2020年01月
2020年01月31日
モルガン・グレンフェル
サッチャー政権の導入した「ビッグバン」は、イギリス金融業界の「ウィンブルドン化」をもたらした。昔ながらの規制の中で停滞していたシティはよみがえったが、イギリス資本の金融機関は激減した。激しい競争にさらされることのなかった名門マーチャントバンクに国際水準での競争に勝つ力はなかったのだ。
モルガン・グレンフェルは1989年ドイツ銀行傘下に、「女王の銀行」と呼ばれたベアリングスは1995年シンガポール支店勤務のトレーダーによる不正取引で破綻した。今も残るマーチャントバンクはロスチャイルドくらいか。
480：ビッグバン1986年後半のモルガン・グレンフェルは、観る人の目には対象が際立つ不思議な存在だった。外見は、落ち着いた地味な雰囲気を保っていた。150年近い伝統を守って、建物の外側に表札をいっさい出さず、内装も過去に敬意を表して、分厚い絨毯を敷いたアーチ造りの玄関広間には、セントポール大聖堂やイングランド銀行、それに19世紀末のシティのガス灯のついた街路を辻馬車が走り回っている版画が飾られていた。また、モルガン・グレンフェルは、シティでは山高帽をかぶる最後の紳士（ジュリアン・スタムフォード）のいるところと言われ、昔ながらの奥ゆかしい場所と思われていた。しかし、その落ち着いた雰囲気は見せかけだった。モルガン・グレンフェルは、礼儀正しさをかなぐり捨て、荒っぽい、積極的な商法に打って出るなど、モルガン・スタンレーとほとんど同じ道を進んでいた。485：英国のマーチャント・バンクは、新興の世界的金融コングロマリットと比べるとちっぽけな存在だった。たとえば、日本の野村證券は、資本金200億ドルで、モルガン・グレンフェルの40倍であって、野村なら、英国のマーチャント・バンク全部を吸収するのは朝飯前だった。シティの門を外国の金融・証券会社に開くことで、英国政府は、金融センターとしてのロンドンの存続を確実にしたが、個々のロンドンの各社の存在までは保証しなかった。
486：マーチャント・バンキングを営んできたエリートの世界は、トレーダーの大活躍でシティの動きが速まるにつれて、影が薄くなっていった。会員制のブードルズ・クラブやホワイツ・クラブで長い時間をかけて顧客と昼食を共にする代わりに、12時間勤務が普通になってきた。トレーディング・デスク全部にイートン出身者を配するのは不可能なので、シティは、学歴や出身の点で前よりずっと平等な働き場所になった。573：旧モルガン商会ほどの神秘さを備えた銀行が今後現れるだろうか？おそらくないだろう。モルガンのパートナーたちは、昔よりも平等主義に徹した今日の基準からすると、いわば閉鎖的すぎて、しかもなれあいすぎた、一昔前の世界のお飾り的存在だった。トム・ラモント、ドワイト・マロウ、ラッセル・レフィングウェルらの視野の広さと教養は、小ぢんまりとしたパートナーシップ制と、資金力を持つ競争相手がわずかしかいなかった世界から生まれたものだ。この人たちが働いていたウォール街は、今より平穏で、のんびりしており、だからこそ紳士や学者並みの見識の持ち主になれたのだ。
2020年01月30日
モルガンの転換期��
投資銀行は、その名の通り、もともと顧客のための資金の調達やM&Aのアドバイザリーなどの投資銀行業務が中心だった。日本でいう証券会社は証券ブローカーと呼ばれ、全く違う業界として、格下に見られていた。アメリカの証券ブローカーで最大手だったのはメリルリンチである。
この流れを変えたのが、1970年代から発展した金融工学。ソロモンやゴールドマン・サックスのようなユダヤ系金融業者が1972年に終了したアポロ計画であぶれたロケット科学者などを雇い入れ、金融取引を科学的に分析し始めた。これをいち早く取り入れたところは、自己資金での金融商品売買（トレーディング）で莫大な収益を上げるようになり、業界内での地位が逆転した。ソロモン・ブラザーズは80年代には「ウォール街の帝王」と呼ばれた。ソロモンは1991年の米国債入札不正事件で凋落し、その後隆盛を極めたのがGSである。
かつて金融財閥として世界に君臨したモルガン財閥はこうした動きに対応できず、出遅れる。だが、時代の変化に対応すべく、モルガンも変わっていく。
314：ルーパート・マードックマードックは、オックスフォードの学生時代にラディカリズムの政治思想にかぶれたことがあったし、また、英国の上流階級が弱体化して時代遅れになったと考え、だからこそ大胆にも英国の新聞買収という策略に乗り出したわけだ。にもかかわらず、マードックのことをサー・ウィリアム・カーは、乗っ取りの危機から救出に駆け付けた清廉潔白で、野心のない「白馬の騎士」として喜んで受け入れた。321：サムライモルガン・グレンフェルと同様、モルガン・スタンレーも、1960年代を迎えた初めのうちは典型的にお上品な投資銀行そのものだったが、やがて完璧に変身した。初めごろは、ブルックス・ブラザーズ仕立ての背広にモノグラム入りのシャツを着た20数人のパートナーたちが、ウォール・ストリート2番地の社屋でロールトップ・デスクを前にして執務していた。英国の狩猟風景を描いた版画が壁に飾られた室内は、神秘的な権力を宿す一種の聖地だった。あるパートナーが語ったように、「ここは、電話一本で1億ドルでも調達できる、数少ない場所の一つだ」った。326：ロバート・ボールドウィン彼はまた、1960年代中頃のモルガン・スタンレーの抱える、数々の欠陥にも気づいていた。経営がお粗末なうえに、組織が大きくなりすぎ、昔のようにみんなの意見を簡単にまとめられなくなっていた。予算制度や事業計画や近代的経営などといったものはかけらもなく、ただ学生みたいな議論がどこまでも続くだけだった。329：トレーディング証券売買は依然として、ソロモンやゴールドマン・サックスのようなユダヤ系金融業者に残された、卑しい金融商品売買と考えれていた。これとは逆に、ソロモン・ブラザーズの社内では、証券売買担当者たちが企業金融担当者たちを「電球取替え屋」とか「注文取り」などと馬鹿にする風潮があった。423：モルガン・ギャランティいくつもの幻想を追うあまり、モルガン・ギャランティの冷静な判断の目が曇ったのだ。そうした幻想の一つは、国家は破産しないという、根も葉もない話だ。これは史実に反するといってよい。この150年間、国家の債務が不履行になる例は、ざらにあった。取引先を厳しく選別するあのJ.P.Morgan商会でさえ、第二次大戦までにオーストリア、ドイツ、日本への融資が結局は巨額の債務不履行となっている。470：M&Aモルガン・スタンレーは、受け身の姿勢をかなぐり捨てた。1978年当時、同社のM&A担当専門家のR・ブラッドフォード・エバンズは、「わが社は顧客企業に、『この会社はどうか、あの会社はどうか。どこかと取引をまとめたらいいのでは？』などと、うるさく言ったりはしない」とのんびり構えていたが、やがてゴールドマン・サックス、ファースト・ボストン、リーマン・ブラザーズに追い抜かれてしまった。
2020年01月29日
モルガンの転換期��
アメリカ人がロンドンで創業したJPMは、当初はアメリカへのヨーロッパ投資家の窓口として業務を拡大し、やがて、アメリカに逆進出し、NY事業の方が大きくなる。
興味深いのは、その間一貫して法人格のないパートナーシップであったこと。株式会社になったのは1940年のことで、それまでは銀行ではなかった。世界最大の影響力を持つ金融機関が法人ですらなかったのは今では考えられないことだ。
121：モルガン・エ・コンパニーは、第二次大戦中を通して初めから終わりまでパリで営業し続けた、唯一のアメリカ系銀行だった。合衆国政府が同銀行の戦争中の努力を認めたことは、1944年末に財務省と陸軍省が本社のJ・P・モルガン銀行に対し、パリの業務を正常化するため上席パートナーのディーン・ジェイらアメリカ人行員の現地派遣を要請したことでよくわかる。最高のご褒美として、モルガン・エ・コンパニーは、解放されたフランスに駐在するアメリカ軍の預金取扱いを任された。140：転換期第二次世界大戦の初期、J・P・モルガン商会は、従来の非法人の合名会社から最終的に営利法人に転換し、J・P・モルガン銀行となった。この決定は、モルガン財閥の歴史にとり画期的なもので、1940年2月にこれを発表する際、前例のないことだが、ジャック・モルガンみずからが記者会見を行った。新しい銀行の会長にはジャック、経営最高責任者にジョージ・ホイットニー、経営委員会委員長にラモントがそれぞれ就任することになった。146：ジャック・モルガンジャックの歴史に占める位置をめぐる評価は、直ちに分かれた。その事業歴から見ると、個人的に成功者であったことは明らかだ。J・P・モルガン商会を父の死後に引き継いだとき、ウォール街の口さがない人たちは彼を未熟者とみたが、モルガン財閥はジャックの時代で、祖父ジューニアスは言うに及ばず、父ピアポントの時代をも上回る力を蓄積した。しかも取引先を国際的に拡大して、多数の国の政府、大蔵省、中央銀行を顧客にするとともに、「ドル外交の時代」の政治と金融の両面の離合集散にうまく乗じた。ウォール街23番地の社屋は、同業の銀行家仲間の出入りする、くすんだクラブハウスというよりも、世界で選り抜きの金融界名士たちの集う場所という観があった。
2020年01月28日
ユダヤ系投資銀行
ゴールドマン・サックス、ラザード、そして破綻したリーマン・ブラザーズ。これらの共通点は、「ユダヤ系投資銀行」であること。そんな中、Morgan Stanleyだけが非ユダヤ系の大手投資銀行として長年君臨し、金融界のBlue Blood（貴族）と呼ばれたこともあった。
「ロンドンのマーチャント・バンクの経営者と同様、ウォール街に本拠を置くユダヤ系投資銀行の経営者も雑貨商人上がり」だというのも興味深い。金融取引のもとは商業金融だったのだ。これは、三井財閥が呉服商から出発して、両替商、そして近代的金融業に進出したのと同じだ。三菱は九十九商会の海運業が祖業だから、マーチャント・バンクというべきか。
そして、「ユダヤ系各行は、一種の世襲君主制をとっていて、血縁の者か婚姻を結んだ者しかパートナーになれなかった」というのは、かつての日本の財閥との共通点を感じる。
158：ユダヤ系投資銀行ロンドンのマーチャント・バンクの経営者と同様、ウォール街に本拠を置くユダヤ系投資銀行の経営者も雑貨商人上がりで、リーマン兄弟は南部アラバマ州の綿花仲買人、ゴールドマンはペンシルベニア州の衣料品店主、クーンとローブはシンシナティの衣服商、ラザードはニューオーリンズの雑貨商だった。これらのユダヤ系各行は、一種の世襲君主制をとっていて、血縁の者か婚姻を結んだ者しかパートナーになれなかった。また、非ユダヤ系の大手各行が手を付けない分野を縄張りとし、お上品な非ユダヤ系銀行が下品だとみなした各種の取引市場に直接手を出した。だから、ゴールドマン・サックス商会は商業手形を、リーマン・ブラザーズ商会は商品取引を専門としていた。319：第一次世界大戦は、銀行家たちが人種的偏見を発揮し、独自の対外方針を推し進めるなどして、あたかも自らが主権国家であるかのように振る舞った、最後の戦争だったといえよう。ウォール街では、戦時利得の分配が、政治信条や宗教の違いに厳密に応じて各銀行家の間でなされた。モルガン財閥は、そのなかでとびきり最高の地位を占めた。大戦が、ウォール街の非ユダヤ系各銀行にとり思いがけぬ幸運だったとすれば、反ロシア・親ドイツ感情で凝り固まっていたユダヤ系各銀行にとっては、一大破局といえた。たとえば、クーン・ローブ商会の独裁的な支配者であるジェーコブ・シフは、帝政ロシアのユダヤ人虐殺に肝をつぶし、ロシア政府に「人類の敵」の烙印を押し、それに復讐する意味で1904-5年の日露戦争で日本側の戦費を調達してやった。504：モルガンのパートナーたちは、株価大暴落で大損したものの、まだまだ他人が聞いたら面食らうほどのけた外れの富を誇っていた。1928年のクリスマス・ボーナスとして、各人が百万ドルずつ受け取っていた。翌1929年10月の大暴落で株仲買人たちが何人か、ビルの屋上から飛び降り自殺をする騒ぎの最中でも、メイン州バースでは、ジャック・モルガンのコーセア四世号の歓声が急がれていた。これは、6千馬力、全長343ft、総トン数2181t、エレベーター付き、乗員50名以上という最大の豪華外洋ヨットだった。推定250万ドルの建造費がかかったが、これはジャックの1920年代末の年収の半分にしか当たらなかった。
2020年01月27日
金融帝国の盛衰
「アメリカの一大金融帝国―モルガン財閥の興隆と衰退、そして再生の物語」を生き生きと描いた1990年の名作。今もJ.P.MorganやMorgan Stanleyは名門銀行として続いているわけだが、特に1935年にグラス・スティーガル法によって商業銀行のJ.P.Morganと投資銀行のMorgan Stanleyに分離されるまでのモルガン財閥は「市場最も恐るべき力をもった総合金融機関」としてその強さは際立っていた。
その創業者がモルガン家ではないというのも面白い。前身はアメリカ人商人のジョージ・ピーボディが19世紀にロンドンで作った「ジョージ・ピーボディ商会」で、世界の金融の中心であったシティで投資家を集めて、母国アメリカの様々な投資案件に仲介するのが仕事だった。
1835年にピーボディが渡英したきっかけは、アメリカ各州がロンドンで売った州債の利払いを停止しており、その債務繰り延べ交渉のためだった。その後、繰り延べ交渉が落ち着き、アメリカ経済が発展するとともに、ピーボディもロンドンで大成功する。
しかし、ピーボディは結婚しておらず（愛人はいて、娘もいた）、後継者がいなくてアメリカから迎えたのがJ.S.Morganだった。ジョージ・ピーボディ商会の名前は「ロンドンで随一のアメリカ系マーチャント・バンク」として価値のあるものであり、当然それを引き継がせてもらえるものと思っていたモルガンは、ピーボディがそれを拒否したことにひどく落胆する。
しかし、ピーボディが拒否しなかったら、今あるのはJ.P.Morganにならなかったし、ジョージ・ピーボディ商会の名前に胡坐をかいていたら、ひょっとすると、その後のモルガン家の繁栄はなかったかもしれないと考えると、歴史の偶然は面白い。
11：アメリカの一大金融帝国―モルガン財閥の興隆と衰退、そして再生の物語歴史上、モルガン財閥ほど厚く伝説に覆われ、深く謎に包まれ、そして厳しい論議の的となった金融機関は他にないだろう。1989年までJ.P.Morgan銀行は、ウォール・ストリートとブロード・ストリートの交差する、一般に＜ザ・コーナー＞と呼ばれる場所から、アメリカの金融界に君臨してきた。NYSEやフェデラル・ホールの立ち並ぶこの一角、ウォール・ストリート23番地に構えた社屋は、看板も何もない、街路に斜めに玄関のついた低層の建物で、見るからに貴族的で超然たる雰囲気があった。私がこれから物語る話の大部分は、この端正な大理石造りの建物を出入りした歴代大統領、各国首相、大実業家、百万長者たちを中心に展開される。1935年以前のモルガン財閥は、市場最も恐るべき力をもった総合金融機関であった。モルガン財閥は、アメリカの銀行家ジョージ・ピーボディがロンドンで1838年に創業したのが前身だが、のちにこれをモルガン一族が引き継いでNYへ移し、そこで一躍有名にした。モルガン財閥というとすぐ人々の頭に浮かぶのは、J.P.Morgan�機�1837-1913)とJ.P.Morgan�供�1867-1943)の父子である。これまで1世紀を超える長い年月、この二人が合体してまったく一人のJ.P.Morgan像となって人びとの心に焼き付いている。この二人のJ.P.Morganは、その崇拝者からすれば、言ったことを必ず守る堅実な昔気質の銀行家だったが、けなす人々の目には、お金儲けのためには弱い会社をおどし、外国勢力と結託し、アメリカを戦争に引き入れる、偽善者の暴君と映った。13：J.P.Morganの顧客アスター、グゲンハイム、デュポン、バンダビルトら著名一族を顧客とし、それ以下の弱小企業を相手にしなかったから、当然、民衆の間に疑念を呼んだ。また、USスチール、GE、GM、デュポン、AT&Tなど大企業に融資したことから、これあ各社の相談に乗り、銀行の影響力を不当に行使するのではないかとの心配も引き起こした。初期のモルガン財閥は、中央銀行と民間銀行を兼ねた存在みたいなもので、金融パニックを阻止し、金本位制を守り、NY市を三度も破産から救い、金融紛争を調停するほどの力があった。25：メリーランド州ボルチモアのジョージ・ピーボディなる商人が船でロンドンに向かった1835年当時、世の中は債務不履行の危機のさなかにあった。債務不履行の諜報人たる国は、バルカン半島や南アメリカの小国ではなくアメリカ合衆国で、国をあげて鉄道、運河、高速道路の建設に狂奔し、その資金をすべて各州の州債でまかなったからである。そして、いまやメリーランド州議会も他の州と同様に、主にロンドンで売った州債の利払いを滞らせていた。ピーボディは、そうした債務の繰り延べ交渉を任された州の三人の委員の一人だった。27：彼には、貧しかった若かりし頃を蛮勇をもって克服した人々にありがちな高慢なところがあったが、反面、情緒不安定で、いつも世間と反目して被害を妄想するたちだった。彼は、マサチューセッツ州ダンバーズの出身で、学校には2，3年しか通わなかった。十代のとき、父親も亡くした。のちにボルチモアで織物商として成功してからも、苦しかった若い頃のことがいつも頭から離れなかったようだ。もっぱら蓄財と仕事に励み、いつも孤独の顔が見て取れた。43：ロンドンで随一のアメリカ系マーチャント・バンクモルガンにすれば（中略）、「ピーボディが昔からの商会名の継続使用を許してくれなかったのは、生涯で最もひどく落胆させられた事態だった」（J.P.Morgan�供縫献紂璽縫▲后Ε皀襯�ンは、やむなく名前をJ.S.Morgan商会と改めた（この名称は1910年にMorgan Grenfellができるまで存続する）。
2020年01月26日
1960年代のアメリカ
壮大な物語は続き、1967年夏に。アメリカではベビーブーマー達がヒッピーになる一方、1963年11月ケネディ大統領暗殺の後大統領に就任したジョンソン大統領は、「ヴェトナムを共産主義に明け渡した大統領になりたくない」という一心から、ヴェトナム戦争にのめり込んでいく。
1964年に人種差別を禁ずる公民権法は成立したものの、その実現は道半ばで、これまでのやり方を変えたくない南部諸州での白人と黒人の対立は続く。そんな中、非暴力での公民権運動を長年続けてきたキング牧師が遊説先のメンフィスで1968年4月に暗殺される。その夜、アメリカ各地のスラム街で住民の怒りが爆発し、110の市で暴動が起きる。
兄の後を追って、民主党から大統領候補に立候補した弟のロバート・ケネディが遊説先のLAのホテルで暗殺されたのは、その2か月後だ。
ヴェトナム戦争は1955年から1975年まで20年間に渡って続いており、戦争による米軍側（主に米軍と韓国軍）の死者数は約30万人（北ベトナム側は120万人）。最近のアメリカの犯罪による死亡者数は年間約2万人で、ヴェトナム戦争当時の死者数も同等だとすると、20年間で40万人。実は、戦争による犠牲者よりも、国内の犯罪死亡者のほうが多いという不思議な国。
321：ハイト・アシュベリー1967年夏、この界隈はヒッピー・ムーブメントのメッカとして、突如有名になった。高校や大学が休暇に入ると、アメリカじゅうの若者がヒッチハイクでSFへやってきて、ハイト・アシュベリーを目指した。警察はマリファナやLSD、ブエナビスタ公園での野外セックスの横行に目をつぶった。そして、若い女性はだれもがピルを服んでいた。331：ベトナム戦争アメリカ本国ではだれも認めていないだろうが、ヴェトナム人の農民を地雷探査犬の代わりにするのは、そんなに珍しいことではなかった。小径のどこに地雷が埋まっているかを知っていることが、ときにあった。兵士たちには見えない危険信号に気がつくこともあった。それに、たとえ仕掛けに気づかなくても、自分たちの代わりに死んでくれる。347：ウェストモーランド将軍常識を超える行為だった。父親の口を割るためという口実など、どこかへ消えていた。何か知っていたら、娘がレイプされる前に話しただろう。小隊の行いに対する言い訳は尽きていた。手をつけられない状態だった。ウェストモーランド将軍は人間ではない怪物を作り上げ、それを故意に野に放ったのだ。357：リンドン・ジョンソン大統領ジョンソンは外交を見る目がなかった。彼の専らの心配は、戦争に負けて、ヴェトナムを共産主義に明け渡した大統領になりたくないということだった。その結果、戦争にはまりこみ、国民には勝っていると嘘をついていた。438：キング牧師暗殺110の市で暴動が起きていた。ワシントンでは、2万人が警官隊をものともせず、建物に火を放った。ボルティモアでは死者6人、負傷者700人が出た。シカゴではウェスト・マディソン・ストリートが2マイルにわたって瓦礫と化した。
2020年01月25日
ソヴィエト連邦での最高の贅沢
ソヴィエト連邦時代のロシアにかろうじて行ったことがある。1990年の春休み、LBSと交流のあったフィンランドでトップの経済系大学Helsinki School of Economics（現アールト大学）にMBA学生有志で行ったのだ。そして、ヘルシンキからレニングラード（現サンクトペテルブルク）はすぐだからと、10日間ほどの滞在のうち3日間をそこで過ごすことにした。レニングラードまで直線距離で300km、飛行機で1時間弱だ。
前年11月にベルリンの壁は崩れ、共産圏は激動期を迎えていた。ソヴィエト連邦では、ゴルバチョフのペレストロイカが1985年から続いていて、なんとか共産党政権下で改革を成し遂げようとしていたが、どうしたら可能かはゴルバチョフにも分かっていなかったと思う。
依然として外国人旅行者が泊まれるのは外国人専用ホテルだけで、そこにはKGBの見張りが付いていた。市内観光は自由で、エルミタージュ美術館や血の上の救世主教会に行ったりしたが、教会の荒れ果てように共産主義国家であることを認識させられた。
エルミタージュでロシア人女子学生と仲良くなり、「この後どうしたい？」と聞いたら、「外貨ショップ」に行きたいという。米ドルやドイツマルクなど外貨でしか買い物ができない店で、地元学生にとってはバカ高い西側の食料や製品が売られている。そこで、ビールを買い一緒に飲んだ。
街の一般スーパーは品ぞろえが乏しく、売り切れているものも多い。政府の統制価格は安いのだが、それでは品物が流通しないのだ。
「ソヴィエト連邦での最高の贅沢は、金を払わなくてすむことではなく、行列をしなくてすむことだった」
72：フルシチョフはソヴィエト農業を近代化し、生産的にすることに望みをかけ、それに失敗していた。彼は非効率と、無知と、要領の悪さを大仰に非難したが、そういう問題を改善できなかった。85：ソヴィエト連邦での最高の贅沢は、金を払わなくてすむことではなく、行列をしなくてすむことだった。147：東ドイツに住んでいる人々は、人生の半分を、政府が何を計画しているか、何を欲しているか、何を考えているかを推測することに費やしていた。この体制は予測がつかなかった。
547：閉鎖された社会では、真実を知るのは不可能に近かった。ロシア人は嘘ばかりつく。ソ連では、ほとんどすべての書類に嘘があった。生産高、外交政策評価、警察による被害者の尋問、経済見通し。人々は陰で、新聞で唯一本当のことが書いてあるのは、テレビ欄とラジオ欄だけだとささやいていた。
2020年01月24日
迷信・誤信はどうして生まれるか
世の中には、迷信や誤信が溢れている。「それらが人間のどのような心理から生じるのか、なぜ信じ続けられるのか」を解説したロングセラー。
どんな人にも大なり小なり偏見があり、それは個人的な体験や嗜好に基づいていることが多い。話をしていて、「それはおかしいだろう」と思うことは毎日のようにあるが、大抵は、実害がない限り、曖昧な相槌で流されていく。
どんな人にも大なり小なり偏見があり、それは個人的な体験や嗜好に基づいていることが多い。話をしていて、「それはおかしいだろう」と思うことは毎日のようにあるが、大抵は、実害がない限り、曖昧な相槌で流されていく。
・偏りの錯誤人はランダムな事象の配列を正しく認知できず、偶然生じた偏りや連続を見て規則性があると信じがちである。・ある仮説に関する情報を評価するとき、仮説に合致する事例を重視したり、そうした事例だけを探したりする傾向。そのため、正しい評価ができない。・自分自身について過大評価しがち自分に都合がよい結論を導くために、自分勝手な基準を用いて自分の能力を評価する。・話が人から人へと伝えられる時、そのまま伝えられることはほとんどない。それは、話し手が、聞き手に細かいことを伝えて負担をかけるべきではないと考え、話を単純化するため。・人は、話をより面白く有益なものにするために、密接性（話が身近な感じ）を高めることがある。例えば、誰かに起こった出来事を、自分に起こった出来事として話したりする。・人は、自分が持つ意見や信念が、実際以上に社会に支持されていると考える。そのことが、他人の意見や信念を正しく推測することを難しくし、誤信を生み出す原因となっている。・見解の相違を表明することは、嫌われることにつながりかねない。人はそう考えるため、意見の不一致があっても、ほとんど表明しない。そのため、人々が持つ信念や考えは、健全な批判によって正しく修正される機会を失ってしまう。
2020年01月23日
なぜルールに従わない人が成功するのか
著者はHBSの若手教授で、「40歳以下のトップ・ビジネス・スクール教授40人」や「世界で最も影響力のある経営思想家50人」などに選出されている。
「新奇性」を保つため、米国のファストフードチェーン「パルズ・サドン・サービス」で実施されている方法が、コロンブスの卵。簡単で効果がある。
パルズはじめ、ファストフード店では、作業が高度に標準化されている。新米バイトがやってきてもすぐに働けるようにだ。誰でもできるようにすることで、人件費も安く抑えられる。だが、標準化された作業を続けると退屈する。退屈すると作業効率は落ちるし、退職にもつながる。
パルズが編み出したのは、「社員は出勤するまで、その日担当する業務の順番を知らない」というやり方。月曜日の最初の業務はシェイクの調理で、次がフレンチフライかもしれない。火曜日はビスケット調理の後、注文配達かもしれない。
たったこれだけのことで、社員は何も考えずに作業をする「自動操縦状態」に陥りにくくなり、意欲をもって仕事に取り組もうとするという。パルズの業績は、マクドナルドやバーガーキングをほとんどの指標で上回っている。
＊ルールを破って創造的に生きる人たちの共通点・反逆者がイノベーションを生む足かせとなるルールを臆せずに破り、世間の常識に異を唱え、斬新な方法を見つける。�／郡饑�：手ごわいことや新しいことに飛び込む新規性は仕事満足度、創造性、パフォーマンスを高める。��好奇心：子どものように、常に「なぜ？」と問いかける好奇心は現状にとらわれがちな傾向を打破する。�５甸兒襦Г發里慮�方を常に広げ、他者の視点で世界を捉える客観視は、課題や意思決定に取り組む際に、自分の世界ものの見方を打破する。�ぢ人誉�：お仕着せの社会的役割に異を唱え、自分と違う人たちを求める多様性は、人間の本能に深く染みついているステレオタイプを打破する。�サ兇蠅里覆機Э佑箸弔覆�り、人から学べるように、常に心を開き、自分の弱さをさらけ出す自分を偽らないことで、自分の感情や信念を素直に表せる。・反逆者がもつ5つの特性は、すべて「意欲」につながる仕事に真剣に取り組み、困難な状況でもへこたれない。自分のやることに情熱を感じ、周りの人たちを奮い立たせる。
2020年01月22日
「自分らしさ」を貫くリーダーシップ
![オーセンティック・リーダーシップ (ハーバード・ビジネス・レビュー [EIシリーズ])](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41GIT2-P9YL._SL160_.jpg)
この半世紀、リーダーシップの研究者は1000以上の調査研究を実施して「これが一流のリーダーである」と言えるスタイル、特性、資質を探ろうとしてきたが、「これぞ」という理想のリーダー像は見いだせなかったという。
継続的に結果を出せるリーダーが必要だが、そのためのリーダーシップのスタイルは一つではないのだ。結局のところ、「自分らしさを貫くリーダーになる」ということが、答えということになる。
「オーセンティック（自分らしさ）を貫くリーダーは、目標に情熱的に取り組み、自らの価値観をぶれることなく実践し、知識だけでなく感情の面からも人びとを引っ張っていく。実りある人間関係を築き、自らを律することで結果を出す。それもこれも、自分自身をよく知っているからだ」（ビル・ジョージ）
継続的に結果を出せるリーダーが必要だが、そのためのリーダーシップのスタイルは一つではないのだ。結局のところ、「自分らしさを貫くリーダーになる」ということが、答えということになる。
「オーセンティック（自分らしさ）を貫くリーダーは、目標に情熱的に取り組み、自らの価値観をぶれることなく実践し、知識だけでなく感情の面からも人びとを引っ張っていく。実りある人間関係を築き、自らを律することで結果を出す。それもこれも、自分自身をよく知っているからだ」（ビル・ジョージ）
●「自分らしさ」を貫くリーダーシップ・オーセンティックを貫くリーダーは、自分自身をよく知っている。ゆえに自らの価値観をぶれることなく実践し、感情の面から人々を引っ張る。・こうしたリーダーになる方法自分史に学ぶ：自分の半生における様々な経験を理解し、意味を与えることで、なすべきことを見つける。自己認識力を伸ばす：本当の自分を知るため、自らの過去を調べる。すると、自分の弱さを認められるようになる。価値観を体現する：自らの信念から生まれた価値観を、行動によって表す。外発的動機よりも内発的動機に注目：高いモチベーションを維持するために、自分を動かす動機を理解する。応援団を作る：優れたリーダーは、進むべき道を踏み外さないように支援してくれる優秀なチームをつくる。不安な時にはアドアイスを、苦難の時には支援を、成功の時には祝福を与えてくれる。●「自分らしさ」を保つ工夫・マインドフル・リーダーシップ目の前の瞬間に注意を向け、自分の感情を認識し、コントロールするための訓練。・内省瞑想や日記執筆で訓練。重要なのは、リーダーとしてのプレッシャーから身を離し、起きていることを振り返るための時間を毎日設けること。●オーセンティック・リーダーシップの弊害・リーダーの資質に欠ける者が、自分に正直であることを間違った行動の言い訳にする。・正直さ重視の罠に陥らないために、同僚に話を聞くなどして、自分がどんな人間であるかを見つめることが大切。�ー�分がどう見られているかを知る��一人だけの場所で反論する�Ｊ未諒�法・態度・言葉遣いを考える�ず僂鵑世海箸魎袷瓦暴�わらせる�ゼ最圓離灰好箸魄�き受ける
2020年01月21日
現代の「死に至る職場」
2016年、Uberのエンジニアだったジョゼフ・トーマスは銃で自殺した。父親と妻は職場のストレスが原因と非難している。実際、同社では多くの社員が「パニック発作、薬物乱用、抑うつ症状、ストレスが原因の入院」を経験しているという。その後に発覚し、創業者の退任につながった社風を考えると、納得する。
GEの元CEOジャック・ウェルチが推奨して有名になったスタックランキング・システム（従業員の強制的な順位付け）はよくないという。これは相対的な人事評価手法で、上位20%をA、下位10%をC、その中間をBという具合に評価し、さらにその中で細かくランク付けをする。下位評価の従業員には、まず警告が、それが続けば退職勧告される。
当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったGEのウェルチが推奨するものだから、これを採用した企業は多い。マイクロソフトも導入したが、これが「マイクロソフトの失われた10年（2000-2009)」の原因になったと批判されている。2012年に新CEOに就任したサラト・ナデラが2013年に廃止している。社員同士の足の引っ張り合いが激化し、協力が減ったのが理由だ。
＊長時間労働をはじめ、職場環境のストレスにより心身を病み、自死するホワイトカラー健康な職場にするための指針。●仕事のストレスは、国や職業、社会的地位に関係なく生じる職場のストレス要因の中で、特に問題になるのは、低賃金、シフト勤務、仕事の裁量。●健康な職場に必要不可欠仕事の裁量：仕事の裁量の余地が大きい人ほど、健康状態が良好。ソーシャルサポート：困った時に同僚や家族、親友が助けてくれる。●悪しき労働環境と経営慣行を改善するための原則�―抄醗�の健康と幸福を計測する�◆崋匆馘�公害企業」を公開する（�，猟敢嵯覯未鮓�表することで改善が期待できる）�Ｉ蕕粒杏�効果を明らかにする（企業が、社会など外部に押し付けているコストがどの程度かを追跡・補足する政策）�し鮃�と利益は両立する�タ祐屬了�続可能性を優先する
2020年01月20日
たった一人の分析から事業は成長する
筆者はスマートニュースのマーケティング担当執行役員。新卒後、P&G、ロート製薬、ロクシタン・ジャポン代表取締役で、一貫してマーケティングの専門家として活躍している。
商品やサービスの多くは「特定の誰か一人を喜ばせること」が起点になっている、という。商品開発の際に行う「ペルソナ分析」にも共通する。数字だけを相手にしていてはアイデアが膨らむことはないのだ。
購買行動に直結している理由とは、その顧客が「購入しているブランドが自分にとって特別な便益をもたらしてくれる」と心理的に認識するに至ったきっかけだが、ほとんどの場合、一人の顧客の真理を変えるきっかけは一つに集約されるという。
＊画期的なアイデアは、一人の顧客を深堀する「顧客起点マーケティング」から生まれる●顧客起点マーケティング一人の顧客の意見を聞いて、その顧客を徹底的に理解し（N1分析）、人の心を動かせる商品・サービスの魅力や訴求（アイデア）を見つける概念。●定量的調査アンケート調査や統計分析は、仮説の絞り込みやコンセプトの検証には有効。だが、人の心に訴えて行動を起こしてもらうだけの強度のあるアイデアはつかめない。●顧客ピラミッド顧客を5分類する「５セグマップ」のフレームワークロイヤル顧客・一般顧客・離反顧客・認知未購買顧客・未認知顧客セグメントごとにN1分析を行い、アイデアを開発し、打ち手を検討する。●N1分析顧客の購買行動を左右している根本理由を見つける。それは、多くの場合、顧客自身も明確に意識していないもの。ロイヤル顧客：ブランド認知・使用意向・購買意向をもったきっかけを時系列で聞き、現在使用の実態・満足・不満足、競合ブランドへの認識、好きな点と嫌いな点などを聞く。一般顧客：同様に聞いて、ロイヤル顧客とのギャップがどこにあるか、そのギャップが生まれた原因を探る。認知・未購買顧客、未認知顧客：まずブランドの説明を行い、プロダクトアイデアやコミュニケーションアイデア自体に魅力を感じないのか、単に伝わってないだけなのかを確認する。さらに、ロイヤル顧客が評価している商品の良さを話して反応を見れば、どんなきっかけを提供すれば顧客化するかの可能性が見える。●マーケティング上最も重要なのは「独自性」と「便益性」アイデアが、「独自性」（他にはない特有の個性）と「便益」（顧客にとって都合がよく、利益のあること）を兼ね備えているかどうか。●顧客ピラミッドを基に顧客分析「行動データ」と「心理データ」の両面を分析する。行動データ：POSデータ、Eメール開封率、返信率など心理データ：顧客の頭の中にある認知やイメージ、態度など●N1分析の際、思わず驚く、信じがたい事実それがアイデアの手がかり。ここから独自性を抽出し、そこから得られる便益を明示する。
2020年01月19日
宋建国
『水滸伝』は北宋（960-1127)末期の、政治腐敗が進んだ宋に対して梁山泊が反乱を起こし、これを打倒する話。弱体化した宋は南に遷都し、南宋となる。
この『水滸伝』に登場する武将の一人が青面獣と言われた楊志。宋の暗殺隊の策にかかって壮絶な最後を遂げる（北方版）。楊志は宋建国の英雄「楊業」の子孫ということになっている。
本書は、時代を遡って、宋建国時における楊家の活躍を描く。楊家は中原の北部、代州を本拠とする軍閥。北漢に仕えていたが、楊家の持つ軍事力に疑心暗鬼となった北漢朝廷に裏切られ、やむなく中原の統一を目指していた宋に着く。北漢は亡びたが、依然として北には契丹族の遼があり、燕雲十六州も遼に支配されたままだ。楊家は外様武将として、中原を窺う遼との断続的な戦争の常に先鋒を任されることになる。
この話、どこまでがフィクションで、どこまでが史実なのか？
まず、楊業は実在の人物で記録が残っている。北方『楊家将』では、北韓に裏切られたため北韓を見限って宋に帰順するが、歴史書では北韓が宋に降伏した後も抵抗を続けていたが、北韓君主の降伏勧告で宋に下ったという。
北方『楊家将』では遼との戦いで戦死することになっているが、歴史書では、長男を戦闘で失うものの、本人は遼軍の捕虜になったのち、病死したようだ。
『水滸伝』に登場する楊志はフィクションのようだ。
11：七郎の母は延平と三郎の母の呂氏の使用人で、呂氏の死後に父が手をつけ、自分が生まれたのだという。余賽花は、六郎や八郎、九妹の実母である。121：本隊の兵糧を奇襲で焼くというのは、耶律休哥とだけ話し合っていたことだった。そのため、糞尿の始末をする人夫として、二百名ほどを潜り込ませてあり、扱う壺の五つに一つは油が入っていた。三十万近い軍では、糞尿の量も大変なものである。193：七郎「宋軍は、統一間もないというのに、すでにどこか腐りはじめています、兄上。曹琳と潘仁美の対立など、滅び行く国のそれのような気が、俺はしました」
2020年01月18日
平成の八つ墓村
「つけびして 煙り喜ぶ 田舎者」
容疑者の家に貼られた貼り紙。これは当初、犯人による事件の犯行予告と思われていたが、そうではなかった。「事件の数年前に、河村さんの家の風呂場でボヤ騒ぎがあり、その直後に貼られたのだ。そして、その犯人は『ワタルじゃない』。確信をもって皆が言うのである」
「平成の八つ墓村」とも言われた2013年7月に山口県の限界集落で起こった5人の殺害、2軒の放火事件。犯人の保見光成は6日後に山中に潜んでいるところを逮捕され、今年最高裁で死刑が確定した。
その事件を発生以来長年に渡って取材してきたフリーライターによる「事件の真相」とは。筆者の言うように、事件を「消費」するだけでは進歩がない。こうした丹念な調査と考察が必要だろう。
22：夜這い山口県は民俗学者・宮本常一の出身地でもある。こうなったら宮本常一になりきって、村人たちに聞き取りを行おう。これはすでに滅びた日本古来からの風習を探るフィールドワークなのだ。43：1938年「津山30人殺し」日本の限界集落で、周囲に馴染めないひとりの男が突如として村人たちを殺害してまわる・・・・・たしかにふたつの事件は似ている。。津山事件の犯人は、当時21歳だった都井睦雄。匕首と日本刀、9連発ブローニング猟銃を携え、自宅で祖母の首を刎ねたのを皮切りに、わずか一時間半の間に30人を殺害し、近くの山で猟銃自殺した。山中へ逃げた保見光成は自殺まではしなかったが、このふたりが、自らも暮らす集落の人々に対して、強い嫌悪感を抱いていたことは共通している。57：Uターンハイワタルは自作の新宅を皆の新しい拠点として、郷集落を盛り上げようと希望に胸を膨らませていたが、真っ暗な村に一軒だけネオンが輝くさまは不釣り合いであり、浮いていた。そしてワタル自身も、まず信頼関係を築く前に、近代的な家の設備で村人たちを呼び寄せようとしたことが裏目に出た。62：Uターン都会から戻ってきた若者（と言っても、すでにこのとき40代半ばだったが）なのに、年長者たちに礼を言わず、集落の仕事にも参加をしない。川崎・稲田堤に住んでいた時とは違う尊大な態度のワタルに、郷集落の村人たちは距離を置いていった。79：限界集落8世帯12人のうち、65歳未満のものは保見の他に２人しかいなかった。（2019年4月 5世帯8人）129：集落自体の異常さワタル一家が「盗人の家」と郷集落の中で囁かれていたように、周辺集落からは、郷集落自体が、白い目で見られていたのだった。175：SNS「つけび」の貼り紙は不気味な犯行予告だった、ワタルが村八分にあっていた、といったうわさも、取材してみるとそうではなかった。SNSを眺めていると、彼らにとってそれが真実かどうかは、さして重要ではなく、事件という「祭り」を消費しているように見えてくる。結局のところ、第三者にとっては事件はエンターテインメントであり、消費すればすぐに忘れられてしまうものなのだ。218：金峰地区の生き字引・田村勝志さん「氏神様のことで喧嘩をしたり文句を言ったり、神主の悪口を言ったり、氏神様の氏子を外れるちゅうて駄々をこねたりするのは、すべて、今回の事件で死んでいる。今考えてみると氏神様ちゅうのは力が強かったんやなと思うよ」279：責任能力「何をもって判断するかは明確には定められていない」社会的に大きく報じられた大量殺人を犯した被告人は、完全責任能力を認められてしまう傾向。292：妄想性障害彼が戻ってくる前から、村にはうわさが漂い続け、また彼が「嫌がらせ」を受けていると感じても致し方のないような出来事が起こっていた。両親を看取ったのちに、ひとり暮らしとなったワタルは、その空気の中で孤独を深めるとともに、妄想性障害を進行させた。
2020年01月17日
ど真剣に生きてみろ
東京だと少し違うと思うが、香川県の真面目な経営者に圧倒的人気だったのが「盛和塾」。京セラを世界的な企業へと育み、第二電電を設立し、JALの再生に成功した、希代の名経営者・稲盛和夫氏の経営哲学を稲盛氏から直接学ぶ会である。残念ながら、稲盛氏が高齢になり(88歳）昨年末で解散した。支部の数は国内56塾、海外44塾、塾生数は13,832名というから、一経営者の私塾としては空前絶後だろう。
私も何冊か稲盛氏の本を読んでいるが、技術者らしいち密な管理会計制度に基づく経営システム（アメーバ経営）と、独立採算による弊害をなくし、全体最適にするための価値観の共有（フィロソフィ）との融合が素晴らしい。京セラは創業から60年に至る今日まで一度も赤字を出したことがない、というのは驚異的だ。
稲森氏の人生は、決して順風満帆だったわけではなく、青年時代はツキに見放されていた。「旧制中学の受験に2度失敗し、大学受験も志望校は不合格。就職でも希望した会社に次々と断られた。見かねた大学の教授が紹介してくれた京都の松風工業も、倒産寸前の会社だった」という。
しかし、松風工業でセラミック材料と出会い、この開発に独りで成功する。2年後、セラミック真空管の制作に取り組んでいる時、新任の技術部長が暴言を吐く。
「君では無理やな。うちには京大卒の技術者もようけおる。ほかの者にやらせてみるわ」
この一言に堪忍袋の緒が切れた稲盛は、辞表を叩きつける。彼を慕う仲間が合流し、創られたのが京都セラミック株式会社。後の、京セラだ。
・「義」を大切にした郷中教育三つの戒め：負けるな、嘘をつくな、弱い者いじめをするな・西郷隆盛の影響経営の意思決定「動機善なりや、私心なかりしか」・成功という「試練」成功した結果、地位に驕り、名声に酔い、財に溺れ、努力を怠るようになっていくのか、それとも成功を糧に、さらに気高い目標を掲げ、謙虚に努力を重ねていくのかによって、その後の人生は天と地ほどに変わってしまう。つまり、天は成功という「試練」を人に与えることによって、その人を試している。
2020年01月16日
結婚不可欠社会→結婚不要社会
著者は、中央大学文学部教授にして、「婚活」という言葉の発案者。「婚活ブーム」の火付け役となった。
山田教授の最初の新書『結婚の社会学』(1996)で、結婚が減っている原因について指摘している。� 崔砲六纏�、女は家庭」という従来型の結婚に拘っている。
�⇔�愛が活発化し、一人に決められなくて結婚を先延ばしにする。
90年代以前は「恋愛したら結婚して当然」というのが社会的風潮だった。つまり、性関係をもつには結婚を前提としていたのに対し、90年代になって「恋愛と結婚は別」というスタイルが増えてきたという。
今、「近代的結婚」が終わりつつあるという。結婚は、「文化や時代によって形態が変わるだけでなう、その意味や機能も異なる」。北西ヨーロッパやアメリカでは100-200年前、日本では60-70年前に、「近代的結婚」に移行した。そんなに古い話ではないのだ。
近代社会の最大の特徴は「個人化」で、前近代社会のように、伝統的宗教やコミュニティがアイデンティティを保証してくれるわけではない。そのために実在主義哲学者が言う「存在論的不安」や「実在的不安」が生じる。そうした不安を解消するために、自分を承認してくれる相手を見つける必要が出てきた。近代社会は「結婚不可欠社会」なのだ。
欧米でも日本でも終わりつつある「近代的結婚」だが、その方向性は違っている。欧米社会では、「パートナーがいないとみっともない」という意識があるので、結婚はしないが、事実婚や同棲という形態をとる。日本では、パートナーがいないとみっともないという意識がなく、「親密性」を買うことに抵抗がない。母親や（娘の場合）同性の友達やペットで親密性を満足させるのだ。
＊日本において、結婚は困難になると同時に不要になる●近代社会では、伝統的規範が緩み、「個人化」が進んだ・前近代社会では、男性は家業を継ぎ、イエのために結婚。家業が衰退した近代社会では、職業選択の自由が生まれ、仕事を自分で見つけなければならなくなった。・かつては、伝統的宗教やコミュニティが人々のアイデンティティを保証。近代社会では、それらが衰退し、自分を承認してくれる相手を自ら見つける必要がある。●近代化が結婚にもたらしたのは「個人の選択」結婚によって親から独立する傾向が強まり、夫婦は経済的に独立した単位であると同時に、アイデンティティの源泉。●今日、個人化・自由化のトレンドはさらに深まる・ニューエコノミーの進展で男性の雇用が不安定化し、夫の収入だけで妻子を養うことが困難に。・「性革命」により、性関係を楽しむために結婚する必要がなくなった。結婚が親密な関係の永続を保証しなくなった。●先進国は「結婚不要社会」に欧米：結婚せず、事実婚や同棲でパートナーとの親密感を満たし、経済はそれぞれ自立。日本：パートナーがいなくても経済的にやっていける仕組みや、親密性を満足させる仕組みがある。
2020年01月15日
今すぐSNSを削除すべき10の理由
FBヘビーユーザーの私がいうのもナンだが、SNSの危険性はあると思う。ただ、友達と連絡を保つのにこれ以上便利な仕組みもないわけで、要は、危険性を意識して、SNS側の思うつぼに入ることなく、適切な使かい方をすることなのだろう。
筆者は、コンピューター科学者であり、VR研究の大家らしい。UCBerkeley起業家・技術センター（CET)客員教授。YouTubeなどでの「バイトテロ」などウケ狙いの投稿を見ると、「�｜輒椶鮟犬瓩襪海箸貿�中させ、最低の人間を蔓延らせる」と認識せざるを得ない。
「シリコンバレーで働く私の知人の子どもたちの多くは、子どもの自主性を尊重するシュタイナー学校に通っている。そこでは、電子機器の使用を禁じている」
「シリコンバレーで働く私の知人の子どもたちの多くは、子どもの自主性を尊重するシュタイナー学校に通っている。そこでは、電子機器の使用を禁じている」
＊ソーシャルメディアの問題点、恐ろしさ・ソーシャルメディアは人と人、人と社会の関わり方を変え、生産性を低下させる子供の脳への影響も心配される。・BUMMER(Behaviors of Users Modified, and Made into an Empire for Rent)ユーザーの行動修正を売り物とし、使用料をとって一大企業帝国を築くシステム。今のデジタル広告企業は、個々のユーザーの行動を評価し、配信する情報に、行動を変えさせるための微調整を施す。・BUMMERの特性�｜輒椶鮟犬瓩襪海箸貿�中させ、最低の人間を蔓延らせる�⊃諭垢寮験茲魎道襪垢���コンテンツを無理やり押し付ける�た諭垢鯀狃弔掘△任�る限り不快な行動をさせる�グ�意ある誰かが人々を操るのを手助けして、利益を得る�Φ曲�の暴徒ともっと偽物の社会を形成する・「心の理論」が奪われる心の理論：自らの体験をもとに、相手を理解する能力尊敬や共感などの感覚の核。BUMMERの世界では、他者が何を見ているのかわからず、互いを理解する機会が少なくなっている。
2020年01月14日
行政が起業を増やすのに何が出来るか？
香川県が来年度予算で県内でのICT起業を増やしたいというので、面談。サンポート高松に、e-とぴあ「情報通信交流館」という施設があるのだが、ここを改装してICT人材育成、コワーキング、ビジネスマッチングの一貫した拠点にするという構想。
この施設には研修やイベントで何度か行ったことがあるのだが、ICT系の講座をやっているという以外、何のために存在して、どれだけ役に立っているかよく分からなかった。年間予算は約2億円のようだが、県が持つフロアなので、これには家賃が入っていない。県内で一番高いビルだから、高額な機会費用が掛かっているのは間違いない。
香川県の情報産業比率は低く、GDPの9.5%ほど。県としては、ここの成長機会があると考えているらしい。付加価値も付けやすく、優良な雇用を生めると期待している。
私から話したのは、以下の４点。
前提：過去に行政の施策で起業率が改善した例はない
これまでに各国で実施された調査では、日本で起業が少ないのは、そもそも「起業が選択肢に入っていない」からで、起業したいと考えている潜在的起業者の中から実際に起業した比率は諸外国と変わらないことが分かっている。では、「起業を選択肢に」まで変えるとすると、「不確実性回避傾向が強い国民性」など社会的特性が関わる話なので、一地方自治体どころか国でも難しい。起業に向いてない人に無理にやらせると、悲劇にしかならない。
それでも、潜在的な起業家が一人でも多く起業して、イケているベンチャー企業が5社、10社と県内で増えるのであれば、やってみる価値はある。各社が5-10人の幹部社員を雇用したとして、うまくいけば、100名程度の高付加価値雇用が生み出せる。平均年収1000万円として、年間10億円の直接効果。
１．行政による硬直的な事業の仕組み
では、どうやるか？施策はじっくり考えるとして、これまで日本中で失敗が繰り返されてきたのは、行政独特の仕事のやり方に問題がある。�〕住三討�出る、��議会で承認される、��実施される、という流れ自体は民間とそう変わらない。問題は、�，芭�派な政策立案がされ、�△任海譴泙仁�派な予算が通るのだが、初めてやる施策が計画通りいくわけがない。これまで何万回と繰り返されてきた、道路や橋を作るのとは訳が違うのだ。
民間企業なら、事前調査でニーズを確認することは当然として、それでも、小さくスタートして試行錯誤しながらPDCAを回していく。イケルという確信が持てれば期の途中であっても追加予算を得て勝負をかけることもあるだろうし、ダメなら即時撤退もあり得る。ところが、行政では、一旦予算施行されると、変更が難しい。2-3年後には立案者は担当を外れているし、上手くいっても行かなくても、報酬にはほとんど影響がないので、長期にわたる一貫した事業改善ができない。
２．トップが大事
この施設は、いわば、インキュベーションセンター。成功するかどうかは、それにふさわしい知識と経験を持った人が、どれだけの情熱を持って当たれるかに掛かっている。運営者は「指定管理者」として法人が募集されるらしい。指定管理者になる法人が、トップに誰を選ぶかだが、県が本気でやりたいなら、直接トップを探すべきだろう。その上で、運営者に一定期間の幅広い裁量権を認めなくてはならない。
３．支援団体の重複
最近はベンチャー支援ブームと言っていいほど、支援策のメニューだけは充実してきた。しかし、国も中小企業基盤整備機構(経産省）を中心にやっていれば、県も市町村もという感じで、窓口が分かれてしまっている。やっている内容も、インキュベーション施設だったり、研修会だったり、専門家による相談窓口だったりとほぼ似通った内容で、ムダが多い。一本化するか、施設ごとの役割分担を明確にしたほうがいい。
この施設には研修やイベントで何度か行ったことがあるのだが、ICT系の講座をやっているという以外、何のために存在して、どれだけ役に立っているかよく分からなかった。年間予算は約2億円のようだが、県が持つフロアなので、これには家賃が入っていない。県内で一番高いビルだから、高額な機会費用が掛かっているのは間違いない。
香川県の情報産業比率は低く、GDPの9.5%ほど。県としては、ここの成長機会があると考えているらしい。付加価値も付けやすく、優良な雇用を生めると期待している。
私から話したのは、以下の４点。
前提：過去に行政の施策で起業率が改善した例はない
これまでに各国で実施された調査では、日本で起業が少ないのは、そもそも「起業が選択肢に入っていない」からで、起業したいと考えている潜在的起業者の中から実際に起業した比率は諸外国と変わらないことが分かっている。では、「起業を選択肢に」まで変えるとすると、「不確実性回避傾向が強い国民性」など社会的特性が関わる話なので、一地方自治体どころか国でも難しい。起業に向いてない人に無理にやらせると、悲劇にしかならない。
それでも、潜在的な起業家が一人でも多く起業して、イケているベンチャー企業が5社、10社と県内で増えるのであれば、やってみる価値はある。各社が5-10人の幹部社員を雇用したとして、うまくいけば、100名程度の高付加価値雇用が生み出せる。平均年収1000万円として、年間10億円の直接効果。
１．行政による硬直的な事業の仕組み
では、どうやるか？施策はじっくり考えるとして、これまで日本中で失敗が繰り返されてきたのは、行政独特の仕事のやり方に問題がある。�〕住三討�出る、��議会で承認される、��実施される、という流れ自体は民間とそう変わらない。問題は、�，芭�派な政策立案がされ、�△任海譴泙仁�派な予算が通るのだが、初めてやる施策が計画通りいくわけがない。これまで何万回と繰り返されてきた、道路や橋を作るのとは訳が違うのだ。
民間企業なら、事前調査でニーズを確認することは当然として、それでも、小さくスタートして試行錯誤しながらPDCAを回していく。イケルという確信が持てれば期の途中であっても追加予算を得て勝負をかけることもあるだろうし、ダメなら即時撤退もあり得る。ところが、行政では、一旦予算施行されると、変更が難しい。2-3年後には立案者は担当を外れているし、上手くいっても行かなくても、報酬にはほとんど影響がないので、長期にわたる一貫した事業改善ができない。
２．トップが大事
この施設は、いわば、インキュベーションセンター。成功するかどうかは、それにふさわしい知識と経験を持った人が、どれだけの情熱を持って当たれるかに掛かっている。運営者は「指定管理者」として法人が募集されるらしい。指定管理者になる法人が、トップに誰を選ぶかだが、県が本気でやりたいなら、直接トップを探すべきだろう。その上で、運営者に一定期間の幅広い裁量権を認めなくてはならない。
３．支援団体の重複
最近はベンチャー支援ブームと言っていいほど、支援策のメニューだけは充実してきた。しかし、国も中小企業基盤整備機構(経産省）を中心にやっていれば、県も市町村もという感じで、窓口が分かれてしまっている。やっている内容も、インキュベーション施設だったり、研修会だったり、専門家による相談窓口だったりとほぼ似通った内容で、ムダが多い。一本化するか、施設ごとの役割分担を明確にしたほうがいい。
2020年01月13日
公民権運動
冷戦の時代に並行してアメリカで起こっていたのが「公民権運動」。アメリカは民主主義を世界に説きながら、自国内では南部諸州で人種差別を続けていた。これを是正しようと、アフリカ系アメリカ人を中心に新たな公民権法を制定しようとする運動が起きる。
リベラルなケネディ大統領の人気は南部諸州を中心に落ちる。1964年の再選が危ぶまれたケネディ大統領は人口が多く、投票人の数も多いテキサスに向かう。そして、1963年11月にダラスで悲劇が起こる。
ケネディ大統領暗殺を受けて、飛行機の中で宣誓をして大統領に就任したのはテキサス州出身のリンドン・ジョンソン副大統領。
公民権運動を描いた映画としては、「ミシシッピ・バーニング」が良かった。
406：アラバマ大学アメリカ合衆国で最後の、白人学生しかいない州立大学だった。6月11日火曜日、二人の若い黒人がタスカルーサのキャンパスへやってきた。学生登録をするためだった。小柄なジョージ・ウォーレス州知事が、大学の入口の前で両腕を組み、脚を踏ん張って立ちはだかっていた。513：バーミンガム日曜学校爆弾攻撃事件「過去8年で、バーミンガムではこれを含めて21回の爆弾事件が起きています。市警察はどの爆弾事件においても、一人の犯罪実行者も裁きの場へ引き出すことに成功していません」523：大統領選挙まで1年といういま、JFKの人気が失われはじめていた。兄弟は特にテキサスを心配していた。1960年にはその州を制していたが、それは副大統領のLBJがテキサスで人気があったおかげだった。残念なことに、リベラルなケネディ政権とともにあった3年が、ジョンソンに対する保守的な実業界のエリートの信頼を破壊しようとしていた。580：LBJの弱点・あまり頭がよくない「テキサス・スカンクみたいに狡猾だが、それは頭がいいのと同じではない。彼が卒業したのは教員養成大学で、抽象思考を学んでいない。われわれのような、ハーヴァードで教育を受けた者に劣等感を持っている。そして、それは正しい。彼は国際政治の何たるかをよくわかっていないんだ。中国人、仏教徒、キューバ人、ボルシェヴィキ―そういう連中の思考方法はさまざまに異なっているが、リンドンはそれを絶対に理解できないだろう」・倫理面「あいつには主義がない。公民権を支持しているのは腹に一物あってのことではないが、倫理面から指示しているわけではない。弱者としての有色人種に同情しているんだ。そして、貧しいテキサスの一家の出であるが故に、自分も弱者だと見なしている」
2020年01月12日
キューバ危機
世界が最も第三次世界大戦＝全面的核戦争に近づいたと言われる「キューバ危機」。1962年10月16日、ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設していることが、米軍の偵察機U-2によって確認される。キューバに核ミサイルが配備されれば、アメリカの主要都市は全て攻撃対象になる。発射して10数分で着弾するので、これを打ち落とすのは困難だ。
アメリカはカリブ海で、キューバの海上封鎖を実施。ミサイル基地を完成させるための資材や核ミサイルの上陸を阻止しようとする。一方、既に上陸していたソ連軍は米軍の偵察機を地対空ミサイルで撃墜し、一触即発状態になる。
結局は、それから13日後にフルシチョフが核ミサイル配備を諦め、キューバに向かっていた船舶をUターンさせたことで解決するのだが、そのためにアメリカは�．�ューバに侵攻しないという確約と、�▲肇襯海貿枷�されていた核ミサイルの撤去を約束させられる。
映画「13デイズ」は、このキューバ危機を扱った映画で、よくできていた。
12：キューバ危機もし戦争になったら、アメリカは核の抑制を解き放ち、ソヴィエト連邦の大都市を一つ残らず廃墟にする。数百万人が死に、ロシアは百年のあいだ、立ち直れないだろう。39：フルシチョフ第一書記「われわれはミサイルを引き上げるが、それと引き替えに、われわれがこれまで欲していた要求をアメリカに呑ませる。キューバに侵攻しないという確約だ」60：ケネディ大統領大統領はいかなる意味でも女性を選り好みしなかった。まさにその正反対で、成熟した女性もティーンエージャーも、ブロンドもブルネットも、彼と同等の社交界の淑女も、頭が空っぽのタイピストも、同じように好んだ。93：ホワイトハウス短気な将軍は戦争を欲して逸り立っている、CIAの連中はジェイムズ・ボンドになろうとしている、大統領は慎重に状況を見極めようとしているのに、メディアは彼が何もしないと文句を言い立てている。
2020年01月11日
東西冷戦の時代
1960年代、世界はアメリカを中心とする資本主義陣営とソ連を中心とする共産主義陣営との冷戦の真っ只中。
東ベルリンの中学教師レベッカ。ハーバード大学ロースクールを出て、ワシントンDCで唯一の黒人弁護士として司法長官補佐官を務めるジョージ。モスクワ大学を首席で卒業して、フルシチョフ第一書記の補佐官を務めるディムカ。
1961年の世界各地で、それぞれ関係なく物語は始まるが、それがだんだんと絡んでくる。やはり、国際政治を舞台にした話では、英米作家が上手い。著者Ken Follettは1949年ウェールズ生まれ。新聞記者、出版社勤務を経て、小説家。
「激動の20世紀を背景に壮大なスケールで描く大河ロマン」
15：東ベルリン学校は絶対的な教員不足に陥っていた。半数が西ドイツへ逃げ出したからである。そこでは月給が300マルク多かったし、自由もあった。その事情は、東ドイツの大半の学校で同じだった。不足しているのは教師だけではなかった。医師も西ドイツへ行けば収入が倍になった。179：フリーダム・ライドの参加者は襲った者たちは誰一人逮捕されなかったし、現地警察もFBIも、あれほど多くの暴力的犯罪が行われたにもかかわらず、一切の捜査をしなかった。1961年のアメリカでは、警察が見ているところで白人人種差別主義者が公民権運動家を襲い、首をへし折り、焼き殺そうとすることができ、しかも、何の咎めもなしですませられるのだ。460：ソヴィエト連邦で権威を持った人間の大半は、不注意で、怠惰で、酔っぱらいで、その上、まったくの馬鹿だった。自分に与えられた指示を誤解し、忘れ、難しい任務に精一杯取り組むことをせず、途中で諦め、ときとして、自分たちのほうがよく知っていると勝手に決め込むことさえあって、理を分けて説明しても無駄だった。
2020年01月10日
アメリカ海軍に学ぶ「最強のチーム」のつくり方
誘導ミサイル駆逐艦ベンフォルドは、「米海軍で最悪の軍艦」と言われるほど評価が悪かった。この艦に新任館長として乗り込み、短期間で「全米一」と評価されるほど優秀な艦に立て直した方法を元艦長が書く。
その手法に奇抜な点はない。例えば、大きなプロジェクト後に行う「活動後報告」。大きな決定や事件、作戦の後で、関係者を集め批評会を行う。ここまでは大抵の会社、組織がやっているはず。重要なのは、現場からの「生の声」を引き出すすために、どんな発言にも懲罰を与えないこと。
多くの会社では、「何を言ってもいいから」と発言を促すものの、社員は「本当に大丈夫か」と疑っている。実際に本音で発言して、あとでとばっちりを食うことが常だからだ。上司が本気でそう言っていても、発言を快く思わない別の社員や、他部署から反発されることはよくあること。それを上司がよく見て、守らなければ、その社員もそれを見ていた他の社員も二度と本音で発言することは無くなる。
ベンフォルドの場合、批評会で艦長自身が自分を批判にさらすのを見て、部下たちも自分をさらけ出すようになったという。そうやって乗組員は、それぞれが互いを理解し合えるようになり、全員がより大きな視点で物事を考えるようになった。
ベンフォルドの場合、批評会で艦長自身が自分を批判にさらすのを見て、部下たちも自分をさらけ出すようになったという。そうやって乗組員は、それぞれが互いを理解し合えるようになり、全員がより大きな視点で物事を考えるようになった。
●部下が仕事を辞めるのは、給与の安さが主因ではない・上司から大切に扱ってもらえない・積極的な行動を抑え込まれる・意見に耳を貸してもらえない・責任範囲を拡大してもらえない●仕事を任せる部下を厳しく管理することは、彼らの能力を引き出す最良の方法ではない。むしろ、束縛を緩め、仕事を任せるほうが、熱意や才能を引き出す。●「もっと良いやり方はないか？」現場の部下に「もっと良いやり方はないか？」と問うと、思いもよらない画期的なアイデアが出て来ることがある。その時は惜しみもなく褒め、提案者の実績として高く評価する。●共通の目標を明確にするメール、雑談などあらゆる手段を使って部下と盛んにコミュニケーションを取り、目標を伝えれば、それだけ多くの協力が得られ、よりよい成果を達成できる。●前向きで直接的な励まし上司が部下の仕事ぶりを認めると、部下はさらに熱を入れて働く。●重要な仕事は一つのチームだけに任せない他のチームもその仕事をこなせるよう、絶えず訓練を行う。常に代役を用意しておくことは危機管理の基本であるし、他の仕事を学んでおくことは、本来の仕事にも役立つ。
2020年01月09日
フィリップ・コトラー自伝
「マーケティングの神様」とも言われる、Kelloggのコトラー教授。そのマーケティングの教科書は世界中のビジネススクールで使われている。彼の処女作である『マーケティング・マネジメント』は、初版から30年近く経った1996年にFTの「史上最高のビジネス書50冊」に選ばれている。
両親はウクライナからのユダヤ系移民。当時のユダヤ系移民の子は、たいてい「医者、弁護士、技術者の３つから選べ」と言われたそうだ。要するに、資格商売で、差別されることが少ない職業だ。しかし、シカゴで育ったコトラーは、どれも魅力を感じず、当初、名門デポール大学で会計士を目指す。
ところが、大学2年生になったあたりから、会計や法律など「実務を得る前にもっと幅広い教育を受け、本質的な問題を見つけるべきだ」と考える。そこで、デポール大学で2年を過ごした後、シカゴ大学に編入。そこで、古典の原書を熟読し、問題を議論し、批判的論文を書いたそうだ。プラトン、マキャベリなど哲学者の思想に触れ、思索したことが、後にマーケティングで新境地を開いたことに繋がっている。
・1931年ウクライナからのユダヤ系移民の子としてシカゴに生まれる。シカゴ大学で古典、ミルトン・フリードマンらシカゴ学派の教授陣から自由市場の価値を学ぶ。同大学で経済学修士号、MITで博士号。その後、ハーバード大学でマーケティングを学び、「マーケティング理論や実践の研究に人生を懸ける」ことを決意。・1967年処女作『マーケティング・マネジメント』マーケティングが正式な学問として認識される。・1970年代Social Marketing世界は貧困や疾病、環境破壊など多くの問題。マーケティングの活用で、こうした社会問題の解決を図る。「人々に自分、家族、友人、そして社会全体にとって好ましい行動をとるように説得するのにマーケティングが活用できるか」・CSRCSR活動でよい印象を持ってもらえれば顧客も増え、従業員の愛社精神の醸成にもつながる。・日本経済日本が再び活力を取り戻すには、革新性に富むBMや新製品開発、高貴な目的を持ったマーケティングなどに取り組む必要がある。・Social Mediaを通じて、顧客の人生に付加価値をもたらす取り組みマスコミの力を利用して企業に対する顧客の考え方や知識を形作るやり方は、デジタル世界の爆発的成長で終焉を迎えつつある。
2020年01月08日
HBR意思決定論文Best10
誰しも、「あの時に戻って判断をやり直したい」という事例はたくさんあるだろう。なぜ、あの時、よく考えなかったのか。誰かに相談しなかったのか。意地になってしまったのか、等々。
そうした意思決定をゆがめる要因を分析し、それを避けるためのプロセスが提案される。重要な意思決定には、慎重に設計された方法が必要で、集団的な意思決定プロセスを強化する必要がある。
その一つ、RAPIDモデルでは、�…鶲特甘�者は、計画立案や代替手段を提起する責任を負う。��同意者は、提案の実施に先立って承認する。提案を退ける時には、提案者と一緒に代替案をまとめるか、最終意思決定者に上申する。��助言者は、提案を適切に検討するためにあらゆる関連情報を提供する。例えば、その提案はどれくらい現実的か、仕様変更などの提案が構造上問題を起こすことはないかなど。�ず能�的には、誰か一人が意思決定を下す。その人物の責任は、決定を組織に取り組ませることでもある。
１．意思決定をゆがめる心理的な落とし穴(Professor John S. Hammond, HBS)・【アンカリングの罠】人は、第一印象など、最初に得た情報にこだわり、次に続く思考や判断を鈍らせてしまう。・【現状維持バイアス】人には、「現状維持を選択する強い傾向」がある。それは、行動を起こすことによって生じる批判や後悔などのダメージから、自分を守りたいため。・【サンクコストの罠】過去に自分が下し、今となっては何の意味も持たなくなってしまったような意思決定を何とか正当化しようとして、本来、選ぶべきではない選択肢を選ぶ。過去の意思決定は「サンクコスト」、つまり回収不可能な過去の投資（経費と時間）であり、現在の意思決定とは関係がない。こうした心理的な罠に陥らないためには、罠の存在を常に意識すること。そうすれば、判断ミスを犯す前に、思考回路の間違いに気づける。２．意思決定のRAPIDモデル(Paul Rogers, et.al, Partner, Bain & Company)・組織が意思決定を行う際に、ボトルネックを生じさせないために、役割と責任を明確に割り振ることが大事。・意思決定プロセスにおいて役割と責任を明確に割り振る手法RAPIDRecommend（提案）Agree(同意）Perform(実行）Input（助言）Decide（意思決定）３．脳科学が解明する意思決定リスク（Andrew Campbell, Director, Ashridge Management Center)・人は脳に備わる二つの意思決定プロセスに縛られている。【パターン認識】見知らぬ状況に遭遇した時、過去の経験や判断に基づいて推論する。【感情タグ】記憶された経験などに基づき、注意を払うべきか否か、どのように行動すべきかを判断する。・二つの意思決定プロセスは、時に判断ミスを犯し、我々を誤った方向に導く。それは、精神作業の大半が無意識になされるから。そのため、意思決定においてどんなデータや論理が用いられたのかチェックするのは難しい。・Red Flag条件�”堙�切な個人的利害個人的利害が入り込むと、重要な感情情報に偏見が生じ、自分が望むパターンだけを認識しがちになる。�△罎�んだ思い入れ我々は、誰かに、あるいはどこかや何かに愛着を抱く。感情的絆が判断に影を落とす。�Ｈ獣妊潺垢忙蠅蕕靴瓩襪茲Δ糞�憶一見、現状と類似しており、しかも関連のありそうな記憶が、思考を間違った方向へと導く。重要な意思決定には、このようなレッドフラッグ条件など偏見の源を特定しうる、慎重に設計された方法が必要。そして、集団的な意思決定プロセスを強化する必要。
2020年01月07日
人生と仕事の原則
著者Ray DalioはヘッジファンドBridgewater Associatesの創業者。1975年に創業し、40年以上かけて世界最大のヘッジファンドに育てた。「アメリカで5番目に重要な非上場企業」（Fortune)であり、「世界で最も富裕な100人の一人」（Forbs）である。
今や大成功した（そして引退した）ダリオだが、かつて市場予測を誤って経営破綻を経験している。ブリッジウォーターが8年目のときで、会社存続のため社員全員を解雇している。
「今考えれば、破綻したことは、私にとって最高の出来事だった。前のめりに突き進む性格をバランスさせる謙虚な姿勢を教えてくれたからだ。間違うことのとてつもない恐ろしさを知ったおかげで、『私は正しい』と思う代わりに『自分が正しいかどうか、どうすればわかるだろう？』と自問するように変わった。そして、この質問に答えるベストな方法は、私と同じ目標を抱きつつ、私と異なる見方をする独自の考えを持つ人を探すことだとはっきり認識した。よく考え抜かれた反対意見を聞き、その根拠を理解し、自分自身をストレステストにかける。こうすれば、正しくなる確率を上げることができる」
今や大成功した（そして引退した）ダリオだが、かつて市場予測を誤って経営破綻を経験している。ブリッジウォーターが8年目のときで、会社存続のため社員全員を解雇している。
「今考えれば、破綻したことは、私にとって最高の出来事だった。前のめりに突き進む性格をバランスさせる謙虚な姿勢を教えてくれたからだ。間違うことのとてつもない恐ろしさを知ったおかげで、『私は正しい』と思う代わりに『自分が正しいかどうか、どうすればわかるだろう？』と自問するように変わった。そして、この質問に答えるベストな方法は、私と同じ目標を抱きつつ、私と異なる見方をする独自の考えを持つ人を探すことだとはっきり認識した。よく考え抜かれた反対意見を聞き、その根拠を理解し、自分自身をストレステストにかける。こうすれば、正しくなる確率を上げることができる」
＊成功した人は皆、彼らを成功に導いた原則を持っている人生で成功と言えることがあったとしたら、私が何かを知っていたからというよりも、知らないことにどう対応するかを知っていたから。●毎日、対応すべきことは多い。原則がないと、そのすべてに、初めて遭遇する経験であるかのように対応せざるを得ない。原則があれば、良い判断を早くでき、もっと良い人生を送れる。●自分で考え、�＿燭鯔召鵑任い襪里���何が事実か���△望箸蕕傾腓錣擦騰，鮹�成するには何をすべきか決める。●人生の原則夢＋現実＋固い決意＝人生で成功する・現実を受け入れて対応する現実はどう機能し、それにどう対処すればよいかを理解することが、良い結果を得るためには不可欠。・人生で欲しいものを手に入れるための5step�〔棲里別槁犬鮖�つ�¬槁乎�成の障害となる問題を明らかにし、放置しない�Ｌ簑蠅虜�本原因を探るために正確に診断する�い修譴蕕量簑蠅魏麋鬚垢襪茲Δ坊弉茲鮑�定する�イ修虜�定から結果が出るように実行する・徹底的にオープンになろう意思決定の際、「エゴ」（他者の意見を攻撃とみなす脳の本能的な反応）と、「盲点」（自分の考え方のせいで物事を正確に見られない領域）が障害となる。これらは、オープンな気持ちで他者の意見を聞くことで克服できる。・人の頭の配線はそれぞれ違う常識、創造性、記憶力などの特質は、人それぞれ生まれながらに異なる。●仕事の原則・徹底的に事実に基づくこと、徹底的に隠し立てしないことミスや弱みなどあらゆることを隠し立てしないことは、理解を深め、改善につながる。事実に基づき、隠し立てせずに同僚に接すれば、同僚も重要な問題を隠さない。・やりがいのある仕事とかけがいのない人間関係を培うかけがえのない人間関係は、卓越したカルチャーを築き維持する上で重要。また、組織のカルチャーは、人間関係をどう捉えるか、互いにどう振舞うかに影響を与える。・ミスをするのは構わないが、そこから学ばないのは許されないというカルチャーを作る誰だってミスをする。成功する人はそこから学ぶが、成功しない人は学ばない。ミスをしても問題がない環境を作って、ミスから学べるようにする。・正しく採用する�，匹Δい�人物を求めているかを明確にする�⊃雄爐稜塾呂鬚發辰半楮戮防床舛垢襪燭瓩妨贏辰鯀�やす採用はリスクの高いギャンブルで、慎重にアプローチしなければならない。誤った人材を雇うとその報いは重い。
2020年01月06日
実録「事業再生」
著者が経営再建を果たして、最後は親会社からMEBO（経営陣と社員がいっしょになって親会社から株式を買い取り）で独立した日本レーザーは日本電子の子会社であった。日本電子は、1949年に設立された電子顕微鏡の専業メーカーで、いわばハイテクベンチャーの元祖。
そのレーザー専門輸入商社であった日本レーザー再建物語が本題であるが、それに先立つ、「時代の寵児」と呼ばれた日本電子がなぜダメになっていったかも興味深い。
�ゝ涎磴並審儔宗�急成長による人員増
1949年創業。1962年に東証2部上場。創業13年で上場は当時としては早い。株式市場で高評価され、高株価を維持するために多角化、高成長路線を進めたという。それに対応できる経営基盤がなく、拡大と共に利益率が低下。
�⊂緇豐覿箸離錺�
上場後、大株主だった創業社長は高配当によって高額所得者になった。日本電子の高配当方針は高株価を維持する手段であり、同時に、社長の収入維持のためでもあった。結果、業績が悪化しても、配当を減らさず、財務内容が悪化した。
��ニクソンショックとオイルショック
1971年のニクソンショック以降、急激な円高で輸出採算が悪化。輸出産業向けの国内需要も減少。1973年のオイルショックで原材料費が高騰。38億円の累積赤字を抱え、経営危機に。1974年工場の閉鎖売却と1000名の人員整理実施。
最後の��は外的要因だが、�´△�なければ、経営危機になっていなかったのは言うまでもない。�，魯�ーナー経営者が自分の能力を超えるスピードで拡大してしまったために起きた。�△濃餠發粒杏�流出が続いたため、いざという時に備えた蓄積を怠った。
＊不良債権、不良在庫、不良設備、不良人材・・・。倒産寸前だった�蠧�本レーザーを甦らせた修羅場克服のノウハウ●会社経営の原理原則・「人を大切にする経営」の実践こそ、会社を成長させる唯一の方法・そのためには、会社を絶対に赤字にしてはいけない●経営者は「どうやるか」ではなく、「どうあるべきか」を考えること社長としての理念を明確に持つことで、社長の行動が変わり、社員の行動が変わり、そして会社が変わる。●「すべての問題は内部にある」と自責で考える全社員が自責の思考を持っていれば、危機を乗り越えることができる。●「値決め」は営業員の意見も反映させる社長や営業部長が定価設定すると現場のモチベーションが上がらない。●賞与にインセンティブ制度粗利益額の3%を成果賞与として支給。商談成立に関わった営業員と技術員で分け合う。●社員全員が株主MEBOで親会社の日本電子から独立。「自分たちの会社」という意識を高める。
2020年01月05日
国柱会と宮沢賢治
正月、風邪で頭がすっきりしないので、軽いものを読もうと思って、井上ひさし。4年前にも読んでいて2回目。
最初に読んだときは、大正時代にも「バリ島ブーム」があって、宗教家でもあり、芸能者でもある農民というのが話題になったというところが興味深かった。宮沢賢治はそれにヒントを得て、花巻にそうした理想郷を作ろうとしたように思える。それを実現するには、農民に余裕がなくてはならない。そのための第一歩が、農業生産性を上げるための土壌学であり、肥料学、植物生理学であった。
そして、宮沢賢治をそうした実践に駆り立てた精神的支柱は、日蓮宗。宮沢家は浄土真宗であり、両親まで改宗させようとした賢治は、父親と決定的に対立する。その賢治が入っていたのが、純粋日蓮宗を信奉する在家仏教団体である「国柱会」。この世の苦しいことあの世で救われるとした浄土真宗に対し、日蓮宗はこの世を努力で浄土にすべきだと説く。
花巻で農民のために実践しようとしたのが宮沢賢治で、満州で関東軍参謀として実践したのが石原莞爾だった。明治以降倍増した人口の受け入れ先として、アジアの日本の盟友として満州国の独立を画策した。石原は満州人による自治を目指しており、この点で、上司の東条英機と対立し、左遷させられている。
13：農民たちによる注文の多い序景わたくしたちはホテルのりっぱな料理店へ行かないでも、きれいにすきとおった風を食べることができます。コカコーラの自動販売機なぞなくとも、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。48：南無妙法蓮華経いつか誰かがとし子の命ばどうしても必要としたら、その時は、その誰かのために命を捨てるのを拒んではならねえす。生きもののからだ食うにはそれぐれえの覚悟が要る。78：食事朝：麦煎餅、昼：豆腐一丁、夜：馬鈴薯を塩で97：日蓮聖人『立正安国論』「念仏の流行は人びとに教主釈尊を忘れさせ、西方浄土の仏のみを尊ませた。人びとは西方浄土にばかり憧れ、いま己の立っているこの国土を荒れるに任せている。念仏をやめ、法華経に帰依せよ。法華経を仰いで、己が愚かな心をひらき、すみやかに対策を巡らせて一刻もはやく泰平の世を、ここに、この場所に実現せよ。まず、生きている今を安らかにし、さらに死後の善き果報をねがえ」152：国柱会石原莞爾「国が正しい方向に向かっているのか、また誤った方向へ向かっているのか、それは法華経八巻に照らしてみれば一目瞭然である」「仏法の剣によって私利私欲をむさぼる奴らを倒す」155：賢治「日蓮は人間です、人間だからいろんなことを言います。心屈したときは、自分をデクノボーだと言います。心たかぶったときは、自分は世直しの救世主だ、とも言います。どっちも本心だったろうと思います。おれは35にもなってまだ親がかりです。デクノボーのなかのデクノボーです」
2020年01月04日
悪い奴らの頭の中
昨年初めて行ったフィリピン。ドゥテルテ大統領の強権で犯罪数が減少。時には法を無視した掃討作戦で国際的には非難されているが、フィリピンの弱点であった治安問題が解消に向かい、海外からの直接投資が復活して経済は好調。人気は高い。
しかし、ここは邦人殺害件数が最も多い国でもある。2008-2017年の間に39人が殺されている。日本国内の他殺者数は、2015〜18年に、314人、290人、288人、272人で推移しており、それに対して年間平均4人というのは少なく見える。しかし、分母がフィリピンに住む邦人数1万6,570
殺害される最大の理由はカネ。典型的なのは、フィリピン人の奥さんが財産を奪うために誰かに頼んで殺してしまうというもの。交通事故を起こしても、「相手が重態なら（生き残ると後でいくら取られるか分からないから）轢き殺してしまう」という人命の安いフィリピンでは、殺人を引き受けてくれる人がいくらでもいる。
幸いなことに
狙われるのは現地でビジネスをしたり、フィリピン人と結婚している人たちで、観光客が狙われることは（現地に資産がないので）まずないということだ。27：フィリピンが邦人殺害件数が最も多い2008-2017年の間に39人・警察を味方にすることができる・わずかな報酬で殺しを請け負ってくれる人がいる・彼らは黙って刑務所に入ることもいとわない37：死亡したとしても10万ペソ（22万円）の賠償金重症になった場合には、いくら請求されてしまうかわからないので、重体の相手を轢き殺す。115：刑務所に逃げ込む売人マニラの隣、ケソン市にある刑務所は大幅に定員オーバー状態で、大げさではなくひとでごったがえしていた。「警察に殺されると思った」「刑務所のほうが安全」120：観光スポットで話しかけてくる人は怪しい海外の観光地や道端で積極的に話しかけてくるやつは100%詐欺師。123：なぜロマの犯罪が減らないのか持っているやつからもらうことの罪悪感のなさ。「シリア難民よりもロマをなんとかしてほしい」（ヨーロッパ各地でよく聞く意見）155：自分探しへの警告今いる場所から逃げたいだけだったり、他人からの称賛が目的の「自分探し」はたいてい、ろくな結末が待っていない。
2020年01月03日
夢のエネルギー
悪名高い1954年3月1日キャッスル作戦ブラボー実験は、世界初の水素化リチウムを用いた水爆実験だった。リチウム７の核反応が想定以上だったことで、出力は想定の2.5倍のTNT換算15Mtとなり、「装置をしかけた島は消し去り、海底は深さ76m、幅1.6kmに及ぶクレーターと化し、危険な放射性下降物は太平洋上を18000㎢の範囲を超えて広がった」という。
第五福竜丸が被ばくしたのもこのときで、船は事前にアメリカが示した危険水域外で操業していたが、想定を大きく上回る出力となったため、放射性降下物も危険水域外にまで広がったのだ。
科学的に見て、「大気汚染や地球温暖化などに伴う外部費用を含めた総経費は、石炭や天然ガスより原子力のほうが安価であるのは疑う余地がない」という。しかし、3.11以来、政治的費用はうなぎ上りで、現在新設の原発は中国、ロシア、中東、インドなど非西欧諸国に多い。
そんな中、長年ロシアとスウェーデンという強国に挟まれ、危機意識の強いフィンランドが放射性廃棄物の処分場を確保し、原発建設を推進しているのは興味深い。
507：バンドワゴン効果1965年から70年のこの期間、アメリカの電力会社はおおよそ100基の原子炉を発注した。513：ビキニ環礁の水爆実験1954年3月1日キャッスル作戦ブラボー実験爆発したシュリンプは直径7.2kmの火球となり、装置をしかけた島は消し去り、海底は深さ76m、幅1.6kmに及ぶクレーターと化し、危険な放射性下降物は太平洋上を18000㎢の範囲を超えて広がった。521：「直線閾値なし（LNL)」モデルLNLモデルに向けられた実証に基づく反論をもみ消した後も、いまやノーベル賞受賞者となったマラーは自説に対する反論が起こるたび、場所や時期にかかわりなく、一貫して自説の擁護を図った。2015年、マサチューセッツ大学アマースト校で毒物学を教えるエドワード・カラブレーゼ教授は、ハーマン・マラーが、自身の研究結果に対する反論をもみ消してきた事実を明らかにした。�缶ね茲悗僚亶�540：事故件数と就業者の死亡災害数原子力発電は最も事故の発生件数が少なく、死亡者の数もいちばん少ない。「原子力発電に伴う就業者の死亡災害は1TWh当たり0.019人で、しかもこの数値はウランの採掘、精製、発電などの全工程を踏まえたもの」（イギリスの医学誌ランセット）542：大気汚染や地球温暖化などに伴う外部費用を含めた総経費は、石炭や天然ガスより原子力のほうが安価であるのは疑う余地がない。543：地中深く埋められた廃棄物WIPPの貯蔵室は、厚さ2kmに及ぶ結晶塩の岩盤を掘削した場所に設置されている。この岩盤層は古代の海の名残で、NM南部からはるか南東に向かい、カンザス州南西部にまで広がっている。世界中の核廃棄物のすべてを、今後1000年にわたって難なく収容することが可能だ。フィンランドも、オルキルオト島の地下に広がる花崗岩の岩盤を400mまで掘削し、恒久的な廃棄物の貯蔵所を作っている最中だ。島はフィンランドの西海岸沖合の北海にあり、2023年の操業開始が予定されている。
2020年01月02日
大気汚染
5年前に北京へ行って、大気汚染のひどさに驚いた。私が初めて上京した1982年には東京の空はすでにかなり奇麗になっていて、光化学スモッグ警報が出ることは稀だったし、もちろん、育った四国では光化学スモッグは皆無だった。
「光化学スモッグ」は、ロンドンで大量死をもたらした「スモッグ」とは別物。スモッグの主な成分は、石炭の粉塵の表面に付着した二硫化硫黄で、石炭を使った暖房が原因だった。一方、光化学スモッグは酸化した炭化水素が原因物質で、その元は自動車や石油化学産業の出す排気ガスだ。
その生成過程を突き止めたのは、オランダ出身のCaltechハーゲン=スミット教授。当初、石油業界は御用学者を使って、言い逃れをしていたが、スミット教授が一歩も引かず、原因を明らかにした。
�以厦咾任發任�る溶接417：パイプラインによる供給は、せいぜいのところ生産地あるいは限られた地域にとどまっていた。重ね合わせてパイプをつないだり、継ぎ目をリベットで接合したり、隙間に詰め物をしても、ガスはどうしても漏出した。その問題を克服し、長距離輸送のパイプライン建造を可能にした技術こそ、放電現象を利用したアーク溶接にほかならなかった。426：連邦取引委員会1935年報告書1919年から30年にかけ、消費量を20%上回る天然ガスがアメリカ全体で無駄に放出された。原油に混じって噴出する湿性ガスは、通常、大気中に放出されるか、意味もなく燃やされていた。油井が涸れてしまっても、ガスはそのままという場合がほとんどでで、放出が数年に及ぶことも珍しくはない。��1957年のフルパワー449：マンハッタン計画とウラン鉱マンハッタン計画で主に使用されたのは、当時、中央アフリカに存在したベルギー領コンゴのシンコロブエ鉱山と、カナダ北西部のグレートベア湖にあるエルドラド鉱山の二か所から算出されたウラン。456：1946年原子力法原子力エネルギーはあらゆる点においてアメリカ政府の独占物である。�殴好皀奪阿�もたらすもの479：1952年12月5-9日ロンドンスモッグ事件3000人以上のロンドン市民が有害な煙が原因で息を詰まらせて死亡。イギリス保健省は、インフルエンザのせいにした。だが、翌1953年の1月から3月の予想外の死亡者数は、インフルエンザの死亡者の7倍にも達した。スモッグの主な成分は、石炭の粉塵の表面に付着した二硫化硫黄だった。485：LAのスモッグ正体は酸化した炭化水素。しかし、スモッグという用語がすでに一般化していたので、従来のスモッグと区別するため、特徴的な二段階の生成過程を正しく形容する一言が必要だった。以来、このタイプのスモッグは「光化学スモッグ」と呼ばれる。487：Caltechハーゲン=スミット教授ハーゲン=スミットの業績によって、自動車の公害防止規制と産業界に対するより厳格な基準設定へと向かう、国を挙げての長くて執拗な、たゆみない運動への道が切り開かれることになった。LAをはじめ、現在、清浄な空気を謳歌する世界各地の町々は、頑として退くことのなかったこのオランダ人の技術と倫理的な怒りに、そうした恩恵の何割かを負っているのだ。�廓�りくる暗黒時代495：レイチェル・カーソン『沈黙の春』「殺虫剤は、凄まじい勢いで、私たちが暮らす環境に持ち込まれています(略）。細部のなかで生きている原形質にはそれに慣れる時間さえありません」（出版される直前の1962年の春、招かれた卒業式のスピーチで）
2020年01月01日
人類最初の乗り物
馬が家畜化されたのは紀元前4000年前のウクライナだと推定されている。その後モンゴルで馬の背に乗る騎乗の技術が生まれ、それは当時としては最大の軍事技術となり、世界史を変えた。以来、馬は100年前に自動車が普及しだすまで、最速の陸上移動手段であり続けた。
4世代前までNYやロンドンなど世界中の大都市に馬が溢れ、その通りは馬糞と尿で溢れかえっていたといいうのは想像を絶する。文明開化なった東京にも馬車が登場したが、馬を養うには費用も掛かる。日本で発明された人力車は、同じく人口密度の高いアジアの都市に普及した。
1920年代、アメリカでは年間50万頭の馬が処分され、ペットフードに加工されたというのも余りに身勝手で悲しい。
��巨大なチーズの堆積341：都市の通りにあふれる馬たち1800年後半、マンハッタンでは、約23平方マイルの狭隘なこの島に、180万人の人間と約13万頭の馬がともに暮らしていた。346：一頭の役馬が排出する尿は1日約1ガロン、馬糞は30-50ポンドである。NYの通りは、毎日およそ400万ポンド(1800t)の馬糞と10万ガロン（38万L）の尿で溢れかえっていた。366：シカゴ婦人クラブ代表Mrs. John B. Sherwood1900年のアメリカの三大死因�’抉蝓�10万人当たり死亡者202人）��結核（10万人当たり死亡者194人）�２捨 δ憶蝓米�143人）殺人率 1.2人(2016年4.9人）��黒雲の柱367：歴史家David A. ウェイプルズ「石油が見つからない場合、たいてい井戸はそのまま放置され、ガスは吹き上がるままにされていた。故意もしくは摩擦や落雷、不注意な裸火で偶然このガスに引火すると、数か月あるいは数年にわたって燃え続けた」��神より授かりしもの380：NY1912年に自動車の数が馬の頭数を追い抜く1920年代、年間50万頭のペースで馬は処分され、肉はペットフードに加工された。
