2016年10月
2016年10月31日
指標が物語るウソと真実
先日、高松で講演を聞いて、その感想は2回にわたって述べた。講演だけ取ってあげつらうのも悪いので、最新刊を読んでみた。先日の講演の基になっている本だ。
結論：現状だけの分析なら正しい点も多いが、長期で見て一番影響の大きい人口動態変化が考慮されてないので、政治政策としては危うい。
氏の主張は、「日本の財政は心配ない。どんどん公共投資したらいい（特にインフラ）」というもので、大きな政府で社会主義的ともいえる。一方、再生可能エネルギーの固定価格買取制度（FIT)には反対らしく、矛盾しているように思う。
因みに、FITはあまりに市場を捻じ曲げてしまうので私も反対だった。予想通りFITは太陽光発電バブルを発生させ、中国製パネルが市場シェアを伸ばしただけで、日本メーカーはほとんど赤字になってしまった。かって太陽光発電パネルでトップシェアだったシャープはTV事業の不振と合わせ、経営危機に陥った。
「財政赤字は心配ない」という氏の理論は、日本が経常黒字国であることを前提にしている。黒字であれば、海外投資家に日本国債を買ってもらう必要はないからだ。しかし、団塊の世代が大量に退職した結果、彼らがこれまで積み立ててきた年金資産は取り崩される可能性が高い。貯蓄率がマイナスになれば、経常赤字になる可能性も高い。そうなれば、氏の理論の前提が崩れることになる。
「日本国債は国内で全て消化されているので大丈夫」と言われてきたが、実際のところ、外国人保有比率は10%を超えている（国庫短期証券を含めた場合）。日銀は銀行保有分を買い取っていて国債残高に占める保有割合が35%を超えている。
私にはとても、「大丈夫」だとは思えない。
結論：現状だけの分析なら正しい点も多いが、長期で見て一番影響の大きい人口動態変化が考慮されてないので、政治政策としては危うい。
氏の主張は、「日本の財政は心配ない。どんどん公共投資したらいい（特にインフラ）」というもので、大きな政府で社会主義的ともいえる。一方、再生可能エネルギーの固定価格買取制度（FIT)には反対らしく、矛盾しているように思う。
因みに、FITはあまりに市場を捻じ曲げてしまうので私も反対だった。予想通りFITは太陽光発電バブルを発生させ、中国製パネルが市場シェアを伸ばしただけで、日本メーカーはほとんど赤字になってしまった。かって太陽光発電パネルでトップシェアだったシャープはTV事業の不振と合わせ、経営危機に陥った。
「財政赤字は心配ない」という氏の理論は、日本が経常黒字国であることを前提にしている。黒字であれば、海外投資家に日本国債を買ってもらう必要はないからだ。しかし、団塊の世代が大量に退職した結果、彼らがこれまで積み立ててきた年金資産は取り崩される可能性が高い。貯蓄率がマイナスになれば、経常赤字になる可能性も高い。そうなれば、氏の理論の前提が崩れることになる。
「日本国債は国内で全て消化されているので大丈夫」と言われてきたが、実際のところ、外国人保有比率は10%を超えている（国庫短期証券を含めた場合）。日銀は銀行保有分を買い取っていて国債残高に占める保有割合が35%を超えている。
私にはとても、「大丈夫」だとは思えない。
まえがき4:より重大な問題は、ギリシャの若者たちが仕事の経験を積むことができず、将来的に人材に育つ芽を奪われていることなのである。何しろ、仕事を経験しない人は絶対に人材に成長できない。人材とは、国民が仕事に従事し、さまざまな技術、スキル、ノウハウ等について経験を通して自らの中に蓄積しない限り、創出されないのである。152:政府の「規制」で電力会社に固定価格での買い取りを義務付けなければ普及が進まないような技術を、なぜ利用しなければならないのか、理解不能である。しかも、日本の再生可能エネルギーの買い取り価格は「高い」。例えば、太陽光10kw以上の単価は、1kw当たり38円であった。再生可能エネルギーの固定買取制度で先行したドイツは18-24円だ。風力発電は、日本が23.1-57.75円に対し、ドイツは5-9円だ。206:国の借金ならぬ「政府の負債」は、経常収支黒字国にとっては「子や孫が負う借金」でも何でもない。経済が健全なインフレ率を伴い成長していけば、国民の所得が増えていく。GDPが増えて行けば、自然と政府の負債の対GDP比率は下がる。230:イギリスの場合は、「外国移民と緊縮財政、経済のデフレ化で、国民の実質賃金が下がり続けているにも関わらず、外国移民を主権に基づいて制限することができない」という問題が発生していた。
2016年10月30日
さぬき歌舞伎まつり
琴平町の金丸座は天保6年（1835）に建てられた、現存する日本最古の芝居小屋。国の重要文化財である上、現在でも春の風物詩となった「四国こんぴら歌舞伎大芝居」はじめ、各種公演で使われている。
今週末見学したのは、県内外の農村歌舞伎保存会が「旧金毘羅大芝居（金丸座）」を舞台に公演する「さぬき歌舞伎まつり」。こんぴら歌舞伎大芝居は県外観光客が殺到するプラチナチケットとなっているが、こちらはアマチュアの農村歌舞伎保存会の公演ということで無料
そのためだろう、PRは控えめで、予約は往復はがきのみというハードルの高さ。一度、金丸座で歌舞伎を観てみたかったので、申し込んだ。実際は、当日券も用意されていて（これも無料）、並べば当日でも入場可能であった。
各保存会による公演は1時間程度。20分程度の休憩をはさんで続いていく。アマチュアということでそれほど期待していなかったのだが、なかなかの出来。初日に見た中では、兵庫県多可町から参加した「播州歌舞伎クラブ」の出来が突出していた。調べてみると、多可町では町の名物として、町を挙げて農村歌舞伎保存に取り組んでいるようだ。
香川県の地元からは、祇園座・川東校区放課後子ども歌舞伎教室（高松）、中山農村歌舞伎保存会（小豆島）、肥土山農村歌舞伎保存会（小豆島）、東かがわだんじり子供歌舞伎保存会の4団体が参加。中では、肥土山が上手かったように思う。肥土山には立派な歌舞伎小屋も残っていて、それだけ練習熱心なのだろう。
2016年10月29日
自分の財布からお金を出すのと同じ感覚
この本は今年の夏に一度紹介したが、先日来の「もんじゅ廃炉」にまつわる国と福井県の間の騒動を見ていて、本に書かれていたエピソードを思い出した。西川知事が国の廃炉方針を「裏切り」だとして批判しているのだが、つまるところ、「廃炉で補助金や雇用が無くなるのは困る」という地元エゴだ。
スイスのある村に核廃棄物処理場を造るという話が持ち上がった。住民のアンケート調査が行われたところ賛成が51%であった。これに気を良くして、さらに賛成派を多くしようと「住民一人当たり年間80万円の補助金を付ける」という特典を付けて2回目のアンケート調査が行われた。ところが、結果は賛成が25%と激減。補助金が出るなら、処理場は受け入れないという住民の判断だったという。（97:「補助金嫌い」）
1回目：「原子力発電はみんなで利用しているものだ。廃棄物処理は誰かが受け入れないといけない。我々は貧しい田舎の村人だけど、みなさんのお役に立てるなら、ぜひ引き受けたい」
2回目：「お金が欲しくて賛成したわけではない。年間80万円で、国に買収されたくない」
という住民感情だったらしい。人口800万人のスイスでは、「自分の国は自分たちで運営する」という意識が強い。国から補助金が出るのも、「自分の財布からお金を出すのと同じ感覚」なのだという。
こうして、強固な軍事力と財政力を築いてきたわけだ。人口127百万人の日本がこの感覚を取り戻すには、「廃県置藩」しないと無理だろう。連邦制のスイスは、さらに26の州に分かれて、外交・国防・国家財政以外は全部州で決めている。つまり、州の人口は数十万人くらいなのだ。
2016年10月28日
ダメ人間製造大学！？
作者は作家で、妻が現役の藝大生ということ。大学でのおかしな話をいっぱい聞くので、藝大生に取材して出来たのがこの本。
東京藝術大学の入学定員は477名。これは私立大などに比べれば1/10の規模だ。これがまず、美術学部（240）と音楽学部（237）に分かれる。さらに美術学部は絵画、彫刻、工芸など、音楽学部は作曲科、声楽科、指揮科など各科に分かれている。指揮科の入学定員はたったの2名。
共演することの多い音楽学部の学生は時間厳守で、一人で製作することの多い美術学部は時間にルーズと、同じ藝大生でも道を隔てて全く違うらしい。音楽家を目指す子は小さなときから先生について練習を重ねる。必然的に裕福な家庭の子女が多い。一方、美術学部には犯罪を犯して少年院に入っていたが、絵がうまくて入れたという天才肌の学生もいる。
本書では、大学運営費用に関する記述がなかったが、年間の予算規模は100億円近い。うち7割が国からの交付金や補助金。これを学生数（学部生1348＋大学院生773=2121）で割ると、一人当たり約500万円。国立大学平均で約200万円なので、これは東大などと並んで日本で最高水準。どちらも学費は国立大学共通で53万円だ。
「卒業生の半分くらいが行方不明」という藝大。学部生の進路状況を見ると半分が「進路未定」。各大学が就職率を競っている中で、これほど就職率が悪くて、これほど人気な不思議な大学だ。年間70億円の税金は学生一人当たり350万円にあたる。文系としては異例なほど大学院への進学率が高いので、6年間在学するとして一人当たり2100万円が卒業までに掛かる。それで、半分が行方不明・・・
その是非はともかく、国民がそれだけ負担しているということは、納税者もその恩恵を受けている大学と学生も知っておいた方がいい。
はじめに：妻の回答はいつも斜め上63:絵画科日本画専攻 �盒桐紺譟焚礁勝�中学からグラフィティにハマる→終電で街に出かけ朝まで描く難しい場所にいかに描くか→何回も補導→少年院に8カ月とび職5年→キャバクラボーイ→ホストクラブ経営→藝大171:人生が作品になる 絵画科油画専攻3年生 立花清美仮面ヒーロー「ブラジャー・ウーマン」悪の組織ランジェリー軍団と日々戦う231:半分くらい行方不明アーティストとしてやっていけるのは、ほんの一握りH27進路（卒業486）大学院進学 168就職 48進路未定 225233:「何年かに一人、天才が出ればいい」（学長）
251:「こんな大学ながくいちゃいけないって思う。普通の世界と離れすぎちゃう。」（工芸科染色研究室 日原佑花子）
2016年10月27日
「メーヴェ」を作っちゃいました
チームラボ猪子さんの対談相手であったメディア・アーチストの八谷和彦さん（東京藝術大学准教授）が昔PostPetを作ったことは昨日書いた。その八谷さんの最新作がこれ。『風の谷のナウシカ』に出てくる飛行機メーヴェを作ったのだ。
それが「オープンスカイプロジェクト」 開発費がかさむことと、飛行に人命の危険が伴うので、PostPetを作った八谷さんの会社ペットワークスで実施している。機体重量が1tを切る世界最軽量のジェット機である。初号機は離陸にゴム索曳航を要したが、2号機では自力での離陸が可能になっている。
八谷さん曰く、「最初に乗るのはきれいな少女でなくてはいけない」とオーディションまで実施したそうだが、試験飛行はあまりに危険なため、断念したそうだ。
2016年10月26日
数寄屋＝非対称の家
「TOKYO数寄フェス」の続き。
数寄屋の意味は、もともと「非対称」ということなのだそうだ。「極東の美術がシンメトリーを避け、西洋の美術がシンメトリー（対称）を基本とする」というのは面白い。例えば、欧州大陸の庭にはシンメトリーが多い。フランスの宮廷庭園など、庭木まで三角錐や円形に刈ってある。キリスト教的には、あれこそ、「完成された姿」なのだろう。
猪子社長が的確な例を挙げた。西洋画には枠があり中心があるから、皆見るとき中心を争うと。ルーヴル美術館でモナリザを見るのに、観光客はセンターを取ろうと争う。対して、絵巻物など、どこが中心ということがなく、横に広がっていくと。
対談相手の八谷准教授（東京藝術大学）は、ポストペットの作者。皆がGmailなどブラウザメールを使いだす前、2000年代前半はOutlookなどメールソフトを使ってメールのやり取りをしていた。当時日本で大ヒットしたのがPostPet。ピンクのクマ「モモ」がメールを届けてくれるのだが、このモモも非対称なのだという。
コンピュータを使っての作画上、簡単に対称に出来るのだが、そうすると人工的になってしまうのだそうだ。確かに、人の顔は完全対称ということはあり得ない。鼻が少し曲がっていたり、目の大きさが違っていたり、などなど。そのため、モモも少し目の位置が違ったり、不自然にならないよう、敢えて非対称にしている。
道教や禅の哲学の動的な性質は完全そのものよりも、完全を求めるプロセスに重きをおいた。真の美はただ「不完全」を心の中で完成させる人によってのみ見いだされる。人生と芸術の力はその成長の可能性に存した。（中略）禅の考え方が世間一般の思考形式となって以来、極東の美術はシンメトリーということは完成を表すのみならず重複を表すものとしてことさらに避けていた。意匠の均等は想像の精神を全く破壊するものと考えられていた。（岡倉天心『茶の本』）
2016年10月25日
反コンテクスト
チームラボの猪子さんは、「反コンテクスト」なのだそうだ。つまり、アート作品はコンテクスト（文脈・背景）に依存するものであってはならないという。だから作品は世界中で楽しまれ、賞賛される。国や民族の文化や歴史に左右されず、人間なら誰しも見て触れて楽しめることを前提としているからだ。
文化人類学上、日本はハイコンテクスト文化とされている。コンテクストの共有性が高いので、伝える努力やスキルがなくても、互いに相手の意図を察しあい、意向が通じる。これは、同胞間では効率的だが、違う文化圏からは理解されない。いわゆる「ガラパゴス状態」に陥りやすいのだ。
米国は対照的なローコンテクスト文化だ。社会の仕組みが明文化されており、移民にもその日から理解される。その代わり、何をするにも契約書は膨大となり、弁護士費用はかさむ。
写真は、本邦初公開という「四国の山奥の滝」。チームラボ「大歩危小歩危 渓谷に咲く花」を実施した後、夜機材を移動して設営、「自分たちのためだけ」にやったのだそうだ。まず、イベントとして実施すれば�ゝ�可を取るのが大変、�∋咳�で駐車場がないので客が呼べない、そして、��やってみたかった、のだそうだ。
これを知ったら、「10万円払ってでも見たい」という富裕層は多いと思う。1日10組限定で100万円あれば、協力してくれる自治体はありそう。
チームラボの作品は公的イベントで展示されることが多いので無料となり、結果、混雑して作品が本来意図した体験をすることが難しいことが多い。そのため、DMM.planets（お台場）では入場制限をした。そうすれば、今度は何時間も待つことになる。
ここでも、「1万円払ってでも待たずに体験したい」という人は多いと思う。払いたくない人は列に並んで待てばいいわけだ。売上は公的助成の削減につかえる。TDL1日券は7400円で皆喜んで払っている。こうしたフレキシビリティがもっと必要だ。
2016年10月24日
チームラボ
TOKYO数寄フェスで見たチームラボ作品に興味を持ったので、最終日に東京藝術大学で行われたトークショー「猪子寿之＋八谷和彦 21世紀のアーティストが岡倉天心『茶の本』を語ったら」にも出てきた。先着順だったので、私としては頑張って30分間に会場に到着。パンフレットでの扱いは小さく、気づいた人がおそらく少なかったのだろう、前から二列目に座れた。
約束通り？遅刻してきた猪子社長。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも、遅刻魔と紹介されていた。目の前のことに没頭してしまい、自己管理ができず、スケジュール管理は秘書任せ。さらに、秘書に何度催促されても前の仕事が打ち切れず、結局遅刻を繰り返すことになる。
そういう意味で、自分で「欠陥人間」というほどの猪子さん。トークの中で、チームラボの規模が従業員400-500人（チームラボ本体で400人＋関連会社）と聞き、驚いた。これはプロ経営者が居なければ管理できる規模ではない。しかも、仕事はルーティーンではなく、基本的にプロジェクト単位で、開催期間が決まっている。
チームラボの経営陣、経営体制に逆に興味を持った。Google（Scholar）で検索する限り、そうした研究は見当たらない。研究者の皆さん、チャンスかも（笑）。
2016年10月23日
TOKYO数寄フェス
「上野の杜にARTが集い、日本文化を世界に発信」ということで行われたTOKYO数寄フェス。今週多忙で疲れてしまい、全部は見れなかったが、昨晩チームラボの「浮遊する、呼応する球体」と大巻伸嗣さんの「Memorial Rebirth」だけ見てきた。
なぜ「数寄」なのか？数寄はもともと「好き」の同意語で風流・風雅に心を寄せることらしい。「数寄者」とは、室町時代には和歌や連歌を好む人をさし、安土桃山時代に侘茶が流行し、茶人を指す言葉になる。その後、茶室を「数寄屋」と呼ぶようになったというわけだ。
岡倉天心は『茶の本』のなかで「茶室」を、人それぞれ好みの詩趣を宿す「好き家」、美的感情を満たすために置くものの他は一切の装飾を施さない「空き家」、そして不完全を尊び故意に仕上げず、見る者の想像の働きでこれを完成させる「数寄屋」と解説しているとか。
会場の上野公園は1876年5月に開園した日本初の公園。博物館、美術館、芸術大学、動物園、音楽ホールなど数多くの重要文化施設が一つの公園地帯に集まるのは、世界でも類がないという。確かに、NYセントラルパーク付近には博物館、美術館、音楽ホールはあるが、動物園はないと思う。ロンドンでも市内各地にいろいろあるが、一か所に集積しているわけではない。
「日本文化を世界に発信」と謳っていたが、その割には外国人旅行客は目立たなかった。近所に住んでいる私でもイベントが始まって、アート展示が準備されて初めて知ったので、告知面で工夫の余地がありそう。
2016年10月22日
N cafe & gallery
もう一つ昨年高松に開店した喫茶店を紹介したい。フランス料理店「ラ・プロヴァンス」が屋島に引越し、その後に出来たN cafe & gallery。オーナーの野口さんは知る人ぞ知る芸術家一家なのだ。
お母さんがステンドグラス作家で、長男が抽象画家、次男が陶芸家で店の器のほとんどは彼の作品。三男は広島で洋画を学んでいて、絵はうまいものの自分のスタイルが確立できず、中々芽が出ない。お父さんが、「哲哉だけは芸術で食べていけないかもしれない」と心配していたのだが、5年ほど前から侍のフィギュアで大ブレーク
今や、一家で一番の売れっ子となった。行き先を家族に危ぶまれた三男による大逆転！人生何があるか分からない。
2016年10月21日
プシプシーナ珈琲
うどん県民は喫茶店好きでもある。うどんには10分以上、500円以上掛けないのに、昼休みにうどんを慌ててかきこんだ後、30分かけて優雅にお茶を飲む。瀬戸内海の穏やかな気候に恵まれ、天災も少ない。お茶の文化は江戸時代から盛んだったという。
というわけで、県内には、こだわりの喫茶店が数多くある。これまでもいくつか紹介してきたが、こちらは今週初めて行った「プシプシーナ珈琲」。珈琲豆の専門店で、焙煎所の一角でコーヒーも飲めるというスタイル。製麺所タイプうどん屋の喫茶店版だ。
プシプシーナとはムーミンの原作者トーベ・ヤンソンさんのお母さんが飼っていた黒猫の名前らしい。店は3年前に現在の場所に引っ越してきたのだが、最初の店を開店した時飼っていた猫がそっくりだったことから店名に付けたそうだ。
焙煎所なので珈琲がおいしいのはもちろんだが、店の魅力の一つが店や商品に描かれるデザインにあるのは間違いない。これが非常にしゃれているのだ。聞けば名古屋の美術大学を出ているので、オーナーの登尾紘子さんが自ら描いているのだそうだ。
商品に本物の価値があって、それを伝えるデザインとストーリーがある。なので、単なる宣伝ではなく、ブランド価値を高める取り上げられ方をする（例：ELLE）。マーケティング的にも大変理にかなっているのだ。
2016年10月20日
道路ネットワーク
三橋貴明氏は、日本のインフラは貧弱だからもっと投資すべきだという。その筆頭が道路ネットワークらしい。上図は講演でも引用された日本の道路ネットワーク（時速60km/h以上）。
これを同じ島国のイギリスと比べてみる（下図）。イングランド南部と北部、スコットランドでは随分違う。経済合理的に考えればこうなるのだろう。逆に、日本は全国一体の整備に政治的にこだわりすぎて、必要性の高い都市部での整備が遅れた。
現在では制限速度60km/hの一般道路も増えたので、かなり違っていると思う。例えば、香川県のR32やR11がそうだ。欧州の主要道路の制限速度はほとんど60km/h以上だ。2車線以上ある道路でもなく、普通の田舎道でそう。日本の道路整備が遅れているのではなく、単に制限速度が低いから道路ネットワークが貧弱に見えるのだ。
道路にべたべたペイントした上、交通標識が溢れかえっているのも日本だけ。欧州では、都市部と郊外の標準速度が決められていて、「ここから都市部」「ここから郊外」の標識だけだからスッキリしている。ほとんどのクルマが制限速度を守っていない現状で、30km/h、40km/h、50km/h、60km/hなど細かく決める必要性がどこになるのだろう。
2016年10月19日
資本主義はいかにして終わるのか
先日の三橋貴明氏は、「有効需要が足らずにデフレになっているのだから、ケインズ政策でどんどん公共投資しろ」だった。しかし、経済学的には、資本が自由に国境を越えて移動する現代社会ではケインズ政策は効かないというのが定説である。
つまり、昔なら公共投資に使われた資金は国内に留まるので、直接恩恵を受ける（例えば）建設会社だけでなく、その資金が受託企業を通してあらゆる産業に恩恵をもたらした（乗数効果）。しかし、現在の日本で公共投資をしても、国内よりアジアに将来性があると思う企業や個人はすぐに海外で投資するので、資金が流出してしまうのだ。
ケインズの有名な言葉に、「人を雇って穴を掘り、またその穴を埋めるだけでもいい」というのがある。つまり、使い道は二の次で、政府がカネをばらまくことが目的だと説いた。波及効果における資金はどのみち、市場機能が働いて、必要とされるところに効率的に流れていくからだ。
しかし、資金が自由に国境を越えて移動する現代では、公共投資そのものが投資以上のリターンを社会にもたらすかどうかが重要となる。水野氏は、「資本主義の次の時代」に備えるため、借金を減らして身軽にしておくことが一番大事だと説いている。「日本が、中国バブル崩壊後の財政破たん筆頭候補」との言葉は重い。
165:どの時代であっても、資本主義の本質は「中心/周辺」という分割にもとづいて、富やマネーを「周辺」から「蒐集」し、「中心」に集中させることには変わりありません。172:ケインズ流の大きな政府が成立するのは、資本が国境を越えず、一国のなかでマネーの動きを制御できる時代においてであり、そこではケインズ政策は一定の効果がありました。173:「アフリカのグローバリゼーション」という言葉がささやかれるようになった時点で、資本主義が地球上を覆いつくす日が遠くないことが明らかになってきました。資本主義が地球を覆いつくすということは、地球上のどの場所においても、もはや投資に対してリターンが見込めなくなることを意味します。すなわち地球上が現在の日本のように、ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレになるということです。175:16世紀のヨーロッパ人は、それまでの中世の人とは世界観がまったく異なっていて、近代人の目の前に突如「無限」の空間が現れたのです。「無限」だからこそ、「過剰」を「過剰」だとは思わないのが、近代の特徴なのです。179:地球上から「周辺」が消失し、未来からも収奪しているという意味を我々はもっと深く受け止めるべきです。経済の「長期停滞」といった次元ではなく、ヨーロッパの理念、近代の理念で会った「蒐集」の終焉が近づいているのです。
184:中国バブル崩壊が人々の生活に与える影響は甚大です。その影響はリーマン・ショックを超えるでしょうから、日本においても相当な数の企業が倒産するでしょうし、賃金も劇的に下がるでしょう。バブルが弾け、経済が冷え込めば、国家債務は膨れ上がりますから、財政破たんに追い込まれる国も出てくるに違いありません。日本はその筆頭候補です。
188:「定常状態」とはゼロ成長社会と同義ですそしてゼロ成長社会というのは、人類の歴史のうえでは、珍しい状態ではありません。図のように、一人当たりのGDPがゼロ成長を脱したのは16世紀以降の事です。
203:中世の地中海世界における特権階級はラテン語を読み書きできる人々であり、主に教会に従事する人たちでした。それに対してローマからみて「周辺」の地であるドイツ、オランダ、そしてフランスの人々は、財産権も行政権も司法権もない状況でした。そこでプロテスタント側が、俺たちに財産権や司法権、裁判権をよこせと、いわば独立運動を起こしたのです。
2016年10月18日
日本の公共投資水準
第50回日本経営士会全国研究会議の基調講演は、リフレ派として知られる経済評論家の三橋貴明氏。『日本は国債破綻しない！』という本を出していたり、正直、「どうかな？」と思っていた。
私は講演を聞いてその理論には納得できなかったのだが、講演そのものは会員の評判は良かった。なにしろ、「どんどん借金して公共投資しても大丈夫！」という話なので皆元気になるのだ。日本のデフレは多分に心理的要因が強いので、これを皆が「日本の将来は明るい」と信じて投資したり、消費を盛んにすればそれで景気は上向く。そういう意味では否定も出来ないのだ。
講演で示された各種資料は、自分の主張に沿うように巧みに取捨選択されていた。例えば、「日本の公共投資」というチャートが示され、「公共投資が半減している」「これでは不況になるのは当たり前だ」という説明がなされた。これには二つの提示されなかったポイントがある。
一つは、「半減」の出発点にしている1990年代後半の日本の公共投資の水準が異常であったことだ。バブル崩壊後の金融危機対処のため政府はGDP比10%というかってない規模の公共投資を行った（上図）。それで景気が回復したかというと、関連産業が潤い一時的な効果はあったものの、景気回復することはなかった（橋本政権の消費税増税のせいにする人もいる）。元々、日本の公共投資水準は先進国の中で最も高く、これを高度経済成長期以降数十年にわたり続けていた。国中にインフラが整備されたから、他の国並みに落ちるのは当たり前だ。
二つ目は、示されたチャートは上図のように各国比較されたものではなく、日本だけの公共投資推移が示された。日本だけの数字を見て高い低いと言われても客観性に欠ける。「日本の公共投資が落ちている」という一点を強調したいため、敢えて排除したと思われても仕方ない。
上図を見れば、先進国の一般的水準に「落ち着いた」というべきで、「半減した」という解釈は恣意的だろう。確かに、天災の多い国であることを考慮すればもっと高い水準であってもおかしくないが、一方で人口の9割は国土の3割の平野に集中して住んでいる。過去の費用対効果の悪い公共投資を長年続けてきた結果、国債残高が危険水準となり、使いたくても使えないというのが現状だと思う。高齢化で社会保障費が毎年上がるので、そちらが優先されているのも大きな原因だ。
三橋氏の主張は、「整備新幹線や全国高速道路整備など借金してどんどんやればいい」というもの。これらは必要度の高いものから整備されていったので、今後増える部分は基本的に投資対効果が低い。瀬戸大橋や東京湾アクアラインなど、一旦整備された巨大インフラはその維持だけで膨大な費用が掛かる。LCCもそうだが、私は、費用を掛けずに制度変更で対応できる部分がまだまだあると思う。
2016年10月17日
菓子工房ルーヴ
香川を代表する洋菓子屋と言えば、ルーヴ。1978年に高松の飲み屋街「古馬場」で創業。2004年に「テレビチャンピオン」ケーキ職人選手権で連続優勝し、全国的に有名になった。
私も、時々利用させてもらっているが、その創業社長である藤井二郎社長と昨晩お目にかかることができた。日本経営士会の第50回全国研究会議が初めて高松で開かれ、ルーブが会長賞を受賞したのだ。私は会員ではないが、昨年から当会議のアレンジの依頼を受けて、香川大学瀬戸内活性化プロジェクトの活動を紹介するとともに、フォーラムのコーディネータを担当することになった。その関係で懇親会にゲストとして呼んでいただいたのだ。
同時に「ダイバーシティ賞」を受賞し、やはり同じテーブルでお会いしたのが、学生服のリユースショップ「さくらや」を経営しているサンクラッドの馬場加奈子社長。「必要は発明の母」というが、これは「母の必要性」から生まれたスモールビジネス。現在FCが全国に広がっている。
2016年10月16日
歯ART美術館
美術館・博物館好きなので、世界各国合計数百の施設に行ったと思うが、その中でもずば抜けて意味不明な美術館が香川にある。歯ART美術館は義歯（つまり、入れ歯）やインプラント最大手の和田精密歯研（大阪）が運営する企業博物館である。
企業博物館だから、本業の歯科関係の展示があるのは分かる。実際、世界でも稀な義歯やその製作に使われる工具の展示は考えようによっては貴重で、興味深い。しかし、それはワンフロアだけで、他には和田会長が趣味で集めたと思われる雑多な品の「自慢フロア」
それも一貫性があればいいのだが、金に飽かせて思いつきで集めたと思われる品のオンパレード。もうワンフロアは企画展用になっている。先週行った時の展示は、「東京カメラガールズうどん県・アート県を撮る」の写真展示だったのだが、このプリント品質（印刷）が悪すぎ。自宅のプリンタ程度。プリント用紙もケチって？普通紙を用いたのではないか？
しかし、ここまで支離滅裂だと、却ってオーナーの頭の中はどうなっているのかと興味深い。オーナーは月に一回は大阪から来ているらしいので、今度会ってみようと思う。
2016年10月15日
「海の国」英米と「陸の国」独仏
古代キリスト教では「金利を受け取ることは禁止」されていたというのは、イスラム教と同じ。ここからも、同じ中東の地でユダヤ教からキリスト教が派生し、さらにイスラム教が派生していったことがうかがえる。
12-13世紀にイタリアで「利子」がカトリック教会に容認され、ここから資本主義が始まったというのが面白い。利子がなければ、誰もリスクある事業に融資しようと思わない。
139: 「海の国」である英米と、「陸の国」である独仏英米は「資本」が主役となった帝国システム独仏は欧州統合という理念に基づいた「領土」の帝国化141:世界史とは「陸と海のたたかい」（シュミット『陸と海と』）近代ヨーロッパの歴史を理解するうえでもっとも重要なターニングポイントは、16-17世紀にかけて「海の国」イギリス（英国教会）と「陸の国」スペイン（ローマ・カトリック）間で起こった戦争。156:12-13世紀のイタリア・フィレンツェに資本主義の萌芽� 嵳�子」が容認された本来キリスト教では金利を受け取ることは禁止（高利貸し）→市場金利10% 上限金利33%�▲椒蹇璽縫秣膤悗�大学として認可（12c神聖ローマ皇帝 13cローマ法王）中世「知」は神の所有物→広く知識を普及させる
2016年10月14日
ゼロ金利は資本主義卒業の証
第三章「日本の未来をつくる脱成長モデル」は肩透かし。「脱成長モデル」を示しているのではなく、それが必要になっていると説いているだけなのだ。
そして、新しいシステムの具体像がみえない今、財政を均衡させておくことが大事だという。なぜなら、巨額赤字を抱えたままでは、新しいシステムに移管できないからだ。
これは、1973年にピークを付けた日本経済にとっては簡単ではない。水野氏に言わせれば、以来40年間に渡って終焉を迎えつつある資本主義体制強化にいそしんだのが日本で、前半はそれが成功したが、しょせん制度疲労を抱えたものを強化しても限界がある。いよいよ立ちいかなくなったのがこの20年というわけだ。
財政を均衡させるには痛みを伴う。一旦導入した各種社会保障制度は「あって当たり前」になり、縮小しようとすると利用者が反対する。誰も自分のことがかわいくてしかたない。ここ10年間の国家予算に占める国債比率は約半分。財政均衡のためには予算を半減しなくてはならない。それでやっと国家債務の拡大が止まるだけで、GDPの2倍、国家予算の20倍に達する国債残高の削減のためには、財政黒字を達成して返済を進めていかなければならない。
誰にそんなことが可能なのだろう？歴史を振り返れば、それができないので、財政破綻するか（デフォルト）ハイパーインフレにより実質的債務の削減になるかしている。大抵は両方で、戦後の日本は新円切り替えとインフレで乗り切った。
107:中小企業・非製造業の（資本）利潤率が73年にピークを付けたという事実は、その時点で国内において拡大路線が終わったことを示唆している（下図）。119:1992年の宮沢内閣以来、歴代政権が切れ目のない総需要対策で200兆円もの外生需要を追加しても、日本経済を内需中心の持続的成長軌道に乗せることはできませんでした。理由は明らかで、すでに経済が需要の飽和点に達していたからです。131:アベノミクスのごとく過剰な金融緩和と財政出動、さらに規制緩和によって成長を追い求めることは、危機を加速させるだけであり、バブル崩壊と過剰設備によって国民の賃金はさらに削減されてしまう。133:新しい制度設計ができ上がるまで、私たちは「破滅」を回避しなければなりません。そのためには、当面、資本主義の「強欲」と「過剰」にブレーキをかけることに専念する必要があります。
134:資本主義を乗り越えるために日本がすべきことは、景気優先の成長主義から脱して、新しいシステムを構築することです。新しいシステムの具体像がみえないとき、財政でなすべきことは均衡させておくことです。実際に新しいシステムの具体像がみえてきたときに、巨額の赤字を抱えていたのでは、次の一歩が踏み出せないからです。
2016年10月13日
フランスの大学の基礎研究・・・それが何か？
ノーベル賞受賞の大隅教授の日本の大学での基礎研究の将来への懸念を受けた、10月5日の朝日新聞サポート記事。確かに修士課程からの博士課程進学率は減っているが、その前の段階の修士課程進学率が増えているので、絶対数ではそれほど減っておらず、さらに、母数となる若年層人口の減少を踏まえると、博士号取得率は横ばいであることを明らかにした。
その記事の三つ目のポイントであった、「研究開発費に占める基礎研究の割合は日本の大学では半分強にとどまるが、フランスでは8割をゆうに超える」について。朝日がそう書いているなら、これは事実なんだろうが、それがどうした
である。まず、基礎研究は大学だけがするものではない。そして、基礎研究が短期で成果が出るものではないことは、大隅教授に言われなくともわかっているが、莫大な税金を投入しているのだから、長期で見れば成果を出してほしい。
朝日の記事では、突然、フランスの大学と比べている。他国の数字も出せば意味があるかもしれないが、比率の高いフランスの例だけを出したのでは、何の意味もない。
そこで、各国の「研究費に占める基礎研究費の割合」を比べたのが上図。大学だけでなく、国全体としてもフランスは基礎研究比率が25%と高いことが分かる。アメリカは17%くらいで、日本は15%程度だ。
長期にわたりこの傾向は続いているので、では、それが最終的に経済成長に結びついているかが大事だろう。フランスはこの20年間、日本と並んでG7各国の中で一番経済状態が悪い。基礎研究費と経済成長には相関関係はなさそうだ。
問題は、基礎研究費を含めて、研究開発費をどれだけ効率的に使うかなのだ。これも正確な比較は難しいが、各国の企業部門の研究開発費と生産付加価値を比べたのが下図。これを見ると、日本がいちばん研究開発効率が悪い。基礎研究が経済成長に結びついてないフランスより圧倒的に悪い。イギリスの研究開発効率が良いのは、先般のリオ・オリンピックでの英国選手団の活躍（人口比でのメダル獲得数で一位）と合わせて、興味深い。
2016年10月12日
博士号取得者は減っているのか？
また朝日新聞らしい、結論ありきの記事だなと思ったのが、大隅教授のノーベル医学生理学賞受賞に当たっての、解説記事。大隅教授が基礎研究へのサポート不足に懸念を示し、「そうだ、そうだ」とまるで野次馬のように都合のいいデータだけを示している。
�々駑�大学法人への運営費交付金は2014年度は1兆1123億円で10年前から1割減った
��00年度には15%台だった博士課程への進学率は昨年度は8%台に後退した
�８Φ羈�発費に占める基礎研究の割合は日本の大学では半分強にとどまるが、フランスでは８割をゆうに超える
どれも事実なのだが、問題解決には程遠い「分析記事」だ。�，砲弔い討詫住擦寮簑亞曚箸靴討肋�さくはない。何しろ、1兆円だ。問題は、国立大学数が86校と多すぎることである。多くが戦後、研究も教育もやる「ミニ東大」として再編された地方大学で、特色がない。特色がないので、人気がない。人気がないからレベル低下が激しい。OBが嘆いている。
�⊆詑屬�上図の通り。確かに、修士課程から博士課程への進学率は半減しているのだが、その間に修士課程への学部からの進学率は増えているので、絶対数で見ると博士課程進学者はそれほど落ちてない。この間に、進学適齢期世代人口は201万人から150万人に減っているから（それぞれ1995年および2005年の新成人人口。通常25歳前後で博士課程進学）、同世代での博士課程への進学率は全く落ちていないことになる。
そこで、さらに、博士号取得者数を見てみる。下図を見ると、博士課程への進学者数が落ちているから、取得者も落ちているのだが（取得に3-5年かかるから、それだけ後ろにずれる）、先ほどの人口減を勘案すれば、こちらも同世代人口を分母とする「博士号取得率」では横ばいだろう。
素人の私がネットでチョコちょこっと調べても、これだけ分かる。朝日の記事は、ノーベル賞受賞の大隅教授に阿ったレベルの低い記事と言わざるを得ない。大隅教授はバイオ分野の研究者なので、主にその分野での認識があったのかもしれない。この分野（下図では「保健」と分類）は、90年代後半のバイオブームが沈静化し、博士号取得者が一番減っている。理学、工学、農学の分野では減っていない。人口減を勘案すると、これらの分野での博士号取得率は上がっていることになる。（フランスの基礎研究についてはまた明日にでも）
2016年10月11日
屋島は湖だった！
今回の、香川大学公開講座「讃岐ジオガイド養成講座」は、その名の通り、今後のジオパーク設立に備えてジオガイドの要請を目指している。ジオガイドというからには、この特異な地形の屋島がどうして成立したかを知る必要がある。
以下、講座主催者の香川大学工学部・長谷川修一教授の資料から。
屋島の地形の特長
�ヽい�らそそり立つ独立峰（中世までは島）
�� 山頂の平坦面が急崖ないし急斜面に囲まれたメサ
�Ｉ弦發�低くなるにつれて、より緩傾斜になっているお寺の屋根のような美しい山腹斜面（寺勾配）
�た賛�による地形にもかかわらず谷がほとんどない
屋島は山頂部の讃岐岩質安山岩がキャップロック（屋根となる岩）となって浸食に対して抵抗したメサと考えられる。では、なぜ安山岩層がここに溜まったのか？溜まるためにはここが周囲より低くなければならない。そこで、長谷川先生の推定は、上図のように1400万年前の瀬戸内火山活動の際には、屋島は湖で噴火したサヌキトイド（讃岐岩質安山岩の基となる溶岩）がここに溜まったというもの。
湖で急冷されて讃岐岩質安山岩となった層は硬く、水が浸入しにくいので、1000万年かけて周囲のより古い花崗岩層が浸食されるうちに、逆に独立峰として残ったという推定である。
では、なぜ、��「寺勾配」であり、�っ�がほとんどないのか。これも、キャップロックである安山岩が深く関わっている。讃岐岩質安山岩は硬いが割れやすく、地震によって崩壊して、崖を形成する。こうして、山頂部は常に崖で、下は崩れた安山岩によってなだらかになる。また、崩壊した安山岩が谷を埋めるので、谷による「しわ」のない美しい山腹が形成されたのだ。
2016年10月10日
蘇った「屋嶋城」
大学在籍中に関わっていた「讃岐ジオサイト探訪」続編のジオガイド養成講座� 峅暗腑屮薀織皀蠏弉茵廚悩鯑�屋島へ。
屋島には、今年3月に公開された屋嶋城（やしまのき）がある。復元されたのは城門部分だけなのだが、それでも10年の歳月をかけて1350年前の山城を復元した関係者の苦労がしのばれる。
屋嶋城誕生には、663年の白村江の戦いが関わっている。百済と組んだ倭国は、唐・新羅の連合軍に大敗。連合軍を迎え撃つために各地の防衛重要拠点に山城を築いた。日本書紀にも667年に築城と記載された数少ない城であったにもかかわらず、長年遺構が発見されなかった。それが地元の愛好家平岡岩夫さんによって平成10年に発見されたのがきっかけで、一気に調査が進んだというのも興味深い。
平岡さんは、「攻める側の気持ちになり、麓から山頂を目指して遺構を探した」という。今回歩いて改めてわかるのは、讃岐岩質安山岩の崖がぐるりと取り巻く天然の要害の屋島で、屋嶋城が発見された箇所だけが比較的緩傾斜なのだ。ここが城の出入りには便利で、かつ防衛上の弱点ということで、城門が作られたわけだ。
2016年10月09日
「10倍速く、魅力的に」伝える
「隠れ重言」というのが面白かった。重言とは、「顔を洗顔する」とか「頭痛が痛い」など意味が重複した表現の事だが、「隠れ重言」もあるという。文脈を踏まえると重複していて、伝える意義がないものだ。
サッカーの例を挙げている。サッカーの日本代表戦を解説中のアナウンサーが「日本はゴールが欲しいですね」と言ったとする。しかし、サッカーでゴールを目指すのは当たり前で、新しい情報は何もない。これが、隠れ重言。
そういう観点で見ると、世の中「隠れ重言」であふれている。会議中にイラつくのもこの手の発言が多い。これで仕事のレベルが分かる、というものだ。
それで、「隠れ重言」は取っ払ってしまって、意味のある事だけにポイントを絞ったほうが心に響くという。
サッカーの例を挙げている。サッカーの日本代表戦を解説中のアナウンサーが「日本はゴールが欲しいですね」と言ったとする。しかし、サッカーでゴールを目指すのは当たり前で、新しい情報は何もない。これが、隠れ重言。
そういう観点で見ると、世の中「隠れ重言」であふれている。会議中にイラつくのもこの手の発言が多い。これで仕事のレベルが分かる、というものだ。
それで、「隠れ重言」は取っ払ってしまって、意味のある事だけにポイントを絞ったほうが心に響くという。
＊箇条書きで、より早く、魅力的に内容を伝える１．構造化・相手が全体像を一瞬で理解できるよう、一つ一つの分の並びに意味を持たせる。伝えたいことの階層を揃え（レベル感を整える）、グルーピングを行う。・グルーピングを行う時に重要なのは、「状態・現象」を伝える分と、「行為」を伝える分を分けること。一つのグループに両方が混在すると全体像が理解しにくい。２．物語化・相手が興味、関心を持って読んでくれるように工夫する。相手がドキッとするような仕掛けを箇条書きに埋め込む（フック）。・フックをつくる際は、箇条書きの最初の文（イントロ）を工夫する。イントロがフックになると、相手を最後まで引き付けられる。３．メッセージ化・相手の心に響かせ、動いてもらうために分の表現を磨く。伝えたいことに対して「自分の立ち位置」を明確にする（スタンス）。・メッセージ化の際、「隠れ重言」（意味が重複し、伝える意義がないもの）をなくすと、心に響く。
2016年10月08日
NHK朝ドラは女性起業家の時代に？
昔は見なかった「朝ドラ」をここ数年見るようになったのは家族が揃って朝見るようになったからだ。東京に居るとき何話か続けてみると、やはり、あとが気になる。「ごちそうさん」「花子とアン」までは見たり見なかったりだったのだけど、「マッサン」ではまり、「まれ」は飛ばして（笑）、「あさが来た」は真面目に見た。
朝ドラは主婦層が主な視聴者なので（7時台に朝食を終わらせ、家族を送り出して8時から観る感じか）、主役が女性であることは一貫している。「マッサン」でエリ―との両主役というのは朝ドラ史上初めてだったらしい。
過去の視聴率を調べてみると上記の通り。最近の朝ドラはTV視聴率ダントツのトップを続けているが、 昔の視聴率はさらにスゴイ
1982年の大ヒット作「おしん」は驚異の52.6%
私は当時学生で、TVがなかったので全く見てない。面白いのは、「マッサン」「あさが来た」「とと姉ちゃん」そして今週始まったばかりの「べっぴんさん」と起業家が主役であることだ。これは過去にはなかったこと。それぞれのモデルは以下のとおり。
マッサン：ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝とその妻リタ
あさが来た：三井家の出身で、大同生命などを創業した廣岡淺子
とと姉ちゃん：雑誌『暮らしの手帳』を創刊した大橋鎭子
べっぴんさん：レナウン創業者の娘で、子供服メーカー「ファミリア」 創業者の坂野惇子
視聴率はこの「起業家シリーズ」を支持しているように見える。私的にはモデルがあった方が断然面白い。どこまでが本当の話なのかなど、興味がわく。フィクションでも「あまちゃん」のヒットはあったが視聴率を見ると意外と支持されていない。年代別の分析を見ると、従来の視聴層でなかった30-40代の「現役世代」の開拓に成功したものの、従来のメイン視聴者である50-70代に逆にそっぽを向かれたようだ。
こうした「起業家シリーズ」が続くことで、「仕事をすることは面白い」「起業することも選択肢」という考え方が広がると良いと思う。従来のNHKの方針とは違う？
2016年10月07日
中国バブル崩壊
経済成長著しい国でも固定資本形成（設備投資など）は、GDPの1/3程度らしい。1973年の日本がそうで、それを超えた国はそれまでなかった。ところが、中国は45%に達している。明らかな過剰投資なのだ。
この背景には、利潤を求めて世界をさまよう余剰マネー140兆ドルの存在がある。先進国で利潤を上げられなくなった投資資金が中国を筆頭に新興国に押し寄せたのだ。
これまでの歴史上の覇権国は、商業や工業のピークを過ぎると、蓄積された資本を基に金融立国となっていく。覇権国からの投資が新興国の発展を支えるのだ。
この背景には、利潤を求めて世界をさまよう余剰マネー140兆ドルの存在がある。先進国で利潤を上げられなくなった投資資金が中国を筆頭に新興国に押し寄せたのだ。
これまでの歴史上の覇権国は、商業や工業のピークを過ぎると、蓄積された資本を基に金融立国となっていく。覇権国からの投資が新興国の発展を支えるのだ。
93:固定資本形成というのは、ピークでもおそらく国の経済規模の三割程度。日本が1973年に民間設備投資と住宅投資と公共投資を合わせて、約33%だった。先進国の中でこの33%の水準を超えた国は、日本の他にない。したがって、28兆ドル規模の経済を持つ新興国にとって近代化に必要な資本は、仮に国内貯蓄がゼロだとしても、おそらくもっとも必要な時で、三割強の9.3兆ドルあれば十分。95:「長い16世紀」のあと、17世紀はデフレの時代。当時の進行国であるイギリスの物価は1650年をピークに1734年に至るまで下がり続けた。「長い16世紀」の価格高騰時代に供給力が過剰になった。（中略）21世紀の中国も供給力過剰の「デフレの時代」を迎える。97:経済大国の利子率の歴史は、そのまま各時代の世界経済の覇権国を表すジェノヴァ：商業→金融（オランダ）オランダ：東インド会社→金融（イギリス）イギリス：産業革命→金融（アメリカ）
2016年10月06日
資本主義が死ぬとき
ここ数年、世界中で金利が低下している。日本は20年前に世界に先駆けて金融危機を迎え、以来、金融緩和と財政支出を続けてきた。故小渕首相が「世界一の借金王」と自らを揶揄したのは1998-1999年だ。それでも事態は一向に改善されてない。
低迷する日本をしり目に、この間にインターネット革命と金融産業で繁栄したのが英米。しかし、両国でも、日本ほどではないにしろ、金利が低下している。一体何が起こっているのか？
水野和夫氏はこれを、「資本主義の死」だと考える。16世紀以来、世界を規定してきた資本主義というシステムがついに終焉に向かっている。その理由は、「もはや地球上のどこにもフロンティアがない」から。
スティーブ・ジョブズ亡き後、当代一の起業家と言われるイーロン・マスクが、火星にコロニーをつくろうと本気で考えているのは、フロンティアを追い求めるマスクの起業家としての本能なのだろうか。
はじめに：もはや地球上のどこにもフロンティアが残されてない資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステム。「地理的・物的空間（実物投資空間）」からも「電子・金融空間」からも利潤を上げることが出来なくなってきている。16:金利≒資本利潤率16世紀末〜17世紀初頭のイタリア「資本がこれほど安く提供されたのは、ローマ帝国の衰退以来ヨーロッパの歴史において初めてであるが、これは実は並々ならぬ革命である」（カルロ・Ｍ・チッポラ）39:空間革命が起きた16-17世紀の資本家たちは、中世末期の中心地であるスペイン、イタリアに投資しても、超低金利のために富を蓄積できない状況に陥ったため、投資先をオランダ、イギリスに変えて繁栄。ブローデルの言う「金融資本家の時代」40:「地理的・物的空間」に見切りをつけた先進国の資本家たちは、「電子・金融空間」という新たな空間をつくり、利潤極大化という資本の自己増殖を継続。しかし、「電子・金融空間」で犠牲になっているのが雇用者。
2016年10月05日
景山民夫
本書は1986年吉川英治文学新人賞受賞作。日本では珍しい国際謀略冒険活劇小説（野坂昭如命名）。景山民夫は当時40歳。その2年後には『遠い海から来たCOO』で直木賞作家となった。
時は昭和3年、所は満州の奉天。張作霖暗殺という歴史事件を舞台とした物語だ。事件の唯一の目撃者である少女を抹殺しようと関東軍が追う。関東軍が起こした事件だという証人が欲しい奉天軍も追う。関東軍に濡れ衣を着せられた国民党軍も動く。そんな絶体絶命の中を、奉天から上海まで当時の怪物車であるデューセンバーグを駆って日本人将校とアメリカ人ドライバーが少女を守りながら走り抜けるという展開。
前半はち密に話が進むのだが、張作霖が実際に爆殺されて逃避行が始まってからは、雑な部分が目につく。「普通無理だけど、あり得ないことではない」位で止めておかないと、荒唐無稽になってしまう。歴史事件にモチーフを取っているのだから、「本当はそうなのかも」と思わせないとつまらない。
それでも、「日本冒険小説の金字塔」と言われるだけあって、面白い。そして、これが小説家としてのデビュー作だというのだからスゴイ。
著者の景山民夫は元々放送作家で、『しゃぼんだまホリデー』『タモリ倶楽部』『11PM』『クイズダービー』を手掛けた。若くして成功した売れっ子だ。その結果、大学は中退している。
1998年自宅でプラモデルを作っている際に、シンナーにタバコの火が引火して焼死。幸福の科学の信者として同教団を擁護し、マスコミと対立していただけに、その死についてはいろいろ言われた。満50歳での死であり、小説家としては10年間の活動ということになる。
写真：トヨタ博物館所蔵のデューセンバーグModel J（小説に登場するのは年代から言ってModel Aか）
2016年10月04日
旭山動物園の収支
「伝えるのは命」だけで終わっては本blogの意味がない。気になるのはそんな旭山動物園の収支だ。
まず、旭山動物園の入場者数の推移をみると、10年前の300万人をピークに減っている。ここ数年の入場者数は160万人台で推移している。収支を調べていて上図を掲載したblog（安達裕哉）を発見。表の作者は大阪市で、天王寺動物園の将来像検討のための資料として掲載されている。
これを見ると、公営動物園の収支は軒並み赤字で、それを税金で毎年埋めているわけだが、主要動物園の経常経費に占めるその比率は50-70%だ。つまり、毎年必要な運営費の半分も自前で賄えてない。平成22年の時点で唯一黒字であったのは旭山動物園で、総収入が経費を31%上回っている。営業利益率が24%ともいえる。そもそも、黒字の旭山動物園がマイナスで表示され、赤字の施設が「税等負担率」としてプラスで表示されているところに非常識さを感じる。「赤字で当たり前」という感覚なのだ。
その後さらに入場者数は減ったので、上記blogでも「現状は少し黒字」程度ではないか？と推察している。そこで最近の旭川市の報告を見てみると、「歳入と歳出」がピタリと一致することに気づく。民間企業ではありえないこの一致は、赤字分を税金で補てんしていることに相違ない。つまり、全国の主要動物園はすべて赤字ということになる。
では、どうすればいいのか？公営の施設がダメな最大の理由は、「公営＝儲けてはいけない」という意識のため、計画も運営も甘くなること。旭山動物園が立ち直れたのは、一時期入場者数が年間30万人にまで落ち（しかも、その多くは無料や廉価な市内の学校遠足だろう）、閉園の危機にさらされたからである。そこで、やっと、組織存続のための問いかけがなされたわけだ。
もう一つの理由は、公会計には「投資と減価償却」の概念が希薄だからである。単年度運営が黒字なだけで、「儲けすぎ」の批判にさらされる。実際は、運営費に巨額な初期投資の減価償却が入ってないケースもある。必要な施設ならいつかは建て替えなければならないのに、その費用はその年に別途予算を付けることで賄われる。本来であれば、利益を積み立てて備えなければならない。
動物園に勉強に来ている人は稀で、多くは動物の姿を見て楽しむために来ている。とすれば、TDLやUSJと競っていることになる。TDLやUSJは毎年のように改善している。その結果、7000円台の入場料を取れているわけだ。これは旭山動物園の入園料820円の9倍だ。
本来なら、300万人の過剰人気になる前に大幅値上げをすべきだった。上記安達さんは「2000-3000円が妥当なクオリティ」と書いている。私もそう思う。値上げすることで、当時の異常な混雑を緩和し、将来に向けて利益蓄積できたはずだ。混雑で顧客満足度は確実に落ち、飽きられるスピードも速くなった。
そのためには、まず、動物園を市営ではなく、独立法人にする必要がある。市営のままでは、利益を出してもおそらく単年度会計で市に戻さなければならないからだ。それでは、「工夫して黒字にしよう」というインセンティブがない。
2016年10月03日
伝えるのは命
週末、念願の旭山動物園へ。噂に聞いていたとおり、動物たちの見せ方に工夫があって楽しい。
どの動物がどういう行動が得意かを考えて飼育場が設計してある。だから動物たちが活発に動き回っている。他の動物園でよくあるように、やることがなくてただただボーっと寝そべっているだけでない。楽しそうに動き回る動物が見れるから、こちらも見ていて楽しい。
それだけでない、と感じさせるのが園内至る所にある展示情報。100年前に絶滅した日本オオカミの壁画には、アイヌの人たちと共存していた日本オオカミが明治以降の開拓で、「牛や馬を襲う害獣」として駆逐されてしまい、その結果、現在ではエゾシカが増えすぎて、今度はエゾシカが「害獣」として駆逐されている歴史が描かれている。
蛇の展示では、蛇に食べられるネズミを人は「かわいそう」と思い、目の敵にするが、食物連鎖上、重要な役割を果たしていることを教える。「危険」として駆除されるマムシもおとなしい蛇で怒らせない限り攻撃してくることはないのだそうだ。しかも、噛まれても、致死率は1%以下だという。危険性は誇張されており、その原因は「怖そう」というイメージなのだろう。
旭山動物園のテーマは「伝えるのは命」。テーマが一貫しているからメッセージが伝わるし、スタッフも頑張れるのだろう。園内には飼育動物が死んだことを告げる「喪中」の札もある。生と共に死があるから命であることを教える大切な情報だ。
2016年10月02日
北海道の物価
娘たちが大きくなってきたので休日の日程が合わない。小さな頃家族で来たこともあったが、10年以上前のことで誰も覚えてない。日頃親と行動しない末っ子も北海道なら行きたいという。それだけ北海道はイメージがいい。
しかし、本当に住みやすいところなのか? 観光地を中心に廻っているせいだろうが、物価が安いとは感じない。地元の人が多く集まる商業施設にも行ってみたが、安くない。それでも、地元の人でにぎわっている。
統計を見てみると、物価水準は全国9位と上位。所得水準も高ければ問題ないが、平均所得は404万円と高くない。札幌を除いて人口密度が低いので物流費やサービス提供のためのコスト高くなるのかもしれない。
2016年10月01日
引きこもりの星
2011年下半期の芥川賞受賞作品『共喰い』を遅ればせながら読んでみる。作品の性格上、仕事関係の話題を主にしているここではなかなか感想も書きにくいので、著者である田中慎弥のことを調べてみることにする。
2012年1月に行われた受賞会見が話題になった。曰く、
・貰って当然（2007年に初めて芥川賞候補に。その後も何度か候補になっていた）
・断ったりして（中略）都政が混乱するので、都知事閣下と東京都民各位のために貰っといてやる（選考委員の一人が当時都知事だった石原慎太郎）
・（会見を）とっとと終わりましょう
だった。どうやら、酔っていたらしい（笑）。
PCや携帯電話を持たず、執筆は「無地の紙に2Bの鉛筆で」というから、執筆スタイルも小説の内容も「昭和」なのだ。
生まれてこの方下関から出ず、工業高校卒業以来、他の仕事もせずに家に引きこもって小説だけを書いてきたことが当時も話題になった。「引きこもりの星」と取り上げる人もいた。その田中氏が昨夏に東京に引っ越したのだという。一体、何があったのか?
４歳の時に父が３４歳で亡くなった体験を映し、「家」に象徴される地縁血縁への抵抗を父と息子の葛藤という形で書いてきた。「でも、父より１０年長く生きました。もう少し作品を外に開いていきたい」。上京のきっかけのひとつだ。
とのこと。うちの父の場合は43歳だったが、私も今年で父より10年長く生きたことになる。やはり、誰もが意識するものなのか。
