世が有能なプロパガンディストであることがわかったのだ。彼はオケンチェ軍用空港へ降り立つと、ひざまづいて、ポーランドの大地に口づけをした。241：グダニスク造船所のストライキ委員会は、自分たちの活動につぃて、世界中のメディアに慎重に説明し続けた。皮肉なことに、ポーランド国民との意思疎通を図るには、これが一番んいい方法だった。ポーランドのメディアは検閲されていたが、西側の新聞報道はアメリカ資本の「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」で取り上げられ、そのままポーランドに向けて放送された。これが、ポーランド人が自分の国で何が起きているのか、真相を知るための主たる方法だった。246：ソヴィエト連邦の財政破綻「1968年の時点では、ソヴィエト・ブロックは数十億ドルもの対外債務を抱えていなかった。今日の我々は、全面的に西側からの借款に依存している。」263：ポーランド「連帯」グダニスク湾でのソヴィエト海軍の威嚇行為。ポーランドの東側国境では、十万人の赤軍が「上陸演習」。413：レーガン大統領の人気は依然として高かった。ニクソンを辞任へ追い込んだ犯罪よりももっと凶悪な罪、・ニカラグアへの資金提供という名のテロ・人質釈放を条件にイランへ武器供与・CIAによるベイルート暗殺未遂による大量殺人（女性を中心に80人＋負傷者200名）507：クレンツは神が存在しないと知った牧師のような顔をしていた。東ドイツはソヴィエト連邦によって作られ、クレムリンの財源に支えられ、ソ連軍の強さに守られてきた。彼はそのすべてが終わりを迎えたという事実を受け入れることができずに、明らかに困惑している様子だった。
2020年02月08日
ベトナム戦争
戦後社会の歴史のうねりを、米国、英国、ロシア、ドイツを舞台に描く巨編もいよいよ最後の4冊目。時代は1970年代に入った。
ベトナム戦争は末期に入り、米兵が麻薬をやりながら戦争犯罪の数々。立花隆が『解説「地獄の黙示録」』で「アメリカが救いがたい麻薬汚染国家になってしまったのは、ベトナム戦争がアメリカにのこした最も深刻な後遺症」と書いていたが、その通りだろう。
19：シーモア・ハーシュ（ジャーナリスト）ヴェトナムのミライ村でアメリカ軍が何百人もの無辜の民を殺害したと、各紙に同時掲載の暴露記事。これはペンタゴンが必死で隠ぺいを図ってきた虐殺事件だった。そして、この1972年1月、ニクソンの支持率は空前の低さを記録した。71：共産主義の一番の問題は、党を全て支配する権力者が変化を抑圧することにあった。ソヴィエトの体制は、恐るべき守旧的な考えの中で身動きが取れなくなっていた。77：普通のソヴィエト市民にとって西側の人間との関りがどれだけ危険かを、ミセス・ニクソンは気の毒にも、たぶん理解できていなかった。そのあと市民は逮捕され、何を話したのか、事前に会うことを決めていたのかと尋問される危険があった。137：ウォーターゲート事件辞任から一ヵ月後、フォード大統領がニクソンを恩赦した。
2020年02月07日
サブスクリプションの成功と失敗
昨日紹介したのは、「リカーリングモデル」の一つとしての「サブスクリプション（サブスク）」だったが、本書はサブスクリプションに絞っている。サブスクリプションとは、「製品やサービスなどの一定期間の利用に対して、代金を支払う方式」。
サブスク型のBMは昔からあった。例えば、成功例として知られているのは、フェリシモの「定期便」。選んだタイプの小物やファッションアイテムが月替わりで毎月届く。通販会社にとっては収益の安定化＋需要が読めることによるロスの低減＝利益増につながる。
昨今のサブスクが、既存のサービスとは異なる特徴は、
・メーカーの参入（メーカーが自社商品でサブスク）
・シェア「所有から利用へ」
・個別カスタマイズ化（利用者の趣味・嗜好に合った商品を個別に提供）
だという。
だという。
確かに、トヨタが一定額で車を乗り換え自由にしたり、カルビーがフルグラの定期便を始めたりと、メーカーが直接行うのはこれまでにないことだった。メーカーにしてみれば、直販することで販売店マージンがカットでき、うまくいけば利益増になる。また、顧客を直接把握できるメリットは大きい。顧客にとっては、カスタマイズが可能であれば満足度は高いだろう。フルグラのケースでは、増量した専用の袋で届き、市販品に対してお得感があった。
一方、撤退に追い込まれたのは、スーツレンタルを始めたAOKI。「利用者の年齢層が既存事業の中心顧客と重なり、全体として売上減になることが明らかになった」と説明している。若者がスーツを着ないので、顧客の平均年齢が年ごとに上がっていた。そして、定年になれば買わなくなってしまう。顧客層を広げようとしたが、スーツを着ない人は買わないだけでなく、レンタルもしない。
SAKELIFEの場合は、顧客の嗜好に合った日本酒が毎月届く。顧客数は当初、順調に伸びた。ところが、一定期間が経つと顧客は好みの銘柄を選べるようになり、サービスから「卒業」してしまう。顧客数が頭打ちとなり、撤退した。
サブスクは、長く利用されなければ成り立たないものが多い。そのため、顧客が思い入れのある嗜好品か、昨日紹介したような顧客が自分でデータを入れることによって自らスイッチングコストを高めるSaaSなどの相性がよさそうだ。
●衣食住すべてのモノの売り方、買い方が、サブスクモデルによって変わりつつある・高級バッグ借り放題・月額制飲み放題・多拠点住み放題●サブスクの落とし穴・AOKIサブスク型スーツレンタル事業を開始から半年で終了。利用者の年齢層が既存事業の中心顧客と重なり、売上減。・SAKELIFE顧客の嗜好に合った日本酒を厳選、定期配送するサービス。順調に顧客数を伸ばしたものの撤退。一定期間が経つと顧客は好みの銘柄を選べるようになり、サービスから「卒業」。
2020年02月06日
リカーリングモデル
「サブスクリプション」流行りで、よく聞けば、「それってただのリースでは？」というものまでサブスクリプション呼ばわりされている。
一体何が「サブスクリプション」で、そうでないものとの境はどこなのか、本書でやっとはっきりした。サブスクリプションもリースもまとめて、「ユーザーに寄り添い、継続収益を生み出す」のが「リカーリングモデル」であり、サブスクリプションもリースも、リカーリングモデルの一つということになる。
継続的な「つながり」がポイントで、その意味では、これらに加えて、繰り返し購入する「リピーター」も、本体のための消耗品を買い続ける「レーザーブレイド」（これはアメリカ式か？日本風に言えば「コピー機」BMだろう）もリカーリングモデルだという。
では、従来からある「レーザーブレイド（カミソリの刃）」と「フリーミアム」、「サブスクリプション」とリースは何が違うのか？それは、「継続の拘束力」弱く、「ユーザー有利」であることだという。つまり、カミソリの刃なら、最初に本体を買う必要があるが、フリーミアムでは初期投資はゼロだ。カミソリの刃は本体なしでは使えないが、フリーミアムでは初期費用なしである程度利用できる。リースではいったん契約したら、契約期間中は解約できないのが普通だ。サブスクリプションでは、大きなペナルティなしに、いつでも解約できるものが多い。
「ユーザー有利」でいつでも解約できる、ということは、企業側にとっては投資の回収が遅れることを意味する。例えば、それまで100万円で売り切っていたものを、月々10万円でメンテナンスも付けてレンタルするようなものだ。気楽に解約されると、顧客獲得コストが常に掛かることになる。
サブスクリプションと相性がいいのは、一旦使い出すと、ユーザー自らがスイッチングコストを高めてしまうもの。SaaSの老舗、salesforce.comは正にこれ。ユーザー自らが、顧客データ、営業記録をせっせと入れていくので、ある程度溜まると他に乗り換えられなくなる。
＊ユーザーに寄り添い、継続収益を生み出すものを売って利益を得るのではない、新しいビジネスモデル。●リカーリングモデル十分に利益を得て、しかも利益が継続する。●前提にはユーザーへの価値提案プロダクトの提案では不十分で、ユーザーのジョブ（用事）の達成に寄り添う必要。こうした継続的な「つながり」が、収益を継続させる。●リカーリングモデルの形態・サブスクリプションユーザーと契約し、月額や年額で課金する定額制や、利用量に応じて課金する従量制などの課金形式で継続収益を得る。・リピーターユーザーに自社のプロダクトを繰り返し利用し続けてもらうことで、継続収益を得る。・レーザーブレイド安価な本体を提供した後、利幅の大きい付属品を継続的に購入してもらうことで利益を得る。・リースユーザーは、対象となる資産の所有権を持たずに、サービス提供企業に利用対価を支払う。・フリーミアム無料でベースのプロダクトを提供し、有料アイテムで利益を得る。●ユーザーとの「つながり」が必須・プロダクトの「販売」ではなく「利用」・ユーザーに対し、生活のアップデートを提案・ユーザーのジョブ（片付けるべき用事）を捉えている・継続的にユーザーの利用状況を把握し、どんな小さな問題にも対応する
2020年02月05日
「働きたくてたまらないチーム」の作り方
2017年の厚生労働省の調査によると、「現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスと感じる事項がある労働者」の割合は58.3%だったという。これは諸外国と比べて最も高い水準。
また、別の調査では、職場におけるストレスの原因の第一位は「上司・人間関係」だった。これも国際比較で際立って高い。要するに、「日本人は職場の人間関係に悩みながら働いている」人が半分以上ということになる。会社に対する信頼度の低さも、その表れだろう。
著者は、慶応義塾大学ウェルビーイング・リサーチセンター長。長ったらしい名前だが、ウェルビーイング（well-being）とは「幸福」という意味だ。
＊社員と組織を幸せにするには？●経済学者ロバート・フランクは、財を二つに分類地位財：他者との比較優位によって価値が生まれ、満足を得られる財。役職や所得、家や車など。非地位財：他者との比較ではなく、それ自体に価値があり、喜びにつながる財。愛情や自由、健康など。・地位財による幸せは長続きしないが、非地位財による幸せは長続きする（心理学者ダニエル・ネトル）●日本人が幸せになるために必要な４要因� 屬笋辰討澆茲Α�」因子（自己実現と成長）�◆屬△蠅�とう！」因子（つながりと感謝）��「なんとかなる！」因子（前向きと楽観）�ぁ屬△蠅里泙泙法�」因子（独立と自分らしさ）●well-beingな組織「個人の幸せ」も「皆の幸せ」も大切にする組織。個人主義と集団主義をバランスよく高める。●職場でウェルビーイングを高める�仝朕佑縫侫�ーカス・理念の共有→やりがい・権限の委譲→主体性�⊇乎弔縫侫�ーカス・傾聴、対話、感謝●トップに依存する経営は、変動に弱い社員一人ひとりが全体のことを主体的に考えて動く自立型の組織は、変動に耐える。
2020年02月04日
Life after Google
「グーグルが消える日」と言われても、検索からGmailまで、利用しないことがない日々の中でにわかには信じられない。しかし、読んでいくと、「そうなのかも」という気がしてくる。Googleが登場したことで、Yahoo!などそれまでの検索エンジンが消滅したごとく、Googleが消える日が来てもおかしくない。
著者が主に問題にしているのは、セキュリティ＆プライバシーと「時間泥棒」。Googleのビジネスモデルは、�．肇薀侫�ックを集めて、��広告を出すこと。�，聾〆�広告から始まり、Gmail、YouTubeへと拡がった。SNSも試みたが、こちらはFBの壁を崩せず、敗れ去る。
スポンサーに広告費を出してもらい、その売上で無料でサービスを提供するというのは、民放テレビ局と構造は同じ。ただし、一方通行のテレビと違い、インターネットでは様々な個人情報がやり取りされる。しかし、Googleは無料サービスであることを前提に、ユーザー責任であることを基本にしている。
この「なんでも無料」作戦はおびただしい犠牲者も出してきた。20年前、インターネットのログ解析ツールを提供する企業が米国を中心に世界に数十社勃興した。2005年に、Googleが全米2位だったUrchinを買収。翌年からそれまで有料で提供されていたツールをGoogle Analyticsとして無料で提供し始めた。これでほとんどの企業が消えることになった。
これは、独占禁止法の「不当廉売」にならないのだろうか？
＊Googleに支配された、今のインターネットのシステムは崩壊するGoogleの抱える致命的な問題。●インターネットにおけるプライバシーやセキュリティは危機的状況この問題は、既存のコンピュータやネットワークの仕組みだけでは解決できない。●現在の「世界システム」はGoogleが築いたものそれは、創造性や驚きを特徴としたコンピュータやコミュニケーションの産業を生み出した。●Googleは「無料」でサービスを提供する＝嘘ユーザーは対価を金銭で払う代わりに、見たくもない広告を見せられる。「注目すること」すなわち「時間」で支払っている。つまり、Googleはユーザーの「人生」を奪っている。●人を集めて広告を見せるChromeに広告ブロッカーを導入→オンライン広告企業にとって自殺行為●Google最大の問題はセキュリティへの配慮不足「取引の安全性」を最大の責務に掲げる新たなネットワークが生まれる。●クリプトコズム(秘密保持の世界）・Security First手順や仕組みではなく、基本構造。・「集中化」は安全ではないデジタル資産の集中かは危険。情報を分散しないかぎり、改竄や盗みに弱くなる。・無料のものは何もない資本主義では、企業が顧客の役に立ち、金銭を受け取る。その対価をなくせば、企業は顧客を大切にしなくなる。・時間は、費用の最終指標であるあらゆるものが潤沢になっても、時間は希少なまま。人生の長さは変わらない。
2020年02月03日
絶望を希望に変えるイノベーションの経済学
名著『イノベーションのジレンマ』で知られるHBSのクリステンセン教授がボストンで亡くなったのは先週のこと。67歳だった。教授を偲んで、昨年出た最新刊を手に取ってみる。
私も『イノベーションのジレンマ』を読んで衝撃を受け、出版当初あちこちで推薦してきた。尤も、あの本は、「どうして、それまでの優良企業が、新興企業にと取って代わられるのか」を上手に説明しているが、では、「どうしたら、市場を制した巨大企業が衰退しなくて済むか」については議論の余地があった。
企業にも人間同様、寿命があって当たり前で、イノベーションを起こしたベンチャーに取って代わられればいいだけではないか、と言えば、それまでのことである。
本書のテーマは、「発展経済学」で、これまでの著書とは趣が違う。「市場創造型イノベーション」によって、「貧しい地域を持続的に発展させる」ことを目的にしている。内容は、BOPの話に近い。
例として出て来るうちの一社は、リチャード・レフトリーが創業したMicroEnsure社。その名の通り、小口の保険に特化し、新興国で5600万人の加入者を持ち、これまでに支払い請求に応えて3000万ドル以上を支払っている。
保険とは、本来貯えのない貧しい人たちのための者なのに、新興国のこれらの人たち向けの保険がなかった。保険料が安いので、大手保険会社は興味を持たなかったのだ。先進国なら無保険者も、社会保障によるセーフティーネットがあるが、新興国にはそうした社会保障はそれほどない。
ここに注目して、少額医療保険、農民向けの収穫保険、スマホ保険など小口保険に特化して効率的に提供したのがMicroEnsure。これは、考えてみれば、かつての簡易保険みたいなもの。1916年にスタートし、保険金の限度額が低い代わり、加入にあたって医師の診断や職業上の制約がなかった。
＊単に利益を得るだけでなく、貧しい地域を持続的に発展させる。繁栄を広範囲に行き渡らせる、市場創造型イノベーション。●繁栄のパラドクス貧困国に、教育や医療、インフラなどを改善するための資金をいくら投じても、その国の長期的な繁栄にはつながらない。●市場創造型イノベーション〜繁栄への確実性の高い道・無消費者プロダクトが存在しない、存在するが高価で買えなかった人たちを対象に、新規の市場を創造する。・高機能で高価なプロダクトやサービスをシンプルで安価なものにして、無消費者の手の届く状態にする。●一国の経済を推進させる力�．廛蹈瀬�トの生産・流通・販売に必要な雇用が増える�⊂暖饉圓�増えることによって、利益が生み出される��社会全体が劇的に変化する●無消費の原因スキル：利用するのに必要なスキルがない資産：買えるだけの金がないアクセス：置かれた状況や場所から入手できない時間：利用するのに時間がかかるため利用しない●片付けるべきジョブこれまで不適切な解決策しかなかったり、解決策そのものが存在しなかった問題を解決できるかどうかに、イノベーションの成否が掛かっている。
2020年02月02日
満濃池名勝指定記念シンポジウム
満濃池が昨年10月に国の「名勝」指定を受けた。それを記念するシンポジウムが今日まんのう町で開催された。
名勝とは、日本における文化財の種類のひとつで、芸術上または観賞上価値が高い土地について、日本国および地方公共団体が指定を行ったもの。特に、文化財保護法第109条第1項において規定された、国指定の文化財の種類のひとつ（Wikipedia）
現在、国の名勝に指定されているのは全国で418件。そのうち半分ほどは庭園や公園などの「人文的名勝」。ため池が指定されるのは初めてということ。香川県では、栗林公園（特別名勝）、寒霞渓、琴弾公園、象頭山、玉藻公園飛雲閣庭園の5件に、満濃池が加わり6件になった。
灌漑用の溜池として日本一を誇る満濃池は、「萬農池後碑文」によると大宝年間（701年〜704年）に讃岐の国守道守朝臣（みちもりあそん）の創築と伝えられています。しかし弘仁9年（818年）に決壊、朝廷の築池使路真人浜継（ちくちしみちのまひとはまつぐ）が復旧に着手しましたが、技術的困難と人手不足によって改修がならず、国守清原夏野の発議により、弘仁12年（821年）空海が築池別当として派遣されました。空海が郷土入りをすると人々は続々と集まり人手不足は解消し､唐で学んだ土木学を生かして、わずか3ヵ月足らずで周囲2里25町（約8.25km）面積81町歩（約81ｈａ）の大池を完成させました。朝廷は空海の功を賞して富寿神宝2万を与え、空海はこれによって神野寺を池の畔に創建しました。（まんのう町「満濃池の歴史」）
シンポジウムの基調講演は、高松出身の井原縁（奈良県立大学教授）「名勝満濃池の風景とその魅力」。パネルディスカッションには、満濃池土地改良区理事長も参加。満濃池は、幾度もの補修と、3度のかさ上げを経て日本最大のため池になったのだが、貯水容量1540万トンが満たされることはほとんどないのだという。
元々、雨が少なく旱魃の被害に苦しんだ讃岐平野で、「貯められる時は一滴残らず水を貯めておきたい」と、明治39年に0.91m（3尺）、昭和5年に1.52m（5尺）、昭和33年には6mも嵩上げされた。何年かに一度、大型台風が直撃した時だけ満水になるが、他の年は7割で最大ということ。
2020年02月01日
インド映画歴代興行収入1位
娘がAmazon Primeに入り、一緒に見ることに。インド映画歴代興行成績No.1だという「きっと、うまくいく」（原題：3 idiots）。2009年公開だから10年以上前。日本での公開は遅れて2013年。
主人公が通うのはインド最高峰の工科大学というから、IITがモデルだろう。10億人を超える人口の国で、貧困層も多いから、いい大学に行ってアメリカで働くのは多くの若者にとって夢だ。それも、階層や文化的差別のないエンジニアが人気だ。その結果、IITへの入学競争は熾烈を極める。競争倍率は100倍上だ。
それを乗り越えて入学した、同級生3人。入学後も熾烈な競争が待っている。二人は授業についていくのが精いっぱいの劣等生。主人公は、抜群に頭がよく、試験のための勉強ではなく、物事の本質をとらえようとする。
衝撃的なのは、「インド大学生の自殺率が世界一高い」というセリフ。本当かと調べたら、成績不振を苦にして「大学予備校で年間に2600人が自殺」という記事があった。インドではまだエアコンが贅沢ということもあり、天井ファンが付いていることが多いが、それに紐をつるして首つりするケースが後を絶たず、そのため、一定重量が掛かると天井から外れるファンまで売り出されているそうだ。
また、WHO統計で見ても、インドは自殺者数で世界一。人口当たりで見ても韓国や日本と同水準で、上位だ。日本との違いは、日本では50代男性の自殺が多いのに対して、インドでは若者の自殺が多いこと。映画の背景を裏付ける。
