2019年09月
2019年09月30日
伝説のベンチャーキャピタリストがGoogleに教えた成功手法
ジョン・ドーア
日本経済新聞出版社
2018-10-16
AmazonやGoogleへの投資での大成功、最近でもSlackやPelotonとVC業界の老舗でありかつ長年にわたって高い投資パフォーマンスを出しているKleiner Parkins。それを率いているのがJohn Doerr会長で、元はIntel社員だった。
1975年に技術者としてインテルに入社したドーアは、新入社員研修として「インテルの組織、理念、経済学講座」を受講する。担当講師は社長になる前のアンディ・グローブだったという。この時、「一定の手順に基づく目標設定」に初めて触れ、たちまち夢中になる。
経営に目覚めたドーアは、その後、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得し、1980年Kleiner Parkinsに転じる。そして、投資先にインテルで学んだ経営管理手法OKRを導入していくのだ。
グローブが作ったOKRは、ピーター・ドラッカーの「目標と自己統制による管理」が出発点になっているという。ドラッカーは結果重視の、それでいて人間本位の新たな経営理論を提唱した。企業とは「利益を生み出す機械ではなく、労働者への信頼と尊敬に基づくコミュニティであるべきだ」と。
この理念は、日本的経営に通じるので、日本人にとって違和感はないだろう。目標管理の手法も多くの日本企業で既に取り入れられている。OKRと違うとすれば、フォーカスか。日本企業は顧客の要請に応えようとする結果、あれもこれもとなりがち。結果、経営効率は上がらず、利益率も悪い。顧客を選ぶ勇気が必要。
1975年に技術者としてインテルに入社したドーアは、新入社員研修として「インテルの組織、理念、経済学講座」を受講する。担当講師は社長になる前のアンディ・グローブだったという。この時、「一定の手順に基づく目標設定」に初めて触れ、たちまち夢中になる。
経営に目覚めたドーアは、その後、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得し、1980年Kleiner Parkinsに転じる。そして、投資先にインテルで学んだ経営管理手法OKRを導入していくのだ。
グローブが作ったOKRは、ピーター・ドラッカーの「目標と自己統制による管理」が出発点になっているという。ドラッカーは結果重視の、それでいて人間本位の新たな経営理論を提唱した。企業とは「利益を生み出す機械ではなく、労働者への信頼と尊敬に基づくコミュニティであるべきだ」と。
この理念は、日本的経営に通じるので、日本人にとって違和感はないだろう。目標管理の手法も多くの日本企業で既に取り入れられている。OKRと違うとすれば、フォーカスか。日本企業は顧客の要請に応えようとする結果、あれもこれもとなりがち。結果、経営効率は上がらず、利益率も悪い。顧客を選ぶ勇気が必要。
＊全員で目標を共有し、驚異的な成果を上げるための原動力となるOKRIntelやGoogleなどが採用。OKR＝Objectives(目標）とKey Results（主要な結果）を柱とする経営管理手法目標：「何を」達成すべきか、組織内で共有する。主要な結果：目標を「どのように」達成しつつあるか、アウトプット（成果物）を測定する●OKRを生み出したのは、インテルの元経営者アンディ・グローブグローブはOKRを活用することで、インテルにいる何万人もの社員を管理し、同社を急成長させた。グローブの出発点になったのは、ドラッカー『現代の経営』にある「目標と自己統制による管理」〜人に自らの進む道を選択させると、最後までやり遂げる可能性が高まる。「個人の強みと責任感を発揮させつつ、同時に全員のビジョンと努力の方向性を一致させ、チームワークを醸成し、個人の目標と全員の幸福を調査わせるような経営の原則」●OKRは組織マネジメントにおいて、次の４つの威力を発揮する�〕ダ荵�項にフォーカスし、コミットする組織全体が、優先すべき重要なプロジェクトにフォーカスし、コミットする。重要ではないことも同じように明確にする。主要な結果は3-5つで十分。�▲▲薀ぅ鵐瓮鵐箸範�携がチームワークを生む目標の共有により、トップから現場まで、すべての活動の方向性が一致する。上意下達で伝えなくても、組織内で目標を共有し、連携できる。��進歩をトラッキングし、責任を明確にするOKRは、活動の進歩をトラッキングすることが可能である。そのため、設定した内容を見直したり、状況変化に合わせて変更したりできる。�ざ丹枦�成果に向けてストレッチする達成が不可能に思えるような、ストレッチ目標を設定することで、従業員の想像力と野心を最大限に引き出すことができる。
2019年09月29日
江戸の「公界」吉原
吉原は江戸に残った「中世の公界」で、かつての堺や桑名のような、権力不入の地、いわば自由都市であった、という説に基づく時代小説。要所要所が史実を基に構築されており、「本当だったのかも」と思わせるところが、秀逸。
「徳川幕府の制度から見れば誠に驚くべきことだが、吉原の内部は完全な自治が認められていた。何が起ころうと町奉行所の手は一切入らない。（中略）
江戸の中で、これほどの自治が許されていたのは寺院しかない。そして寺院と吉原に共通していることはただ一つ、無縁ということだ。無縁とは俗世間や、そこにいる一切の身内、親族、友人と完全に縁を絶つことを云う。例えば重要犯罪は一族連座という苛酷な法令が施行されている中で、寺に入り僧侶になることで罰をまぬかれた子供たちは夥しい数にのぼっている。無縁になることによって、法律の適用を免除されるのである。
これと同様のことが吉原の内部でも行われていたのではないか。人は大門をくぐることによって、一時的にではあるが無縁になる。客についていえば、少なくとも彼らは俗世間の階級制度から解放される。だから大名も農夫も同じ太夫を呼ぶことが出来る。そして遊女には客を振る権利が認められていたから、時として、大名が振られ、農夫が得恋することも起こりえたわけだ。そして遊女たちの方も、年季さえ明ければ、武士、商人、農夫の区別なく、誰と結婚することも自由だった。」
79：皇子暗殺を一手にひきうけていた刺客人こそ、柳生一族だったのである。但馬守宗矩に率いられた柳生忍群の精鋭たちは、御所に忍び込み、帝の御子を孕んだ女御を、数名がかりでたて続けに犯し、流産させた。その目を逃れて無事出産した皇子は、容赦なく殺した。108：太夫の一夜の揚代金は一両から一両三分。これは当時の人夫が一月働いても及ばぬ金額である。商家の手代の給金が年に五両だった時代なのである。これだけの金を払って、尚、ふられるおそれが多分にあった。150：我が国に初めて出来た遊郭は京の柳ノ馬場である。万里小路二条の南、方三町の御免色里（許可を受けた遊里）。天正17年のことだ。この万里小路二条の廓を柳の並木で囲むように作ったのは、明らかに唐・宗の『柳巷』の真似である。そのために此処をまた『柳町』ともいった。（中略）新吉原の『見返り柳』の起源は、遠く唐の色里平康里の柳樹にまで遡るわけで・・・154：『地女の及ぶところに非ず』と嘯かせるだけの、長い伝統によって磨きぬかれた芸があった。地女とは廓以外のかたぎの女性一般をさしていった言葉である。美醜はもとより、身分の高下を問わず、貧富のいかんにかかわらず、ありとあらゆる素人女を、『地女』の一言で蔑称するだけの誇りと自信こそ、太夫を太夫たらしめている所以のものであった。415：柳生忍群は、秀忠の期待に見事に応えた。慶長16年6月中に、加藤清正、堀尾吉晴、真田昌幸の三人を、たて続けに暗殺したのである。
2019年09月28日
RWC日本代表チームを日本企業に適用すれば
やりました
やってくれました
ラグビーワールドカップで、優勝候補のアイルランド相手に日本代表の勝利。19-12．どうせ誰かが書くのだろうけど、RWCという世界が同じ条件で戦うメジャースポーツにどう準備して、どう勝ったのか（まだ2戦目だが）は世界で戦う日本企業の参考になる。
１．選手の約半数は外国生まれ
ラグビーに限らずスポーツはそれぞれの特徴に合わせて、どうしようもない体力格差がある。ラグビーの場合であれば、フォワードの体格、バックスの走力、そして80分走りきる持久力。世界トップレベルを日本人だけで集めるのは不可能。
２．指揮官は外国人
ヘッドコーチはNZ人のジョセフ。前のHCもオーストラリア人のジョーンズ（お母さんは日系アメリカ人）。何れもラグビーが盛んな国で、日本よりレベルの高い国から指揮官を招いている。
３．アイデンティティを大事にしている
上記だけなら、傭兵部隊を外国人が指揮して、それで日本代表チームなのか？勝てばいいのか？という声も聞こえてきそうだが、そんな声は聞こえてこない。それは、チームとして日本というアイデンティティを大事にしているからだろう。
クラブハウスには鎧兜が飾られ、日本代表合宿に参加していたものの、最終的にメンバーに選ばれなかった選手には日本刀が贈られた。今日の試合では、外国人選手の一人が君が代の歌詞の意味を聴き、「『さざれ石の巌となりて』とは自分たちのようだ」と言ったというエピソードも紹介されていた。日本人で、この意味を知っている人は少ないだろう。
ということで、企業経営に当てはめてみれば、
１．事業に合わせて人材を世界から広く募集
２．経営トップも国籍に拘らず、その分野で最高の人を充てる
３．会社としてのアイデンティティ、一体感を大事にする
ということになりそうだ。
イラスト：FT.com "Japan Rugby World Cup Diary"から
2019年09月27日
主権在民
自民党の、そして安倍首相の悲願である憲法改正。常に争点の中心になるのは９条だが、日本国憲法の核はそこではないという。
それは、第13条（主権在民）。それまでの明治憲法では主権は天皇にあったわけだから、大転換である。GHQが自分たちの「独立宣言」の節をそのまま使って、最も力をいれたのが第13条だ。
今では当たり前すぎて、あるいは、大前提すぎて、誰もここを変えようと提案しない。だからといって、憲法の核＝国家の核である第13条がキチンと守られているかというと、そうではない。小室氏はこの状態を、「病、膏肓に入る」どうしようもない状態だ表現する。
国民の生命や自由といった人権が蹂躙された「最大の犯罪」は北朝鮮拉致疑惑に対する政府の態度だという。「連れ去られたのは日本国民であり、彼らには誰も奪うことの出来ない『生命・自由の権利』がある。そしえ、政府は憲法によって、その権利を守るために最大限の努力をすべしと定められている」
この様な無法が行われたことを分かっていながら、日本政府は北朝鮮の在日資産を凍結もしなければ、交渉断絶もしない。これは明らかに憲法第13条違反である。
＊日本国憲法の核は第13条（主権在民）「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」●近代デモクラシーはヨーロッパ社会で誕生した政治思想→アメリカ独立宣言「われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、創造主によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され、そのなかに生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずる」●独立宣言を起草したトマス・ジェファソンが念頭に置いたのは、イギリスの思想家ジョン・ロックの「社会契約説」・国家や社会が生まれる以前の「自然状態」においては、身分も制約もなく、人間は自由で平等。どんな国家や社会も、「自由で平等な」人間たちが対等に社会契約を結ぶことで生まれた。・国家権力は人民との合意と契約によって作られた物だから、その権力は人民に奉仕するためにある。・どんな権力であっても奪えない基本的人権「自由」「平等」「財産」●日本国憲法第13条には、ロック以来のデモクラシー思想、民主主義のエッセンスが詰め込まれている。国家はどんな理由があろうとも、国民の生命、自由そして幸福追求の権利を守るべし。
2019年09月26日
マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
組織の歴史を振り返り、「人類は進化する度に、新たな組織モデルを生み出してきた」という。今、生まれつつある組織モデルを「ティール（進化型）」と名付けた。
しかし、読む限り、50年前に流行ったヒッピー文化に代表されるようなカウンターカルチャーを連想する。「自己実現」「内的」「自分自身のエゴから自らを切り離す」「心、身体、魂を統合」
ヒッピーは続かなかったが、その精神は、自然保護や自己啓発として定着した面もある。ヒッピーが廃れたのは生産性がなかったからだが、モノが行き渡った時代に、「進化型」として定着するのか。
●人類は約10万年の歴史の中で、いくつかの発展段階を経て、周りの世界に対処する能力を進化させてきた。そして、人類の意識が新たな段階に移行する度に、新しい協働の在り方「組織モデル」が生み出された。�‐彳扱�約1万年前、自我が目覚め、人は他者と自己を区別できるようになった。これにより分業が可能となり、トップが圧倒的な力で他者を従わせる「衝動型」組織が生まれた。この組織が重視するのは「今」で、計画や戦略を練るのは不得手である。最初の首長制と原始的な王国。規模は数千人、数万人へと拡大。現代でも、ギャングやマフィアなどに見られる。�⊇膠�型人々は時間の流れを把握し、中長期の計画を立てられる。また、安定した組織構造をつくって規模を拡大し、大きな成果を上げられるようになった。灌漑ダム、ピラミッド、万里の長城。自己規律と将来を展望する力が必要な、農業が発展可能となる。農業で食料に余裕が生まれ、紀元前4000年にメソポタミアで国家と文明が生まれた。衝動型に見られた自己中心主義は、順応型では自民族中心主義に変わる。�Ｃ�成型グローバル企業など、現代の世界を広く支配する組織モデル。倫理より有効性を重視して意思決定を行い、目標達成に注力する。この「達成型」は社会に繁栄をもたらすが、貪欲さ、過剰消費など無視できない負の側面もある。リーダーは組織を「デザイン」する。人材は機械の歯車と同様、「経営資源」であり、計画に従って「配置」されるべきもの。�ぢ晋儀�達成型組織が企業や政治で支配的であるのに対し、非営利組織などでよく見られるのが「多元型」。達成型の負の側面を意識しており、仕事の成果より人間関係に価値を置き、人々と協調的なつながりを築くことを目指す。公平、平等、調和、協力、コンセンサス。達成型組織がトップダウンで意思決定するのに対し、多元型組織はボトムアップのプロセスを模索する。達成型組織が明確なリーダーシップを褒めたたえるのに対し、多元型組織では、リーダーは自分が率いる人たちのために奉仕すべきだと主張し、自社を家族にたとえる。●進化型人間の進化における次の段階。マズローが唱える「自己実現への欲求」に相当し、意思決定の基準は外的なものから内的なものへの移行する。人は成功や富ではなく、充実した人生を送ることを求める。Authentic(本物の）, Integral（統合的）, Teal（進化型）。・自分自身のエゴから自らを切り離す自分のエゴを一定の距離を置いて眺めると、その恐れ、野心、願望がいかに自分を突き動かしているかがわかる。それに気づけば、支配したい、自分を好ましく見せたいといった欲求を最小化する術が得られる。エゴに埋没していると、他の人々の考えなど、外的な要因によって判断が左右されがち。一方、進化型では、意思決定の基準が外的なものから内的なものへと移行。自分の内面に照らして正しいかどうか。・人生は、自分の本当の姿を明らかにする旅内面の正しさを求めると、自分が何者で、人生の目的は何か、という内省に駆り立てられる。瞑想、ヨガ、自然の中を歩くといった慣行を通じて静かな場所を見つけ、内なる魂の声を耳にする。・Wholeness(全体性）を心の底から求めるエゴと自分自身の深い部分を突き合わせ、心、身体、魂を統合し、他者と充実した関係を築き、人生と自然との壊れた関係を修繕する状態を望むようになる。
2019年09月25日
世界でいちばん働きがいのある会社
毎年発表される「働きがいのある会社」ランキング。世界規模で行われていて、日本版もある。今年の応募は480社あったそうだ。
大企業部門（従業員1000人以上）
１．Salesforce.com（営業クラウド）
２．Plan・Do・See（ホスピタリティ）
３．Disco（半導体製造装置）
４．American Express（クレジットカード）
５．プルデンシャル生命（生命保険）
トップ5社中3社は外資系。「従業員を大切にする」という評判の日本企業だからもっと入賞してもよさそうなものだが、そもそも応募が少ないのか〜この点は不明。
ただ、一般論として、転職率の高い米国企業の方が、生産性の高い従業員をいかに採用して、のびのびと働いてもらうかについて、工夫があることは当然である。日本企業は、環境変化が少ない工場の中での生産性は世界一だが、事務所での生産性が先進国最下位であるのは多くの調査が示している。
これは、新卒の一括採用→年功序列→終身雇用という中で、システマチックな人材戦略をおろそかにしたからだろう。OJTと言えば聞こえがいいが、ほとんどのケースでは現場の偶然に任されており、その結果、リーダー不足に陥っている。
1998年に「働きがいのある会社100」に選ばれた会社では、年間に平均で35時間を従業員の研修に充てていた。「その数字は現在、パートタイムの従業員で58時間以上、正社員で65時間以上となり、1998年の調査よりも76%増加している」という。
＊従業員が「働きがい」を感じている企業は、いかにして彼らのモチベーションを引き出しているのか？●働きがいのある会社従業員が経営者、管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社。●従業員にとっての働きがいは、会社の業績をも左右する働きがいのある会社は、売上高成長率や生産性、イノベーションなどにおいてライバル企業をしのぐ。働く人の潜在能力を余すことなく開発することで業績の向上を目指す。●米国の労働人口の1/3を占めるミレニアル世代（1981-2004生まれ)彼らはやる気を起こさせるような仕事の目的や、透明性の高い職場を求める。●全員型働きがいのある会社・あらゆる従業員に対して「敬意」を示す。・従業員に、多くを「学び」、「成長」できる場を提供する。・従業員が自分の「仕事の意味」を見いだせるよう手助ける。・人間らしい「関係」を育むことで、従業員同士が互いを思いやる環境を醸成する。・経営者が従業員を「公正」に扱う。
2019年09月24日
世界史の教訓
現在のアメリカ覇権は、大きく見れば「アングロサクソン覇権」の一部だが、大きく異なる点もあるという。それは、イギリスが、自分だけで世界を支配する「一極覇権主義」ではなく、他国との共存を容認し、むしろそれらとの共存を重視する「多極的は世界秩序」の維持と安定を目指したことだ。
「例えば、大西洋の覇権を握ったにもかかわらず、スペインの南米利権を認め、激しく覇権を争ったフランスとも手を握り、中東やアフリカでの共存とフランスのアジア進出も受け入れる」
それは、アメリカ独立戦争という大きな挫折を経験したからだという。イギリスはアメリカ植民地の「同胞の波乱」という、およそイギリスらしくない排他的で傲慢な外交によって最も有望な植民地を失う。この大きな失敗と反省と教訓によってイギリス外交は、大きく成熟する。
なぜアメリカの植民地人が世界最強国イギリスに勝利できたのか？勝利の裏には、諸外国からの強い支援があった。フランス、スペインなどから多くの兵士が参戦し、経済的にも支援した。このように世界中を敵に回しては、いくらイギリスでも勝てない。
ところが、1990年代のアメリカはまったく逆の方向に進む。冷戦の勝利に浮かれたアメリカでは、ネオコンと呼ばれた政権エリートらが、「自由＝正義」というアメリカ独自の価値観に世界中が従うべきだとする「一極主義」を進める。こうした結果が、イラク戦争、アフガニスタン侵攻の無惨な失敗につながる。
・アングロサクソン覇権世界の覇権は18世紀初めにイギリスが、その後、アメリカが握った。両国はアングロサクソンであり、今のアメリカの覇権は「アングロサクソンの覇権」の一部。�ゞ睛士蓮↓⊂霾麥蓮↓３ね領�・海洋覇権イギリスが世界の覇権を握るため、特に注力したのは「海洋覇権」の確立。交易を重視するイギリスは、自国の船だけでなく、他国の船の安全も保障。この「航海の自由」により、どの国も、その覇権を受け入れた。こうした「自由と開放」の論理が、アングロサクソン覇権の核心。・偽善アングロサクソンの特徴。皆の利益を尊重するように見えて、実際は自らの利益の最大化を図る。そして、不変的な価値観をことさら強調し、そのことを隠す。・Pax Britannica→Pax Americana覇権の構造：「覇権的な軍事力」「強大な経済力」「普遍的な自由貿易のイデオロギー」・多極的な世界秩序→一極支配イギリスは、他国との共存を重視する「多極的な世界秩序」の維持と安定を目指した。アメリカもこれを引き継いだが、冷戦後、「自由＝正義」という独自の価値観に世界中を従わせる戦略に転じた。こうして「一極支配」を目指した結果が、イラク戦争やアフガニスタン侵攻の失敗につながった。・理念アメリカが世界のリーダーとして生き残る唯一の道は、多様化してゆく世界で、多角的な協調秩序への意向を先導すること。しかし、トランプ大統領は世界を納得させられる「理念」に欠けており、その役割を望むことは難しい。
2019年09月23日
なぜ一流は三流に牛耳られるのか
「いい年をしたオッサン」が、どうして不祥事を起こすのか？リーダーの質が落ちているのはなぜか？という、誰もがうすうす疑問に思っていることを考えた本。
著者は1970年生まれで、慶應義塾大学大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了とある。学部卒で就職していたならまだバブルの余韻があった頃だが、大学院を出た1995年頃にはバブル崩壊が決定的。以来、アベノミクスまで基本的に経済は右肩下がりだったから、一つか二つ上の世代に対する恨み？は深いと思われる。
対象は「今の50-60代のオッサン」ということは、私もバッチリ入っている。私など、バブルピークの1989-91年を大不況のイギリスで過ごしたから、こうしたオッサンに入ってないことを信じたい。その私から見ても、こうした「困ったオッサン」には思い当たる。
まず、オッサンの学生時代なのだが、70-80年代の「知的真空の時代」に学生時代を過ごし、勉強してない。それまでは、大学に進学するのはエリートで、大学生は勉強するのが当たり前の「教養世代」だったという。戦争に敗れた日本経済は一時的に1920年代の生活水準に戻っていたので、社会システムに対する反発も強く、これが学生運動を盛んにした。
ところが、高度経済成長による所得の伸びで大学が大衆化し、大学進学率が大幅に上昇する。大学は学問を探求するところではなく、就職までの4年間を楽しく過ごす「レジャーランド」と化す。豊かになった社会で起こった凄惨な事件で、学生運動も収束する。
ここに生まれた「知的真空」世代は、功利と便益を保証してくれるシステムに対して、無批判に自己を同化させることで、システムがもたらす便益を最大限に搾り取ろうとする。こうした行動がバブル景気を膨らませ、またそこに依拠した人々の知的戦闘力を大きく劣化させた。
「組織トップが宿命的に劣化する」メカニズムには戦慄する。
「二流の人間は自分が本当は二流であり、誰が一流であるのかを知っている。一流の人間は、自分や他人が何流かということをはなから考えない。三流の人間は、二流の人間を一流だと勘違いし、二流の周りをヨイショしつつウロチョロする一方、本物の一流については、自分の物差しでは測れない、よく分からない人たちだと考えている」
数が多い三流に支持される二流が組織トップに選ばれないように、どうしたらいいのか。少なくとも、会社経営は民主主義ではないから、選ばれた取締役の中からトップを選ぶことになる。最近は、社外取締役を中心にした指名委員会でトップを選ぶ制度を入れる上場企業も増えてきている。
しかし、政治の世界では、数による選挙で議員や首長が決まる。会社なら無能なトップを選べば、会社が傾いて、自分の職場が奪われるかもしれないという緊張感が抑止になるが、政治では行政を支えている公務員組織もあるから、そこまでの危機感がない。とすると、民主主義は衆愚政治になる恐れを常に抱えている。
対象は「今の50-60代のオッサン」ということは、私もバッチリ入っている。私など、バブルピークの1989-91年を大不況のイギリスで過ごしたから、こうしたオッサンに入ってないことを信じたい。その私から見ても、こうした「困ったオッサン」には思い当たる。
まず、オッサンの学生時代なのだが、70-80年代の「知的真空の時代」に学生時代を過ごし、勉強してない。それまでは、大学に進学するのはエリートで、大学生は勉強するのが当たり前の「教養世代」だったという。戦争に敗れた日本経済は一時的に1920年代の生活水準に戻っていたので、社会システムに対する反発も強く、これが学生運動を盛んにした。
ところが、高度経済成長による所得の伸びで大学が大衆化し、大学進学率が大幅に上昇する。大学は学問を探求するところではなく、就職までの4年間を楽しく過ごす「レジャーランド」と化す。豊かになった社会で起こった凄惨な事件で、学生運動も収束する。
ここに生まれた「知的真空」世代は、功利と便益を保証してくれるシステムに対して、無批判に自己を同化させることで、システムがもたらす便益を最大限に搾り取ろうとする。こうした行動がバブル景気を膨らませ、またそこに依拠した人々の知的戦闘力を大きく劣化させた。
「組織トップが宿命的に劣化する」メカニズムには戦慄する。
「二流の人間は自分が本当は二流であり、誰が一流であるのかを知っている。一流の人間は、自分や他人が何流かということをはなから考えない。三流の人間は、二流の人間を一流だと勘違いし、二流の周りをヨイショしつつウロチョロする一方、本物の一流については、自分の物差しでは測れない、よく分からない人たちだと考えている」
数が多い三流に支持される二流が組織トップに選ばれないように、どうしたらいいのか。少なくとも、会社経営は民主主義ではないから、選ばれた取締役の中からトップを選ぶことになる。最近は、社外取締役を中心にした指名委員会でトップを選ぶ制度を入れる上場企業も増えてきている。
しかし、政治の世界では、数による選挙で議員や首長が決まる。会社なら無能なトップを選べば、会社が傾いて、自分の職場が奪われるかもしれないという緊張感が抑止になるが、政治では行政を支えている公務員組織もあるから、そこまでの危機感がない。とすると、民主主義は衆愚政治になる恐れを常に抱えている。
・オッサン新しい価値観を拒み、過去の成功体験に執着し、目上の者に媚び、目下の者を軽く見るなど、傍若無人な振る舞いをしてみずからを顧みない人々。・今の50-60代のオッサンの劣化原因人生を決定づける20-30代をバブル景気の中で過ごした。当時の経験や価値観が、今日の知識やマインドセットに影響を与えている。70年代に絶滅した「教養世代」と、90年代以降の「実学世代」のはざまに発生した「知的真空の時代」に若手時代を過ごした。・組織のリーダーは構造的・宿命的に経時劣化する長く継続している組織程、優秀なリーダーを選ぶのが難しい。・組織の劣化数が最も多い三流から支持された二流が大きな権力を得る。そして二流の人間は、一流の人間を恐れて抹殺する一方、扱いやすい三流を重用する。二流が引退すると、彼らに媚びてきた三流が後を継ぐ。こうして世代が代わるごとにリーダーのクオリティ、そして組織は劣化する。・中堅・若手がオッサンに対抗する方法「オピニオン」と「エグジット」おかしいと思うことについてはおかしいと意見し、それでも改まらなければ、権力者の影響下から脱出する。「人的資本」（スキルや知識）、「社会資本」（信用や評判）を厚くし、自分の「モビリティ」（所属する組織を離れても、今の生活水準を維持できる能力）を高める。
2019年09月22日
大逆罪
「関東大震災後、朝鮮人の恋人と共に検束、大逆罪で死刑宣告された金子文子（1903-26）。無籍者として育ち、周囲の大人に虐げられ続けながらも、どん底の体験から社会を捕らえ、『私自身』を生き続けた迫力の自伝を残す。天皇の名による恩赦を受けず、獄中で縊死」
と本の紹介文にはある。
本を読んでみると、小さい頃の育った環境から、その時々の家庭事情まで、しっかり書かれていることに驚く。今日日、大学生でもこれほどの文章は書けないだろう。死刑判決を受けたものの、恩赦で終身刑に。しかし、それを受け入れず、宇都宮刑務所で自ら首を吊って死んだ時はまだ22歳だ。
ひどい家庭環境なのは間違いない。働きもせず、愛人を家に連れてきて同居する父親。やっと別れたと思ったら、今度は療養のために山梨から出てきた母親の妹と出来、別居。やっと、両親が分かれたと思ったら、母親は若い男を連れ込み文子を邪険にする。母親も男なしでは生きていけない、依存性の強い性格なのだ。
こうした男女がいつの時代も存在する事の記録でもある。虐待もネグレクトも今に始まったわけではない。戦前と今と違いがあるとすれば、今は生活保護も児童相談所もあること。完璧に機能するわけではないが、無いとあるのとでは大違いだ。文子の場合は、無籍者のため小学校にもほとんど行かせてもらえず、小学校を出るころには母親によって危うく置屋に売られるところだった。
その後、朝鮮で成功していた父方の祖母が迎えに来て、9歳で叔母の養子になる。これで人生が好転するかと思われたが、頭脳明晰だったものの、可愛がられるのが下手な文子は、跡取りなるはずがすぐに下女扱いに。自らの境遇と、朝鮮人への差別を重ね合わせ、この辺から、「政治体制が悪い」という思いを募らせるようになっていく。
そして、テロリスト朴烈と出会う。
忘れ得ぬ面影：栗原一男数輪のエゾ菊を手向けたばかりの墓所を発いて、地下４尺の湿地の中から、水気にふくらんで、ブヨブヨにはれ上がり、腐乱したふみ子の屍体、むくれ上がった広い額と、厚く突出した唇、指をふれればスルスルと顔面の皮がはがれた腐乱体。22：父私はやがて、父が若い女を家へ連れ込んだことに気づいた。そしてその女と母とがしょっちゅういさかいをしたり罵り合っているのを見た。しかも父はその都度、女の肩をもって母を撲ったり蹴ったりするのを見なければならなかった。31：無籍者なぜ私は無籍者であったのか。表面上の理由は母の籍がまだ父の戸籍面に入っていなかったからである。が、なぜ母の籍がそのままになっていたのか。それにつぃてずっと後に私が叔母からきいたことが一番本当の理由であったように思う。叔母の話したところによると、父は初めから母と生涯つれ添う気はなく、いい相手が見つかり次第母を捨てるつもりで、そのためわざと籍を入れなかったのだとのことである。母は父とつれ添うて8年もすぎた今日まで、入籍させられないでも黙っていた。けれど黙っていられないのは私だった。なぜだったか、それは私が学校にあがれなかったことからであった。解説420：朝鮮時代「そうだ、私と同じように苦しめられている人々と一緒に苦しめている人々に復讐をしてやなねばらなぬ」427：愛人朴烈はこれまでにソウルに住む金ハンを通じて、日本の支配者や朝鮮人親日派に対する暗殺を目的として中国東北地区吉林に朝鮮人たちが結成した義烈団から爆弾を入手しようとしたが、この計画は実現できず、その後も度々爆弾入手を計画したが、実現できなかった。こうした状況の際に関東大震災が起こり、朴烈と文子は警察署に検束され、さらに起訴されたのであった。
2019年09月21日
リソル生命の森
長年家族ぐるみでお付き合いしているN家の次男A君の結婚式で千葉へ。外房線で誉田駅を目指す。外房線や駅から施設への途中、ビニールシートに覆われた民家の屋根が散見された。
「リソル生命の森」と言われてもピンとこなかったが、昔の「日本エアロビクスセンター」であることに思い当たる。行ったことはなかったが、有名アスリートが合宿することで一時期認知度は高かったと思う。カール・ルイス、高橋尚子、野口みずきなどが利用したという。
調べてみると、日本土地改良(株)が1976年にオープンした「真名カントリー」がその発端で、その後のリゾートブームに乗って複合リゾート開発を進めたようだ。当時のメインバンクは北海道拓殖銀行。拓銀は不動産融資に積極的で、それが原因で、バブル崩壊後1997年に倒産してしまった（北洋銀行に営業譲渡後清算）。
その結果、日本土地改良と日本エアロビクスセンターも翌年会社更生法申請。1999年ミサワホームグループのミサワリゾートの支援で再建が始まる。ところが、ミサワホーム自身がその後破綻し、2004年に産業再生機構の支援が決まる。2006年トヨタ自動車グループのトヨタホームが再生スポンサーに決定し、その後トヨタホームの子会社となる。
トヨタホームはリゾート事業は要らなかったので、ミサワリゾートは三井不動産が買収し「リゾートソリューション」に社名変更。数奇な運命をたどったが、現在は三井不動産グループの「リソルホールディングス」として株式公開している。
泊ったホテルは全室スイートとバブリーな仕様であった。敷地内には、ホテルの他、コテッジや分譲マンション、別荘など。スポーツ施設は「健康増進施設」である日本メディカルトレーニングセンター（旧エアロビクスセンター）他、ゴルフ場、サッカー場、テニス場、乗馬クラブなど。
現在、温泉施設を建設中で、これが出来ると集客力も上がりそう。
2019年09月20日
持続する「やる気！」
今日、アルゴリズムといえば、コンピューターのアルゴリズムを示すことが多いが、段階的手法で行うルーチンワークをここではアルゴリズム的仕事と呼んでいる。
これまでヒューリスティック的な仕事が増えても、アルゴリズム的仕事が減ったわけではなかった。その結果、大卒だけでなく、高卒も人手不足になっている。工場内での自動化は進んだが、事務所内での自動化はあまり進んでいない。
それも、RPAの普及で事情は変わりそうだ。事務所内での定型作業が大幅に軽減されることが現実になる。
問題は、ヒューリスティック的仕事は誰でも出来るわけではないことだ。そのために、Googleやマッキンゼーは自社の魅力度を高めて、数百倍以上になる競争率の中から採用している。そうした集団であれば、モチベーション3.0が機能するだろうが、モチベーション2.0の会社もまだまだ続くだろう。
・仕事の質が変わった「アルゴリズム（段階的手法）」と「ヒューリスティック(発見的方法）」・アメとムチは創造性を奪う先進国では創造性が必要な仕事が増えた。こうした仕事には信賞必罰はマイナス。・モチベーション3.0のカギ�ー�律性：仕事のやり方などを自分で決め、自由に仕事ができると、生産性が上がり、会社への忠誠心も高まる。�▲泪好織蝓次�複雑な問題を解決するには、探求心と、新たな解決策を試そうとする積極的な意思が必要。積極的関与だけがマスタリー、すなわち物事に熟達することを可能にする。�Ｌ榲�：高邁な目的のために働くとき、他人の生産性、そして満足度は高まる。ゆえに企業は、まず目的を掲げ、利益を目的達成の方法、または副産物と見なすべき。
2019年09月19日
小さな工夫が生み出す大きな効果
心理学や行動経済学などに基づく、効果的な説得の手法。「小さな工夫で、他者の行動は劇的に変わる」という。
保健センターでアポの「すっぽかし」に困っていた。そこで、予約の電話をかけてきた患者に、日時が決まると予約の詳細を「復唱」するように求めた。すると、すっぽかしが3%減ったという。
定期的に訪れる患者には、診察が終わると、次回の診察日時が書かれた予約票を渡していた。それでも、「すっぽかし」がある。そこで、次回の診察日時を患者が自分でカードに記入するようにした。すっぽかしは18%も減少した。
人々の意欲が最も高まるのは、自分が能動的に行ったコミットメントとその後の行動を一致させようとする時なのだ。
定期的に訪れる患者には、診察が終わると、次回の診察日時が書かれた予約票を渡していた。それでも、「すっぽかし」がある。そこで、次回の診察日時を患者が自分でカードに記入するようにした。すっぽかしは18%も減少した。
人々の意欲が最も高まるのは、自分が能動的に行ったコミットメントとその後の行動を一致させようとする時なのだ。
・人は、効率的に正しく判断し、社会から承認されるために、他の皆がやっていることをするイギリス国税庁が税金滞納者への督促状に「大多数の国民は期限までに税金を納めている」という一文を加えたところ、多くが税金を納めた。�，覆襪戮�効率的に正しい判断をしたい��他社とつながり、承認されたい��自分のことを肯定的にとらえたい・以前に行ったコミットメントと矛盾しない行動をとりたいという欲求保健センターへの予約の電話をかけてきた人に、予約の詳細を「復唱」させたところ、すっぽかしが減った。・自分をアピールする時、協調すべきは、実績より「将来性」すでに起きたことより将来性の方が、相手を刺激し、興味をかき立てる。・「愚かな行動のリスト」C・マンガ―大きな成功を一つの要因で説明するのは不可能。大成功の基盤は、様々な要素が複雑に絡み合って形作られる。他人の失敗を記録し、重要な選択や決定を行う際に見直すことは、成功への大きな一歩自分の失敗だと、人は自己弁護をしてしまい、効果的な教材にならない。
2019年09月18日
人生に革命を起こせ
脳科学者による「脳の力を高め、未来をよりよく生きるヒント」。ほとんどのヒントは、経験的に、あるいは伝承的に知られてきたことなので意外感はない。脳科学的にも裏付けられた、というべきなのだろう。
茂木さん独自の新しい定義だと思ったのは、「人の心が分かることが教養」という意見。「心の優しい子」という場合に、「勉強はできるけど、あの子は人の心が分からない」とか、「この子は勉強は苦手かもしれないけど、他人の心が分かるとてもいい子だ」というのは、脳科学的に間違いだという。
本当に勉強が総合的にできる子なら、他人の心も当然わかる。逆に言うと、「学問をすることの究極の目的は、他人の心が分かること」だという。
本当に勉強が総合的にできる子なら、他人の心も当然わかる。逆に言うと、「学問をすることの究極の目的は、他人の心が分かること」だという。
・偶有性脳にとって大事な要素は、どうなるかわからないこと。決まりきったことばかりしていると、脳本来の働きは死んでしまう。・脳や性格遺伝子だけでは決まらない。生まれた後の経験や学び、様々な出会いによって変わっていく。性格形成における親の影響は2割、他人の影響が8割。・ドーパミン難しい課題を達成した時、脳は喜びを感じ、ドーパミンを分泌する。勉強でも仕事でも、脳になるべく高い負荷がかかるようにすれば、脳をより強化できる。・失敗は、自分の個性を知るチャンス失敗をすると、自分に向いていること、向いてないことに気づける。・自分が何者か自分と考え方の異なる人との出会いによって、「自分が何者か」を知ることができる。・根拠のない自信「私はできる」と自分に言い聞かせ、「根拠のない自信」を脳に植え付ける。すると、脳を積極的に使うようになる。・脳の成長可能性は無限何歳になっても、脳は学ぶことができる。脳の働きを変える一番いい方法は「感動する」こと。・無我夢中脳の潜在能力は、子供が遊んでいる時のような「無我夢中」になっている状態で発揮される。したがって、仕事や勉強をする際も、その境地を目指す。想像力他人の心を読みとるうえで、目に見えないものを思い浮かべる想像力は欠かせない。この想像力を豊かにするには、総合的な学力、すなわち知性や感性が必要。
2019年09月17日
21世紀の「帝国の攻防」と「世界統治」
「欧州を代表する知性」と言われるジャック・アタリによる近未来予想本。2030年における各国の力関係、グローバル市場のゆくえ、人口問題等、地球規模の問題を論じ、迫りくる危機に警鐘を鳴らす。
「人類の歴史とは、帝国による世界支配の歴史であり、世界秩序の変遷の歴史」であるが、約100年に渡って続いて来たアメリカ帝国による世界支配が弱まり、世界秩序が大きく変わろうとしているのが現在だという。
世界秩序が変わるとき、混乱が起きる。100年前に大英帝国に対抗した新興勢力であるドイツによって第一次世界大戦と第二次世界大戦が起き、人類は数千万人に上るかつてない規模の殺戮を経験した。大英帝国はアメリカの戦争協力でかろうじて処理したものの、アメリカに覇権を渡すことになった。
現在は、アメリカ中心の秩序に中国が挑戦している。対立が深まれば、政治経済の混乱は必至だ。加えて、地球規模で進みつつある環境問題、人口問題がある。折しも、中東や印パでの緊張が高まっている。
ジャック・アタリは今のような国家や国際機関ではこうした問題に対処できないという。実際、できてない。世界が一つに「結束」することを訴えるが、そもそも「グローバル国家なきグローバル市場」での国家の力は落ちるばかりだ。
・アメリカの孤立主義同盟国は安全保障の上でも、経済の上でも、重大な危機に直面。・2030年において、経済・軍事・政治面で世界一の強国はアメリカそのはるか後方にEU、中国、インドが並び、更に後から日本。いずれの国も、地球のグローバルな問題に取り組む力を持っていない。・市場のグローバル化企業の本社は法的規制が最も緩く、税が最も軽い場所に絶えず移動。そのため、21世紀の各国政府は税収を得られず、脆弱になってゆく。・グローバル国家なきグローバル市場は法のない市場法の支配を免れた広大な空間が数多く存在し、犯罪集団は武器を有し、外交手段も備えた国家並みの政治勢力となる。今のような国家や国際機関では、世界を統治できない。・Global Systemic Risk様々な脅威がグローバル化された状態と、小さな勢力が分立する状態との間で引き裂かれる。その結果、解決されない諸問題が地球に蔓延し、地球を驚かす「グローバル・システミック・リスク」となる。�‖腟�模なインフレにより、世界的な金融危機が起こる�⊃邑�が激増し、全ての人に食料や水を調達できなくなる�Ｃ楼菠響茲�地球規模で多発する�っ狼絏甲伐修砲茲蝓�旱魃や洪水が発生する・結束予測される上記の世界では、人は生きられない。世界が一つに「結束」すれば、生体環境的にも社会的にも持続可能な成長は可能。
2019年09月16日
郵便局の配達員が書いた小説
何かの書評で見て、読んだことのない作家だったので、読んでみる。あとで作者の略歴を見ると、小説の流れとほぼ同じなので、ある種の自伝なのだろう。
1920年、ドイツ人の母とポーランド系アメリカ人の軍人との間にドイツで生まれたとある。一家は第一次世界大戦後のドイツの経済崩壊を避け、アメリカに渡る。帰国してからしばしば失業状態にあった父親から、幼年時代のブコウスキーは虐待を受けていたという。
「ブコウスキーが、創作活動に専念する1970年頃まで、様々な職業を経験しながら全米各地を転々としたことはよく知られているが、数十にのぼるその職遍歴のなかでも比較的長続きしたのが、郵便局の仕事だった。本書は、その頃の延べ15年近くになる郵便局勤務の体験をもとに、わずか19日間で書き上げられた、著者の処女長編小説である」（訳者による解説）
8：郵便配達人のやることって、手紙を突っ込んでは女と寝ることだったのだ、と。この仕事は、おれに向いている。138：彼女がバスルームに歩いていくのを見ていたが、ケツの下の肉がたるみ、皺やひだが刻まれていた。哀れなことだ。哀れで悲しいことだった。ジョイスは引き締まった硬い体をしていてきゅっと揉むのが心地よかった。でも、ベティじゃそうもいかない。悲しいことだ。233：看護婦に赤ん坊を下ろしていいと合図をして、赤ん坊と看護婦の両方に手を振ってバイバイした。感じのいい看護婦だ。きれいな脚にそそるケツ、それに形のいいオッパイだった。
2019年09月15日
「日本的」ということ
戦争中（1942年）初出の本論は、ドイツの建築家ブルーノ・タウトが安吾の故郷新潟を「日本で最も下品な都市」としたことの皮肉から始まる。昭和の初めに来日したタウトは、日光東照宮を「俗悪だ」とこき下ろす一方、それまで注目されることのなかった平等院鳳凰堂を絶賛した。
昭和8年(1933）5月3日近代建築学の巨匠タウトが初来日〜東照宮を「俗悪だ」と切って捨てる。
その一方、東照宮とほぼ同時期に造営された京都の桂離宮を絶賛する。
京都にいくつもある有名寺社と異なり、桂離宮はそれまではほとんど注目されたことがなかった。サトウらの『明治日本旅行案内』にも掲載されていない。（内田宗治『外国人が見た日本』）
明治以来、日光は外国人観光の目玉だった。それが著名外国人建築家からの思わぬ批判に、日本人知識層までもがそれに賛同する事態になる。
「だいたい、昭和10年代の日本の知識階級の精神状況は、西洋人がそのように言うと、皆右にならえみたいなところがありましたね」（中村真一郎「東照宮のみどころ」）
「だいたい、昭和10年代の日本の知識階級の精神状況は、西洋人がそのように言うと、皆右にならえみたいなところがありましたね」（中村真一郎「東照宮のみどころ」）
安吾は、東照宮のゴテゴテも、茶室の洗練された質素さも、あくまで「有」の世界の話で、大差はないという。
「人工の限界に対する絶望から、家だの庭だの家具だのというものには全然こだわらない、という生活態度は、特に日本の、本当の中身を求める精神生活者には愛用されたのだ。大雅堂は絵を描くための部屋を持たなかったし、良寛には寺さえ必要ではなかった」
私もモノに無頓着な方なので、ここまでは理解できる。しかし、安吾はこう続ける。
「法隆寺も平等院も焼けてしまって全然構わない。必要ならば、法隆寺を取り壊して停車場を作ればいい。我が民族の輝かしい文化や伝統は、そのことによって決して亡びはしない」
ここまで行くと大半の読者は付いていけないだろう。1950年に起こった金閣寺放火事件の犯人も、これを読んでいたのではないかと想像する。
50：タウトによれば、日本で最も下品な都市らしい新潟市に僕は生まれ、彼が蔑み嫌うところの上野から銀座の街、そこにともるネオンを僕は愛す。51：フランスの芸術家コクトーが日本へ来たとき、日本人はどうして和服を着ないのだろうと言って、日本が母国の伝統を忘れ、欧米かに必死になっている様子を嘆いた。なるほど、フランスは不思議な国だ。戦争が始まると、まず真っ先に避難したのはルーブル美術館のコレクションと金塊で、パリの保存と祖国の運命を引き換えにしてしまった。54：血に飢え、相手を八つ裂きにしても少しも晴れないほどの憎しみは、日本人にはほとんどない。昨日の敵は今日の友という甘さが、むしろ日本人が共有する感情だ。57：京都の寺や奈良の仏像が全滅しても困らないが、電車が動かなくては困る。我々にとって大切なのは「生活に必要な物事」だけで、古代文化が全滅しても、生活は亡びず、生活そのものが亡びないかぎり、我々の我々だけの特有な性質は健康なのだ。63：もともと舞妓は可愛いものとして作り上げられた存在に決まっているのに、子供風を装いながら、子供の美しさがないのだ。恥ずかしさを持たなければ、子供の価値はゼロだ。では、子供であって子供でないなら、大人と子供を兼ね備えた中間的な色っぽさがあるかというと、それもない。中国の広東に盲妹という芸者がいると聞くが、この盲妹というのは、顔立ちのきれいな女の子を幼いうちに盲目にして、特別の教養、つまり踊りや音楽を仕込むのだそうだ。中国人のやることは度を越して質が悪いが、その分、徹底している。どうせ可愛がるための道具として人工的に作り上げるつもりなら、それもまたいいだろう。81：建築は火に焼けるし、人はやがて死ぬから、人生は水の泡のようなものだ、というのは方丈記の思想で、タウトは方丈記を愛したが、実際のところ、タウトという人の思想はその程度のものでしかなかった。しかし、芭蕉の庭を現実世界では作ることができないという「諦め」、人工の限界に対する絶望から、家だの庭だの家具だのというものには全然こだわらない、という生活態度は、特に日本の、本当の中身を求める精神生活者には愛用されたのだ。大雅堂は絵を描くための部屋を持たなかったし、良寛には寺さえ必要ではなかった。82：無には及ばないという精神にとっては、ムダがなく質素な茶室も、ゴテゴテと飾り立てた日光東照宮も、両方とも同じ「有」の世界であり、突き詰めれば、同類なのだ。この精神から眺めれば、桂離宮が単純で気高く上品で、東照宮が世間に媚びた俗悪、下品だというような違いも区別もない。96：小菅刑務所とドライアイス工場と軍艦この三つのものが、どうして、こんなにも美しいのか。ここんは、美しくするために加工した美しさが、全然ない。美というものの立場から付け加えた一本の柱も鋼鉄もなく、美しくないという理由によって取り去った一本の柱も鋼鉄もない。ただ、必要なものだけが、必要な場所に置かれた。そうして、要らない物はすべて取り除かれ、必要だけを要求して、他のどれとも違うその物体だけの形が出来上がっているのだ。それは、それ自身に似ている以外には、他の何物にも似ていない形だ。100：法隆寺も平等院も焼けてしまって全然構わない。必要ならば、法隆寺を取り壊して停車場を作ればいい。我が民族の輝かしい文化や伝統は、そのことによって決して亡びはしない。
2019年09月14日
「健全な道徳」を脱ぎ捨て、素っ裸の人間に戻ろう
実際に読んだのは、前回に引き続き、理想社の現代語訳版。内容は「堕落論」とほぼ同じだが、天皇制についてやや比重がある。
明治以来、終戦まで天皇制について論じることはできなかったから、これは正に終戦がもたらしたもの。国民が熱狂して読んだというのも頷ける。
どうして、日本で「天皇制」がかくも長い間存続したのか？日本の皇室は世界最古の歴史を誇る。他国の王室は権力争いにより何度も途絶えている。日本でも天皇自ら「親政」を行ったのは初期だけで、後はほとんど実権を握っていない。しかし、その時々の実権を握るものが天皇制を残したのだ。
「それは、彼らが自分で主権を握るよりも天皇に握ってもらっておくほうが都合がよかったからだ」と安吾は結論付けている。
31：大化の改新以来、農村精神とは、「どうやって税金逃れをするか」と考え続ける飽くなき強い精神で、浮浪者となって脱税したり、戸籍をごまかして脱税したりしてきた。34：天皇制というものは日本の歴史を貫くひとつの制度ではあったけれども、天皇の尊厳というものはずっと天皇を利用する者の道具にすぎず、本当に存在したことは一度もなかった。藤原氏や将軍家にとって、どうして天皇制が必要だったか。どうして彼ら自身が最高の主権を握らなかったのか。それは、彼らが自分で主権を握るよりも天皇に握ってもらっておくほうが都合がよかったからだ。36：天皇とはこうした非常事態を処理するために、日本の歴史が編み出した、他の国ではちょっと見ることのない、独特な作品であり、手段であり、奥の手なのだ。軍部はこの奥の手を本能的に知っていて、私たち国民もまたこの奥の手を本能的に待ち構えていて、こうして軍部と日本人がいっしょになって作り上げたクライマックスが、8月15日となった。40：未亡人は恋愛をして、地獄へ堕ちなさい。生き残った軍人は闇屋になりなさい。
2019年09月13日
義士も聖女も堕落せよ！
教科書に載るほど有名だけど、これまで読んでなかったシリーズ。実際に読んだのは、上記の文庫本ではなく、理論社の現代語訳版。なので、下記のページ数は文庫本とは違う。
坂口安吾は明治39年（1906）新潟市生まれ。仏教にのめり込み、東洋大学印度哲学倫理学科に入学。卒業後、フランス語を学んでいたアテネ・フランセの友人たちと同時雑誌を創刊。小説「風博士」が小説家・牧野信一の目に留まり、絶賛を受ける。続く「黒谷村」でも牧野の激賞を受け、安吾は本格的に小説を書き始めてわずか1年足らずで、期待の新人作家と目されるようになる（解説）。
しかし、安吾の作品が独特なスタイル「荒唐無稽な笑い話＝ファルス」であったために、文学作品とは認められなかった。長い低迷期を経て、再び脚光を浴びたのは、戦後、本短編「堕落論」が熱狂的に受け入れられてだったという。
簡単にまとめれば、「戦争は終わったんだから、これからは肩ひじ張らず、人間らしく生きましょう」ということ。なるほど、これが終戦直後（昭和21年）の国民に受けたわけだ。安吾は、「人間らしく」を堕落と呼んでいる。
8：武士道融通のまったく利かない法則は、人間の弱点を守る防壁とするのが最大の目的だった。11：天皇制この上なく日本的な政治的作品。天皇制は天皇によって生み出されたものではない。いつの時代でも政治的な理由によって、天皇の存在は途絶えることなく認められてきた。社会的に忘れられたときにすら政治家たちによって担ぎ出されてくる。
16：私は偉大な破壊が好きだった。爆弾や焼夷弾に怯え、震えながら、凶暴な破壊に激しく興奮していたが、それにもかかわらず、このときほど人間を愛し、なつかしんでいたときはないような思いがする。22：生きよ。堕ちよ。この正当な順序の他に、本当に人間を救いうる便利な近道はない。23：戦争の破壊の美しさ美しいものがあるばかりで、人間がなかったから。実際、泥棒すらいなかった。最近の東京は暗いというが、戦争中は本当の暗闇で、それなのに、どんな深夜にも追い剥ぎの心配はなく、人々は暗闇の深夜を歩いて、戸締りなしで眠っていた。24：戦争は終わった。特攻隊の勇士はすでに闇屋となり、未亡人はすでに新たな男への思いによって胸をふくらませている。
2019年09月12日
避難所にテント村
アルピニストの野口健による災害時の避難所に関する提言。筆者自身が東日本大震災の際に、避難所を巡り支援する中で、避難所のあり方に疑問を感じたところから話は始まる。同様に災害支援に入った海外でも活躍する専門家から「日本の避難所は先進国の中では三流」と言われる。国際基準であるスフィア基準に照らし合わせると日本の避難所は失格だというのだ。
人間が生きていくのに必要な水の供給量、食料の栄養価、トイレの設置基準、避難所一人当たりの居住空間と言ったことが提示されているスフィア基準だが、日本の避難所が満たしてないのはほとんどのケースで、「避難所一人当たりの居住空間」と「プライバシー」。
日本は人口密度が高いから、避難所一人当たりの居住空間を確保するのが困難なことは言うまでもない。しかし、それは体育館や校舎など公共の施設を使おうとするからで、筆者の解決策はテント。校庭などにテントを張ればいいのである。
実際に、熊本地震の際には、筆者の呼びかけでテント村が設立された。159張600人弱収容を収容し、「足を伸ばしてゆっくり寝られる！」とそれまで車で寝泊まりしていた人々から喜ばれたそうだ。避難所があっても、プライバシーが保てないからと家族で車中泊を選んでいた人も多かった。テントなら家族で泊まれ、隣ともある程度のプライバシーが保てる。
一方、筆者は日本人の「生きのびる力」の弱体化に警鐘を鳴らす。便利で快適な生活に慣れ切った上、なんでも「優しい」がいいこととされ、個人で考えたり工夫する機会がどんどん失われている。これでは「ピンチになったとき本能的に動けない」。
喜多由裕『日本から男の子を育てる場所が消えていく』が紹介されていて、衰退しつつあるボーイスカウト活動を嘆く。なにしろ、6割弱の子どもが「山に登ったことがない」というのだ。私が小学生の時は、毎年正月に近くの600mの山に全校生徒が登った（何しろ讃岐平野では大麻山が最高峰）。いつの頃からか無くなっている。
実際は、「BSを辞めて塾に行った子よりも、BSを続けたこの方が、いい大学に進学したり、いい就職先を得たりして、社会で幅広く活動できるようになる傾向がある」そうだ。当然だろう。会社が求めているのはリーダーシップである。以前、マッキンゼーの採用基準を紹介したが、そこでも日本人候補者に一番足りないのはリーダーシップであると指摘されていた。
塾よりBSである。
はじめに3：「日本の避難所は先進国の中では三流」国際基準であるスフィア基準に照らし合わせると日本の避難所は失格。10：震災発生時、何よりも優先されるのは「自分の命は自分で守る」行動である「自助」テント生活だってアウトドア。自然体験からは「生き抜く力」を学ぶ。しかし6割弱の子どもが「山に登ったことがない」。衰退しつつある学校登山やボーイスカウト、また家族単位でのアウトドア体験の重要性。111：熊本地震テント村〜159張600人弱収容足を伸ばしてゆっくり寝られる！115：日本の避難所はソマリアの難民キャンプ以下ほとんどが小中学校の体育館や校舎でプライバシーがない。テントは家族単位でくつろげる。236：喜多由裕『日本から男の子を育てる場所が消えていく』ボーイスカウトに入ろうという子が減っている。野外活動や社会貢献を行うBS活動よりも、サッカークラブや少年野球チームに入ったり、塾に通わせるほうがいい、という考え方が主流。BSを辞めて塾に行った子よりも、BSを続けたこの方が、いい大学に進学したり、いい就職先を得たりして、社会で幅広く活動できるようになる傾向がある。「塾に行って受験のための学力をつけること」と、「地域の中でどんな貢献ができるかと色々な案を出し合い、実践していく中で、リーダーシップや役割分担の責任感が身についていくこと」と、どちらがいいのか。
2019年09月11日
日本にきた外国人
第6章は幕末から明治にかけて「日本にきた外国人」。司馬遼太郎は、アーネスト・サトー（Satow)が日本の幕末の状況を変えたという。
「はじめて将軍は皇帝でないということを考えたのはサトーで、国際法で考えてみて、それまで全部将軍を皇帝と考えていたし、正式文章でも皇帝と出ていますが、これは皇帝ではなくて大名の大いなるものであるということを22、3歳の青年が見抜いた。そのときには、日本人でも見抜いていたかどうかわからない」
どうして、外交官になりたての青年にそんなことができたのか？まず、「横浜で公使館に勤めながら、1年か2年くらいで候文まで書ける」ようになったという能力の高さがある。高校も首席で卒業していて、父親はケンブリッジ大学に進学させたかったようだが、ドイツ出身のサトー家は熱心なルーテル派で、19世紀半ば当時のケンブリッジ大学やオックスフォード大学では英国教徒しか学位が取れなかったという。
そこで、シティで働くユダヤ教徒やカトリック、プロテスタントなど宗教に関わらず台頭する中産階級の子弟のために創られたロンドン大学（UCL）に進学する。UCLで『エルギン卿遣日使節録』を読んで日本に憧れ、1861年イギリス外務省に入省している（通訳生として首席合格）。
この例を見ても、今も昔も、イギリスの活力を支えてきたのは、大陸からの移民。大陸では頻繁に戦争が起こり、その度に、島国であるイギリスは避難民の移住先となった。BREXIT推進派は、だから、EUから出て欧州大陸から距離を置いたほうがいいという。
109：津和野（司馬）私は江戸の中期くらいからだんだんそういう傾向になったと思うんですけれども、300近く藩がありまして、5万石程度の小さな藩というのは、産業を興すにも興せないし、資力もないし、なんとなく疎外されているような感じだったのですが、それが江戸の中期ごろから、学問という方向を見いだし、藩ぐるみで一生懸命にやりはじめた。132：アーネスト・サトー（司馬）アーネスト・サトーが日本の幕末の状況を変えた、といってもいいくらい。というよりも、レールにのせた。（中略）彼は貿易商人の子でべつに貴族の出ではありませんから、大学もケンブリッジではなくて、ロンドン大学かなにかです。外務省に通訳生として入って、「やりたいことがある。そのことばは日本語だ」と言ったら、日本語を教える学校も何もないから、「日本へ直接行け」ということになって、彼は中国語さえも知らずに日本に向かった。来る途中で中国によって、中国語をなんとかマスターして、横浜で公使館に勤めながら、1年か2年くらいで候文まで書けるようになる。138：キーンフェノロサは、なるべく日本人に自分たちのだいじな過去の美術のよさを教えたかった。だから弟子もつくった。一番の弟子はなんといっても岡倉天心。フェノロサは何かの用事でアメリカへ帰ったのち、二度目に日本にやって来ましたが、もうだれも彼を雇わなかった。日本人で同じような仕事をする人がすでにいましたから、わざわざお雇い外人さんに高いお金を出す必要はなかった。チェンバレンの場合は、彼は東京大学最初の日本言語学の教授ですが、やがて日本人も、同じような学問が、むしろ元外交官のチェンバレンよりもできるようになった。それで彼はなんとなく幻滅を感じて、晩年はもっぱらフランス文学を勉強し、彼の最後の作品は、フランス文学の美しい詩と、その研究とかいうようなものだったようです。ジュネーヴに住んでいましたが、もう日本のことを全然考えていなかった。ハーンは日本の市民になって、小泉八雲になったとたんに月給が半額になった。外国人として特別に優遇されなくなって、彼は驚いたでしょう。
2019年09月10日
日本人のモラル
司馬遼太郎は日本を「英雄のいない国」だという。大事を成し遂げた人は居た。しかし、日本では大事を成し遂げた人より、そうでない人の方が人気がある。
日本人は強いリーダーシップが本質的に嫌いなのではないかと思う。その人が何を成し遂げようとしているかではないのだ。
�て�本人の戦争観66：忠義と裏切り（司馬）合戦のいちばんピークの段階で必ず裏切者が出てくる。その裏切者が裏切者として、のちのちまで非難攻撃されるかというと、されていない。�テ�本人のモラル89：日本人と儒教（司馬）律令体制だって、国家秩序みたいなものの形だけの輸入で、内容は輸入していない。たとえば天皇が血縁結婚します。奈良朝時代以前の天皇でもそうですが、奈良町以後の天皇でもあります。儒教体制の国の人々が聞いたら、びっくり仰天しますでしょう。向うは血縁どころか、同姓はめとらずというのが鉄則です。105：司馬ぼくは日本人をいちばんすばらしいと思うのは、むしろ逆にさっきから言っている、原理というややこしいものに煩わされることが少なかったというところ。では、日本に何があるか、日本という島国があるだけだ。日本というお皿のようなものがあるだけだ。上に乗っかるものはいろいろあるというところが、日本というもののおもしろところ。��続・日本人のモラル151：英雄のいない国（司馬）頼朝というのは、政治家としては偉いですけど、まず人気はないでしょうね。義経という人はくだらない人ですが人気がある。明治維新のころなら、大久保利通というのはたいへん偉い政治家で、大した人だと思うのに、駄々っ子の西郷隆盛のほうに無限の愛着を感じてしまう。159：庶民と宗教（司馬）うなぎを食わずに、うなぎの蒲焼きの匂いだけをかいでいるような感じが日本人の仏教。たとえば『方丈記』の鴨長明が仏教であるかどうか・・・163：原型的な神道（司馬）あれだけ仏教を信じていた歴代の天皇が、御所のなかだけは坊さんを入れなかったし、お医者さんも、これは江戸時代になりますけれど、御所のお医者さんは頭がまるくて坊さんに似た格好をしております。しかも天皇の御座所までは入れない。
2019年09月09日
空海と一休
日本人にとって分かりにくい宗教の違い。司馬遼太郎は、「密教というのは仏教でなくバラモン教」だという。
バラモン教とは、インドで仏教が生まれる前に勢力を持っていた宗教で、現在のヒンズー教に繋がっている。特徴は、輪廻思想とその現世への適用。自分の生まれたカースト（社会階級）から現世では逃れることができない。最下位のスードラ（奴隷階級）に至っては、生まれ変わっても永遠にスードラという救いのない教えだ。
こうした社会の底辺の人を救うためお釈迦さまが創始したのが新たな宗教哲学である仏教。バラモン教にはない、輪廻界から解脱した如来や菩薩の住む「仏界」があるとした。
密教の源流は7-8世紀のインド大乗仏教にあるが、伝わった中国では流行らなかったらしい。しかし、空海は20歳で中国に留学した時、密教を取り入れるというはっきりした目的を持って行っている。長安で学んだ密教を、空海は独自に完璧な論理の真言密教にした。これも、日本的外国文化吸収の一つだろう。
バラモン教とは、インドで仏教が生まれる前に勢力を持っていた宗教で、現在のヒンズー教に繋がっている。特徴は、輪廻思想とその現世への適用。自分の生まれたカースト（社会階級）から現世では逃れることができない。最下位のスードラ（奴隷階級）に至っては、生まれ変わっても永遠にスードラという救いのない教えだ。
こうした社会の底辺の人を救うためお釈迦さまが創始したのが新たな宗教哲学である仏教。バラモン教にはない、輪廻界から解脱した如来や菩薩の住む「仏界」があるとした。
密教の源流は7-8世紀のインド大乗仏教にあるが、伝わった中国では流行らなかったらしい。しかし、空海は20歳で中国に留学した時、密教を取り入れるというはっきりした目的を持って行っている。長安で学んだ密教を、空海は独自に完璧な論理の真言密教にした。これも、日本的外国文化吸収の一つだろう。
��空海と一休27：密教というのは仏教でなくバラモン教（司馬）お釈迦さんが救主じゃありませんね。お釈迦さんを教祖としているんじゃなくて、架空の大日如来を教祖にしているんですから、実は、インドの土俗宗教だと思うのです。空海の真言密教というのは、比較することは大胆ですけれども、長安における真言密教ではなかったんだろう、と私は思うんです。原液は同じなんだけれども、それを空海は水晶のような結晶体に構築したのですね。そして論理的に狂いのないようにして、一つでも論理のケタをはずすと、ガラガラと崩れるような、一種の完璧なものにしたのが高野山なり東寺の真言密教だと思うのです。30：仏教の日本化（司馬）親鸞も日蓮も、ほとんどお釈迦さんと関係のない人ですね。極端にいえばお釈迦さんという世界性がどうであれ、自分一個の安心が結定すればよいというところがある。�６發寮こΑΧ笋寮こ�52：キーン応仁の乱のおかげで、公家たちは地方へ行ってしまった。そこで、そのときまでほとんどなきに等しかった日本の地方文化というものが、忽然として花を開く。雪舟の作った庭とか、雪舟の画いた絵は、いろんな所にある。もう一つ前の時代だったら、当然のこととして京都だけにあったはず。
2019年09月08日
オンライン飲み会
今受けているオンライン教育のメンバーで「オンライン飲み会」というものを初体験。このオンライン教育は毎日の課題の他に、今はやりのZoom（今年IPOして株価も好調）を使って毎週夜オンラインでライブ講習をやっているのだけど、今回、「終了後、有志で飲み会をやりましょう」ということになった。
その日の講師であった、「わかる」の玉樹さんもそのまま青森のご自宅から参加。任天堂でWiiのエバンジェリストとして活躍された方だ（本）。私は香川からと、オンラインらしく、全国から参加者が15名ほど。
全員が初対面。カメラで顔を出している人もいれば、声だけの人。そして、チャットだけで参加した人もいる。それでどうだったかというと、これがなかなか楽しかった。初対面とはいえ、毎日同じ課題に取り組んでいるので、共通の話題がある。
ライブ講習で一週間の課題の振り返りと解説があるのだけど、30分で1週間分をやるので、1課題当たり平均4分くらい。その後も、掲示板でやり取りは続くが、缶ビール片手にライブでやり取りできるのは楽しい。100人以上の参加者が居るライブ講習に比べて、圧倒的に参加者が少なく、講師と直にやり取りできるのも嬉しい。
リモートワークが増えて、オンライン飲み会も増えるという説があるが、どうだろう。
2019年09月07日
日本文化の誕生
週末、古典を一冊。司馬遼太郎とドナルド・キーンの対談集だ。県立図書館の書庫から出てきた本は1972年の初版。第一章は「日本文化の誕生」。
「ますらおぶり」と「たおやめぶり」というのが面白い。漢字で書けば、それぞれ「益荒男」と「手弱女」ということになる。簡単に言えば、「男性的」と「女性的」。
司馬は、「節操のある人、そしてほんとうに勇気のある人というのは、案外『たおやめぶり』の人から出ることが多い」という。例えば、強硬に主張していた人が、ある権威が反対意見だと分かると、ころりと変わることがある。この点、女性はそんなことを気にせずに、自分の意見や正しいと思ったことを守り抜く。
司馬は、「節操のある人、そしてほんとうに勇気のある人というのは、案外『たおやめぶり』の人から出ることが多い」という。例えば、強硬に主張していた人が、ある権威が反対意見だと分かると、ころりと変わることがある。この点、女性はそんなことを気にせずに、自分の意見や正しいと思ったことを守り抜く。
5：平城京（司馬）ちょうど長安の都の半分の大きさだそうですから、ずいぶん大きいですね。長安は当時百万をこえる人口だと言われておりますが、しかし必要があってできたわけです。（中略）平城京にはそれがない。もちろんバーも何もない。どうも庶民が住んでいたようなにおいがあまりなくて、しかも最も重要なことは、ここにはトイレの跡が出てこないそうですね。9：外国文化の受け入れ方（キーン）日本の歴史を眺めておりますと、あらゆる面に外国文化に対する愛と憎、受容と抵抗の関係があるように思われます。たとえば『源氏物語』を読みますと、「唐めきたり」という形容詞がありますが、これは悪い意味です。本来はいい意味のはずですけれど、私の理解した限りでは悪い意味です。要するに日本らしくない、わざとハイカラな姿をしている、そういう意味になります。『源氏物語』のなかにも中華文化崇拝のところもありますが、やっぱり抵抗もありましたから、だからこそ、『源氏物語』という小説は立派な文学として生まれたと思います。たとえば朝鮮文学とか、ずいぶんあとになりますけれどもヴェトナム文学とかの場合には、その小説の場面はだいたい中国です。自国のことをあまり書かなかったようです。11：朝鮮（司馬）ちょうど新羅の末期に、中国体制になりましょうということで、だいたい中国体制になってしまったわけですね。それまでは朝鮮人には朝鮮語の名前がついていたんですけれども、新羅の末期から、李承晩とか、朴正煕だとかいうような中国名前になってしまった。（中略）新羅の末期から官僚体制もそうなって、徹底的に儒教体制をやりだした。それが最も徹底したのが李朝からですけれども、李朝は500年間、1900年代の初頭まで続きます。つまり、500年間、生活の端々まで中国原理的になるわけです。15：「ますらおぶり」と「たおやめぶり」（司馬）節操のある人、そしてほんとうに勇気のある人というのは、案外「たおやめぶり」の人から出ることが多くて、つまり自分の意見なり、自分の立場なり、あるいは正しいと思ったことを守りぬくという点で、「ますらおぶり」の人はくるっとどこかへ転換してしまっているのに、「たおやめぶり」の人が頑固である、ということがある。また話は飛ぶのですけれども、古今の名将と言われているのは、東洋でも西洋でも、日本でも同じですけれど、比較的女性的な人が多いですね。中国でいえば、代表的なひとは、長良であるとか、あるいは最近の人では林彪なんかも女性的だったですね。西洋でも、ウェリントンだって、男くさい男ではなかった。
2019年09月06日
サーチファンド
昨年末、LBSのイギリス人同級生からの紹介で我が家にやってきた黒澤君が今日高松へ。彼は日本で初めてのサーチファンドをやろうとしている。高松で四国No.1のM&A仲介業者やシンクタンクを集めて勉強会。
サーチファンドの仕組みは上図の通り。経営者が交代するという意味ではMBIの一種。通常の買収ファンドと違うのは、資金の出し手がエンジェル投資家で、投資対象も一社に限ったターゲットファンドであること。
エンジェル投資家がサーチャーと言われる若手経営者候補（通常30代前半の新卒MBA）に2年間の猶予と活動資金を与え、サーチャーに買収候補企業を探させる。期限内に適切な買収候補先が見つかれば、買収条件を決めて、改めて必要な買収資金を投資家から集める。買収した企業をサーチャーが経営して大きくしていく。ポートフォリオを組まないターゲットファンドなので、EXITの期限は決まっておらず、長期に渡って経営して投資家には配当を払ってもいいし、よいEXITの機会があれば売却してファンドを解散してもいい。
私の同級生の場合は、LBS卒業後3.5年間サーチャーとして買収先を調査。売上数億円のヘルスケア関連企業を買収した。10年間で売上は10倍になり、売却。IRRは20%だったという。現在は欧州随一のサーチファンド投資家となっている。
2019年09月05日
マルナカの歌、最後のフレーズわかるかな？
香川の地域No.1スーパーといえばマルナカ。8年前に創業家が持株をイオンに売却。現在は兄弟会社の「山陽マルナカ」ともどもイオンの子会社になっている（本年3月に株式交換で「マックスバリュー西日本」子会社）。売上高1777億円 経常利益16億円（2019年2月期）四国と淡路島合わせて全142店舗。
前身は1926年（大正15年）に創業した中山青果問屋という青果卸。このため、マルナカのシンボルマークにある3本の波のような模様は地元ではバナナではないかと言われてきた。しかし、公式には、
マークの丸はマルナカの「ま〜あるい愛」を表し、イニシャルの「m」の三本柱は経営理念である「サービス」、「フレッシュ」、「情報」を表している。
ということだ。もう一つ、本部へ問い合わせが多いのが、店内で終日流れるテーマソング。いかにも、明るくて前向きで、購買意欲を促進するような曲なのだが、これまであまり気にも留めてこなかった。それが、8月31日付の朝日新聞に記事があったのだ。「マルナカの歌、最後のフレーズわかるかな？」
私は正解で、週三回マルナカで買い物している者としては当然
しかし、無理矢理マルナカにかけていて、ちょっと苦しい気はする。それより、ところどころ入れられている英語が分からなかった(笑)。歌っているのは「ご当地ソングの女王」と言われる演歌歌手の水森かおりということ。1985年、デビュー前の15歳の時の録音だそうだ。2019年09月04日
知識学派
今月の日経新聞「私の履歴書」は野中郁次郎先生。日本の経営学者の中で、世界に認められる「学派」を創ったのは野中先生以外にいない。野中先生らが提唱した「知識創造企業」という概念は世界に影響を与え、被論文引用数は未だに日本の経営学者の中で第一位と聞いている。
まだ4日目で始まったばかりだが、さっそく面白い。中学のときから数学が苦手だったが、兄の母校ということで、都立第三商業高校に進学。珠算3級と簿記3級が卒業資格なのに、簿記3級を受けたら、100点満点で5点しか取れなかった
というのに驚き（正解したのは、複式簿記の父「ルカ・パッチョーリ」だけ）。それでも卒業できたのは、2年生から進学クラスに入り、「どこかの大学に合格したら卒業できた」から。結果、合格したのが、早大政経の政治。経済は数学が要ったから避け、得意の英語で点数を稼いだという。
1日：リベンジ
私の精神を貫く太い幹は「米国へのリベンジ」だ。後に詳しくご説明するが、戦時中に、米軍機の機銃掃射にあい、死にかけた経験が原点にある。大学を卒業してビジネスマンになると、今度は米国の企業が、決して負けてはならない相手として目の前に現れた。このままだと日本はまた米国に負けると危機感を持ち、まずは懐に飛び込み、先方のやり方を吸収しようと考えて米国に留学したのだ。
2日：遺伝子
父は職人で、母は商売人。私は内気で、寡黙な父に似ているが、ときどき思い切った行動に出る。社会人になった後、突然、米国に留学したときもそうだったが、そんなところは、母の血を引いているのかもしれない。
3日：米軍の機銃掃射
旋回しながらまた撃ってくる戦闘機を見上げると、パイロットと目が合う。にやりと笑っているように見えた。「必ずいつか米国に勝つ」と心に刻み込んだ。このときの思いを胸に後に購入したグラマンの木製モデルが今も私の机上にあり、闘魂の起爆剤となっている。
4日：苦手な簿記
私は理数系の科目が苦手だったが、物事の本質を直観的にとらえるのはわりと得意で、概念や理論を生み出す原動力になっている。科学の方法論をみても、はじめは「観察」である。分析から始めるのではなく、経験こそが科学の原点なのだ。
2019年09月03日
水滸伝に出て来る武器
1120年、江南の地で100万人が立ち上がった「方臘の乱」。この農民蜂起鎮圧のため、宋禁軍15万が出動し、数十万人の信徒が殺害されたと言われる。この数字は『水滸伝』によるものではなく、当時の歴史書に拠ったもの。
1120年といえば、日本は平安時代だ。年代が近い騒乱は、1156年に皇位継承問題や摂政家の内紛で、朝廷が後白河上皇方と崇徳天皇方に分かれて武力衝突した「保元の乱」がある。公家の内部抗争解決に武家の力を借りたため、武士の存在感が増し、この後700年に渡る武家政権（鎌倉・室町・江戸）に繋がる。
時代が変わるきっかけとなった重要な戦いだが、この時の戦力は600騎。中国に比べると、お話にならない少なさなのだ。当時の推定人口が、宋1億-12000万人に対して、日本は500-600万人。1/20の規模であるから、そんなものなのかもしれない。因みに、時代を下って1600年の「関ケ原の戦い」では、東西両軍それぞれ8万人規模が動員されたようで、これがそれまでの日本最大の合戦となった。この時期の推定人口は1000万人である。
大量破壊兵器どころか、鉄砲もない1120年。戦いに使われた武器は、刀、剣、槍、矢、戟。この「戟」というのが分からなかったので、調べてみたところ、槍の先端にさらに別の刃がついたものらしい。『水滸伝』では、呂方や郭盛が愛用する。
いずれにしろ、白兵戦用の武器ばかり。かろうじて飛び道具として矢があるだけ。それも届く範囲はせいぜい数百メートル。白兵戦で数十万人殺害というのは想像を絶する。
2019年09月02日
農民蜂起
北方『水滸伝』19巻を完読してからだいぶ間が空いたが、その続編の『楊令伝』に取り掛かる。『水滸伝』は元の中国伝承本とは登場人物と粗筋が同じだけで、オリジナルの物語に仕上げられている。『楊令伝』も同様。
1120年江南一帯で農民蜂起が起こり、瞬く間に100万人とも言われる信者を集める。その指導者である方臘はただの宗教家ではなかった。自身の国を建てるという野心があり、それに宗教を利用したのだ。この「方臘の乱」に加え、東北部で女真族による金国が興り、契丹族の遼が衰退する。そこに起こった梁山泊の再結成。3年前に梁山泊を平定した宋だが、政治状況は内外とも一気に混とんとする。
史実では、「方臘の乱」自体は鎮圧されたものの、これに地方軍は対処できず、宗禁軍15万人が出動した。このため、宋は金と交わした「海上の盟」（金と共同し、遼を挟撃する）に基づき、遼の都燕京（北京）の攻略が遅れたうえ、江南遠征での疲弊もあり、結局落とせなかった。これがきっかけになって北宋は滅亡し、中国北部は金が、南部は南宋が支配する時代に変わる。
黄巾の乱、方臘の乱。中国の歴史を振り返れば、農民蜂起が時代の節目になっていることが分かる。中国共産革命も、マルクスレーニン主義が想定した資本主義で搾取される労働者階級を中心とした革命とは違い、農民を中心とした。
現在の中国は沿岸都市部の著しい経済発展と、取り残された内陸農村部の経済格差が最大限に広がっている。次の変化はどういう形で起こるのだろう。
黄巾の乱、方臘の乱。中国の歴史を振り返れば、農民蜂起が時代の節目になっていることが分かる。中国共産革命も、マルクスレーニン主義が想定した資本主義で搾取される労働者階級を中心とした革命とは違い、農民を中心とした。
現在の中国は沿岸都市部の著しい経済発展と、取り残された内陸農村部の経済格差が最大限に広がっている。次の変化はどういう形で起こるのだろう。
38：方臘は、信仰のもつきわめて純真な部分を、ある感性のようなもので掴み取り、見事に戦いに利用している。宗教と遠いのではなく、一体になっているわけでもなく、その持つ本質を誰よりも理解しているということなのだろう。信徒を信じないがゆえに、10万という正規軍を用意した。そのあたりは、かつてあった黄巾の乱や、五斗米道の戦いと違うところだった。308：聞煥章「燕国としましょう。新しい国を。燕雲十六州を、新しい国になすのです」382：方臘「正対は、死に兵でいい。殺しても殺しても、殺し尽くせぬこわさを、童貫に味わわせてやる」
2019年09月01日
FARGO
1996年アカデミー賞主演女優賞＆脚本賞、カンヌ映画祭監督賞受賞作品。10年以上前に一度見て、面白かったのを再びBSの録画で。
頼りない男が借金に困るが、気が弱くて裕福な義父に借金をお願いできない。そこで、奥さんが誘拐されたことにして身代金の形で金を手に入れようとする。そのために雇われたチンピラは誘拐後職務質問の警官を射殺してしまう。おまけに、その現場を見てしまったカップルも成り行きで射殺。そこから狂いはじめ、身代金を渡しに来た義父も、それに不信をいただきそうになった駐車場係も、ついには誘拐した奥さんも、全員殺してしまうのだ。こうして、8万ドルを手に入れるための無邪気な狂言誘拐のはずが、大量殺人事件に。
今回調べて初めて分かったのが、これは完全なフィクションであるということ。映画冒頭に、「これは実話である」とわざわざ出て来るので、すっかり実話だと思っていた
しかし、気の弱い、優柔不断な人間は、独裁者と同じくらい悲劇をもたらすというのは本当だと思う。
