2017年01月
2017年01月31日
東京藝術大学「第65回 卒業・修了作品展」
毎年楽しみにしている藝大の「卒展」へ。今回の東京滞在は1週間しかなくて、仕事が忙しく、1時間しか見られなかったのは残念。
卒展展示の一等地と思われる大学美術館ロビーに置かれた作品の一つは西洋式の甲冑。その場にいた作者「佐藤周祐」君は、甲冑を自作して「戦って」いるらしい。なんじゃそれ
西洋の甲冑を作るより、日本の甲冑を作る方がニーズはありそうな気がするが。忍者用も外国人観光客に受けそう。
2017年01月30日
日本百名城「佐倉城」
週末、用事が出来て佐倉へ。前回行ったのは7年前で、ホームステイ中のイタリア系ベルギー人高校生と一緒だった。その際は、DIC川村記念美術館と国立歴史民俗博物館で満腹で、佐倉城址の見学は叶わず。午前中の用事を終わらせたのち、今回はそちらをメインに見学。
佐倉城は、戦国時代中頃の天文年間（1532年から1552年）に千葉氏の一族である鹿島幹胤（かしまもとたね）が鹿島台に築いたといわれる中世城郭を原型として、江戸時代初期の慶長15年（1610年）に佐倉に封ぜられた土井利勝によって翌慶長16年（1611年）から元和2年（1616年）までの間に築造された平山城です。北に印旛沼、西と南に鹿島川・高崎川が流れる低地に西向きに突き出した、標高30m前後の台地先端に位置します。佐倉城はこうした地勢を巧みに利用し、水堀、空堀、土塁を築いて守りを固め、東につながる台地上に武家屋敷と町屋を配して、城下町としました。以後、江戸の東を守る要として、有力譜代大名が城主となり、歴代城主の多くが老中など幕府の要職に就きました。なかでも、幕末期の藩主・堀田正睦（ほった まさよし）は、日本を開国に導いた開明的な老中として有名です。（佐倉市「佐倉城址公園」）
佐倉藩は11万石ということなので、高松藩の12万石に匹敵する。高松城も明治時代になって、天守閣等が撤去されたが、一部の楼は残っている。それに対し、佐倉城は明治になって陸軍歩兵第2連隊が置かれた際に、全ての建築物を撤去してしまったため、門一つ残ってないという惨状だ。
特異なのは、石垣が全くないこと。説明によれば、周囲に石を産する場所が無かったためということ。それでも、将軍家ならば江戸城の石は伊豆から、（徳川）大坂城の石は瀬戸内の島々から船で運んだ。内陸の城で、海運が使えなかったという理由もありそうだ。
その代わり、大地に刻まれた自然の谷を一部に活かしたと思われる空堀が見事だ。建物がない分、公園として広々としていて、犬の散歩をする人々で賑わっていた。
2017年01月29日
阿部定と円タクと戦争の足音
本文中に「阿部定と円タクと戦争の足音」というコラムが差し込まれている。戦前のあまりに有名な事件は、戦後、大島渚によって『愛のコリーダ』として映画化された。
阿部定事件（1936）の舞台は尾久三業地であった。しかし、定は尾久芸者ではなく、江戸時代から四代続く神田の畳職人の家に1905年（明治38）に生まれたちゃきちゃきの神田っ子であったらしい。
小さい時から人並み外れて器量よし。人を15人も雇うほどの親方だった父は定を着飾らせ、何不自由なく育てたという。14歳で慶應の学生と関係を持ったのを手始めに、男遊びが始まる。怒った父は定を横浜の芸妓屋に売ってしまう。
関東大震災後は、富山、名古屋、神戸、大阪を転々とし、高級娼婦、カフェーの女給、妾という遍歴を経て、1932年一旦埼玉に戻る（父が埼玉で引退していた）。翌年から再び、三ノ輪、浜町、横浜、名古屋で高級娼婦、妾などをして、36年、中野・新井薬師近くの三業地で三本の指に入るという割烹・吉田屋に奉公、そこで店主の吉田吉蔵と運命の出会いをする、というわけだ。吉蔵と出会ったのが2月10日で、二人が最初の関係を持ったのが26日。正に、2.26事件の日だ。
『愛のコリーダ』では、演出のため、人力車が使われているが、実際に二人が逢瀬のために使っていたのは円タクらしい。円タクは1924年に「均一タクシー」として大阪で始まり、1926年には東京にも登場した。1円で旧・東京市内にどこでも行けた。今の感覚なら5000円くらいということ。確かに、それなら使いやすい。
1926年の旧東京市のタクシーは2547台。翌27年には5086台で、人力車より多くなったという。32年には8051台になっている。ところが、35年ころから戦争が激しくなり、行政がタクシー営業を規制しはじめる。38年に国家総動員法が施行され、ガソリン販売は配給制となる。
驚いたのは、阿部定が戦後もずっと生きていたということだ。あれだけの事件を起こしたのだから、作者もそうだが、私も警察に捕まって獄死でもしたと思っていた。
ところが、阿部定は栃木刑務所で懲役6年の刑に服していたが、模範囚として4年4カ月で出所している。「服役中には、結婚の申し込みや、カフェーや映画会社からのスカウトが舞い込み、ファンレターの数は1万通に及んだ」というから、愛人を殺したにも関わらず、大人気だったのだ
スカウトは話題性から理解できるが、結婚の申し込みというのは・・・それほど切られたいのか（笑）。出所後は、赤坂の料亭で働き、谷中のアパートにYという男性と住んでいたらしい。東京大空襲で焼け出されて茨城に疎開。戦後は東京に戻って、女優として自ら阿部定劇に出たり
、料亭で客寄せとして働いていた。1954年、大阪に阿部定がいるとききつけた上野稲荷町の料亭「星菊水」が定をスカウトして東京に連れ戻す。スカウト料は現在の300万円相当で、酌婦としての月給は普通の仲居の8倍以上だったという。優良従業員として東京料飲同志組合から表彰もされている。
1966年、星菊水を辞め、60歳を過ぎた定は台東区竜泉でおにぎり屋を開くが70年に失踪。大阪万博を見に行ったらしい。その後、千葉県市原市の勝山ホテルで仲居をしたが、71年の初夏にまた失踪。以後、消息は分からないそうだ。
2017年01月28日
古今亭志ん生
初版は昭和52年に朝日新聞社から単行本で発行され、2005年に学陽書房から文庫が出た。それも手に入りにくくなっていたが、2015年に小学館からペーパーバック版が出た。字が大きくなって見やすくなった。
道楽と貧乏で知られた志ん生だが、すさまじいの一言。10歳で酒の味を覚え、15歳で家を飛び出す。その後一度も実家には帰らないまま、両親を亡くしている。32歳で結婚して3人の子供ができるが、入ってくるお金は全部自分で「飲む、打つ、買う」で使ってしまうので、家に一切お金を入れたことがない。生活費は妻が内職で稼ぎ、家賃が払えないので、家賃が溜まると踏み倒して引っ越すことの繰り返し。
まるで落語中の人物のような落語家が繰り広げるハチャメチャの物語。17歳で落語を始めたが、売れ始めたのは40歳を過ぎてから。芸はうまかったらしいが、席亭から預かった金を呑んでしまったり、師匠の羽織を勝手に質に入れて遊んだりで何度も弟子を首になったので時間が掛かったのだ。寄席の合間に呑んでしまって、そのまま後の仕事をすっぽかすこともあったという。
下記動画はNHK特集「びんぼう一代〜五代目古今亭志ん生」（1981）から。立川談志の解説が分かり易い。
上12:明治の末ごろ東京だけで12，30軒の寄席があったくらいで、好きな連中が集まるとどうしても高座で一席やりたくなる。上183:朝太は窓朝の同居人というより居候で、部屋代を督促される立場ではないから気楽にしていたが、当然怪しむべきだったのである。窓朝と下宿の女房は人目を忍ぶ仲になっていたのだ。それを少しも気づかせなかったのがえらい。上188:そのころ三婆さんと呼ばれる寄席のおかみが三人いた。人形町の末広と神田連雀町の白梅、それに両国の立花屋のおかみだが、ひとにより立花屋の代わりに本所の広瀬か神田新石町の立花を挙げる。いずれもやかましい年寄りで、高座の正面の番台のような席に座っていた。落語好きで耳が肥えているし、その婆さんたちに目をかけられれば出世するが、睨まれたら真打どころか二つ目にもしてもらえなかった。
下59:笹塚に転居する費用を借りにいったとき、これが最後だと両親に言われ、あんな男とは今のうちに分かれた方がいいとまで言われた。りんはそのときから意地になった。孝蔵に対する気持ちは意地だけではないが、もはや孝蔵とは意地でも別れられないし、それに三人の子を立派に育てなければならない母親だった。
2017年01月27日
ランチェスター経営
私が専門にしているスタートアップ企業やベンチャー企業では、資金など足りない経営資源を外部から取り入れて成長を目指す。IPOをEXIT目標にすることが多いため、市場規模で100億円はないと事業計画が成り立たないことが多い。
世の中が99%の中小企業と1%の大企業で成り立っているとすると、MBA出のコンサルタントが大企業相手に行っているものは豊富な経営資源を持つ大企業のための特殊な経営戦略であるということになる。それに対し、外部からの投資を受けるわけでもなく、成長よりも事業継続を求める零細企業（従業員30人以下）のための戦略が「ランチェスター戦略」なのだ。
元の「ランチェスター法則」は、Frederic W. Lanchesterという英国人が1914年に考えた戦場での攻撃力の法則である。
第一法則：攻撃力＝兵力数ｘ武器性能
白兵戦の場合。同じ武器性能であれば敵味方とも同数の死傷者が出る。
第二法則：攻撃力＝兵力数2ｘ武器性能
離れた距離で飛び道具を使う場合。例えば、A軍が5人、B軍が2人いて、川を挟んでライフルを撃ちあ合うとする。A軍の1人が攻撃される確率は2/5。B軍では逆に5/2であり、攻撃力の差は兵力数の二乗となる。
従って、兵力数の劣る中小企業は、白兵戦に持ち込まないと勝ち目がないのだ。自社の得意な商品、営業方法、営業エリアであれば、「飛び道具」を持つ大手にも勝てるわけだ。「これから伸びる商品、市場には、必ず強い競争相手が入ってくるので、手を出さない」というのも割り切っていて面白い。
＊「従業員30人以下」の会社のための経営戦略・ランチェスター法則に基づく、零細企業のための経営戦略�＾豕蛎任狙錣�しやすい商品を選ぶ��一騎打ち戦がしやすい営業方法を決める�０豕蛎任狙錣�しやすい営業エリアを選ぶ・弱者の商品戦略「これから伸びる」商品、市場には、必ず強い競争相手が入ってくるので、手を出さない。大きな市場ではなく、小さな市場でのNo.1を目指す「同業者は多いが弱小ばかり」の業種は、営業や経営のやり方を革新すると、チャンスがある。大企業が扱わない「手作りローテク商品」や「シンデレラ商品」（一定の需要があるが、市場規模が小さい）もねらい目。・弱者のエリア戦略大都市でビリよりも田舎で一番を目指す地方でも強い会社がある場合は、「一騎打ち戦的エリア」（地理的に分断され、地域の独立性が高く、経済規模が小さい）を狙う。・弱者の客層・顧客戦略客層を広げない。客層を絞って営業する。初めての人に好かれて「お客」になってもらうため、顧客とのコミュニケーションがうまくいく仕組を作る。
2017年01月26日
アメリカのイノベーションは政府が引っ張る！？
『企業家としての国家』後半。シリコンバレーに代表されるように民間がイノベーションを引っ張っているというイメージの強いアメリカ。しかし、著者の慎重な検討では、公的セクターがリスクを取ってイノベーションを起こし、その成果を商業化してきたのが民間セクターであるという。
例えば、インターネット。これは核攻撃を受けた際に通信網が破壊されないように考案された。実際のところ、iPhoneに搭載されているインターネット、GPS、タッチスクリーン、情報通信技術全てがアメリカの軍事技術に発端がある。にも拘らず、アップルは節税に熱心だと著者は批判的だ。
159:アメリカは、民間セクターが引っ張って富を築いた国の典型であると思われているにもかかわらず、現実には公的セクターが企業家精神を発揮してリスクを取ってイノベーションに拍車をかけるという大規模な政策を実施してきた国である。163:DARPAは、主として各分野におけるアメリカの技術優位を図るために設立された組織で、ミッション思考という点では常に非常に攻撃的に動いてきた。年間予算3千数百億円を使い、職員数は240人、業務遂行には柔軟で、ランニングコストは最小であり、政府とのつながりは強いが運営は独立である。各部門トップに最高の人材を集めており、彼らの契約は4年から6年の短期契約であったためにリスクを取ることも厭わない連中であった。組織構造は、まだ具体性のない学術研究を長期的視野から評価し、軍部が行ってきた技術革新との間の橋渡しをするようにデザインされた。198:アップル社の成功の大部分は政府が支援し、助成金を出して行った研究に基づく多くの技術に依存しているという事実は多くの場合見過ごされている。252:民間ビジネスセクターは、将来確実に利益が得られることが明確な場合にのみ投資に踏み切るものだということを考えれば、一貫性のある政策を示せないような国々では、彼らは投資に消極的になるか、全く投資をしないということになる。デンマークのVestas（風力発電事業会社）およびアメリカのGEは、風力発電事業から撤退した理由に、イギリス政府の不明確で一貫性を欠いた政策を挙げている。339:確かに同社（アップル）の企業イメージに惹かれて就職したがる者は少なくないが、待遇から見ると同社の報酬制度は大部分の従業員に売上手数料やストックオプションを提供しておらず、ウォルマートに比べてわずかに勝る程度である。
2017年01月25日
DMM.com
日本の未公開企業で、時価総額が1000億円を突破している数少ない企業と言われているのがDMM。創業から年数が経っているのでユニコーン（スタートアップ企業で時価総額が$1B突破）には当たらないが、本業で儲けた潤沢な資金を新事業に果敢に投資する稀な企業である。グループ売上1700億円。従業員3000人（正社員2000人）。本社は石川県加賀市。
亀山会長にお会いしたことはないのだが、昨年地元で開かれた講演会をPodcastで聴いたのが面白かった。
・家が地元で様々な商売を手掛けていた影響で就職せずに六本木で露天商から始める
・小銭を稼いでは海外を放浪
・お姉さんが始めていた喫茶店の手伝いで地元に戻る
・当時はやり始めていたビデオレンタルショップを開業
・TSUTAYA進出が分かり、慌ててTSUTAYAの最新大型店舗をまるっきりコピーした店を地元で開店し、加賀市進出を阻止
・コンテンツを押さえたところが強いと思い、低予算で製作できるAV制作に進出
・同業者を次々と買収＆ビデオレンタルショップへの通販を始め急拡大
・AVネット配信にいち早く進出→独占的地位を築く→Cash Cow
・潤沢なCFを使い、FX等ネットビジネスを拡大
・自分で行けると思ったFlash Marketingが失敗したのを機に、時代に付いていけなくなった自分に気づく→やる気のある若者に任せる「鵜飼い」スタイルに転換
「鵜飼い」スタイルというのは、やる気のある若者（鵜）のアイデアと行動力に頼りつつ、彼らに資金と経験に基づくアドバイスを与える「鵜飼い」になるというもの。エンジェル投資家あるいはCVCとも言える。
若者に任せ、新事業に果敢に挑戦できるのも、AVでの潤沢なキャッシュフローがあるから。Cash is King！
亀山：エロって基本的に広告は取れない代わりに、そのためならお金を払おうという人が多いんですよね。正直言って、ネットでマネタイズするならエロが手っ取り早いですよ。（DMM亀山会長に田原総一朗が聞く「お金儲けのコツと楽しさ」）
2017年01月24日
官によるイノベーション「起業家精神をもった国家」
「政府は規制によってイノベーションを妨げることはあっても、イノベーションの主体になることはない」というのが一般的な理解である。しかし、イギリスの研究者である著者は、「起業家精神をもった国家」というものが存在するという。しかも、実は、画期的なイノベーションのほとんどはこうした「起業家精神をもった国家」によってなされているというのだ。
なるほど、読み進めると、納得できる部分はある。VCはイノベーションを加速させるが、著者が指摘する通り、基礎研究段階で出資することはないし、リスクの大きい創業期に出資することも稀だ。資金の大半は事業コンセプトが証明されたのちに「拡大資金」として投資される。
従って、最も投資効率の悪い研究開発段階を支えるのは、政府の資金であることが多い。これに成功したのち、事業開始段階をエンジェル投資家が支え、市場の存在が確認が出来たのちVCが拡大資金を提供するのだ。
「起業家精神をもった国家」は存在し得るが、国家が常にイノベーションを起こすわけではない。そうなる為には幾つかの条件を満たす必要があると思う。一つには、国家が危機感を持って運営に当たっていることで、自分の懐の痛まない税金を使うので、上手く制度設計できない限り、無責任な浪費に終わる可能性が高い。小国の方が一般的に国民の危機意識が高く、有利である。
本書の論調は、国家が常にイノベーションの中核である可能ように書かれており、それについては異議を表明したい。
＊経済成長の原動力となり、市場を立ち上げ、かつ、形作ってきたのは国家日本語への序文：日本では政府と民間の間に強いパートナーシップが醸成されてきた・官によるイノベーション「起業家精神をもった国家」ダイナミックで水平的なイノベーションシステムをもう一度構築し直して変化を主導し、同時に新たな活路を見つけ出すために下からの力を積み上げる組織内イノベーションを醸成する。序説：鉄道、インターネット、ナノテクノロジー、新薬など資本主義のダイナミズムを進展させたほとんどの画期的なイノベーションは、元を辿ると大胆で企業家的投資意欲を持った国家に行きつく。115：経済において重要なのは、小企業ではなく、若くして高成長を遂げている企業。イノベーションを促進し、雇用を創造する爆発的成長を示すのは、何年間か既に存在していて、最後に離陸する直前まで徐々に成長してきた企業。121: VC投資は、高い成長が見込まれ、技術的複雑性が少なく、また資本集約度が低い分野に集中する傾向がみられる。資本集約度が高いとコストがかかるからである。132: ケインズが強調したように、一般的に言うとビジネスへの投資はアニマルスピリットの関数であり、将来の成長見込みを本能的直観で察知して取る行動である。こうした行為に大きな影響を与えるのは税の仕組みではなく、その国の科学基盤の強さ、信用創造システム、教育の質そして人的資本である。1980年代に盛んに行われた減税政策は、イノベーションへの投資を増やすことはなく、所得格差を増大させるだけに終わった。
2017年01月23日
TED TALKS
TEDを見た人は多いだろう。その代表が出した「公式ガイド」。
では、TEDとは一体どんな組織なのか？TEDはTechnology Entertainment Designの三分野を結び付ける、年に一度の講演会として1984年にごくごく内輪のサロンとして始まったという。2006年からその講演の内容をネットで無料配信するようになり一気に広まった。講演会に出席するには、入会審査を受けたうえで年会費$8500（100万円）を払ってTED会員になる必要があるというから、かなりの高級会員クラブだ。
現在の代表者はChris Andersonというイギリス人で、2001年に非営利団体のTEDを買収した。Wikipediaにも、Oxford大学卒の元ジャーナリストとしか出てこない謎の多い人物のようだ。
＊人々を惹きつけるスピーチの奥義・Through Line意味のある何かを伝えるためには、話し手のアイデアのすべての要素を結び付ける一貫したテーマが必要。ありきたりではない、意外性のあるスルーラインは聴衆の好奇心を掻き立て、話に引き込む。・話し手が最初にすべきことは、観客が喜んで話を聞いてくれるようにすること観客と目を合わせてほほ笑む。緊張している時は、素直にそれを認める。・Story Telling‐ 観客が共感できるような登場人物‐ 好奇心、社会的な関心、実際の危険を通して緊張を盛り上げる‐ 適度な量のディテールを盛り込む‐ 最後に笑いや感動や驚きで締めくくる・原稿をつくって、それを自分の一部になるまで練習する18分のトークを暗記するには5，6時間かかる。毎日1時間の練習を1週間続ける。その時間がなければ、丸暗記はやめた方がいい。がっちりと構成を決めたうえで、それぞれのポイントをその瞬間の言葉で話す。・「はじめ」と「終わり」が肝心出だしの1分で観客の興味を引かなければならない。最後に何を言うかが、一番観客の記憶に残る。
2017年01月22日
ばしゃ馬さんとビッグマウス
先週BSで偶然見たのだけど、なかなか面白かった。
次々と脚本コンクールに応募するものの、一次審査すらも通らない34歳の馬淵みち代（麻生久美子）。そんな彼女と同じシナリオスクールに通う26歳の天童義美（安田章大）は、自分の作品をほとんど書いたことがない割には、常軌を逸した毒舌で他人のシナリオを酷評する。そんな彼らが出会ってしまい、何と天童がみち代にほれてしまう。嫌味な自信過剰男だと自分を嫌うみち代に認めてもらおうと、ついにシナリオを書くことを決意する天童。意外な彼の真摯（しんし）な姿に、みち代も心を開き始めるが……。（シネマトゥデイ）
どちらかがコンクールに通って、それで二人が結ばれてハッピーエンドかと思ったらそうはならない。みち代は「これで最後」と惨めな自分をさらけ出して書いた納得のシナリオがやはり通らず、郷里に帰ることを決断する。
脚本を主題にした映画で、では、脚本はどうしてできたのかと見てみた。脚本は、監督の吉田恵輔と仁志原了を一部モデルに作られた、とある。（Wikipedia）
途中、寂しくなったみち代が元カレの家に上がって、慰めてもらう。よりを戻すかに思えたが、みち代の「そんなことしたら、また好きになっちゃうよ」の一言で元カレは行為中止。麻生久美子を前に、「それは無理でしょう
」と突っ込んだのは私一人ではあるまい。2017年01月21日
産業の大逆転
藻谷浩介氏の大都市圏と地方圏の「三つの大逆転」の最後は、「産業の大逆転」。何のことかと思ったら、「ハイテク製造業」から「六次産業」への転換だという。
六次産業：農林市産業による原材料供給（第一次産業）ｘ高度な技術による加工（第二次産業）ｘブランディングを施した流通販売（第三次産業）
これを兼ね備えると、「１ｘ２ｘ３＝6次産業」というわけだ。昨日書いたオーストリアの集成材を藻谷氏はその典型としている。
日本の国際収支黒字国：米国、中国、韓国、台湾、シンガポール、タイ、インド・・・
日本の国際収支赤字国：中東諸国（石油）、オーストラリア（石炭、鉄鉱石）、ロシア（天然ガス）
これだけ見ると、昔学校で習った「加工貿易」の産業構造に変化がないように思える。しかし、新興国の経済発展でエネルギー価格が高騰し、付加価値額が低くなっているのだ（上図）。これは農業でも同じで、現在の農業は機械化され石油なしには生産できない。肥料や飼料、農薬の多くも輸入されている。
そこで見習うべきは、資源国以外で対日貿易黒字国の、フランス、イタリア、スイスだという。共通しているのは六次産業が強いこと。
フランス：ワイン、ブランド品（Louis Vuittonなど）
イタリア：ワイン、オリーブオイル、パスタ、チーズ、ブランド品（Feragamo、Pradaなど）
スイス： 高級時計
これらの国の六次産業は、農産品を原料とするので当然地方圏にある。イタリアのMichelin三ツ星レストランも9割は地方にあるということ。
私なりにまとめると、地域の資源を、他地域、特に海外からの輸入資源に頼ることなく、高付加価値化して地域経済を自立させるのが「里山資本主義」ということのようだ。これまでのように、自動車や電機といった都会の特定産業に過度に依存することなく、全国の各地域がそれぞれ外貨を稼ぐ。確かに、やり方次第で可能だと思う。
2017年01月20日
山林が宝の山になる大逆転
藻谷浩介氏の大都市圏と地方圏の「三つの大逆転」の二つ目が、「山林が宝の山になる大逆転」。
かつて、「山林王」という言葉があったように、山林は高度経済成長期までエネルギーや建築材料の供給源として、宝の山であった。江戸末期の里山の写真を見るとほとんどはげ山である。先日書いたように、奈良→京都→江戸への遷都は周辺の森林資源を使いつくしてしまったから、というのが有力説になりつつある。
それが、明治になり石炭によるエネルギー革命が起こった。次いで、昭和になりさらに石油によるエネルギー革命が起こった。山に緑が戻った代わり、日本はエネルギーを海外にほぼ全量依存することになった。輸出産業の発展で円高になり、建築材も輸入するほうが安くなった。手入れされなくなった山林が全国で放置されている。
それがどうして逆転するのか？藻谷氏は、欧州での木造建築ブームをあげている。7-9階建ての木造高層建築が次々と登場しているという。日本でも建築基準法が改正され、3階建てまでは認められるようになったらしい。勿論、建築基準法ができるまで、日本では木造3階建ては当たり前だった。戦前の校舎など、ほとんどがそうだ。
そうした在来工法の3階建ては耐震性と耐火性に問題があったため、建てられなくなった。欧州での木造建築ブームはCLTと呼ばれる新しい集成材によるものだ。木目の方向が層ごとに直交して接着され非常に耐久性が高いという。藻谷氏によれば、「防炎加工を施してあり、延焼も起きない」という。
CLT技術を開発したのはオーストリアということだ。人口900万人のこの国は木材を年間1兆円も輸出しているという。人件費の高い同国でなぜそれが可能なのか？それは、CLTはじめ集成材に加工しているからだ。加工時にでた副産物の「木くず」は「ペレット燃料」に加工する。オーストリアでは「水力＋風力＋太陽光＋木くず」の再生エネルギーで国全体のエネルギー需要の3割を賄っているという。
再生エネルギーは何れも「エネルギー密度」が化石燃料に比べると低いので、大量のエネルギーを集中的に消費するには向いてない。しかし、地方圏ではもともとエネルギーの総需要が低いので、地域の資源を活かしてエネルギー自給率100%を達成することは可能なのかもしれない。現に、ドイツの農村では上記に加え、家畜糞尿から製造したバイオエタノールで余ったエネルギーを都市部に売っている村があるということだ。
2017年01月19日
高齢化の大逆転
昨日、藻谷浩介氏の大都市圏と地方圏の「三つの大逆転」のことを書いた。まず最初の「高齢化の大逆転」を詳しく見てみたい。
これからは大都市圏で高齢者の絶対数が急増していく一方、地方圏の多くでは数がもう増えなくなっていく。これから医療介護の負担増に苦しむのは、地方圏ではなく大都市圏である。
それを現したのが上図で、大都市圏は今後大幅な高齢者の増加に見舞われる。特に、地方都市で暮らしやすいと人気の札幌や仙台、福岡、沖縄などは80%も高齢者が増えることになる。「今」人気で、現役世代が集まり、それが30年経って高齢化するというわけだ。
それは、東京も例外ではない。2010年から2015年にかけて首都圏の人口は51万人増えたが、年齢別でみると、増えたのは80歳以上だけだった。
一方、既に過疎が進んだ秋田や高知では今後高齢者は増えない。尤も、こうした地域では生産年齢人口の減少が続くので、「高齢化率」は依然として進む。
では、どこが理想的かと言えば、「これ以上高齢者が増えず、生産年齢人口が余り減少しないところ」ということになる。都道府県別で見ると、島根や山口で高齢者が増えず、生産年齢人口減少が比較的少ない。市町村単位でみると、秋田県大潟村や長野県下條村が理想的ということになる。
団塊の世代が後期高齢者となる2030年までは、75歳以上の数が全国で急増する。しかし、2060年になると、団塊ジュニア世代が85歳を超え、それ以下の世代は数が安定する。経済規模がある程度維持できれば、人口が減って暮らしやすくなることが予想される。出生率も自然と上がるだろう。藻谷氏は「人口が現在の半分強」で安定する社会になると予想している。6500万人くらいか。
日本の地方圏には、30年後の日本を先取りした人口構成になっているところがたくさんあるが、ほとんどの場合、地域社会は機能不全に陥ってはいない。
地方の高齢者の多くには、農業や漁業などの生業があるから元気だ。都会の高齢者のように、家の中にずっと座っていると、病気がちになる。
出生率が２を超えている自治体のほとんどは、過疎山村や離島ということだ。こうしたところは、多数の子供を産んでも生活できるシステムが出来上がっている（維持されている？）ということだ。住居費が安く、助け合いがあり、労働時間は短く、お母さんだけに負担が掛からない。大都市圏ほど収入が高くないが、共働きが多い。地域社会全体で子育てを支える仕組みが整っている。
2017年01月18日
里山資本主義と地方圏創生
これまでの「マネー資本主義」から、地域でなるべく経済を回す「里山資本主義」に移行すべきと訴えたのが3年前に読んだ『里山資本主義』（藻谷浩介）であった。
日本人は全体としてみればお金を使わない。何故かと言えば、漠とした不安を感じているからで、その不安の源泉を「食料も資源も自給できない国の繁栄など、しょせんは砂上の楼閣」だと感じているからだと推定している。
食料と資源を獲得するために、先人は頑張ってきた。その経済拡大路線がつまづき、なんとかそれを維持しようと、公共投資を増やしたり金融緩和を行ったりと「マッチョ的解決策」に頼ってきたが、それは根本的解決にならない。地産地消でなるべく地域で取れるものを食べ、エネルギーも山間地なら木くずペレットで賄えますよ、と訴える。
それで、今回、百十四経済研究所に頂いた『調査月報』のバックナンバーにあった藻谷氏の特別寄稿「里山資本主義と地方圏創生」を読んでみる。今後「三つの大逆転」が起こるという。
��高齢化の大逆転
これからは大都市圏で高齢者の絶対数が急増していく一方、地方圏の多くでは数がもう増えなくなっていく。これから医療介護の負担増に苦しむのは、地方圏ではなく大都市圏である。
��山林が宝の山になる
山林が、利用法や価値観を変えてみることで、一転して貴重な資源となる。
��産業の大逆転
外貨を稼ぐ産業がハイテクから六次産業へとシフトしている。農林漁業を持つ地域に新たなチャンスが生まれている。
何れも、まちづくりに取り組む私にとっても興味深いテーマなので、それぞれ詳しく見てみる。明日以降！
2017年01月17日
自転車小説
以前、タイラー・ハミルトンの『シークレット・レース』というノンフィクションしゅを本欄で紹介したら、「ランス・アームストロングをモデルにした小説がありますよ」と言われて読んだのが本書。自転車には乗るが特にこれまで自転車を題材にした小説やマンガは読んだことがなかった。
主人公は、日本人ロードレーサーの白石誓。ツール・ド・フランスで優勝も狙えるフランスの有力自転車チームでエース選手を勝たせるためのアシストをしている。日本人選手として欧州に渡り、グランツールに参戦した嚆矢だが、さすがにエースにはなれず、各チームを転々としながらアシスト役として走っている。既に30歳となり、あと何年走れるかと焦り始めている。
そこに、かつてのツール・ド・フランス覇者で、ドーピング事件で全てのタイトルを剥奪された元チャンピオンが新チームを組織して復活するのだ。彼のドーピング事件はツールの評判を落とし、スポンサーが離れたため、迷惑を被った選手も多かった。そして、白石はそのトラブルに巻き込まれていく・・・、といったあらすじ。
調べてみると、同じ主人公でシリーズになっているらしく、
2007『サクリファイス』日本が舞台・・・大籔春彦賞受賞
2010『エデン』日本人選手として初めてツール・ド・フランス参戦
2011『サヴァイヴ』
2013『キアズマ』
そして、2016年本書と、既に5冊になっている。
著者のインタビューによれば、自転車競技に興味を持ち、観戦するうち、独特なチームスポーツであることから、「（小説として）いける」と思ったという。勿論、流行に敏感なマンガの世界では『弱虫ペダル』がヒット。「週刊少年チャンピオン」で連載が始まったのは2008年。既に、映画化＆TVアニメ化もされている。
2017年01月16日
1万時間の法則
「一人前になるには1万時間掛かる」という法則がある。元々は、フロリダ州立大学のK.アンダース・エリクソン博士の研究で、プロのスポーツ選手、世界的な音楽家、チェスの名人など、超競争の激しい分野の、超成績の良い人ばかりを調査して導かれたもの。
博士は、これらの分野でトップに達するために、どのくらいの時間がかかるのかを調べた。わかったことは、練習がより計画的であればあるほど、何の分野であれ得意分野の練習に時間をかければかけるほど、ますます上達する、ということ（当たり前だ
）。そしてこれらの分野の頂点に立つ人々は、練習におよそ1万時間を費やしていたのだ。この研究結果を基に書かれたのが、上記の『天才！成功する人々の法則』（2007）で当時ベストセラーとなった。このように、元は「超競争の激しい分野の、超成績の良い人ばかり」に関する法則であったが、次第に「一人前になるには1万時間掛かる」と一般化されてきた。まあ、それも、納得感が大勢にあったからなので、ここではその是非に触れない。興味のある人は、上記リンクからTED動画を見てほしい。
私も経験則として、普通の人は「一人前になるには1万時間掛かる」と思っている。「一人前」というのは、プロとしてお金を取れるレベルだ。成人式を迎えたからと言って、急に大人になるわけではない。大人の定義を、経済的にも精神的にも自立している人間とするなら、「一人前」になって初めて大人になったと言える。その意味で、会社に就職して給与を貰うようになっても一人前であるわけではない。多くの会社には仕事の仕組みが備わっているから、半年もすれば「歯車」としては仕事をこなせるようにあるだろうが、例えば、それで独立できるわけではない。
1980年代まで日本の平均年間労働時間は2000時間だったから、新入社員が一人前になるのに平均5年掛かった計算だ。今は1700時間だから6年掛かる。高度成長までは2500時間あったから4年。意欲の高い人は他人の1.5倍働き、これを3年でこなしていた。
早く一人前になった人は、組織内での発言力が高くなり、仕事の自由度が高まる。裁量の範囲が広がるので、ますます仕事が面白くなる。こうして、ドンドン先に行ける。30歳までに決定的な差が付く。こちらの記事「こんなに働く時間を減らして、日本企業は世界で勝てるのか？」でも指摘されているが、ルーティンワークをこなすだけならどんどん労働時間を減らして、生産性を高めればよい。しかし、言われたことだけをこなすような仕事はどんどん減っているし、AIを含む機械と競争しなければならない今後ますます厳しい世界である。米国では既に、弁護士の判例調べや会計士の伝票チェックがAIに取って代われようとしている。
今、世界が勝負しているのはイノベーションや創造の分野であり、これまでにない限界に挑戦しているのだから、試行錯誤で時間はかかる。しかも、人より先に成功しなければ努力が無駄になってしまうことも多い。先日会ったGoogleの元人事部長も、「Googleでは皆長時間働いていますよ。仕事を楽しんでます」と言っていた。無料の社員食堂やジムがGoogle社内にあるのは、その気になれば24時間働くことを前提にしているからだ。
では、労働時間統計を見ればなぜ欧米の労働時間は短いのか。そもそも統計の取り方が違う。欧米では大学卒は最初からExemptと言われる専門職扱いである。仕事は成果主義なので、残業代は全く付かない。従ってホワイトカラーは労働時間も管理されておらず、統計上は基本労働時間だけで上がってくる。実際はどうかというと、上昇志向の強いシリコンバレーのベンチャー企業、経営コンサルタント、投資銀行など皆激しく働いている。私も昔、MBA取得後内定をもらったシティの投資銀行の面接で、「1週間くらい家に帰れないときもある」と言われた。
社会に出た限りは、早く「一人前」になる方がいい。言われてやるのではなく、目標も3-5年の期限もある話なので、どうということはない。一人前になった後、業界のトップクラスを目指して努力を続けるか、ペースを落として別のことを考えるかも自由。欧米ではこの時点で大学に戻ってMBAを取得する人も多い。それまでに仕事の成果を出してなければ、世界トップクラスのMBAコースに入るのは無理だ。
労働時間管理だけに拘って半人前の従業員を増やしてしまったら、何時まで経っても自立できず、本人のためにならない。人生の選択肢を大幅に減らしてしまうことになる。国家にとっても大損失だろう。機械との競争で放っておけば、「所得の二極化」は間違いなく進む。これまで中間所得層の多くが手掛けてきたホワイトカラーの仕事の大半がAIに取って代われられる。「人材不足」と言われる今は最後のチャンスで、しっかりした企業でしっかり働き早く一人前になっていないと、5年後にはAIに仕事を奪われるかもしれない。納税しない大量の失業者が発生する可能性がある。
一連の労働事件の本質はハラスメントであるように思う。信頼感の喪失と強要された長時間労働が重なった時に人は耐えれなくなるのだ。他にも「納得できる仕事のやり方なのか」「それによって成果が出ているのか」などいくつかの要素があるはずだ。これを、労働時間の問題だけに単純化してはいけない。
これを機に、工場のライン労働者から若くして年収数千万取る専門職まで同じ法律が適用される時代遅れな労働法の改定をした方がいい。
2017年01月15日
ブラタモリ「なぜ讃岐うどんは名物になった？」
NHKブラタモリついに香川に上陸
2週連続の第一回は、当然、「なぜ讃岐うどんは名物になった？」。案内人は、「讃岐ジオパーク構想」の同志、香川大学工学部の長谷川修一教授（応用地質）長谷川先生とは、大学を辞めた今も、同活動でご一緒している。それでなぜ、讃岐うどんが名物になったのか？
�‘�本一雨が少ない（年間降水量、高知の3000mmに対して1/3。日本平均1500mmの2/3）
�△Δ匹麋�祥の地と言われる丸亀平野は扇状地で水はけがいい
→米の水田栽培に適さず、小麦生産が盛んであった
� ���瀬戸内海が遠浅
→遠浅の海岸を埋め立て、塩田での塩づくりが盛んだった（1972年にイオン交換膜法で工場で生産されるようになるまで、香川県の塩生産量は日本一）
というわけで、うどん作りに欠かせない小麦と塩が揃っていたわけだ。うどんは小麦粉に塩水を加えて、練って作る。練る時（讃岐うどんでは手で捏ねたのち足踏み）塩がグルテン形成を助け、讃岐うどん独特のコシとなる。ちなみに、塩は茹でるときにゆで汁に溶け出すので、うどん自体がショッパイわけではない。
讃岐平野のほぼ真ん中に位置する滝宮には綾川が流れ、この辺りは扇状地ではなく花崗岩の岩盤なので、水が浸透せず、しかも地形が渓谷になっていて水量が多い。この水流を利用して水車による小麦の製粉が行われた。同じ場所に1000年以上も水車小屋が置かれていたというのは私も初めて知った。
そして、高松と金比羅さんの中間に位置する滝宮は金毘羅街道の宿場町でもあった。江戸時代、宿屋が6軒、うどんやは11軒あったという。同時代、伊勢神宮に次ぐ人気を集めた金比羅さん。全国から来た金比羅さんの参拝客が名物のうどんを食べ、そのおいしさを全国に広めたのだった。
来週は、「人はなぜこんぴらさんを目指す？」これも、見逃せない。
2017年01月14日
讃岐ラーメン
「徳島ラーメン」はあっても、「讃岐ラーメン」は聞いたがことがないという人が大半だろう。それだけ讃岐ではうどんが圧倒的なのだ。
その讃岐で居酒屋で出していた中華そばが評判になり、後にラーメン専門店になったのが「はまんど」。ラーメン開発に当たっては、森の大将が県内のうどん屋をすべて食べ歩き、ついにはラーメン屋がうどん屋を押しのけて「初代 讃岐うどん王」になってしまった。讃岐うどんののど越しに、瀬戸内のいりこからとった和風だしで仕上げたラーメンでもうどんでもない「讃岐ラーメン」なのだ。
今は、県内2店舗の他、横須賀（北久里浜）にも。大将は最近は横須賀にいるらしい。私は本店にしか行ったことないが、古民家風で、店内にはジャズというオシャレさ。うどん激戦区香川でうどんで500円以上とるのは至難の業（セルフなら「かけ小」で200-300円）。そこに高付加価値で勝負して成功している（はまんどラーメン780円）。
作品｢踊る大捜査線｣で著名な映画監督・本広克行(香川県・丸亀市出身)氏の｢ＵＤＯＮ｣にも実在のラーメン店主として出演、店舗紹介されたことは知るところである。讃岐うどん巡礼者の聖書ともよばれる有名著書｢恐るべき讃岐うどん｣(田尾和俊氏・著)に登場する人物。麺通団(めんつうだん)員・盛の大将(もりのたいしょう)のニックネームも持つ。
2017年01月13日
藤沢周平
高松稲門会の文学部出身者に推薦されて、めったに読まない時代小説を一冊東京から香川への移動中に読む。確かに面白い。読みはじめたら止まらず、SkylinerとJetstarの中で一気に読んでしまった。以下は、『週刊文春』の紹介から。
物語はシンプルだ。文庫本で二五〇ページほどの長さしかない。描写は切り詰められ、文体は藤沢周平史上もっともドライ。男たちの心のうちの修羅が、最小限の乾いた言葉で見事に浮き彫りとなる。彼らの夢と破滅が、酷薄な運命観に支配された息づまるドラマとして屹立するのである。
巻末の磯貝勝太郎「解説」によれば、藤沢周平は昭和2年に山形の農家の次男として生まれている。印刷工場で働きながら夜間中学校を卒業。山形師範学校で学んだ後、中学校教員をしていた24歳の時、肺結核に掛かり3回の手術と6年間の療養生活を送っている。20代を病気で棒に振ってしまったわけだ。「東京で社会復帰し、生計を立てるため小さな業界新聞社を転々としながら、下積みの時代を過ごした」とある。
やっと病気が治り、結婚したのも束の間、妻は28歳の若さでガンで死亡。「彼女と胸もつぶれるような光景と時間を共有してきたので、死別した時は、自分の人生も一緒に終わったように感じて、失望、落胆した」らしい。しかし、残された乳飲み子のことを思い、小説を書いてみようと奮起した。
前半生の屈折感や、鬱屈した気分が小説に反映され、初期の小説は、時代小説という物語の形を借りた私小説のようであったという。映画化された『たそがれ清兵衛』も藤沢周平原作だ。
2017年01月12日
GEが9ブロックを止めた
何時も聞いているPodcastの公開収録で週末渋谷へ。今回のゲストはポーランド人でMorgan StanleyやGoogleで組織開発責任者だったというPiotr Feliks Grzywaczさん。生まれたのはたった50人しか住んでいない辺鄙な村で、しかも当時のポーランドは共産国家。まだ子どもの頃ベルリンの壁が崩壊し、それから大変な混乱の中で育ったそうだ。ドイツやベルギー、オランダで働いた後日本にやってくる。
折しも、日本では残業問題が連日のようにメディアを賑わしている。
ピョートルさん曰く、
・Googleでは全員毎日残業している
・GEが9ブロックを止めているのに、日本企業は、コンサルタントに金を払って一生懸命導入しようとしている
ということ。Googleでは仕事を楽しいと思う人しか採用しないし、また、楽しく働き続けられるように環境を整えているという。そして、楽しく働けなくなった人はGoogleを去る。
欧米で働いたことのある人なら既知のことだが、大卒は欧米では最初から管理職扱いなので、残業代は付かない。新入社員でもだ。なので、労働時間も管理してない。お昼時間も取ったり取らなかったり。「お昼休み」と決められていないからである。要は、成果を出しているかどうかだけ。残業代が出るのは、工場のラインで働く労働者だけである。
さて、GEの「９ブロック」というのは、GEがジャック・ウェルチ時代に導入した「業績結果ｘGEバリュー発揮」の9マスで人事評価する仕組みで、長年GEの好業績を支えてきた。世界で定番となっているMBO（目標管理方式）の一つだ。それをGEが昨年止めたという。
新たな方針は、
・No Rating（社員の順位付けを止める）
・No Curve（評価調整で、社員を正規分布に当てはめることを止める）
だそうだ。
・これまでの 「９ブロック」が、「社員が成果を上げる」ことを促進してきたか？
・社員評価に年に2回、上司が使う膨大な時間は生産的であったか？
を検討した結果NOであったわけだ。
2017年01月11日
駿河台緑地
昨日今日と、二日間の缶詰研修で駿河台へ。これまであまり縁のない土地である。昼休みに気分転換のため周囲を散歩した。初日はニコライ堂へ。そして、今日行ったのが三井住友海上駿河台ビル。
ここには屋上庭園がある。調べてみると、1984年に旧大正海上の本社ビルとして竣工している。ビル緑化が言われ出したのは90年代だと思うので、84年というのはそのはしりだと思う。緑化面積率46%はスゴイ。2013年に地上からの直通エレベーターが設置され、自由にアクセスできるようになった。隣接するECOMでは、月に一度バードウオッチングの会をやっている。
ところで、この土地。元はと言えば、中央大学の駿河台キャンパスであった。1977年に多摩キャンパスが完成し、新学年から徐々に移していき、1980年に駿河台を完全閉鎖した。その後に立ったのが旧大正海上の本社ビルなのだ。
当時の大学の郊外移転は国策であったらしい。大学進学率がどんどん高まり、一方、これほど少子化が進むとは当時想定してなかったので、大学の定員がまだまだ増えると思っていた。そこで、私立大学に郊外移転を促したわけだ。
これにまんまと乗って主力キャンパスを郊外に移したのが中央大学や法政大学など。早稲田も1987年に所沢キャンパスを造ったが、そちらには新設の学部を置き、それまでの早稲田キャンパス・新大久保キャンパスはそのままにした。慶応も1990年に湘南藤沢キャンパス(SFC)を造ったが、同様に新設学部を置き、既存キャンパスはそのままにした。
その後少子化の流れが強まり、学生には都心のキャンパスが人気で、都心回帰の流れが決定的になった。結局、「国策」に乗って郊外にキャンパスを移したところは不人気となり、都心に残った早慶上智などと差が開くことになった。
だからと言って、文科省が責任を取ってくれるわけはない。民間の経営は、あくまで自己責任である。
2017年01月10日
大田区「リゾートとしての開発と理想の工場建設」
江戸幕府は大田区域の低地を稲作地帯として開発した。網目のような六郷用水が整備され、そうして開拓された田園が、明治以降耕地整理される。こうして、大田区には住宅や工場がいち早く立ち並んだ。戦前に既に現在とほぼ同じ人口があったのだからスゴイ。他の東京郊外も戦前から人口は増えていくものの、本格的に増えるのは戦後の事である。
大正時代に流行したユートピア思想の下、「理想的工場」が大田区に作られていく。その先駆けとなったのが、タイプライター製造の黒沢商会が1916年に作った蒲田工場である（写真）。創業者の黒沢貞次郎の「通勤に伴ふ疲労を除き住宅難の脅威を免れ」という考えで、工場には従業員のため、社宅、農園、遊園地、桜並木、テニスコート、共同浴場、幼稚園、小学校、プールまでが備えられた。
調べてみると、黒沢商会は現存している。しかし、現在の事業の柱は、不動産賃貸事業とドコモショップ運営のようだ。戦前にこれだけの業容を誇り、また先進的な工場を建設したのに、そのことにはまったく触れられていない（「1916蒲田工場建設」のみ）。仮名文字タイプライターの発明者であり、日本で最初のタイプライター会社であり、1909年銀座に建てた黒沢商店ビルは日本初の鉄筋コンクリート造であった。これだけの会社が自社の歴史を隠しているのは惜しい。
蒲田工場はどうなったのか。こちらの方は、「最後まで個人経営による家族主義にこだわり、利益の大半を納税しなければならなかった」と書いておられる。納税のために工場を売却してしたのか？確かに、戦前これだけの規模がありながら個人商店のままで、株式会社化したのは昭和28年の事だ。
良いことをするだけでなく、それを継続するためには工夫がいる。
70:明治末期6万人→1932年（昭和7）27万人→1942年61万人→現在72万人関東大震災以前から進行していた耕地整理事業のため市街地の土台ができていた1916年（大正5）以来44もの耕地整理組合1919都市計画法72:大地の上に山王1872年（明治5）日本初の鉄道 新橋⇔横浜1876年 大森駅73:馬込文士村宇野千代、尾崎士郎、広津和朗、萩原朔太郎、北原白秋、室生犀星、川端康成75:黒沢商店（タイプライター製造販売）黒沢貞次郎ユートピア的思想職住近接の工場村「通勤に伴ふ疲労を除き住宅難の脅威を免れ」1916蒲田工場に社宅、農園、遊園地、桜並木、テニスコート、共同浴場、幼稚園、小学校、プール77:三省堂1923仲六郷に印刷所「蒲田女学校」女子行員は紺袴で出勤、仕事の合間に華道や茶道
2017年01月09日
葛飾の町工場
第2章は、「町工場と『綴り方教室』」。舞台は東京東部の工業地帯である足立区。
元々東京の郊外で、明治・大正と東京の発展とともに工場は増えていたが、大正15年に東京電燈（現・東京電力）の千住火力発電所完成で周辺の工業都市化が進んだ。
工業系労働者の多い下町というイメージのためか、足立区出身であることを積極的にアピールする芸能人は少ない。ビートたけしはイメージに合っているからいいが、実際は、原田芳雄、小川眞由美、浅野温子、田中好子、木村カエラ、波留などが足立区出身だという。
それと、リーガル（シューズ）と言えば、学生時代の憧れだった。就職活動が始まり思い切って買ったのだが、これが固い！甲の低い私にはくるぶしの位置が合っていなくて、歩いていると擦れて血がにじんでくる。今から思うとバカな話だが、他の靴の倍位したので、それでも捨てられなかった。
第3章：町工場と『綴り方教室』52:足立区出身の有名人・・・出身をアピールするのはビートたけしだけ!?ビートたけし、原田芳雄、小川眞由美、浅野温子、田中好子、木村カエラ、波留千住火力発電所1926→工業化55:昭和に入って工場増加1938 田邊元三郎商店（のちの田辺製薬）がビタミンC製造工場を足立区梅島町に建設1902 日本製靴（のちのリーガル）京橋区鎗屋町（現・銀座）で設立→翌年、千住に本店移転
2017年01月08日
イギリス田園都市の発想は飛鳥山からだった!?
かつての東京郊外の歴史を探るこの本の第一章は「イギリス田園都市の発想は飛鳥山からだった!?」。
王子にある飛鳥山。王子は江戸時代以来、別荘地・リゾート地だったらしい。幕末にここを訪れたプラントハンターのRobert Fortuneが絶賛し、それを読んだ都市計画家のRaymond Unwinが「田園都市」を構想した。ロンドン郊外のレッチワースが世界最初の田園都市と言われるが、実はそのルーツは江戸にあったのだ
さて、その王子には江戸最古と言われる料理屋があった。それが扇屋と海老屋で、慶安年間（1648-52）に農家が農閑期に始めた小さな茶屋だったらしい。その後兄弟で、武家を相手にする扇屋と、町人を相手にする海老屋に分かれたということ。両方とも江戸の料理番付に載る名料理屋だった。
先に出た世界中の植物を採取していたRobert Fortuneは『幕末日本探訪記』でこれを書いている。『古代への情熱』のシュリーマンも1865-66の世界漫遊の際に訪れ、『シナと日本』で以下のように書き残している。
「この茶屋は木造二階建てで掃除が行き届いていた。磨き抜かれたか、あるいは漆塗りかの床に、絹で縁取りされた美しい竹の敷物が敷かれ、日本のどこでもそうであるように、家具調度の類はいっさいなし。目のさめるように美しくてうら若い12歳から17歳の乙女たちが給仕をしてくれる」
よほど、日本人女性が気に入ったのだろう。
22:「日本では、桜や桃の花が咲く季節に祝日や大きな祭があるそうです。木が植えられた特別な場所に集まり、花の下で酒盛りをして楽しむのです。もしもわれわれが、われわれの国の街路にもそんな個性を与えられるなら、われわれの国民は家と仕事場をただ往復するのではなく、花の咲く道に立ち寄るでしょう」Raymond Unwin『都市計画の実際』1909アンウィンは、世界最初の田園都市と言われるロンドン郊外のレッチワースをはじめ、ハムステッド・ガーデン・サバーブ、ウェルウィンなどの住宅地を計画した都市計画家である。そのアンウィンが、日本の都市、おそらくは江戸・東京の街の中に桜や桃がたくさん植えられ、それらが季節を告げるように次々と咲き、庶民が花見をして楽しむ暮らしをうらやみ、ぜひイギリスの都市もそうしたいと言っているのである。27:Robert Fortune（世界中から新種の植物を採取するプラントハンター、1860年に来日）「私は世界のどこへ行っても、こんなに大規模の、売り物の植物を栽培しているのを見たことがない」染井を訪問して
2017年01月07日
ユートピア時代の東京
ここに書かれているのは、「これまであまり語られず、普通の人は良く知らないはずのーーつまり、現在の東京23区に相当する東京市ができる1932年以前にはまだ郊外農村部だった地域で、しかも山の手よりも下町の、南部よりも北部の東京」である。
下図を見てわかるのは、東京の人口が一様に増えたわけではないことだ。明治から大正にかけて、東京は15区であった。1932年周辺5郡82町村を東京市に編入して、新たに20区を新設して35区からなる「大東京市」が成立する。これがほぼ、現在の東京23区の範囲となる。下図では、現在の23区の分類で戦前からの人口を集計してある。
都心の人口増は明治の終わりには終了し、代わって、郊外人口が爆発的に増える。都市化が進み、都心のビジネス街＆商業地区に郊外から電車で通勤するというスタイルが確立したのが大正期であった。1923年（大正12年）に起こった関東大震災はその流れを加速した。
当時の個人平均所得も興味深い。今でも、港区の904万円に対し足立区では323万円と約3倍の差があるが、当時から西側台地の区では高く、東側低地では低かったことが解る。
9:われわれは意外に自分の住む地域のことを知らない。特に男性は、会社勤めをしている間は地域を知る機会が少ない。まして歴史となるとほとんど知らないのが普通だ。地域創生をするのなら、まずは住民ひとりひとりが地域の歴史をよく知って、地域に対して愛着や誇りを持った方がよいだろう。また、知らない土地の歴史を知ることは、その土地への敬意を生むだろう。16:1933年（昭和８）の東京市民の年間個人所得麹町区 680円麻布区 603円赤坂区 550円日本橋区526円城東区 277円本所区 296円荒川区 296円深川区 299円19:文化村、文士村、平和村、理想郷といった言葉が頻出
実際、戦前の東京でそれらが好まれた。健康的で文化的な理想の郊外というユートピア性。
2017年01月06日
世界の非公開地域99
「絶対に行けない」場所なのに、なぜ写真や地図があるのかというと、立ち入り禁止エリアは衛星写真だったり、入れない箇所がある施設は入れる場所の写真＋推定イラストだったりするから。
・太平洋ゴミベルト
北太平洋にあるおびただしい量のプラスチックゴミが集積している海域。テキサス州の2倍の面積。
・スバールバル世界種子貯蔵庫（ノルウェー）
世界中の種子貯蔵庫から、万一の場合のバックアップとして種子のサンプルを預かっている。
・アララト山上の奇妙な物体（トルコ）
ノアの箱舟の残骸ではないかという説があるが、米国情報局が写真を機密扱い。
・パドマナーバスワーミ寺院地下室（インド）
2011年に地下室を開けたところ、150億ドルを上回る価値の金、銀、宝石が発見された。
・朝鮮労働党39号室（北朝鮮）
金政権の資金調達任務を担う。紙幣の偽造（スーパードル）、マネーロンダリング、タバコや薬の偽造、麻薬の密輸など。
などなど。実際は99の半分ほどは米国政府の施設で、いかにアメリカが様々な機密施設を持っているか、興味深い。よく知られたペンタゴンやエアフォースワンから、宇宙人が飛来した証拠が隠されているというエリア51まで。行けない、あるいは中には入れない場所ばかりなのだが、好奇心を満たしてくれる。
2017年01月05日
正解が見えない課題を解決する
著者は大企業向けに人材コンサルティング＆経営者のサーチを行うコーン・フェリー・ヘイグループの日本法人代表。この業界では最大手だ。
仕事柄、経営者の経験談をよく聞くが、「優秀な経営者ほど、海外や子会社などで多種多様な経験をしている」らしい。確かに、ここ10年ほど大企業トップに就任する人たちの経歴を見ていると、これまでの「王道」をつつがなく歩んだ人ではなく、海外や子会社で苦労し結果を残してきた人が多い。本社の常識、日本の常識が通用しない環境でどうやって成果を出すか。そこでの経験が変化の激しい経営環境下で求められているのだろう。
・3C/SWOT分析などのフレームワークは、自分が答えを知らない問題に対して、仮説を考える際に役立つ。だが、フレームワークには、問題を単純化して唯一の「正解」を導くという、構造的な問題がある。このため、答えが一つではない問題を解こうとすると破綻することが多い。・人の脳の活動の8割は無意識の世界で行われている。そこでは、経験したことにタグをつけて記憶しておく。新しいモノの見方を発見するためには、自分の経験を広げることが重要になる。・人の心の中に入り込む「何が人の喜怒哀楽を生み出すか」といったことを考える。製品ではなく人間が主役の今日、こうした問いに答えることで、大きな企業価値を生み出すためのアイデアが生まれる。
2017年01月04日
海からの贈物
著者は、史上初の大西洋単独横断飛行を成し遂げたチャールズ・リンドバーグの妻。リンドバーグといえば、当時のスーパースター。しかし、これは、有名人の妻がリンドバーグとの関係や、家族の様子を
明かしたものではない。本には一切、リンドバーグも他の家族も出てこない。
島の別荘で2週間の休暇を取る間に思索した随筆集。有名人の妻として、5人の子供の母親として多忙な毎日を過ごす夫人が、日常から離れて思考することの大切さを説いている。文筆家でもあった夫人は、午前中は執筆、お腹がすくとそれから昼食を準備して食べ、午後は浜辺を散歩。夜は本を読んだり、人と食事したりという規則正しい生活を送っていたようだ。
コネチカットに住んでいたリンドバーグ家。一体どこの島に休暇に行ったのかと調べたら（本には記述がない）、フロリダのCaptiva Islandsだった。クリントン大統領のように、近場のMatha's Vineyard島にでも行ったのかと思ったら違っていた。彼女自身、女流飛行家として草分けの一人だから、ひょっとすると自分で操縦して行ったのか
WSJの”10 Best Places for Second Homes 2010"にも選ばれているから、今でも人気の島のようだ。21:私は夫や子供たちに何かを与えるとともに私も向こうから何かを与えられ、友達や私が住んでいる社会とものを分け合い、それから女、また文筆家、そしてまた市民として人間の世界に対して私が負わされている義務を果たしたい。29:浜辺の生活で第一に覚えることは、不必要なものを捨ているということである。どれだけ少ないものでやって行けるかで、どれだけ多くでではない。（中略）何を着るかで頭を悩まさずにすむことである。そして着物の面倒がなくなるのは、同時に、虚栄心を捨てることでもあることが解る。48:我々が一人でいる時というのは、我々の一生のうちで極めて重要な役割を果たすものなのである。ある種の力は、我々が一人でいる時だけにしか湧いてこないものであって、芸術家は創造するために、文筆家は考えを練るために、音楽家は作曲するために、そして聖者は祈るために一人にならなければならない。114:回りに空間があって初めて美しいものは生きるからである。事件や、ものや、人物はそうして初めて意味があるので、だからまた、美しくもあるのである。一本の木は空を背景にして意味を生じ、音楽でも、一つの音はその前後の沈黙によって生かされる。蝋燭の光は夜に包まれて花を咲かせる。128:波音が私の後から聞こえてくる。忍耐、ーー信念、ーー寛容、と海は私に教える。質素、−−孤独、−−断続性、・・・・・。
2017年01月03日
和食の危機
和食は世界の憧れで、世界中に和食店が劇的に増えている。外務省の調べでは、8年前の2.5万軒から2015年には9万軒近くまで増えているそうだ。NY・ロンドン・パリでは、30年前には日本人の駐在員相手に数えるほどしかなかったのが、今では上は10万円の神戸牛から下は2000円のラーメンまで、多種多様になった。
ところが、和食の本家本元日本では危機に瀕しているという。「和食会議」の熊倉会長によれば、
・20代で過去１か月間一度も米飯を食べていない人が18%
・おせちを作る家庭は30%
・一皿ずつたべる「ばっか食い」が増えている
らしい。
「ばっか食い」というのは、まるで洋食のように一皿ずつ食べること。こうした子供たちに言わせると、「口の中で混ぜるのは気持ちが悪い」ということになるらしい。
私たちは、味の薄いご飯を中心に、比較的味の濃いおかずを一緒に食べて自分で味を調整しているが、このことを「口中調味」というらしい。これも和食の特徴で、洋食は一皿一皿出されたものをそのまま食べることになる。パンを添えることはあっても、それは主食の扱いではない。
これができなくなっているのは、家庭で和食の食べ方を教えてないからだそうだ。まあ、教わるというより、親が食べるのを見て自然に覚えるものだから、既に親が 「口中調味」をしてない、ということなのだろう。
和食の特徴はというと、
・日本各地の多様な食材を生かしている
・ご飯とおかず、汁を基本とする「一汁三菜」の食事は動物性油脂が少なく、栄養バランスも理想的
・季節を料理で楽しむ
・正月のお節料理など社会的習慣に食文化が深くかかわっている
ということ。
興味ある方は、NHK文化講演会「和食を再考する」く詳しいので聞いてみてほしい。
2017年01月02日
ヤフオクvsメルカリ
日本で唯一のユニコーン企業（時価総額$10B＝1160億円以上の「未公開会社」）といわれるのがフリマアプリトップのメルカリ。どうしてそれだけ評価が高いのかというと、世界最大のEC市場である米国でも短期間で成功しているから。これまで、楽天にしてもヤフオクにしても、国内で成功しても海外市場までは取り込めてない。楽天は果敢に挑戦しているが、現状、むしろ撤退の方が目立つ。
どうしてそうなるのかと言えば、これまでは、「国内で成功→成功パターンを海外展開」という手順で考えられていた。しかし、Webの世界では世界中ほぼ同時並行で変化が進んでいくので、「後から」と考えても、既に各国に強力なライバルが存在する。
そのため楽天なども海外企業を買収しながら展開を進めているが、上手く行ってない。トップ企業を買収すれば成功確率は高くなるが、高いプレミアムを払わなければならない。そこで、大抵、2位、3位の現地で競争に負けそうな企業を買収するが、米国のEC市場は日本の10倍あるので、いくら日本で成功している楽天でも、これを資金的にテコ入れすることは困難である。
メルカリの場合、日本のベンチャー企業としては稀な巨額の資金調達（84億円）を行って、米国展開を同時に進めている。「現状の開発は9割米国優先」だという。
15-10年ほど前にかけてはヤフオクを不用品処分によく利用していたが、有料化されて使わなくなった。たまにしか出品しないのに、毎月410円利用料が掛かるのは割に合わない。結果、現在の出品者はショップ経営のプロか、セミプロとして常時数十品以上を出品している人ばかり。参加者が飛躍的に増えたので、昔のような掘り出し物を低価格で落札できることもほぼなくなり、入札することも減った。これまでの様々な「取引事故」への対応だろう、手続きも複雑になり面倒だ。
メルカリは定額利用料が掛からない代わり、販売手数料はヤフオクの5%に対して10%。全てがスマホで完結する手軽さに加え、成功報酬のみの手数料体系は、時たま不用品整理で出品したい人にとっては便利だ。
2017年01月01日
豊臣家はどうすれば勝てたのか？
NHK大河ドラマ「真田丸」が終了。今年は欠かさず見た。私の周りでも、経営者に人気が高かったように思う。DMM.COMの亀山社長も毎週楽しみにしているそうで、「昌幸の行動は自分に似ている」と講演で語っていた。
戦略論、組織論として面白い点が沢山あったが、ここでは番組のハイライト「大坂の役」で、なぜ豊臣方が勝てなかったのかに絞りたい。
まず冬の陣。籠城しても援軍が来る当てのなかった豊臣軍は、真田信繁の説得で軍議を繰り返したのち、京都で徳川軍を迎え撃つ事を決する。総大将の秀頼もこれを裁可。しかし、秀頼の母である茶々がこれを理由なくひっくり返してしまう。強いて言えば、「秀頼を危ない目に合わせたくない」という親心。作戦目的が戦に勝って豊臣家の安泰を図ることなのか、世継ぎをどんな危険にも合わせないことなのか、目的が曖昧なのだ。まるで、米空母殲滅と空軍基地破壊の両面作戦だった結果、現場で優先順位が決められず大敗したミッドウェー海戦のよう。
組織的にも問題がある。総大将は会社で言えばCEO。CEOの決定を公式には権限がないはずの（名誉）会長がひっくり返すようなもの。社員の士気が下がるのは必至だ。
それでもめげずにCOOである信繁が大坂城の唯一の弱点である三の丸の南側に出城「真田丸」を築いてこれを防御する。攻めあぐねた家康は、イギリスから最新鋭の長距離砲を取り寄せ、大坂城に砲弾を撃ち込む。当時の砲弾はただの鉄の塊なので、直撃しない限り破壊力はそう大きくはない。しかし、家康は城の中の茶々の居住エリアを狙い、怯えた茶々は一気に講和に傾く。
ここで影響を与えるのが、茶々の乳母である大蔵卿局。大蔵卿局は大坂城の事実上の支配者である茶々の側近として、政治力を持っていた。乳母の身であるから、実際は政治も軍事も何もわからない。
講和会議の場に補佐として出席した大蔵卿局は、主席が大人しいのをいいことに、徳川方の言うとおりに真田丸の撤去と、外堀の埋め立てを認めてしまう。背景には、戦いが続けば大坂城に集まった浪人の政治力が強くなり、相対的に自分の影響力が落ちることを恐れていたことがある。
夏の陣では、既に大坂城の内堀外堀とも埋められ、信繁も「これでは勝ち目がない」とあきらめるほどだった。それでも、秀頼に頼まれ、豊臣家に恩義を感じていた信繁は、家康と刺し違えるワンチャンスにかける。浪人衆の決死の働きで豊臣軍は有利に戦いを進めており、ここで大将自ら出陣すれば勝利は確実かと思えた。
ここでも、大蔵卿局が家康の流した「信繁が寝返る」というデマに踊らされ、秀頼の出陣を止める。これが原因で、形勢は逆転。大坂城は落ちる。
というわけで、ドラマでは大蔵卿局が豊臣家滅亡の一番の悪者として描かれている。平時ならともかく、戦争状態になった段階で、何ら専門知識も見識もない人物を排除すべきだった。この点では茶々も同じである。それを出来たのは総大将である秀頼のみ。
結局、CEOが優柔不断であった為豊臣家は滅びたということになる。豊臣家は自業自得だが、かわいそうなのは恩義に感じて集まっていた浪人衆たち。最後まで豊臣家側近から信頼されることなく、そのために犬死してしまう。
現代の社員も会社トップはどんな人なのかしっかり見極めたい。
