2019年02月
2019年02月28日
世界資本システムの危機
おりしも、ベトナムでの米朝会談の真っ最中。朝鮮半島の非核化は日本を含め世界が望むところだろうが、北朝鮮の非核化によって韓国から米軍が引き上げる可能性があり、その結果、朝鮮半島全体が「人民元圏」に変わる可能性がある。
これが技術面だけでなく、金融面で米国の危機感を募らせ、米中の覇権争いに拍車をかける恐れがある。世界史を振り返れば、近視眼的な政策で良かれと思ってやったことが、悲惨な結末を招いた例にいとまがない。
トランプ大統領は朝鮮戦争を終結させ、ノーベル平和賞という成果が欲しいのだろうが、大局的歴史観を持って進めてほしいものだ。拉致問題解決も忘れずに
これが技術面だけでなく、金融面で米国の危機感を募らせ、米中の覇権争いに拍車をかける恐れがある。世界史を振り返れば、近視眼的な政策で良かれと思ってやったことが、悲惨な結末を招いた例にいとまがない。
トランプ大統領は朝鮮戦争を終結させ、ノーベル平和賞という成果が欲しいのだろうが、大局的歴史観を持って進めてほしいものだ。拉致問題解決も忘れずに
185：中国発の金融危機2018年6月以降、中国は預金準備率引き下げや人民元の下落容認など、景気への配慮を示し始めているが、いずれ明確な金融緩和方針を打ち出さざるを得なくなる。その際に、既に飽和状態に達している民間債務規模がさらに拡大する可能性。それは、中国に大規模な金融危機が発生する確率を高める。189：朝鮮半島の非核化がもたらすドルの存在感低下現在日本を含む東アジアや東南アジアは中南米や中東と同様に「ドル圏」と見做されるが、これが将来的には「人民元圏」へと雪崩れるように変化する可能性。北朝鮮問題はそのトリガー。197：格差拡大、富の偏在に向き合わなかった既存政党自由貿易体制や社会民主主義という伝統的な西欧価値観をかたくなに守り続けてきたドイツのメルケル首相の存在感や指導力が急速に低下しているのが、今日の国際政治の姿。
2019年02月27日
日本の歪んだ資本システム
スイスが暗号通貨に積極的というのが面白い。人口842万人の小国だが、ご存知の通り、一人当たりGDP8万ドル（=900万円）を誇る金融大国である。道州制のスイスでは州によって法律も違うが、特にICOに熱心なのがツーク州で、そこはCrypto Valleyと呼ばれている。
この背景に、スイスに銀行取引の透明性を求める世界各国の圧力があるのは間違いない。スイスは銀行法で顧客情報の秘密を国家が約束しており、当初は欧州各国から、のちには世界中から資金を集めることに成功した。その資金のかなりの部分が、脱税や犯罪に関わるアングラマネーであったことは想像に難くない。そうした資金の動きの一部がパナマ文章などで明らかになり、スイス当局も国際捜査に関わる顧客情報を提供せざるを得なくなった。
そこで、暗号通貨だ。国家の信用力で流通する通貨と異なり、暗号通貨には管理者がいない。あるのは、数式による発行ルールだけだ。秘匿性は限りなく高いわけで、スイス金融最大のアドバンテージを失いつつある今、国家としてこれに目を付け育てようというのは自然だ。
147：資金が政府のブラックホールに吸い込まれていく今日では、その受け皿となる日銀の大量購入によって長期金利が人為的に抑え込まれ、効率的な資金配分の尺度が失われている。そして政府の財政再建への意識は薄れ、債務がますます膨れ上がるという悪循環を生んでいる。157：いつまでも達成されないインフレ目標政策導入から5年以上が経過し、量的緩和は一段と拡大され、長期金利をゼロ近辺に張り付けるという強引な策までも導入されたが、インフレ目標は達成されないまま、何度も目標達成時期が先送りされ、2018年4月には遂にその時期も取り下げられることになった。当たったのは、ハイパー・インフレなど起きない、という読みだけであった。161：資本システムの軸は国債利回り過激な金融政策によって日本の資本システムが毀損された弊害。症状の元凶は、本来市場決定に委ねられるべき長期金利が、金融当局によって固定化され続けているという点。179：スイスの試みPwCによれば、2017年に約50億ドルに達した世界のICOの25%はスイスで行われ、金額上位10件のうちの4件がツーク州での取引であった。スイスでは暗号通貨が利用できる商店や交通機関も少なくないが、同州では住民登録さえも暗号通貨で支払うことができる。
2019年02月26日
中国は世界経済の勝者になれるか
結論から言うと、筆者は否定的。中国は資本主義経済を都合よく取り入れているが、それであるがゆえに、人為的に目先のトラブルを避けようとする。それは、ポピュリズム政治色が強くなった民主主義国家でも同じなのだが、共産党一党独裁では、失敗したと見せたくないために、その傾向が強くなる。
結果として、債務が膨張しており、不良債権が隠蔽される。問題が先送りされると、その分問題が大きくなるのは、日本のバブル崩壊後の不良債権処理を見ても明らか。銀行への公金注入を提案した宮澤首相に野党もマスコミも大反対し、処理が5年遅れた。
IMFでは中国の銀行不良債権額をGDP比7%の約7500億ドルと試算している。
47：成長達成の裏で膨張する債務GDPは拡大していても、本当の経済成長や生活向上にはまったく貢献していない可能性。財政政策の落とし穴。53：隠蔽された不良債権中国の「金融システム」は健全性が保たれたかもしれないが、健全な経済発展に必要な「資本システム」は、機能が未熟なままに成人期を迎えた。57：銀行の消耗による社債市場の発展IMFは問題含みの債権比率は15.5%と推定しており、その予想損失額をGDP比7%の約7500億ドルと試算している。銀行がそうした損失に耐えられるはずもなく、いずれ相当額の公的資金を注入せざるを得ない。�Ｉ坿袷環眠漾屮罅璽蹇�84：間接金融主体のユーロ圏ドイツやフランス、イタリアなどでは、日本と同じように商業銀行が主役を務める時代が続き、社債などの資本市場はさほど活性化しなかった。たとえば、英米市場には、信用力の低い企業が資金調達を行う「ジャンク債市場」が発達しているが、大陸諸国にはそれほど大きなジャンク債市場は存在しない。93：ユーロを生んだドイツ統一東西再統一後のドイツが欧州最大の経済圏になることは確実であり、ドイツの脅威に怯える日が来ないとも限らない。理想主義と現実主義の相克に悩まされ続けてきた欧州は、巨大化するドイツに対する制御ツールを持たねばらなかったのである。その具体的手段は、ドイツを共通通貨に引き込むことであり、このアイデアには英国もソ連ももろ手を挙げて賛同した。�ぐ堕蠕�を失う米国113：金融システムは復活したが米国が健全化を目指した対象は「金融システムに関わる銀行の経営」であって、「資本システム」ではなかった。金融システムと資本システムを混同し続けている？121：消えない投資家の楽観CAPE（Cyclically Adjusted Price Earnings Ratio) ロバート・シラー教授開発企業の利益を、単年度でなく過去10年間の平均値をインフレ調整した数値を用いて、1871年まで遡ってPERを計算。1929年と1999年にピーク。2018年1月は33.31で1929年9月の32.56に匹敵し、1999年12月の過去最高値44.20にヒタヒタと迫りつつあった。
2019年02月25日
世界同時好況と金融暴走リスク
著者の都倉氏は、東京銀行を振り出しに、その後外銀で世界金融危機他幾多の危機を現場で見てきた方。リーマン・ショックの2か月前、2008年7月に『投資銀行バブルの終焉』を上梓し、危機を予言したとして一躍話題になった。そのリーマン・ショックから丁度10年、昨年10月に出版された本。
「各国の経済はすっかり立ち直ったかに見える。しかしより深く眺めれば、危機の『置き土産』として、債務の爆発的膨張、金融政策の迷走、地政学の変貌という三つの潜在的リスクが残存している。
中国の不安定な金融制度、ポピュリズムに揺さぶられる不完全通貨ユーロ、米中貿易戦争など、世界各地に埋め込まれた時限爆弾が、資本主義のシステムを脅かし続けている」
本書は世界金融危機を振り返るところから始まるが、そこで明らかになるのは、サブプライム・ローンの商品設計上の欠陥である。よく知られているように、サブプライム・ローンは住宅ローン債権を証券化した投資商品。格付け会社が最上位の格付けを与えていた割に利回りはよい。運用難の機関投資家がそれに飛びつき、証券化する投資銀行は巨額の手数料を上げ、需要があるものだから、ますます住宅ローンの審査が甘くなった。従来であれば、貸し付けた銀行が回収まで債権を持つので、審査を甘くすれば被害を被るのは自社。そえが、融資しした途端に自分の手から離れるのだから、ローン審査は形式的なものになる。
このように、よく考えると、結末が予測できることは多い。問題は、破綻がいつ起きるかは正確にわからず、それまではブームに乗っておいた方が皆儲かるという構造だ。こうして、バブルは繰り返される。
�（�置された資本システム・リスク14：資本システムの誕生13世紀頃の地中海をめぐる経済圏。その中心にあったのは、ヴェネツィアやジェノヴァなどイタリアの都市国家であり、海上貿易の危機回避や遠隔地貿易の決済など、リスクの伴う金融取引に組織的に対応することで、現代の銀行や保険会社の原型や、為替手形や複式簿記など経済インフラの素地を作った。17：サブプライム・ローン融資した瞬間からその貸付債権が証券化に向けて貸し手から切り離されるとすれば、融資に際しての信用力審査が甘くなるのは当然のことである。担保価値さえ適正に審査されていればよいとして、借り手の雇用状態や給与水準などは厳重にチェックされなくなる。37：資本システムの複数の役者「金、銀、銅」→「ポンドと金」→「ポンドとドルと金」→「ドルと金」→「ドルとマルク」→「ドルとユーロ」
2019年02月24日
必死の詐欺師
沢木耕太郎による作家評論集。最初に収録されている「井上ひさし」が1979年で、最後の「アルベール・カミュが2003年。実に25年に及ぶ。
1979年といえば私は高校生の頃だが、高校生の私はあまり本を読んでなかった。そのため、本書に収録されている作家も、名前だけで、著作を読んだことのある人は限られる。
読んだことはなくても、その切り口の鋭さは分かる。例えば、冒頭、井上ひさしを称して「必死の詐欺師」である。その理由は、読めば納得がいく。
結婚サギの事を「赤サギ」というのは知らなかった。これは、もともと警察用語らしい。最近はやりの、「国際ロマンス詐欺」は「国際赤サギ」とでも言うべきか。それにしても、会ったこともない男性に数百万円(中には数千万円の例も）も送金する中年女性がこれだけいるというのには驚いた。メール詐欺はナイジェリア発が多かったが、これを手掛けているのも、ナイジェリアやカメルーンの黒人が多いという。黒人が海外から赤サギでは、従来型結婚詐欺師も真っ青だろう。
9：井上ひさしの第二の天職は詐欺師であるにちがいない10：長編エッセイ『家庭口論』や『ブラウン監獄の四季』などに特徴的なのは、そこに登場する井上ひさし、つまり「私」に独特のしかけが施されていることだろう。12：井上ひさし小説の主人公たちの、行動の独特の型主人公たちは彼らの生きている世界に関わろうとする時、冗談・イタズラ・ウソ・ペテン・詐欺、といった系列の行動を主としてとってしまう。13：多くの戯曲で井上さんが駆使した「分散と集約」という技術は、一流の詐欺師の高等な戦略そのもの。14：赤サギ（結婚サギ）結婚詐欺師にはとてつもない「マメさ」が要求される。虚構を維持するための涙ぐましくもコマメな努力。
2019年02月23日
日本株が安い⁉
高田馬場で開かれた「MONEXお客様感謝Day2019」へ。都合さえつけば毎年出るようにしているが、東京にいない年もあるので、出席率は2回に一回くらいか。
メインで聞きたかったのは、ストラテジスト広木さんの話。万年強気で知られる広木さん。話を聞くと「これでいいのだ」と思えてくる。投資とは資金をリスクにさらすことなので、不安との戦いだ。平常心を保てなければ負けてしまう。定期的に広木さんの話を聞くのは私にとって精神安定剤とも言える。
今回の広木さんのメッセージは、まず「日本株が安い」であった。上記のグラフの通りで、予想EPSは日経平均24000円を付けていた昨年9月と変わらない水準（1750円）なのに、現在の株価は21000円。PER12である。長期の平均PERは15で、標準偏差-2σのレベルにある。経済危機が起こらないかぎり、これは安い。
日本経済全体としては「失われた平成30年」だったが、個々の企業を見れば、冷戦後の新たな現実に対応できなかった大企業が凋落した一方、新たな企業も出てきているし、日立や最近のソニーのように経営改革に成功したところもある。オリンパス、東芝、日産のように不祥事が起きるところが今後も出るかもしれないが、全体として日本企業の経営力は改善されていると言って良い。
因みに、今年の日経平均レンジ予測は、パネラーそれぞれ以下の通り。
松本社長 19000-27000円
広木隆 18500-28000円
大槻那奈 19000-25000円
佐々木（JPM) 20000-24000円
Koll (Wisdom) 20500-25500円
広木さん、レンジ広すぎ(笑)。
2019年02月22日
スマホが学力を破壊する
今、とても後悔していることがある。それは、末っ子が中学生になってすぐiPadを与えたこと。
小学校まで社交的で活発であった子供が、部屋から出てこなくなった。読書も大好きだったのに、小学校の時ほど本を読まなくなった。姉たちは、部屋を覗いても、何をやっているかは別にして、少なくとも机に向かっていることが多かったが、三女は常に寝転がってiPadをいじっている。
部活に打ち込むのでもなくiPadをいじり、高校生になってからはスマホも加わる。勉強しないので成績は低迷。今年、浪人が決まった。
この本を読んで、四六時中使うスマホの怖さを実感。「スマホの使用時間が長い生徒の成績は悪い」のは当然として、「自宅で2時間以上勉強しても、スマホを3時間以上使用すれば、自宅学習をしない生徒よりも成績が悪くなる」というのはオドロキ。スマホは単に他の事をやる時間を奪うだけでなく、脳に積極的に悪影響を及ぼしていると考えられる。
その原因は、「メディア・マルチタスキング」であると推定され、認知機能が低下する。特に、成長期にスマホなどで対面型のリアルコミュニケーションの機会が減ると、脳が健全に発達しない。
＊スマホの長時間使用は、子どもたちの学力や脳に悪影響を及ぼす●2013年仙台市の市立中学校に通う生徒（22,390名）調査・スマホの使用時間が長い生徒の成績は悪い・自宅で2時間以上勉強しても、スマホを3時間以上使用すれば、自宅学習をしない生徒よりも成績が悪くなる・自宅学習をしない生徒の場合、スマホを1時間以上使うと、使った時間の長さに応じて成績が下がる●メディア・マルチタスキングTVやPC、スマホなど複数のメディア機器を同時に利用すること。これを行うと、学力や認知機能が低下する。うつ病のリスクを高める。●前頭前野人と直接会って話をすると前頭前野は活発に働くが、電話やTV会議では前頭前野は働かない。スマホを使いこなす子供は、対面型のリアルコミュニケーションの機会が減り、前頭前野を使う頻度も減る。そのため、脳が健全に発達せず、学力が低下する。
2019年02月21日
長期休暇制度
長期休暇制度を導入している企業は多い。それは従業員のためだけでなく、会社にとっても理由があるからだが、武蔵野の長期休暇制度は徹底している。
「課長職以上は連続して9日間の有給休暇を取る（一般社員は3-5日間）」は当然として、わざわざ「月末から月初にかけて一番忙しい時に休ませる」という。それは、「ダブルキャスト化」を進め、また「上司が部下を教育する」ため。忙しい時に部長が休めば課長が部長の代わりをし、課長が休むときは一般社員が課長の代わりをする。これによって、社員が育つ。また、自分の休暇で部署の成績が下がると自分の査定も下がるので、業績が落ちないように、普段から上司が部下の教育をするようになる。
「課長職以上は連続して9日間の有給休暇を取る（一般社員は3-5日間）」は当然として、わざわざ「月末から月初にかけて一番忙しい時に休ませる」という。それは、「ダブルキャスト化」を進め、また「上司が部下を教育する」ため。忙しい時に部長が休めば課長が部長の代わりをし、課長が休むときは一般社員が課長の代わりをする。これによって、社員が育つ。また、自分の休暇で部署の成績が下がると自分の査定も下がるので、業績が落ちないように、普段から上司が部下の教育をするようになる。
長期休暇の日程は、社員が自分で決めるのではなく、会社（総務）がテキトーに割り振るのだという。社員は、その期の予定が配布されて初めて自分がいつ休暇を取るのかを知ることになる。会社が決めた日程が都合悪い時は、別の社員に代わってもらう。代わってもらうためには、普段から「表面上だけでも、仲良くする」必要がある。
「『表面上は仲が良い会社』と『表面上も仲が悪い会社』では、天国と地獄ほどの差がある」
86：長期休暇制度課長職以上は連続して9日間の有給休暇を取る。月末から月初にかけて一番忙しい時に休ませる。一般社員は3-5日間。・会社人間を作らない・ダブルキャスト化が進む・上司が部下を教育するようになる・モンスター社員がいなくなる・ブラックボックス化が防げる・社員が「表面上」は仲良くなる98：会議は報告内容の順番と持ち時間を決めておく職責下位から順番に報告。自分の意見は最後。�／�字の報告（実績報告）�△�客様の声��ライバル情報�に槁�情報�ゼ�分の考え、スタッフの考え104：社員が辞めたいと言ってから説得しても遅い・新卒採用に時間を掛けて、「辞めない社員」を選定・「価値観教育」に時間を掛けて、社長の考えを浸透させる・頻繁に「飲み会」を行い、コミュニケーションを図る136：休日にハガキのあて名書き社員とサポート会員の社長に宛てたハガキのあて名書きをしておく。社員に叱咤激励するときや、社員の誕生日、長期休暇の取得時に手書きのハガキを送る。社員が結婚しているときは、配偶者の誕生日と結婚記念日にも送る。年間で3600枚。
2019年02月20日
儲ける社長の「365日」の計画策定
武蔵野では、年間を通した会議や行事、銀行訪問日程まで全て決められている。業務内容が急に変わるわけではない。前年度にやったことをそのまま翌年度に移して休日などの調整を加えるだけだから、それほど手間はかからない。
決められている日程は以下の通り。毎日やること、毎月やること、半年ごと、年一回と、それぞれ決まっていて、これがよくできている。いつから準備するかもあらかじめきまっているから、直前になって慌てることもない。
例えば、お中元の準備は6月1日にやることが年間予定できまっている。贈答品の手配と訪問先リストを作成する。武蔵野では、お中元とお歳暮は必ず社長が手渡しすることになっており、1999年までは年間450社、2000年からは250社、2010年からは100社（粗利益額上位）を小山社長が訪問する。
お客様に感謝の気持ちを直接伝え、不満の声に耳を傾け、改善につなげることによって、ライバル会社から顧客を守るのが目的。訪問先では長居せず、特別な用事がない限り、挨拶だけ。１分で終わるという。30年以上続けていて、表敬訪問先でライバル会社に取られたお客様はゼロというから、効果抜群だ。
66：社内イベントの実施が社員の価値観をそろえる【毎日】・早朝勉強会（730-830）研修残業。出席回数は賞与の人事評価に反映。半期で20回未満だと賞与の点数が下がる。・環境整備一人の例外も、一日の休みもなく、全社員で毎朝30分職場の掃除(整理・整頓）をする。窓を拭く、トイレ掃除をする、床のワックスをかけ直すなど分担を決めて、とことん磨き込む。・托鉢社屋や事業所周辺、駅周辺の清掃活動。・朝礼経営理念、七精神、経営計画書に記載された方針を唱和。【月次】・環境整備点検4週に一度、全営業所、全支店を対象に「環境整備点検」いつ点検するかは、経営計画書の年間スケジュール表に明記・グループ懇親会事業所ごとに開く飲み会。・オリエンテーション武蔵野の歴史、武蔵野の取り組み、武蔵野のルーツ。入社時だけでなく、誕生日月にも参加が求められる。・実行計画書レビュー半期に一度の「社内アセスメント」によって作成した「実行計画書」の内容が実際に実行されているのかを毎月チェック・銀行訪問融資を受けている銀行を訪問し、「そのお金をどのように使ったのか」を報告。現状を包み隠さず報告。・上司と部下の個人面談コミュニケーションは回数。半期に一度の面談では、社員の気持ちを理解できない。1回10分でもいいから毎月。・役員会、リーダー会議、進捗会議、店長会議、部門長会議始業前に実施。職責下位から順に発表。【半期に一回】・社内アセスメント（4月、10月）経営計画書の方針を各部門でどう実行するのか、具体的な施策として落とし込む。・政策勉強会（5月、11月）社長による重点方針解説。社員・アルバイト・パート・外交員。・お中元とお歳暮の訪問（7月、11月）粗利益額が多いお客様上位100社を社長が訪問。ライバル社から顧客を守る。・データネーチャー大会（9月、3月）BIツールData Natureによるデータマイニング成果を競う。・全社員勉強会（7月、2月）��1等級で中途入社の短大・専門・高校・中学卒の社員��2等級で大卒並びに中途入社の短大・専門・高校卒で実務経験が多い人＋アルバイトで優秀な成績の人社会情勢の変化や、会社の方針について学ぶ。終了後は、会場周辺のお掃除。・評価確定面談（賞与面談：5月、11月 昇給面談：4月）幹部社員は年に3回社長と面談。面談は早ければ一人5分。時間が長くなると、それだけ不確定要素が増えてしまい、不公平で不正確に。面談は短いほど正確。昇給面談は一人3分。評価シートを見ながら、社長と社員の点数が違った項目についてのみ、社長から説明。直属の上司も同席させる。・賞与支給日（6月、12月）賞与は現金（万単位）で支給。端数は口座振り込み。部長と課長の中で「賞与の額が最も少なかった社員」が他の社員のボーナスを袋詰めする。【年間行事】・内定者ドラフト（1月）新入社員の配属先を決めるドラフト会議・創業社長感謝の日（2月）創業者の命日に課長以上全員でお墓参り。・経営計画書作成アセスメント（3月）年に一度「経営計画書」について部長以上が見直し、翌年の方針を作成。・入社式（4月）経営サポートパートナー会員企業と合同。・経営計画発表会（5月）来賓を迎えて、今期の経営方針についての発表と説明。・バスウオッチング（5-7月）14回開催され、従業員（アルバイト・パートを含む）は必ず1度は参加。１班40名で全支店を見学。・給与体系勉強会（5月、9月、1月）社員にとって最大の関心事は「自分の給料」。それなのに、「どうすればもっとお金をもらえるようになるのか」を熟知した社員はいない。そこで、給与体系勉強会に出席を義務付け。・東小金井南口商店会夏祭り（8月）2006年から運営の中軸。会場の設営、模擬店の運営や会場警備、翌日の撤収作業を持ち回りで担当。運営関与で、東小金井のシェアは7%→95%に。・こども会社見学会（8月）社員の家族サービスで8月中に3回実施。親の仕事現場を見学し、体験（経営理念の唱和や環境整備、モップ交換など）。参加者には参加証1万円を支給。見学会終了後は、そのまま子供と帰宅。・社員旅行（6月）全員参加。社員旅行に行きたがらない新卒は不採用。夜の宴会は全員浴衣。・従業員アンケート（9月）現場の声をいち早く汲み上げて、改善に役立てる。良い会社と思っている従業員が95%だが、コメントに心折れることも。・内定者セールス研修（10月）内定者にダスキン商品の飛び込み訪問販売を体験してもらう。・内定式（10月）新入社員として必要なビジネスマナー。経営サポートパートナー会員と合同。
2019年02月19日
儲ける社長の「時間思考」
小山社長は、「意図的にダブルブッキングする」ことがあるという。
例えば、就活生向けの「会社見学会」と企業向け「現地見学会」を同日に開催する。すると「人であふれかえる」ので、学生も、見学者も、「武蔵野は活気がある」「武蔵野はお客様が殺到する会社」と印象付けられる。〜なるほど、これは戦略的。
また、相見積もりを取るときは、業者のアポを少しだけ重ねるのだそうだ。前のアポがもうすぐ終わるころに同業者が来る。同業同士で、互いの存在を意識する。結果、好条件を引き出せるという。
これは、意識的にしたことはなかったが、銀行だけはどういうわけか、アポを取らずに平気で来るので、銀行同士かち合うことがある。武蔵野では、経営計画発表会のときに取引行を全て呼ぶそうで、これは私も見倣っている。一度に説明できるので効率的だ。
36：スピードとは、急いで作業することではなく、「早く始めること」・すぐにやらないと「旬」を逃す・すぐにはじめれば、すぐに「方向転換」できる・そもそも経験がないことは、「考えられない」・正しさは「トライ＆エラー」からしか得られない＊考えるとは「体験から得たデータを頭の中から探してくる時間のこと」一人で時間をかけて考えても結論は変わらない。47：仕事に時間を割り振るのではなく、「時間に仕事を割り振る」終了時間を先に決め、多少強引にでも決めた時間に終わらせる。
2019年02月18日
常勝のタイムマネジメント術
各出版社から毎年何冊も新刊を出す小山社長。内容が似通ってくるのは仕方がない。それでも、次から次へと出るのは、小山社長の信奉者が多く、「出せば売れる」からだろう。実際、知っても実践するのは難しく、本は武蔵野の経営サポート事業（経営コンサルティング）の販売促進ツールのようなものだ。営業パンフレットを出版社の費用で印刷して、潜在顧客が「買って」くれるのだから、出版しない手はない。
本書のテーマ「社長の時間の使い方が会社の経営を左右する」は当然のこと。思った通りの業績が上がらないなら、「社長の時間の使い方が間違っている」と考えたほうがいい。社長として当然、「顧客」「社員」「取引先」とに時間を使っていなければならないが、業績が上がらない会社は、仕事に関係のない名誉職や委員会などに毎週のように時間を使っているケースもある。こうした会合では、周りがちやほやしてくれるから気分がいい。それで頼まれると仕事をほったらかして出る社長まで居る。
もう一つは、「顧客」「社員」「取引先」に目いっぱい時間を使っているにも関わらず、やはり業績が上がらないケース。これは、プライオリティが間違っているか、個々に時間を使い過ぎているか。時間は限られているので、どこにどう時間を使うのが全体として効用が最大になるか考えて使わないと、声の大きいところ、(重要ではないが）緊急度の高いところに無駄に時間を取られることになる。
会社としても、「やらない」ことを決めるのは重要で、武蔵野は次のように決めているという。
・商圏を広げない
・「一度売ったらそれでおしまい」のビジネスはやらない
・ライバルのいないビジネスはやらない
・社歴よりも古いマーケットには参入しない
・「誰もやっていないこと」はやらない
「ライバルのいないビジネスはやらない」は、そこに市場がないから。ベンチャーとして、リスクマネーを集めて挑戦するならともかく、中小企業が手を出すにはリスクが大きい。
「社歴よりも古いマーケットには参入しない」は、古いマーケットには規制が多いからだという。そして、その規制は、既存企業にとって都合よくできている新規参入するなら、新しく立ち上がりつつあるマーケットのほうがいい。
「ライバルのいないビジネスはやらない」は、そこに市場がないから。ベンチャーとして、リスクマネーを集めて挑戦するならともかく、中小企業が手を出すにはリスクが大きい。
「社歴よりも古いマーケットには参入しない」は、古いマーケットには規制が多いからだという。そして、その規制は、既存企業にとって都合よくできている
新規参入するなら、新しく立ち上がりつつあるマーケットのほうがいい。6：竹田陽一（ランチェスター戦略）「社長が朝7時より前に出社する会社の中で、倒産した会社は1社もない」23：エナジャニザー（日本生産性本部が提供する人と組織の適性判断ツール）エナジャニザーを用いると、その人の仕事の速さ、正確さ、安定性といった情報処理能力を評価できる。28：武蔵野が「やらない」と決めていること・商圏を広げない・「一度売ったらそれでおしまい」のビジネスはやらない・ライバルのいないビジネスはやらない・社歴よりも古いマーケットには参入しない・「誰もやっていないこと」はやらない
2019年02月17日
金川千尋100の実践録
SBの孫社長や、ユニクロの柳井社長のような派手さはないが、塩化ビニールと半導体用シリコンウェーハで世界一の企業を作り上げたのが信越化学の金川社長。その高収益率は素材メーカーとして突出しており、時価総額5兆円は化学メーカートップ。日本を代表する名経営者の一人だ。
「本業に集中する」では、1980年代のコーポレート・アイデンティティ（CI）ブームの事例を挙げている。当時、企業イメージを統一して、それを世間に認知させるべく宣伝することが流行った。信越化学でも1988年から実施することになり、当時副社長だった金川氏は反対したものの、却下されたそうだ。これには40億円掛かったが、それだけの成果は出なかったという。
今も、CSRやSDGなど次から次へとブームはやってくる。それぞれ意義はあるのだが、本業で十分に儲けられないような会社がやっても、成果は出ない。ものには順番がある。従業員に標準以上の給与を支払い、将来のために投資し、株主に還元することが第一で、それもできない会社が余分なことを考えるべきではない。
・ムダな会議はしない重要事項を決める会議では、その事業を深く理解している人が議論し、意義のある結論を導き出す。第三者的な立場から思い付きで意見を述べる評論家は要らない。・官僚主義の打破官僚主義がはびこると、前例や習慣が優先され、非合理的な仕事のやり方が蔓延する。これを打破するには、トップの方針を速やかに社内に浸透させ、意識改革を図る。・企業価値の最大化長期点な視点で、利益の絶対額を増やし、安定的な成長を実現する。会社というのは、投資家から預かったお金を事業に投資して利益を上げ、そこからまた投資して事業を拡大するところ。投資するためには資金がなければならない。そして、資金とは利益の絶対額から生まれる。利益率だけに振り回されると、経営は大きくゆがめられてしまう。・スピードが仕事の成否を決める意思決定する際も、それを伝達・実行する際も、スピードを重視する。上がってきた案件のうち、8-9割は即決する。一つ一つの書類に目を通すのは数秒ほど、長くても1分。・ブームには乗らず、本業に専念する研究開発や設備投資に経営資源を集中する。本業に集中していれば業績が上がり、それがメディアに取り上げられて世間に注目される。わざわざお金をかけてCI活動をしなくてもいい。・経営者は育成できない企業のトップができるのは、社員にチャンスを与えて、その中で自分の力で伸びてくるような人間を見つけ出すこと。育成プログラムを用意するのではなく、実践を通して結果を出せるかどうかを見ていく。能力には天性の素質によるところがあり、それぞれの資質に応じて仕事を割り振っていくしかない。ところが、誰にどういう資質があるのかは、実際に仕事を任せてみなければ見えてこない。・能力のある人には倍の仕事を与えて育てる人を育てるために私が気を付けていること：�’塾呂鮓�極めること。過去の実績を見れば分かる。�△修Δ笋辰童�いだした能力のある人に、能力以上の仕事を与えて育てること。能力も意欲もある人には倍の仕事を与える。100の能力に対して100の仕事をしている時は、忙しそうに見えても実は余力がある。そこに150とか200の仕事を与えると、頭を使い、無駄を省いて効率よく仕事ができる能力が身につく。
2019年02月16日
梁山泊
1巻までは、革命までの準備期間だったが、いよいよ事態は動き出す。主要メンバーの一人が官軍によって特定されたのを機に、梁山湖の中にある島「山寨」に籠る盗賊の頭を排除して、ここを反乱軍の拠点とするのだ。
名付けて、「梁山泊」。現在でも、「豪傑・野心家の集まる場所」という意味で使われる。明治初期、大隈重信の私邸には、井上薫、伊藤博文ら若手官僚(当時）が集まり政談にふけったため、「築地梁山泊」と呼ばれていたらしい。
「梁山泊のあった場所（現在の山東省西部）は、黄河によって形成された海抜ゼロメートル以下の内陸低地であり、一帯は古くから黄河の氾濫が繰り返されることによって無数の水路と沼沢が生まれた。特に五代十国時代の944年の黄河の氾濫のとき堤防が決壊して河水が流れ込み、この地には大沼沢が生まれた。梁山泊の名があらわれるのは五代から北宋の頃で、近くに梁山という名の山があったことから梁山泊と呼ばれた。
梁山泊の上流にあたる現在の河南省東部では黄河の大氾濫が北宋の時代にも1019年、1077年と相次ぎ、梁山泊はさらに規模を大きくした。やがて11世紀の末頃から、水路とかつては小丘陵だった島が入り組んだ梁山泊は盗賊や政府に反抗する者たちの巣窟となり、宋王朝を大いに悩ませた」（Wikipedia)
その後黄河の流路が変わり、干上がったらしい。現在では、湖の名残はないが、中国で最も有名な小説の舞台だから観光地化され、「山寨」が復元されていると聞く。
24：武松
自分にとっての女は、潘金蓮ただひとりだ。抱きしめたい。抱きしめられたい。口を、乳を、吸いたい。頭から、食ってしまいたい。思うさま、局所の中に精を放ちたい。297：公孫勝「宋江殿だから集まった、という人間は多い。戦いの指揮は、軍人に任せておけばいいのです。その戦いの意味を見失わないというのが、宋江殿のお役目でしょう」307：楊雄「致死軍は、世直しの戦いを裏で支える。闇も、林も、岩も、山も、あらゆるものがわれらの武器だ。血で手が汚れることは恐れるな。われわれが手を血で染めないかぎり、もっと多くの味方の血が流れるのだ」
2019年02月15日
西洋との出会い
開国、大政奉還を経て、明治時代へ。江戸の250年間ほとんど海外と交易してなかったのが、急に貿易が始まる。戸惑いがありながらも、西洋文明を吸収して経済発展に結びつけられたのは、「鎌倉新仏教に始まり、江戸時代に西洋諸国と同レベルまで経済発展を遂げていたから」というのがこれまでの説明。すでに基礎があったから、産業革命の50年分くらいを追いつくだけでよかった。日本は、非西欧諸国で唯一列強に追いついた国となった。
ところが、科学技術水準は世界水準に達したものの、それを産業技術として標準化製品とすることでは著しく西洋に立ち遅れていた。「紡績機械や乗用車の生産や兵器の生産においても、ベルト・コンベアが導入されることはなく、すべて個別に部品を手元に集めて組み立てる、というのが日本の一貫した生産方法であった」という。そこには、「製品の作り上げられていく過程に意味を見出し、美術と工芸の連続性、用の美、生活性・実用性と美の共存を見いだしてきた、江戸時代以来のものづくり精神があったものと思われる」。
大量生産できないことは、その後の敗戦の要因となる。その反省から、1950年代に標準化に世界で最も熱心に取り組んだのが日本で、その成果は1960年代以降の輸出ブームとなって実現した。
194：江戸時代の経済成長は高度の道徳律の開発と普及による、社会的な信頼のネットワークに基づくもの。明治以後の日本資本主義の発展はこの基礎の上に、西洋の科学技術・制度と公共概念を移植し、融合することによって成し遂げられた。207：標準化製品に対する低い意識沢井実の研究（2012）によると、日本の戦前期の科学技術水準は十分に世界水準に達していたが、それを産業技術として標準化製品とすることでは著しく西洋に立ち遅れていた。紡績機械や乗用車の生産や兵器の生産においても、ベルト・コンベアが導入されることはなく、すべて個別に部品を手元に集めて組み立てる、というのが日本の一貫した生産方法であった。おそらくそこには、製品の作り上げられていく過程に意味を見出し、美術と工芸の連続性、用の美、生活性・実用性と美の共存を見いだしてきた、江戸時代以来のものづくり精神があったものと思われる。221：ブルーカラーのホワイトカラー化日本の求道主義に由来する貴重な財産。日本の資本主義の精神は深刻な問題に直面している。人的資本という意味で、人格と一体化した効率的な労働市場をどのように作り上げていくか。
2019年02月14日
高度成長期としての江戸時代
そして、江戸時代。鎖国状態の中でこれだけの経済成長を遂げたのは興味深い。筆者は、次の三つの理由を挙げる。
136：経済成長をもたらした江戸期のシステム
�）詒優轡好謄爐硫爾琶毒芝�貢制と兵農分離によって江戸が巨大な消費都市化
�∨詆椶離ぅ鵐侫蘋鞍�政策に先導されて海運が発展し、それによる輸送コストの低下が地域間分業に基づく経済発展を起動
�Ｆ仔僧Г凌焚修班甬擇亡陲鼎�社会資本の蓄積が、取引コストの低下をもたらし、持続的にマクロの経済成長を支えた
都市化については、1600年に都市化率6.4%だったものが、たった50年で13.6%と倍以上になった。参勤交代で大名とその家臣団が江戸に住むようになったこと、年貢米が大坂に集められ、それに伴い商業都市として発展していった。
海運については、幕府が各地に港を整備させ、北前船によって輸送コストが下がり、全国に物産が出回るようになった。これによって、地域間分業が進み、生産性が上がった。
面白いのは��で、「道徳律の普及で取引コストが下がった」とある。石田梅岩は1685年生まれで、18世紀前半に京都で活躍した思想家、倫理学者。正直などの基本的な道徳律を遵守し、禁欲的な自己規律を確立することが必要であり、そうした道徳律は常住坐臥、反省と工夫を重ねて、家業や家職の追求に精進する中で、自得されねばならないとした。
これなど、まるで、カルヴァン主義商業倫理。互いに誠実な取引を行えば、社会全体として、取引コストが下がる。つまり、生産性が高まり、社会全体が豊かになるのだ。
138：都市化都市化率 1600年6.4%→1650年13.6%平均余命 17世紀ー18世紀 男37.8年 女38.0年 →男41.8年 女41.0年（18-19世紀）1765-1803データ 一人当たり所得、賃金、平均余命、身長などにおいて、日本の生活水準は同時代のイギリスのそれに遜色ないレベル。172：石田梅岩の思想商人にとっての利益は侍の俸禄と同じであると論じて、商人の社会的役割の視点から、商人蔑視の気風に抗し、その社会的地位を確立することに努力した。そのために、商人が社会的分業における誇りを持ち、それを十分に果たすための道徳律に従うべきことを要請した。正直などの基本的な道徳律を遵守し、禁欲的な自己規律を確立することが必要であり、そうした道徳律は常住坐臥、反省と工夫を重ねて、家業や家職の追求に精進する中で、自得されねばならないとした。具体的には、日常的な職業生活を求道的に営むなかで、すなわち「行」のなかで禁欲的に生活することで「足るを知り」、集団の秩序の維持に努めることで「分」を知りながら、現実の社会的諸関係や与えられた集団のなかで道徳律の価値を理解せねばならない。179：「武士道といふは死ぬ事と見付けたり」（山本定朝『葉隠』）仏教的教養の上に進化した、武士の道徳律の一つの形。
2019年02月13日
資本主義の精神の宗教的基盤
資本主義の精神に宗教が及ぼした影響は大きい。マックス・ウェーバーの指摘通り、近代資本主義は宗教改革から起こった。
日本での、資本主義と宗教との関係を読んだのはこれが初めて。明治維新で初めて「文明開化」して、経済発展が始まった、とするのは明治政府のプロパガンダで、その後の研究で江戸時代に既に高度な経済社会を実現していたことは戦後の研究で明らかになっている。江戸中期には江戸は100万人を超える世界最大の都市で、それを賄う上水道や物流網が存在した。世界初の先物取引市場は大坂にできた。
しかし、また、なぜ江戸時代に経済が発展できたかを探ると、その源流は鎌倉新仏教にあるという。
37：ウェーバーの予見した現代資本主義の問題「ピューリタン達は天職人たらんとしたが、われわれは天職人たらざるをえない」局面に資本主義が到達してしまった、とウェーバーは言う。近代資本主義に特徴的な目的合理性の追求が自己目的化し、歯止めを失って暴走することによって、資本主義が管理社会化し、人々を「鉄の檻」に閉じ込めてしまったとみられる。43：古典ギリシャ・ローマの伝統の上に主としてキリスト教的インパクトの下に構築された西洋の資本主義システム、日本の神道的基盤の上に主として仏教的影響の下に構築された日本資本主義の精神に、西洋の資本主義を重ねて生まれた現在の日本の経済システム、道教的伝統の上に儒教的組織として成立した制度の上に西洋の精神を取り込んで構築された中国など東アジア諸国の資本主義システム、これらはいずれも、それぞれの国や地域に固有の世界観と価値観に立つ生活様式を持つ人々によって運営されている。第2章 資本主義の精神の宗教的基盤78：鎌倉新仏教天台本覚思想に対する真に説得力のある批判となる代替的な教理の樹立は、法然の後に、いずれも延暦寺で修業し、本覚思想と身をもって格闘した親鸞、道元、日蓮などの鎌倉新仏教の祖師たちによってなされた。彼らの活躍した時代は、承久の欄（1221）を契機に新興武士階級が新しい社会秩序の確立に向けて動いていた時期であり、本覚思想はそうした時代の現世肯定の気風にマッチし、高い支持を集めていた。102：易行化は人々に職業的求道行動のインセンティブを与え、人々はそれぞれの道で急速に専門性を高め、その結果、南北朝期以後の日本では社会的分業が劇的な進展を見せた。111：この時代の日本は、個人的修行のなかで自我を発見するという、もともとの仏教世界的な個人から、哲学者ヘーゲルが『精神現象学』で指摘したような、他者とのかかわりのなかに自我を確認するという、精神文化の局面に急激に移行した時代。113：成長を準備した経済システム易行化によって人々が職業的求道の意識を抱いたため、この時期の日本社会では職業的専門化が、おそらく他国では考えられないスピードで急激な進展を見た。それを可能にしたのが、律令官営工場の民営化による、専門的手工業の社会への急激な展開と、その生産物の販路の確保を可能にした、隔地間交易のシステムの発達。
2019年02月12日
日本人の「資本主義の精神」
「資本主義の精神」といえば、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』が有名。ウェーバーはこの本で、西洋の資本主義では「プロテスタンティズムに淵源をもつ、禁欲的な職業精神と功利主義的な公共の厚生を重視する姿勢が、その大量生産資本主義の精神的バックボーン」であることを論じた。では、日本人の「資本主義の精神」とは何かを論じた意欲作。
日本資本主義の特性として、「ものづくりへのこだわり、人的資本の重視、関係依存的取引の選好」があげられる。これらは、「江戸時代以前に主たる淵源をもつ」と筆者は主張する。
そして、「現在の世界は、それぞれの経済が独自の資本主義の精神を持って西洋由来の資本主義的制度を運用するという、異種資本主義の精神の相克、協調、共存の時代になっている」から、「世界観・人間観の異なる西洋や東アジアの資本主義との融合・融和により世界経済の調和を図ることにおいて、幕末維新以来意識的に追及してきた日本の経験が大きな役割を果たしうるし、そこに日本が主導的な役割を見いだす必要がある」と結論付ける。
まえがき仏教的伝統とキリスト教的伝統万物を創造した絶対神をもつキリスト教では、救済するかしないかは神の判断によるため、人々は神の栄光に尽くすことで救われる可能性を高めようとする。これに対して、絶対神を持たず、悟りによる救済がなされる仏教では、救済は個人の迷いを脱するための自助努力に任される。このため、キリスト教的伝統に立つ経済では救済を求める気持ちから、神の創造したもののなかの最高傑作である、全体としての人類や公共世界への貢献が強く意識されるようになったのに対して、日本の仏教的伝統に立つ社会では、輪廻における業報の苦しみから脱却し、悟りを得るために、業や報いにかかわる身近な他者や身近な生命が重視されることとなった。＊西洋の資本主義の精神が公共への関心と神に対する奉仕としての労働と自然の征服を目指すのに対して、身近な他者との調和、人的資本の重視および自然との共生こそが日本資本主義の精神である。＊＊仏教的、文化的世界観の上に多面的な価値の伝統を形成してきた日本の資本主義の精神の発信は、これからの世界の資本主義のあり方に大きな意味を持つ。日本の伝統は、企業統治にかかわるステークホールダー社会や大量生産にかかわる勤勉な「ものづくり」のみにあるのではない。それを生み出してきた総体としての世界観と人間観に立つ資本主義の精神こそが意味を持つのである。そして世界観・人間観の異なる西洋や東アジアの資本主義との融合・融和により世界経済の調和を図ることにおいて、幕末維新以来意識的に追及してきた日本の経験が大きな役割を果たしうるし、そこに日本が主導的な役割を見いだす必要がある。
2019年02月11日
替天行道
先日、畏友麻生川さんの『本当に残酷な中国史』を読み、水滸伝を読むことを思い立つ。中国人の友人から、「日本人はなぜあんなに『三国志(演義）』が好きなのか？中国では『水滸伝』の方が人気」と聞いたことがある。なのに、『水滸伝』は読んだことがなかった。水滸伝にもいろいろある。オリジナルとはかなり違うらしいが新しく書かれた人気の「北方水滸伝」を読んでみることにする。全19巻＋別巻
司馬遼太郎賞受賞作品だ。「12世紀の中国、北宋末期。重税と暴政のために国は乱れ、民は困窮していた。その腐敗した政府を倒そうと、立ち上がった者たちがいた。世直しへの強い意志を胸に、漢たちは圧倒的な官軍に挑んでいく。地位を捨て、愛する者を失い、そして自らの命を懸けて戦う」
これは小説だが、『史記』や『資治通鑑』など中国の歴史書を読んでも、描かれた国の状況は変わらない。前政権の力が弱まり、新たな王朝が生まれるが、それもやがて腐敗し、滅びていく。この繰り返し。漢民族国家だけでなく、モンゴル族がつくった元も、満州民族が建国した清もそうなった。あたかも中国のDNAに入っているかのように。あるいは、地政学的にそうした宿命なのか。
日本はアジアの「辺境の国」として、欧州におけるスイスのような存在になればいいと思ってきたが、そうするには人口や経済規模が多すぎるのかもしれない。スイスのように国民皆兵制で、自国は自分で守るという気概もない。では、イギリスのように大陸との結びつきを強めながら、独自の立場を守るのか。そのイギリスが、「孤高の地位を守りたい」とBrexitというのだから、それも簡単ではない。
34：王進の母「分かれる時涙が出てしまう友を持てたのは、あなたがきちんと生きたからですよ」68：魯智深の塩作り職人をしていた父横流しは、実は役人自身がやっていたのだ。それが開封府に知られそうになり、職人20名の首を並べて、なんとか逃れたのだった。密州の役人が塩の横流しで私腹を肥やすことなど、当たり前のことで、犠牲になった職人は不運としか言いようがなかった。母はその不運を嘆きながら死に、魯智深は12歳で出家させられた。112：王進から武術を教えられた史進死ぬに違いないと思った。死んでまでやる武術とは何なのだ、と何度も考えた。それは大抵気を失う寸前で、次の瞬間には水を浴びせられ、立てと声をかけられた。何度も続けていると、自分がなにを考えているのか、生きているのか死んでいるのかさえ、わからなくなった。
2019年02月10日
新しい経済のルールと生き方
著者は福島の母子家庭に生まれ、「人生って平等じゃない」「生まれた瞬間から失敗が約束されている人生なんてあってたまるか」と怒りを感じて生きてきたという。
その著者が、早稲田大学に進学し、在学中の2007年にメタップスを創業。2015年に東証マザーズに上場して、100億円を超える資金調達をした。つまり、前半の「人生って平等じゃない」はその通りだが、後半の「生まれた瞬間から失敗が約束されている人生」でないことは自ら証明している。実際、これだけ社会保障制度が充実し、絶対的な生活水準も高く、平均寿命がこれほど長いことは日本史上かつてなかった（国債残高もだが）。
たたき上げ？の著者らしく、自らの経験と独学で掴んだ洞察に満ちている。一方、大学でほとんど学ぶことなく中退したので、学問の世界でかなり知られたことにも、自分で発見して驚いたように書かれている。例えば、株式市場。
上場するまでは、単なるマネーゲームの場だと思っていたが、実際に上場してみて、「金融の歴史や人々の欲望を最適化していった結果」だと理解できたという。そう、株式会社も、株式市場も、400年の歴史の中で、様々な事件を経て、制度が整えられてきた。株式会社に対する株式での出資であれば、その度に契約を交わさなくても、株主としての権利が明確になっている。判例の蓄積もある。だから、社会インフラなのだ。
9：なぜ上場したのか?お金や経済を理解しようとしたら金融の中心地である株式市場は避けて通れない。金融の歴史や人々の欲望を最適化していった結果だということも理解できた。64：ビットコインの発案者は「理想主義者」ではなく、あくまで動くものを作りたい「現実主義者」ビットコインは経済・テクノロジー・思想とそれぞれが、それぞれの役割を与えられた上で、うまく報酬の設計がなされている。86：快楽は他人との比較によって高まる人間は他者との比較の中で自分が幸福か不幸か、優れているか劣っているかを判断する相対的な生き物。92：「自然」は経済の大先輩「自然が経済に似ている」のではなく、「経済が自然に似ていたからこそ、資本主義がここまで広く普及した」105：創発経済・自然・脳のように、複数の個が相互作用して全体を構成する現象。今後はこのようは構造を使いこなす「創発的思考」とも言える思考体系が必要。106：「私の芸術を真に理解できるのは数学者だけである」(ダ・ヴィンチ）ダ・ヴィンチには「全て同じものに見えていたのではないか」155：お金が価値を媒介する唯一の手段であったという「独占」が終わりつつある価値を保存・交換・測定する手段はお金である必要はなくなる。158：社員の満足度を投資判断の材料にするファンド優秀な頭脳が集まる企業は革新的なサービスを打ち出し次世代を牽引することができ、優秀な人材が逃げてしまった企業は時代に取り残されて淘汰されていくのがITの世界。168：価値主義�〕�用性としての価値�⊃祐屬瞭睫姪�な価値�Ａ澗里了�続性を高めるような社会的な価値206：Token Native「人間は、自分が生まれた時に既に存在していたテクノロジーを、自然な世界の一部と感じる。15歳から35歳の間に発明されたテクノロジーは、新しくエキサイティングなものと感じられ、35歳以降になって発明されたテクノロジーは、自然に反するものと感じられる」（イギリスの作家ダグラス・アダムス）231：枠組みの中での競争から「枠組み自体を作る競争」へ自分なりの独自の枠組みを作れるかどうかの競争。247：BMI（Brain Machine Interface)脳とコンピュータを直接繋ぎ、脳そのものを制御したり、脳を使ってコンピュータを動かしたりすることを可能にする技術。
2019年02月09日
国会で是非が議論されたデス・ゲーム小説
中学校の１クラス全員を無人の島に連れ込み、政府主催の殺人実験を強制される。生還できるのはたった一人で、そのためにはクラスメイト全員を殺害するのみ。
そんな過激な設定ゆえに、「文芸評論家と編集者の間でひそかに噂になっていた」（解説）にも関わらず、本書は1年以上上梓されなかった。日本ホラー小説大賞の予選委員会では高得点を獲得していたが、本選では選考委員たちにかたく拒絶されたという。
「金八先生のダイレクトなパロディが出てきてひじょうに不愉快」（荒俣宏）
「いなーな近未来漫画を読まされているみたいでした。・・・こういうことを考える、この作者自体が嫌い」(林真理子）
「今の時期にこういう中学生が殺しあいするような作品に賞を与えてしまっては、やっぱりホラー大賞のためには絶対マイナス」（高橋克彦・（当時、酒鬼薔薇事件の余震が続いていた））
私も小説の概要を聞いて、「気持ち悪い」と拒否してしまった。それを今頃なぜ読んだかと言われれば、その後評価が定着したから。出版される本のほとんどが数か月で消えていく中、初版から20年経って版を重ねているということは、傑作と言ってもいいのだろう。
驚いたのは、著者が香川県育ちで、小説の舞台が高松市沖の(架空の）島であること。「ほかに女木島、男木島という島があって、三つ南北に並んでいるのだが、沖木島は一番沖合い、一番北になる」（下p314）という記述から、男木島と豊島の間にある（別の個所で「隣に豊島」という記述も）設定だ。
上27：中国の文献は翻訳物でも比較的入手しやすい。まあ当然だ、共和国は中国を”わが国固有の領土”と主張している。上55：よく見知ったクラスメイトと互いに殺し合うのだ。たった一つの、生き残りの椅子をかけて。そう、史上最悪の、椅子取りゲーム。下173：そういうわけで、下品な有象無象が大嫌いだったどちらかというと愚かな男、織田敏憲は、防弾チョッキの存在を過大評価し、桐山和雄の冷静さを過小評価したためにあっさりと死んだ。
2019年02月08日
支持され、愛され、長く売れ続けるために
「20:80の法則」があるがごとく、昔から店や企業を支えてきたのはファンである。しかし、高度経済成長期にはライフスタイルが変わり、人口も増えていたので、ファンを持たない企業にもチャンスはあった。TVなど新たなメディアをうまく使った企業は新規顧客を獲得して急成長した。
そうした時代は終わった。2020年には、女性の半数が50歳を超え、2024年には、全国民の3人に1人が65歳以上になる。たいていの高齢者は保守的なので、新規の商品に手を伸ばすことは少ない。日本は「新規顧客が減る社会」になる。
保守的な高齢者に新商品を検討してもらうにはどうするか。「友人に薦めてもらう」しかないという。長年の友人とは「価値観が近い人」だから、価値観が近い友人がツボにはまるコンテンツは、自分もツボにはまる可能性が高い。
そして、愛用の商品やサービスを熱く語ってくれるのがファンなのだ。ファンは周りの「類友」をファンにしてくれる可能性が高い。人は、「強いつながりの人」（類友）の人5-15人程度と、そこに準ずる「弱いつながりの人」50-500人程度とつながって生きている。
＊ファンを大切にしファンをベース（土台）にして、中長期的に売り上げや価値を上げていく・ファンベースが必要な理由�．侫．鵑惑箴紊梁臠召鮖戮─⊃�ばしてくれる�⊃邑�の急減や高齢者の増加など、時代的・社会的にファンを大切にすることがより重要となってきた��ファンが新たなファンを作ってくれる・「全員」はファンにならないファンは少数であり、全体の20%ほど。その少数に好いてもらうには、「大切にしている価値」に対する彼らの支持を強くする。・ファンの支持を強くするには�ゞΥ�ファン・ミーティングを開いたりして、ファンの言葉を聞き、「共感ポイント」を知る。この共感ポイントを強化し、もともと大切にしている価値を高める。��愛着企業の創業ストーリーや商品の開発ストーリーなどを、ファンに伝えるようにする。��信頼企業が「信頼されない要素」を一つずつ消していく。さらに、研究開発や製造工程などの「ちゃんとしている」部分を見せるようにする。・ファンより支持が強い「コアファン」作り�ゞΥ侠�価値自体をもっとアップさせる→熱狂��愛着→もっと他に代えがたいものにする→無二��信頼→評価・評判をもっとアップさせる→応援
2019年02月07日
「創造的新陳代謝」を生み出す
「代謝なくして創造なし」と言えば、やはり真っ先に思い浮かぶのがソフトバンク（グループ）。これだけ主力事業を変えてきた会社も珍しい。
1981年創業
1980年代：PCパッケージソフト流通、PC雑誌出版
1990年代：米国IT展示会社などを買収。そこで得た情報をもとに創業間もないYahoo!に投資（最初の大当たり）
2000年代：Yahoo!BB開始。日本テレコムを買収して固定電話事業に、さらにボーダーフォンを買収して携帯電話事業に進出。
2010年代：Alibabaに投資→2014/9NYSE上場し、巨額含み益に。その実績で、世界最大となる10兆円ソフトバンク・ビジョン・ファンド設立。
孫社長にしてみれば、「創業以来、情報革命を追ってきただけです」ということになるのかもしれないが、その時その時、最短で最大の賭けに出て、それを驚異的な決断力と努力で乗り越えてきたのは間違いない。
VC投資でも、「素晴らしい市場なら平凡な経営陣でもよい成績を上げられる。ダメな市場では優れた経営陣でも平凡な成績しか上げられない。素晴らしい市場で優れた経営をしたとき、奇跡が生まれる」と言われる。PCパッケージソフト流通やPC雑誌出版ではせいぜい1000億円企業が関の山。そこで稼いだ利益を元手に、次の事業に展開していった。しかも、思いっきりレバレッジを掛けて。SBの歴史はこれの繰り返しだ。
＊代謝なくして創造なし絶え間なく挑戦し、価値を創造し続ける。そんな「生きている会社」になるための条件、実践すべき基本原則。・新陳代謝�ー里討�優位性を失い、赤字もしくは低収益に陥り、再生の可能性が見込めない事業や商品、サービスから撤退する。�△笋瓩�価値を生み出さないムダな事務やプロセスを削り、役割を終えて意味のなくなった組織を廃止する。�Ｆ�れ替える過去の成功体験から脱却できず、未来に向けての挑戦に逡巡する経営陣や幹部たちを交代させる。・生きている会社になるための条件�’�（ほとばしる情熱）会社創業の「原点に回帰」⇔未来志向で新たな理想を掲げる�⇒�（徹底した理詰め）独善的ではビジネスは成立しない。常に理性的、客観的な視点を保ち、考え抜く。��情（社員たちの心の充足）社員たちに働きかけ、充足し、発奮させる。・10の基本原則�‖綣佞離瓮�ニズムを埋め込む代謝を進めるための「合理的なメカニズム」�◆屬△蠅燭せ僉廚鬚屬曽紊欧�理想を掲げる。�９�太かつシンプルな「大戦略」を定める�ぁ嵒�死のコミュニケーション」に努めるこれでもかというほど密なコミュニケーション。�ゥ�ルガナイズ・スモール生きている会社は、チーム単位で仕事をする。�Α崋存灰�ンパニー」になる�А峺世┐覯宗廚鯊臉擇砲垢��┐澆鵑覆任茲ぁ峩�気」をつくる��管理を最小化する��リスペクトを忘れない
2019年02月06日
教科書が読めない子どもたち
著者は、AI開発に携わる数学者。2011年に「ロボットは東大に入れるか」と名付けたプロジェクト（愛称「東ロボくん」）を始めた。目的は、AIにはどこまでのことができ、できないことは何かを究明することだという。
2016年に受験した「進研模試 総合学力マーク模試6月」では偏差値57.1で、国公立大学172校のうち、23大学の30学部53学科で合格可能性が80%。私立でいえば、MARCH合格レベルという結果だった。しかし、このまま続けても直ぐに「東大合格は無理」ということになり、プロジェクトは凍結された。
なぜか？「東ロボくん」プロジェクトで明らかになったのは、複雑な文章の意味を理解することだった。そもそも質問の意味が分からなければ答えを出すことは難しい。あらゆる問題を一旦数字に置き換えて計算する必要があるAIの弱点は「読解力」であることが明らかになる。
ところが、日本の中高生の（そして大学生も）読解力は危機的な状況にある。その多くは中学校の教科書の記述を正確に読み取ることができないという。3人に1人が、簡単な文章が読めないというのだ。
著者が読解力調査に使った問題の例がこれ。
【問】次の分を読みなさい。
仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニア、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。
「オセアニアに広がっているのは（ ）である」
【選択肢】�．劵鵐疋ァ雫機´▲�リスト教 ��イスラム教 �な�教
この問いに対し、中学生の1/3以上、高校生の3/10近くが不正解だったという。
その原因ついては考察されていないのだが、「文章によるコミュニケーションが不要なゲームなどで遊ぶことが多い」「本を読んでいない」「簡単な会話のやり取りですむ仲間内だけのコミュニケーションに偏っている」ことなどが考えられる。そして、そうした短絡的なやり取りはAIでも理解できるから、容易にAIに置き換えられてしまうことになる。
＊AIは神にも征服者にもならないAIにできない仕事をするうえで大切な「読解力」・AIは労働力として私たちのライバルになる可能性が高い今後10-20年で働く人の半数が職を奪われる可能性・人間の一般的な知能と同等レベルの知能を持つ「真の意味でのAI」はまだ存在しないシンギュラリティとは、「真の意味でのAIが自分自身よりも能力の高いAIを作り出すようになる地点」・今のAIの延長では真の意味でのAIはできない＝シンギュラリティも来ないAIが人と同等の知能を得るには、脳が認識することを全て数式に置き換える必要がある。・AIに任せられることは任せ、人間はAIにできない仕事をして豊かな生活を送るその大前提は、AIができない仕事を大多数の人間が引き受けられること。AIが不得意なのは読解力。・中高生の読解力は危機的な状況AIで仕事を失った人は、低賃金の仕事に就くか、失業せざるを得ない。
2019年02月05日
3週間で「集中力」「記憶力」を取り戻す
血糖値を大幅に上昇させる「高GI食品」と言われれば、うどん県人にとって気になるのは毎日のように食べるうどん。しかも、多くの人が付け合わせるのは天ぷらで、野菜はネギ位。実際、そのせいで、香川県は糖尿病罹患率で常に上位を占めてきた。
炭水化物の重ね食べ、過剰摂取、早食い−。こうした食事の仕方は子供にも引き継がれており、香川県は小学生を対象に血液検査で糖尿病などの傾向を調査する「小児生活習慣病予防健診」を始めた。今年の結果によると、「将来糖尿病の発症リスクが高い子供」は男子１４・５％、女子１３・６％。「肥満傾向」は男子１０・１％、女子８・４％。生活習慣との関連では、腹いっぱい食べる、早く食べると答えた児童に肥満傾向や脂質異常、肝機能の異状が多い傾向がみられた。
というから、やはり、これはマズイ。もともと、精米した白米や精麦した小麦は贅沢品。庶民が毎日食べられるものではなかった。うどん県と言われる香川でも、毎日食べられるようになったのは、戦後安い小麦が海外から入るようになってから。現在の「讃岐うどん」の原料は85%が海外産だ。その大半を占めるのがオーストラリアで讃岐うどん専用に開発されたASWで、現在の讃岐うどんの白さはASW由来。元来、讃岐産の小麦は黄色みが入ったうすいグレー。
食べ方を見直さなければ。
炭水化物の重ね食べ、過剰摂取、早食い−。こうした食事の仕方は子供にも引き継がれており、香川県は小学生を対象に血液検査で糖尿病などの傾向を調査する「小児生活習慣病予防健診」を始めた。今年の結果によると、「将来糖尿病の発症リスクが高い子供」は男子１４・５％、女子１３・６％。「肥満傾向」は男子１０・１％、女子８・４％。生活習慣との関連では、腹いっぱい食べる、早く食べると答えた児童に肥満傾向や脂質異常、肝機能の異状が多い傾向がみられた。
というから、やはり、これはマズイ。もともと、精米した白米や精麦した小麦は贅沢品。庶民が毎日食べられるものではなかった。うどん県と言われる香川でも、毎日食べられるようになったのは、戦後安い小麦が海外から入るようになってから。現在の「讃岐うどん」の原料は85%が海外産だ。その大半を占めるのがオーストラリアで讃岐うどん専用に開発されたASWで、現在の讃岐うどんの白さはASW由来。元来、讃岐産の小麦は黄色みが入ったうすいグレー。
食べ方を見直さなければ。
＊思考力の低下や気分の落ち込みは、活力や集中力を保つのに欠かせない「脳内化学物質」が十分に作れないせい！ライフスタイルを改善する必要。�’召侶鮃�状態を促す食生活・血糖値を大幅に上昇させる「高GI食品」（精白パン、白米、パスタ）制限血糖→糖尿病→アルツハイマー
・葉酸などのVitamin B群・ヘルシーな脂肪食品（オリーブオイルなど）・発酵させた大豆（みそ、納豆など）・果物や野菜は一日に7品食べる�⊃�事以外のライフスタイル・定期的な運動抗うつ剤より定期的な運動の方が、気分や認知機能の改善に効果がある。・十分な睡眠で、脳のニューロンの間のすきまにあるアルツハイマーの原因となる老廃物を洗い流す・マルチタスクは仕事の効率を低下させる。今行っていることに集中する。マルチタスクと呼ばれているものは、実際は、ごく短時間のシングルタスクの繰り返し。・ソーシャルメディアは感情をネガティブにするFBを見た後はネガティブな感情が増える。「ねたみ」「孤独感」・祈る、瞑想する、唱えるといったスピリチュアルな行為は、不安を和らげる。
2019年02月04日
経営者の持ち株比率
決算期が10月という珍しい会社の株主総会に出席。フィンテックのど真ん中企業は高すぎてなかなか投資チャンスがないので、リスク覚悟で会社再建中のカイカを購入したのだが、裏目に出て、株価は半減。
その主な理由は、1年前までの仮想通貨ブームの反動で、仮想通貨取引システムを手掛ける同社のイメージまで悪くなったこと。同社が目指しているのはフィンテック企業で、仮想通貨は構想の一部として取引システムを開発しているに過ぎないから過剰反応だと思いたいところ。
株価低迷の折、株主総会は2時間の長丁場となった。一番時間を取ったのが、「取締役の誰ひとりとして自社株を保有してない」こと。これについて質問した株主に賛同の輪が広がり、次々と同様の質問が出る。全ての質問に答えていた社長が「検討します」というものの、「買います」とは言わないものだから、最後は、「役員全員買わない理由を述べよ」ということになった。それでも、もう一人の代表取締役である専務が同様に「検討します」と述べただけで幕引きを図ろうとし、怒号が飛び交う事態に
私も全取締役が一株も保有してないというのは初めて見た。同社は経営破綻を経て前オーナーは追い出されている。現在経営しているのは、生え抜きのサラリーマン経営者と再建スポンサーから派遣された取締役＋社外取締役なのだが、自分で経営していて、自信を持っていれば、あるいは取締役になる時点で経営者になる「覚悟」として多少なりとも株を持つのが普通だ。
それが、経営陣が一株も持ってないというのは異常だ。「業績を上げるのが先決」なのは当然だが、上場企業として、株価に関心をもつことも必須。どうして、「買います」と言えないのか最後まで不思議だった。
教訓：株を買う前に、経営陣の持ち株数は確かめよう
2019年02月03日
芸人の書いた芥川賞受賞作
2015年芥川賞受賞作。お笑い芸人が芥川賞を受賞したことで話題となった。その後映画化もされたので、いまさらここであらすじを述べる必要もないだろうが、大阪出身の漫才師が主人公。どうしても、主人公と作者が重なってしまう。
題名をずっと、「花火」だと勘違いしていた。又吉直樹の最初のコンビ名は「線香花火」だったし、小説の最初の場面は熱海の花火大会だ。主人公のコンビ名は「スパークス」。なるほど、「火花」なのだけど、もちろん、それだけの話ではなくて、主人公の先輩芸人「神谷さん」を通して語られる漫才論、人生論は刺激に満ちていて、火花が飛んでいるようだ。
21：神谷さん「つまりな、欲望に対してまっすぐに全力で生きなあかんねん。漫才師とはこうあるべきやと語る者は永遠に漫才師にはなられへん。長い時間をかけて漫才師に近づいて行く作業をしているだけであって、本物の漫才師にはなられへん。憧れているだけやな。本物の漫才師というのは、極端な話、野菜を売ってても漫才師やねん」59：笑われたらあかん、笑わさなあかん「あの言葉のせいで、笑われるふりが出来にくくなったやろ？あの人は阿保なふりしてはるけど、ほんまは賢いんや。なんて、本来は、お客さんが知らんでいいことやん。ほんで、新しい審査の基準が生まれてもうたやろ。なんも考えずに、この人達阿保やなって笑っていくれてたらよかったのにな。お客さんが、笑かされてる。って自分で気づいてもうてんのって、もったいないよな」113：ネットで他人のこと人間の屑みたいに書く奴「受け流すんじゃなくて、気持ちわかるとか子供騙しの嘘吐いて、せこい共感促して、仲間の仮面被って許されようとするんじゃなくて、誹謗中傷は誹謗中傷として正面から受けたらなあかんと思うねん。めっちゃ疲れるけどな。反論慣れしている奴も多いし、疲れるけどな。人を傷つける行為ってな、一瞬は溜飲が下がるねん。でも、一瞬だけやねん。そこに安住している間は、自分の状況はいいように変化することはないやん。他を落とすことによって、今の自分で安心するという、やり方やからな。その間、ずっと自分が成長する機会を失い続けていると思うねん。可哀想やと思わへん？あいつ等、被害者やで。俺な、あれ、ゆっくりな自殺に見えるねん。薬物中毒と一緒やな。薬物は絶対にやったらあかんけど、中毒になった奴がいたら、誰かが手伝ってやめさせたらな。だから、ちゃんと言うたらなあかんねん。一番簡単で楽な方法選んでもうてるでって。でも、時間の無駄やでって」
2019年02月02日
現代の観光立国事情
TripAdvisor「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」を見ると面白いことがわかる。�５榲腓筬Ψ麩傘燹↓╋盂媚�など日本人にも人気の観光地以外に、日本人があまり行ったことのない�”�見稲荷や�タ圭標羆顱↓�箱根彫刻の森美術館などが含まれていることだ。
東京都による「東京でしたいこと(外国人）、してほしいこと(都民）」調査によれば（下図）、日本食や日本の伝統文化を楽しむなど都民が外国人旅行者にしてほしいことと外国人旅行者がしたいことが一致している項目もあれ一方、都民はあまり関心がないのに外国人旅行者がぜひ東京でやりたいと思っていることもある。後者の代表例が、「自然を感じる」「街歩き、ナイトライフ」「ウォーターフロント、夜景などの探索」で、日本人以上に活動的なのだ。
その目で見てみると、先ほどのTripAdvisorランキングのTop10中、実に9カ所が屋外中心の施設なのだ。「日本人は自国の自然を過小評価し、魅力を活かしきっていない」ことが分かる。
東京都による「東京でしたいこと(外国人）、してほしいこと(都民）」調査によれば（下図）、日本食や日本の伝統文化を楽しむなど都民が外国人旅行者にしてほしいことと外国人旅行者がしたいことが一致している項目もあれ一方、都民はあまり関心がないのに外国人旅行者がぜひ東京でやりたいと思っていることもある。後者の代表例が、「自然を感じる」「街歩き、ナイトライフ」「ウォーターフロント、夜景などの探索」で、日本人以上に活動的なのだ。
その目で見てみると、先ほどのTripAdvisorランキングのTop10中、実に9カ所が屋外中心の施設なのだ。「日本人は自国の自然を過小評価し、魅力を活かしきっていない」ことが分かる。
第8章 現代の観光立国事情233：「なぜそこが？」外国人により「発見」される現代の観光地TripAdvisor 旅好きが選ぶ！外国人に人気の日本の観光スポットランキング2018�”�見稲荷��広島平和記念資料館�５榲��づ貘膸��タ圭標羆��Ψ麩傘��Ч睫郢��╋盂媚���箱根彫刻の森美術館��姫路城235：欧米人が多く訪れる広島平和記念資料館広島県を訪問した旅行者の率（観光庁「訪日外国人消費動向調査」2017）中国人 0.9%韓国人 0.6%米国人 8.0%英国人 15.2%オーストラリア人 17.4%237：東京の自然が外国人に魅力的東京でしたいこと(外国人）、してほしいこと(都民）ギャップ(日本人＜外国人）・自然を感じる・街歩き、ナイトライフ・ウォーターフロント、夜景などの探索244：日本人は自国の自然を過小評価し、魅力を活かしきっていない明治時代を振り返れば、アーネスト・サトウらは南アルプスはじめ各地で盛んに登山を行った。上高地の魅力を発見したのもイギリス人宣教師ウォルター・ウェストン。昭和初期には中禅寺湖畔に外国人の別荘が立ち並び、そこでマス釣りやヨットを楽しんだ。本書で多数の例を述べてきたように、日本の文化や歴史に関心を持ち日本にやってきた人たちも、日本各地の自然に魅せられた。245：新宿御苑の無休化、江戸城天守・本丸の復元を新宿御苑はロンドンのハイドパークやNYのセントラルパーク相当。月曜休園、入園終了16時。皇居東御苑は江戸時代、江戸城天守や本丸があった場所。天守は1657年明暦の大火で焼失。本丸には、忠臣蔵で知られる松の廊下や、将軍の正室と奥女中1000人以上が住んだという大奥など。これだけ歴史的にドラマがある場所が、現在、建物のまったくない殺風景な大広場。
2019年02月01日
昭和の外国人旅行事業
昨日、学生時代のJTBでのアルバイトのことを書いたが、戦前戦後を通して、外国人観光客の受け入れの中核を担ったのがJTB。昭和5年（1930）には国際観光局が鉄道省の外局として誕生する。それまでは「観光など産業ではない」というのが政府の大方の見方であったが、第一次世界大戦後の不況で輸出が振るわずに、相対的に観光業の重要性が高まる。外客誘致が初めての国策になった。
戦後の米軍による占領時代は、ボロボロで超満員の日本の列車をしり目に、優雅な連合軍専用列車が走ったという。進駐軍は、戦災を逃れた優等列車の展望車、寝台車、食堂車、二等車を次々と接収して車内の改造と整備を命じたのだった。連合軍専用列車には横一文字に白線が描かれ、一目で区別できるようになっていたという。
第7章 昭和戦後の急成長197：駅のRTOと連合軍専用列車Railway Transport Office 進駐軍が必要とする旅客列車貨物列車の監視のため駅に設けられた指令室。日本の列車は、座席は破れて窓は板張り、いつも超満員で身動きが取れない。進駐軍は専用列車で別世界の移動。進駐軍は、戦災を逃れた優等列車の展望車、寝台車、食堂車、二等車を次々と接収して車内の改造と整備を命じた。
205：進駐軍兵士が訪ねた原爆ドーム原子力爆弾の威力を実感できる場所。208：原爆被害の人々を欧米人に見せたくなかった？S27 Japan The Official Guide(運輸省観光部）文庫サイズ1000pを超えるボリューム。広島市の紹介はわずか2ページ。その後の改定版でも、S29年に完成した平和記念公園も、同30年にオープンした陳列館も一切紹介していない。S39 The New Official Guide: Japan（国際観光振興会）新書サイズ1100p超。広島市の案内は4.5p公式旅行案内としては初めて原爆ドームや平和公園が記述されるが、平和記念資料館の展示にはいっさいふれていない。
