2019年11月
2019年11月30日
市場主義の限界
7年前の本（文庫版は5年前）。市場主義に限界があるのは明白。サンデル教授は、アメリカの状況をベースに、「市場主義が行き過ぎて、市場経済を持つ状態から、市場社会である状態へ陥った」という。
例として挙げるのが、
・刑務所の独房への格上げ（一晩$82）
・インドの代理母による妊娠代行（$6250)
・米国へ移住する権利（$500,000)
など。さらには、営利を目的とする学校、病院、刑務所の急増。民間軍事会社への戦争のアウトソーシングなど。
サンデル教授はこれらに原則反対のようだが、中には線引きが難しいものもある。例えば、空港や遊園地などで「お金を払えば、待たなくて済む制度」。最近の空港では、ファーストクラスやビジネスクラスの搭乗者は手荷物検査の専用レーンがあったり、検査待ちの行列の先頭に並ぶことが出来る。これは、「不平等」なのか？
国際線ビジネスクラスではエコノミーの数倍、ファーストクラスなら10倍くらいのお金を払っているのに、手荷物検査待ちで長い列に並ばなければならないとしたら
ビジネス・ファーストを買う人は減るだろう。航空会社にとってビジネス・ファーストは利益率が高いので、ビジネス・ファーストの利用者が減れば、エコノミーを値上げする必要も出て来る。エコノミーの低価格は、ビジネス・ファーストの客が「補助」して成り立っているともいえる。あるいは、テーマパークの優待パス。追加料金を払えば、人気の乗り物やアトラクションに並ばなくても先頭に行ける。運営者にとっては設備投資も追加費用もなしに売上を増やせる。待ち時間がもったいない人は買えばいいし、友達や家族と待ち時間も含めて楽しめばいいという人は買わなければいい。遠くから来ていて、延泊するよりも追加料金を払って効率的に回るほうが安上がりだという人もいるだろう。
個人的には、選ぶか選ばないかの選択肢がある限り、倫理的問題はないと思う。そのそも、サンデル教授の懸念は、「市場社会」となったアメリカ社会への懸念で、それに二回り位遅れて未だに社会主義的「平等」色が色濃い日本には、まだ効率的な市場原理が不足しているのではないか。
＊お金で買うべきではないもの●この30年間に社会に起こった決定的な変化は、市場と市場価値が「それらがなじまない生活領域へと拡大した」こと。かつては健康や教育、環境保護など、社会的善の分配には市場を利用しなかったが、今は、当然のように利用されている。●すべてが売り物となる社会での心配・お金の重要性が増し、「不平等」の痛みが一層ひどくなる・生きていくうえで大切なものに値段を付けると、それが「腐敗」してしまうおそれがある。●大切にすべき価値は、人によって異なる従って、お金で買うことを許されるもの、許されないものを決めるには、社会・市民生活の様々な領域を律すべき価値が何かを決める必要がある。●市場の道徳性を巡る問題市場経済（生産活動を統制するための道具）を持つ状態から、市場社会（人の営みのあらゆる側面に市場価値が浸透した生活様式）である状態へ。●遊園地でお金を多く払えば行列の先頭へ行ける「行列の倫理」→「市場の倫理」市場と行列は、物事を分配する異なる方法であり、それぞれ異なる活動に適している。●お金で友人は買えない謝罪や結婚式の挨拶は代行会社で買うことができ、人間関係も壊れない。ただし、お金で買われたそれらは汚され、傷つけられており、質は劣る。
2019年11月29日
二兎を追う
すっかり実業世界でも定着した感のあるコンセプト「イノベーションのジレンマ」。
企業は優れた経営を行うがゆえに、衰退することがある。それは、低価格、単純、小型など、従来とは異なる価値を持つ「破壊的技術」が登場したとき、既存の顧客の声に耳を傾けるあまり、新技術の市場に出遅れるから。（HBSクリステンセン教授）
そして、クリステンセン教授は、「破壊に直面した組織は、成熟事業で競争しながら（深化）、新しい技術やBMを探求する（探索）する必要。探索と深化は同時にできないので、探索サブユニットをスピンアウトせよ」という解決策を示した。
本書の著者は、スタンフォード大学GSMとHBSの教授たち。彼らの研究によれば、「成熟事業と新規部門が断絶していると、新規部門の足が引っ張られ、身動きがとれなくなる」ので、探索と深化を同時にやる「両利きの経営」が必要だという。
放っておけば、成熟事業と新規部門は対立しがち。稼いでいるのは成熟事業だが、そのCFは新規部門での投資に使われる。成熟部門では設備投資もままならないのに、赤字を垂れ流している（ように成熟部門からは見える）新規部門は外部から人も雇い拡大を続ける。
クリステンセン教授の解決策は、「物理的に別組織にする」だったが、そうすると、企業内の資産や組織能力は活用できない。本書の提言は、全社として、新事業が必要なことを理解させ、成熟部門のリソースも活用しながら新事業を成功させること。そのためには、「経営陣の積極的な関与と支援」や「探索事業と深化事業にまたがる共通のアイデンティティ」が必要だという、真っ当な結論。
＊成長を続ける大企業と、破綻に追い込まれた大企業。その差は何か？中核事業を維持しながら、イノベーションを起こす「両利きの経営」・両利きの経営成長し続ける企業は、既存の資産と組織能力を「深化・有効活用」しながら、新規事業を「探索・開拓」している。・リーダーシップの失敗十分な資源や組織能力を保有しながら、破綻もしくは倒産寸前に至った企業の共通点は「リーダーシップの失敗」。これら企業のリーダーは、新しい機会を感じ取れず、企業が繁栄を続けられる形で自社の資産を再構成できない。・破壊的イノベーション新たな製品・サービスの導入を通じて新規市場を創造すること（HBSクリステンセン教授）。当初は訴求力に欠けるが、技術が改良され品質が向上すると、既存プレーヤー間で価格崩壊と大規模破壊が起こる。・探索と深化は同時にできない破壊に直面した組織は、成熟事業で競争しながら（深化）、新しい技術やBMを探求する（探索）する必要。探索と深化は同時にできないので、探索サブユニットをスピンアウトせよ（HBSクリステンセン教授）。・両利きの経営成熟事業と新規部門が断絶していると、新規部門の足が引っ張られ、身動きがとれなくなる。・両利きの経営を成功させるための要素�｜戯�と深化が必要であることを正当化する、戦略的意図。��経営陣の積極的な関与と支援。�Ｃ戯�事業と深化事業の距離を取りながらも、企業内の資産や組織能力は活用させる組織構造。�っ戯�事業と深化事業にまたがる共通のアイデンティティ。
2019年11月28日
「平和主義者」の巻き起こした戦争
第二次世界大戦が終わったとき、英国のチャーチル首相は、この戦争の意義について問われ、次のように答えたという。
「これは必要のない戦争であった」
「我々がもっと早く戦争の決意さえしていれば、容易に防げた戦争だ」
チャーチルはヒットラーの野望に早くから気づき、ドイツをベルサイユ条約違反で軍事攻撃すべきだと主張していた。ところが、当時の欧州はかつてない戦禍をもたらした第一次世界大戦が終わったばかりで、平和主義全盛の時代であった。チャーチルの意見はイギリス国民の支持を得られず、ヒトラーによる侵略を許すことになるのである。
いわば、これは、「『平和主義者』の巻き起こした戦争」なのだ。
「日本の平和主義者は神州不滅主義者」というのも面白い。「戦争を法律で禁ずれば、戦争にならない」というのは、「台風が日本に上陸するのは法律で禁止すればいい」というのと同じだという。相手は日本の法律など気にしていないから、何の意味もない。
それを、「誰も戦争のことなど考えなければ、戦争など起こるはずはない」と思い込んでいるのは、あたかも、戦争中に「神州日本が負けるはずがない」と根拠なく思い込んでいた日本人と同じ精神構造なのだ。
本当の平和主義者であれば、まず戦争の本格的研究から始めなければならない。スイスはそれをした結果、1815年から200年上に渡って戦争に巻き込まれていない永世中立国となっている。国民皆兵制の重武装国家でもある。
「これは必要のない戦争であった」
「我々がもっと早く戦争の決意さえしていれば、容易に防げた戦争だ」
チャーチルはヒットラーの野望に早くから気づき、ドイツをベルサイユ条約違反で軍事攻撃すべきだと主張していた。ところが、当時の欧州はかつてない戦禍をもたらした第一次世界大戦が終わったばかりで、平和主義全盛の時代であった。チャーチルの意見はイギリス国民の支持を得られず、ヒトラーによる侵略を許すことになるのである。
いわば、これは、「『平和主義者』の巻き起こした戦争」なのだ。
「日本の平和主義者は神州不滅主義者」というのも面白い。「戦争を法律で禁ずれば、戦争にならない」というのは、「台風が日本に上陸するのは法律で禁止すればいい」というのと同じだという。相手は日本の法律など気にしていないから、何の意味もない。
それを、「誰も戦争のことなど考えなければ、戦争など起こるはずはない」と思い込んでいるのは、あたかも、戦争中に「神州日本が負けるはずがない」と根拠なく思い込んでいた日本人と同じ精神構造なのだ。
本当の平和主義者であれば、まず戦争の本格的研究から始めなければならない。スイスはそれをした結果、1815年から200年上に渡って戦争に巻き込まれていない永世中立国となっている。国民皆兵制の重武装国家でもある。
＊なぜ戦争は起きるのか？真の平和とは？・WW1後、戦禍にまみれたヨーロッパで平和主義運動→WW2の原因に平和主義全盛→政治家も平和主義に同調せざるを得ない。ヒットラーは平和を唱えてヨーロッパの人々を油断させつつ、侵略の準備。国際世論が平和主義であるため、英仏は軍事行動を起こさず。・平和主義者「国民一人一人が平和を願えば、世界に平和がもたらされる」戦争を否定するのは個人の信念の問題だが、戦争は国家の政策の問題。個人の信念の合計は、必ずしも国家の意思とはなり得ない。・戦争は、人類が創造し、高度に組織化された「制度」戦争ができるのは、国際法上の責任を負える主権国家か、それに準じるもの。戦争には、開始・終了などのルールがある。・「戦争がない＝真の平和」ではない戦争を回避すれば平和が維持できるというものではない。これを長期間維持するには、人間社会が組織的努力を続ける必要。
2019年11月27日
人口減少ｘ高齢化ｘ資本主義
イギリス出身、オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年に来日してGSのパートナーまで勤めたが、2007年に退社。2009年に創立300年余りになる国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社を買収して社長に就任している。
日本の労働者の質は高いのに、生産性が低いのは彼にとっても長年の謎だったという。日本の労働者の質は世界No.4と評価されているのに対し、生産性はNo.28（World Economic Forum)なのだ。生産性が低いから、賃金も安い。
彼の研究によれば、日本の生産性が低い最大の原因は「規模の小さい企業が多すぎる」ことだという。日本では、従業員30人未満の零細企業で働いている労働者の比率が、全労働者の29.9%に登り、OECD諸国中最も多い国の一つになっている。零細企業の競争力は一般的に低く、労働生産性は低い。企業数が多すぎるため、競争は激しく、値上げの余地は少ない。結果として、給与水準も低い。
アメリカの人材評価はNo.24で決して高くない。しかし、生産性はNo.9だ。アメリカと言うと、シリコンバレーのベンチャー企業が活躍しているイメージだが、それはごく一部の話。従業員数が250人以上の企業で働くアメリカ人労働者の比率が49.8%なのに対して、日本では12.9%に過ぎない。
資本主義経済で自由な競争が行われれば、生産性の低い会社は淘汰され、寡占化が進んでいく。これが進み過ぎると、供給者の方が強くなるので、各国とも独占禁止法で過度の集中を禁止している。日本の場合は、中小企業保護が強すぎて、淘汰が進まず、多くの市場で供給過剰が続いている状態だ。政策転換が必要だ。
＊人口減少・少子高齢化が進行する日本では今後、デフレが深刻化するおそれ日本が取るべき経済政策。●世界的に人類の高齢化日本の場合高齢化に加えて、他の先進国にはない、人口の急減少という問題を同時に抱えている。どちらも強烈なデフレ要因であるため、経済政策を大きく変えない限り、今後より深刻なデフレに。●GDP＝人口x生産性日本が今のGDPを維持するには生産性を上げる必要。●Low road capitalism => High road capitalism低付加価値・低所得資本主義→高付加価値・高所得資本主義価格の競争→価値の競争●High road capitalismへの転換策・輸出の拡大：日本の人口一人当たりの輸出額（対GDP比）は世界第117位。輸出の潜在能力を十分に発揮すべき。・企業規模の拡大：日本は規模の小さい企業が多すぎる。これが、日本の生産性の低さの最大原因。・最低賃金引上げ：最低賃金と生産性には相関関係。人材コストが高くなれば、企業の利益が圧迫され、経営者は生産性を向上させようとする。
2019年11月26日
「失われた30年」の分析
「超整理法」の野口先生による、平成「失われた30年」の総括。いろんな経済学者や経営学者が平成を総括したが、私にとっても、社会人になって3年で平成となり、以来、社会人生活を平成と共に歩んできたので、こうした本を読むたび自らの半生と重ねてしまう。
本書では、「平成の時代、世界経済の変化から取り残された日本経済」と総括しているが、ここで重要なのは、努力したが取り残されたのではなく、「大きな変化が生じていることに気が付かなかったために取り残された」ことだという。
この「大きな変化」とは、�ー匆饉腟噌颪諒�壊、��中国の工業化、��IT革命の第二段階、�た緤進�業。
�ー匆饉腟噌颪諒�壊自体は、誰もが事実として目撃したが、それがどういうインパクトをもたらすか、理解できた人は少なかった。それまでは、先進国と発展途上国、そしてそれと経済的に分離された形で社会主義国があった。技術と資本は先進国に集中していて、先進国の国民は豊かな生活を享受できた。そこに、突然、社会主義国が崩壊して国際貿易に参入してきた。競争にされされてこなかった社会主義国の製品はおしなべて劣悪で競争力がなかったが、人々の教育水準は高く、優秀な人は先進国に移住していった。
��2000年代はBRICsだったが、1980年代の新興国は「アジアNIES」だった。韓国、台湾、香港、シンガポールが発展した。それに次いだのが中国で、国が巨大なため、インパクトも大きかった。90年代には外資系と提携した中国の自動車メーカーが100社以上となり、生産台数で2009年には日本を抜き、世界一となった。
��1980-90年代、IT革命と呼ばれる大きな変化が技術体系に生じる。第一段階は80年代のPCの登場。第二段階は90年代の通信におけるインターネットの利用だ。これで、情報処理コストと通信コストが激減した。そして、技術変化に乗じたベンチャー企業が短期間で世界的大企業に成長するという現象が起きた。
�た緤進�業は、製造業の生産方式に根本的な影響を与えた。従来の生産方式の主流は「垂直統合型」で、一企業が工程の最初から最後までを行った。それに代わり、複数の企業が様々な工程を分担で受け持つ「水平分業型」が拡がった。垂直統合を得意とした日本メーカーはこの流れに対応できなかった。
・1980年代〜世界経済における日本の地位が高まる「東京がアジアの金融中心地になる」→地価が上がって当然・91年から地価が下がり始める変化は一時的な現象と考えられ、バブル的な気分は続く。・1980年代末、日本がバブルの頃、中国をはじめとする新興国の工業化、IT革新基礎的経済条件の大転換は、日本経済の基盤を揺るがす。・アベノミクスは失敗現在の企業売上高は2013年初めと同じ。消費水準もほぼ同じ。・金融緩和や円安ではなく、経済構造を変えることでしか解決できない�］�働力不足：高齢者や女性の労働力率を高めるとともに、移民を大幅に増やす。�∪こΨ从僂旅渋な儔修悗梁仆茵�中国は将来、一人当たりGDPで日本と並び、GDPは日本の10倍になる。��新しい産業の創出：企業のBMを転換させて、GAFAのような生産性の高い、新しい産業を作り出す。
2019年11月25日
アメリカを揺るがす自由至上主義
米国の若者の間でリバタリアン志向が高まっているという。18-34歳を対象にした調査で71%が二大政党に幻滅し「本格的な第三政党が必要」と回答したそうだ（2017年調査）。
どうして、リバタリアニズムが近年人気となったのか？広まった背景には、インターネットの普及があるという。Airbnb、Uberなどのサービスは政府の法規制によって守られるのではなく、インターネットを通した利用者間の評価を基に自主的に成立している。こうした制度が出来るまでは、消費者として何か問題があれば「消費者センター」に相談し、それでも解決しなければ、訴訟の必要があった。しかし、裁判までするとその費用と時間は膨大になり、よほどの被害で、かつ勝てる見込みがなければ費用対効果が合わない。
ところが、Airbnb、Uber、あるいはヤフオクなど、ユーザー同士による評価方式はおおむね機能している。サービス提供者は評価がよくなるように努力する。評価がよければ、自動的に選ばれる確率が高くなり、逆に低ければ、退場せざるを得なくなる。
では、政府など要らないのか？さすがに、そうはいかないだろう。皆が「合理的な人間」で、長期的視野に立って、道徳的な判断が出来れば機能するかもしれないが、人は甚だ非合理的で、短絡的なところもある。
リバタリアンの共通点は、「相手の自由を侵害しない限り、自己の自由は認められる」とする、相互不可侵の関係性にあるというが、その場では相手の自由を侵害してないように見えても、広域ではあるいは長期的に影響を及ぼすことも多々ある。公害などその典型だろう。
「最小国家主義」では、政府の役割は、国防・司法・治安に限定されるが、「環境保全」も入れておかないと、これも市場に委ねるのは難しい。但し、炭素税などの導入で市場原理を取り入れる努力は政府が肥大化して非効率になるのを避けるために必要だろう。
ところが、Airbnb、Uber、あるいはヤフオクなど、ユーザー同士による評価方式はおおむね機能している。サービス提供者は評価がよくなるように努力する。評価がよければ、自動的に選ばれる確率が高くなり、逆に低ければ、退場せざるを得なくなる。
では、政府など要らないのか？さすがに、そうはいかないだろう。皆が「合理的な人間」で、長期的視野に立って、道徳的な判断が出来れば機能するかもしれないが、人は甚だ非合理的で、短絡的なところもある。
リバタリアンの共通点は、「相手の自由を侵害しない限り、自己の自由は認められる」とする、相互不可侵の関係性にあるというが、その場では相手の自由を侵害してないように見えても、広域ではあるいは長期的に影響を及ぼすことも多々ある。公害などその典型だろう。
「最小国家主義」では、政府の役割は、国防・司法・治安に限定されるが、「環境保全」も入れておかないと、これも市場に委ねるのは難しい。但し、炭素税などの導入で市場原理を取り入れる努力は政府が肥大化して非効率になるのを避けるために必要だろう。
＊リバタリアニズム(自由至上主義）政府の力を極限まで排除し、自由の最大化を目指す。・リバタリアン自由主義・最小国家・社会的寛容を重んじる人々。ある面では保守、ある面ではリベラル。例）移民や人工妊娠中絶には寛容（リベラル）であり、銃規制や公的医療保険制度には反対（保守）。経済的には「保守」、社会的には「リベラル」・政府は「自由にとっての障壁」「政府は自由にとっての障壁」と見なすリバタリアンと、「政府は自由のための手段」と見なすリベラル派。・米国の若者の間でリバタリアン志向が高まる18-34歳調査で71%が二大政党に幻滅、「本格的な第三政党が必要」（2017年調査）・リバタリアニズムが広まった背景インターネットの登場。Airbnb、Uberなどのサービスは政府の法規制によって守られるのではなく、インターネットを通した利用者間の評価を基に自主的に成立。→技術の進歩で、政府がなくても大丈夫。・リバタリアンの内実は様々「政府の関与の度合い」�〔祇�府資本主義：政府の存在を認めず、警察や裁判所などあらゆるサービスの民主化を唱える。�∈脳�国家主義：政府の役割は、国防・司法・治安に限定される。�８電掬�自由主義：「大きな政府」を否定しつつも、政府の役割にはより肯定的。最も穏健で中道に近い。・リバタリアンの共通点「相手の自由を侵害しない限り、自己の自由は認められる」とする、相互不可侵の関係性。
独占資本によって、あるいは政府の補助金や規制によって、市場本来の調整メカニズムが損なわれている。
2019年11月24日
頚椎椎間板ヘルニア
今週、自転車に乗ると右腕が痛い。内側から重い痛み。
さては、先月苦しんだ「五十肩」の再来か(先月は左腕だったけど）と思い、今度は近所の整形外科へ。先月は、発症したのが香川に行く直前で、香川に行ってから以前も掛かっていた鍼灸院で治してもらった。
右腕の可動状態を調べた後、首のレントゲン撮影4枚。診断結果は、「頚椎椎間板ヘルニア」。確かに、レントゲン写真を見ると、頚椎の5番と6番（だったかな）の間が狭くなっていて、舌状に飛び出しているのものが見える。これが腕につながる神経を圧迫しているのが原因らしい。
果たして、処方は鎮痛剤のみ。要するに治療方法はないということだ。「何か思い当たることは？」と聞かれて、その時は思い当たらなかったが、後で考えてみると、先週末MTBで山を下っていて派手に転んだ。幅1m程の登山道の谷側1/3が崩落していて、山側に寄ったらハンドルが接触して、谷に落ちかけた。木に引っかかって事なきを得たが、あれで首を痛めたのかもしれない。あるいは、先月の流血騒ぎが原因か？気を失って、思いっきり洗面台に頭をぶつけた。
「生活上注意することは」と尋ねたら、「姿勢を正しくすること」。ノートパソコンをのぞき込んだり、自転車で前傾姿勢を取るのは首に負担をかけるので症状を悪化させる。悪化したら手術しかないという。前傾姿勢のきついロードバイクは当面避けた方がよさそうだ。
さては、先月苦しんだ「五十肩」の再来か
(先月は左腕だったけど）と思い、今度は近所の整形外科へ。先月は、発症したのが香川に行く直前で、香川に行ってから以前も掛かっていた鍼灸院で治してもらった。右腕の可動状態を調べた後、首のレントゲン撮影4枚。診断結果は、「頚椎椎間板ヘルニア」。確かに、レントゲン写真を見ると、頚椎の5番と6番（だったかな）の間が狭くなっていて、舌状に飛び出しているのものが見える。これが腕につながる神経を圧迫しているのが原因らしい。
果たして、処方は鎮痛剤のみ。要するに治療方法はないということだ。「何か思い当たることは？」と聞かれて、その時は思い当たらなかったが、後で考えてみると、先週末MTBで山を下っていて派手に転んだ。幅1m程の登山道の谷側1/3が崩落していて、山側に寄ったらハンドルが接触して、谷に落ちかけた。木に引っかかって事なきを得たが、あれで首を痛めたのかもしれない。あるいは、先月の流血騒ぎが原因か？気を失って、思いっきり洗面台に頭をぶつけた。
「生活上注意することは」と尋ねたら、「姿勢を正しくすること」。ノートパソコンをのぞき込んだり、自転車で前傾姿勢を取るのは首に負担をかけるので症状を悪化させる。悪化したら手術しかないという。前傾姿勢のきついロードバイクは当面避けた方がよさそうだ。
2019年11月23日
マックス・ウェーバー
読みやすい新訳が出たので、読み直してみる。学生時代以来。
以前、フランス企業のドイツ工場で働く友人の話を紹介した。カトリック系のフランスと、プロテスタントのドイツの職場環境の違いが分かって面白かった。今でもそれだけの違いがあるわけだ
とすると、日本人の勤勉さはどこから来ているのか？いや、日本だけでなく、これは稲作地帯に共通する特徴なのか?
＊プロテスタンティズムの「禁欲倫理」から、近代資本主義が生まれた宗教と労働、資本主義の関係性。●ドイツでは経済的に発達した地方でプロテスタンティズムが信仰された・私的な生活から公的な領域まで、広く信徒の生活を規制する・教育熱心で、高等教育を受ける人の比率が高い・近代資本主義との親和性が高い。信者の大多数が商品人層の出身であり、傑出した実業家も誕生している。●ベンジャミン・フランクリン正直であること、勤勉であることは信用を築くうえで有益だから、美徳。功利主義的な「倫理」の最高善は、あらゆる享楽を退けて金を儲けること。利益の獲得が人生の目的。●「天職を遂行」すべきという感情資本主義的な実業家は、不必要な支出を嫌い、社会的な名声を誇示することも喜ばない。●「天職」マルティン・ルターによる宗教改革の産物職業は神から与えられた使命であり、世俗的な職業に従事しその義務を果たすことが、道徳的な実践活動そのもの。●イギリスの「ピューリタニズム」(清教徒主義）富を得て怠惰になること、時間を浪費することは、重い罪。1時間を失うことは、神の栄光を高める仕事の時間が1時間失われたこと。●近代の資本主義の精神を構成する本質的な要素の一つは、天職という概念を土台とした合理的な生活態度この態度は、キリスト教的な禁欲から生まれたもの。
2019年11月22日
史上最高の交渉者
1974年に行われた世論調査で、アメリカ人の88%が「非常に優れた交渉者」だとし、また、2014年に国際関係学を教えている1375大学の1615人の学者へのアンケート調査で、「過去50年間で最も有能な国務長官」と見なされたのがヘンリー・キッシンジャー。
そのキッシンジャーの交渉術をハーバード大学の学者たちが分析した書。セベニウスはビジネススクール教授で、バーンズはケネディスクール教授。そして、ヌムーキンはロースクールの教授と、ハーバードが誇る各大学院教授の共同研究というのが面白い。
キッシンジャーが演出したサプライズで、最も有名なのは「ニクソンショック」。1949年に中華人民共和国が建国されて以来、20年間にわたり、アメリカは中国を認めてこなかった。キッシンジャーは1971年に密かに中国の指導者、毛沢東、周恩来との交渉を始めた。ソ連と中国が長い国境を巡って対立するようになっていた機会をとらえた。こうして、翌1972年にニクソン大統領の電撃訪問が実現する。日本は最後まで蚊帳の外だった。
＊ヘンリー・キッシンジャーアメリカの国務長官として多くの重大な交渉に携わり、優れた手腕を発揮。・ユダヤ系ドイツ人1923年ドイツ生まれ。1938年アメリカに移住。1943年帰化。ハーバード大学・大学院修了→同大学教授1969年ニクソン政権国家安全保障問題担当大統領補佐官1973年国務長官・ズームアウトとズームインを繰り返す自らの戦略の確認(ズームアウト）と、面前の相手の観察（ズームイン）を繰り返しながら、目指す方向に向けて交渉を進める。・基本的前提を何度も見直す交渉のテーマなどについての基本的前提が正しいかどうか、何度も検討、確認する。・交渉のテーマに精通する交渉の分野について十分な知識を持つ。または、その分野に精通した人をチームに加える。・長期的な視点に立つ将来に多大な利益をもたらす合意を達成するために、長期的な視野に立って戦略を考える。・広角的な見方を取り入れる交渉相手だけでなく、広く他の関係者や問題を見渡し、取り組むべき相手や問題を見極める。・現実主義になる合意を得るために最低限必要な条件が整っているかどうか、慎重に評価する。・交渉の要素を不変と見なさない交渉の状況を有利に変えるために、関係者や要素を加えたり除外したりする。・戦略的に考え、臨機応変に対応する交渉の状況に変化が生じた時は、戦略を見直し、臨機応変に行動する。・表現力を磨く言葉を巧みに組み立てたり、あえて曖昧にしたりするなど、状況に応じて表現方法を変える。
2019年11月21日
教養なき国民が国を滅ぼす
「教養なき国民が国を滅ぼす」
帯には、そうある。教養こそが「大局観」を磨き、大事なところで道を誤らない。
ところが、現代社会の病の本質は、「世界的規模での民主主義の浸透に、各国国民の教養がついていってない」という不合理にあるという。民主主義国家ではリーダーは選挙を通じ国民が選ぶわけだが、この方法で適切な人を選ぶのは至難の業だ。選ぶ人が相当の教養を持ってないと判断できない。
「だが、歴史上、いかなる国家も成熟した国民という状態に到達していない」
これまでの民主主義国家は、例外なく衆愚政治で、民主主義は、国民の未熟を考えると、最低の政治システムなのだ。従って、各国の国民が十分な教養を持たない限り、混迷した世界の現状は永遠に続くということになる。
＊教養はなぜ必要なのか？どうすれば身につけられるのか？●人は通常、自分にとって価値のある情報を「嗅覚」で選ぶ。この嗅覚は、教養と、そこから生まれる見識によって培われる。●教養の歴史・古代ギリシアピタゴラス学派が自由人になるための技術として7科目音楽、算術、幾何学、天文の数学4科と、文法、修辞、論理の言語系3科・帝政ローマ末期これらを合わせて「自由7科」Liberal Artsと呼ぶようになった。中世に入ると、自由7科の上に哲学。・WW2後、教養主義は徐々に衰える現代人が教養を見下す。知性を軽視する「アメリカ化」●新しい情報社会に対応するには「現実対応型」の教養「情緒」（人生経験によって培われる心）や「形」（正義感、勇気など人間の在り方）と一体となった知識。●実体験を補う間接体験（追体験）読書や芸術などに親しむ→情緒や形●教養の4本柱・長い歴史を持つ文学や哲学などの「人文教養」・政治、経済、歴史、地政学などの「社会教養」・自然科学や統計を含めた「科学教養」・古典芸能やマンガなど、我が国の誇る「大衆文化教養」
2019年11月20日
IT立国エストニア
SB孫社長の弟、孫泰蔵さん監修、HBR編集部の小島健志著によるエストニア取材記。「人口130万人の小国が、いかにしてIT先進国になったのか」。
1991年に旧ソ連から独立したとき、エストニアは混乱の極みにあった。1918年に建国されたエストニアは、その大半が占領の歴史だ。旧ソ連向けの輸出がなくなったことで、GDPは2/3規模になり、企業倒産が相次いだ。
この時首相になったのが、32歳のマルト・ラールで、市場開放と西側諸国の一員になることを目指した。まもなく、普及し始めたインターネットに目を付けることになる。エストニア人はもともと数学の教育水準が高く、旧ソ連時代は、エストニアに暗号技術の軍事研究所が置かれていたそうだ。
IT戦略が功を奏し、2004年にEU加盟。一人当たりGDPは、1993年の$5573(約60万円）から、2016年には$2941（約330万円）へと、5倍以上になったという。もはや日本とあまり変わらない水準だ（400万円）。
衝撃的なのが、「税収に占める行政コストの割合」。エストニア 0.4%（OECD52か国中3位）に対して、日本は1.74%（同52位）。要するに、日本はOECD諸国中最も効率が悪い。マイナンバー導入一つに何十年も掛かるのだから、当然なのだが、これは長年導入に反対してきた野党と、それを支持してきた国民の責任。税収は60兆円あるわけだから、行政コストがエストニア並みに下がれば、60兆円ｘ1.34%＝1兆円近く実際に使える税金が増える。
・1991年に旧ソ連から独立〜IT戦略による新しい国造り様々な行政サービスをオンライン化することで「電子政府」を実現。・電子署名紙の契約書がなくなった。・出生届や死亡届など行政手続きの99%が24時間365日オンラインで行える「結婚」「離婚」「不動産売却」だけはオンラインでできない〜早まってはいけない。・電子身分証明書の普及で、確定申告や税徴収が効率的に税収に占める行政コストの割合エストニア 0.4%（OECD52か国中3位）日本 1.74%（同52位）・プライバシー保護個人情報がいつ誰に利用されたのか、国民が自ら専用サイトでログを確認できる。職務上知り得た他人のデータを不正利用した人には厳罰。・セキュリティ対策ブロックチェーン技術で、データ改ざんをリアルタイムで検知。・外国人用「仮想住民」e-residency電子政府の体験、電子署名のしよう、オンラインによる法人設立の3つのメリット。・オンラインプラットフォームの開放国境を越えて活躍するIT人材「デジタルノマド」を取り込み、国の活性化。
2019年11月19日
不動産取引の1/4が海外勢
昨年も同じ作者による『爆買いされる日本の領土』を紹介したが、その第2弾。
今や、「日本の不動産取引の1/4が外国人」というのはなかなか衝撃。中身は、おそらく、ファンドを含む法人と個人両方なのだろう。例えば、北海道の「星野リゾートトマム」と「サホロリゾート」のオーナーは、中国の投資会社「復星集団」だという。トマム地区の外国人比率は49%(2018年7月）で、半数を超える日も近そうだ。
前著でも指摘されていたが、日本ほど外国人が不動産を自由に買える国は稀だ。島国であったため、「外国人が土地を買う」という事態が法律上そもそも想定されていない。NZは0.4ha以上の土地を外国人が所有するには許可が必要だ。インド、シンガポール、マレーシアも制限付き。中国、インドネシア、フィリピン、ミャンマーなどでは外国人の土地所有は認められていない。
買い手が増えて資産価値が上がるのは基本的に日本経済にとって良いことなので、禁止すべきだとは思わない。しかし、日本は土地所有者の権限が強く、そこをどう利用しようが自由だ。登記が義務でないので本当の所有者が不明なまま、土地売買がされるケースもある。相続を経て、所有者不明になっている土地は九州の面積を上回るという。
登記の義務化と、土地使用制限の強化は必要だ。
＊不動産取引の1/4が海外勢2017年の海外投資家の日本国内での不動産取得額は1.1兆円＝24%。・日本の不動産は誰でも買えて、自由に転売できる日本の法律は、国民以外の者が土地を所有することを想定していない。・諸外国の場合、外国人の土地所有には許可が必要外国人の土地所有を認めない国も。
2019年11月18日
欧州リベラリズムの死に方
これを読むと、欧州での右派の台頭理由が分かる気がする。それは、アメリカにおけるトランプ大統領人気とは少し違う。アメリカの場合、産業構造の変化に対応できなかったラストベルトの白人労働者階級が支持母体で、産業構造の変化に移民は直接関係ない。移民はスケープゴートになった感が強い。
それに対して、欧州の移民問題はより深刻だ。一つには、もともと移民国家でなく耐性が小さいこと、二つ目にアメリカほど移民を能力で選別しなかったことだ。
2013年に公表された調査報告書「英国に対する移民の財政的影響」では、「移民は国家財政に貢献している」とされた。ところが、よく見てみると、この調査はEEA（欧州経済圏）から来た移民しか対象にしていなかった。これらの裕福な移民は「2001-11年に英国経済に220億ポンドの貢献を果たした」と推定している。
ところが、EEA域以外からの移民は、収めた税金を950億ポンド上回るサービスを享受していた。つまり、英国にやって来た全ての移民を撮れば、支払った税金よりも受け取った金額の方がはるかに多かった。
●欧州での移民増加・England/Wales移民の数10年間で300万人増（2012国勢調査）・ロンドンの住民のうち「白人の英国人」は44.9%・キリスト教徒は400万人減り、イスラム教徒は120万人増●欧州の政治家は、移民問題に何の手も打たなかった・懸念する市民を「人種差別だ、偏狭だ」と非難した。●経済成長や人口維持のために必要か？・移民は収めた税金以上のサービスを享受している＝大量移民は国を貧しくする●移民による地元女性のレイプ・人種差別的な中傷であるように思われるため表面化しない●このまま移民が続くと・移民の国民が増え、政治力を増す・その結果、移民の流れを約転するための政策が出来なくなる
2019年11月17日
民族の興亡
『楊令伝』の歴史背景を整理すると、以下の通り。
・漢族の「宗」は梁山泊と「金」に敗れて、南へ逃れる（南宋）
・女真族の「金」は、契丹族の「遼」を滅ぼして燕雲16州を併合
・宋禁軍の将校だった岳飛と張俊は、それぞれ隆徳府と北京大名府に拠って軍閥化
・貿易立国を目指す梁山泊は、羌族の「西夏」に通行料を払って西域との交易を始める
どこまでが史実で、どこからが創作か？
まず、国の興廃は史実の通り。軍人が力を持ちすぎて滅んだ唐の後に起こった宋では「文治政治」が徹底されていた。政治に関われるのは科挙に通った文官のみで、武官はその下に置かれた。今でいう、シビリアンコントロールだ。この結果、軍事力は弱まったが、江南地方を中心に稲作で技術革新があり、生産力が飛躍的に高まった。この経済力で北にあった「遼」には毎年絹と銀を送り、平和を金で買っていた。
モンゴルで起こった北方民族が916年に建国したのが「契丹」。「遼」は契丹の漢名。女真は後の満州族で、「遼」を滅ぼして「金」を建国したが、後にモンゴルの「元」に滅ぼされる。
岳飛と張俊は実在の武将。梁山泊の反乱があったのは史実だが、小説にあるように、領土を得て国を造ることはなかったようだ。
94：韓世忠軍人として天賦のものを持っているだけでは、駄目なのだ。罪があろうとなかろうと、領民でさえ殺す残酷さ。盟友をも処断できる、孤独に耐える強さ。106：岳飛と張俊それぞれ、領地を持っていたのだ。民生を整えることで、軍の存続を可能にしている。これから、大きくのびる余地はあるのだ。159：燕雲16州人口は北よりずっと多い。広大な地域の統治をどうすればいいかというのは、進攻以来、金国が抱え込んだ最も大きな問題だった。209：南船北馬南宋軍を水上で編成する。(中略）江南を本拠にするなら、水軍は必要である。
2019年11月16日
実写版『攻殻機動隊』
島田先生宅で劇場版『攻殻機動隊』を見てから2年。アップグレードされた（アンプ＆スピーカー）ホームシアターでハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』を堪能。
ハリウッド制作の実写版で、ビートたけしが主人公である「少佐」の上司。少佐の母親役に桃井かおり。原作はもちろん士郎正宗で、傑作であったアニメ版は押井守監督。
押井守監督は、「相当奇妙な映画」だと辛口の評価。でも、よく読むと、映画がどうこうというより、「ゲームの方が面白い」という話になっている。ゲームをしないのでよく分からないが、世界中であれだけの人が多大な時間とお金を費やすだけの魅力を持っているわけだから、様々な分野に(特に教育）応用できるはず。
映画自体がゲームに水をあけられている。この2年間、ゲームばっかりやってきた結論として、これは映画ヤバイんじゃないって感じた。映画だと2時間で終わっちゃうけど、Fallout（核戦争後の地球を舞台にしたゲーム）は200時間やっても飽きない。
100人の人間がそれぞれ違う印象で席を立つっていうのを地で行ってんのがゲームなんだよね。100人が100人、違う物語を見てる。
2019年11月15日
貿易立国
『水滸伝』は、主に腐敗した宋を倒すという、漢民族同士の「内乱」の話。その続編にあたる『楊令伝』では、ついに宋を倒した梁山泊が国造りに入る。国を倒すよりも、国を造るほうがよほど難しい。
長年、宋と北の国境を争ってきた契丹族の遼は、女真族と結んだ宋と挟み撃ちにされ亡びている。女真族反乱軍の中心にいたのは、梁山泊再興前の楊令だ。楊令は「幻王」と名乗り、遼軍相手に情け容赦ない戦いを行い、女真族の金国樹立に貢献した。
領土を広げることはせず、三州400万人を領土として国造りを進める梁山泊。地租は収穫物の1割とし、これはこれまでの宋の1/4だ。この他に、成年男子全員に1年間の兵役がある。1割では国防のための軍と統治のための官僚を養うのは不可能。実際、宋禁軍の将軍で独立して隆徳府に拠った岳飛は、当初梁山泊への対抗上税金を2割とするが、たちまち財政破綻の危機に直面し、4割に上げる。
楊令は日本との貿易で稼ぎ、さらに西夏を通って、さらに西域の中近東と三角貿易する「貿易立国」で国家財政を賄おうと考えていた。税金が少なければ梁山泊にビジネスは集まる。ビジネスが集まれば国は栄える。
ただ、この方式をやるには大国では難しい。現在でも、このTax Resort方式で栄えているのは、シンガポールや香港など都市国家か、オランダやアイルランドなど小国ばかりである。
93：金国この国でももう一つ厄介なのは、旧遼の民の統治である。大部分が契丹族で、女真族とは合わないものも多い。206：西夏「古来、西夏は隊商を通してきた。羌族と言うべきかな。わずかな関銭で、人と物を通過させ続けてきたのだ。人を通す。物を通す。それは羌族の地の中にある」263：岳飛「夜になったら、進発する。馬には草鞋を履かせ、兵は枚を噛め」
2019年11月14日
アフターデジタル時代のビジネス原理
基本戦略は、「顧客接点はアナログで、バックエンドはデジタルで」。人間の特性として、人の手を煩わせたものにはありがたみを感じ、難なく自動的に提供されたものにはなかなか価値を認めない。出来が全く同じでも、「手作り」は希少性もあって高く取引される。
無償で提供されているWebサービスの多くは、利用価値としては多大なものがあるが、お金を払う気にならないのはネットワーク上でクリック一つで提供されるからだろう。
無償で提供されているWebサービスの多くは、利用価値としては多大なものがあるが、お金を払う気にならないのはネットワーク上でクリック一つで提供されるからだろう。
�々睇囘拈榲世砲茲觜堝哀如璽燭肇┘�スペリエンス品質のループを回すこと。・頻度や接点の特性でレベルを分けるハイタッチ：一人ひとりの顧客に個別対応→特定の人に対応できるからこその感動や、信頼を得られるような徹底した対応を提供。ロータッチ：ワークショップやイベントなどの「場」ではリアルだからこその心地よさや得難い密度の情報を提供する。テックタッチ：オンラインサービスやオンラインサロンでは、プロセスが短くて便利で、さらに高頻度で使うと得をするというインセンティブを提供する。�▲拭璽殴奪箸世韻任覆�、最適なタイミングで、最適なコンテンツを、最適なコミュニケーション形態で提供すること。行動データに基づいた「顧客理解」と「即時性」の重要性が高まる。
2019年11月13日
援助ではなく投資を
著者は、学生時代からアフリカに行き、その後毎日新聞社でヨハネスブルク特派員、ワシントン特派員などを歴任。2014年三井物産戦略研究所で、欧露中東アフリカ室長。2018年から立命館大学で教えるアフリカの専門家。
著者のメッセージは、「アフリカは変わっている」ということと「援助ではなく投資を」。内戦と腐敗のイメージが強いアフリカだが、近年は、多くの国で経済成長が持続し、平和と民主主義の定着が進んでいるらしい。
日本では、援助を餌にアフリカに進出する「中国は嫌われている」という通説があるが、実際はそんなことはないという。BBCの調査でも、サブサハラの主要国で中国の支持率は高く、どうやらこの説は、「日本の願望」であるようだ。
8：はじめにバブルが弾けた後も日本のODA総額は1990年代を通じて世界最大であり、多額の援助がアフリカに供与された。14：援助ではなく投資を2015年世界人口推定7383M うちサブサハラ・アフリカ969M。2050年推定世界人口の1/430：躍進と変革のエチオピア2016年エチオピアのGDPがケニアを凌駕。ナイジェリア、南アフリカ、アンゴラに次ぐサブサハラNo.4に。資源依存ではない製造業中心の高度経済成長。96：中国の影響（2014BBC調査）「肯定的」ナイジェリア 85%ガーナ 67%ケニア 65%願望としての「嫌われる中国」141：南アフリカで多発する外国人襲撃（Xenophobia)1986年法改正 それまで厳しく制限していた「非白人」の南アへの入国を認める。1994年の民主化後に急増。南アの移民数は現在推定404万人＝総人口5800万人の7%。
2019年11月12日
起業活性化の経営理論
Part 9 も、それぞれが裏付けのある研究調査に基づいているので、説得力がある。中でも、「クリステンセンが見つけた起業家の思考パターン」が面白い。似たような調査はこれまでも世界中で行われてきたと思うが、すごいのはインタビューされた22人の起業家のリストだ。
ジェフ・ベゾス（Amazon)
マイケル・デル（DELL）
ハーブ・ケラー（Southwest Airlines）
ピエール・オミダイア（eBay）
ニクラス・ゼンストローム（Skype）
マイク・ラザリディス（RIM）
ピーター・ティール（PayPal）・・・
これだけの起業家のアポを調査期間中に取りつけてインタビューするというのは、HBSクリステンセン教授の高い知名度があってこそ可能。
「リアル・オプション理論の視点から、経営者が事業をたたむときのコストが低い倒産法や法手続きを有している国ほど、起業家はリスクを取りやすくなり、結果としてその国の起業活動が活性化する」というのが興味深い。
日本は諸外国に比べて、倒産法や手続きは不利ではないという。手続きコストも比較的低い。では、なぜ、起業活動が低調なのか。それは、「キャリアのたたみやすさ」の違いではないかという仮説が提示される。端的に言えば、「起業して失敗した人が、前にいた業界に戻れるか？」
今、社外取締役をやっている会社(未公開）は、社長が東大生の時に創業している。「不安はなかったのか」と聞いたら、「ダメなら普通に就職すればよかった」ということ。確かに
日本は人材流動性が全体的に低いことが、起業率を低くしている可能性が高い。
253：リアル・オプションの事業計画
事業環境の不確実性が高いときには、慎重に計画を立ててから巨額の投資をするよりも、まずは早く部分的に投資をして、その後で必要なら段階的に追加投資したほうがよい。
�〇�業環境が悪化した時のリスクを減らしながら、��他方で上振れのチャンスを逃さない。
255：たたみやすさが起業を促す
「失敗事業のたたみやすさ」の違いが、世界各国の起業の活性化の違いに影響している。（Lee, S., Peng. M. & Barney, J. 2007. Bankrupcy Law and Entrepreneurship, AMR)
「リアル・オプション理論の視点から、経営者が事業をたたむときのコストが低い倒産法や法手続きを有している国ほど、起業家はリスクを取りやすくなり、結果としてその国の企業活動が活性化する」
日本の倒産法や手続きは、不利ではない。倒産手続きにかかる時間は0.6年で、米国や韓国（どちらも1.5年）よりも短い。手続きコストも相対的に低い。
261：キャリアのたたみやすさ
起業して失敗した人が、前にいた業界に戻れるか？
264：ハイブリッド起業家は、世界では珍しくない
英国〜「完全に独立した起業家」（フルタイム起業家）よりも、会社勤めを続けながら起業する「ハイブリッド起業家」のほうが多い。（Burke, A. et al. 2008)
フランスでも全起業家の内の18%、スウェーデンでは32%、オランダでは68%がハイブリッド。
269：ハイブリッド起業のほうが成功しやすい
ハイブリッドからフルタイムに移行したほうが、「会社を辞めていきなりフルタイム起業」よりも、生存率が3割高い。（Reffiee, J. & Feng, J. 2014)
277：パッション→コミュニケーション→成長
「経営者のパッションは、ベンチャーの成長率に直接は影響しない」
他方で、「強いパッションのある経営者ほど、従業員とのコミュニケーションを重視する傾向が強く、そしてコミュニケーションが盛んな企業ほど、その成長率は高まる」（Baum, R. & Locke, E. 2004)
279：クリステンセンが見つけた起業家の思考パターン
��Questioning
現状に常に疑問を投げかける態度。中でも重要なのが”What if"
「もし私がこれをしたら、世の中はどうなるか」を考え続ける。
��Observing
興味を持ったことを徹底的にしつこく観察する。
��Experimenting
それらの疑問・観察から「仮説を立てて実験する」。
ベゾスは小さい頃から自宅ガレージを「実験室」のように使っていた。
��Idea Networking
「他者の知恵」を活用する。
eBay創業者ピエール・オミダイア：なにか疑問ができたときに重要なのは「自分がどう考えるか」ではなく、「まずこの問いを誰と話すか」
2019年11月11日
同族経営とCSRの功罪
長いので、少し飛ばす。Part 8「同族経営とCSRの功罪」。同族企業は良くも悪くも話題になりがち。
最近の事件になった例では、大王製紙事件「溶ける」、今も続いている大塚家具のお家騒動など。企業経営という「物語」に加えて、一族の「物語」が加わり、話として面白いのだ。
経営学の研究では、日米ともに、「同族企業の方が業績が良い」傾向があるという。ただし、調査対象となっているのはいずれも上場企業であるので、その辺の中小企業の話ではない。日本の上場同族企業として業績が良いのは、ロート製薬（山田邦雄社長）、サントリー（佐治信忠前社長）など。
加えて、日本では昔から「婿養子が一番いい」とされてきた。同族企業のマイナス面である「資質に劣る経営者が創業家から選ばれてしまうリスク」を排除できるので、当然だ。
著名経営者の婿養子例としては、アシックスの尾山基氏、松井証券の松井道夫氏、スズキ自動車の鈴木修氏などがいる。
経営学の研究では、日米ともに、「同族企業の方が業績が良い」傾向があるという。ただし、調査対象となっているのはいずれも上場企業であるので、その辺の中小企業の話ではない。日本の上場同族企業として業績が良いのは、ロート製薬（山田邦雄社長）、サントリー（佐治信忠前社長）など。
加えて、日本では昔から「婿養子が一番いい」とされてきた。同族企業のマイナス面である「資質に劣る経営者が創業家から選ばれてしまうリスク」を排除できるので、当然だ。
著名経営者の婿養子例としては、アシックスの尾山基氏、松井証券の松井道夫氏、スズキ自動車の鈴木修氏などがいる。
230：同族企業は業績も悪くない日米の研究とも、同族企業の方がROAが高い（上場企業）。�〜篭伐箸�大口株主（エージェンシー問題が少ない）��企業と一族を一体としてみなす結果、長期的な視点��マイナス面：資質に劣る経営者が創業家から選ばれてしまうリスク→婿養子同族企業の業績がいいのは理論的に当然
2019年11月10日
DNAが解き明かした世界史の謎
歴史には「飛躍や欠落、あるいは意図的な秘匿」がある。それは、「あらゆる出来事を記録するのがそもそも不可能であることに加え、後世の人間にとって最も都合のよい事実だけが、時に脚色を交えながら伝えられてきた」からなのだが、DNA鑑定の登場は歴史の一部の真実を明らかにした。
例えば、ツタンカーメン。ツタンカーメンは古代エジプト第18王朝の王で、死後、その名前がエジプト史から消されていたため、その墓所が発掘されるまで存在すら知られてなかった。だから、当然、ツタンカーメンの両親が誰であるかも推察にしか過ぎなかったのだが、DNA鑑定で分かったことは、父であるアクエンアテン王は、自らの姉妹のうちの誰かとのあいだに、ツタンカーメンを儲けたということ。
アメリカ独立の父トーマス・ジェファーソンには、自宅で使えていた奴隷との間に子を儲けたという噂が長年あった。こちらは、その子の子孫を辿ってDNA鑑定したところ、確かにジェファーソンの子孫であることが証明された。
例えば、ツタンカーメン。ツタンカーメンは古代エジプト第18王朝の王で、死後、その名前がエジプト史から消されていたため、その墓所が発掘されるまで存在すら知られてなかった。だから、当然、ツタンカーメンの両親が誰であるかも推察にしか過ぎなかったのだが、DNA鑑定で分かったことは、父であるアクエンアテン王は、自らの姉妹のうちの誰かとのあいだに、ツタンカーメンを儲けたということ。
アメリカ独立の父トーマス・ジェファーソンには、自宅で使えていた奴隷との間に子を儲けたという噂が長年あった。こちらは、その子の子孫を辿ってDNA鑑定したところ、確かにジェファーソンの子孫であることが証明された。
�ぁ屮張織鵐�ーメンの母」は誰か？156：古代エジプト第18王朝何人かの王たちの名が歴史から消されている。なかでも有名なのがツタンカーメン王。158：一神教のはじまりアテン神の名にちなみ、自身も「アクエンアテン」と改称したアメンホテプ4世によるこの宗教改革は、人類史上初めての唯一神信仰、すなわち一神教のはじまりとされる。アマルナへの遷都をともなったことから、「アマルナ革命」の名でよばれている。175：ツタンカーメンの母アクエンアテン王は、自らの姉妹のうちの誰かとのあいだに、ツタンカーメンを生んだ。180：ミイラのDNA鑑定が示す難しさ微量のDNAを解析する場合には、DNA量を増幅するPCR法という技術が使われるため、ごくわずかなコンタミネーション(混在物）も大きく増幅されてしまう可能性がある。�ァ屮┘献廛反諭廚箸浪深圓�？185：エジプトは古来、人類の移動・拡散に関する重要ポイントであり続けてきた。現生人類であるホモサピエンスがアフリカを出て他の地域に広がっていったのもエジプト経由だし、その地理的条件から、隣接するヌビアやリビア、アッシリア、さらにはペルシアやアラブ、トルコだけでなく、ギリシアやローマなどの欧州文化も流入している。�┘函璽泪后Ε献Д侫 璽愁鵑了劼匹發燭�226：トーマス・ジェファーソン住んでいたバージニア州シャーロッツビルにある邸宅モンティチェロに多くの奴隷を抱えていた。その中の一人であるサリー・ヘミングスとのあいだに子どもを儲けていた。
2019年11月09日
三体問題
中国のSF作品を初めて読んだ。アジア圏の作品として初のヒューゴー賞長編部門受賞。本書に始まる＜三体＞三部作は、本国版がなんと合計2100万部売れたというから文字通り桁が違う。英訳版も100万部以上売れ、オバマ大統領がホワイトハウスで読んでいるというので話題になった。
「とにかくスケールがものすごく大きくて、読むのが楽しい。これに比べたら、議会との日々の軋轢なんかちっぽけなことで、くよくよする必要はないと思えてくる」（NYT 2017/1)
「三体」とは、天体力学の「三体問題」に由来する。3つの天体がたがいに万有引力を及ぼし合いながらどのように運動するかという問題で、一般には解けないことが証明されいるそうだ。(解説）
物語は、文化大革命の北京から始まる。実は、2008年に中国で発刊された際には、別の場面から始まっていた。当局を刺激することを避けたのだ。これが2014年に英訳版が出る時に、本来の順番に戻し、日本版もこれに倣った。
文革が終わって50年。ようやくだ。
11：中心部からはずれたある大学のグランドでは、数千名が参加する批闘会（批判闘争大会）がはじまってから、すでに2時間ほどが経過していた。派閥が林立したこの時代、あらゆるところで派閥同士の関係が錯綜し、複雑に対立し合っていた。(中略）今回の集会の批判対象は、反動的学術権威だった。どの派閥にとっても、彼ら反動的学術権威は攻撃すべき格好の標的だったから、対象者は、すべての派閥からいっせいに与えられる残酷な仕打ちを甘んじて受けるほかなかった。北京では40日間に1700名あまりの闘私批集会対象者が打ち殺され、さらに多くの者が、狂気に支配された批判を避ける近道としてみずから死を選んだ。25：生産建設兵団彼らのエネルギーは、広大な樹林の山をチェーンソーで禿げ山に変え、トラクターとコンバインで広大な草原を耕して畑に変え、さらには砂漠へと変貌させた。
2019年11月08日
最先端の組織学習論
Part 4は「最先端の組織学習論」。「成功体験と失敗体験の望ましい順序」とは、いくつか失敗を経験してから（あるいは経験しつつ）成功していくこと。
「日本でも、若くして（失敗経験の乏しいまま）成功した起業家・ベンチャー企業がその後長期低迷する事例」があるのは、新興市場に新規上場した会社の多くが（感覚的には半数以上？）上場時がピークで、その後伸び悩むということはよくあることでも明らか。
多くはニッチ市場で成功して上場するのだが、市場の伸びが止まるとともに、会社の成長も止まるパターン。もう一つは、市場が大きくなったゆえに、競合も参入して利益率が下がるパターンだ。例えば、30億円の市場でシェア33%10億円の売上で上場するのだが、それ以上伸びなくなってしまう。
経験豊富な経営者であればそうなる前に手を打つが、失敗経験の少ない経営者は自分の能力に過剰な自信を持ち、危機になるまで気づかない。
113：大事なのは「情報の共有化」ではない組織の学習効果、パフォーマンスを高めるために大事なのは、「組織のメンバー全員が同じことを知っている」ことではなく、「組織のメンバが『他のメンバーの誰が何を知っているか』を知っておくこと」。"Who knows what"123：「ブレスト」のアイデア出しは実は効率が悪い経営学や社会心理学では古くから知られてきた。�‖昭圓悗竜し鵑諭↓⊇乎弔馬辰校�は思考が止まりがち個人がバラバラでアイデア出しをするほうがブレストよりも出て来るアイデアの数も、質も高まる。127：ブレストは組織の記憶力を高めるトランザクティブ・メモリー140：成功体験と失敗体験の望ましい順序「失敗をほとんどしないまま、成功だけ積み重ねる」と、サーチ行動が十分でないまま成功するので、長い目で見た成功確率が下がる。
2019年11月07日
先端イノベーション理論と日本企業
続いてPart 3「先端イノベーション理論と日本企業」。
イノベーションと創造性とは、学術的にも実務でも、互いに異なる概念だという。
「いくら創造的で新しいアイデアを出しても、それが製品化、会社での導入・特許化など、実際に活用されるところまでたどり着かなければイノベーティブとは言えない」
創造的であるための要件と、それを実現するための能力は全く別であるので、これを一人の人間が行うのは難しい。結論は、「チャラ男」と「根回しオヤジ」が最強の組み合わせ、ということになる。
94：弱いつながりの方が優れている創造性：新しいアイデアを生み出す力←新しい組み合わせ←知の探索＊幅広い人々から多様な情報が効果的に流れる「弱い結びつきのネットワーク」が有利。100：イノベーションと創造性の違い新しいアイデアは、それが実際に活用されるところまでたどり着かなければイノベーションにはならない。102：足りないのは「創造性」か「実現への橋渡し」かクリエイティブになるには「弱い人脈」が重要。しかし、創造的なアイデアを売り込むためには、「強い人脈」が必要。（Baer, M. 2012)＊「チャラ男」と「根回しオヤジ」が最強の組み合わせ
2019年11月06日
競争戦略の誤解
10年間米国の各大学で経営学を研究して、2013年に帰国、早稲田大学ビジネススクールの准教授に就任した入山先生による2冊目の本。
処女作の『世界の経営学者はいま何を考えているのか』では、「アメリカの経営学者はドラッカーの本をほとんど読まない。ドラッカーの考えに基づいた研究も全く行われていない」という点が一番反響があった。入山先生本人も、「ドラッカーの本をほとんど読んだことがない」と告白している。それは、研究して論文を書くことが仕事の経営学者と、実務に影響を与えることを目的とした「啓蒙書」の違いだ。詳しくは本書の第24章に。
ここでは、Part 2「競争戦略の誤解」を紹介したい。ポイントは、「業界構造ごとに適用できる競争理論が違う」という点だ。当然だが、「万能な戦略」などありはしない。強いて言えば、常に「ムダ金を使わない」はそうかもしれないが。
最先端でかつ成長速度の速い業界とは、ベンチャーが挑戦する典型的な市場だ。こうした市場タイプを「シュンペーター型」という。もちろん、「経済成長の源泉はイノベーションにある」と喝破した経済学者ジョセフ・シュンペーターから来ている。
シュンペーター型では、競争戦略が不確実だから、長期的な戦略が立てられず、リスクを抑えながら市場に参加し、その場その場で対応していくしかない。最低限のコストで最小限の製品（サンプル）を市場に最速で出し、顧客と対話しながら、市場があるかどうかを見極めながら完成品として仕上げていく「リーンスタートアップ」はその一手法だ。
44：ポーターの競争戦略（SCP戦略）ポジショニングとは「業界内のライバルと較べて、自社がどのような製品・サービスを顧客に提供していくか」を考える。「差別化戦略」か「コストリーダーシップ戦略」か。44：Resource Based View (RBV)ユタ大学ジェイ・バーニー「企業の競争優位に重要なのは、製品・サービスのポジショニングではなく、企業の持つ経営資源にある」45：3つの競争の型型ごとに適用できる競争理論が違う。ジェイ・バーニーAMR1986��IO(Industrial Organization)産業組織型産業構造が比較的安定した状態で、その構造要因が企業の収益性に大きく影響する業界。例：参入障壁が高くて、新規企業が参入しにくい。大手2-4社が市場シェアの大部分を占める寡占状態。各社が穏やかに差別化しながら、ガチンコ競争を避けている。→SCP戦略が有効「競争環境が寡占化に進む方が、企業は安定して高い収益を上げられる」�▲船Д鵐丱譽鷏�IO型よりも参入障壁が低く、複数の企業がある程度差別化しながら、それなりに激しく競争。差別化がポイントで、技術力やサービス力が必要。→RBV戦略が有効「技術・人材などの経営資源に注目」��シュンペーター型競争戦略の不確実性の高さ。例：技術進歩のスピードが極端に早い。新しい市場で顧客ニーズがとても変化しやすい。→リアル・オプション「不確実性の高い時は、まずは少額でもいいから投資をしたり、小ロットでいいから製品・サービスを市場に出したり、リスクを抑えながらも市場に参加する」56：学術的定義のない「ビジネスモデル」"The business model depicts the design of transaction content, structure, and governance so as to create value through the exploitation of business opportunities"(Amit&Zott, 2001, SMJ511)�＿礎佑料和ぁ↓⊆卞盂阿任匹里茲Δ柄蠎蠅砲匹里茲Δ柄蠎蠅砲匹里茲Δ兵莪�をするか、��それらを構造的に結びつけ、�い修亮莪�の担当主体を決める、�イ修譴藜莪�群の全体をまとめたデザイン58：優れたビジネスモデルの4条件(Amit&Zott, 2001, SMJ511)�仝�率性（Efficiency)従来よりも取引上のコストを抑えられるBMデザイン。�∧箚粟�（Complementarity)複数の取引主体を結び付けることで単体では得られなかった効果を得る「シナジー効果」。�０呂す�み（Lock-in)顧客を競合他社の製品・サービスに流出しにくくする。典型例「ネットワーク効果」。�た郡饑�（Novelty)イノベーティブなBMデザイン。技術的なイノベーションとは異なり、取引主体との関係性や構造に変化を起こす。代表例「それまで結びついていなかった取引主体同士をつないだり、その関係性を変える」63：ビジネスモデルは、戦略ではないBM「社内外のビジネス取引全体のデザイン」戦略「業界内で企業がどのようなポジショニングを取るかなどの行動パターン」��BMの「新奇性」が高い企業は企業価値が高い��競争戦略の方では「差別化戦略」が一貫して企業価値を高める。その効果はBM「新奇性」が高いときにさらに強まる。(Amit&Zott, 2008, SMJ)
2019年11月05日
オフラインのない時代に生き残る
「アフターデジタル」の到来とは、
・デジタルが至るところに浸透し、常時接続が当たり前になると、これまでオフラインだった行動も含めて、すべての行動がオンラインデータになり、IDにひも付けられるようになる。
・人々の感覚としても、デジタル世界に住んでいるような状態になり、オンラインとオフラインを区別しないようになる。
状態を言う。
アフターデジタルで先進的なのは中国。それは、「共産党の一党支配だからできる」で片付けられない変化だ。変革のドライバーは民間企業であり、様々な試行錯誤を国が許している。制度作りが先行する日本とは違い、自由にやらせて問題が起これば規制するという、シリコンバレー流の「原則自由」方針を取っている。
面白いサービスの一つが、Alipayの新サービス「相互宝」。医療共済なのだが、加入は無料。一人がけがや病気をすると、かかった医療費を加入者全員で割り勘にする。本来の共済の仕組みをP2Pで実現している。月に2回書類申請のタイミングでケガや病気になった人が必要書類を提出し書類審査を受ける。申請が認められれば、Alipayの手数料10%(上記記事では8%になっているので値下げしたか）を上乗せした費用を加入者数で割った金額が請求される。
もともと、Alibabaの信用スコア「芝麻信用」が650点以上のユーザーだけが加入できるので、保険金詐欺防止のために入口でスクリーニングをしている。審査書類は保険加入者全員がいつでも確認でき、異議を唱えられる。加入者は7000万人も居るので、いつどこで不正がバレるかもしれない。そして、保険金詐欺となれば刑事罰になるだけでなく、「芝麻信用」にも大きな傷がつくから、支払保険金が最大30-480万円（疾病内容による）では不正を働くインセンティブがない。
損害保険の手数料率は40%もあり（保険会社職員の人件費や代理店の手数料）、これが10%以下に減ることのメリットは大きい。さらに、保険ビジネスは常に保険金詐欺との戦いで、ある大手損保の知り合いによれば「モラルリスクがなければ保険料半分でもやっていける」と言う。これが本当なら、保険料100として、50がモラルハザード、40が保険会社の取り分で、優良な保険加盟者に還元されるのはたったの10
これは極端にしても、従来の医療保険の半額にはできそうだ。実際、2019年の加入者負担額の上限は188元（約3000円）だという。万一、これを上回れば、AliPayを運用するアント・ファイナンシャルが負担する。
13：電子国民化が進むエストニアe-Residencyで簡単に電子居住権を得られる。国民の個人情報はオンラインで見られる（所有不動産、納税額、登録免許など）。17：中国モバイル決済2004 Alipay シェア54%Wechat Pay19：あらゆる消費者の購買行動のデータが取れるようになった54：OMO (Online Merges with Offline)リアルとデジタルを分ける時代の終焉83：日本企業にありがちな思考の悪例�仝�率とテクノロジー中心の無人化Jian24：リアル店舗での購買行動を録画し、データとして蓄積して分析することで、行動導線、悩む時のタイミングなど、リアル購買行動データのコンサルティングのような存在を目指している。�◆屮�ンラインを活用する」という逆OMO顧客属性の情報だけだと価値はない。行動の持つ意味合いを読みとり、最適なタイミングで最適な情報提供が出来て初めて意味がある。��プロダクトを中心に据える94：OMOを創る時の思考：RPG型世界観ビジネスゲーム的にインセンティブ獲得が設計されている。150：Alipay「相互宝」疾病保険：加入は無料。一人がけがをすると加入者全員で割り勘初日に30万人、8日で1000万人、2週間で2000万人加入。月に2回書類申請のタイミングでケガや病気になった人が必要書類を提出→審査審査書類は保険加入者がいつでも確認でき、異議を唱えられる。信用スコア「芝麻信用」が650点以上のユーザーだけが加入できる。
2019年11月04日
奇跡の靴
先日JICA日系研修で訪問した「四国でいちばん大切にしたい会社大賞」と「日本で一番大切にしたい会社大賞」をダブル受賞している徳武産業の経営手法やエピソードを集めた本。著者は、あさ出版社代表で「日本で一番大切にしたい会社」大賞の審査委員でもある。
タイトルになっている「神様がくれたピンクの靴」とは、90歳になる老人ホームの女性入居者が購入したピンク色の「あゆみ」（徳武産業が作るケアシューズのブランド名）のこと。それは、東京営業所に掛かってきた一本の電話が発端だったという。
「お宅は歩けない人に靴を売りつけるんですか！そうまでしてお金を儲けたいんですか！」
老人ホームの職員から掛かってきたた電話はクレームだった。その入居者は3年前からまったく歩けない。ホームに届いた「あゆみ」を見て、職員は徳武産業が言葉巧みに靴を売りつけたと誤解したのだ。
実際は、同じホームでピンクの「あゆみ」を履いている人を見て、おばあさんが自ら買ったものだった。「もしかしたら、歩けるようになるかもしれない」と。当時、車椅子状態になってすでに3年。足はまったく動かせず、自力で立つこともできなかったという。
半年後、奇跡が起きる。あのおばあさんが歩けるようになったのだ
どうしてもピンクの靴を履いて歩きたいと思ったおばあさんは、諦めていたリハビリを再開。少しずつ機能が回復して、とうとう自分の足で立ち、歩けるようになったという。女性はいつまでも少女の心を持っている。
10：日本で初めて片方だけの販売や、左右サイズ違いの販売11：定番商品3000-8000円パーツオーダー〜変更箇所1カ所につき1500円程度107：手渡しするボーナスには社長直筆のメッセージ日頃から社員と意思疎通を図っているので、ボーナスの時にも社員を具体的にほめることができる。現金を封筒に入れて、一人ひとりに手渡し。その中に、直筆の手紙。111：毎朝の清掃始業30-40分前に出社し、会社周辺の清掃。
2019年11月03日
市場シェア目標値
上場企業で7月決算という珍しい会社の株主総会に出席。昨年4月に上場したクルーズ予約会社で、総会に出るのは初めて。
いつものことなのだが、平日朝の開催なので、出席しているのはシニア投資家と主婦投資家がほとんど。質問のレベルは低い。自分の個人体験を無理に一般化した意見を述べるだけだったり、新興市場に上場したばかりであるにも関わらず配当を求めたり。
日本のクルーズ市場は伸びている(上図〜同社IR資料）。昨年のクルーズ人口は32万人。うち約20万人が外国船で、約10万人が日本船。日本船はキャパシティが限られており、市場成長の原動力になっているのは外国船クルーズ。過去15年間の年平均成長率が10%。7年で倍になるペースだ。直近5年間では13%。6年で倍増する。
32万人の市場規模に対して、同社の取り扱いは1.5万人で、シェア4.6%。そのほとんどが外国船なので、同市場に限ると、シェア7.5%。いずれにしても、市場への影響力がないレベルである。市場への影響力がないから、シェアを取るためにまだまだ投資をしなければならない時期。
上場したので、「増収増益は維持する」と言っていたが、これから数年は増収するものの、それ以下の利益伸び率になると考えらえる。市場への影響力を持つための最低シェアは10.9%と言われており、同社の取扱い数が今後年間30%伸びるとして、5年掛かる計算になる（市場伸びを過去15年平均と同じにした場合）。外国船に限ってみれば3年。
そこから初めて、利益率が上がってくると予想できるので、それまでの3-5年は同社の事業進捗をじっくり観察したい。
2019年11月02日
企業を変えるストラテジーデザイン
著者は筑波大学でデザインを学んだあと、スズキ自動車に就職。そこでデザインしたワゴンRが大ヒットした。その実績を引っ提げて自動車デザイナーとして独立。国内外の自動車メーカーとのデザイン開発を手掛ける。そのうちの一社であった富士重工業（現SUBARU）から請われる形で、2008年同社デザイン部長（続いてChief Executive Designer）に就任した。その後現在まで続くSUBARUデザインを作った人物だ。
その後のSUBARU車の大躍進はこの10年の自動車業界で最大の話題だろう。時代遅れとなっていた完成検査制度の不正問題でケチが付いて、このスバルブランド確立プロジェクト『際立とう2020』を率いた吉永社長がああいう形で辞めざるを得なかったのは残念だ。
最近起こった日本企業による海外でのブランド確立事例として、興味深い。目指したのは、「スバルの持つ機能的優位性と特徴を最大限にお客様にアピールできるスバルデザインの作法確立」。詳細は本書を読んでもらいたいが、そのために辿ったプロセスは標準的。
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スバリスト呼ばれる車好きのユーザーがいる一方、スバルというブランドはほとんど一般に認知されていない。北米の顧客層に特徴（高学歴・高所得のロイヤルカスタマー）があることが分かる。
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企業規模からあれもこれもはできない。軽自動車開発から撤退。次世代車はアメリカサイズに。
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「日本車」という群の中からどうやって抜け出るか？
欧州のプレミアムブランドとは勝負できない（自動車文化の伝統と実績）。
ラグジュアリーではない→パフォーマンスに振る。
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スバルという会社は何なのか？「統べる＝スバル」
飛行機を作っていた技術者たちが夢を見ながら再結集をしてクルマづくりを始めた会社。
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六連星からの連想で、グリルは六角形に。
「シンプルで強く」スバルの売りは繊細なトーンの美しさではなく、ガッシリ頼りがいがあるということ。
「シンプルで強く」スバルの売りは繊細なトーンの美しさではなく、ガッシリ頼りがいがあるということ。
15：ブランド名の認知自分に課せられた役割は、100台のクルマが通り過ぎた時に2回は「スバルが通った」と言ってもらえるようにすること(当時の国内シェア2%）。スバルが企業として存続してこれからさらに発展するためには、商品名だけが印象に残るのではなく、企業名を認知してもらわなければならない。36：北米市場でスバルを愛するとても質の良いお客様医師、弁護士、教授、など高学歴・高収入のユーザーが多い。充分に考えて商品を買う→流行に左右されない→ロイヤルカスタマー37：北米市場に集中年間1750万台（2016）スバルシェア2%＝30万台（2008年当時）北米で1%シェア増になれば15万台。スバル全体の販売台数60万台に与える影響大。スバルの体力では各市場に合わせた全方位の商品作りは無理→ある程度の価格で売れる先進国58：ブランドは1日にしてならず技術偏重の自動車会社。プロダクトアウト→お客様の求める価値観とのズレ69：日本の自動車会社の組織デザイン部門を独立させてこなかった。「設計が主、デザインは従」71：マーケットに確固としてイメージを植え付けるのには時間が掛かる地道に続ける。水平対向エンジンも、シンメトリカルAWDもやり続けたからこそスバルがある。外観も同じで、コロコロとイメージを変えていては市場にイメージが植え付けられない。104:スバルの顔を決めるためのストーリーロゴマークである六連星からの連想で「６」に関連付けてグリルを六角形としたいと考えたのだが、これにはストーリーが必要。過去の歴史を繙くことにより、未来へもつながる。「星に願いを」飛行機を作っていた技術者たちが夢を見ながら再結集をしてクルマづくりを始めた会社。「統べる＝スバル」戦後解体され、バラバラに散った仲間が再び集結し、ひとつの夢に向かう。スバルのエンブレムはスバルのモノづくりの原点でもあり夢に向かう証。109：スバルの立体顔が決まり、プロポーションも改善。黄金比で群に入るバランスへ近づける。クルマ全体の持つ造形感の指針「シンプルで強く」スバルの売りは繊細なトーンの美しさではなく、ガッシリ頼りがいがあるということ。安心・安全のデザイン。どんな場面でも一番しっかりとしているクルマ。
2019年11月01日
「投資家的な生き方」のすすめ
2013年に読んでいるのだけど、どこかの書評で推薦されていたのを見て、再読してみる。
本が出たのは2011年9月で、日本はリーマンショックから立ち直れまいまま、東日本大震災に見舞われ、どん底だった頃。「はじめに」には、「日本の大手企業は求人の数を大幅にしぼり、有効求人倍数は0.5倍前後を推移している」とある。それが今ではバブル経済期を超える1.6倍なのだから、様変わりだ。
本書は、「これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非常で残酷な日本社会を生き抜くための、『ゲリラ戦』のすすめ」なのだが、少なくとも、新卒採用に関しては日本経済史上かつてないほどの好況である。
それでも、本書をそうした若者に進めるかと言えば、YES。雇用環境がこれだけ好転しても、10年前から、あるいはこの20年来続いているトレンドに変化はないからだ。現在の雇用状況は、リーマンショックで採用を絞っていた企業が、景気の好転と予想以上のスピードで進む少子化に慌てて急に採用に積極的になったに過ぎない。
そして結論：投資家的な発想を学ぶことが最も重要
資本主義社会では、究極的にはすべての人間は、投資家になるか、投資家に雇われるか、どちらかの道を選ばざるを得ない。
はじめに：一人の投資家である私がこれまで実践してきた「投資家的な生き方」のすすめ。一攫千金を狙うのではなく、自分の時間と労力、そして才能を、何につぎ込めば、そのリターンとしてマネタイズ＝回収できるのかを真剣に考える。75：ほとんどの学生ベンチャーは失敗する卒業後すぐに起業するのではなく、一度就職して、社会の仕組みを理解した上で、コモディティ化から抜け出すための出口を考えながら仕事をしなければいけない。そして出口を考えながら好機を待っていた人が、30前後で満を持して起業し、成功するパターン。178：将来その会社を叩き潰すために就職する今は何とかもっていても、将来の先行きはないだろうと思われる会社に入り、その会社を徹底的に研究する。そして、その会社が潰れる前に退職し、その会社を叩き潰す会社を作る。239:日経の記事を鵜呑みにすることは投資家として最もやってはいけないこと271：「何となく儲かりそう」と直感で投資してもろくなことはない会社を始めたいと出資を募る人は、「自分のアイデアは絶対にいける」と思っている人ばかり。だからどんな困難が待ち受けているか、競合はどんな会社があるのか、事業の弱みは何なのか、深く考えていない人もいる。282：自由人の勉強リベラル・アーツで学ぶ基礎的な素養が、投資家として生きていくうえでも、資本主義の仕組みを理解して物事を判断していくうえでも、非常に重要。
