2018年03月
2018年03月31日
「書くことは私の業。この人生で駄目なら、化け変わってでも作家になりたかった」
「デビュー小説がいきなり芥川賞受賞
」と聞いて才気あふれる若手作家かと思ったら、同い年。
これまで、「作家を志し、菓子職人やスナックホステス、草津の温泉旅館の仲居さんなどの職を転々とした雌伏の時期が長かった。それでも１０代で兆した表現欲は揺るがず小説を１００作近く書いてきた」という。40年間の下積みの末、やっとデビューできたのがこの小説だったのだ。「書くことは私の業。この人生で駄目なら、化け変わってでも作家になりたかった」
「物語の主人公は多重債務を抱え、インドのＩＴ企業で日本語教師として働くことになった女性。現地は１００年に１度の大洪水に見舞われ、街に川底にあった泥が流出する。腐臭を放つ泥の山から顔を出す雑多な品々に導かれるように、自らの記憶やさまざまな人々の人生を追体験する主人公の様子が、現実と幻想を交えてつづられていく」
筆者も3年前から小説の舞台であるチェンナイのIT企業で日本語を教えているそうで、「体験したこと、思ったことがすべて詰まっている」そうだ。
私も仕事と、休暇、それに同窓生の結婚式でこれまでに3度チェンナイを訪れたことがある。小説に出てくるベンガル湾の散歩、ゴミが漂う川の悪臭、観光地で詐欺にあったこと💦などが思い出されて懐かしくなった。
87：共学の大学ですら男女の会話禁止、講義室内の座席はすべて男子席と女子席に分かれ、あまつさえ監視カメラが設置され・・・96：駆け落ち先まで親兄弟が追ってきて相手ともども本人を殺害する事件が今も後を絶たず、それらはすべて＜名誉殺人＞という名で呼ばれ、加害者が罪に問われることは稀。96：インドでは超音波による胎児の出生前性別診断が法律で禁じられていますが、女児と知ると妊娠中絶する親が非常に多いからです。たとえ生まれても女の子とわかればすぐさま水路やごみ箱に捨てられ、あるいはネコイラズを飲まされ、あるいは家のどこかにそのまま放置され一度も母乳を与えられないまま餓死させられる赤ん坊などごまんといます。
2018年03月30日
「ラジオ英会話」終了？
遠山顕先生の「ラジオ英会話」が今日で終了した
。昨日までは何も言ってなかったので驚いた。考えてみれば、同番組はもう10年続いたし、昨年は遠山先生の体調不良で数か月休みになった(その間は、過去の番組を再放送）。私も10年間聞き続けたわけだ。留学していたこともあるので、ある程度英語はできる。「今更、ラジオ英会話ですか
」と驚かれることもあるのだが、この20年間は仕事で使うことは稀で、何もしなければさび付くことは目に見えている。なんとかレベルを維持したいので、こうしている。それでよく聞かれるのが、「どうしたら英語が話せるようになりますか」という質問。いつも答えは決まっていて、�，泙困榔儻譴髻崙匹鵝廚如嵎垢�」というインプット、�⊆，法◆崕颪い燭蝓廖嶇辰靴燭蝓廚箸いΕ▲Ε肇廛奪箸竜＿颪鬚弔�ること。とにかくインプットしなければアウトプットなんてできるわけがないのだが、ほとんどの人はインプットの量が圧倒的に足りない。それでいて、「話せない」などというのだが、話すための語彙も文法も慣用句も知らなくて話せるわけがない。そして、これらは中高の教科書で学んだことでほとんど用は足りる。だが、恐るべきことに、中高レベルの英語も出来ない人が大半。これでは、まるで膨大な時間の無駄だ。
それなら、「英語は選択制にしたほうがいい」というのが私の持論だが、それはさておいて、大人になってから英語を学びなおしたい人に勧める�．ぅ鵐廛奪箸良�頭が、長年「ラジオ英会話」だったのだ。今時だから、CDでもネットのオンディマンドでもなんでも安価に購入できるのだが、「いつでもできる」というのは実行しないことにつながりがちだ。「ラジオ英会話」は朝645-700という決まった時間、それも早朝で他の予定がまず入らないというのがいい。それも、録音せず、その時間に聴く。要は、毎日の習慣にすることが大事なのだ。
読む方は、私は学生時代は英字新聞を、後にはTimesやNewsweekを購読していた。自分が興味がある記事なら読む気が起こるからだ。今は、インターネットで各紙・各誌の記事が無料もしくは安価に読めるので困らなくなったが、これも、「いつでも読める」と思うと読まなくなってしまった。高いけれど、昔のように紙で購読したほうがいいのかもしれない。
2018年03月29日
一人負けする中国経済？
「このまま第二次大戦後の世界体制は崩壊していくのか、それともこの情勢を正し、世界秩序が再構築されるのか」
アメリカを中心とした世界秩序を維持するためには、アメリカが再び「世界の警察官」として機能するかどうかに掛かっている。そして、世界的な軍事力を保持するには莫大なお金が必要なのは言うまでもなく、それは圧倒的な経済力によって初めて可能となる。
オバマ前大統領は財政状況の悪化で、「アメリカは世界の警察官をやめる」と宣言し、シリア内戦にもロシアのクリミア併合にも介入しなかった。トランプ大統領もこの立場を継続しており、一方で、同盟国にあからさまに負担増を求めている。
武者氏の主張は、アメリカ経済はインターネット・サイバー空間である「第七大陸」を中心に圧勝しており、「トランプ政権の政策は大きく進化・成長していかざるを得ない」というもの。つまり、トランプ大統領が戦略目標としている、�＾梁腓淵▲瓮螢�の復活、��安全な世界、�９馥盡柩僂粒諒檗△鮗存修垢襪燭瓩砲蓮�現在行おうとしている「孤立主義、排外主義、保護主義」などによっては達成できないことにやがて気づき
、トランプ大統領が方向転換するというのだ。これまで見る限り、かなり大きなIF。一方中国は、「人類の歴史上最大の過剰投資の清算過程が始まった」ところで、金融危機→経済危機→政治危機に発展すると予測する。
習近平政権も、こうした危険性を認知し、認知しているからその対策として自らへの政治権力の集中とFintechやAIなどでの新興企業の育成を図ろうとしているように私には見える。問題が大きいので、政治体制が盤石でなければ乗り切れないと思っているのではないか。国営企業を中心とする過剰投資の清算を新興企業が生み出す富で相殺できるかどうか・・・そういう時期になっているのではないかと思う。
5：アメリカ経済は強い＝イノベーションを次々に生み出す活力・インターネット・サイバー空間「第七大陸」・消費に落とし込む力・ドル高が続く→アメリカ帝国の覇権を強める6：トランプ政権の政策は大きく進化・成長していかざるを得ない7：アメリカで必要なことは英知とアントレプレナーシップ、中国では巧みに政商化すること51：帝国主義を進めているアメリカと中国帝国＝国境内の中枢地域と、国境外の辺境・周辺地域に分かれ、両者の間には明確な優劣がある。価値観、経済力、軍事力で優位にある中枢地域が、辺境・周辺地域に対して一方的な影響力を持つのが正当であるという論理。136：人類の歴史上最大の過剰投資→清算過程が始まった�…眠澳躓，�ら全般的な信用収縮に向かう「金融危機」��不動産バブルの破綻と企業破綻から失業が激増する「経済危機」�８柩冑坩造�ら共産党一党独裁への批判が高まる結果としての「政治体制危機」
2018年03月28日
乗っ取り
Steve Jobsは取締役会でCEOを解任され、Appleを去るとき、「なんで自分が創業した会社から追い出されなければいけないんだ」と絶望したというが、それはAppleが上場していたから当然のこと。しかし、オーナー企業でも追い出されることがある。
背景にあるのは、「名義株」の問題。株式の名義上の所有者と本当の所有者が違うケースだ。どうしてそんなことをするのかというと、同族会社と非同族会社では法人税制が違うからである。同族会社の場合、内部留保に対して課税がある。なぜなら同族会社にとっては給与や配当で払っても、そうせずに内部留保に回しても支配権を持っている限り同じことなので、放っておくと過剰に内部留保して目先の税金を抑えようとするからである。それでは税収が上がらないので、同族会社にのみ内部留保課税がある。
これでは法人所得税との二重課税になるので、オーナー企業は税制上非同族にしたい。そのためには特定株主グループ（同族）の持ち分が半分以下でなければならない。そのために、株式を譲ったことにして「名義株」にする同族会社が昔はかなりあった。
シマブンもこれをやっていて、分家の持ち株分の無償増資を繰り返したり、それだけでは足りずに、役員や管理職まで島田本家の株を名義株としてシマブン在籍中に限り持ってもらっていたという。しかし、こうした方法は、名義貸しした本人や家族に、「この株は自分の株だ」と主張されると、もともと違法のため返還を求めることが難しい。
島田前社長が陥ったのもこれで、会社が発展を続けている間は関係者もそれ以外に利益享受しているのでそうした問題は起こりにくいが、バブル崩壊で業績は悪化している。神戸製鋼所による総会屋への利益供与事件で、その資金源としての裏金づくりでシマブンの名前も挙がっている。極めつけは、世界的な鉄鋼業界再編に備えるため「軍資金」を用意しておこうと、シンガポールで運用した160億円を2008年のリーマンショックで全部すってしまった。
結果、Jobs同様、取締役会で解任される。解任された島田氏は名義株の返還を求めるが、ここで名義株を持っていた取締役と親族が結託、島田氏に反旗を翻すのだ。島田氏は裁判を起こすが、裁判にも負け、結局、運用失敗で会社に与えた損害の代わりに島田氏名義になっていた株まで全部差し出すことになる。
島田氏が40年間自腹で接待に励んだおかげもあって、当時のシマブンは自己資本300億円を持つ優良企業になっていた。名義株の価値が高いのだ。そこまで価値のない会社であれば、解任劇も起らなかっただろう。また、島田氏が子息にバトンタッチすることを前提に社内で後継者を育ててこなかったことも問題だろう。その息子と図らずも対立して追い出してしまった頃から、本人も本書で認めているが、経営判断がおかしくなっていく。
仮にクーデターが起こらず、島田氏が続投した場合、高齢での独り身（奥様を先に亡くしている）の精神的不安定さに起因する判断ミスで、遅からず、また経営問題を起こしていた可能性が高い。300億円あった自己資本はシンガポールでの運用ミスで半減しており、今度失敗していたら会社は危なかっただろう。
2018年03月27日
「島田のブンブン」の虚構
神戸製鋼所による尼崎製鉄の吸収合併が無事成功し、外島社長の続投が決まったのち、島田文六氏は、博章機関のパシリとしての貢献が認められて、外島社長の「夜の秘書課長」となる。島田氏は元来下戸であった。 それが、毎晩のように、一次会から二次会、さらにはその後も神鋼の外島社長についていく。
目的は業界や行政の情報収集。こちらも飲まないと相手が警戒して胸襟を開いてくれない。パシリの頃から、酒を飲んでは速やかに吐くことの繰り返しだったという。「夜の秘書課長」になってからは、さらに簡単に速攻で吐けるよう、口から喉に木綿糸を入れていたという。
これを40年続けてシマブンコーポレーションを純資産400億円にしたというから鬼気迫る。しかし、それが通じたのは高度経済成長期という背景の中で、通産省（当時）も鉄鋼業界の「護送船団方式」を推進したからだろう。パイが大きくなっていたから、業界下位の神鋼も大きくなったし、それにくっついていたシマブンも大きくなった。しかし、バブル崩壊後は互いにそんな余裕はなくなり、神鋼自体も近代化を迫られた。
ちょうどバブルが崩壊しつつあった1993年に、島田社長の夜の遊びぶりを唄った『島田のブンブン』が大ヒットしたというのは皮肉である。中村美津子が紅白でも歌った。この歌はもともと、著者の宴席での余興の歌だったという。それをメジャー発売しないかという話が大阪の民放TVからあり、「宴席のネタ」にでもなればとプロデュース資金を提供した。
2018年03月26日
神戸製鋼所不祥事の歴史
本書は神戸製鋼所の工場構内での作業請負や製鋼原料である鉄スクラップを同社に納入するシマブンコーポレーションの前社長によって書かれている。シマブンは前社長の祖父である島田文三郎が初代社長で、祖父→父（早世）→叔父の後で著者が就任したため、四代目社長になる。
本書のテーマは、�．轡泪屮鵑�関わった神戸製鋼所の「闇」、�▲轡泪屮麁發任慮⇔脇�争の末、オーナー社長であったにも拘らず解任された経緯、の二つ。まず�，�ら。
昨年発覚した神戸製鋼所のデータ改ざん事件。本書はこの事件には全く触れてないのだが、これを読むと、こうした事件が起こったのは必然と思えてくる。それは、発足の歴史から始まる業界内シェアの問題と、それを解決するために会社が選んだ「方法」にある。
まず、神戸製鋼所の歴史だが、同社は明治の終わりに神戸を拠点にする新興財閥の鈴木商店によって設立されている。明治時代に台湾の樟脳取引で大きくなり、神戸製鋼所や播磨造船所（のちに東京の石川島と合併してIHIとなる）など重工業分野に進出していった。一時は三井や三菱などもしのぐ勢いだったが、昭和初期の金融恐慌で、メーンバンクの台湾銀行から取引停止となり破綻する。そこには新興財閥の台頭を快く思わない大手財閥の画策があったという説もある。
いずれにせよ、親会社の破綻で独立して経営することになった神戸製鋼所はメーンバンクを持たず、常に資金不足に悩まされることになる。資金がないため、市場が伸びている時に積極的に投資できない。このため鉄鋼での業界シェアは万年最下位で、業界内で「値上げは最後で、値下げは最初」という状況だった。恒常的に業績が悪いのだ。
そこで、神戸製鋼所は鉄鋼以外の分野に多角化を図るのだが、元が資金不足なので新事業の多くも業界一位の高収益事業ということにはならない。例えば、建設機械では、�．灰泪帖↓▲�ボタ、�Ｋ�田自動織機、�て�立建機、に次ぐ業界5位（シェア4.3%）である。通常、このレベルでは利益は出ない。
こうして、もともと会社に余裕がないから、「なんとかしたい」という欲求が常にある。それを創意工夫による画期的な新製品などで解決できればいいのだが、神戸製鋼所には正攻法ではない「別の方法」で解決してきた歴史があった。
著者は、30歳の頃から神戸製鋼所の「裏金づくり」に協力させられてきた。神戸製鋼所からシマブンに帳簿に記載された以上の不良品が払下げになる。それをスクラップとして売った資金は神戸製鋼所に還流され、東京総務部長が管理する。その鈴木総務部長は社長秘書も務め、その資金で外島社長（当時）の進める尼崎製鉄との合併のための工作資金に使われた。1955年当時の神戸製鋼所は鉄鉱石から銑鉄をつくる高炉を持たず、銑鉄を買って平炉で鉄製品を作っていた。このためどうしても尼崎製鉄が欲しかったのだ。
首尾よく尼崎製鉄との合併に施工した神戸製鋼所は、その技術を取り入れて、昭和30年代には神戸製鉄所、昭和40年代には加古川製鉄所に自前の高炉を建設していく。ここで、裏金づくりのための粉飾決算（「B勘」）を止めておけばよかったのだが、合併に絡む権力闘争で大物フィクサー児玉誉士夫に近づいた神戸製鋼所は逆に児玉に絡めとられてしまう。株主総会対策として、この後40年間も関係を続けていくことになるのだ。
上がこうした「ごまかし」を長年続けていれば、それは会社の社風を悪くする。下も仕事で起こる問題を表面だけ取り繕うようになり、それを上司が叱れないからだ。以前から「不祥事の絶えない会社」という評判があった。
62：神戸製鋼所も、経営権を持ち、再生さえた、尼崎製鉄との合併の実現を目指していた。そして神戸製鋼所の九代社長外島健吉と、神戸製鋼所から派遣され、企業再生を実現した尼崎製鉄の社長曾我野秀男との社長の椅子をめぐる権力闘争が始まっていた。私が鈴木部長から受けたのは、外島社長を守るための工作費を捻出する裏金づくり、通称「B勘」への協力の打診だった。67：組織的な裏金づくりは、必ず戦犯づくりとセットで行われる。その用意された戦犯の一人が、シマブンではない、私個人というわけだ。68：組織は思いを引き継がない。組織が引き継ぐのは仕組みである。そして、その引き継がれた仕組みである”尻尾切り”が、その後、遠い40年も先に発動することになるのである。80：神鋼の博章機関と児玉誉士夫の影との関係は、身内の権力闘争ではなく株主総会対策に衣替えして、この合併以後も続いていく。
2018年03月25日
海外移住成功のヒント
定年後、「海外で第二の人生を謳歌する人々の物語」とある。登場するのは、フィリピンで17歳の少女と再婚した元銀行マン、マレーシアの浜辺で暮らす元大学教授夫妻、地中海に住み着いた元テレビマンなど。
元気な定年退職者が増えているのはいいことだが、「こんなことがいつまで続けられるのか」とも思う。現在退職している方々の多くは年金をしっかりもらい、日本で持つしがらみから離れ（時には離婚して）海外移住している。その年金を支払っているのは現在働いている人の税金と、その税収がまったく足りていないから毎年大量に発行される国債による借金。海外移住者の年金は居住国に送金され、現地で消費されるから、出ていったまま日本には還流しない。
この25年間、日本人の平均所得はまったく増えておらず、増税と社会保険料の増加で手取りは確実に減っている。その間に、東南アジアの所得は数倍に増えた。この傾向が続けば、定年後は安く東南アジアで晩年を過ごすということも、将来はできなくなりそうだ。
22：「ネグロス島のバコロドに夫婦で住んでいる知り合いの日本人は、電気・水道・住み込みのメイド、電話代、車の維持費を含めて、生活費は5万円。もっとも400坪の庭付きの家は持ち家。フィリピン人の奥さんの名義。外国人が不動産を所有するのは不可能」57：68歳の父親と赤ん坊。南方の女性は早熟とはいえ、妻は18歳。「これでいいのだ」104：高校を卒業するとダバオに出てきて、ショッピング・モールの店員になった。（中略）そこで知り合った若者と親しくなったが、彼女が妊娠したことを知ると、姿を消してしまった。フィリピンにはシングル・マザーがきわめて多いが、大半はこのパターンだ。彼女は郷里に帰って出産すると、子供を両親に預け、日本行きを決行する。当時も今も、日本に行けるのは、宝くじに当たったようなもので、帰ってくると周囲がほうっておかない。184：必要な3K「健康」「カネ」「カミさん」カネは、日本での必要経費の1/5〜1/3
2018年03月24日
地獄への道は善意で敷き詰められている
著者は、フィールドホッケーをやるため早稲田大学に進学したもののレギュラーになれず退部。大学に行かずにアテネフランセでフランス語を勉強していたら、まだほとんどフランス語ができないのに、アルジェリアで石油開発をする企業に通訳として派遣される。危険地手当で貯めた資金で、その後フランスで博士号を取得。リール大学を経て、現在パリ第8大学心理学部准教授。
自伝的要素と、フランス現地事情、そして半生を通して到達した信条がエッセー風に赤裸々に（「研究もせず暇にしている」など、地位を保証されている国家公務員でもなかなか本には書かないだろう
）書かれた不思議な本。その信条は、「普遍的真理や正しい生き方がどこかに存在するという信念自体が危険」というもの。それは、全体主義に繋がるという。それはさておき、フランスの大学事情を読むと、多難という印象。欧州では英独が改革を進めて経済でもリードしているのに対し、フランスやイタリヤなど南欧は改革しようとするたびに既得権者の大きな反発があり、遅々として進んでいない。大学は基本的にすべて国立で、教員が国家公務員であり、博士号を取って雇われた時から終身雇用で、報酬も年功序列で上がるというのは日本の国立大学と同じ。
エリートは大学に行かず、全校合わせても年間に数百人しか入学できないグランゼコルという「高等職業教育機関」に進学する。大統領も、高級官僚も、大企業の経営者もほとんどがグランゼコルの出身者で占められる。もちろん、ルノー・日産のゴーンCEOもグランゼコルの卒業生だ。
この結果、Times Higher Education Rankingでもフランスの大学はTOP100に1校しか入っていない
欧州で上位に入っているのは、英独とオランダが多い。このままだと、フランスには観光産業しか残らないのではないか。
*普遍的真理や正しい生き方がどこかに存在するという信念自体が危険116：大学教員の実態フランスの大学では教授も准教授も年間192時間の授業ノルマがある。ほんの少しの例外を除き、フランスの大学はすべて国立であり、全国一律の同じ条件だ。（中略）年間52週のうち半分や休み。残りは週二日出勤し、それぞれ3時間の授業をすればよい。日本式に言うなら、週に90分を4コマ。（中略）日本の大学のように会議で忙しいわけでもない。私は年に2回ぐらいしか会議に出ない。117：年を取るにつれ、自らの能力の限界にほとんどの人間が気づく。（中略）すると以前は時間が足りなくて困ったのに、今度は逆に暇を持て余す。227：フランスの大学制度エリートが通うグランゼコルと普通の大学の二重構造。前者はバカロレア取得後、高校在学中に優秀な成績を収めた学生だけが入学を許される二年間の予科を経て、さらに難しい入学試験に合格する必要がある。後者はバカロレアさえ取れば、どの大学・学部にも無試験で入れる。（中略）海外領土も含めると、大学はフランス全土に73校あり、すべて国立である。（中略）よく誤解されるが、ソルボンヌ大学は東大や京大、米国のハーバードやスタンフォード、英国のケンブリッジやオックスフォードのような、優等生が通う大学ではない。352：積極的自由は消極的自由よりも優れている。そう考える人は多い。だが、積極的自由は全体主義に繋がる危険な思想だ。人間の精神的完成は、古代ではプラトンが称揚し、近代に入ってからはルソーやカントの他にも、ロベスピエール・ヒトラー・スターリン・毛沢東・金日成など多くの論者が、この理念を挙げた。宗教裁判や魔女狩りを通して中世キリスト今日も＜正しい世界＞を守ろうとした。普遍的真理が存在するという信念自体が問題だ。だから、全体主義から人間を救う「異邦人のまなざし」に私は期待するのである。
2018年03月23日
日本電産のM&A
1980年代に始めたHDD用の精密モーターで大きく成長した日本電産は1990年代後半には同モーター市場の約70%のシェアを取るまでになった。それまでの大型HDDはベルト駆動だったが、日本電産はダイレクトドライブにしてコスト削減と信頼性向上を同時に実現させた。
その後M&Aを繰り返すようになったのは、業界の大きな技術革新だったという。精密モーターのシャフト軸受けには従来ボールベアリングが使われていたが、HDDの記憶容量が上がって、より安定的に高い精度で高速回転を続けられるモーターが必要になった。そのためにはボールベアリングでは無理で、「流体動圧軸受け」（FDB）が必要になったのだ。日本電産はFDB対応は進めていたものの、FDB精密部品の加工技術がなく、部品はほとんど外部から調達していた。
この10年に一度の技術革新の波を乗り切るために繰り出したのが一連のM&Aであった。「1997年に計測機器メーカーのトーソク、プレス機製造の京利工業。1998年に光学機器のコパルなどを、日産自動車や富士通などから次々と買収。それらの企業の技術を活用しながら、シャフトや軸受けや周辺部品の加工機械を徐々に開発していった」（p213）その仕上げが、HDD用モーターの競合企業であった三協精機の買収（2003年）。同社は、FDBに早くから取り組んでいて、保有する特許数も多かったという。
1997-1998年、その後2003年以降と日本電産がM&Aを実施した年は日本株が低調で、買収価格が高くならない時期を選んでいる。正に10年がかりで、欲しい会社を技術マッピングに基づいて、じっくりと無理せず買っていっている。これは任期のあるサラリーマン経営者にはなかなか難しい。功を焦ると、東芝のWestinghouse買収のように、とんでもない会社をとんでもない金額で買うことになる。
創業以来の買収件数は57件。
「今まで買収してきた会社が、伸びる市場に非常にマッチしてきましたね。どれも図星で当たっていて、『これは必要なかった』という会社は1社もないです。（中略）どれも買収した当時には『なんでこんな会社を買うの？』とずいぶん言われたもんですよ。例えば、日本電産コパルはカメラのシャッターの会社。デジタルカメラの市場が小さくなり始めたときには、『一体どうする？』のと言われましたが、その技術はクルマ用のカメラに使われ始めて、新しい成長を迎えています。それから日本電産シンポは減速機の会社。これも『モーターは、サーボ技術で回転を制御するようになるので、いずれ減速機の市場はなくなる』などと言われたものですが、ここへきてロボットに使われる減速機は、モノが足りないくらいで、お客の注文が殺到している状態」（永守社長）
第6章 変化と創造217：「M&Aのノウハウは誰から教わったものでもない。すべて実践の中から体得していった」買収価格は、EV/EBITDA倍率で「最大10倍まで。実際は5-8倍で買うことが多い」「日本のM&Aは高値で買いすぎる」当てが外れると大きな減損を計上。東証一部の同倍率実績は2001-2014年で8倍。229：「セールスにおける今一つの重要なことは、足で稼ぐこと」日本電産サンキョー再建の際、営業社員に対して「月100件以上の顧客訪問」「そのうち30件以上は新規開拓」を義務付け。234：新市場は構想で切り拓く「経営に最も大事なのは構想力。頭の中にパズルを描いて、1ピースずつ埋めていく」外からは、自社の領域と離れた島のように見えても、それを買収したら次は、間をつなぐ橋のような技術を買う。あるいは自前で作る。橋ができたら周囲を少しずつ埋めたてていく。橋の両側を埋め立てられれば、下は内海になる。後は水をかき出すだけで、大きな陸地、ついまり広い市場を対象にした事業ができる。そこまでの構想を描けなかったら新事業に取り組んではいけない。
2018年03月22日
数字オンチが会社を潰す
永守社長に限らず、成功した経営者が共通して言うのが、「自分は根っからの小心者。いつも先のことが気になって仕方ない」という心持。かつて、米インテルを半導体の覇者に押し上げた名経営者アンディ・グローブも自著『パラノイアだけが生き残る』で、自分のことを病的なくらい「超心配性」だといっている。
会社経営で心配だといえば、�〆睫魁↓⊃融�、�６ス腓世蹐Α２饉劼鮖呂瓩譴个垢阿砲海譴蕕量簑蠅膨礁未垢襦�これまた永守社長に限らず、京セラの稲盛氏、スター精密の佐藤氏など、技術系の創業者が必要に迫られて財務を勉強した結果、本質を捕らえた、専門家以上に素晴らしい財務の本を書いた例は多い。
永守社長の『技術ベンチャー社長が書いた体当たり財務戦略』が出版されたのは、ちょうど私が大学を出て、新卒でVCに就職した年。「投資先の社長が書いた本」ということで社内に置いてあって、読んだ気がするのだが、内容は忘れていた💦
第5章 経営者と志173：「かつての趣味は『会社四季報』を熟読すること。今は世界中のモーターと、その関連分野の会社のデータを読むこと」
何冊も買い込んで、自宅のトイレ、リビング、自分の部屋、寝室などに置いていたという。常に読み続けているから、「上場企業の内容は皆、頭の中に入っていた」177：「身銭を切るから信頼される」会社に損をさせることは許せない。小は不必要な会食から、中と大は社有車にしながら実態は自家用車、社宅としながら事実は社長宅。社員と頻繁に繰り返す会食も、永守はポケットマネー。ただし、豪華弁当は一切なし。198：「数字オンチが会社を潰す。数字の裏付けのない机上の理屈は負け犬の遠吠えだ」創業して間もない頃から、夜、会計の専門学校に通い、さらに独学でも徹底的に勉強。勉強熱心さが高じて1986年には『技術ベンチャー社長が書いた体当たり財務戦略』を出版。
2018年03月21日
「ロングズーム」の歴史
我々が当たり前のように恩恵を受けている技術も、誰かが発明したり、歴史を重ねて改良されてきたものだ。時に技術革新は、発明家本人も予想だにしなかった波及効果をもたらす。
グーテンベルクの印刷機はメガネ需要の急増を引き起こし、エアコンの発明はアメリカの政治地図を塗り替えた。真空管アンプの発明は10万人規模の政治集会を可能にし、その効果に最初に気付き利用したのはヒトラーだという。後に、キング牧師も、ビートルズも利用した。
こうした、「さまざまなスケールで同時に検討することによって、歴史の変化を説明しようとする試み」を筆者は、「ロングズーム」の歴史と名付ける。
一つの結論は、「効果がプラスだけに働くテクノロジーの進歩はない」ということである。例えば、超音波の利用で、船は氷山との衝突を避けられるようになったが、1980年代に中国でエコーが普及してから、毎年数百万人の女の胎児が中絶されるようになった。水道の塩素消毒で死亡率は激減したが、「清潔病」の行き過ぎで、幼少期に免疫系が未発達になり、アレルギー患者は増えた。
「テクノロジーの進歩には独自の内部論理があるが、そのテクノロジーの応用にまつわる倫理は私たち次第である」
「テクノロジーの進歩には独自の内部論理があるが、そのテクノロジーの応用にまつわる倫理は私たち次第である」
11：歴史に語る価値がある理由＝一般に当然と思われている世界を新鮮な目で見られる先進世界の人々の大半は、水道水を飲んで48時間後にコレラで死ぬことをまったく心配しないということが、どれだけすごいかをわざわざ考えたりしない。14：アイデアとイノベーションの歴史も同じように展開グーテンベルクの印刷機は、メガネ需要の急増を引き起こした。読書という新しい習慣のせいで、大陸中のヨーロッパ人が突然、自分は遠視だったと気づいた。16：エアコンの発明者は、家庭の居間やオフィスビルを涼しくすることに乗り出したとき、アメリカの政治地図を塗り替えようとしていたわけではないが（中略）、彼らが世界に解き放ったそのテクノロジーのおかげで、アメリカの移住パターンが劇的に変わり、それがひいては議会とホワイトハウスの主人までも変えることになった。19：「ロングズーム」の歴史鼓膜を震わす音波の振動から大衆の政治運動にいたるまで、さまざまなスケールで同時に検討することによって、歴史の変化を説明しようとする試み。153：真空管アンプが生まれる前、人間の声帯には限界があるため、1000人以上の人々に一度に話しかけるのは難しかった。しかし複数のスピーカーにつなげられたマイクは、声が聞こえる範囲を数倍に広げた。この新たな力に誰よりも早く気づき、そして利用したのが、アドフル・ヒトラーである。彼のニュルンベルクでの集会には10万人を超える信奉者が集まり、全員が総統の増幅された声に聴き入った。20世紀のテクノロジーの道具箱からマイクとアンプを取りのぞいたら、ニュルンベルクもキング牧師の「私には夢がある」も、この世紀の決定的な政治集会が消滅することになる。165：効果がプラスだけに働くテクノロジーの進歩はない（超音波で）氷山から救われた船一隻につき、数えきれないほどの妊娠がY染色体の欠如のせいで中絶されているのだ。テクノロジーの進歩には独自の内部論理があるが、そのテクノロジーの応用にまつわる倫理は私たち次第である。195：水道の塩素消毒1900-1930に急速に普及平均的なアメリカの都市で、総死亡率の43%減少。幼児死亡率は74%減少。
2018年03月20日
上司と部下
永守社長は、「１匹のオオカミが49匹の羊を率いる集団と、１匹の羊が49匹のオオカミを率いる集団。どちらが強いだろうか。私は前者だと考える」という。
「弱いリーダーでは、どんなに強い部下を従えていても、その集団は強くはならない。逆に弱い部下がいても、正しい判断ができ、リーダーシップを発揮する強いトップがいる集団は強い」
第4章 上司と部下128：「管理職になったら、自分の思いを絶対に支持してくれる部下は、最初は2割でいい。後は実績を上げること。そうすれば、残りの8割もいずれ付いてくる」初めて部下を持ったときに何を考えるべきか。� 兵�分にとっての）過去の上司の良くない点の逆を行け��部下が何かをミスしたときに、あげつらって追い込まない�Ｉ�下が何かの仕事で成功したときには一緒に喜ぶ143：「部下を課長に育てないと、君は永遠に課長のままだ」「中間層こそが成長に向けた強いモチベーションを持つべきだ」150：管理職の人間性が業績をつくっていく「"能力は一流、人間は三流"の部門長の下では業績は五流以下である」
2018年03月19日
政治経済は文化の僕である
昨日は在学中に教えていただいた川勝平太先生の講演を聞きに大隈講堂へ。先生の講義を聞くのは35年ぶりか静岡県知事三期目だが、69歳とはとても思えない若々しさに驚愕
先生がオックスフォード大学で博士号を取得して帰国し、早稲田で教え始めたのと私が入学したのが同時期。純血主義の悪い面が多く出ていた当時の早稲田で数少ない｢熱くて、丁寧な」講義を行う真面目な先生だった。博士課程で研究指導を行う傍ら、一般教養で担当されていたのが経済学原書講読。あの授業が無ければ、ひょっとすると、後の私の英国留学も無かったかもしれない。
そんなわけで、川勝先生の素晴らしい人柄と研修者としての優秀さ、そして、後に著書を通しての政策提言能力と実行力は知っている。早稲田大学教授の頃、「田園都市生活」を提唱して、自らさっさと軽井沢に引っ越してしまった
最も驚いたのが、2009年に静岡県知事になったこと。その経緯を昨日初めて聞いたが、正に瓢箪から駒。出馬表明したのが、選挙ひと月前。県立の静岡文化芸術大学の学長として初めて静岡に来てからまだ2年しか経ってなかった。
発端は当時の石川知事の次期選挙への不出馬。川勝先生は自民党の候補としても名前が挙がっていたが、政治家になるつもりはないとこれを固辞。そこで自民党は、地元出身で、元労働省、同省から静岡県副知事への出向経験もある、坂本由紀子参議院議員を推薦した。坂本議員の知事選への出馬が決まったとたん、静岡文化芸術大学は「選挙マシーン」と化してしまう。県立であった同大学は、理事長が運営と人事を担当し、学長が研究と教育に責任を持っていた。
川勝先生は、大学に政治を持ち込むことに抗議して6月5日の理事会で学長を辞任。それを聞きつけた民主党が説得して、同党の推薦で知事選へ立候補することになる。しかし、選挙まではたったひと月。既知のスズキ自動車・鈴木修会長からは、「あんたのことを知っている県民は千人しかいない。静岡県民は375万人いる。絶対無理だ」と諭されたという。本人も無理は承知で、「学の独立を守るため」のアピールだけはしたいという思いだったという。
それがまさかの当選
先生のかねてからの信条は、「政治経済は文化の僕である」。経済学者が言うのだから説得力がある。こうなった以上、かねてから提唱されていた政策を実現すべく、国政にも参加してほしい。
2018年03月18日
"Bloom where God has planted you"
30歳間際で修道院に入り、修道会の命令で修練と学位取得のためアメリカに渡航。35歳で帰国した後、修道院が経営するノートルダム清心女子大学（岡山）に派遣され、その翌年、二代目学長の急逝を受けて36歳で三代目学長に就任する。惜しくも、本書の執筆後、2016年に亡くなった。
ベストセラーになっただけあって、シンプルだが含蓄のある言葉の連続。傍らに備えておきたいと考えるのも当然だろう。書名は、新米校長として自信を喪失し、修道院を出ようかと思い詰めた時に、一人の宣教師が渡してくれた英語の詩から来ている。
"Bloom where God has planted you"（神が植えたところで咲きなさい）
「咲くということは、仕方がないと諦めることではありません。それは自分が笑顔で幸せに生き、周囲の人々も幸せにすることによって、神が、あなたをここにお植えになったのは間違いでなかったと、証明することなのです」
それはそうと、やはり気になるのは、9歳の時、目の前で父親を殺されるという壮絶な人生。そのためかどうかしらないが、20代になってアメリカ人と一緒に働くようになるまで、笑顔は少なかったという。
誕生の時、父は53歳で旭川第7師団の師団長で、母は44歳。四人兄弟の末っ子に生まれた著者を父親は大変かわいがったという。陸軍の穏健派で、教育総監を務めていた渡辺錠太郎は1936年2月26日に「2・26事件」で青年将校らに銃殺される。
「血の海の中で父は死にました。凄惨な死でございました」
70：「大切なのは、カルカッタに行くことより、あなたたちの周辺にあるカルカッタに気付いて、そこで喜んで働くこと」マザー・テレサが、「奉仕団を結成してカルカッタに行きたい」と願い出た学生に107：悩みは嫉妬に似ている始めは小さかった悩みも、そこにばかり目をやっていると、どんどん雪だるまのように膨らんでいく。そして、転がりながら小さな悩みさえもくっつけて、自分ではどうしようもないほどに大きくなっていく。138：信頼は98%。あとの2%は相手が間違った時の許しのために取っておく。
2018年03月17日
「片山君、日本のジョブズになれ」
2014年に元シャープ社長の片山幹雄氏が日本電産に入社したのには驚いた。シャープで天国と地獄両方であれだけの注目を浴びた大企業の元トップである。そんな人が顧問ならともかく、他の大企業に経営幹部として転職したというのは聞いたことがない。
「挫折を経験した人間こそ可能性がある」と考えた永守社長が直接口説いたそうだ。その時の口説き文句が、「スティーブ・ジョブズだって米アップルを一度追い出されて戻ってきたんだから、君も日本のジョブズになれ」だったそうだ。
「片山に『お前のような経歴の人間が生きる道は、3つしかない』と話した。1つ目は韓国のLG電子やサムスン電子のような外資に行ってガバッと金をもらって暮らすか。2つ目はソニーのトップだった出井（伸之）さんみたいに小さな会社をつくるか。3つ目は、創業者がオーナーの企業に行くか、この3つだ。『3つ目を選んだのだから、ここで一生懸命働け』と。『私は自分の子供にこの会社を継がせないんだから、次にトップになれるチャンスだろう』と。（片山は）ものすごいカミソリを持っているが、彼にないのはオノだ。『数年かかると思うが、驚くような姿でまた表舞台に出て来い』と常々話している。『次のトップになるかはわからないが、君の次のチャンスはここにある』。そう話している」
これまで一番多かったケースは�，世蹐Α�シャープ社長としてもらっていた以上の高給で頭の中身を全部吸い取られるまで何年かいられる。能力のある人に再び舞台を国内で与えられたことで、日本としてはプラスとマイナス、ダブルで助かったことになる。
第3章 教育と成長85：会社の仕事のすべてが教育Mプロ＝管理職や一般社員が5人一組で交代しながら、資材や物品の購入先と交渉して、価格引き下げを図る。96：「挫折を経験した人間こそ可能性がある」元シャープ社長の片山幹雄を2014年秋に採用→CTO109：奇人変人の創業者「すぐ言い訳する、泣く、開き直る、逃げる、辞める」と続く人間を信用できない。
2018年03月16日
日本電産のコスト削減
日本電産のコスト削減の厳しさは有名で、「限界と思ったときがネゴのスタート」と言われる。転職してきた中途入社の社員が、「私は前職で納入業者から『鬼』と言われていました」と自信満々で入ってみたら、同じ部材を日本電産は半額で買っていたというエピソードがある。
「新たにグループ入りした経営再建企業の場合は1円以上、通常の状態の企業では100万円以上の購入品全てで申請を上げさせ、永守自身が諾否を判断している」ということで、会社の業務すべてに驚異的な目配りをしているから社員は気が抜けない。
しかし、これがサービス業で通じるのか？という疑問はある。永守社長は3年間務めたソフトバンクの社外取締役を「本業との兼務が困難」と昨年辞任した。在任中にはSBによる英ARM社の巨額買収もあった。それについては、「孫さんは30年〜50年先を見て、3兆3000億円も出してARMを買収した。ただ、技術革新のスピードは速いので、私にそんな勇気はない。私なら3300億円でも買わない」と発言している。
しかし、これがサービス業で通じるのか？という疑問はある。永守社長は3年間務めたソフトバンクの社外取締役を「本業との兼務が困難」と昨年辞任した。在任中にはSBによる英ARM社の巨額買収もあった。それについては、「孫さんは30年〜50年先を見て、3兆3000億円も出してARMを買収した。ただ、技術革新のスピードは速いので、私にそんな勇気はない。私なら3300億円でも買わない」と発言している。
第2章 人と組織51：赤字は罪悪「つぶれる会社には共通点がある。会社も社員も本来持っている潜在力を表に出していないだけだ」65：「限界と思ったときがネゴのスタート」新たにグループ入りした経営再建企業の場合は1円以上、通常の状態の企業では100万円以上の購入品全てで申請を上げさせ、永守自身が諾否を判断している。
2018年03月15日
仕事の勝ち方
日本電産と言えば、ハードワーキングやガンバリズムの代名詞のように言われた。それは、もちろん、何も考えずにがむしゃらに働くということではなく「知的ハードワーキング」なのだが、それでも、あの日本電産が今「2020年に残業ゼロ」を掲げていると聞くと、隔世の感がある。
1973年7月に永守重信が職業能力開発総合大学校（家が貧しくて授業料無料のところにしか進学できなかった）の3人の仲間と創業した日本電産は、現在の売上高が1兆円を超える。1973年と言えば第一次石油危機の年で、これを機に日本経済の高度成長は終わり、製造業からサービス業への経済構造の転換が起こり始めた年でもある。その結果、1970年代以降創業の製造業では、唯一の1兆円企業だという。
買収した三協精機でのエピソードが興味深い。
社員の机の中には「店が開けるほど、ボールペンやファイルケースなどの文具類がたまっていた」が、すべて1か所で管理し、申請しないと使えない方式に変えた。徹底した管理で文房具類の月平均購入額は、18万円から1万2000円までさがった。そうすると、社員から次々とコスト削減のアイデアが出てくるようになったという。
文房具購入費が月10万円以上削減できても、これだけで三協精機ほどの規模の会社が経営再建できるわけではない。しかし、こうした事は「思考の習慣」なので、文房具の経費削減ができない社員（=会社）は、10万円の備品を買うにも、100万円の機械を買うにも、1億円の設備投資をするにもいい加減なのだ。その結果、会社は潰れる。
私もたくさんの会社を見てきたが、整理整頓が行き届いた会社は例外なく労働生産性が高い。余計なものが職場になく、かつ、必要なものが必要なだけ備わっているから、社員が気を紛らわされることなく仕事に集中できる。ダメな会社は、仕事に関係のあるものもないものもあふれていて、そのために整理が行き届かず、しょっちゅう「あれはどこだ」と探している。
第1章 仕事と情熱12：社員の士気がすべてを決める「物事の成否はまず、やる気で決まる。無気力でかつやる気のない社員を歓迎する会社はどこにも存在しないし、存在すれば、その会社は倒産するか、業績悪化するかどちらかである」36：企業の力の差は、社員の意識の差である「人の能力の差はせいぜい5倍まで。意識の差は100倍まで広がる」45：日本電産の三大精神「情熱・熱意・執念」「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」
2018年03月14日
エコンとヒューマン
本書には、二つの架空のキャラクター、二つの人種、二つの自己が出てくる。
二つのキャラクター：速い思考をする直感的なSystem 1と、遅い思考をする熟考型のSystem 2
二つの人種：理想の世界に住む架空の人種エコンと、現実の世界で行動するヒューマン
二つの自己：現実を生きる「経験する自己」と、記録を取り選択をする「記憶する自己」
「政策は、国民の苦痛を減らすことを目標とすべきだ」で思い出したのが、菅直人首相（当時）が言い出した、「最小不幸社会」。これが話題になったのは7年前の1月で、直後に起こった東日本大震災で、議論が深まらないまま政権交代となった。
当時の民主党政権を評価しない私だが、実は、「最小不幸社会」は面白いと思った。「幸せの感じ方は人それぞれで、政治権力が押しつけるものではない」というのは、その通りで、「幸せ」は自分で見つけるものだろうし、多様な「幸せ」を国が支援なぞしていたら、いくら税収があっても足りず、結果として、国民全体が不幸になる。それに対して、「不幸」は大多数の国民に共通するから、政策は絞りやすく、費用対効果が高い。
どこから思いついたのか？と思っていたが、行動経済学を学んでいたのかもしれない。本文庫版の元になる単行本は2011年の出版だし、Daniel Kahnemanはそれ以前から、類書で書いていたはずである。
東日本大震災が起こらず、この「最小不幸社会」構想が進んでいたらどうなっていただろうか、とも思う。ちなみに、これに「否定形ではやる気が起きない。『最大幸福社会』を実現すべきだ」と噛みついたのが当時まだ自民党にいた小池百合子・現東京都知事であった。
第4部 選択165：「分母の無視」による過大な評価・バスの自爆テロがかなりひんぱんに起きていた頃、何度かイスラエルを訪れたことがある。ひんぱんとはいっても、絶対値でみれば極めて稀だった。2001年12月から2004年9月にかけて、自爆テロは23回あり、合計で236名の犠牲者が出た。当時、イスラエルのバス乗客数は一日当たり130万人というところである。したがって、多くの乗客にとってリスクはごくわずかなものだが、市民はそうは思っていなかった。・テロは、利用可能性の連鎖を引き起こす。痛ましくも鮮明な死者や負傷者のイメージが報道や日々の会話によって絶えず増幅され、ひどく身近な取り出しやすい情報となる。第5部 二つの自己295：政策は、国民の苦痛を減らすことを目標とすべきだわれわれは社会全体のU指数を下げることを目指す。したがって、抑圧や極度の貧困に取り組むことが最優先課題となる。322：リバタリアン・パターナリズム市民が自分たちの長期的利益に資する意思決定ができるよう、国をはじめとする行政機関や制度が市民をナッジ（そっと押す、促す、誘導する）することを認める。332：建設的に批判するスキルには、的確な語彙が欠かせない・判断エラーを突き止めるのは病気の診断と一脈通じるところがあり、医学と同じく正確な用語が不可欠・オフィスでの井戸端会議が質的に向上し語彙が的確になれば、よりよい意思決定に直結する
2018年03月13日
「見たものがすべて」による自信過剰
先週紹介したのは上巻だったが、今回は下巻。第三部は「自信過剰」がテーマ。自信過剰は、「System 1の本来的な性質に由来するものであり、いくらか手なずけることはできても、完全に支配することはできない」という。
「問題なのは判断の裏付けとなる情報の質や量がどうあれ、自分でこしらえ上げたストーリーが首尾一貫していさえすれば、主観的な自信が形成されること」である。要するに、「見たものがすべて」で、自分に都合の良いように解釈して、「それで筋の通りストーリーをこしらえてしまう」のだ。
これを防ぐために、「死亡前死因分析（premortem）」が提唱されている。重要な決定にあたって、以下のような質問を参加者にするのだ。
「いまが一年後だと想像してください。私たちは、さきほど決めた計画を実行しました。すると大失敗に終わりました。どんなふうに失敗したのか、5-10分でその経過を簡単にまとめてください」
これは事業計画を考える際に、「失敗するとすればどこか」を考えるのに似ている。経営者は熟慮のうえ、自信をもって事業推進するとともに、「失敗するとすればどこか」を常に考え、それに対する予防措置をうっておかなければならない。また、予防が難しいのであれば、実際起こった時はどうするか代替策を考えておく必要がある。
これができない経営者は、一回は成功できても、幸運はそうは続かないので、自らの成功体験のために二度目は大失敗することがある。
62：「見たものがすべて」効果＊何らかの数字を見積もる場合、頭に思い浮かんだ情報を手掛かりに見積もり、それで筋の通りストーリーをこしらえてしまう67：自信過剰・System 1の本来的な性質に由来するものであり、いくらか手なずけることはできても、完全に支配することはできない・問題なのは判断の裏付けとなる情報の質や量がどうあれ、自分でこしらえ上げたストーリーが首尾一貫していさえすれば、主観的な自信が形成されること67：死亡前死因分析 premortem（ゲーリー・クライン）「いまが一年後だと想像してください。私たちは、さきほど決めた計画を実行しました。すると大失敗に終わりました。どんなふうに失敗したのか、5-10分でその経過を簡単にまとめてください」・懐疑的な見方に正当性を与える・その決定の支持者にも、それまで見落としていた要因がありうると考えさせる効果・万能薬ではないが、「見たものがすべて」という思い込みと無批判の楽観主義というバイアスのかかった計画から、いくらかは損害を減らす役に立つ
2018年03月12日
Rules of Engagement
投資の世界でROEと言えば"Return on Equity"。つまり自己資本利益率だが、防衛の世界では"Rules of Engagement"、つまり「交戦規定」のことらしい。
「軍隊や警察がいつ、どこで、いかなる相手に、どのような武器を使用するかを定めた基準のこと。 このような規定は時代や各組織ごとに大きく異なるものの、多くの組織が用いており、詳細にわたって定められているのが一般的。通常、敵に手の内を見せるのを防ぐため、公表されることは少ない」（Wikipedia)
誘導ミサイルなどが主流の現代では、先に攻撃した側が圧倒的に有利で、逆に言えば、そうしないと瞬時のうちにこちらがやられてしまう可能性が高い。だから現場指揮官に任せれば、先に攻撃したがる。それでは戦端を開いてしまうことになりかねないから、先進国は厳密なROEを持っている。
それが曖昧だったのが、交戦を想定していない自衛隊であった。「交戦しない軍隊」というのが建前だったからROEもなく、「威嚇射撃するにも全て防衛大臣の許可」が要ったそうだ。当然、許可など取っている間に全滅してしまう。
近年、日本領海に中国船が領海侵犯するようになり、衝突の危険性が高まると、流石に「これでは自衛隊員の命が守れないし、事件が起こった時ROEがないと日本の立場を国際社会に説明できない」ということになった。それで、2006年にROEが制定されたということ。
本書はそれ以前が舞台なので、ROEがない。原発テロのため潜入した北朝鮮軍特殊部隊と遭遇し、防衛大臣の許可を取る間に警察のSAT部隊はロケット砲で壊滅し、換わった自衛隊も大損害を受ける。相手は11人だが、そうしたハンデがあるので自衛隊は1万人近くを投入する。最後は官邸が射撃許可を出し、コブラ対戦車ヘリコプターAH1の赤外線探知機で探知されバルカン砲で「制圧」される。先月、佐賀県で墜落事故を起こしたAH64はAH01の後継機だ。
30：現代戦は、先に撃ったほうがすべてを決する撃沈させない撃ち方などない。沈めるか、沈められるか。62：瀋陽のミサイル基地に保有する射程2700kmのCSS-2中距離弾道ミサイルと、同1800kmのCSS-5弾道ミサイル139：本格的な夜間戦闘訓練は陸上自衛隊の訓練カリキュラムに入ることが少なかった。訓練はいつも朝一番からで、夕刻になると終了する。187：普通科連隊の小銃小隊の実弾発射訓練は年間でも百発ほどしか許されていない。396：「ROEがないような、国家の体をなしていない、このいびつな国では、現在の海上部隊の指揮官たちにとって行くも地獄、引くも地獄なんだ。やりすぎても怒られる。何もせずに部下が死んだら、当然、政治やマスコミから糾弾される」
2018年03月11日
自衛隊は張子の虎か？
北朝鮮の特殊部隊が小型潜水艦で敦賀半島に潜入。半島にある原子力発電所を乗っ取るという小説。未曽有の事態に政府はなす術を失い、責任のなすり合いに終始する。目の前に危機があっても、戦争状態を想定しない法整備の不備、官庁間の押し付け合いでなんら有効な手だてを打てない。
笑ってしまうのは、自衛隊が部隊を派遣するにも、公共施設収用権限がないということ。派遣される自衛隊が独自に県や市、もしくは地主に一件一件依頼しなければならないというのだ
それだけでも何日もかかってしまい、緊急事態に間に合わない。おまけに、学校など、仮に校長が認めても、教員が反対すれば使用できないといういくらハイテク装備を充実させても、法律が交戦を想定してないので、これでは張子の虎。有事の際に本当に役立つのかと不安になる。加筆された本文庫版が出たのが2001年。それから、自衛隊法は改正されたのだろうか？
161：第三国の潜水艦が領海内を潜行しているのを海上自衛隊が現認したとしても、現行法では攻撃できない・交戦規定が自衛隊にはない・護衛艦の艦長や潜水艦の艦長には、緊急時の対応について独自の権限を何ら与えていない・相手が魚雷攻撃を行い、損害が発生した場合にのみ、防衛庁長官の許可をもらってからしか攻撃できない→その前に自衛隊艦が撃沈される・したがって、少しでも交戦の可能性があることは、絶対にできない202：自衛隊法では、部隊はもちろん、弾薬一個動かすにも決裁書類に防衛庁長官の印が必要327：治安出動時の実際の作戦行動で、膨大な問題が解決されていない・部隊が展開するのに必要な公共施設収用権限がない・派遣される自衛隊が独自に県や市、もしくは地主に一件一件依頼
・警察との細部協定と現地協定の締結が必要
2018年03月10日
盆栽の誕生
著者は1977年生まれというから、執筆当時まだ30代。東京藝大博士課程で日本近代美術史を専攻し、専門は茶道史だという。
盆栽の成立が平易に書かれていて読みやすい。また、織田信長から始まり、歴代の著名人の盆栽との関りが面白い。
これまで、なんとなく、盆栽とは長い歴史を持つ日本の伝統文化だと思っていたが、「江戸時代と現代とでは、盆栽の作り方から美意識まで、大きく異なっていた」という指摘は興味深い。現在、我々が思う「盆栽」が成立したのは、思ったより新しく、明治も終わりごろになっての話なのだ。
明治の後半になって国粋主義が高まり、日本の文化が見直され、茶の湯や生け花の権威が高まっていく。この「伝統文化」見直しの中、座敷飾りなどを通じて茶の湯や生け花の要素を取り込み、「伝統文化」としての形式を後追いで整えていったということだ。
現在の盆栽とは、「大自然を縮小して、鉢の中に再現することを目指す」ものだという。なるほど、そういわれてみて、家の中に置きたくなった。
はじめに：盆栽とは何か？・鉢に植えて育てながらも、その樹木の姿かたちに手を加え、年数をかけて鉢の中に一つの景色を生み出していく。・盆栽もまた、自然からそのエッセンスを抽出し、鉢の中に再現することを目指す文化4：織田信長の「盆山」狩り・鉢木「ある容器に植えた小さな木で、冬季には枯れないように家の中に入れて置くもの」・盆山「日本人が、緑色の苔をつけたり、何か小さな木を植え付けたりして、水面に浮かぶ小さな岩の格好につくる、ある種の石や自然木の材」（『邦訳 日葡辞書』土井忠生ほか 原典はイエズス会）61：江戸時代の鉢木の主流は「蛸作り」であり、曲がった枝を見せようというもの。シュリーマンの日記に登場している、蛙の形に仕立てられた松なども、この系譜に入るものだろう。江戸の植木屋は、樹木を曲げて、人間の意志に従わせる技術に長じていた。しかしその美意識は、現在の盆栽が目指す「自然の美」とは方向性の異なる、人工的な造形物だったのである。156：江戸時代後半になると、関西を中心に煎茶趣味の影響を受けた「盆栽」が登場「蛸作り」は「盆栽」へと改作され、鉢も染付から泥物へと移行していく。「盆山」も「石付き盆栽」と呼び変えられ、「盆栽」の枠組みへと吸収されて行ってしまう。このように「盆栽」とは、江戸時代までの園芸文化を下地としながらも、近代になって新しく誕生した文化。
2018年03月09日
ブロークン・ブリテンの無料託児所から
「わたしの政治への関心は、ぜんぶ託児所からはじまった」
本の背表紙にはこうある。著者は、在英20年になるという「保育士ライター」だ。
英国の地べたを肌感覚で知り、貧困問題や欧州の政治情勢へのユニークな鑑識眼を持つ書き手として注目を集めた著者が、保育の現場から格差と分断の情景をミクロスコピックに描き出す。
2008年に著者が保育士として飛び込んだのは、英国で「平均収入、失業率、疫病率が全国最悪の水準」と言われる地区にある無料の託児所。「底辺託児所」とあだ名されたそこは、貧しいけれど混とんとしたエネルギーに溢れ、社会のアナキーな底辺層を体現していた。
日本に入ってくる英国情報は、シティの金融マンの話であったり、米国以外で唯一世界トップテンにランキングされるOxbridgeの大学教育、そしてRRやMiniなどのブランド（両方とも今やドイツ資本だが）など、優等生そのもの。しかし、実態は、現地で"Broken Britain"と呼ばれる格差や分断の問題は日本からは想像できないほどだという。
戦後長く労働党政権が続いた英国は破綻寸前になっていた。それを自己責任、効率化で立て直したのが保守党のサッチャー元首相。そのおかげで1990年代に英国は未曽有の好景気に沸く。結果、政権交代した労働党のトニー・ブレアは、生活保護を手厚くできた。しかし、そのどちらも「格差と分断」問題を解決はできなかった。
つまり、これは政治問題ではあるのだが、国家が解決できるような問題ではないのかもしれない。彼らを救えるのは、自分たちのことを気にかけてくれる仲間で、仕事のあるコミュニティなのだ。行政は予算を付けて支援はできるが、主役はNPOだ。
27：Broken Britain90年代には別の政党でありながら彼女の新自由主義を引き継いだ労働党のトニー・ブレアが、これらの「仕事がないワーキングクラスの人々」への生活保護を手厚くして「上から下までみんながハッピーな社会」を演出した。そのおかげで、社会の最底辺の「アンダークラス」ではモラルが崩壊し、さまざまな社会問題を引き起こしているとして、保守党はこの様を「ブロークン・ブリテン」と呼んで選挙戦を戦い、2010年に労働から政権を奪取した。29：虐待や養育放棄などの不幸は閉ざされた空間で起きる。だから乳児や幼児のいる家庭を孤立させてはいけない。（中略）ましてや食うにも困っている人々が子連れで閉じこもっている状況はとても不健康だ。40：英国で生まれる子どものうち、少なくとも両親の一人が外国人である子供の割合は全体の31%で、2001年より10%増加していたという。両親ともに外国人である子供は18%だった（2011年国勢調査）65：一昔前までは、さまざまな肌色をした底辺外国人の「対イングリッシュ」みたいな団結力が強固で、それはそれで敵対感に溢れすぎていて鬱陶しくなることもあったが、ちょっと階級を登ったりすると、外国人こそが最も積極的に他の外国人を排他する人々になる。
2018年03月08日
自動運転と交通サービスを変えるものは誰か
フォード生産方式以来100年間続いた内燃機関を中心とした自動車産業がEV化と自動運転で大きく変わろうとしている。実は世界で最も自動車産業の利益貢献度が大きいのが日本で、この変化に対応を誤れば経済への影響は大きい。
そこで、次の100年を作ると思われる、「自動運転と交通サービスを変えるものは誰か」ということになる。各国の現状でのプレヤーの違いが興味深い。日本ではSBを中心とするIT&携帯キャリアの動きが早い。それは、携帯の電波帯を入札するのに多額の初期投資が必要だった欧米に対し、タダでもらった日本は有利な立ち位置からスタートしたため。また、駐車場運営のタイムズは現時点で世界最大のカーシェアリング業者だという。
32：世界各国の自動車産業の位置付け・日本の場合、輸送機械産業は金融に次ぐ利益創出産業。実質的には最大の稼ぎ頭。・米国や中国での位置付けは低い。欧州はその中間。45：有効な手段はコミュニティバスの自動運転化・乗合バス事業の最大のコストは労務費（60%）・運転者確保が難しくなってきている60：日本でカーシェアリングが普及・タイムズは世界最大のカーシェアリング事業者・都市部に人口が集中している・道路交通行政（路上駐車の取り締まり）
2018年03月07日
自信過剰
本書の第3部は「自信過剰」。人間は何かと理由を付けたがるが、客観的に見ると、「偶然」であることが多い。
「ビジネス書には大きく二つのジャンルがある。第一は、経営者あるいは企業の成功または失敗の物語。言うまでもなく、成功が多数派、失敗は少数派である。第二は、成功した企業とさほど出ない企業を比較分析するタイプである。どちらのジャンルのビジネス書もリーダーの個性や経営手法が業績におよぼす影響をつねに誇張しており、したがってほとんど役に立たない」（フィリップ・ローゼンツヴァイク『ハロー効果』）
最近の日本での顕著な例は、日本マクドナルドのカサノバ社長への評価だろう。5年前に社長交代したものの（それまでは10年間マーケティング部長）2年前までの評価は最悪だった。それが、業績が回復し始めると批判は鳴りを潜め、ついにはカンブリア宮殿で「奇跡の大逆転」と取り上げられるようになった。その間、本人は何も変わっていなかった。
373：金融業界というところは「スキルの錯覚」（illusion of skill)の上に成り立っている買い手と売り手がそろいもそろって、現在の価格は正しくないと考えている。389：ポール・ミール『臨床的予測対統計的予測 ― 根拠の理論分析と評価』＊単純で統計的なルールのほうが直感的な「臨床」判断よりも正しい同書が出版されてから50年以上が過ぎた現在、臨床的予測と統計的予測を比較した調査の数はすでに200件以上に上るが、アルゴリズム対人間の成績は変わっていない。60%でアルゴリズムが人間を大幅に上回る精度を示す。残り40%では引き分けという結果になっているが、引き分けはアルゴリズムの勝ちに等しい。統計のほうが専門家を雇うより、はるかに安上がりだからである。402：1955年イスラエル国防軍中尉（21歳）として軍全体の面接システムを設計・面接して最も適した部隊に振り分け→ほとんど役に立たない・面接官がいくつかの人格特性を評価し、それぞれに個別に点数をつける方式を採用・面接官からのインプットはこの個別の点数だけ→最終スコアは計算式に従ってコンピュータ処理・戦闘部隊での行動に関係があると考えた６つの人格特性のリストを作成し、それぞれについて一連の質問を準備・ハロー効果を防ぐために、面接官は６つの人格特性について決められた順序で質問し、次の質問に移る前に5段階で採点する・それ以上のことをしてはいけない！・最後に、目を閉じて、兵士になった新兵を想像し、5段階でスコアを付ける＊選抜面接において直感を軽視するのは正しい。しかし直感が価値をもたらすこともある。ただしそれは、客観的な情報を厳密な方法で収集し、ルールを守って個別に評価した後に限られる。
2018年03月06日
ヒューリスティックスとバイアス
アンカリング効果については、留学時の集中講義で心理学者が呼ばれ、習ったことがある。「交渉術」のクラスで、本書の第11章に出てくる通りだった。
価格交渉で、最初のアンカーは絶大な効果を持つ。そこで、法則その�，蓮◆嵜瓩坦櫃韻襪曚Δ�いい」ということになる。問題は、相手に吹っ掛けられた時の対処法で、同じように途方もない安値で応じても値段の差が大き過ぎて、交渉で歩み寄るのは難しい。そこで、正しい対処法としては�◆◆崑腓欧気吠原腓鮓世ぁ∧袷海叛覆鯲�つか、そうする素振りをする」ということになる。
これを寸劇でやるのだが、留学初年度の私には非常に難しかった。英語もしどろもどろ。何しろ、英語ではもちろんのこと、日本語でも丁々発止の価格交渉などやったことがない。店に並んでいる商品の値札を見て、納得すれば買い、そうでなければ買わないという選択しかしたことがなかったからだ。
正札商売がまだまだ少ないインドや中東のビジネスマンが交渉で強いはずである。日本では大阪商人が有利か 実際、東南アジアで活躍している人を見ると大阪の人が多いような気がする・・・バイアスか（笑）。
価格交渉で、最初のアンカーは絶大な効果を持つ。そこで、法則その�，蓮◆嵜瓩坦櫃韻襪曚Δ�いい」ということになる。問題は、相手に吹っ掛けられた時の対処法で、同じように途方もない安値で応じても値段の差が大き過ぎて、交渉で歩み寄るのは難しい。そこで、正しい対処法としては�◆◆崑腓欧気吠原腓鮓世ぁ∧袷海叛覆鯲�つか、そうする素振りをする」ということになる。
これを寸劇でやるのだが、留学初年度の私には非常に難しかった。英語もしどろもどろ。何しろ、英語ではもちろんのこと、日本語でも丁々発止の価格交渉などやったことがない。店に並んでいる商品の値札を見て、納得すれば買い、そうでなければ買わないという選択しかしたことがなかったからだ。
正札商売がまだまだ少ないインドや中東のビジネスマンが交渉で強いはずである。日本では大阪商人が有利か
実際、東南アジアで活躍している人を見ると大阪の人が多いような気がする・・・バイアスか（笑）。199：少数の法則心理学者が選ぶ標本は一般に小さすぎるため、真の仮設の実証に失敗するリスクは50%に達する。225：アンカーの利用と濫用意図的な数量制限が効果的なマーケティング手法になる。「おひとり様XX個まで」とする方が、数量制限されてないよりもたくさん売れる。
226：アンカリング効果に対抗する方法（アダム・ガリンスキー＆トーマス・マスワイラー）
「アンカーに対抗する論拠を見つけるために、注意を集中し、記憶を探索する」
相手が受け入れそうな最低値はいくらぐらいか？交渉決裂となった場合に相手が被る損失は？256：利用可能性カスケードテロ攻撃による死者数は、他の死亡原因に比べると極めて少ない。執拗なテロ攻撃の標的になっている国、たとえばイスラエルでも、一週間のテロの犠牲者数が交通事故の死者数に近づいたことさえ、ほとんどない。ただしこの二種類のリスクは、一方はたやすくひんぱんに思い浮かぶという点で、利用可能性に差がある。（中略）テロはSystem 1に直接訴えかけるからである。
2018年03月05日
あなたの意思はどのように決まるか？
2002年に「プロスペクト理論」でノーベル経済学賞を取った心理学者。この論文は、行動経済学を支える基盤の一つとなった。著者はイスラエル生まれのユダヤ人で、ヘブライ大学で心理学と数学を学んだ後、イスラエル国防軍心理学部門で勤務している。1958年にアメリカに渡り、UCバークレーで心理学博士号取得。ヘブライ大学を経て、1993年プリンストン大学教授(現・名誉教授）とあるから、典型的な、アメリカで活躍するイスラエル人学者だ。
書名の『ファスト&スロー』は、人間には下記のような2つの思考モードがあることから来ている。
System 1：自動的に高速で働き、努力はまったく不要か、必要であってもわずかである。また、自分のほうからコントロールしている感覚は一切ない。
System 2：複雑な計算など頭を使わなければできない困難な知的活動にしかるべき注意を割り当てる。代理、選択、集中などの主観的経験と関連付けられることが多い。
このSystem 1、２という呼び方は心理学で広く使われるものらしいのだが、本書ではこれを、一般読者により分かりやすく、「速い思考モード」（Fast）と「じっくり考える思考モード」（Slow）と呼んでいる。
日本でも「目は口程に物を言う」ということわざがあるが、心理学でもこれが証明されているのが興味深い。同じ女性でも、「瞳孔が広がっているとずっと魅力的に見える」のだそうだ。瞳孔が広がっているのは相手が自分に興味を持っているとこちらが認識し、その結果、相手が魅力的に映るというわけだ。中東のバザールでは、買い手がどのぐらい買いたがっているのか本心を売り手に悟られないよう、サングラスを着用することが知られているという。
相手が本当に興味を持っているのかどうか。ビジネスの現場でもすぐに使えるテクニックである。
27：判断のヒューリスティックスは「きわめて有用だがどきに重大な系統的エラーにつながる」直感的な判断や選択には専門的なスキルから導かれるものとヒューリスティックスに基づくものがある。62：「瞳孔は魂の鏡」（エッカード・ヘス）・同じ美女でも、瞳孔が広がっていると魅力的に見える・バザールでは、買い手が自分はどのぐらい買いたがっているのかを売り手に悟られないよう、黒いサングラスを着用する・瞳孔が知的努力を敏感に示すバロメーターになる76：「フロー」状態（ミハイ・チクセントミハイ）まったく努力しなくても極度に集中でき、時が経つのも、自分自身のことも、あれこれの問題もすべて忘れてしまう状態。102：プライミング効果投票所がどこにあるかで投票行動が影響される。2000年に行われたアリゾナ州の選挙で、学校補助金の増額案に対する賛成票は、投票所が学校の場合、そうでない場合よりも有意に多かった。127：気分はSystem 1の働きを左右する不機嫌なときや不幸なとき、私たちは直感のきらめきを失ってしまう。148：System 1はだまされやすく、信じたがるバイアス疑ってかかり、信じないと判断するのはSystem 2の仕事だが、System 2はときに忙しく、だいたいは怠けている。疲れているときやうんざりしているときは、人間は根拠のない説得的なメッセージに影響されやすくなる。
2018年03月04日
鳥井信治郎の奥さんは観音寺出身
サントリー創業者鳥井信治郎は再婚しているらしい。小説では、初婚は子供ももうけたが折り合いが悪くすぐ分かれたという。そして、再婚した相手が、高松の米問屋与志兵衛のところで働いていた観音寺出身の小崎クニ。与志兵衛は米問屋を営む信治郎の本家(兄が継いでいた）の商売仲間で、その縁で、赤玉ポートワインも扱っていた。
信治郎はクニとの間に三男をもうける。長男吉太郎は早世し、二代目社長となったのが次男の佐治敬三(ウイスキー事業進出で倒産の危機に瀕した寿屋に出資した佐治家に養子に出ている)。三代目社長となったのは吉太郎の長男信一郎だったが、社長就任後、急逝する。そして、四代目社長となったのが、４年前まで社長を務めた佐治信忠である。
サントリーが香川に縁のある会社だとは知らなかった。
7：明治32年(1899）2月1日 鳥井商店 鳥井信治郎(20）
72：明治39年（1906）9月1日 寿屋洋酒店に屋号を変更
92：赤玉ポートワイン38銭（米一升10銭）
・日本の葡萄酒の中で一番のシェアを占めている蜂印香竄葡萄酒よりあえて高い値付け
・問屋、商店の利幅も蜂印より大きい
141：大正2年(1913） 合名会社寿屋洋酒店(資本金9000円）
翌年に合資会社に改め、資本金も10万円に。
160：信治郎の走り参拝
・信治郎は神社仏閣があると、必ずそこを訪ねて挨拶し、御布施を惜しみなく献上した
・新年には三が日で20，30の神社仏閣を回った
305：児玉（番頭）の笑顔の裏には、たった二か月半で進駐軍に納入した大量のウイスキーの商いがあった。三日に一度、山崎蒸留所から出荷されるウイスキーの量は半端ではなく、売上も最初の一か月で戦前の寿屋の総売上を楽々と超えていた。
342：昭和55年(1980）サントリーオールドは年間出荷量が1200万ケースを超え、世界洋酒市場でNo.1
343：陰徳「善を為すに、それをあからさまにするは己のための善であり、真の善にあらず」
2018年03月03日
小説 鳥井信治郎
3年前のNHK朝ドラ「マッサン」を見て、改めてサントリー創業者鳥井信治郎に興味をもった。経営者としての力量は鳥井のほうが一枚も二枚も上手で、その結果、マッサンの創業したニッカは早々にアサヒの傘下となり、サントリーは世界有数の洋酒メーカーになった。
『琥珀の夢』上巻は、鳥井信治郎が創業するまでの大阪道修町での丁稚奉公時代を主に扱っている。大阪釣鐘町で生まれた信治郎が13歳のとき丁稚奉公に出されたのは道修町の薬問屋だった。なぜ、薬問屋で修業した信治郎が洋酒を始めたのか？
それは、明治時代の洋酒は高価で、専ら、滋養強壮のための薬として売られていたからだ。日本人は洋酒の味になれておらず、しかも、バカ高い。そのうち、薬問屋はアルコールに香料や他の原料を加えて、洋酒を調合するようになった。これらの「合成」洋酒は輸入品に比べて価格も安く、日本人好みに調味されていたので大いに売れた。それでも、合成ワイン一本で日本酒なら5升買えたというから特別な飲み物だ。
信治郎が丁稚奉公していた小西儀助商店でも、合成ワイン「赤門印葡萄酒」を製造していたが、東京の神谷バーが製造する「蜂印香竄
ラベルには向かい合う獅子。これは後にもっと洗練されて、サントリーの社章となる。ラベルの"PURE WINE"は今なら景品表示法違反だろう（笑）。この「向獅子印甘味葡萄酒」が翌年さらに改良されて「赤玉ポートワイン」となり、寿屋の土台を築く大ヒット商品となる。
16：松下幸之助は生涯、この日のことを忘れなかった。幸之助は鳥井信治郎を商いの先輩としてだけではなく、その人柄に魅了され、尊敬し続けた。幸之助の事業が成長し始めた時期も、鳥井信治郎に相談し、信治郎は15歳年下の幸之助に助言を惜しまなかった。45：翌年、信治郎はその小学校でも異例の”飛び級”で2年だけでなく、3年の組で授業を受けることになった。91：日本書紀によると414年、朝鮮の新羅から医師、金武が朝貢大使としてやってきて、允恭天皇の病を治療し、さらに459年、同じ半島の高麗の医師、得来が難波の地に住んで医業を開始し、”難波の薬師”と呼ばれていた。554年には百済からの医師が採薬師とともに日本に来たことが記述してある。97：享保年間にはすでに商業の中心は将軍のお膝元の江戸と大坂がその勢力を二分していたのに、なぜ道修町に薬の商いの大半が集まったか。享保7年（1722）、将軍吉宗が生まれ育った和歌山、紀州藩に帰藩の途中、大坂で病に倒れた。その折、道修町より献上された唐薬がよく効き、たちまち吉宗は回復した。この功績を吉宗はたいそう喜び、道修町の薬商たちに唐薬の中買いの免状を与えたのである。その免状により、長崎、平戸に持ち込まれる舶来の薬、すなわち唐薬の仕入れを道修町薬商は独占した。いったん長崎から大坂に運ばれた唐薬が日本全国の薬商に分配されることになり、道修町はその商いの利を一手につかむことになった。”唐薬問屋”の元締めの町の成立だった。
2018年03月02日
挑む社長の応援歌！
ORIXが創業したのは1964年というから東京オリンピックの年だ。アメリカに「リース」という新しい金融業があると聞いて、調査を命じられたのが、ニチメン（現：双日）の新入社員だった宮内氏。英語が出来て、まだこれといった仕事がなかったという理由で偶然派遣された。
本人も、派遣されたU.S. Leasingで学んだことをオリエント・リースに集まった出向者（ニチメンと三和銀行他）に内容を教えたら、さっさと本社に戻ろうと考えていたという。それが次第に、日本にリースという新産業を興すという熱病にとりつかれ、出向を2年3年と延ばすうち、転籍を決意したという。
面白いエピソードが、研修生として学んだU.S. Leasingの創業社長ショーンフェルドさんが設立間もない来日した時のこと。宮内氏が「ここが総務で、ここが営業部。審査部は・・・」などと社内を案内していたら、彼が突然怒り出したという。
「冗談じゃないまだまだ会社として独り立ちしていないのに、組織づくりなどいらない。全員営業だ全員外へ営業に出ろ。事務机なんかいらない」
本人も、派遣されたU.S. Leasingで学んだことをオリエント・リースに集まった出向者（ニチメンと三和銀行他）に内容を教えたら、さっさと本社に戻ろうと考えていたという。それが次第に、日本にリースという新産業を興すという熱病にとりつかれ、出向を2年3年と延ばすうち、転籍を決意したという。
面白いエピソードが、研修生として学んだU.S. Leasingの創業社長ショーンフェルドさんが設立間もない来日した時のこと。宮内氏が「ここが総務で、ここが営業部。審査部は・・・」などと社内を案内していたら、彼が突然怒り出したという。
「冗談じゃない
まだまだ会社として独り立ちしていないのに、組織づくりなどいらない。全員営業だ全員外へ営業に出ろ。事務机なんかいらない」それ以来、全員営業の精神が、ORIXの社風になったという。「理念経営」も「組織づくり」も大切だが、それは創業の危機を乗り越えてからの話だ。
はじめに：1964年オリエント・リース設立・資本金1億円・従業員13人16：中小企業はトップの能力以上には成長しないトップが伸びなければ、その会社の成長も止まってしまう。37：個々の社員が「この会社で大切にされている」と感じる何かを経営者は発信しなければならない「自分の能力に比べて、より重要な仕事を与えられている」と思えるような課題をどれだけ社員に出せるか。61：トップはつらい時に指揮を執る人寝たふりをして、会社の3年後や5年先について事業構想を練ることもトップにしかできない仕事。
2018年03月01日
ティールの法則
「ティールの法則」とは、「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない」というもの。ティールは、「とりあえず始めて、潜在顧客と対話しながら完成度を高めていく」というLean Startupの手法に批判的だ。"500 startups"のように、どれが成功するか分からないから、「たくさんの会社に少しずつ投資する」こともしない。
Lean Startupの手法は、従来のVC投資手法とは違い、ある意味画期的であった。背景には、スマホアプリなどを中心に、AppleやGoogleのプラットフォーム上での勝負なので、初期投資が少なくて済み、販売の手間が激減したことがある。
「7つの質問」など、従来から言われている王道のVC投資そのもの。シリコンバレーで高騰気味のプロ経営者報酬についても、「アーリーステージのスタートアップでは、CEOの年収は15万ドルを超えてはならない」という。これまで数百のスタートアップに投資した経験から、「CEOの給料が少なければ少ないほど、会社はうまくいく」そうだ。高額報酬は現状維持のインセンティブとなるだけで、社員と協力して積極的に問題解決していく動機にならないという。逆に、現金報酬が少ない経営者は企業全体の価値を上げることに力を注ぐ。
Lean Startupの手法は、従来のVC投資手法とは違い、ある意味画期的であった。背景には、スマホアプリなどを中心に、AppleやGoogleのプラットフォーム上での勝負なので、初期投資が少なくて済み、販売の手間が激減したことがある。
「7つの質問」など、従来から言われている王道のVC投資そのもの。シリコンバレーで高騰気味のプロ経営者報酬についても、「アーリーステージのスタートアップでは、CEOの年収は15万ドルを超えてはならない」という。これまで数百のスタートアップに投資した経験から、「CEOの給料が少なければ少ないほど、会社はうまくいく」そうだ。高額報酬は現状維持のインセンティブとなるだけで、社員と協力して積極的に問題解決していく動機にならないという。逆に、現金報酬が少ない経営者は企業全体の価値を上げることに力を注ぐ。
154：取締役は3人が理想的上場企業でない限り、5人を超えてはならない。大人数の取締役会は効果的な監督を行うことはできず、実際に組織を牛耳るミニ特栽者の隠れ蓑になるだけ。204：7つの質問�．┘鵐献縫▲螢鵐�段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術を開発できるか？�▲織ぅ潺鵐�このビジネスを始めるのに、今が適切なタイミングか？�Ｆ叛�大きなシェアがとれるような小さな市場から始めているか？�た雄�正しいチーム作りができているか？�ト稜�プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか？�Ρ並垣�この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか？�П�れた真実他社が気づいていない、独自のチャンスを見つけているか？
