2018年12月
2018年12月31日
事実誤認に基づく「私的外交」非難
鈴木宗男議員と佐藤優が逮捕された結果、二人が進めようとしていた「日露平和条約締結と二島の先行返還」というプランは葬り去られた。日本の立場は、四島返還だが、それではロシア国内をまとめられない。そこで、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島に対する日本の主権を確認した上で二島の先行返還を目指した。
これは、当時の橋本→小渕→森内閣の方針であり、外務省事務次官の認可を受けて動いていたにも関わらず、マスコミは二人を悪者にした報道を垂れ流し、外務省は二人は「私的外交」を展開したとして切り捨てる。鈴木宗男氏が、当時の外務省幹部の反対を押し切り、杉原千畝の名誉回復をしたことの意趣返しではないかとの説もある。
現在、再び盛り上がってきている日露平和条約に対する期待。その枠組みは、20年前に歴代内閣の下で、鈴木宗男議員と佐藤優氏が行おうとしてきたことそのまま。小泉政権で田中眞紀子が外相になったことで、「失われた20年」になってしまった。
第5章 「時代のけじめ」としての「国策捜査」365：鈴木宗男氏が、当時の外務省幹部の反対を押し切り、杉原夫人を外務省飯倉公館に招き、謝罪この話は、イスラエルやユダヤ人団体ではよく知られている。内閣官房副長官時代の鈴木が小渕総理訪米に同行したとき、シカゴの商工会議所会頭が「杉原ビザ」の写しを示し、「私はこのビザで救われました。あなたがその杉原さんの名誉回復をしてくれたのですね」と話しかけてきた。367：西村検事「実のところ、僕たちは適用基準を決められない。時々の一般国民の基準で適用基準は決めなくてはならない。僕たちは、法律専門家であっても、感覚は一般国民の正義と同じで、その基準で対処しなくてはならない」370：特捜に逮捕されれば、起訴、有罪もパッケージ「万一無罪になっても、こっちは組織の面子を賭けて上にあげる。十年裁判になる。最終的に無罪になっても、被告人が失うものが大きすぎる。国策捜査で捕まる人は頭がいいから、みんなそれを読みとって、呑み込んでしまうんだ」372：時代のけじめ「うちが大蔵をあげる事件をしなければ、金融と財政の分離もなければ、大蔵省の財務省への再編もなかった」374：鈴木宗男氏は「政治権力をカネに替える腐敗政治家」として断罪されたこれは、ケインズ型の公平分配の論理からハイエク型の傾斜分配の論理への転換を実現する上で極めて好都合な「物語」。鈴木氏の機能は、構造的に経済的に弱い地域の声を汲み上げ、それを政治に反映させ、公平分配を担保することだった。378：事実誤認に基づく「私的外交」非難鈴木氏、東郷氏、私の考え方は、歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島に対する日本の主権を確認した上で平和条約を締結するという基本路線から外れたことは一度もない。ただ、ロシアと現実的に噛み合う交渉について種々の工夫をしたに過ぎない。この工夫なくして外交は成り立たない。第6章 獄中から保釈、そして裁判闘争へ496：真の勝利者は、竹内行夫外務事務次官をはじめとする現外務省執行部外務官僚は、外交政策の遂行に資するためだけでなく、外務官僚にとって都合のよい状況を作り出すために鈴木宗男氏の政治力を最大限に活用した。しかし、ひとたび鈴木氏が外務省にとって厄介な存在になると、それをありとあらゆる方法を用いて排除した。テルアビブ国際会議への学者などの派遣について、外務省事務方のナンバー・ワン、ナンバー・ツーである事務次官、外務審議官の決済サインのある決裁書が外務省から消え去ってしまう。
2018年12月30日
国策捜査
「国策捜査」という言葉が一般的になったのは、この本がきっかけであったらしい。それまでも「国策捜査」はあったわけだが、それをテーマに本を書いた人はいなかった。
きっかけは、当時、「総理官邸主導で進められていた2000年までに日露平和条約を締結するという国策」であった。ここで中心になって活躍したのが、北海道選出の鈴木宗男国会議員。そして彼にロシアの専門家として重宝されたのが外務省のロシア分析官だった佐藤優（ノンキャリア）。二人は抜群のネットワークと行動力で成果を上げていくが、これを快く思わなかったのが外務省のキャリア官僚。
国後島でのディーゼル発電所建設は外務省公認での倉井ロシア支援室長の「仕込み」であったにも関わらず、「検察は鈴木氏の圧力で本来不必要なディーゼル発電機を国後島に供与したとの筋書きを作ろうとし、のみならず、一部外務省職員がその筋書きに沿った証言をする」（ｐ228）。
結果、2002年5月14日に佐藤は背任容疑で逮捕され、さらに、7月3日偽計業務妨害容疑で再逮捕される。勾留は512日間にも及ぶことになるが、これは途中で保釈の機会があったものを、佐藤自身が勾留延長を申し出たからだ。
第4章 「国策捜査」開始274：接見等禁止措置証拠隠滅の可能性がある被疑者・被告人に関しては、弁護人以外との面会、手紙、文章（新聞・雑誌・書籍を含む）のやりとりを禁止する措置である。結局、私は512日間の全勾留期間中、接禁措置が解除されなかった。276：情報屋の基礎体力~まずは記憶力私の場合、記憶は映像方式で、なにかきっかけになる映像が出てくると、そこの登場人物が話し出す。書籍にしても頁がそのまま浮き出てくる。しかし、きっかけがないと記憶がでてこない。294：検察は基本的に世論の目線で動く小泉政権誕生後の世論はワイドショーと週刊誌で動くので、このレベルの「正義」を実現することが検察にとっては死活的に重要になる。313：守られなかった情報源外務省が「門外不出にする」といった書類が検察に渡されたことは、私にとって大きなショックだった。因みに後に外務省は東郷氏の報償費に関する領収書も検察に提出したが、私の場合と異なり、それらにおいては情報源の部分に黒塗りがなされていた。とにかく、これで外務省が私のみでなく、私の情報源も守らないことが明らかになった。334：自ら申し出た「勾留延長」外に出てもマスコミに追われるだけだ。さらに、外国人の友人たちに状況を説明しなくてはならないが、その中には気の短い連中もいるので、すぐには会いたくなかった。また、獄中では、難解な神学書・哲学書の理解が外界では考えられないほど深くなる。戦前、無政府主義者の大杉栄が「一犯罪、一語学」といって獄中で各国語を次々とマスターしていったが、神学部を離れてから疎遠になっていた古典ラテン語、古典ギリシャ語の復習もしたかった。345：鈴木宗男氏の逮捕今回の国策捜査が鈴木宗男氏をターゲットとしていたことは疑いの余地がない。私はその露払いとして逮捕されたのである。同時に検察は私を逮捕すれば、外務省と鈴木宗男氏を直接絡める犯罪を見つけ出すことができるとの強い期待を抱いていた。しかし、残念ながらその期待は適わなかった。348：内藤国夫『悶死 ― 中川一郎怪死事件』（草思社1985）「鈴木さんのパーソナリティーがよくでているね。要するに気配りをよくし、人の先回りをしていろいろ行動する。そして、鈴木さんなしに物事が動かなくなっちゃうんだな。それを周囲で嫉妬する人がでてくる。しかし、鈴木さんは自分自身に嫉妬心が希薄なので、他人の妬み、やっかみがわからない。（中略）中川夫人の鈴木氏に対する感情と田中眞紀子の感情は瓜二つだ。本妻の妾に対する憎しみのような感情だ。嫉妬心に鈍感だということをキーワードにすれば鈴木宗男の行動様式がよくわかる」（西村検事）
2018年12月29日
外務省のラスプーチンと呼ばれて
先週のタイ出張に持参した。著者そして鈴木宗男国会議員が特捜局に逮捕された当時はそれほどこの事件に関心がなく、深く知らなかった。
本書を読んで、国策捜査の怖さを知ると同時に、特捜を動かしているのが法律ではなく「世論」であることに驚愕した。いや、正確にはなんらかの「法律」はあるのだが、その適用の基準が「世論」によって動く。そして、ほとんどの国民は自分のこと以外は深く考えず、そのくせ嫉妬心や野次馬根性は持ち合わせている。
簡単に言えば、事件の真相は、外務省内部の「派閥抗争の自己目的化」であったということ。
本書を読んで、国策捜査の怖さを知ると同時に、特捜を動かしているのが法律ではなく「世論」であることに驚愕した。いや、正確にはなんらかの「法律」はあるのだが、その適用の基準が「世論」によって動く。そして、ほとんどの国民は自分のこと以外は深く考えず、そのくせ嫉妬心や野次馬根性は持ち合わせている。
簡単に言えば、事件の真相は、外務省内部の「派閥抗争の自己目的化」であったということ。
77：外務省の場合、田中真紀子外相の登場により、組織が弱体化したことで、それがこれまで潜在していた省内対立を顕在化させることにより、機能不全を起こした組織全体が危機的な状況へと陥った。その際、外務省は、そもそも危機の元凶となった田中真紀子女史を放逐するために鈴木宗男氏の政治的影響力を最大限に活用した。そして、田中女史が放逐された後は「用済み」となった鈴木氏を整理した。この過程で鈴木宗男氏と親しかった私も整理された。
外交機密があるので、外務省の仕事は国民からは見えにくい。外部からの統制も効きにくいので、内輪の論理で動きやすい組織になる。事件を経て、現在の外務省は変わったのだろうか？
19：ゴルバチョフ派の党官僚「ペレストロイカ（改革）」、「グラースノスチ（公開性）」とか「人類共通の価値」というゴルバチョフが演説で使う用語を多用するが、ことばが浮いている。ゴルバチョフ派の党官僚には信念がなく、時流を見るのに長けた連中が多すぎる。霞が関の小狡い官僚に似ている。第1章 逮捕前夜48：私なりの計算この種の事件報道は、検察情報を中心に組み立てられる。この基本構造は、捜査の対象となった人物がいくら説明しても、あがいても変わらない。仮に現場の記者とよい関係を作ったとしても、私にとって都合のよい報道がなされる可能性はほとんどない。しかし、記者たちと険悪な関係になれば、報道が極端に感情的になり、私にとってますます不愉快な事態が生じる。そこで私はいちばんしつこく追いかけてくる記者を大切にすることにした。50：政界が「男のやきもち」の世界であることを私はロシアでも日本でも嫌というほど見てきたが、鈴木氏には嫉妬心が希薄だ。他の政治家の成功を目の当たりにすると鈴木氏はやきもちをやくのではなく、「俺の力がまだ足りないんだ。もっと努力しないと」と本気で考える。裏返して言えば、このことは他人がもつ嫉妬心に鈴木氏が鈍感であるということだ。この性格が他の政治家や官僚がもつ嫉妬心や恨みつらみの累積を鈴木氏が感知できなかった最大の理由だと私は考えている。第2章 田中真紀子と鈴木宗男の闘い67：外務省幹部「田中さんは君のことを『ラスプーチン』と呼んでいて、『ラスプーチンを早く異動させろ』と言うんだ。田中さんは『世の中には、家族、使用人と敵しかいない』と公言しているんだけど、君や東郷に対する目つきは敵に対する目つきだ」75：「スクール」と「マフィア」外務省には、東大閥、京大閥、慶応閥といったいわゆる学閥は存在しない。代わりに、外務省用語では「スクール」と呼ばれる、研修語学別の派閥が存在する。それらは、「アメリカスクール（英米派）」、「チャイナスクール（中国派）」、「ジャーマンスクール（ドイツ派）」、「ロシアスクール（ロシア派）」などに大別される。さらに、外務省に入ってからの業務により、法律畑を歩むことの多かった人々は「条約局マフィア」、経済協力に関しては「経協マフィア」、会計部門の専門家は「会計マフィア」というような派閥が存在する。97：田中眞紀子外相「外交についてブリーフしようとしても時間をつくってくれない。そもそもサブスタンス（外交の実質）に関心がない。外務省を攻撃して、国民的人気を得ることと周囲に言うことを聞く人間を集める人事にしか関心がない」149：国後島のプレハブ建築「友好の家」入札問題外務省員が政策に対する理解を求めるために与党の有力政治家に内部文章を渡すことはときどきある。しかし、「革命政党」である共産党に外務省から秘密文章が流れるというのは、別次元の問題だ。それは外務省内部の権力抗争に勝利するためには共産党と手を握ってもよいというところまで一部外交官のモラルが低下したということを意味していた。田中眞紀子女史の失墜を図るためのさまざまな情報戦により、文章流出に対する抵抗感が薄れていたのだろう。「トリックスター」の遺した思わぬ後遺症で、外務省の地下に封じ込められていた憤懣、嫉妬、怨念などどろどろしたものが全て吹き出してきたのである。151：小泉政権による変貌�ヽ宛鯆�流の変化「トリックスター」田中眞紀子女史が外相をつとめた9ヵ月の間に、冷戦後存在した三つの外交潮流は一つに、すなわち「親米主義」に整理された。田中女史の、鈴木宗男氏、東郷氏、私に対する敵愾心から、まず「地政学論」が葬り去られた。それにより「ロシアスクール」が幹部から排除された。次に田中女史の失脚により、「アジア主義」が後退した。「チャイナスクール」の影響力も限定的になった。そして、「親米主義」が唯一の路線として残った。�▲櫂團絅螢坤犖従櫃砲茲襯淵轡腑淵螢坤爐旅畦�田中女史が国民の潜在意識に働きかけ、国民の大多数が「何かに対して怒っている状態」が続くようになった。怒りの対象は100%悪く、それを攻撃する世論は100%正しいという二項図式が確立した。ある時は怒りの対象が鈴木宗男氏であり、ある時は「軟弱な」対露外交、対北朝鮮外交である。�４盈住拉曚龍�化官邸への権力集中は、国会の中央官庁に与える影響力を弱め、結果として外務官僚の力が相対的に強くなった。ただし、鈴木宗男氏のような外交に通暁した政治家と切磋琢磨することがなくなったので、官僚の絶対的力は落ちた。
2018年12月28日
数字は人格
日本の中小企業政策において、とかく銀行が悪者にされがちだが、私はそれには与しない。客観的に見て、日本ほど銀行が中小企業へ融資している国は珍しい。しかも、驚くほどの低金利で融資している。これほど、リスクリターンの合わない融資をしている国を他に知らない。その分、銀行の経営指標は他国に比べて悪いので、銀行の時価総額も低い。
したがって、これ以上「中小企業に貸せ」と政府が言うのは将来の不良債権の原因になるので、止めるべきだろう。その昔、石原都知事の肝いりで中小企業融資の銀行を都の予算で作り、瞬く間に数千億円の不良債権の山を築いたことがあった。審査のノウハウを持たずに貸金業を行なえばどうなるか、火を見るよりも明らかなことを、都の税金を使って不必要な証明をした。
実際は、銀行はしっかり経営している会社には貸してくれる。ほとんどの会社は、事業計画もなければ、社長が経営状況を数字を正確に踏まえたうえで簡潔に説明ができない。そんな会社に金を貸せばどうなるか、逆の立場で考えてみればすぐわかることだ。
小山社長が勧めているのは、「銀行がお金を貸したくなる体質の会社」にする三点セット。
�〇�業計画書
��経営計画発表会
�６箙塰�問
多くの会社は、会社の方針が社長の頭の中だけにあるので、社員がバラバラの方向を向いている。トップの方針が浸透していない会社に、銀行は怖くて貸せない。事業計画書という「会社のルールブック」があれば「聞いていなかった」という言い訳は通じない。また、社員だけでなく、社長も縛られるので、社長がコロコロ言うことが変わらないので、社員も安心して仕事ができる。
多くの会社は、会社の方針が社長の頭の中だけにあるので、社員がバラバラの方向を向いている。トップの方針が浸透していない会社に、銀行は怖くて貸せない。事業計画書という「会社のルールブック」があれば「聞いていなかった」という言い訳は通じない。また、社員だけでなく、社長も縛られるので、社長がコロコロ言うことが変わらないので、社員も安心して仕事ができる。
プロローグ：出張中の片腕が中国で緊急入院〜1500万円で飛行機をチャーターモリチュウ（社印28人）は月商の4-5か月分の現預金を持っていた（250M)38：投資先は「お客様」「社員教育」「インフラ整備」の３つだけ�，�客様の数を増やす67：銀行がお金を貸したくなる会社�〇�業計画書（会社のルールブック）��経営計画発表会�６箙塰�問68：「定刻どおりに始まっただけで融資する」（地銀支店長）「経営計画発表会」に銀行支店長も招待・社長はウソをつかずに社員に本音で語りかけているか・社員はあくびをせずに真剣に耳を傾けているか・時間に対する姿勢（定刻どおりに始まり、定刻どおりに終わる）＊銀行が信用するのは約束を守る会社。時間を守らない会社は約束も守らない。69：絶対うまくいく銀行訪問のコツ・毎月訪問・銀行が暇な16-19日・午前中に20分だけ(長居しない）116：P/Lの逆算で会社を守る・経営計画作成は、来期の利益を決めることからスタートする・経常利益→減価償却費（有形固定資産の15%）→人件費→粗利益（人件費/労働分配率）→経費127：ひとつだけ赤字事業を温存赤字事業は人を育てる。社員に危機感を持ってもらうための、必要な損。130：新規事業は赤字期にやってはいけない赤字の現業から社長が目を離したり、エース級がいなくなったりすれば、赤字はますます拡大する。新規事業をやりたいなら黒字の時に限る。しかも、社長やエース級社員が一か月いなくても業績が下がらない体制が整っていることが条件。136：営業マンの訪問回数、滞在時間が長いと売上もアップそもそも量が足りていない人が圧倒的に多い。営業は、質より量。169：社員は「仕事を風景に」するのが得意何も考えずに前例を踏襲する。190：顧客データは、お客様ごとに情報を整理営業マン単位の日報に記録している会社がほとんど。顧客データが人に張り付いていると、人が移動した時やチームでアプローチしていくときに困る。218：社員に実行計画を作らせる自分で数字を計算して書き込むから、その計画にコミットする。達成できなければ言い訳は通用しない。たまたま神風が吹いたからでも達成できれば、きちんと評価。
2018年12月27日
会議の「フォーマット化」
どこの会社でも会議をやっている。特に、日本企業は会議が多いといわれる。責任の所在が明確でないので、組織全体のコンセンサスを取るのに時間が掛かるのが一因だ。
なのに、効率化しようという意識が低い。以前、大学で働いていた時、会議の終了時間が決まってないことに驚いたが、企業でもそんな会社がごまんとある。終了時間が決まってないので、緊張感が薄れ、会議の中身も薄くなる。
「多くの会社は、賞はあるけれど罰がない。だから暗い」というのが面白い。
「武蔵野には、賞もあれば罰もある。仮に、クレームが原因で降格になっても、復活するしくみがある」（p155)
つまり、ルールが明確で、復活も可能だから、降格になっても暗くならないのだ。罰のルールがなければ、いつ何の理由で罰せられるか分からないから、独裁国家のようになってしまう。
「武蔵野には、賞もあれば罰もある。仮に、クレームが原因で降格になっても、復活するしくみがある」（p155)
つまり、ルールが明確で、復活も可能だから、降格になっても暗くならないのだ。罰のルールがなければ、いつ何の理由で罰せられるか分からないから、独裁国家のようになってしまう。
136：会議は、同一フォーマットに基づいて報告するフォーマット化しておけば、情報の漏れを防げるほか、「必要なこと」だけを端的に報告できる。武蔵野の会議フォーマット�／�字（実績報告）�△�客様からの声（とくに、クレーム）��ライバル情報（どんなライバルが、どういう体制で、どういう営業攻勢をしかけているのか）�に槁堯Ε咼献優好僉璽肇福次∋埔譴両霾鵝兵腓箸靴道兎�先、取引先の情報）�ゼ�分・スタッフの考え（お客様やライバルの動向を踏まえていない「自分の考え」は役に立たないので、最後に述べる）150：悪いことを報告できるしくみ社員が良いことも、悪いことも、包み隠さずに報告しなければ、正しい決定ができない。� 屬�客様からのクレームの責任は、社長にある」と明言�▲�レームの「報告・連絡」を怠った社員は、賞与を半額にする��社員との距離を縮め、「報告しやすい雰囲気」をつくる�に棆擦鯤垢�出せるように、会議の最後に「質問タイム」を設ける�タ�賞必罰のルールを設け、敗者復活ができるようにする
2018年12月26日
PDCAはDから回す
新しいことを始める時は「見切り発車」でいい、という。やったことがないことの計画を正確に立てることなど不可能だからだ。だから、見切り発車でも「すぐに実行に移す」方が重要。その後、出た成果を見て改善していく。あるいは、止める。
「チェックは、チェックリストを使って、あらかじめ決められた日に行う」というのも面白い。決めたことが実行されているかどうか、抜き打ちで調べたくなるが、抜き打ちだと諦めてしまう社員が出てしまうという。決められた日に、決められたことがチェックされるなら準備ができる。
チェックリストに基づかないと、その場で気づいたことを指摘することになり、「追求」になってしまう。社員はそれまで聞いてないことで追及されると、やる気をなくす。新たに気づいた点は、次回からチェックリストに加える。
「チェックは、チェックリストを使って、あらかじめ決められた日に行う」というのも面白い。決めたことが実行されているかどうか、抜き打ちで調べたくなるが、抜き打ちだと諦めてしまう社員が出てしまうという。決められた日に、決められたことがチェックされるなら準備ができる。
チェックリストに基づかないと、その場で気づいたことを指摘することになり、「追求」になってしまう。社員はそれまで聞いてないことで追及されると、やる気をなくす。新たに気づいた点は、次回からチェックリストに加える。
第2章 PDCAはDから回すことを決定する72：新しいことを始める時は、「見切り発車」でいい〇「うまくいったこと」は、そのまま次回のPに✖「うまくいかなかったこと」は止める△「その中間」は、改善（A）を加えて、次回のPに80：「嫌々ながら、しかたなくやる」しくみ・社員は面倒なことはしたくない。・「誰がやるのか」が自動的に決まる仕組み。88：チェックは、毎月、決められた日に行う・抜き打ちはNG・チェックリストを使う（多くの社長が行っているのは「追求」）118：「やりたいこと」より、「やらないこと」から決める武蔵野の「やらないこと」�〜換馘験�を狙わない（地域密着）�⊆勸�が辞めても補充しない（欠員の発生は不必要な仕事を捨てるチャンス）��社員の給与を秘密にしない（公開することで社員の発奮材料になる）�ぅ�レームの責任を追及しない（クレーム発生の責任は社長）�ゼ卞眄響櫃魍杏瑤飽兮�しない（社員全員参加の「環境整備」で社員の感性を養う）�Ψ茲泙辰心�を持たせない（社員の安心を捨てる→戦う意識）130：PDCAを回す時は、Learnを意識する・人間は、社長が命令しても、変わらない。自分で気づいてはじめて変わる。・PDCAサイクルは、業務改善のプロセスであると同時に、社員に「今までと同じやり方、今までと同じ考え方、今までと同じ人では、成長しない」ことを気づかせるための「学びのプロセス」でもある。��Plan：��Do：計画通り実行��Check：仮説通りの結果が出たかを検証��Learn：検証過程で、学びを得る��Assessment：検証の結果について、評価する��Action：評価の結果、仮説通りなら継続、仮説と違っていれば改善
2018年12月25日
チェックの仕組みが9割
「計画は、デタラメに立てていい」というのが面白い。その意図は、詳細に立てようが大雑把に立てようが、計画通りに行くことなどないので、とにかく実行することが大事という意味。計画そのものに時間を掛けるより、実行して、出た結果をもとに対策を練って、次の計画に反映させる。要は、PDCAのサイクルを早く回すことが大事ということ。
私もあちこちの会社を見てきたが、「現状の延長線上では、どんなに頑張っても結果は出ない」ということに気づかないのには驚く。要因は大体二つある。
一つは、過去の成功体験に縛られていること。「昔はこのやり方でうまくいった」という経験から、そのやり方を繰り返す。まるで、日露戦争を白兵戦で制した（それも多大な犠牲を払ってだが）日本陸軍が、戦う相手も兵器も違う大東亜戦争で突撃を繰り返して犬死していったようだ。
もう一つは、責任を取る人がいないこと。日本の会社組織は責任体制が曖昧なことが多く、新しいことにチャレンジして失敗したときの責任をとれる人がいない。そのため、従来の延長線上のことしかできなくなる。おまけに、チャレンジに成功して成果を上げても直ちに昇格や昇給に結びつくわけでもないので、挑戦するインセンティブが低い。
会社方針に沿って合理的に挑戦している限り、結果が悪くても評価を下げないことをルール化しなければならない。そして、新事業の責任はトップが取るしかない。
私もあちこちの会社を見てきたが、「現状の延長線上では、どんなに頑張っても結果は出ない」ということに気づかないのには驚く。要因は大体二つある。
一つは、過去の成功体験に縛られていること。「昔はこのやり方でうまくいった」という経験から、そのやり方を繰り返す。まるで、日露戦争を白兵戦で制した（それも多大な犠牲を払ってだが）日本陸軍が、戦う相手も兵器も違う大東亜戦争で突撃を繰り返して犬死していったようだ。
もう一つは、責任を取る人がいないこと。日本の会社組織は責任体制が曖昧なことが多く、新しいことにチャレンジして失敗したときの責任をとれる人がいない。そのため、従来の延長線上のことしかできなくなる。おまけに、チャレンジに成功して成果を上げても直ちに昇格や昇給に結びつくわけでもないので、挑戦するインセンティブが低い。
会社方針に沿って合理的に挑戦している限り、結果が悪くても評価を下げないことをルール化しなければならない。そして、新事業の責任はトップが取るしかない。
第1章 「PDCA」が回る会社をつくることを決定する35：計画は、デタラメに立てていい�．妊織薀瓩焚樟發亡陲鼎い新弉茵瞥�益目標）を立てる��計画に沿って、とにかく実行してみる��「計画」と「実績」との差の要因を検証する�ず垢鯔笋瓩訛从�を練り、次の計画に反映＊社長の一番大切な仕事は「差」を埋める対策を練ること！44：社員に「無理だ」と理解させるために、高い目標を立てる「今と同じやり方」「今と同じ考え方」「今と同じ人」現状の延長線上では、どんなに頑張っても結果は出ない。「新しいこと」「今までと違うこと」を始める。48：「業界の非常識」を取り入れる変革をするには「新しいこと」に取り組まなければならない。・ほかの人は成果を出しているけれど、自分はまだやっていないこと・他の業界では常識でも、自分の業界ではまだ常識になっていないこと・すでにあるものの組み合わせを変えること54：インプットはデジタルで、アウトプットはアナログで相手の心に響くかどうか。アクションが伴うかどうか。
2018年12月24日
災害が変えた幕末史
鳥羽伏見の戦いなど、戊辰戦争初期の戦いは薩長軍が主力だったが、上野戦争以降後半の戦いを制したのは佐賀藩が持つアームストロング砲だった。佐賀藩はミニ西洋工業国家というほうほど工業化が進んでおり、ペリーの浦賀来航の3年前に日本初の反射炉建設を建設しており、自前の鋼でアームストロング砲を製造していたという。
上野戦争ではアームストロング砲が加賀藩邸（現在の東大）に備え付けられ、不忍池を飛び越えて、彰義隊が立てこもった寛永寺(現在の上野公園）に砲弾を打ち込み1日で戦いを終わらせた。その後の会津戦争でも、小田山からアームストロング砲が火を噴き、鶴ヶ城は落城した。
維新当時佐賀藩で活躍したのが、江藤新平や大隈重信である。佐賀では、武雄市にしか行ったことがないので、じっくり滞在してみたい。
第4章 災害が変えた幕末史124：佐賀藩1828年のシーボルト台風の被害から立ち直るために、佐賀藩に西洋文明を重視する改革派勢力が登場。これが日本国内に佐賀藩と言うミニ西洋工業国家を誕生させ、この権力体が、のちに東芝の元祖となる田中久重を雇い、大砲製造を命じるなどあらゆる西洋文物の国産化を試させた。129：江戸時代の医師が残した地震知識「地震は横にゆるるものにあらず、波の打つように、うねるもの也」（1793寛政地震『谷村元��純甫日記』）この時点で、谷村はまだ大洲藩の正式な範囲ではない。市井の医者であった。このように町や村の人々の知識が世界的に見て、べらぼうに高いのが江戸社会の特徴であった。日本人はこれまで、その知的遺産の恩恵をうけてきた。第5章 津波から生きのびる知恵152：私が防災史を研究する理由私の母方の家系は、徳島県の牟岐というところから出ている。そこは日本有数の津波常襲地である。大津波が何度もきて、そのたびに村人は死体の山を築き、津波から逃げきれた者だけが子孫を残してきた土地である。私のDNAも、猛烈な大津波をかいくぐって、生きのびてきたものである。
2018年12月23日
先人に学ぶ防災
「すべての真の歴史は現代史である」
との言葉を残したイタリア人歴史哲学者のベネディット・クローチェは、1883年のイスキア地震で家族全員が崩壊した建物の生き埋めになり、両親と妹を亡くしている。残された兄弟は伯父に引き取られて育てられたそうだ。
「人間は現代を生きるために過去をみる。すべて歴史は現代人が現代の目で過去を見て書いた現代の反映物だから、すべての歴史は現代史の一部と言える。歴史はその時代の精神を表現したもの、生きる人間のものである」
地震で家族を亡くしていなければ、こうした考えは出てこなかったかもしれない。同様に、天災は歴史にさまざまな影響を与えてきた。天正地震（1585）と伏見地震(1596）がなければ、秀吉の天下が続いていた可能性が高いという。
まず、天正地震がなければ、徳川家康は二か月後に豊臣秀吉の大軍の総攻撃をうけるはずだった。兵力は秀吉のほうが圧倒的に優勢で、家康は「滅亡」も覚悟していたという。それが、地震の影響で総攻撃は中止され、家康は生き残り、力を蓄えた。
伏見地震では、完成したばかりの伏見城が全壊し、明との交渉のため国中から城に集められていた美人500人が下敷きになって死亡している。秀吉は、以前にもまして豪華な城を再建しようとしたうえ、せっかく明との講和がまとまりかけたのに朝鮮に再出兵するといいだした。度重なる普請での負担と、朝鮮出兵で不満を募らせていた大名はこれに呆れた。こうして、豊臣政権崩壊の流れができた。
地震で家族を亡くしていなければ、こうした考えは出てこなかったかもしれない。同様に、天災は歴史にさまざまな影響を与えてきた。天正地震（1585）と伏見地震(1596）がなければ、秀吉の天下が続いていた可能性が高いという。
まず、天正地震がなければ、徳川家康は二か月後に豊臣秀吉の大軍の総攻撃をうけるはずだった。兵力は秀吉のほうが圧倒的に優勢で、家康は「滅亡」も覚悟していたという。それが、地震の影響で総攻撃は中止され、家康は生き残り、力を蓄えた。
伏見地震では、完成したばかりの伏見城が全壊し、明との交渉のため国中から城に集められていた美人500人が下敷きになって死亡している。秀吉は、以前にもまして豪華な城を再建しようとしたうえ、せっかく明との講和がまとまりかけたのに朝鮮に再出兵するといいだした。度重なる普請での負担と、朝鮮出兵で不満を募らせていた大名はこれに呆れた。こうして、豊臣政権崩壊の流れができた。
第1章 秀吉と二つの地震10：天正地震は近世日本の政治構造を決めた潮目の大地震（1585）この地震が起きなければ、徳川家康は二か月後に豊臣秀吉の大軍の総攻撃をうけるはずであった。兵力は秀吉のほうが圧倒的に優勢。（中略）家康は「滅亡」の可能性さえ視野にあった。13：秀吉は徳川征伐の進発期日を「正月15日」と決めていた「地震が起こった当初、関白はかつて明智のものであった近江の湖のほとりの坂本の城にいた。だが彼は、その時に手掛けていたいっさいを放棄し、馬を乗り継ぎ、飛ぶようにして大坂へ避難した」（宣教師フロイス）32：豊臣政権崩壊の引き金は伏見地震(1596）地震後、せっかく明との講和がまとまりかけたのに朝鮮に再出兵するといいだした秀吉に人々はあきれた。第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火39：富士山は噴火するのか最後の大々的な噴火は1707年。旧暦10月4日に宝永地震がおきて激震と大津波が太平洋岸を襲い、その直後、11月23日に富士山が噴火。44：富士山が噴火する時は5年前から軽い地震が増え、二ヵ月前から富士山中だけの火山性地震が毎日続く。46：『日本書紀』から現代までに、これまで9回の南海トラフ地震最近、南海トラフが動いたのは1944年（昭和東南海地震）と1946年（昭和南海地震）。南海トラフは90年内に2回起きたことはない。
2018年12月22日
新たに始まる世界で、君はどう生きるか
ホリエモンと、マスコミにも露出の多いメディアアーティスト落合陽一による共著。対談ではなく、章ごとに前章の内容を引き継いで、交替で書かれている。落合陽一のことはよく知らなかったが、筑波大学准教授の傍ら「大学発ベンチャー」ピクシーダストテクノロジーを経営しているとのこと。同社はNEDOのSTSに採択され、2017年11月に6.45億円の資金調達をした。
内容的には、ホリエモンは重要ではあるがいつもの主張の繰り返し。私も、公営サービス民営化には賛成だし、一方、大学の無償化には反対なので（むしろ、値上げしてレベルアップさせるべき）、何度でも繰り返してほしい。
本論からそれるが、落合氏は、筑波大学での入学試験教官を「経済価値の無駄」と切り捨て。私も香川大学在職中にやったのだが、苦行以外の何物でもない。2日間朝から晩まで試験会場内を見回るだけ。これを全国に80カ所以上ある国立大学（私立もだろう）の「人的経済価値」が高いはずの教授達が、時給1000円のアルバイトで十分なことを隔年くらいでやるのである。
落合氏は、ノーベル賞学者でもやっているというが、本当か
122堀江：代替不可能な価値は、仕事ではなく趣味で生み出せ「遊びのプロになれ」本気で遊ぶように働く人だけが生き残っていける。嫌々働いていたところで、必死になって働いている人に負けてしまう。好きなことに没頭しているうちに、唯一無二になる。152落合：貨幣ではなく、信用を担保にした新たな経済芝麻信用（中国）の先進性166堀江：税金で賄う範囲を狭めていくべき地下鉄、バス、水道など民営化236堀江：自分の頭で思考するあなたが問うべき対象は未来ではなく他でもない「自分」自分が求めているものは何か、やりたいことは何か。
2018年12月21日
水着を捨てて北へ行け！
5年ぶりのタイ出張。ふと思い立ち、ガイドブックを図書館で借りてから行こうと思ったが、各出版社から数冊出ているタイのガイドブックは全て貸し出し中だった！今は乾季で、旅行シーズンなのかもしれない。それにしても年末に
と思ったが、今の旅行の主役は国内も海外も年金生活者なので、関係ないのだ。一冊だけ残っていたのが本書。11年前の本だから、ガイドブックとして役に立つかどうかは甚だ疑問。しかし、無いよりいいかと思い借りてみたら、読み物として結構面白い。
まず、本の「合言葉」なるものがあり、それが「水着を捨てて北へ行け！」。
「バンコクの南、パタヤーあたりも場所によっては昼間からR指定にしたくなるような光景もあったりするようで、いいですよ、欲望に従順なのも、それもタイのお国柄ではありますから。でも、そればかりでは・・・タイの深みも知っていただきたいのですよ、出来ることなら。タイは北ですよ。生まれも育ちも北だったんです、タイは」
4：西欧支配を受けていないアジアの国は日本とタイの二国だけ「摩擦」は文化を発酵させるが、「服従と支配」は文化を根絶やしにし、荒廃させるだけ。107：1898年創立ジムカーナクラブチェンマイは日本以上に長いゴルフの歴史ある街日本最古のゴルフ場は1903年に神戸の山の上にイギリス人の茶商アーサー・グルームが作った神戸ゴルフ倶楽部。127：鬣のある犬タイ犬ついこの間まで、この街にペットと呼ばれる犬などいなかった。犬はみな街に棲んでいた。野良犬といわれるほど野放しでもなく、かといってペットでもない。食事は飼い主だと意識している人たちが与えている。
2018年12月20日
9割の社長はお金の流れを知らない！
「P/Lは見解。B/Sは現実」は名言。
P/L上利益が出ていても、現金があるとは限らない。P/Lの数字は「見解」に過ぎない。一方で、B/Sの数字は「現実」。P/Lで黒字でも、資金繰りができなければ潰れる。2008年に倒産した上場企業のうち、じつに2/3が「黒字倒産」だったらしい。
P/L上利益が出ていても、現金があるとは限らない。P/Lの数字は「見解」に過ぎない。一方で、B/Sの数字は「現実」。P/Lで黒字でも、資金繰りができなければ潰れる。2008年に倒産した上場企業のうち、じつに2/3が「黒字倒産」だったらしい。
出張精算で、「一定以上の売上を上げないと、全日当が出ない（半日当）」というのも明確でいい。実費である交通費は出したうえで、予定した成果が上がらなければ日当は半分にするわけだ（後日、売上が上がれば全日当に戻す）。ルールが明確なので、この方が担当者の判断で、出張に出やすい。
「2期連続赤字になった部門長は更迭される」というのも、ルールが明確だから、やきもきしなくていい。会社で前代未聞と言うなら本人も悩むだろうが、社則でそう決まっているなら諦めもつく。何が悪かったのか反省して、また挑戦すればいいだけなのだから。
「2期連続赤字になった部門長は更迭される」というのも、ルールが明確だから、やきもきしなくていい。会社で前代未聞と言うなら本人も悩むだろうが、社則でそう決まっているなら諦めもつく。何が悪かったのか反省して、また挑戦すればいいだけなのだから。
はじめに：社員が不正をするのは、社長がバカだから「武蔵野」は、「不正ができない会社」社員は信用しているが、仕事（社長の決定を実施しているか）は信用してない。だから、社員の仕事をチェックする仕組みをつくる。15：数字を経営に生かすための仕組み社長がお金の流れを見ていなければ、会社は潰れてしまう・定期的に経理担当者を入れ替える・経理課長に9日間の有給休暇を与える・経理に正確さを求めない・部門長に数字を管理させる・月次試算を1日で出す66：出張精算一定以上の売上を上げないと、全日当が出ない（半日当）。後日、売上が上がれば全日当に戻す。98：P/Lは見解。B/Sは現実。会社は、現金にはじまり、現金に終わる。144：部門長は、2年連続赤字になると更迭される204：変化は、わが社の都合を待ってくれない。変化は、わが社の都合を置いていく。
2018年12月19日
世界の繁栄を取り戻すために
ビル・エモット氏は、1980年代半ばにThe Economist誌の東京支局長を務めた。その後、1990年のバブル経済絶頂で出版された『日はまた沈む』がバブル崩壊の予言の書としてベストセラーになる。実は、5年前から就実大学（岡山）の客員教授に就任していて、年に1回は講演している。私も先月参加した。講演で触れられた内容が気になったので、昨年出版された本書を読んでみる。
ベテランのジャーナリストらしく、興味深いエピソードがちりばめられながら、議論はあちこちに展開する。結局、こういうことらしい。
・世界の公平性と繁栄と安全が危うくなっている
・社会という船体に利益団体がフジツボのように厚くへばりついている（日本は酷い）
・90年以降の日本＝サッチャー首相が登場する前のイギリスと同じ
・アベノミクス「第三の矢」は放たれていない
・雇用契約を統一し、労働者の立ち位置をそろえる必要
・1991年に金融危機に陥ったスウェーデンは自己改革によって立ち直った（皆が「痛み分け」をした）
・それは、スウェーデンでは、政治とビジネスの権力層を十分に信頼し、個人も利益団体もおたいがいを信頼しているから⇔日本、イタリア（信頼の薄い社会）
ということで、日本に関してはどうしてこれほど低迷しているのに改革が進まないのか「謎」、と言っているくらい。日本とイタリアの共通点を「信頼の薄い社会」だという。これは、一般的な認識と違うかもしれないが、様々な調査で明らかになっている。日本人は（おそらくイタリア人も）よく知っている人は安易に信頼する一方、政治経済システムを信用していない。それで、これまで何度も試みられた改革が取るに足らない揚げ足取りで葬り去られた。
最初から完璧な改革などあり得ない。大切なのは「小異を捨てて大同につく」ことだろう。しかし、そもそも、人口が東京都より小さなスウェーデン（1000万人）並みの「信頼」を人口がその13倍近い日本に求めるのは無理がある。前提として、道州制導入が必要だと思う。
ベテランのジャーナリストらしく、興味深いエピソードがちりばめられながら、議論はあちこちに展開する。結局、こういうことらしい。
・世界の公平性と繁栄と安全が危うくなっている
・社会という船体に利益団体がフジツボのように厚くへばりついている（日本は酷い）
・90年以降の日本＝サッチャー首相が登場する前のイギリスと同じ
・アベノミクス「第三の矢」は放たれていない
・雇用契約を統一し、労働者の立ち位置をそろえる必要
・1991年に金融危機に陥ったスウェーデンは自己改革によって立ち直った（皆が「痛み分け」をした）
・それは、スウェーデンでは、政治とビジネスの権力層を十分に信頼し、個人も利益団体もおたいがいを信頼しているから⇔日本、イタリア（信頼の薄い社会）
ということで、日本に関してはどうしてこれほど低迷しているのに改革が進まないのか「謎」、と言っているくらい。日本とイタリアの共通点を「信頼の薄い社会」だという。これは、一般的な認識と違うかもしれないが、様々な調査で明らかになっている。日本人は（おそらくイタリア人も）よく知っている人は安易に信頼する一方、政治経済システムを信用していない。それで、これまで何度も試みられた改革が取るに足らない揚げ足取りで葬り去られた。
最初から完璧な改革などあり得ない。大切なのは「小異を捨てて大同につく」ことだろう。しかし、そもそも、人口が東京都より小さなスウェーデン（1000万人）並みの「信頼」を人口がその13倍近い日本に求めるのは無理がある。前提として、道州制導入が必要だと思う。
序7：公平性と繁栄と安全が、危うくなっている。そういう悪い結果が災いして、極端なまでに非西洋的な思想を抱いている人々や勢力が、のしあがって権力を握った。ドナルド・トランプが、その最たるもので、彼らの思想が流行し、定着してしまったら、西洋とそれが生み出した成果はほとんど台無しになるだろう。8：一部のアメリカ人にとって、リベラルと言う言葉は、税金を無駄遣いして甲斐性のない市民を甘やかし、市場を歪めるという含みがある侮辱表現である。12：こういった解決策が西洋を脅かす理由�）念廚粒�放性、合意された国際的ルールに則った開放性が、逆転して閉鎖性に向かうだけでなく、恫喝と暴力的な力に基づく通商体制に退化してしまう。��現在のリベラルで、開放的で、友好的な国家のあいだの亀裂を深め、知識の往来と、さらに重要な相互信頼を弱めてしまう。�Ｄ拘�にわたる同盟体制と同盟上の義務に重大な疑念が生じる。第1章 戦いを開始しろ28：政治的開放度と自由度（Freedom House 2015）88/195ヵ国（45%） 自由(人口比40%）48/195ヵ国（25%） 非自由（人口比35%）ロシア、中国、中東、アフリカ59/195（30%） 部分的に自由（人口比25%）91：オバマ政権も司法省もGoogleを半トラスト法で調査しなかった（EU競争総局だけ）2014中間選挙で連邦議員162人に政治献金2014&2015Googleのロビー活動費は全米トップ自社が設立した政治活動委員会（PAC）を通じての選挙運動献金はGSよりも多い93：アメリカの経済学者マンサー・オルソン『国家興亡論』（1982）利益団体は、資源の固定化と不適切な配分を招いて、国の経済の活力が失われる。社会という船体に利益団体がフジツボのように厚くへばりつき、国家の前進がいよいよ困難になる。96：イギリスの金融サービス機構（FSA)長官アデア・ターナー「GSのような金融会社は社会的に無用」(2009)97：元FB議長ポール・ボルカー「自分の記憶にある最後の有益な金融イノベーションはATMだった」(2009)第5章 イギリス、彼らのイギリス143：1970-80年代のイギリス「頭脳流出」（優秀なイギリス人が主にアメリカや欧州諸国、カナダ、オーストラリアに移住する）が重大な移住問題「欧州の病人」教育程度とスキルの高い欧州人が、過去の地位にしがみついたまま衰退している国へ行きたいわけがなかった。イギリスに住んでいる外国生まれの人々：93年38M→2014年83Mロンドンでは3/8.7M第7章 日本という謎205：90年以降の日本＝サッチャー首相が登場する前のイギリスと同じ利益団体→硬直した保守主義209：1983年に著者が東京赴任した時日本の成功の核をなしていたのは柔軟性と活力。新テクノロジーを率先して採用。進化と適応。228：アベノミクス「第三の矢」は放たれていない日本は方策が尽きかけている。利益団体に対処し、経済全体に及ぶほんとうの規制緩和を行い、移民を自由化し、エネルギー、メディア、広告、マーケティング、卸売など、カルテル化している数多くの分野に全面的な競争を、すこしでも持ち込めば、静かではあるが画期的な変容がもたらされるはずだ。それには、雇用契約を統一し、労働者の立ち位置をそろえる労働関連法改正が伴わなければならない。そういう開放性は、大幅な権利の平等によって均衡が保たれる。第8章 スウェーデンとスイスのフーディーニ234：スウェーデン、スイス、イギリスでは、あらたな開放性の時代を経て、進化の力が80-90年代に見事に修復。235：スウェーデン・モデル1960年代 一人当たりGDPで世界第2位その後20年以上にわたって低成長→1990年OECD加盟国の中で14位2012自己改革によって、為替ベースで6位、PPPで9位236：転換点は1991金融危機社会民主労働党→中道右派に政権交代「信頼」スウェーデン市民は、個人も利益団体も、以前からの保護や特権をみずから犠牲に政治とビジネスの権力層を十分に信頼し、個人も利益団体もおたいがいを信頼⇔日本、イタリア（信頼の薄い社会）238：結束のついよい小国で、これまでの歴史でずっと団結して問題を解決してきたスウェーデン人が無口になりがちなのは、おたがいのことをよく知っていて、相手のいいたいことがすでに頭に浮かんでいるから。（マイケル・ブース"The Almost Nearly Perfect People"2014)
2018年12月18日
日本でのM&A
GS本社に入社して投資銀行業務を始めた服部氏は、その後、東京支社に転勤する。1998年から2003年までMDとして日本におけるM&Aアドバイザリー業務を統括。本書の後半は、日本で手掛けた案件の「戦記」だ。
今は流石に見ることはほとんどなくなったが、MSCB（行使価格変動型転換社債）というのがある。社債の株式への転換価格が株価に連動して変動するので、投資家が損をすることがない。「MSCBは引受証券会社が自動的に儲かる仕組みなので、他の資金調達手段がある会社は絶対に手を出してはいけない」という代物だ。
そのMSCBを、リコール隠しで経営危機に陥った三菱自動車が資金調達に使ったことがある。JP Morganの勧めで2004年7月MSCB1260億円を発行し、これ以外に三菱グループを引受先とした通常の優先株や普通株式を合わせて総額4950億円の資本調達した。大半は三菱グループ内で調達できているのだから、MSCB分も頭を下げて（あるいは発行条件を調整して）調達できたはずだ。
服部氏は、おそらくJP Morganから、「すべてグループ企業におんぶに抱っこでいいんですか?自力で一部でも資金調達しないとグループ内で肩身が狭いでしょう？」といった甘いささやきがあったのではないかと推察している。MSCBを引き受けたJP Morganはそのまま自己保有を続けて、修正価格決定の前に三菱自動車株の空売りを繰り返した。下がった株価でMSCBを普通株に転換して、空売りポジションを解消すればいいので、ノーリスクでぼろ儲けができる。
三菱自動車にも当然、財務の専門家はいたはずだが、株式投資、まして、信用取引のことを理解していた社員がいなかったのだろう。当時まだよく知られてなかったMSCBがもたらす当然の結果を、予想できなかった。
あるいは、かつて、ヤクルト本社やオリンパスの財務担当役員が、証券会社の口車に乗せられて、よく理解しないまま投資して大損害を被ったように、「知ったかぶり」をしたのかもしれない。いずれの事件も、他の取締役が「資金運用のことは分からないから」と担当役員に任せきっていたことで、損失の発覚が遅れ重大な事態になった。
157：日産ディーゼルの実質債務超過・全国の販売子会社等25社を意図的に連結から除外(連結外し）・日産と結託して、日産と日産ディーゼルが50%ずつ出資する日産ディーゼル販売という持ち株会社を設立し、持ち株会社の傘下に182：ダイムラー側で三菱自動車のDD「これまで述べた以外に三菱自動車の品質問題に関して重大な影響のある未開示の事実はありますか」→品質担当役員「特にない」・後で問題が発覚した時、DDの回答に瑕疵があったという追求ができた・DDの最後に”Catch all"の質問をしておくことは非常に重要185：自殺転換社債三菱自動車はその後、JP Morganの勧めで2004年7月MSCB（行使価格変動型転換社債）1260億円を発行。これ以外に三菱グループを引受先とした通常の優先株や普通株式を合わせて総額4950億円の資本調達。・JP Morganの空売りにより株価の暴落を招くなど、経営は迷走・MSCBは引受証券会社が自動的に儲かる仕組みなので、他の資金調達手段がある会社は絶対に手を出してはいけない・転換価格が株価に連動して変動。特に三菱自動車が発行したMSCBはラチェット型で、転換価格は下方修正しかされない。
2018年12月17日
伝説のM&Aアドバイザーが見た企業再編の舞台裏
日産から会社派遣でMITにMBA留学していた服部氏は、留学中に転職を決断し、留学費用を会社に弁済して「自費留学」となる。そして、32歳になった1989年の夏、ゴールドマン・サックス（GS)に就職する。
日本人なので東京支社で勤務予定だったが、最初の1年間は本社勤務を希望し、認められる。初任給は5万ドル＋保証ボーナス3万ドル=合計8万ドルだったというから、今の感覚では1000万円位。
GS本社新入社員の平均的なワークアワーは、朝9時に出勤して退社するのはだいたい夜の9時か10時頃だったという。12時を過ぎることも当然あり、土曜日もだいたいは朝9時か10時に出勤して、5時か6時ぐらいまでは働く。忙しいと日曜日も出勤する。こんな感じでだいたい週70-80時間ぐらい働いていたそうだ。
一年後に東京に移って、3年目か4年目あたりが一番働いたという。おそらく、アソシエイトからVPに昇格していたはずだ。この頃は週100時間労働、年間約5000時間働いたそうだ。しかし、ある程度自分で仕事をコントロールしている立場でのことだったので、それほどきついとも嫌だとも思わなかったらしい。
仕事で一流になるためには、素質に加えて、ある時期没頭して働くことが必要なのは古今東西変わらない。GSはじめ、欧米企業は、大卒社員の労働時間など管理さえしていない。プロとして会社のルールの下で結果を出しているかを見られるだけ。
GSでは入社後5年間での「生存率」は1/2くらいだったという。結果を出せなくてクビになったり、もっと楽な仕事を求めて転職していったり（その場合でも元GSの経歴はプラスになる）。
日本は、いつまで「働き方改革」のような不毛な議論を続けるのだろう。
はしがき：日本企業の経営文化は世界の中で特異な文化ではあるが、決して比較劣後する文化ではなく、むしろ21世紀の世界の経済界にとって欧米にも学ばせる価値のある優れた文化である。
31：GSのパートナー＝ウォール街最高の栄誉
・当時のGSは大手投資銀行で唯一残ったパートナーシップ
・89年当時で100名程度のGPが無限責任を負う
・会社レベルでの法人課税がなく、パートナー個人レベルで課税される
64：GS上場
・1999年IPO公募価格での時価総額は200億ドル、PER10倍
・IPO時点の221名のパートナーの平均持分時価は4400万ドル（約50億円）
101：GS人事評価制度「360度レビュー」
過去1年間に意味のある意見を書ける程度の接触があった世界中のプロフェッショナルを何人でも自分で選択してA4で一枚のレビューシートにコメントと点数を記入する。
・専門知識が豊富か
・顧客に信頼されているか
・同僚や部下に信頼されているか
・チーム内での情報共有を円滑かつ積極的に進めているか
・政治的な行動に走りやすいか
112：投資銀行部門での生存確率50%くらい
アソシエイトや若いVPの頃の年間労働時間は4000-5000時間
2018年12月16日
聖書改竄
キリスト教はその揺籃期から「書物の宗教」だったという。それは、既存のユダヤ教と同じく、彼らは聖なる権威を聖なる書物に置いていた。ところが、その「新約聖書」が不確かなもので、あちこちに矛盾する点があり、さらには後世に都合よく改竄されていたとすれば、どうか
キリスト教の根幹が揺らいでしまう。新約聖書の原文に改竄を加えた写本を分析し「オリジナル」の言葉を再現するという学問を「本文批評」というらしい。本書は、この分野の第一人者が「本文批評」の変遷をたどる。それは、キリスト教の誕生と変質を辿る旅でもある。
米国南部保守地帯であるカンザス州に1950年代半ばに生まれた著者は、高校の時キリスト教青年団で「再生」を体験する。「再生」とは、キリストの「救済のメッセージを受け入れ、イエス様に心の中に入ってくださるようにお願い」することらしい。
その時の若い指導者Bruceに感化され、彼が出ていたシカゴのムーディ聖書研究所に彼も進学する。ムーディは、フルタイムで聖書の研究をするところで、学生「規範」は、禁酒、禁煙、禁ダンス、禁トランプ、禁映画、そして暇さえあれば聖書であったというから、修道院と同じだ。
そこで興味をひかれたのが「本文批評」と呼ばれる学問分野。新約聖書の原文に改竄を加えた写本を分析し「オリジナル」は言葉を再現するという学問だ。だが、これを本格的にやるには、新約聖書のオリジナルな言語であるギリシャ語や、それ以外の古代語であるヘブライ語やラテン語が必要になる。
キリスト教学者になることを決めたアーマンは、福音主義の最高ランクの大学ホイートン・カレッジ（シカゴ）に進学する。ここで、英文学とギリシア語を専攻する。ホイートンで2年で学位を取った後、新約聖書の本文批評で世界的権威であるブルースMメツガーという学者に教えを乞うことにする。彼が教鞭をとっていたのは、プリンストン大学神学校だ。
はじめに10：シカゴのムーディ聖書研究所→ホイートン・カレッジ→プリンストン大学神学校19：キリスト教会というものができてこの方、キリスト教徒の圧倒的大多数はオリジナルを手にすることができていない私たちが手にしているのは、何世紀も後につくられた複製。そしてこれらの複製たちは、数えきれないほど多くの点でお互いに異なっている。�．�リスト教聖書の始まり29：ユダヤ教の異常な特徴・ローマ帝国内のほかの宗教はすべて多神教⇔ユダヤ教は一神教ユダヤ教徒の拝む神は彼らの祖先と契約した唯一神で、この世界を創造し、支配し、自らの民に必要なものを与えた神。・これらの指導を始めとする祖先の伝承が「聖典」の中に書き留められていた古代西洋世界の多神教では、本や経典なんてものには事実上、出る幕はなかった。32：イエスはユダヤ教の教師（ラビ）トーラーの権威を認め、これらの書物に対する彼流の解釈を弟子たちに説いていた。既存のユダヤ教と同じく、彼らは聖なる権威を聖なる書物に置いていた。キリスト教はまさにその揺籃期から、文字通り書物の宗教だった。53：コロンビア大学ウィリアム・ハリス教授古典時代の絶頂期である紀元前5世紀のアテネにおいてすら、識字率は全人口の10-15%。西暦1世紀のローマ帝国では、識字率はさらに低かった。55：イエスの弟子たちのほとんどはガリラヤ出身の単純な無学者ペトロとヨハネの二人は「文盲」（『使徒言行録』4章13）�∧�製から改竄へ81：『ガラテヤの信徒への手紙』複製の中で最古と思われるもので、AD200。つまり、パウロがその書簡を書いてからだいたい150年後。��新約聖書のテキスト99：プロフェッショナルなキリスト教書記4世紀以降、聖書の複製はプロの手によって作られるようになった。そして何十年、何百年という時間が経つうちに、ギリシア語聖書の複製は修道院で働く修道僧たちの仕事になった。（中略）この作業は中世の間、ずっと続けられた。15世紀になって、活版印刷術が発明されるまで。102：最初に印刷されたギリシア語聖書グーテンベルクの機械が印刷した最初の主要な作品は、ラテン語版ウルガタ聖書の豪華版で、その作業には1450年から56年までが費やされた。�げ�竄を見抜く148：ヨハン・Ｊ・ヴェットシュタインの危険な主張キリストの神性の教義の証拠として典型的に用いられているさまざまな個所が、実際にはテキスト上の問題を含んでいることが次々と判明した。これらの問題を本文批評の方法論によって解決していくと、ほとんどの場合において、キリストの神性に関する言及は消滅してしまった。156：『シナイ写本』ロベゴット・Ｆ・Ｃ・v・ティッシェンドルフ1859年に彼は三度、今回はロシア皇帝アレキサンドル二世の後援を受けて出発（聖カタリナ修道院）「今の世にある最も貴重なる聖書の至宝」→1862ロシア帝国建国千周年記念ロシア革命後、10万ポンドで大英博物館に売却→大英図書館の常設展示品157：1881BFウェストコットとFJAホート『ギリシア原語による新約聖書』全2巻両者の28年におよぶ共同研究に基づいて、伝承に異文が存在する際にどれがオリジナルであるかを決定した実際の新約聖書であり、もう1巻はこの版を生み出すに当たって彼らが依拠した批評原理の説明に当てられている。後者はホートが書いたもので、極端なまでに綿密、かつ圧倒的に説得力のある資料調査と、本文批評の仕事に携わりたいと望むすべての学者たちのための方法論が開陳されている。記述は濃密無比、一語たりとも無駄はない。論理は正確無比、一分たりとも隙はない。まさに名著中の名著であり、さまざまな点において、斯界の最高傑作だ。��神学的理由による改変199：「人の子」なのか「神の子」なのか2-3世紀には、「養子論」的キリスト論を持つ宗派がたくさんあった。なぜ「養子論」と呼ばれるかと言うと、イエスは神ではなく、血と肉を備えた人間であり、それを神が、一般には洗礼の際に、「養子」として採用したという論だからだ。200：エビオン派は、イエスと同様、ユダヤ人だった。彼らと他のキリスト教徒との違いは、イエスの信徒はユダヤ人でなければならないと主張した点だ。つまりエビオン派によれば、イエスは「先在」などしていない。処女から生まれたわけでもないし、神でもない。ただ彼は特別な義人であり、神に選ばれ、神と特別の関係を結んだのだ。201：原始正統派キリスト教徒イエスは人間である「だけ」ではなく、実際に神なのであり、ある意味では父なる神自身なのであると主張した。彼は処女から産まれた。220：テキスト改竄の意味『ヘブライ人への手紙』2章9の異文オリジナル版 イエスは「神から離れて」死んだ捏造 「神の恩恵によって」死んだ（ほとんどの書記が採用）�Ъ匆馘�理由による改変238：論争するユダヤ人とキリスト教徒イエスその人がユダヤ人であり、ユダヤ教の神を崇拝し、ユダヤの習慣を守り、ユダヤの律法を解釈し、ユダヤ人の弟子を取っていた。その弟子たちもまたイエスをユダヤ教のメシアだと考えていた。だが、イエスの死後わずか数十年のうちに、彼の信徒たちはユダヤ教と対立する宗教を作り上げてしまった。240：キリスト教徒のメッセージを拒絶したユダヤ人は頑迷固陋なかつ無知蒙昧な民族であり、イエスに関するメッセージを拒絶することによって、ユダヤ教の神自身が彼らに与えた救済をも拒絶したのだ。終章 聖書改竄263：新約聖書三位一体の教義ははっきり書かれているのか？イエスが「唯一神」だなんて書いてあるのか？神の子自身ですら終末がいつ来るのか知らないと書いてあるのか？265：欽定訳聖書翻訳者たちが底本としたギリシア語テキストは、元を辿ればエラスムス版でそれはたった一冊の12世紀の写本に基づいていて、それは現存する写本の中の最悪の一冊と呼べる代物だった！267：全霊感説（聖書とは無謬なる神の御言葉であり、聖書の言葉それ自体が聖霊の霊感によってもたらされたもの）オリジナルの言葉が神の霊感に基づくものであったとしても、そんなものはもはや地上のどこにも現存しない。だから全霊感説と言うのは、ある意味では今の聖書には不適切だ。なぜなら神が吹き込んだという言葉は改変され、また一部では失われているのだから。
2018年12月15日
利益率20%超の鉄工所
「京都試作ネット」の2代目代表理事を務めたHILLTOP株式会社の山本副社長による初の著作。利益率20%超を誇る「遊ぶ鉄工所」がどうやってできたかが詳しく説明されている。
「脱下請け」は当然だろうが、そうするためには営業の努力もいるし、何を強みにするかという問題もある。強みがなければ、不安定な受注を低価格で取るしかないので、下請けより却って経営が悪化することもある。
HILLTOPの場合、24時間無人加工の「ヒルトップ・システム」で高収益を実現させた。単品ものに特化し、仕事の8割が「1個、2個」の受注だという。単品ものはよそは手間がかかるので、受注単価は高くできる。しかし、他社同様に手間をかけていたら儲からない。
これを、加工技術のデータベース化で乗り越えた。受注の一個一個は単品でも、過去に似たようなものは作っている。通常は、設計図と使用工具くらいしか残してないというが、HILLTOPではどの工具をどの順番でどういう条件で使ったまで全データを残してある。ここから、各工具の使用条件を標準化し、加工機械パラメータ入力の大幅削減を果たした（800→25）。これによって、新入社員でも数か月でプログラムが組めるようになる。
したがって、HILLTOPでは社員は作業者ではなく「プログラマー」。昼間はデスクで人がプログラミングし、人が帰った夜中に機械が無人で働き、翌朝にはモノができているという仕組み。納期が半減したことで競争力が高まり、値段も高く取れる（新規5日、リピート3日）。
宇治市にあるというピンクの本社。機会があれば見学したい。
「脱下請け」は当然だろうが、そうするためには営業の努力もいるし、何を強みにするかという問題もある。強みがなければ、不安定な受注を低価格で取るしかないので、下請けより却って経営が悪化することもある。
HILLTOPの場合、24時間無人加工の「ヒルトップ・システム」で高収益を実現させた。単品ものに特化し、仕事の8割が「1個、2個」の受注だという。単品ものはよそは手間がかかるので、受注単価は高くできる。しかし、他社同様に手間をかけていたら儲からない。
これを、加工技術のデータベース化で乗り越えた。受注の一個一個は単品でも、過去に似たようなものは作っている。通常は、設計図と使用工具くらいしか残してないというが、HILLTOPではどの工具をどの順番でどういう条件で使ったまで全データを残してある。ここから、各工具の使用条件を標準化し、加工機械パラメータ入力の大幅削減を果たした（800→25）。これによって、新入社員でも数か月でプログラムが組めるようになる。
したがって、HILLTOPでは社員は作業者ではなく「プログラマー」。昼間はデスクで人がプログラミングし、人が帰った夜中に機械が無人で働き、翌朝にはモノができているという仕組み。納期が半減したことで競争力が高まり、値段も高く取れる（新規5日、リピート3日）。
宇治市にあるというピンクの本社。機会があれば見学したい。
prologue：24時間無人加工の夢工場・量産ものはやらない・ルーティン作業はやらない・職人はつくらない�／佑鯤僂┐�〇本物の職人：唯一無二の技術を持つ✖にわか職人：経験や勘に頼り、自分の技術を定量的、論理的に説明できない�∨楴劼鯤僂┐�建坪600坪の5階建て、東側は全面ガラス張り対話と創造性社員食堂、筋トレルーム、浴室��つくるものを変えた多品種少量生産→単品ものに特化�い弔�り方を変えた「ヒルトップ・システム」昼間はデスクでプログラミング→人が帰った夜中に機械が働く加工技術のデータベース化→パラメータ入力の大幅削減（800→25）納期半減（新規5日、リピート3日）C１ 脱下請！55：チャンスは平等にある。経営者の仕事は、外からチャンスを持ってきて、事業にすること。80：取引先の新陳代謝取引先を入れ替えることで、特定企業に依存しない強い会社になる。ヒルトップでは、毎年100社入れ替わり（取引者数3000社）。87：仕事の8割が「1個、2個」の受注1個 68%2個 11%これを無人化してこなす。C2 24時間無人加工「ヒルトップ・システム」94：データベース化「どのツールを、どの順番で使ったか」まで、作業を再現できるように全データを保存�＿湛�作業の細分化、分類�⊃�人への聞き取り（暗黙知）��職人同士の意見、考えのすり合わせ（言い分を戦わせる）�づ�社標準データの作成、保存、共有（マニュアル化）�ズ邏抜超�の整理整頓（決まった場所に決まったツールを配置）104：社員は「プログラマー」昼間に加工手順を機械に命令するプログラムを設定し、機械に材料をセット。刃物の最適な加工条件はあらかじめ設定されているので、新入社員でもプログラムが組める。121：ものづくりをしない製造業「製造サービス業」として、上流（ヒアリング・構想デザイン）から、下流（稼働・アフターケア）まで全工程にわたってすべて対応するC5 新卒採用190：地頭が良く、コミュニケーション力が高い「知的体育会系」を狙う� 屬發里鼎�り」に興味がある�◆崋臑寮�」を持ち能動的��「チャレンジ意欲」を持つ�ぁ崋�己分析」ができる�ァ崋�己主張」ができる�Α崔療�体育会系」�Х弍調管瑤茲蠅睛ソ�
2018年12月14日
アジア・太平洋戦争の現実
外交史や、戦略面。あるいは兵器を語った戦史はたくさん出ているが、「兵士の目線」から、特に敗色濃厚になった時期以降のアジア・太平洋戦争の実態を追った労作。「異常に高い餓死率、30万人を超えた海没死、戦場での自殺と『処置』、特攻、体力が劣悪化した補充兵、靴に鮫皮まで使用した物資欠乏」等々、本書に描かれるのは、特異な軍事思想の下、凄惨な体験を強いられた日本兵たちの現実だ。
310万人に及ぶ日本人犠牲者を出した先の大戦。実はその9割が1944年以降と推算される。「推算」となっているのは、実は厚生労働省が集計していないからだ。いつ戦死したかも把握していなかった日本に対し（いくらでも召集すればいいという発想か？）、アメリカでは月別年別の戦死者数が公表されている。陸海軍省の医務・統計関係部局がデータを作成・公開している。
25：1944年以降の犠牲者が9割310万人の戦没者の大部分がサイパン島陥落後の絶望的抗戦期の死没者と推定（厚生労働省が集計していない）。唯一年次別の戦死者数を公表している岩手県では、1944年以降の戦死者が87.6%。民間人の戦没者数約80万人の大部分は絶望的抗戦期のもの。＊日本政府、軍部、そして昭和天皇を中心にした宮中グループの戦争終結決意が遅れたため、このような悲劇がもたらされた。32：餓死者巨視的に見ると、その約35-40%が直接戦闘によるもので、残りやう65-60%は病没であるように思われる。しかも、病没者のうち純然たる悪疫によるものはその半数以下で、その他の主体は悪疫を伴う餓死であったと思わざるを得ない。（『大東亜戦争陸軍衛生史(比島作戦）』）制海・制空権の喪失によって、各地で日本軍の補給路が完全に寸断され深刻な食糧不足が発生前線部隊に無事に到着した軍需品の割合（安着率）1942 96%1943 83%1944 67%1945 51%141：日露戦争後に確立した極端な精神主義銃剣を装着した小銃による突撃を重視する白兵主義。→近接戦闘用の短機関銃の開発を怠る結果欧米の軍隊ではWW2における歩兵の標準的装備。142：米英軍の過小評価軍事思想の教条化→連合軍の戦力を過小評価陸軍は対ソ戦を想定して作られている歩兵操典、歩兵射撃教範、作戦要務令などの典範令を対米英戦向きに抜本的に改正する意思を持っていなかった。170：私的制裁人間的な感性をそぎ落とされ、その一方で軍隊生活に強い不満を持つ古参兵が、弱者に向けた非合理的な感情の爆発。202：栄養失調「栄養失調独特の土色の膚が人並みになったのは早いもので2年、遅い者は5年くらいかかった」（ニューギニア戦線で戦った経理将校 森鉄樹『十誠』第7号）211：ペリリュー等守備戦米軍損害：戦死1950 戦傷8516日本軍：戦死10022
2018年12月13日
会計士の誕生
世界初の公認会計士制度は1854年にスコットランドで生まれたというのが興味深い。既に1707年にイングランドと合同して「連合王国」となっていたが、連合は連合で、経済制度は独立していたわけだ。イングランドもこの基準に追随し、アメリカでも1887年に公認会計士協会が設立された。
日本では、アメリカ流に公認会計士のことをCPA（Certified Public Accountant)ということがあるが（日本公認会計士協会も英文でThe Japanese Institute of Certified Public Accountantと名乗っている)、連合王国はじめ旧Common Wealth CountriesではChartered Accountantが一般的である。
日本での歴史を調べてみると、1927年に「計理士」という国家資格が登場している。これが戦後、GHQの下で現在の「公認会計士」制度に変更されている。
第11章 鉄道が生んだ公認会計士308：会計士というプロフェッショナルの誕生1854年にはスコットランドが勅許会計士（Chartered Accountant)、いわゆる公認会計士の審査基準を正式に定め、ここに初めて公的な認可を受けた会計士が誕生する。企業の帳簿を監査し証明する会計士は、しかるべき専門教育を受け、職業倫理を備え、世間の信頼が篤くなければならないとされ、イングランドもこの基準に追随した。NYでは1849年に会計監査基準の検討が始まり、1887年にアメリカ公認会計士協会が設立された。第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性326：チャールズ・ダーウィン彼は自分の活動をすべて詳細な帳簿につけていた。事業に限らず、家庭のことなどもすべて、である。帳簿に立てられた項目には勉学、庭仕事、私用、家計などがある。第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか343：ビッグ・エイトとのコンサルティング業拡大1950年代半ばになると、監査法人同士の競争が熾烈になる。ピート・マーウィックが収益でプライスウォーターハウスを抜いた。また、アーサー・アンダーセンが会計業界にアメリカ流の文化を持ち込んだ。アーサー・アンダーセンは、1913年にアーサー・E・アンダーセン（1885-1947）が設立した会計事務所である。ノルウェー移民の息子のアンダーセンは苦学して会計士の資格をとったが、禁酒時代のシカゴのありさまにショックを受け、アル・カポネやジェイク・ダージック（組織の財務担当で、彼の元帳が脱税の証拠として押収された）が牛耳る汚れた街に秩序を回復しようと決意する。
2018年12月12日
南海泡沫事件
世界史で習った「南海泡沫事件」。バブル経済の「バブル」は、この事件から来ている。
事の発端はスペイン継承戦争。戦費支出で財政難に陥った英国は、南海会社に南米との貿易独占権を与える代わりに、国債3100万ポンドを引き受けさせる。国債の4%の利払いは政府が行い、さらに当座資金として同社に現金100万ポンドを渡した。貿易の利益で国債を返済していくはずだったが、貿易ではとてもそんな利益は出なかった。
そこで、社長のジョー・ブラントが考えたのが、南海株を時価発行して、それを国債と引き換えること。額面なら株式£100=国債£100だが、株価が£200であれば、国債£200を買い取れる。ブラントは根拠のない儲け話で株価を煽り、また、国王やその愛人、政府の要人にストックオプションを配って味方につけることも忘れなかった。
その結果、南海株は半年で10倍になる。それをまねた実体のないペーパーカンパニーが乱立し、株式売り出しを繰り返すようになる。1720年の1年間で190社が設立され、そのうち生き残ったのは4社だけだったという。この泡のように乱立し、消えていったのが「バブル」。
同時期にフランスではミシシッピ会社への投機が起き、1721年に倒産した。この時、フランス政府はなす術がなかったという。「金融知識を備えた官僚がおらず、自前の銀行もないフランスは、途方もない高利でスイスから借り続けるほかなかった。（中略）財政が再建されず、近代的な税制が整備されないまま、フランスは18世紀の大半を半ば破産状態で過ごすことになる。産業のイノベーションは生まれず、成長は長きにわたって停滞した」
「だがイギリスは、南海泡沫事件から立ち直った。それができたのは、当時他の国が持ち合わせていないものがイギリスにはあったからである。それは、オランダ以上に会計が発展していたこと、そして会計を重視する文化が政治にも浸透していたことである。こうした文化があったからこそ、政権に復帰したウォルポールは南海会社を救済し、イギリスの信用市場を立て直すプランを設計できたのだった」
第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作200：巨額の債務を帳消しにした「南海計画」南海会社はイングランド銀行と競争の末に、国債3100万ポンドを引き受けることに成功する。国債の4%の利払いは政府が行い、さらに当座資金として同社に現金100万ポンドを渡した。順調に株が売れたら、特権の対価として750万ポンドを政府い支払うという約束である。政府の側から見れば、貿易独占権と引き換えに民間投資家を利用して巨額の債務を帳消しにできるという、まことにうまい話である。202：南海バブル崩壊フランスで1721年にミシシッピ会社が倒産したとき、フランス政府はなす術がなかった。会社を救済する手段も資金もなかったし、危機を食い止めることもできなかった。ジョン・ローを金融の魔術師と信じ込み、財務総監にまで任命し、愚かにも王立銀行と造幣局の設立さえ認めていたのである。ミシシッピ会社が破綻すると、金融知識を備えた官僚がおらず、自前の銀行もないフランスは、途方もない高利でスイスから借り続けるほかなかった。（中略）財政が再建されず、近代的な税制が整備されないまま、フランスは18世紀の大半を半ば破産状態で過ごすことになる。産業のイノベーションは生まれず、成長は長きにわたって停滞した。205：金融に詳しい下院議員のアーチバルド・ハッチソンが南海会社の適正株価を試算（1720）ハッチソンの計算はひどく複雑で、政府への返済額、会社の利益、新株発行に伴う収入、保有資産の価値、予想利益等々を考慮し、金利で割り引いている。計算の詳細はともかく、結論は明快だった。発行時の三倍にも跳ね上がった株価を裏付けるには、年間530万ポンドの利益を上げなければならない。これは、イギリスの軍事予算の10倍に相当する金額である。
2018年12月11日
オランダ黄金時代を作った複式簿記
イタリアの都市共和国に未曽有の繁栄をもたらした複式簿記。しかし、15世紀が終わると、イタリアはじめヨーロッパの主要国は絶対君主制の時代になり、その文化の中で複式簿記は「商人の技」として政治の世界で軽視されるようになる。
そんな中、新たな経済大国として台頭してきたのがオランダであった。オランダは共和制を維持し、複式簿記による財政規律を重視した。「世界は神が創ったが、オランダはオランダ人が造った」と言われるように、オランダの国土の1/5以上が13世紀以降の干拓工事によって造られた埋め立て地。海水面以下なので、水管理とそれを支える自治組織は生死にかかわる重要問題だった。このため、オランダ人は会計と責任を真剣に考えるようになったといわれる。
そして、この精神は、世界初の「株式会社」を発明する。
第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記158：オランダ東インド会社を支えた治水の伝統低地のオランダでは、堤防が決壊して浸水したら国土がなくなってしまう。したがってよき水管理、それを支えるよき自治組織は、生死にかかわる問題だった。オランダの人々が会計と責任をあれほど真剣に受け止めたのは、ここに一つの原因がある。282：ジョージ・ワシントンの個人帳簿ジェファーソンと同じく農場経営者で奴隷所有者だったジョージ・ワシントンは、会計にとりわけ気を配った。ワシントンは毎日帳簿をつけることを習慣にし、帳簿はおおむね複式簿記形式だった。ジョン・メイヤーの会計の教科書が、ひどく使い古された状態でワシントンの書斎から見つかっている。第6章 ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問179：敵を屈服させる鍵は帳簿コルベールはフーケの極秘の計画や書状だけでなく、会計帳簿も入手したかった。背信行為を裏付ける最強の証拠になるからである。（中略）綿密な計画の下、マスケット銃士隊長のダルタニャン、デュマの『三銃士』で不滅の名を残すことになるあのダルタニャンが、フーケの逮捕と家宅捜査の命を受ける。フーケの執務室では、戸棚の背後に大量の束ねた備忘録が発見された。それらはコルベールの指示で直ちに封印され、急使によってすみやかに彼の元に届けられた。ダルタニャンは命令に従い、フーケの側近も全員逮捕し、家宅捜査を行った。183：当時のフランス政府は規模が大きいうえ、大半の事務処理が中世式に行われていたため、さしものコルベールも複式簿記を徹底することはできなかった。もちろんコルベール自身は複式簿記を完璧にマスターしていたが、官僚の大半は習得していなかったのである。それでもコルベールは、複式簿記の原則の多くを取り入れて高度な会計システムを作り上げた。財務顧問会議では、ルイ14世、コルベールと大臣たちの立会いのげで帳簿を締め切って署名をする。
2018年12月10日
第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家
ルネサンス期のフィレンツェで、イタリア随一の資産家として君臨したメディチ家。その富を支えたのはヨーロッパ全土をカバーする銀行網だった。
前章で見たように、フィレンツでは複式簿記が確立され、それを重視する文化があった。メディチ家に限らずフィレンツの商家では代々商売の基礎として複式簿記を教えた。フィレンツェでは、「会計のゆたかな伝統を育てるべく、商業と簿記に関する法律を定めていた」という。
歴史を振り返れば、いったん高みに達した技術や文化が、衰える例はたくさんある。15世紀のフィレンツは、ヨーロッパ一豊かになったためか、プラトン研究が盛んになり、プラトンやプロティノスの著書がラテン語に翻訳された。そうした中、メディチ家当主のコジモは、息子たち全員には会計を教えなかった。
「コジモには嫡出の息子が二人いた。長男のピエロは、経営のセンスはあったが商人としての修行に出されなかった。ピエロは人文主義的な教育を受け、ラテン語やギリシャ語の修辞学を学ぶ。コジモは長男が共和国の統治に携わることを期待したのだった。一方、次男のジョヴァンニには商売をみっちり仕込んだ。彼は銀行の跡継ぎになることが期待され、父と同じく帳簿の付け方から監査の仕方まで学ぶ。しかしジョヴァンニは享楽的なタイプで、帳簿の付け方は知っていても、厳格に帳簿を維持する几帳面さや規律に欠けていた。そのうえ彼は42歳の若さで1463年に世を去ってしまう。（中略）メディチ銀行はトップはいても実務家がおらず、最終監査の出来るものもいないという事態になった。そして監査なしでは、銀行は機能しない」
こうして、複式簿記を学ばせなかったために、メディチ家のみならず、フィレンツそのものの弱体化につながる。
前章で見たように、フィレンツでは複式簿記が確立され、それを重視する文化があった。メディチ家に限らずフィレンツの商家では代々商売の基礎として複式簿記を教えた。フィレンツェでは、「会計のゆたかな伝統を育てるべく、商業と簿記に関する法律を定めていた」という。
歴史を振り返れば、いったん高みに達した技術や文化が、衰える例はたくさんある。15世紀のフィレンツは、ヨーロッパ一豊かになったためか、プラトン研究が盛んになり、プラトンやプロティノスの著書がラテン語に翻訳された。そうした中、メディチ家当主のコジモは、息子たち全員には会計を教えなかった。
「コジモには嫡出の息子が二人いた。長男のピエロは、経営のセンスはあったが商人としての修行に出されなかった。ピエロは人文主義的な教育を受け、ラテン語やギリシャ語の修辞学を学ぶ。コジモは長男が共和国の統治に携わることを期待したのだった。一方、次男のジョヴァンニには商売をみっちり仕込んだ。彼は銀行の跡継ぎになることが期待され、父と同じく帳簿の付け方から監査の仕方まで学ぶ。しかしジョヴァンニは享楽的なタイプで、帳簿の付け方は知っていても、厳格に帳簿を維持する几帳面さや規律に欠けていた。そのうえ彼は42歳の若さで1463年に世を去ってしまう。（中略）メディチ銀行はトップはいても実務家がおらず、最終監査の出来るものもいないという事態になった。そして監査なしでは、銀行は機能しない」
こうして、複式簿記を学ばせなかったために、メディチ家のみならず、フィレンツそのものの弱体化につながる。
80：銀行経営に必須だった複式簿記商業教育の基本は簿記であり、コジモのようにゆくゆくは経営者になるエリートは若いうちに修得していた。家族経営の事業では、若い後継者は系列の店や外国の支店で実地に学ぶ。簿記は、経験を通じてしか身につかない。そこでフィレンツェでは、会計のゆたかな伝統を育てるべく、商業と簿記に関する法律を定めていた。このように会計は、文化と法律の両方に根付いていたのである。88：後の世代に受け継がれなかった会計文化コジモは息子たちの将来に野望を抱くようになった。（中略）おそらくは新プラトン主義に染まりすぎたせいで、あるいは自分の家系を王族のようにみなす驕りから、あるいは非現実的な自信過剰から、彼は息子たち全員には会計を教えなかった。この判断はメディチ銀行のみならず、フィレンツェそのものの弱体化につながっていくことになる。105：なぜ世界初の複式簿記の教科書は無視されたのか複式簿記についての世界最初の教科書というべき『算術、幾何、比及び比例全書』（スマム）が印刷された1494年という年は、皮肉にも、ヨーロッパにおけるイタリアの力が衰退し始めた時期だった。（中略）『スマム』を書いたのはフランチェスコ会修道士にして人文主義者、数学者のルカ・パチョーリ（1445-1517）で、同書の第一部第9編「記録および計算について」で簿記が取り上げられている。複式簿記はこれより200年前から既に存在していたが、その実際的な方法論が、印刷技術の普及と相俟って比較的入手しやすい形で世に出たのは、初めてのことである。しかしこの世界初の会計の入門書は、その後100年にわたって商人からも思想家からも無視された。16世紀に入ると、多くの国が騎士道精神を掲げる絶対君主を戴くようになり、会計は身分の低い商人の技術であるとして次第にさげすまれるようになっていったためである。
2018年12月09日
ディープラーニングの先にあるもの
松尾さんは丸亀高校の11年後輩になる。2年前に香川県産業活性化アドバイザー会議で一緒になり知った。本書は既に出版から3年経っているが、人工知能入門書として、AIの基礎知識、歴史認識、疑問点を学ぶのに今でもよい本。
その間に、人工知能は大ブームとなり、関連企業の株価も大幅に上がった。彼は東大の准教授として、東大発AIベンチャーに深くかかわっており、大株主に名を連ねている企業もある。日本では数少ない実践型研究者なのだ。
松尾さんの危機感は、「人工知能が人間を征服するか」ということよりも、「人工知能技術を独占される恐さ」にある。
「汎用的なOS部分を独占すれば、各種機能を実現するアプリケーションの製造コストは劇的に下がる。PC時代にOSをマイクロソフトに、CPUをインテルに握られて、日本のメーカーが苦しんだように、人工知能の分野でも、同じことが起きかねない。そして今回の話は、ほぼすべての産業領域に関係するという意味でより深刻であり、いったん差がつくと逆転するのはきわめて困難だ」
そのために日本はどうすべきか。松尾さんは1982年から10年間に渡り570億円が投じられた国家プロジェクト「第五世代コンピュータ」を例に挙げる。これは、コンピュータの性能が低く、まだテキストも満足に扱えなった時代に、音声や画像、動画も扱い、その知識を整理してホワイトカラーの生産性を向上させるという先進的な目標を掲げた壮大なプロジェクトだった。
ただ、当時は「データ」がなく、推論を強化することで人間のような知的な処理ができるのではないかという仮説に立ち、並列に推論する仕組みの研究にまい進したが、思ったような成果は出なかった。もしウェブの出現があと15年早かったら、プロジェクトは成功し、日本が情報産業で世界一になっていたかもしれない。
しかし、あの時代、「勝つために振る価値のあるサイコロ」だったという。
「世界ナンバーワンをとろいうという強い意志とそのための戦略。当時の資料を読むと、それが伝わってくる。いまの日本に最も欠けている部分だ」
はじめに：人工知能には、これまで2回のブーム��1956-1960年代��1980年代＊Deep Learning（特徴表現学習）50年ぶりに訪れたブレークスルー
22：超高速処理の破壊力迷惑メールのフィルタリング機能は、典型的な人工知能、機械学習。39：まだできていない人工知能人間の知能の原理を解明し、それを工学的に表現するという人工知能はまだどこにも存在しない。40：人工知能は「できないわけがない」脳はどうみても電気回路。人間の思考が、何らかの「計算」なのだとしたら、それをコンピュータで実現できないわけがない。51：人工知能とは何か�｜噂磴弊�御プログラムを「人工知能」と称しているマーケティング的にAIと名乗っているだけ。��古典的な人工知能振舞いのパターンがきわめて多彩なもの。将棋のプログラムや掃除ロボット、あるいは質問に答えるAI。�５ヽ３惱�を取り入れた人工知能検索エンジンに内蔵されていたり、ビッグデータをもとに自動的に判断したりする。機械学習のアルゴリズムが利用される場合が多い。�ぅ妊�ープラーニングを取り入れた人工知能機械学習をする際のデータを表すために使われる変数自体を学習する（特徴表現学習）。99：IBM Watsonワトソン自体は質問の意味を理解して答えているわけではなく、質問に含まれるキーワードと関連しそうな答えを、高速に引っ張り出しているだけ。137：機械学習における難問人間は特徴量をつかむことに長けている。何か同じ対象を見ていると、自然にそこに内在する特徴に気づき、より簡単に理解することができる。特徴をつかみさえすれば、複雑に見える事象も整理され、簡単に理解することができる。204：人工知能が人間を征服するか自らを維持し、複製できるような生命ができて初めて、自らを保存したいという欲求、自らの複製を増やしたいという欲求が出てくる。それが「征服したい」というような意思につながる。生命の話を抜きにして、人工知能が勝手に意思を持ち始めるかもと危惧するのは滑稽。247：人工知能技術を独占される恐さ汎用的なOS部分を独占すれば、各種機能を実現するアプリケーションの製造コストは劇的に下がる。PC時代にOSをマイクロソフトに、CPUをインテルに握られて、日本のメーカーが苦しんだように、人工知能の分野でも、同じことが起きかねない。そして今回の話は、ほぼすべての産業領域に関係するという意味でより深刻であり、いったん差がつくと逆転するのはきわめて困難だ。
2018年12月08日
ぎっくり腰
先月生まれて初めて「ぎっくり腰」になった。これまで、「ぎっくり腰」になったことがなかったので、その定義さえよく知らなかったが、「悪い病気がない急性の腰痛のことを、日本ではぎっくり腰と呼ぶ」ということだ。別の言い方をすれば、「原因がはっきりしない腰痛」でもある。
Facebookに「ぎっくり腰で一日動けなかった」ことを書いたら、同年代以上で経験者は多く、早速様々なアドバイスをもらった。大体、以下に集約される。
�．好肇譽奪舛鬚垢襪箸い�
��痛みが引いたら動いたほうがいい
��整体で体のゆがみをチェックする
�，亘萃�ラジオ体操と合わせて真向法を10年以上やっているが、もっとやり方を工夫したほうがいいかもしれない。�△呂發箸發函∨萋�体を動かしたい方なので、まぁ、大丈夫。��はやったことがなかった。
それで、近くに住む腰痛経験者に「ここがいいよ」と教えてもらった整体「いきいき回復院」に行ってみた。最初に、マットの上で立った姿の前横と、ひざを曲げた状態の写真を撮る。たったそれだけでプリントアウトされたのが上の図（帰宅してからネット上でこのヘルスケアITメーカーを探した）。簡易姿勢測定システム「ゆがみーる」というらしい。商品説明には「簡単に身体と筋肉のバランスを計測し、対処方法の構築や説得性の高いアドバイスを可能にする」とある。整体に行って、「腰痛は体の歪みからきている」と言われても、本人は自覚してないし、見えないから半信半疑だ。それが、このシステムで「見える化」できる。
上図はメーカーHPにある見本なのだが、私の診断結果も、まったく同じ。歪み指数Cランクで、「猫背＋反り腰」と出た。現代人はPCを見たり、スマホを見たりで、前かがみになっていることが多いから、多いのだろう。20代の頃は「姿勢がいい」と褒められることが多かったので、ショック。
それと、頭が前にずれ、頚椎が前に伸びている「ストレートネック」を指摘された。実は、これは5年前にも首が痛くなった時に指摘されたことなので、納得。あの時は、なかなか痛みが取れず、最後に針で治した。今回も、香港人の友達から、鍼灸を勧められた。「筋肉の緊張から来ているから、針で緩めるといい」ということ。
いきいき回復院では、「ゆらし療法」をやる。やはり、ここでも、「痛みの多くは筋肉の緊張から来ている」と言われた。鍼灸の考えと同じだ。ここでは、針ではなく「ゆらす」ことで筋肉の無駄な緊張を解消する。ゆらすと骨格の位置が正しく修正され、内臓の動きも改善されるということだ。
ゆらして正しく修正されても、生活習慣から元に戻ってしまうので、「最初の一週間の間集中的に来て、体に正しい位置を覚えさせないとダメ」ということで、来週も2回予約を入れた。再来週はタイ出張で毎日長時間山道を揺られる予定。出張中に再発すると辛いので、予防策でもある。
2018年12月07日
帳簿はいかにして生まれたのか
会計上の大発明である「複式簿記」は13世紀のイタリアで生まれた。まず、ルネサンス期のイタリア商業都市国家は、アラブとの交易で、アラビア数字とともにイスラム社会の進んだ数学を学ぶ機会があった。
「1202年には、ピサの商人レオナルド・フィボナッチ（1170-1250）が算術に関する歴史的な著作『算盤の書』（Liber abaci)を書く。フィボナッチは、地中海の港湾都市ブージとの貿易を通じて算盤とアラビア数字を学んだ。この本は、筆算のやり方から始まって、加減乗除から分数、平方根、連立方程式にいたる数学問題の解法を教える実用的な教科書とも言えるものだった」(p38)
彼がアラブから学んだことをまとめたものだが、この本がヨーロッパの知識人に与えた影響は大きく、彼は「フィボナッチ数列」で後世に名前が残ることになる。
第1章 帳簿はいかにして生まれたのか33：ノルマン・コンクエストによって生まれた世界初の土地登記簿1066年にイングランド征服を果たしたウィリアム征服王に、またとない機会が与えられる。たった一度の急襲で全土を制圧した王は、ゼロから制度設計をすることができた。（中略）ノルマン・コンクエストは土地管理制度を一元化する願ってもない好機となった。その結果として新しい封土契約がどっと増え、明確な記録作成のための世俗および教会のルール作りが急務となる。本章の冒頭に引用した土地台帳（Domesday Book）は、検地の結果を記した世界初の土地登記簿で、1086に作成された。39：なぜ中世イタリアで複式簿記が発明されたのかイタリアの商人は、仲間で資金を出し合って貿易を行う共同出資方式を採用しており、そのために各人の持ち分や利益を計算する必要があった。トスカーナの商人たちが複式簿記を発展させたことはまちがいない。資料を巡っていくらか議論はあるものの、最も早い複式簿記の例は、リニエリ・フィニー兄弟商会の帳簿(1296）か、ファロルフィ商会の帳簿（1299-1300)だとされている。（中略）ファロルフィ商会の帳簿はきわめて近代的で、現金勘定と出資者勘定が分離され、利益をリアルタイムで把握できるようになっていた。41：ジェノヴァの驚くべき監査システムジェノヴァ市政庁の元帳は、単に収支計算や記録保存の目的で作成されたのではなく、内部的な責任の所在があきらかになるように設計されていた。相変わらず会計不正は頭痛の種であり、このため監査官が、あらゆる取引は公証人の立会いのもとに記帳するように命じている。現代の金融や統治の研究者が当時の帳簿を見たら、きっと目を見張ることだろう。じつにきちんとしており、数字は正確で、借方貸方は釣り合っており、内部監査もしっかり行われている。だが、この画期的かつ効率的なシステムは、ルネサンス期のイタリアで終わってしまう。ヨーロッパの大国の君主たちは、イタリアの商業都市国家のやり方をなかなか受け入れようとはしなかった。
2018年12月06日
歴史の裏には全て、帳簿を駆使する会計士がいた！
2015年に翻訳された名著が文庫本で今年出た。「歴史の裏には全て、帳簿を駆使する会計士がいた！」というのが誇張でもなんでもないことが読めばわかる。資本主義を支えたのは、銀行(決済＆信用創造）、株式会社（共同出資）、複式簿記（損益の把握）だと思うが（定説
）、実際は、複式簿記誕生以前にもきちんと帳簿を付けた国や団体は栄え、それができなかったところは衰退していった。興味深いのは、複式簿記が誕生して栄えたイタリアの都市国家自体が、16世紀になると複式簿記を捨てていったことだ。君主にとって会計の透明性は危険だったのである。
「帳簿を公開することは、財務会計の責任を引き受けることである。この同じ年に、王家の収支と国王の危機的財政が財務長官ネッケルの手によって始めて白日の下にさらされたとき、ルイ16世の神秘性ははぎ取られた」
中世イタリアでは、複式簿記による帳簿は健全な事業や政府の実態を表すと同時に、神の審判や罪の合計を表す宗教的な一面も備えていたという。ここから、本書の原題、THE RECKONING（計算、見積もりと同時に、報い、罰の意も）は来ている。
序章 ルイ16世はなぜ断頭台へ送られたのか11：ルイ14世の財務総監ジャン＝バティスト・コルベールコルベールは、上着のポケットに入れて持ち運べるよう、金色に印字された小型の帳簿を作っていたのである。この習慣は1661年に始まっており、ルイ14世は年に2回、自分の収入、支出、資産が記入された新しい帳簿を受け取った。あれほどの絶対的地位にいる君主が王国の会計に興味を示したのは、初めてのことである。金のかかる戦争やヴェルサイユを始めとする宮殿建設で赤字続きだったルイ14世は、コルベールが1683年に死去すると、会計報告の習慣を打ち切ってしまう。国王からすれば、帳簿は国家運営の道具ではなく、統治者としての自分の失敗をあからさまに示す不快な代物になっていたのだろう。せっかく会計と責任のシステムを発足させたルイ14世だが、ついに会計の中央管理をやめてしまった。1715年、太陽王は死の床で、自分はフランスを破綻させたと告白した。15：国家の繁栄は会計によって決まる会計は事業や国家や帝国の礎となるものだ。会計は、企業の経営者や一国の指導者が現状を把握し、対策を立てるのに役立つ。その一方で、会計がきちんとしていなければ、破綻に拍車をかけることになる。2008年のグローバル金融危機はその端的な例と言えよう。ルネサンス期のイタリア、スペイン帝国、ルイ14世のフランスからネーデルランド連邦共和国、大英帝国、独立初期のアメリカにいたるまで、一国の浮沈のカギを握るのは政治の責任と誠実な会計だった。16：ジェノヴァ、ヴェネツィア、フィレンツェを始め、商業を基盤とする共和国では、すくなくとも支配階級はしかるべき財政の責任を果たすべきものと考えられていた。これこそ、理想的な近代統治、すなわち規律と責任のある合理的な統治の始まりと言えよう。これらの共和国はたしかに栄えたけれども、会計責任の維持がむずかしいことも立証することになった。16世紀になると、イタリアの共和国全体の衰退と絶対君主制の台頭が相俟って、会計への関心は薄れていく。商人たちは複式簿記に慣れて熟達していったが、政治の場からは会計は姿を消していった。例外は、君主制の潮流に逆らって共和制を維持し続けたスイスとオランダだけである。21：見落とされてきた複式簿記の重要性会計が単に商取引の一部ではなく、倫理的・文化的枠組みに溶け込んでいるときは、会計責任はよりよく果たされる。中世から20世紀前半にいたるまで、公正な会計を実行し報告する責任と信用の伝統を築くことのできた社会では、例外なく複式簿記が文化に根付いていた。フィレンツェやジェノヴァを始めとするイタリアの共和制国家しかり、黄金時代のオランダ、18-19世紀のイギリス、アメリカしかり。これらの国はどこも、会計が教育にも、宗教・倫理、芸術、哲学にも、政治運営にも取り込まれていた。
2018年12月05日
第2部 豊かさの代価
「西洋文明は一種の動的な社会であり、その社会の中では攻撃が重要な役割を果たす」という。
そんな中で、日本企業でCXO制度が流行っているのは興味深い。現代の大企業は軍隊組織をモデルにして発展し、戦争に負けなかったため、その名残が色濃く残ったのが米国。Officer（将校）Chief（上官）の呼称が残っているのはこのためだ。また、民主主義国家の軍隊は文民統制なので、このガバナンスを企業統治に取り入れ、株主（＝文民）の統治のもと、株主によって選ばれた取締役会の決定に基づき業務（＝軍事）計画を立てて、業務執行するのがCXO(将校）の役割になっている。
日本では、グローバル化の早かったソニーなどが米国型のガバナンスを取り入れて、取締役会を社外役員中心にするとともにCXO制度を取り入れた。ところが、多くの企業では従来通り、取締役がそのままCXOに就任している。これでは、〇〇担当取締役と言っているのと変わらない。ましてや、総数10人にも満たないような小企業でCXOなどと称する意味があるのだろうか。
通常、米企業で取締役を兼ねているのはCEOだけである。これは執行役員を代表して取締役会に説明するためと、取締役会での決定を執行役に伝えるためである。
そんな中で、日本企業でCXO制度が流行っているのは興味深い。現代の大企業は軍隊組織をモデルにして発展し、戦争に負けなかったため、その名残が色濃く残ったのが米国。Officer（将校）Chief（上官）の呼称が残っているのはこのためだ。また、民主主義国家の軍隊は文民統制なので、このガバナンスを企業統治に取り入れ、株主（＝文民）の統治のもと、株主によって選ばれた取締役会の決定に基づき業務（＝軍事）計画を立てて、業務執行するのがCXO(将校）の役割になっている。
日本では、グローバル化の早かったソニーなどが米国型のガバナンスを取り入れて、取締役会を社外役員中心にするとともにCXO制度を取り入れた。ところが、多くの企業では従来通り、取締役がそのままCXOに就任している。これでは、〇〇担当取締役と言っているのと変わらない。ましてや、総数10人にも満たないような小企業でCXOなどと称する意味があるのだろうか。
通常、米企業で取締役を兼ねているのはCEOだけである。これは執行役員を代表して取締役会に説明するためと、取締役会での決定を執行役に伝えるためである。
140：大企業の職階がたいてい軍の階級から借用されているOfficer（将校）Chief（上官）148：テストステロン（ホルモン）療法「クライアントの90%は金融界や経営上層部の方々。彼らは1日14時間の勤務に疲労困憊しており、仕事にフラストレーションを感じている」（NYの医師）173：保険というギャンブルカジノでルーレットに興じる人は幸運が舞い降りる確立に賭けるが、保険は不幸が起きないことでもうけを生み出す。カジノのように保険にもリスクはあるが、そのリスクはずっと低い。233：教会によるスケープゴート教会は金融経済への敵意をあおりたて、最後には金融経済全体をさらしものにした。いちばんの犠牲になったのは、13世紀以降、弾劾と迫害を強いられてきたユダヤ民族。この問題の不条理な点は、教会自身が両替商、医者、質屋以外の職業をユダヤ人に禁じ、高利貸の立場を強要していたこと。246：ファッションのルール被服の消費は、米国民だけで年間200億着、一人当たりに換算すれば衣服が68着、靴が8足となる。たくさん買えば、ごみも増える。一人が1年で捨てる服は12kg。もっとも使用される繊維、ポリエステルは、世界中で500億トン製造されている。ZARAだけで一日に100万着を製造。254：肥満が増えれば、経済が成長する医療費は国内総生産。肥満が増えて保険制度に負担がかかるほど、経済成長しているように見える。257：バックドラフト経済システムは成長という物神（フェティッシュ）を作り上げた。この物神は債務に苦しめられ、薄い布一枚でつながった危険な状態。（中略）大博打に勝つために必要な信用を、量的緩和策、つまり紙幣の発行という鎮静剤で何とかつくり出している。エリュシクトンがすべての資源を使い果たした後、娘の身を売って自分の欲求を満たしたように、私たちもシステムの維持のために最後の融資を未来から引き出さざるをえない。今日の借用書の名義は、後の世代だ。282：現代文明の掟「楽しめ！」（フランスの哲学者ジャック・ラカン）それは欲求ではなく、もはや使命。思い切り楽しむのが不得手な人は、たちまち、「どこかおかしい人」というレッテルを貼られる。365：西洋の人々の疎外資本主義に暮らす人間は、関係を理解することより、服従と支配を教え込まれ、自らも学んでいる。時間の乏しい厳しいプロセスの中で、攻撃性を増し、ミスをおかしやすくなっている。人々は最大限の利益獲得を迫られ、経営者たちは短期の利益競争に走り、人間と資源を容赦なく搾取する。世界規模の不均衡が起こり、多くを持つ者にはチャンスと財産が窃盗症的な形で割り振られている。366：個人と社会の価値の転換自己目的のためのシステムではなく、人間らしいと思える世界文明のための人間らしい能力の成長。そのために必要なのは、社会プロセスの体系的変化、そして個人の考え方の変化。銀行のシステムに異を唱えながら、年金保険口座の利息が3%を超えることを期待してはいけない。グローバル化を批判しながら、買い物で安い値段ばかりを求めてはいけない。
2018年12月04日
第1章 リリス ― 願望の統合失調症
リリスというのは、聖書に出てくる「イブの先駆者」。「アダムの肋骨からではなく、アダムと同じ物質から作られたリリスは、アダムに隷属もせず、アダムに従順でもなく」神から罰を与えられる。それが自分の産んだ子を自分が食べるというもので、これが際限なく続く。
「リリスは神話の世界の、じつに魅力的な人物だ。輝いていながら同時に暗く、生と死の両方を象徴する存在。人間的であり、崇高でもあるのに、卑俗な性質も持ち、原始的でもある。経済的な観点から解釈すると、リリスは永遠の飢餓と永遠の消費を ― さらにいえば、己自身の生産物の永遠の消費を象徴している」
映画「千と千尋の神隠し」に出てくるカオナシを思い出す。誰にも相手にされず寂しくしていたカオナシは、千にやさしくされたことで千に付きまとうようになる。砂金を出して人々の歓心を得、暴飲暴食、ついには従業員まで食べてしまうのだが、これは精神の不安定さからくる摂食障害の一種だろう。
宮崎監督も、現代社会の欲望の自己増殖を描きたかったのか
映画「千と千尋の神隠し」に出てくるカオナシを思い出す。誰にも相手にされず寂しくしていたカオナシは、千にやさしくされたことで千に付きまとうようになる。砂金を出して人々の歓心を得、暴飲暴食、ついには従業員まで食べてしまうのだが、これは精神の不安定さからくる摂食障害の一種だろう。
宮崎監督も、現代社会の欲望の自己増殖を描きたかったのか
32：ヘブライ流の聖書解釈リリスは、神の手によるまったくの失敗作。イブの先駆者でもあるリリスは、イブとは異なる特質をもちあわせていた。アダムの肋骨からではなく、アダムと同じ物質から作られたリリスは、アダムに隷属もせず、アダムに従順でもなく、後で説明するようにアダムに服従もしなかった。いっぽうのアダムは蛇のいいなりにすらなるほど、従順な性格だった。40：マルクスが資本主義について強く批判した、労働者と労働生産物との乖離マルクスによればそれは、資本の不平等な分配が原因で起こる。だが、生産物との乖離という感覚はじつは、個人の財産という概念が生まれるずっと前から存在していた。神ですら自分が作ったものとの乖離を感じていた。43：おまえが作り出しものを、すべて食べろ私たちの時代の原則は、飢えた人にではなく満腹の人に食べ物をやるというものだ。飢えた人に食べ物を与えて幸福にするのは簡単だが、満腹の人にさらに食べさせるという問題はどんどん巨大化しつつあり、その克服のために新しい心理学の分野が必要なまでになった。広告宣伝、販売、マーケティングなどがそれだ。広告宣伝が行っているのは、存在もしない空腹をリビドーを刺激することで呼び覚ましているのと同じだ。53：ここは天国か、それとも地獄かリリスはアダムから抑圧を感じ、それに従って行動した。そしてその結果、自身の「エス」の封印を失った。それによって彼女は再生と死の、そして性と暴力の象徴に変容した。リリスは自身の原初の飢えを、自分の子を食べることによって満たす。リリスと同じく私たち人間は、こうした（抑圧の）シンボリズムがどのように自身の頭の中に捕らえられたかは知らず、しかしそれによって行動を左右されている。
2018年12月03日
経済の魂と精神は、いかに病んだのか
チェコの経済学者であるTomas Sedlacekと、オーストリアの経済ジャーナリストOliver Tanzerによる共著。ドイツ語版は2015年に出版されているが、日本語版は今年出版された。
「経済の精神疾患的な側面を明らかにする」というもの。そして、「精神分析という学問は伝統的に、神話に積極的に取り組み、神話を活用」してきたらしい。フロイトやユングによる神話の精神分析は面白く、さらにそれが現代社会にも通じることが興味深い。
序章3：経済学の精神病質一種の双極性障害、つまりは躁うつ病であり、その結果、躁鬱の両極に置いてひどい混乱が生じている。哲学的・倫理的な視点から見ると、現代の経済学はエゴイズムという全能の力を信じ、まるでエゴイズムこそが地球を導く力であるかのように、エゴイズムの「ゴスペル」を説いている。10：神話とは社会を映し出す鏡神話は古代における暗号や思考の柱であり、のちには古代の論理になった。それは古代の「モーダス・オペランディ（やり方）」でもあった。神話は容易に理解が可能で、登場人物が創造の産物にすぎないにもかかわらず、のちに出てくる宗教や物理や数学と同じほどの力をもった。11：精神分析という学問は伝統的に、神話に積極的に取り組み、神話を活用してきた。だから、経済畑から来た私たち著者も精神分析と神話の両方に出会うことになった。（中略）その際、二人の偉大な学者に多くを負った。二人は生前敵対していたが、こうした象徴を読み解いてくれた店で、私たちにとってはどちらも同じほど、計り知れない価値を持っている。一人はジークムント・フロイト。もう一人は、カール・グスタフ・ユングだ。フロイトは、自身の精神病理学を説明したり整理したりするのに神話を用いた。ユングは神話にさらに大きな意義を認め、人間の経験の原型や集団的無意識を神話の中に発見した。17：本書で取り上げる神話はメソポタミアや古代エジプトの神話、ユダヤ教の神話、ギリシャ神話などだが、これら最古の神話には、人間の原初の状態について、ある共通の原型が存在する。それは、男女の特徴が象徴的に融合した状態だ。ヤヌスのように、男の顔と女の顔をもつアダムもその一例だ。
2018年12月02日
なぜ、いい経営戦略が作れないのか？
簡潔に戦略策定の際の「落とし穴」がリストアップされているので、チェックリストに使える。
それぞれごもっともで、比較的わかりやすいのだが、注意を要するのが�ぁ峪�て非なることを間違える」。例として挙がっているのは、「マーケット動向と顧客動向」「自社の能力と自社の強み」など。共によく似ている言葉だが、その意味は違う。「その違いが思考の初期段階で曖昧なままに放置されると、その後の思考の経路に歪みが生まれ、それが戦略の落とし穴につながる」という。
例えば、マーケットインは、「市場の動向を取り込んで戦略を作るべき」ということだ。マーケットには顧客以外に競争相手もいて、競争相手の動きに目を奪われると、顧客満足が二の次になる危険性がある。そこで、伊丹先生は「顧客イン」という言葉を勧めている。「顧客の立場にたって、顧客が真に望むものは何かを徹底的に考え抜く」というスタンスだ。
それぞれごもっともで、比較的わかりやすいのだが、注意を要するのが�ぁ峪�て非なることを間違える」。例として挙がっているのは、「マーケット動向と顧客動向」「自社の能力と自社の強み」など。共によく似ている言葉だが、その意味は違う。「その違いが思考の初期段階で曖昧なままに放置されると、その後の思考の経路に歪みが生まれ、それが戦略の落とし穴につながる」という。
例えば、マーケットインは、「市場の動向を取り込んで戦略を作るべき」ということだ。マーケットには顧客以外に競争相手もいて、競争相手の動きに目を奪われると、顧客満足が二の次になる危険性がある。そこで、伊丹先生は「顧客イン」という言葉を勧めている。「顧客の立場にたって、顧客が真に望むものは何かを徹底的に考え抜く」というスタンスだ。
【思考プロセスの落とし穴】�．咼献腑鵑鯢舛�ず、現実ばかりを見るビジョンではなく、現状分析から思考をスタートさせる。現状の延長線上の発想ではつまらない戦略になる。��不都合な真実を見ない自社にマイナスをもたらす不都合な真実から目をそらす。�Ｂ腓�な真実が見えない既存事業とは異なる事業領域の動向など、従来の視野を越えて広がっている大きな真実を見過ごす。�せ�て非なることを間違える似て非なる概念の違いが戦略思考の初期段階で曖昧なまま放置されることで、その後の思考の経路に歪みが生じる。【戦略内容の落とし穴】�々覆蟾�みが足らず、メリハリがない戦略の焦点を絞り込むことで生じるデメリットを恐れて、捨てることをためらい、てんこ盛りの戦略となる。�∋�前の仕込みが足りない戦略を現場で実行するための態勢が準備できていない。�Ｃ奮�を追った、流れの設計がない戦略を展開する時、どの段階でどんな活動を行い、そこで生み出されたものをどう使うか、といった流れの設計がない。�だ気个�りで、奇も勢いもない定石通りの戦略ばかりで、顧客を引き付ける意外性や勢いが戦略に組み込まれていない。
2018年12月01日
日本は世界一の「超深海」大国
東大の海洋研究第一人者による、「太平洋で何が起こっているか」についての最新刊。海洋研究のための乗船観測は1740日におよび、深海潜水艇での潜水経験は15回になるという。
太平洋の成り立ちから、深海研究の歴史、「天皇海山群」の名づけの謎にいたるまで、興味深い話題が簡潔にまとめられている。だが、一般人として「加害者」としても直接かかわり、人類の未来に多大な影響を与える「人間活動に起因する大問題」には特に注意を払うべきだろう。
今日観測されている「人間活動に起因する大問題」には三つある。�＿甲伐宗↓∋誓�化、��POPsとプラスチック汚染だ。�´△話坐妊┘優襯�ー利用による二酸化炭素排出によるもので、防止には石炭・石油・天然ガスなどの使用を止めるしかない。EV化はCO2削減に寄与するものの、火力発電に頼っている限りやはり二酸化炭素ガスを排出する。
大気中の二酸化炭素濃度上昇による温暖化が有名だが、海洋も大気中の二酸化炭素を吸収するため、海水中の炭酸濃度増加で、海洋酸性化が進んでいる。酸性化すると海水中の水素イオン濃度が上昇するため（産業革命以後150年間で30%増加）、炭酸カルシウム（CaCO3）の骨格を持つ海洋生物（サンゴ、貝、有孔虫、ウニなど）が絶滅の危機に瀕しているという。
そして、最近注目されるようになったのが、マイクロプラスチック汚染。回収されなかったレジ袋やペットボトルが川から海に流され、やがて細分化する。細分化されたプラスチック片は海面を漂ううち、やはり海面に漂う猛毒のPCBsを吸着する。魚や海鳥などの海洋生物がマイクロプラスチックを餌と見誤って摂食し、PCBsが生物の脂肪組織に取り込まれる（生物濃縮）。
まずは、不要なレジ袋を断り、ペットボトル他プラスチック製品の回収を徹底することだろう。
4：海は、下向きにも広がりを持つ、立体的な三次元の世界太平洋の平均深度は4188mもあり、最も深いのは西太平洋のマリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵（深さ10,920ｍ）。世界で最も深い海。8：日本は世界1位の「超深海」大国！・わが国のEEZは世界で6番目の広さ・EEZの体積では、世界で4番目（��USA、�▲�ーストラリア、��キリバス）・6000m以深の「超深海」に限れば、世界一29：�＿甲伐�・日本近海では、世界平均より大きい1.11℃/100年の海面水温上昇が観測されている・海面水位上昇・水中酸素濃度減少（表層水中で50年間で15%減少）33：�∋誓�化・海洋は人類が大気中に放出している二酸化炭素の1/3を吸収・海水中の炭酸濃度増加で、海洋酸性化（産業革命以後150年間でpH-0.1）・海水中の水素イオン濃度が30%増加・炭酸カルシウム（CaCO3）の骨格を持つ海洋生物絶滅の危機36：��POPsとプラスチック汚染・POPs（Persistent Organic Pollutants)とよばれる難分解性有機汚染物質およびプラスチックごみが海洋全域に広がっている・PCB「夢の油」天然油に比べてきわめて安定→恐るべき毒性・プラスチックごみもきわめて分解されにくく、軽いために海面に浮かび、海流に乗って外洋に広がる・5mm以下になったマイクロプラスチックがPOPsを吸収・濃縮・魚や海鳥などの海洋生物がマイクロプラスチックを餌と見誤って摂食・PCBsが生物の脂肪組織に取り込まれる（生物濃縮）
