2019年07月
2019年07月31日
日本型「先送り」システム
1979-98年生まれは「逃げられない世代」だという。団塊ジュニア（1971-74年生まれ）の老後を支えなくてはならない。そのためには社会保障システムを再構築しなければならない。なぜなら、団塊の世代＋αの5年間（1947-1951）の人口総数は1028万人で、団塊ジュニア世代+α（1971-75）の総数984万人とほぼ均衡が取れている。ところが、それ以降の世代には、それに匹敵する人口の塊が全くない。
安全保障についても、これまでは、経済力を背景に、同盟国アメリカに頼ってきたが、経済力の低下で危うくなっている。オバマ大統領は「もはやアメリカは世界の警察ではない」と宣言し、同盟国に自助を促した。トランプ大統領はもっとあからさまに日本の負担増を求めている。
いずれも今に始まった話ではないが、経済産業省出身の筆者は、日本には「先送りする構造」があるという。社会保障財政が将来的に悪化することは、低成長率が定着した1990年代にはすでに予測されていた。にもかかわらず、対策のために増税したり給付を減らすことは国民の受けが悪いため、問題が長らく放置されてきた。
＊日本は、財政赤字、外交問題など様々な問題を放置してきた問題への対策は講じられず、将来的なリスクが拡大。＊与党・官僚・野党による「先送りシステム」・衆議院議員の任期は平均3年程度。政策的視点は2-3年を見据えた短期的なものになる。・中央官僚の幹部級は1-2年ごとに部署を異動する。長期的な政策立案に取り組むのは困難。・「事前審査制」により、野党議員は政策決定に関われない。そのため刹那的に政府を批判し、足を引っ張ろうとする。＊社会保障制度は、国民が相互に支え合うシステムであり、人口構成の変化が制度改革に直結「団塊ジュニア」（1971-74生まれ）以降の世代は、それを支えられる人口の塊がなく、問題を先送りできない。＊国際社会においては、今後、中国とインドが存在感国際経済におけるポジションの低下は、日本の安全保障環境に影響。下手をすれば、米国が日本との同盟関係を解消する可能性。
2019年07月30日
「営業戦略」より「人材戦略」
「中小企業のカリスマ経営者」と言われる�衂霏¬遒両�山社長による最新作。今のトレンドとはちょっと違うことがいろいろ書かれている。
例えば、「社長は、社員のプライベートに踏み込め」。社員の価値観を揃えるためには、「社員のことをよく知る」ことが欠かせない。そのため、入社時に個人情報を開示することについて承諾書を取るのだそうだ。だから、本書をはじめ、小山社長の著書には社員が実名で出て来る。
これが「HPや書籍に実名が出ると、身元が特定されるため、『わけありの人』が入社できない」というリスク回避策にもなっているというのが面白い。
＊これからの時代に必要なのは、「営業戦略」より「人材戦略」はじめに：人材戦略は「社員一人当たりの生産性を上げる」ことと、「人材の流出を防ぐ」こと社員教育に「年間1億円以上」（そのうち懇親会費は2700万円）投じているのは、社長と社員、上司と部下の価値観を揃えるため。4：社長は、社員のプライベートに踏み込め価値観を揃えるために大切なのは、「社員のことをよく知る」こと7：社内恋愛の多さが会社を強くする「社内結婚」するのは、会社が安定し、人間関係が良い状態にある証拠。60：個人情報を公開したくない人入社時に「個人情報をオープンにする」という個人情報開示承諾書にサインしてもらう。サインできない人は不採用。��HPに採用活動や内定者研修の様子を「リアル」に載せることで、次年度の採用活動に活かすことができる。��HPや書籍に実名が出ると、身元が特定されるため、「わけありの人」が入社できない。�８朕余霾鵑鬟�ープンにすることで、情報が埋もれてしまったり、私物化されたり、歪曲されるのを防ぐことができる。125：人事異動を繰り返すほど、人は定着する�／靴靴し亳海鬚垢襪海箸如∪�長を実感できる�▲皀鵐好拭璽僉璽箸簀蛭兇�なくなる��上司のことが嫌いでも我慢できる�ぜ勸�の「不正」がなくなり、犯罪者を出さない�タ径桓勸�の「入社1年以内の離職率」が下がる�Α峪纏�ができる人」のモチベーションが下がらない183：伸びる社員の共通点〜言われたことを素直に実行できる�仝世錣譴燭海箸鯀把召房孫圓任�る�⊃佑凌浸�ができる
2019年07月29日
グローバリズムの破綻
グローバリズムの恩恵はスゴイ。ベルリンの壁崩壊以降の30年で先進国の生活水準は確実に上がり、発展途上国では10億人以上の人間が貧困から脱した。これだけ多くの人々がこれだけ豊かになったことは人類史上かつてない。
それなのに、グローバリズムへの批判は強くなる一方だ。欧米の多くの国でナショナリズム運動が広がっている。グローバリズムの恩恵を最も受けた国の一つであるイギリスは、EU離脱を決めた。世界で最もグローバルな金融市場であるシティは、「普通のサラリーマンが1億円プレヤーになれる可能性の最も高い街」と言われたが、それも終わろうとしている。
大半の人は自分の生活水準が下がったわけではないが（下図）、グローバリズムの恩恵をフルに受けている人を妬んだ。人の嫉妬とはかくも恐ろしく、自分だけが取り残されるくらいなら、全員が貧しい方がいいと考えるものか
それとも、本当に、ナショナリズムで自分の生活が良くなると思っているのか。
＊グローバリズムは破綻の危機欧米では、移民や難民が流入する中、グローバリズムの恩恵が受けられない人々の間に、ナショナリズム運動が広がっている。・グローバリズムは破綻の種を内に秘めている経済的不安：発展途上国の低賃金労働者の活用、機械による自動化、AIの採用で、先進国の労働者の雇用が奪われる。文化的不安：コミュニティ内の人種、民族、宗教の構成の変化により国民のアイデンティティの不安が煽られる。・欧州における近年のテロ攻撃の多くは、欧州生まれのイスラム教徒によるもの。・「壁」の建設イスラエルとガザ地区などを分ける壁は、「彼ら」に民主主義を与えないことで、「われわれ」の民主主義を守っている。一人当たり所得は、壁の外側では$4300、壁の内側では$35,000．失業率は、西岸地区内では18%に近く、ガザ地区では42%を超える。壁の内側では4%。
2019年07月28日
アメリカ進出
上場後も赤字を続けているメルカリ。フリマ市場を制した国内事業は大儲けだが、その利益を上回る投資を米国市場で行っている。
これまでのところ、インターネットサービスで海外進出に成功した企業はないといっていいだろう。古くはインボイス、ECでは楽天、レシピのクックパッド、Web会議のVcubeなどなど・・・大赤字で撤退したか、大幅な事業縮小で細々と続けているか。かつては、日本の工業製品が世界を席巻したが、モノを売るのと違い、サービスでの進出は桁違いにハードルが高い。
山田CEOは、「日本を捨ててでもUSを成功させたい」と言っており、その決意は固い。その通り、新規事業子会社ソウゾウを通じて試していた、メルカリNOW、teacha、メルカリメゾンズなど全て1年内でサービスを終了しており、アメリカに巨額資金をつぎ込む一方、国内新事業は驚くほど見切りが早い。
メルカリが米国市場でも成功できるかどうか。私には予測できるだけの知見がない。米国ではフリマアプリ「ポッシュマーク」（Melon Venturesなどから$12M調達）が2012年にサービス開始して先行しているが、ファション分野に特化している。メルカリは国内同様、何でも扱っている。
メルカリがサービス開始した2013年7月時点で、国内ではフリルが1年間先行していたが、こちらも若い女性に特化したサービスだった。他にも、メルカリ参入までに、パシャオク（サイバーエージェント）、毎日フリマ（同）、ショッピーズ（スターダスト）、ガレージセール（ウェブシャーク）、Prima（エクストーン）がスマホアプリのフリマ市場に参入した。この中で現在までサービスを続けているのは、楽天に統合されたフリルとショッピーズだけだ。
2019年07月27日
メルカリの資金調達
2013年2月設立時は社外取締役・松山太河を含む取締役全員の出資で始まった。ちなみに、富島取締役はお金がなくて山田社長から借りたそうだ。この200万円を毎月給与の中から10万円ずつ返済したので、当初生活がギリギリだったという。これが今では300億円に❢
そして、最初にまとまった資金を出したのは松山がパートナーのEast Ventures。 設立後3ヵ月の動きを見て5000万円を出資する。シードラウンドとしてはこれが上限だった。その後の調達状況は以下の通り。
そして、最初にまとまった資金を出したのは松山がパートナーのEast Ventures。 設立後3ヵ月の動きを見て5000万円を出資する。シードラウンドとしてはこれが上限だった。その後の調達状況は以下の通り。
2013年5月 シードラウンド East Venturesから0.5億円
2013年8月 Series A ユナイテッドから3億円 ポスト15億円
（2013年12月 累計DL数100万突破 mixi取締役CFOの小泉が入社CFO）
（2013年12月 累計DL数100万突破 mixi取締役CFOの小泉が入社CFO）
2014年3月 Series B Global Brain, Globis CP, ITV, GMOなどから14.5億円 ポスト90億円
（2014年4月 200万DL突破 5月テレビCM）
（2014年4月 200万DL突破 5月テレビCM）
2014年10月 Series C 23億円（既存株主＋日本郵政キャピタル、ヤマト運輸など）
（2015年6月 1700万DL突破）
2016年3月 Series D 80億円（既存株主＋日本政策投資銀行、三井物産など）
（2016年6月 3300万DL突破）
（2015年6月 1700万DL突破）
2016年3月 Series D 80億円（既存株主＋日本政策投資銀行、三井物産など）
（2016年6月 3300万DL突破）
2018年6月 IPO 601億円 7100万DL突破
これを見ると、資金調達のペースが速いことに驚く。それを裏付ける事業進捗があったとはいえ、異例だ。
シードラウンドは設立から3か月後。3ヵ月でプロダクトができていた。さらに3か月後ユナイテッドから3億円の調達。DL数は順調に伸びていたとはいえ、まだ課金してないので、売上はゼロで時価総額15億円。
累計DL数が100万になる頃、mixi取締役CFOであった小泉が入社し、その後の資金調達の中心になる。早速Series B目標調達額12億円に向けて動き出すが、流石に90億円の時価総額に最初から納得するVCは少なかったという。
しかし、会うたびに伸びるDL数と流通総額を見て、交渉していたVCも「これは行けるのではないか」と思い始める。結局、Global Brain, Globis CP, ITV, GMOなどが出資を決めた。DL数は増資完了後200万を超える。
下が、上場時の株主構成。会社設立時にお金がなくて山田社長に借金した富島執行役員（現）は、7%の持ち株比率で、280億円の価値になった。
これを見ると、資金調達のペースが速いことに驚く。それを裏付ける事業進捗があったとはいえ、異例だ。
シードラウンドは設立から3か月後。3ヵ月でプロダクトができていた。さらに3か月後ユナイテッドから3億円の調達。DL数は順調に伸びていたとはいえ、まだ課金してないので、売上はゼロで時価総額15億円。
累計DL数が100万になる頃、mixi取締役CFOであった小泉が入社し、その後の資金調達の中心になる。早速Series B目標調達額12億円に向けて動き出すが、流石に90億円の時価総額に最初から納得するVCは少なかったという。
しかし、会うたびに伸びるDL数と流通総額を見て、交渉していたVCも「これは行けるのではないか」と思い始める。結局、Global Brain, Globis CP, ITV, GMOなどが出資を決めた。DL数は増資完了後200万を超える。
下が、上場時の株主構成。会社設立時にお金がなくて山田社長に借金した富島執行役員（現）は、7%の持ち株比率で、280億円の価値になった。
2019年07月26日
メルカリ人脈
メルカリは創業者山田進太郎の友人関係でスタートしている。その中心は、早稲田。在学中にインターネットメディア運営サークル「早稲田リンクス」3代目幹事長に就任している。それが97年だから正にインターネットがブームになりつつあった頃。
その時のあだ名が「早稲田のビル・ゲイツ」だったそうで、山田が就任してそれまでの緩いサークルから、広告料の体系を作ったり他の団体・企業との提携を進め、組織化＆拡大路線を図ったことから。起業家の芽は既にあったようだ。
在学中に楽天でインターンを行い、楽天オークションを立ち上げている。プログラミングは東海中学校・高校の頃からしていたそうだ。内定をもらったが、結局断り、起業。その間、ネットエイジに出入りし、早稲田の先輩になる松山太河と知り合っている。その縁で、最初の会社ウノウ設立時には松山太河が出資し、社外取締役に就任している。
ウノウは他社のウェブ制作など受託開発もしながら、独自サービスを出していく。最終的にヒットしたのがソーシャルゲームの「まちつく！」mixiのオープン化に合わせて発表した「まちつく！」は1年で300万ユーザーを獲得する。
これに目を止めたのが、日本進出を考えていた米ゲーム大手ジンガ。ウノウに買収提案し、山田はこれを受ける。2010/8ウノウはジンガ・ジャパンとなる。売却後1.5年で退職することになるが、その間にジンガを通じて米国市場やシリコンバレーのスタートアップがどう経営されているかを学ぶ機会になった。
退職後はよく知られたように、約1年間かけ世界一周。次はC2Cをやると決め設立したのがコウゾウ（後のメルカリ）。二人の共同創業者も以前に起業経験がある、かなりのドリームチームだ。そして、社外取締役が再び松山太河だった。松山は2013年の設立時に個人で出資。その後、パートナーを務めるEast Venturesで50Mを出資し、最初の外部投資家となった。
�仝躬�山田進太郎1977 愛知県生まれ東海中学校・高校→早稲田大学教育学部2000/3卒1997在学中インターネットメディア運営サークル「早稲田リンクス」3代目幹事長組織化＆拡大路線「早稲田のビル・ゲイツ」2001/8 ウノウ設立（松山太河出資＆社外取締役）2009秋 mixiオープン化→「まちつく！」のヒット（1年で300万ユーザー）2010/8 ウノウをジンガに売却→ジンガ・ジャパン2012/1 退職�Ｍ０賁菊�2013/2 コウゾウ設立（→メルカリ）代表取締役 山田進一郎取締役 富島寛（早大一文→エルテス→バンクオブイノベーション）取締役 石塚亮（米国でゲーム会社創業→売却→Google）社外取締役 松山太河（早大→アクセンチュア→ネットエイジ→投資家）社外監査役 猪木俊宏（弁護士）＊山田はウノウの起業＆売却を経験、二人の共同創業者も以前に起業。エンジニアはTwitterで募集（山田のフォロワーは10万人）
2019年07月25日
未来のお金と経済の形
ゴールドマンサックス本社のトレーダーが600人から2人に減ったというのは衝撃的。
80年代までの投資銀行はその名の通り、起債や新株発行、M&Aなどの投資銀行業務が花形。それが、90年代に入り、トレーディングが収益を伸ばし、中心になっていく。フィンテックのはしりで、90年代初期の不況で理系人材が大量に金融業界に流入。「金融工学」に対応できない他社を食い物に、ぼろ儲けしていた。
それが終わりを告げたのが2008年リーマンショック。レバレッジを使ったトレーディングが制限され、かつ、不況対策で世界的に低金利になり、トレーディングが儲からなくなった。儲からなくなったのと、AIの進歩で、トレーダーではなく機械がトレーディングする時代になった。
215：AIで消える産業、伸びる産業2000年Goldman Sachs NY本社の現物株式取引部門に配属されたいたトレーダーは600人だったが、2017年にはわずか2人。231：ブロックチェーンで伸びる国アフリカで金融だけでなく、輸送業など多くの産業も乗っ取ってしまう。先進国が築き上げたインフラやテクノロジーがない、まっさらなマーケット。235：思い込みから自らを解き放て投資で成功するには歴史が重要。それを実際の経験に結びつけることも同じくらい重要。
2019年07月24日
大変化の波に乗り遅れるな
人は大金を持つと、自然と気持ちが大きくなる。友人にごちそうするくらいならいいが、「自分は投資の天才だ」と思って、次の投資をすると大抵失敗する。以前は、例えば、100万円の投資をするのに業界や競合、財務分析までキチンとやった上で慎重に投資していたのに、1000万円の投資を勢いでやってしまう。そして全てを失う。
「企業調査では競合相手からも話を聞く」のは、その通り。会社は大体いいことを言う。リスクのない事業はあり得ないので、いいことだけでは信用されないから懸念材料も出すが、割合としては全体の1/3くらいだろう。
競合相手から当該会社のことを聞けば、大抵その逆になる。それに顧客や仕入れ先のヒアリングを合わせて、初めて実態が立体的に見えてくる。
194：企業調査する時は競合相手からも話を聞くトヨタについて知りたければ日産やフォードを訪ねる。競合相手のことになると人は饒舌になる。201：投資家に必要なのは、ほとんどの場合「何もしない」こと儲けの直後は、一番失敗しやすい。儲けた時こそ、ビーチにでも行って何もせずにいる。210：私が日本の若者なら移住先は、韓国か中国、あるいはコロンビアかベトナム。多くの宗教や民族がない地域には、多民族・多宗教の地域より安定した未来。
2019年07月23日
アジアを取り囲む大国たち〜アメリカ・ロシア・インド
現在絶好調のアメリカ経済がいずれ失速するのは当然として（ロジャーズは長期的にも悲観的だが、米国の強さをどう見るかによる）、ロシアに強気でインドに弱気というのは逆張りのロジャーズらしい。
世界的に見て、現在インドが人気なのは、��IT人材を中心にインド人が世界で活躍している、�▲皀妊�首相率いるインド人民党（BJP）が先月の総選挙で勝利し、政権が安定している、��10億人を超える世界最大の民主主義国家である、ことからだろう。
対照的に、ロシアはプーチン政権の対外強硬策や反西欧民主主義的政策（どちらもロシアの伝統だから国内支持率は高い）から「危ない国」と見られがちだ。ロジャーズは国の発展にとって民主主義が一番とは思っていないようで、中国やロシアなど独裁政権に対して寛容だ。民主化を目指した「アラブの春」の結末を見ると、大半の国は以前より治安状況・経済状況が悪くなっており、それぞれの国の歴史や政治風土を無視した民主化は混乱をもたらすだけであることが分かる。
＊好調なアメリカ経済は早晩、悲劇を迎える。インドはまだ「本物の国家」ではない。ロシアは買い。
165：アメリカの上昇トレンド終焉後の世界アメリカで上がっているのは一部のメガIT企業の株だけ。2020年までのどこかで上昇トレンドは終焉し、アメリカは悲惨な目に遭う。1929年間税法（米経済学者のほぼ全員が反対）→株式暴落→大恐慌→WW2米中貿易戦争が始まれば、恩恵を受けるのはロシア農業。173：インド経済国としては魅力的だが大国への道は遠い（世界最悪の官僚制度）175：ロシア経済ロシアの肥料業界。経済制裁で食料を輸入できず、農業が繁栄。Aeroflot国家債務が少ない←誰も貸さないからウラジオストクの可能性。ロシア極東を開発要しようと莫大な投資。
2019年07月22日
フィリピン事業で上場したips
昨年マザーズに上場したipsの上場記念株主説明会で同社の主要事業があるフィリピンへ。フィリピンに行くのは初めて。私は出資しているVCファンドを通じて10年来の（間接）株主だったので、同社の紆余曲折をずっと見ていた。やっと上場して感慨深い。
ほとんどの国民が英語を話せ、教育水準も比較的高いにもかかわらず、フィリピンは政情不安と治安の悪さから「アジアの病人」とまで言われた時代があった。だが、それも、今は昔の話。工業化社会を経ずに、情報化社会にいきなり移行してトップクラスの経済成長を遂げている点は、インドに似ている。この20年で最も伸びたのはBPOビジネス。英語が話せて若い人が沢山いて（平均年齢24歳！）人件費が安い。米国向けのコールセンターがどんどん伸びて、長年同国の経済を支えてきた海外の出稼ぎ労働者からの送金を海外向けのBPO売上が昨年上回ったといわれている(上図)。
ところが、フィリピンBPOビジネスのネックが脆弱なインターネット回線。速度が遅く、繋がりにくい。その原因は、財閥系の2社が通信事業を長年独占していたことにあり、2016年政府が特別法を制定して、通信事業認可を与えたのがipsと地元のケーブルテレビ会社との合弁会社であるInfiniVAN。今回の訪問では、道路地下に光ファイバーを敷設している工事現場を見たり、顧客であるケーブルテレビ会社の社長から話を聞いた。
リスクがあるとしたら、再び政情不安になることや、財閥系通信会社の巻き返しか。現状では、ドゥテルテ大統領の人気は不動だし、財閥系も通信事業だけではなくBPOビジネスもやっていることから、回線状況が良くなることは、彼らにとってもプラスらしい。
2019年07月21日
映画「運び屋」
初フィリピン。かの地にダイビングで何度も行っている長女からペソの残りを貰う(笑)。
普段映画を見る時間がなかなかないので、機上では映画を見ることにしている。今回見たのはクリント・イーストウッド監督＆主演のTHE MULE。クリント・イーストウッド監督映画は大好きなので、迷わず今年公開の本作を選ぶ。自身の監督作で主演は「グランド・トリノ」以来10年ぶりだという。Muleはラバだが、米俗語で「麻薬の運び屋」という意味があるとのこと。これは知らなかった。
「実話にヒントを得て」とのことなので、主人公の背景は創作なのだろう。しかし、麻薬の運び屋として最もありそうにない老人が桁違いの麻薬を運んでいて捕まったのは本当。老人は常にマイペースで、何十億円分もの麻薬を運んでいながら、友人のところに途中で寄ってみたり、パンクして困った人がいたら助けてみたりで、言われた通り運ばない。逆に、そのおかげで、麻薬カルテルの携帯通話を盗聴して張り込んでいたDEA麻薬捜査官の捜査を逃れる。
「グランド・トリノ」との共通点は、古い時代に育った白人主人公の美学と覚悟。「グランド・トリノ」では、長年住んでいる町が自動車産業の衰退で廃れ、不動産価格が下がった地域に移民が増え、治安が悪くなるところから始まる。当初は移民に偏見を持っていた主人公が、移民もアメリカ人と同じようにいい奴もいれば悪いやつもいることを理解し、最後はいい奴を自らを犠牲にして守る。
「運び屋」では映画の終盤ついに捕らえられた90歳の主人公は裁判にかけられる。弁護士は、「麻薬カルテルが疑われそうもない老人をいいように使った」と無実あるいは減刑を訴えるのだが、本人が"I am guilty"と言って、自ら責任を取る。
出世作の「ダーティハリー」では、犯罪者に力ずくで責任を取らせる役だったが、監督になってからは自分で自分の生き方に「落とし前」をつけるのがテーマか。
2019年07月20日
日本初のユニコーン
未上場のテクノロジー企業で時価総額$1B（約1100億円）以上の会社をユニコーンと呼ぶ。ユニコーンは一角獣で、滅多にいないことから（というか想像上の動物）、そうした会社を5年ほど前からユニコーンとアメリカで呼び始めた。
東証一部に小粒の会社ばかり上場させたおかげで、東証一部が他の市場よりもダントツに上場企業数が多いという問題解決のために、時価総額の基準導入の話が出ているが、そこで言われているのが250-500億円というから、未公開で1100億円というのはいかに大きいかが分かるだろう。
ユニコーンの生息地はアメリカが最も多い。次いで中国、英国、インド。今年はUberやSlackなど米国ユニコーンの上場が相次いでいる。上場は既存投資家にとってEXITなので、時価総額が最大になるタイミングを見計らって実施しようとする（しかしVCファンドの期限もある）。株式市場が好調なことの証拠で、ピークが近いともいえる。
米国 151社
中国 82社
英国 16社
インド 13社
(CBinsights 2019)
日本で最初のユニコーンとなり、昨年6月に上場したのがメルカリ。メルカリ上場については、
・5年で3000億円の市場を作った
・フリマアプリで先行したわけではなく後発
・未公開段階で巨額の資金調達
・投資家に対する巨額のリターン
・上場後も米国市場とスマホ決済への巨額投資で赤字を続けている
という興味深い点がある。それぞれのテーマについて本書を参考にしながら考えてみたい。
2019年07月19日
中国〜世界の覇権国に最も近い国
ロジャーズは「中国にはまだまだ爆発的成長の可能性」があるという。確かに、日本の経済成長が参考になるなら、日本は1970年台前半にドイツを抜いてGDP世界第2位になった後も、それまでの10%近い成長率からは半分の4-5%となったが順調な成長を続けた。株価がピークを付けるのは1989年末なので、それまで15年くらい基本的には上昇相場である。
中国は毎年、アメリカの10倍、日本の15倍ほどのエンジニアを輩出している。しかし、日本も高度経済成長期までは理系の方が人気だったのである。経済が成熟するにつれ、文系の方が人気になっていく。
これがどういう意味を持つのか？日本は戦前のアジア進出の時と、80年代の日米貿易戦争でアメリカに挑戦し、そして2回とも敗れた。中国は1000年以上にも渡って世界一の経済大国であった歴史がある。米中の覇権争いは続きそうだ。
123：中国にはまだまだ爆発的成長の可能性火薬・羅針盤・活版印刷〜すべて中国の発明2017年末ユニコーン企業世界220社の3割が中国（アメリカは5割）中国は毎年、アメリカの10倍、日本の15倍ほどのエンジニアを輩出。バイカル湖周辺の天然資源（シベリアはロシアが植民地化する1636年より前は中国やモンゴルが支配）132：中国に投資するなら環境ビジネス、インフラ、ヘルスケア国内に不足しているコモディティ〜綿、ニッケル、石油環境、農業、ツーリズム、鉄道141：チャイナ・リスク低下を続ける出生率広がる格差急激に増えた借金
2019年07月18日
朝鮮半島はこれから「世界で最も刺激的な場所」になる
「南北の統一が進めば、韓国経済が抱える問題はすべて解決」し、「朝鮮半島は5年後にアジアで一番幸せな国になる」という。拉致問題も解決してないのに、日本人にとって本書で最も納得しがたい点だろう。だが、拉致被害を受けたのはほとんど日本人なので、海外の反応は薄く、一旦その方向に動き出せば日本の意向は無視されそうだ。
それどころか、韓国以上の賠償を求めてくる可能性が高い。北朝鮮が「1970年まで北朝鮮は韓国よりも豊かだった」のは、ひとえに、戦前に日本が日本国内の税金を使って多大なインフラ投資を行ったからなのだが（当時アジア最大の肥料工場も水力発電所も皆現在の北朝鮮に日本が建設した）、そんな事実も無視されそうだ。
93：北朝鮮はこれから二桁成長を遂げる韓国と北朝鮮が統一される。北朝鮮の開国で韓国の少子高齢化問題は解決する。105：北朝鮮に投資したい理由1970年まで北朝鮮は韓国よりも豊かだった。日本人と同じように教育熱心で、勤勉、貯金。北朝鮮は昨今、多くの人材をシンガポールや中国に送り込んで開国の準備をしている。111：朝鮮半島統一の恩恵を受ける産業ツーリズムと農業、鉱業、漁業、アパレル。日本のツーリズムはインバウンドだが、韓国の場合は韓国・北朝鮮間の国内旅行で成長。ロシアはすでに北朝鮮とつなぐ鉄道を建設しており、北朝鮮北部に港湾も建設。中国も同様に、北朝鮮に通じる橋や道路を建設。
2019年07月17日
大いなる可能性を秘めた日本
第1章のタイトルは「大いなる可能性を秘めた日本」で、期待させるものだが、実際の内容は悲観的。簡単に言えば、「潜在力はあるが、国民が目先の多少の困難を嫌って安易な道を進んでいるから、日本は破綻するでしょう」というのがロジャーズの予測。
ロジャーズの政策提案に賛成。ただし、やらなければならないことがわかっていてもできないのはかつての日産と同じ。うちわの論理が通じない外国人にやってもらうのはどうだろう？
＊人口が減り、借金が膨らみ、外国人を受け入れない国は亡びる＝歴史の必然43：私がもし10歳の日本人なら、ただちに日本を去る国民全体が不満を覚えて国が破綻に向かうときは、怒り、バイオレンス、社会不安が募る。46：国の衰退の原因を歴史に見る1962年アジアで最も裕福な国はビルマだった。政府が「外国人を追放せよ」と命令し、国境を閉鎖。50年後の今、アジアの最貧国に成り果てた。中国にはアフリカなど各地を探訪した鄭和という有名な提督もいたが、政府は彼の残した貴重な地図や記録もすべて燃やし、国を閉鎖した。中国は衰退の一途を辿った。49：日本の景気はうわべだけいま10歳の子どもたちが40歳になる頃には、彼らの老後を保証する金は尽きている。71：日本再興への道日本の強み�．�オリティへの探求心�⇔爐ご�なる国民性（勤勉性）�Ｃ�蓄率の高さ（貯蓄＝投資）83：もし私が日本の総理大臣になったら�〆仆个鯊臧�カット��関税引き下げと国境の解放�０槎韻亮�け入れ（ただし慎重に）
2019年07月16日
世界的投資家は予見する
帯には「リーマンショック、トランプ当選、北朝鮮開国、数々の予言的中」とある。最後の北朝鮮開国がまだ実現したとは思わないが、ロジャーズはすでにそのプロセスは始まっていると考えているようだ。
「はじめに」と「おわりに」で繰り返されるのは、歴史を学ぶことの大切さ。彼自身は、イェール大学でアメリカ史とヨーロッパ史を、オックスフォード大学でイギリス史を専攻している。そして、イギリス史を勉強していたとき、「過去に起きたものとよく似た出来事が、繰り返し起きている」と気づいた。
たとえば、1990年代後半から2000年にかけてアメリカでは住宅と金融を中心にしたバブルが起きた。不動産業界の人間は「今度は違う」と言ったそうだ。もちろん、そんなことはなく、バブルは崩壊した。そして崩壊したと思ったのもつかの間、サブプライムローンという新金融商品によってまた次のバブルが発生し、2008年のリーマンショックによって崩壊した。資本主義とはバブルの起こるものなのだ。
世界中の負債額が史上最悪になっており、「史上最悪の世界恐慌は確実に来る」というのが恐い。
はじめに：歴史は韻を踏む（マーク・トウェイン）
全く同じことを繰り返すのではない。韻を踏むように、少しずつ形を変えながら反復をし続ける。
序章35：5年後のアジアで最も幸福な国になるのは、朝鮮半島の統一国家36：史上最悪の世界恐慌は確実に来る世界中の負債額が史上最悪。これで米中貿易戦争も絡んだら、大惨事になる。GDP比で見た世界の債務規模は10年前2.9倍→3.2倍。FRBのB/Sが10年で500%も膨れ上がっている。
2019年07月15日
��師と原則
「ギリシャの叙事詩や歴史の場合、何らかの出来事や人物を描いており、そこから教訓を引き出すのは読み手にまかされている。対照的に孫子は原則を提出する」というのは、興味深い。ギリシャといえば、ソクラテスの問答法が有名だが、本も教訓を押し付けず、各々考えなさいという姿勢なのか。
孫子は「こういう場合にはこうだ」と原則を提出する。その根拠となる考え方も示す。単に合理的というだけでなく、人間心理までも読む。人間理解が深いのが孫子の特徴だ。
88：孫子の『兵法』願望と能力を一致させるためのマニュアル。『兵法』は一人の人間の手によるのか複数によるのかもはっきりせず、編集が数世紀にわたって行われた可能性もある。ギリシャの叙事詩や歴史の場合、何らかの出来事や人物を描いており、そこから教訓を引き出すのは読み手にまかされている。対照的に孫子は原則を提出する。時間と空間を越えて有効な原則を選び抜き、それを時間と空間に制約される実践に結びつけていく。109：マルクス・アントニウス愛人クレオパトラとの間に双子が誕生。クレオパトラは、ユリウス・カエサルとの間に息子がいて、大胆不敵にもカエサリオン（小カエサル）と名付けていた。122：戦略の共通文法アウグストゥスはローマを最も巧みに耕した指導者だった。自ら水先案内人となって自身を絶対的な権力の座へと導くと、今度はその権力を使って、衰退しつつある共和国の針路を帝国へと転換した。
2019年07月14日
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アテネにも長城があったのを知らなかった。この長城とは、アテネとアテネから10km離れた港であるピレウスをつないで、両方の都市をすっぽりと囲んでいた。二つの都市を結んで建設されたものとしては世界最長だという。
これはサラミスの海戦でペルシャを撃退したペリクレスが築かせたもの。これで敵に包囲されたとしても、海上封鎖されない限り、海に通じることができる。アテネ海軍は地中海最強だったから、海上封鎖されないことを前提としている。
ところが、当時は、公衆衛生概念のない時代。城壁の中に投じ20万人のアテネに加えてピレウスの市民が加われば、中はごった返す。港を通じて食料は供給できたかもしれないが、糞尿処理は追いつかない。結局、戦いになった時は、戦闘ではなく、病で倒れていったという。
戦闘死より、病死が多いというのは、太平洋戦争の日本軍まで続いた。
48：アテネの長城全長は10km足らずだが、両端をぐるりと回るので、外周は27km。この城壁は、二つの都市を結んで建設されたものとしては、世界最長。一方はアテネで、壁が完成した紀元前457年には人口20万人。もう一方の都市はピレウスで、アテネの港。49：サラミスの海戦クセルクセスはダーダネルス海峡を渡るとき、ありとあらゆるものを運び込んだが、グランド・ストラテジーだけは持ち合わせていなかった。大きな野望こそが彼の能力だとしたら、野望と能力を一致させる必要がどこにあるのか。クセルクセスが「不足」という言葉の意味に気づいたのは、陸地、海、天候、ギリシャ人、神託が束になってかかってきて不足を思い知らせる事態になってからだった。自分の力を全ての点で過信していたクセルクセスは、万一ことがうまくいかなくなった場合の備えが何もない。だから一つ躓くと、次もだめになる。結局クセルクセスは、推定900隻の船と25万人の兵士を失った。68：ペリクレスの変化ペリクレスは「もはや昔の彼ではなくなった」とプルタルコスは指摘する。「民衆の意向にあっさり従い、風のごとく変わってやまぬ民衆の欲望に迎合する、あの優柔なかじ取りのやり方から一転した」。単純に歳をとったということかもしれない。歳をとると、柔軟性を維持するのはむずかしくなる。さまざまなことに気を配り、バランスをとりつつも、いまバランスをとっているのは現在地から目的地へ行くためだということは忘れていない。そう、海の上にいながら、キツネであると同時にハリネズミにもなっている。これが、若い頃のペリクレスがアテネの民衆のかじ取りをするやり方だった。一つの目的をめざしつつも、たくさんのことを知っている人だった。72：アテネの転落ペリクレス死去後の『戦史』は、アテネが卓越した文化から並みの文化に転落していく様子を記すことになる。81：ベトナム戦争とペロポネソス戦争アテネがシケリアで降伏してから2382年後。アメリカは54万3000もの兵員を南ベトナムに送り込んでいた。のちにヘンリー・キッシンジャーが「大きな大陸のちっぽけな半島」と呼んだものを防衛するためである。1969年の時点ですでに毎週200名のアメリカ兵がインドシナ半島で戦死しており、最終的に1975年に南ベトナムの首都サイゴンが陥落した時には、アメリカの死者は累計58,213名に達している。ベトナム戦争はアメリカにとって4番目に高くついた戦争であり、初めて負けた戦争であると同時に、戦争をする理由が最もはっきりしない戦争でもあった。
2019年07月13日
�．澄璽瀬優襯抗ざ�の橋
ダーダネルス海峡とは、トルコにある幅2kmほどの海峡。イスタンブールのあるボスポラス海峡と並んで、アジアとヨーロッパの境界になっている。古代から要衝で、幾度となく紛争の舞台となった。
紀元前480年、この海峡に「橋」が掛けられたことあるという。掛けたのはペルシャ帝国の王クセルクセス1世。「岬に用意された王座からは150万の兵士から成る全軍を見渡すことができた」と歴史家ヘロドトスは語っている。実際の軍勢はその1/10ほどだったと推定されているが、「それでも1944年のDデイにアイゼンハワーが率いた軍隊の規模に匹敵する」というから空前絶後の規模だ。
現在、ダーダネルス海峡に橋はない。クセルクセスは、一つは360隻、もう一つは314隻という膨大な船をつなぎ合わせた浮橋を二つ掛けさせた。10年ほど前にマラトンの戦いでギリシャに敗れ去ったクセルクセスの父ダレイオス1世の復讐のためである。必勝を誓い、数千頭の子牛がトロイの廃墟に捧げられたという。
王の顧問役である叔父のアルタバノスはこう進言していた。「待ち受ける敵はギリシャ人だけではない。ギリシャの陸も海も敵である。エーゲ海を迂回する行軍では、これほどの軍勢に補給路を確保することは不可能だ。」
若いクセルクセスはこう反論する。「起こり得るあらゆることを一々綿密に考えようとすれば、結局は何もできず終いになろう。むしろ万事大胆に決行し、懸念される危険の半ばを甘受するほうが、あらゆる事態を危惧して一つの危害も被らぬよりましである・・・・・大いなることは大いなる危険を冒すことによって成就せられるものだ」
結果は、推察の通り。大軍はアテネまで進軍したものの、途中、スパルタの精鋭にも苦しめられ到着は遅れた。それまでにアテネはもぬけの殻になっており、勝負はサラミス湾での海戦になる。アテネの三段櫂船の漕ぎ手はよく訓練されており、場所は自分たちの庭。海戦はアテネの大勝に終わった。
勝利は、冷静にあらゆる可能性を分析し、準備ができたものだけにもたらされる。同じ連合艦隊が戦った真珠湾攻撃が成功し、ミッドウェー海戦が大敗に終わったのも、偶然というよりは、大戦初期の連戦連勝で日本海軍に驕りがあったからだ。
日本海軍の「卓上演習」は非常にち密にできていて、これでシミレーションした結果、日本は勝てなかった。最後は、参謀が沈んだはずの味方空母を「沈まなかったことにして」日本勝利の結果を無理矢理つくったことが戦後判明している。そして、実戦では卓上演習通りのことが起こり、日本は空母4隻全部と将兵3000人を失う大敗となった。
19：ハリネズミと狐「キツネはたくさんのことを知っているが、ハリネズミは大きいことを一つだけ知っている」（古代ギリシャの詩人パロス『アルキコス』）アイザイア・バーリン（リガ生まれのユダヤ人イングランドに亡命）『ハリネズミと狐』(1953)ハリネズミ：プラトン、ダンテ、ドストエフスキー、ニーチェ、プルーストキツネ：アリストテレス、シェイクスピア、ゲーテ、プーシキン、ジョイス、（バーリン）ハリネズミ族は「すべてのことをたった一つの構想あるいは体系に関連付け」、この構想によってのみ「彼らの言動は初めて意味を持つようになる」キツネ族は「いくつもの目的を追求する。目的同士はまったく関連性がなかったり、ときには相矛盾したりする。仮に関連性がある場合でも、何らかの原則に基づいて関連付けられているわけではない」23：キツネの的中率アメリカの政治心理学者フィリップ・E・テトロック『専門化の政治予測』(2005)「キャリアや地位などの背景や、リベラルか保守か、現実重視か制度重視か、楽観的か悲観的かといったことは、予測の的中率とはほとんど関係がない」関係してくるのは「考える道筋や推論のスタイル」＝ハリネズミと狐キツネは予想にあたって本能的に「複数の情報源から得た情報を統合」しようとし、「壮大な前提」からの演繹には頼らない。ハリネズミは、優柔不断とは無縁だ。批判もあっさり無視する。結論ありきで強気の自説を展開し、「納得しないものに対する苛立ち」を隠さない。論理的におかしいと指摘されれば、さらに強硬に主張する。「自分の壮大な見通しに囚われ」牽強付会の罠に陥る。ハリネズミの主張は耳に心地よく響はするが、そのとおりのことが将来に起きる確率はひどく低い。良い判断をするための法則「自己批判的にものごとを考える人は、変化する状況の中で複雑な要因を見つける能力に長けており、自分の予測能力に懐疑的で、失敗を正確に思い出すことができ、失敗を正当化しようとせず、状況の変化に応じて適宜考えを修正することができる。これらが相俟って、次の予測の精度を高めることが可能になる」30：F・フィッツ・ジェラルドのテストすぐれた知性とは、「二つの相反する考えを同時に持ちつつ、しかもきちんと働く」知性。たとえば、事態が絶望的だと知りつくしていながら、それでも打開の決意を持ち続ける。32：リンカーンの教訓奴隷制度廃止のために合衆国憲法修正第13条を可決させなければならない。上院は通過したものの、下院では憲法修正に必要な2/3が得られない見通し。ここでリンカーンは俄然キツネの行動に出る。反対する民主党議員と個別に取引し、あるいは恫喝し、あるいは甘言で誘い、あるいは圧力をかけ、あるいは白々と嘘をつく。40：グランド・ストラテジーは学べるか歴史家は、事例に特化した調査が結果を生むと知っているので、理論を導き出すための容易な一般化を戒める。だから彼らは複雑さをよしとし、過度な単純化を否定する。一方、理論家は、社会科学者と見られたがっているので、結果の再現性にこだわる。そして予測可能性を高めるべく、複雑さを排除して単純化しようと試みる。一般的な知識と固有の知識、不変的な知識と限定的な知識を結び付けることこそが戦略を進化させ成熟させるにもかかわらず、歴史家も理論家も両者の関係を無視している。
2019年07月12日
陰謀
インターネットとスマホで、我々が何をしたか、毎日たくさんの記録が残る。スマホに許可していればいつどこにいたかが記録されているし、今日何歩歩いたかもわかる。監視カメラは至る所にあり、そのおかげで犯罪者の行動はつかみやすくなった。
なのに、引き続き「陰謀」説は人気だ。9.11ではユダヤ人陰謀説が出回った。世界貿易センタービルに勤務していたユダヤ人は、当日出勤しないように指示されていたというものだ。世界貿易センタービルには多くの金融機関が入居していて、金融機関にはユダヤ系は多い。何しろ、Goldman SachsだってLehman Brothersだって(9.11当時はまだ隆々としてあった）ユダヤ人創業者の名前を冠している。
何百人というユダヤ系従業員がその日突然出社してこなかったら、たちまち騒ぎになるだろう。実際には、数百人のユダヤ系アメリカ人と共に、イスラエル人が200人以上ビルと共に亡くなったということだが、それを確かめなくとも、「ありえない」と分かりそうなものである。
エーコはこれを「陰謀症候群」と呼び、「陰謀という妄想」は過去からずっと甚りを魅了してきたという。問題は、「社会的な偏執狂は、みずからの妄想がほかの何百万という人々からも共有されていると考え、みずからが私心なしに陰謀に立ち向かっていると信じている点」で、ポピュリズムと結びつくと非常にやっかいだ。
357：人類はいつでも、実体のない陰謀に魅了されてきた。ポパーはホメロスを引用していたが、よりわたしたちに近い世紀では、バリュエル神父がいる。かれは、フランス革命を仕組んだのは、古きテンプル騎士団の生き残りで、フリーメーソンのセクトに合流した者たちだと主張した。さらに、この説を完全なものにするために、ミステリアスなキャプテン・シモニ―がそこへユダヤ人を巻き込んだ。未来の『シオン賢者の議定書』の布石とでもいうべきものである。361：ダン・ブラウンが、陰謀症候群を題材に書いた小説『ダ・ヴィンチ・コード』が思い出される。信じやすい無数の読者たちは、フランスやイギリスのあちこちを訪ね歩いたが、当然本に書かれていたものを見つけることはできなかった。ブラウンが、その語りの中にいい加減にちりばめた言葉の誤用の数は果てしない。シオン修道会が、エルサレムで「ゴドフロア・ド・ブイヨンとよばれたフランス人の王」によって創設された、というのがその一例である。364：リチャード・ホフスタッターは、「アメリカの政治における偏執狂的スタイル」（1964)で、陰謀論への嗜好は、社会思想に精神分析の分類を適用することで理解されるべきだと説いている。その分離とは、二種類の偏執狂現象のことである。精神医学的な偏執狂は、世界全体が彼に対して陰謀を企んでいると考えるが、社会的な偏執狂は、みずからの妄想がほかの何百万という人々からも共有されていると考え、みずからが私心なしに陰謀に立ち向かっていると信じている点で、精神医学的な偏執狂より危険だといえるだろう。
2019年07月11日
芸術における不完全のかたちにつぃて
「支離滅裂であったり、蝶番が外れているのがカルト的作品の条件」というのは興味深い。デュマが書いた『モンテ・クリスト伯』は妙に長ったらしい。デュマが金銭的理由で、「書いた行数に応じて原稿料が支払われたため」、冗長に書いたというのが主たる理由。しかし、それが、快活な『三銃士』などとは違う重厚さをもたらした。
＜モナリザ＞も不思議な絵だ。美人ではない。肖像画なのに背景はいきなり風景画だ。人はどこか、不完全なものに惹かれるということか。完璧だと自分が関与する余地がなく、拒絶されるように感じるからかもしれない。
301：デュマ『モンテ・クリスト伯』1844書いた行数に応じて原稿料が支払われたため、長引かせる必要があったのだ。分かり切ったことを執拗に繰り返す必要もあった。それは注意散漫な読者をその都度物語に引き込むための連載小説の常套手段だった。305：カルトと呼ばれる作品の多くは基本的に蝶番が外れているためにカルトとみなされるある作品をカルトと化すにはには、それをばらばらに解体して蝶番をこじ開けねばならない。部分と全体がもともともっていた関係を消し去り、部分しか分からないようにするのだ。このことは本よりも映画に起こりやすい。カルトとなる映画は、蝶番が外れ、ちぐはぐで、それ自体が支離滅裂でなければならない。(中略）蝶番が外れた映画にかぎっては、イメージや視覚的に印象深い瞬間の雑多な寄せ集めがあとに残る。こうした映画が見せるのは、中心的なアイデアではなくいくつものアイデアなのだ。ひとつのまとまった「構成の哲学」を示すのではなく、不安定を頼りに壮麗な不安定を生きるのである。309：ハムレットシェイクスピアの傑作どころか、芸術的には失敗作である。技法も思想も不安定である。おそらく多くの人は『ハムレット』がおもしろかったために芸術作品と見なしているのであり、芸術作品ゆえにおもしろかったのではない。これは文学の＜モナリザ＞なのだ。
2019年07月10日
見えないもの
身内が亡くなったことを悲観して後を追って死ぬということは稀だ。ところが、1774年に『若きウェルテルの悩み』（ゲーテ）が出版され、大勢の若き読者が作中のウェルテルを追って自殺してしまった（ウェルテル効果）という。
実物の人物より動画の人物が、そして動画の人物よりも小説の登場人物の方が人に与える影響は大きいように思う。情報量から言えばその逆なのだが（テキストの情報量より動画の情報量の方が何千倍も大きい）、情報量が少ない分、小説では書かれていないことを読者が(都合よく）補っているのではないか。自分に都合よく解釈できる分、思い入れが強くなり、場合によっては主人公の後を追って命を絶つ人まで出て来る。
190：誰か愛する人が死んでしまったらと考えて胸を痛めた人が、しばらくしてそれが真実ではなかったと気づいたなら、もう涙は流さないし逆にほっとするものだ。一方、大勢の夢見る若者たちが、ウェルテルの自殺に涙したあと、自分たちも命を絶ってしまった。読む前であっても読んだ後であっても、ウェルテルが小説の登場人物であると理解していてもだ。このことは、若き読者たちがどこかの世界でウェルテルは本当に自殺したと考え続けていることを表している。192：小説の登場人物には、原作のテクストの外で生き延び、範囲を特定することも区切ることも難しい世界のどこかで動いているという特徴をもつ登場人物がたくさんいる。ときには、テクストからテクストへ移住してみせる者すらいる。小説や映画にみられる例では『ダルタニャンの息子』や『ピノッキオの冒険』がある。これらの登場人物はもはや原作のテクストには属していないのだ。204：アンナ・カレーニナは死ぬという事実、無慈悲な死を遂げるという事実だけが、アンナ・カレーニナを存在させる。その姿は易しく尊大に執拗に現れては、わたしたちの人生の憂鬱な道連れとなる。それでもやはり、アンナ・カレーニナが肉体として存在したことは一度もない。
2019年07月09日
炎は美しい
炎というと忘れられないのが、12年前にインドでゾロアスター教の友人の結婚式に出たこと。ゾロアスター教は別名「拝火教」と言われる。その通り、火が世の中を清める神聖なものとして尊ばれる。
元々は古代ペルシアで起こった宗教だが、8世紀になるとペルシアのイスラム化が進み、改宗しなった一派がインドへ逃れる。現在では世界で10万人しかいない信者の内75千人がインドにいる。
結婚式は二日続けて行われ、初日が新郎のゾロアスター教式で、翌日が新婦のヒンズー教式で行われた。チェンナイ市内の最高級ホテルで行われたのだが、ホテル内で焚火をぼうぼうと燃やしたのには驚いた。新郎新婦と両家が焚火を囲む姿に、ペルシャの乾燥地帯から来た彼らの先祖を思い浮かべた。
火を神聖なものとする考えは、バラモン教を経て密教に引き継がれ、日本でも護摩として実施されている。
元々は古代ペルシアで起こった宗教だが、8世紀になるとペルシアのイスラム化が進み、改宗しなった一派がインドへ逃れる。現在では世界で10万人しかいない信者の内75千人がインドにいる。
結婚式は二日続けて行われ、初日が新郎のゾロアスター教式で、翌日が新婦のヒンズー教式で行われた。チェンナイ市内の最高級ホテルで行われたのだが、ホテル内で焚火をぼうぼうと燃やしたのには驚いた。新郎新婦と両家が焚火を囲む姿に、ペルシャの乾燥地帯から来た彼らの先祖を思い浮かべた。
火を神聖なものとする考えは、バラモン教を経て密教に引き継がれ、日本でも護摩として実施されている。
139：70年代のことだがわたしは田舎に暖炉付きの家を購入した。当時10歳から12歳だった息子たちにとって、火、燃える薪、炎の体験は全く新しい現象だった。一方わたしは、暖炉がついていると息子たちがテレビを求めないことに気づいた。どんな番組よりも炎のほうが美しく変化に富んでいるうえ、終わらない物語を語ってくれ、どんどん更新され、テレビのショーのように筋立てどおりではないのだから。143：はじめて火を体験するのは、間接的には太陽の光、直接的には稲妻や制御不能な火災をとおしてである。それゆえ必然的に原始から火が神性と結びつけられていたことについては論をまたない。あらゆる原始宗教には、何がしかのかたちでの火炎崇拝がみられるものだ。たえおば昇る太陽を崇める太陽礼拝や、聖火を絶対に消さないよう神殿の内陣に灯しつづける例などがある。151：地獄の火はむしろバロック時代のテキストにこそ浸透している。ダンテの残酷さをも凌駕する、地獄を見るような拷問描写だ。というのも、芸術の霊感にあがなわれることがないわけだから。たとえば聖アフロンソ・デ・リゴリの書にそれはみられる（『死への装置』1758）。
2019年07月08日
巨人の肩に乗って
「巨人の肩に乗って」とは、「先達の業績のおかげで、我々はゼロから考えずに済み、より先へ進める」といった意味で使われている。
その起源は、中世についてはエドワール・ジョノー『巨人の肩に乗った小人』（1969）がいいという。だが、「より陽気にふざけていてあちこち寄り道していて刺激的」なのは、ロバート・マートンの『巨人の肩に乗って』（1969）だという。私は使った読んだことがないのだが、「マートンはある日、ニュートンが1675年にフックに宛てた手紙で箴言"If I have seen further it is by standing on ye shoulders of Giants"に魅了された」という。それで、その起源を探し当てるため過去に遡り、膨大な裏付け資料を集める。それをまとめたのが本書。
大学在籍中に戸惑ったことの一つが、論文を書くときに、必ず「先行研究」として、同分野の過去の研究を調べなければならなかったこと。実務なら、過去に同じことを考えたことがある人がいようが居まいが、実行して成果を出せるかどうかが全てなので、そんなことは関係がない。ところが、研究の世界は「積み重ね」なので、先行研究を踏まえて、どこが進化したのか、どこが違うのかが問われる。
13：わたしがここで挙げたすべての例において、あらゆる革新や父親に対する異議申し立ての行動はいつも、これから殺めようという父親より優れているとみなされる先祖に頼り、そこへ回帰しようとしているようだ。＜新詩人＞はラテン語の伝統に逆らってギリシアの抒情詩に回帰しようとし、ヘスペリアの詩人たちや文法家ヴェルギリウスはケルト語や西ゴート語やヘレニズムの言葉、ヘブライ語の語根を借りてきて独自の混成語を作っていた。アイルランドの文法家たちは、ラテン語より自分たちの言葉をより古い複数の言語のコラージュとして誇っていたし、ダンテはヴェルギリウス（マロのほう）のような偉大な先祖を必要としていた。また、＜近代倫理学＞は、それまで失われていたアリストテレスの再発見があったからこそ、近代的なものとして成り立ったのである。20：19世紀のコペルニクス的転回はみな、先達の巨人たちに拠っている。カントは独断の眠りから目を覚ますためにヒュームを必要としたし、ロマン主義者たちは霧と中世の城じろを再発見して疾風怒濤に備えた。ヘーゲルは歴史を放浪者やノスタルジーのない完全に向かう運動とみなし、古いものより新しいもののほうに優位をあたえることを決めた。マルクスは、その卒業論文でギリシアの原子論者たちから出発して人類思想の全歴史を読み直し、唯物論を練り上げた。ダーウィンは大型類人猿に巨人の役を割り当てることで聖書のなかの父たちを殺した。27：いつのときでも、もっとも時代の診断が下手なのはその時代を生きる者たちだ。わたしの巨人たちは、座標がどこかへ行ってしまい、未来がよくみえなくなり、＜道理＞の巧妙さ、＜時代精神＞のささいな陰謀がまだ理解されない、以降の時空間というものがあると教えてくれた。
2019年07月07日
運転40年
78歳になる母が運転を止めた。先月私が東京にいる間に、隣町の公園に出かけた際、脱輪したのがきっかけ。脱輪した時、脱輪の前触れもなにもなく、脱輪してから気づいたという。
3年前からパーキンソン病になり治療中。といっても、薬で進行を遅らせているだけで、改善はしない。その後、診察のときに医師に相談しても「もう止めたほうがいい」ということで、今月になってからは運転をしてない。
母が免許を取ったのは40年前で、それまではバイクで通勤していた。最初はカブで、その後がスクーター。高校を出てからずっと働いており、結婚前は自転車だったのだと思う。
実家は最寄駅から7km離れているので、母には帰省の度に、駅や空港に迎えに来てもらった。10年ほど前から35kmほど離れた空港までの迎えは無理になり、町内や隣町がやっと。それ以上離れたところには、私が居れば送るし、イベントなどでは他の参加者達とタクシーに乗り合いで。
高齢者ドライバーが加害者となる死亡事故が増えている（割合）昨今。今後の買い物や通院が心配だが、まずは、40年間無事故・無違反でよかった。
2019年07月06日
「今後ワインは外で飲みません」続編〜MRI検査
今年4月に地下鉄車内で気を失う事態となり、その後控えていたワイン。昨日、高校同級生のところで健康診断を受け、念のためMRIも実施することに。彼女は放射線科の医師である。
結果は問題なし
血栓はなく、血管も奇麗だということ。一方、健康診断で分かったのが、体重減少と血圧低下。運動量が増えているのに、食事が十分にとれていないということか？普段食べたいだけ食べているが、思い当たる節もある。１．体質
父は高血圧で40代で脳溢血で急死したが、母は真逆の体質で歳を取るごとに体重が減少した。今は80歳手前で30kg台。私は明らかに母の体質を引き継いだようだ。
２．胃腸が弱い
健診のたびに指摘されるのだが、慢性胃炎。そのため精密検査になり、胃カメラも何度か飲んだが、「慢性胃炎ですね」で終わり。改善策がない。そのせいかどうかわからないが、胃にもたれやすい体質で、あまり食べられない。
３．ヘルシー弁当
パーキンソン病で料理がおぼつかない母は宅配弁当を取っている。私も実家ではそれを夕食に食べているのだが、これが高齢者用の「ヘルシー」な弁当で、低カロリー。
そして、なぜ、ワインを飲んだ時に貧血がひどくなるのか？同級生の説明によれば、「ヒスタミンが多いから」だという。
ヒスタミンは血管拡張作用があり、アルコール自体の血管拡張作用に加えて、ワインを飲むとダブルで効く。結果、血圧が低下し過ぎてしまう。当然、背景には、老化による血圧調整機能の衰えがある。
ヒスタミン含有量は白ワインより赤ワインに多く、さらに、産地や銘柄によっても違う。フランス産の赤ワインに特に多く、イタリア産は少ないそうだ。ボルドーのフルボディなどいかにも多そう。蒸留酒には含まれないということなので、今後、外で飲むときには蒸留酒中心にしようと思う。
2019年07月05日
ヴォイストレーニング
映画「英国王のスピーチ」には、吃音に悩む第二次世界大戦期の英国王George �困�出て来る。リーダーにとってスピーチは欠かせない。日本では「歴史に残るスピーチ」とうのは余り聞かないが、英米には、リンカーンのゲティスバーグ演説や、チャーチル首相の就任演説、キング牧師の「私には夢がある」演説、ケネディ大統領の就任演説など、今でも語り継がれているものが多々ある。
語り継がれているだけでなく、スピーチが重視される文化なので、学校でもこうした古典を使ってのスピーチ練習もされる。これで、スピーチの構成や、修辞、発声などを学ぶわけだ。道理で、高等教育を受けた人は大抵スピーチがうまい。イギリスならウィットを入れ、アメリカならジョークを入れて笑いを誘いながら、伝えたいことをきちんと伝える。
この本は、スピーチの内容ではなく、ボイストレーニングに絞った本。人は第一印象が大切というが、「見た目」に次いで「声」が重要で、その割合は、7-38-55（メラビアンの法則）と言われる。話をする際に相手に伝わる情報は、見た目が55%で、声の大きさやトーンが38%、話の中身は7%に過ぎない。
＊「声と姿勢」が変わるだけで、第一印象は劇的に良くなる！人を惹きつけ、好印象を与える、「いい声」の出し方、姿勢の整え方●人の第一印象は、見た目だけでなく、声と姿勢にも左右される相手はその人の声、姿勢をチェックし、話を聞くか聞かないかを判断する。●いい声を出すためには、発声や発音以上に「姿勢」と「呼吸」が大切・いい姿勢を保つために�‖�の親指を平行に並べ、地面にしっかり着ける�¬楡�は高く保つ�Ｂ里凌燭鹵罎鯆未襦崟誼羸�」を意識する・頭上に「天のカーテン」があると想像し、それを開ける動作をする。すると天井を高く感じ、響く声が出しやすくなる。・呼吸の基本は、まず深く息を吸って胸に空気を取り込むこと。肺に息をしっかり入れると、いい姿勢を取るのが楽になり、発声もスムーズになる。・滑舌をよくするため、鼻呼吸をする。その練習として、鼻から細かく短い息を吐き続けるヨガの「火の呼吸」を行うとよい。●相手の感情に訴えかけ、自分の望む方向に導きたい時�‖仂歇圓砲靴討曚靴す堝阿離粥璽襪魴茲瓩���対象者を明らかにする�Ｂ仂歇圓砲覆辰突澆靴ご蕎陲離粥璽襪鮴瀋蠅垢��づ�切な表現で、対象者を感情のゴールに連れていく�ヂ仂歇埃�らが行動する●声で相手の感情を動かすためにすべきこと・自分のエネルギー状態を高く保つ・相手にそうなって欲しい感情にまず自分がなる
2019年07月04日
21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ
月は「第8の大陸」と聞いて、思い出すのは、「資本主義はフロンティアを必要とする」という事実。資本主義は多分に成長を前提とした経済モデルであり、「搾取」できるフロンティアを必要とする。地球上からほぼフロンティアが消滅した今、地球外にフロンティアを求めざるを得ないという必然性がある。そこに、資本と人材が流れ込み、投資のチャンスも発生する。
地球上で最も資本主義を謳歌しているシリコンバレーのIT企業が宇宙を目指すというのも、また必然なのかもしれない。
●IT業界の巨人は宇宙をめざす・イーロン・マスク SpaceX 2002通常の大型ロケットの打ち上げ費用は100-200億円位⇔SpaceX 60億円台エンジンから部品に至るまでほとんど自社開発ロケット再利用でさらに30%削減予定・ジェフ・ベゾス Blue Origin 2000「100万人が宇宙に住んで働く」宇宙旅行や宇宙実験ができる垂直離着陸型準軌道機New Shepard地上から垂直に打ち上げられ、垂直に上昇して高度100km超まで到達上空で先端に搭載されている友人カプセルを切り離し、カプセルは弾道飛行をし、約4分間の無重力状態が体験できる。●私たちの生活を変える宇宙ビジネス・「低軌道」「静止軌道」「深宇宙」2000年以降、このうち最も地球に近い低軌道（高度100-2000km）で商業化が急伸静止軌道は赤道上36000kmの軌道1980-90年代に各国が通信衛星や放送衛星を打ち上げて、商業化・小型衛星の新たな活用高性能な小型衛星により、様々な事業化●シリコンバレーが狙う新時代の金脈・宇宙はIT関連の新しい投資先・アジャイル開発で開発スピードを速める・資金のハードルが下がり、リスクが低くなったエンジェルの宇宙ベンチャーへの直接投資は500万円〜1億円規模リターンまでの期間は5~7年期待リターンは投資額の5〜10倍●月と火星に人類は住めるのか？・月は「第8の大陸」2015米「商業宇宙打ち上げ競争法案」月やその他の天体の移駐資源を利用した事業を可能にする・なぜ世界中の人が「火星」を目指すのか？着陸に成功しているのはアメリカだけ周回衛星ではロシアや欧州に次いで、インドが2014年に火星探査機の周回軌道投入に成功火星には薄い大気があり、居住できる可能性が高い・人類で最も「火星に近い男」SpaceX 火星移住計画10年以内に地球と惑星との間で数千人を輸送する事業をスタートさせ、その後、40~100年後には、火星を100万人が暮らし、自給自足できる居住地にする。
2019年07月03日
リノベーション・マンション
高度経済成長期に都市近郊に造られたニュータウンが、住民が高齢化して「オールドタウン」になったという話はよく聞く。開発されたころに入居したのは、子育てが始まったばかりの若い夫婦が多い。1970年頃に30歳だった夫婦は50年経って今や80歳だ。
これと同じことが、今人気のタワーマンションで起こるという。50年前は高層オフィスビルが建ち始めたばかりで住居は郊外に延びるしかなかった。日本最初の超高層ビルといわれる霞が関は36階建てで、1968年の竣工だ。
タワーマンションが可能になったのは、1997年に容積率と日影規制が緩和されたからで、これ以降、都心部で高層マンションが増えた。この20年にタワーマンションに入居したのはやはり30代の夫婦が多い。2017年以降に完成予定のタワーマンションは285棟で、106,321戸に達するという。
では本当に、タワーマンションが「天空の老人ホーム」になるのか？私はこれには疑問がある。
・郊外のニュータウンと違い、都心のタワーマンションには需要がある
・50年前よりも今は流動性が高いので、順次入居者の入れ替わりが起こっているはず
マンションは累計戸数が600万戸を超えていて、2016年の築30年以上のマンション総数は173万戸というから3割近い。かく言う私も、東京で築50年以上になる「ヴィンテージ・マンション」（物は言いようだ）に住んでいるが、50年前の分譲時から住み続けている住民は半数ほど。あとは、売りに出された部屋を買った子育て中の夫婦だったり、会社が賃貸で借り上げていたりで、世代交代は徐々に進んでいる。
中古マンションをフルリノベーションして売り出す手法はインテリックスが確立し、同社はそれで上場を果たした。現在では、多くの業者が手掛けるようになり、業界団体もできている。
＊少子高齢化によって私たちの暮らしはどう変わるのか？これから家庭や職場で起こること。・高齢者の「高齢化」が進み、大死亡時代が訪れる団塊の世代が90代となる2040年頃、年間死亡数は168万人。・東京や大阪などの大都市で、空き家が急増する・分譲マンションは購入者の年齢層が似ている。そのため住民も一斉に年を取り、マンション全体が高齢化する。・高齢化で野菜を作る農家が減り、食卓から野菜が消える。・中小企業経営者の後継者が不足する。そして、企業が黒字でも、休廃業・解散に追い込まれるケースが増える。・職場における「高年齢化」が進む。それにより、仕事のノウハウなどを次世代などに継承できなかったり、社員のモチベーションが低下する。・人口規模の小さい地域での、店舗やサービスの縮小・撤退が相次ぐ。代わってネット通販が普及するものの、物流の担い手である運送ドライバーは今以上に不足する。「自らできること」「今からできること」・定年後も働けるうちは働く・一人で二つ以上の仕事をこなす・長い老後生活に備え、若い頃からライフプランを描く・従業員の全国転勤をなくす・テレワークの利用・拡大を進める・商店街は時折開く。お客がまばらな時間帯は閉店したり、決まった曜日のみの営業にしたりする。
2019年07月02日
バカだから失敗した⁉
HBSのクリステンセン教授による名著『イノベーションのジレンマ』。私も本blogで推薦した。実務的に「経験上そう思っていたことを理論化してくれた」本で、納得感が高かった。
ところが、経済学者から言わせれば、「ゆるゆる」の議論。なぜなら、調査方法はインタビューと当時の業界誌検証が中心。客観的分析がなく、言っていることは「既存企業は失敗した。その原因は、経営陣がバカだったからだ」に過ぎない。
「バカだから失敗した」では説明不足なので、経済学者が客観的にウラを取ったのが本書。意欲的な作品になっている。
19：「バカだから失敗した」では説明不足クリステンセン1997『イノベーターのジレンマ』・・・勝者であったがゆえに、新時代への対応スピードが遅くなる。既存企業における組織的・心理的バイアス。23：三つの経済理論�｜峇晃�果（共食い）��抜け駆けのゲーム理論→既存企業による先制攻撃�４覿抜屬稜塾漏丙�62：日の丸半導体の死体解剖「垂直統合」と「分業特化」、どちらのジャンルにおいても、90年代以降の日本の半導体メーカーは流れを主導することも、新潮流に対応することも、出来なかった。無意味な工場を多数抱えて税金をムダ使いし、そのまま衰退していった。�｜聾機�国内の工場を閉鎖したくないという田舎政治家的な発想・圧力�∪こΔ竜蚕僖肇譽鵐匹砲弔い胴圓韻覆い泙沺¬鮟蠅�旗を振って税金を注ぎ込んでいれば何とかなるだろうと高をくくっていた「残念エリート」たち。�Ｆ�本がまだ発展途上国だった80年代までの「無戦略」経営しか知らない世代が経営トップになり、漫然として無意味な「努力」に終始した。312：まとめ� 屮ぅ離戞璽拭爾離献譽鵐沺廚侶从儚愿�解明既存企業は、たとえ有能で戦略的で合理的であったとしても、新旧技術や事業間の「共食い」がある限り、新参企業ほどにはイノベーションに本気になれない。�∩和づ�「自己」破壊のジレンマこの「ジレンマ」を解決して生き延びるには、何らかの形で「共食い」を容認し、推進する必要があるが、それは「企業価値の最大化」という株主にとっての利益に反する可能性がある。一概に良いこととは言えない。�Ａ和づ�破壊の真意よくある「イノベーション促進政策」にたいした効果は期待できないが、逆の言い方をすれば、現実のIT系企業は、丁度良い「競争と技術革新のバランス」で発展してきた。これは社会的に喜ばしい。
2019年07月01日
近未来予想プログラム"Future Agenda"
世界で様々な専門化を集めて開催された近未来予想プログラム「フューチャー・アジェンダ」
2015年に、これから2025年までに予測される重大な変化について、39都市で、50の組織が120のワークショップを開いて、話し合ったという。その結果、見つけ出した＜未来に対する12の共通認識＞は、以下の通り。
2015年に、これから2025年までに予測される重大な変化について、39都市で、50の組織が120のワークショップを開いて、話し合ったという。その結果、見つけ出した＜未来に対する12の共通認識＞は、以下の通り。
昨日紹介したFACTFULLNESSにもあったが、先進国10億人の中に居ると、世界規模の変化を見逃す恐れがある。日本を筆頭に、先進国は低成長、低金利、人口減少だが、世界人口70億人中、40億人は中間層である。日本の高度経済成長期のようなもので、先進国とは真逆になっている。
今のまま消費し続けると、鉛蓄電池の重要な原料であるアンチモンはあと8年で枯渇するという。太陽光パネルの重要な原料であるインジウムは残り12年。銀と亜鉛は17年、銅は30年、チタンはあと45年でそれぞれ枯渇する。
�／邑�が爆発的に増加する
世界人口は今世紀中に90-110億人に膨れ上がる。
�∋餮擦�枯渇する
人口増加に伴い、重要な資源が枯渇の危機にさらされる。
�４超�汚染に歯止めがきかなくなる
人為的な環境汚染は悪化の一途をたどっている。
�ぐ槎韻楼�だ
移民は世界人口の自然分布の不均衡を正すために不可欠だが、近年、反移民感情が高まりつつある。
�セ纏�が不足する
人口が増え、高い教育を受ける人が増え、技術が進歩するのに伴い、仕事が皆に行き渡らなくなる可能性がある。
��女性の教育水準の向上が、多くの問題を解決する
より良い教育機会を女子に与えれば、様々な分野でプラスの効果が連鎖的に表れる。
�У蚕僂�大きな問題を解決する
人間は難題に直面する度に、たいてい技術の進歩によって解決してきた。
��答えは太陽光エネルギーにある
太陽光エネルギーは無限に利用でき、100%再生可能である。
��定年について考え直す必要がある
平均寿命が延び、多くの国が高齢化社会の進展に直面している。
��医療費は増加の一途をたどる
平均寿命は延び、新薬が開発され、各国で医療費が増加する。
��アジアの世紀が始まる
21世紀はアジアの世紀。中国とインドが経済成長を牽引し、軍事力を発揮して、世界に大きな影響力を及ぼす。��GDP成長率は、社会の発展を評価する最良の尺度である
