2016年09月
2016年09月30日
悪いヤツほど出世する
これを読んで思い浮かんだのはSteve Jobs。本人に会ったことはないが、伝記を読んだ限り、およそ考えうる中で最悪の上司だろう。私生活でも、ガールフレンドが妊娠したとたん捨て、自分の子であることを長年認めなかった（DNA鑑定の無かった時代である）。
それでも、あれだけのことが達成できたということは、アメリカの企業組織の強さだと思う。異端を受け入れ、それでも組織として成果を出す仕組みがあるのではないか。多分に属人的な日本企業では、あれでは、すぐに「付いていけません」と退職者が続出すると思う。
＊良い人が出世するとは限らない！上司の犠牲にならないために。・部下を失望させ、会社を破綻させるリーダーはいつの時代もいる・謙虚とは正反対のナルシストがリーダーに選ばれやすい先駆的なイノベーションをもたらす人間には、制度や既成概念に対する軽蔑、逆境や拒絶反応に立ち向かう意志の強さが欠かせない＝自己中心的なナルシストに特徴的な資質・なぜ信頼は裏切られるか�／祐屬録佑鮨�じやすい�⊆�分に似ている人はさらに信じやすい（同窓生、同郷など）�Ｃ�が自分を利用しているかを見抜く能力が乏しい・組織の現実と向き合う�．蝓璽澄爾痢峙�範」と「事実」を混同しない�▲蝓璽澄爾慮斥佞任呂覆�、行動に注目する��時には悪いこともしなければならない、と知る�な�事を「白か黒か」で考えない�ゥ蝓璽澄爾硫甬遒眇兇詆颪い狼�しても、それを忘れない
2016年09月29日
独創力を高めるために
「先発企業の失敗率は47%、後発企業はわずか8%」との研究結果は衝撃的。昔で言えば「Ford vs.GM」のケース（昔すぎる？）や「Lotus 1-2-3 vs. MS Excel」。インターネットの時代になっても「Netscape vs.MS Internet Explorer」「Yahoo vs. Google」「My Space vs. Facebook」など枚挙にいとまがない。
何れも、先発企業が市場を開き、市場があることを確認した後発企業が、市場ニーズに応えたより良い製品でNo.1となった。先発企業を打ち負かすことができる経営資源を持っていれば、後発で参入したほうが有利ということだ。
但し、例外として、「特許技術が関わっている時や、強いネットワーク効果が存在するとき」は先駆者が有利という点に注意しなければならない。時代の流れとしては、「知財の重視」と「IoTで何でもネットにつながる」時代なので、これまで圧倒的に後発企業が有利だった時代から、先発企業と後発企業が良い勝負ができる時代になったのかもしれない。
何れも、先発企業が市場を開き、市場があることを確認した後発企業が、市場ニーズに応えたより良い製品でNo.1となった。先発企業を打ち負かすことができる経営資源を持っていれば、後発で参入したほうが有利ということだ。
但し、例外として、「特許技術が関わっている時や、強いネットワーク効果が存在するとき」は先駆者が有利という点に注意しなければならない。時代の流れとしては、「知財の重視」と「IoTで何でもネットにつながる」時代なので、これまで圧倒的に後発企業が有利だった時代から、先発企業と後発企業が良い勝負ができる時代になったのかもしれない。
＊どうすればoriginality（独自性・独創性）を発揮できるのか？・オリジナルな人とは「自らのビジョンを率先して実現させていく人」誰もがオリジナルになれる。・発案者が自身のアイデアを客観的に評価できないセグウェイは前評判は高かったものの、10年経った今も黒字化できていない。・多くのアイデアを生み出す大量に創作すると多様な作品が生まれ、オリジナリティの高いものができる確率が高まる。・「天才」でも、他分野の予測は難しい直観は、自分の経験が豊富にある分野においてのみ正しい。
「PC以来の最も驚異的な技術製品」（Steve Jobsセグウェイについて）・「一番乗り」は不利先発企業と後発企業を比較した研究によると、先発企業の失敗率は47%、後発企業はわずか8%��3/4の企業が時期尚早に規模拡大を試みて失敗。その規模を支える市場の需要がまだ存在しない段階で投資。�▲螢好�を恐れず行動する人は一番になることにとらわれ、衝動的な決断をしがち。一方、リスクを避けようとする起業家は、先発隊の様子を探り、適切なタイミングを待ち、参入する前にリスク分散を行うため、成功しやすい。��先駆者はすべての失敗を自ら冒さなくてはならないが、フォロワーは先駆者の失敗を見て学ぶことができる。�だ菷�企業は初期の製品やサービスだけで行き詰る傾向。後発企業は市場の変化と顧客の好みの変化を観察し、それに応じて製品やサービスを変えていくことができる。＊先駆者が有利になりやすいのは、特許技術が関わっている時や、強い「ネットワーク効果」が存在するとき。
2016年09月28日
説話文学の傑作
宇治拾遺物語の現代語訳（町田康）が出たというので、読んでみる。宇治拾遺物語は13世紀前半に成立したと言われる説話物語集で、『今昔物語集』と並んで、日本の説話文学の傑作と言われる。「拾遺」というのは、「漏れた話を拾い集めた」という意味で、これは、先に『宇治大納言物語』が編纂され、そこから漏れたり、その後拾い集められた話が収められたということ。
・・・というところまでは教科書的知識。これまた教科書だけで知っていて読んだことのない本だったのだ。誰でも子供の頃に読んだ、あるいは、TV「日本昔話」で見た多くの話の出所でもある。「わらしべ長者」「雀の恩返し」「こぶとりじいさん」などなど。
いざ読んでみると、子供には聞かせられないような話が多数。「拾遺」であるためか、自由奔放。実は、「本家」の『宇治大納言物語』はその後散逸し現存しないのに、こちらは800年の年月に耐えて残っている。おそらく集められた話の中から、「まともな」説話ばかりが収められた本家が「つまらない」と飽きられ忘れられたのに対し、エログロも多いこちらが支持を得たのではないか。
解説によれば、当時の識字率は低く、これは講談の種本として使われたらしい。そう考えれば、大衆の支持を得た滑稽話が残ったことに納得も行く。
第6話：この僧は陰茎を陰嚢でうまいこと包み込み、その上に糊で毛を貼り付け、見た感じ陰茎がないようにして、煩悩を切除した、とか言って金品をだまし取ろうとしていたのである。馬鹿としか言いようがない。第106話：やりたいものはやりたい。けれども考えてもみろ。この女はいったい誰の女なのだ。そう、郡の長官の女だ。あの、私たち一行にすっげぇよくしてくれた郡の長官の女なのだ。その恩人の女を、留守をいいことにこましてしまう、なんてことが許されると思うか。うんにゃ。思わない。そんなことは許されることではない。人として。ましてや私は名誉を重んじる滝口の武士。ここは一番、昂った気を鎮めて寝床に戻ろう、というのはこの女が普通の女だった場合の話だ。けれどもこの女は普通ではない。こんないい女は普通いない。だから普通の理窟はこの場合、通用しない。というか、私の陰茎が承知しない。なので、申し訳ないが、私はやるしかない。第168話：「え、お父さんが。鯰に？なんでまた、鯰なんかに」「知らん。知らんがそういうことになってしまったのだ」「あ、そうですか。で、どうです。鯰は？楽しいですか？」「楽しいわけないだろう。つうか、まあまあ、鯰でも、ひろーい池のようなところでノンビリ暮らしてたらそれはそれで楽しいかも知らんが、私の居るところは、暗くて狭い屋根裏の水たまり、雨がふりゃええが、お天気が続くと水も少なくなってくる・・・」
2016年09月27日
東京にないもの
最終章は全国最年少の政令指定都市の市長である、千葉市長の熊谷俊人氏。1978年生まれの38歳。初当選時は31歳で、全国最年少の市長だった。
編集者の飯田先生との対談を読むと、スゴクまとも。初当選の時は2009年で民主党ブームの追い風があったが、2013年の再選の時は無所属とはいえ完全に逆風。それをものともせず初当選時以上の獲得票で再選したのは、実績と今後への期待感をしぼませなかったからだろう。
政令指定都市の中で最悪だった財政を立て直すとともに、「千葉にしかないもの」に注目し、それを活かす政策を始めている。千葉市に4kmもの人工海浜があることは私も知らなかった。
飯田准教授の研究によれば、三大都市圏以外では「人口30万人を超えると周囲から人口を吸い上げる力が強くなり、そして、50万人を超えるとこの流れは加速する」ということ。実際、四国内でも、各県庁所在地（30-50万人）への人口集中は強まっている。これが自然な流れで、それ以外の地域は人口減少を前提とした政策を立てないといけない。
熊谷俊人（千葉市長）258:千葉市の方針として、今後50年間で絶対に着手できない計画は、災害時に必要なものなどを除いて都市計画設定を外している。50年後に「完成」ではなく「着手」すらできないものが山とある。261:商業に関しては重複が大きい。たとえば「商店街振興」という事業は、国も県も市もみんな持っている。政治的な話としても、商業は票になるので、みんなが担当したがる。263:国がものすごく細かいレベルまで全国一律のサービスを設定して、その保障として財源を確保することが暗黙の前提になっている。274:大半の人は地方でも都市部に住んでいる。メディアが好む活性化事例も、限界集落や中山間地域の農村での取り組みが多い。でも日本国民の8割は都市に住んでいる。276:今はどこの地方でも交通アクセスが格段に進歩しているので、東京にないものをつくらない限り人は集まらない。それは外部出身者も入れてプランニングさせたほうがいい。地元の人たちは、東京に行かなくても東京のものが手に入るようにしたいわけなので、発想がまるで逆。277:千葉市には全長4kmの人工海浜がある。東京からわずか40kmというロケーションで、そんな長い海岸がある。（中略）世界中見渡したって、首都の直近に4kmのビーチがあることは大きな価値。でもこれを千葉市はまったく活用しないできてしまった。285:我々の仕事は結果が出るまでの時間が、民間企業よりもはるかにかかってしまう。そうである以上、民間企業よりも将来のことを予測できなければいけない。だからむしろ行政の人間こそ、新しいメディアやデバイスに飛びつかなければいけない。
286:この国では行政と民間の間に立つ人材が決定的に不足している。
2016年09月26日
撤退の農村計画
第4章は、『撤退の農村計画』編著者の林直樹さん（東京大学大学院 農学生命科学研究科 特任助教）。林先生は、農村計画学において「集落移転」の研究をされているということ。
「集落移転」というとイメージが悪いが、かなり前から行われていたことで、1970年代には相当な事例があったという。私も、石鎚山の山間から麓に集落移転した町で生まれた友人がいる。そして、周りのイメージとは裏腹に、実際に移転した人たちの満足度は高い。便利な場所に移転することで、集落の戸数や人口も増える例があるという。先に個別に山を下りた人たちが合流したり、生活が豊かになることで家族が増えるわけだ。
それが1990年代に入り集落移転はパタリとなくなる。それは、1980年代に国の方針が変わり、国土政策が道路ネットワークの充実に偏った結果だという。車が一家に一台普及したので、「道路さえ整備すれば日本から僻地はなくなる」ということだったらしい。道路整備に潤沢な予算が付き、国中が道路で埋め尽くされたのが現状だ。そして、その影響で、公共交通機関の利用者は減り、公共交通は弱体化していった。
道路は一度作ればいいというものではない。毎年維持費がかかる。雪国では市町村道路1kmの維持に年間90万円かかるという。人里離れた一軒家への道路維持に年間数百万円~数千万円が使われる。いくら借金しても足りるわけがない。
農林水産業が国の主要産業であったときは、人々は耕す土地、森林資源、魚を取る海を求め国土に散らばった。高度成長期に産業構造が変わり、「集落移転」が盛んになったわけだ。今また、「集落移転」することには意味がある。
林直樹 東京大学大学院『撤退の農村計画』編著者195:生活の悩みは、若者と高齢者ではまったく異なりますが、高齢者についていえば、買い物、通院、雪国であれば除雪、大きくはこの三つに集約されます。196:集落移転そのものはかなり前から行われていたことで、1970年代あたりは相当な事例がありました。しかし、80年代以降は一気に数が減り、最近ではほぼ絶滅した手法になっています。私はそれを現代風にアレンジして、再び使うときが来たのではないかと考えています。197:移転については、現場から遠い人ほどネガティブに評価する傾向実際に移転した人たちの声は、「移転してよかった」という人がほとんど。「日常生活が便利になった」「医療や福祉サービスが受けやすくなった」「自然災害や積雪などへの不安の軽減」（総務省自治行政局過疎対策室『過疎地域等における集落再編成の新たな在り方に関する調査報告書（平成13年3月）』2001198:1964年に滋賀県米原市の旧伊吹村、太平寺集落で行われた集団移転（山間地→麓）移転後に戸数が16→33に増える。移転前に出て行った親戚が戻る。分家する。200:自主再建型移転はなぜ消えたのか（1990年代に入ってからはほとんどなし）�‘始�ネットワークへの過度の期待��村おこしへの過度の期待��市町村側の事務的なマンパワーの余裕がなくなった�ぜ衙，修里發里�忘れられた220:諦めるものを選ぶという姿勢これまでの村づくりは「足りないもの探し」これからは諦めるものを丁寧に探していく諦めるものを間違えなければ、それなりにいい世の中になる231:道路維持費に多大な費用雪国の場合は、市町村道路1kmの維持に年間90万円
2016年09月25日
Feriado「瀬戸内Bossa」
秋分の日、雨の中、珈笛画廊ほのほへボサノヴァを聴きに行く。ここは『週刊新潮』の表紙絵を1997年から長年描いている成瀬政博さんの絵（ピエゾグラフ複製）を中心に展示販売している。
ここでは、定期的にミニコンサートが開かれていて、今回はFeriadoというボサノヴァユニット。ポルトガル語で「休日」という意味なのだそうだ。ギターとボーカル担当の山本なつきさんは丸亀の出身。京都外大でスペイン語を専攻しているうち、ラテン音楽の道に入った。ピアノとパーカッション担当の小山寛治さんは岡山出身。「8歳まで水道が来てなかった
」と言っていたから、山間部の出身なんだろうな。小山さんはホテルでコックとして中華料理の修行をしていたそうだ。それまで音楽をやったことは一切なかった。そのホテルで夜ピアノ演奏をやっていたのだが、その演奏が素晴らしく良かったのだという。そのピアニストに憧れて、見よう見まねで飲食店の営業終了後ピアノを弾きはじめる。誰にも教わらず、全くの自己流。
そんなことを数か月毎日やったそうだ。ある時、総支配人に呼ばれた。勝手にピアノを弾いたことを咎められるかと思いきや、
「お前ピアノが弾けるのか？」
実は、それまでのピアニストが辞めることになり、代わりを探していたらしい。こうして、見習い中華料理コックはピアニストになった。小山さんは素晴らしい耳の持ち主だったのだ
「自己流」と言えば、画廊ほのほに展示してある成瀬政博さんも、大阪外大朝鮮語科出身で、裁判所に勤務しながらイラストレーターとなった。お兄さんの横尾忠則（養子に出されたので苗字が違う）も美大には行かずほぼ独学。
「正統」と「反正統」、両方あって世の中豊かになる。
2016年09月24日
野趣房 野良里
山なみ芸術祭を見にまんのうに行った際、ランチに寄ったのがここ。住所が「炭所」というくらいで、徳島へ抜けるのに時々通るR438からそれ、県道190号を山の方へ入る途中にある。
短いが急なアプローチを上がると結構な広さの駐車場がある。建物はカントリー風。説明によればオーナーがご自身で建てたらしい。隣の木工所が最初で、納屋で遊びに来た友人とお茶をしているうちに、仲間内で「カフェにしよう」と皆で作っちゃったらしい。そんなわけで、家具も全てオーナーの手作り。道理で、洗練されたというより、重厚で温かみがある。
食事は奥様の担当。定食は写真のように小鉢でおかずが四品付く（950円）。「和風だしカレー」もあるらしいので、次回はカレーを試してみたい。
それにしても、こんな場所で店が成り立つというのは昔は考えられなかったと思う。店がいつできたのかを聞き忘れたが、ずっと更新されていない店のブログの最初の投稿は2009年。口コミ＆ネットの力＆雑誌掲載（タウン情報誌）だと思うのだが、背景には、田舎でのカフェ需要増があると思う。この10年くらいでカフェが増えてきて、それが大抵流行っているのだ。
団塊世代が大量退職し、暇なのはないか。旦那が家にいて、毎日お昼を作るのは奥さんが嫌がる。結果、「お昼は外で」という機会が増えていると思うのだ。昔なら、大半が農家だったので定年がない。団塊の世代は田舎においても、ほとんどが勤め人だ。農地はあるが週末に耕すだけの兼業農家か、どうせ大した儲けにならないからと貸している家も多い。
2016年09月23日
ファンド運用報告会
「長期投資で優良企業を応援する」というコンセプトのさわかみファンドでは年に一度の運用報告会に投資先企業が出展して、事業内容を説明する。会場内には子供向けのワークショップやキッズスペースが設けられ、子供連れの家族も来ている。
企業活動がどう社会の役に立ち、雇用や納税を通じて市民社会を支えているかを理解するには良い機会。子供だけでなく、それを理解しないまま社会人になったと思われる人もたくさんいる。
今回、若手社員の研修で関与している企業の研修参加者を誘って運用報告会に出てみた。出展企業の中には、その会社の取引先もある。
与えられた自分の仕事だけでなく、より幅広く、高い視点から仕事をしてほしいとは多くの経営者が社員に対して思っている。部分最適ではなく、全体最適が考えられる社員が増えれば、意見の対立も少なくなり、経営はやりやすい。
それには、「投資家の視点で考える」ことも大事。投資家にとって、投資先は国内の上場企業に限っても3500社以上ある。どういう基準でどこに投資するのかは自由。客観的に判断するにはどうしたらいいか？主観的に投資するとしたらどういう理由なのか？という問いは、自社が投資家から選ばれる持続的に価値創造できる会社なのかどうか？という問いに繋がる。
2016年09月22日
山なみ芸術祭
第3回目となる瀬戸内国際芸術祭（セトゲイ）は現在夏会期と秋会期の間でお休み中（通期の野外展示はそのままなので見学可能）。国立公園第一号の瀬戸内海を舞台にした芸術祭の魅力は作品を鑑賞するシチュエーションにある。
船に乗る→多島海の素晴らしい景色を見ながら期待感が強まる→島の「場所」を前提とした作品を鑑賞する
しかし、うどん県には海だけでなく、山もある。小さいけど
前回のセトゲイからパートナーシップ事業として始まったのが、山なみ芸術祭。春夏秋の会期ごとに場所を変えて実施している。秋会期のまんのうエリアは10月8日から始まるセトゲイ秋会期に先駆けて9月17日から開催中。
今週見てきたが、こちらも面白い
プロの招待アーティストが中心のセトゲイに対し、地元の生徒などアマチュアも交じって楽しんでやっている。週末を中心に大混雑するセトゲイに対し、週末でもゆったり鑑賞できるのも魅力。海だけでなく山の芸術祭も見てほしい。2016年09月21日
シリコンバレーで起きている本当のこと
朝日新聞のGLOBEで連載されていたシリーズが出版された。著者は同紙サンフランシスコ支局長の宮地ゆうさん。
経済活動が自由な半面、貧富の差が激しい米国でも、シリコンバレー（SV）は最右翼だ。平均世帯年収が1200万円あり、29%は1600万円以上の年収があるという。そして、ほぼ同じ割合が公的補助なしでは生活できないという。これがどれだけすごいかというと、日本でいちばん平均世帯年収の高い市町村区部である港区で1000万以上年収世帯が26%であることと比べるとよい。それも、人口25万人と限られたエリアでだ。SVの人口は300万人もある。
この現実があるから、世界中から成功を夢見て才能ある若者が集まる。Google共同創業者のSergey Brinはモスクワ生まれのロシア人で、Tesla Motors CEOのElon Muskは南アフリカの出身だ。
世界的大企業が集まる地域なのに、インフラ整備に回す金がないというのが衝撃的。企業は儲かっても、企業が世界的に講じる様々な節税策で税収に結びつかない。いかに節税して投資家への配分を増やすかは経営者の評価の一つでもあるので、企業側も必死なのだ。政府に任せると非効率になるから、なるべく小さな政府にして、足りない分は直接自分の判断で寄付したいというアメリカ文化もあるだろう。
アメリカの大規模インフラの多くはアメリカが一人勝ちしていて、豊富な税収も上がっていた1950-60年代につくられた。それから50-60年経ち、ハイウェイなどはガタガタだ。時々ニュースになるように橋が落ちたりする。
ネットビジネスを生み出し、「世界を狭くした」と言われるSVに世界中から人が集中する。この流れは当面変わりそうにない。
4はじめに：SFやSVをクルマで走ってみて驚くのが、ガタガタの道路だ。道路標識が半分落ちかけたままの場所もある。地元に世界１，２位の時価総額の企業がありながら、自治体は財政難にあえぎ、インフラ整備にも十分なお金が回らない。IT企業の税金逃れに原因を求める声も上がる。8はじめに：おおよその面積は4800km2で、東京都の約2倍の地域に約300万人が暮らしている。このうちの36%が外国生まれで、世界中から人が集まっていることがわかる。44Amazon：「すでに退職していたけれど、守秘義務の条項にサインしていたので、報復が怖くて名前は出せなかった。その後もIT大手各社を渡り歩いたけれど、アマゾンから別の大手企業に移ったときには、こんなラクな職場があるのかと思った」（NYTの調査報道に匿名で証言した元アマゾン社員）49:最も中心の輪の中にいる著名起業家や投資家を取り囲むように、いくつものコミュニティが作られ、みなが少しでも中心に近づこうとする。SVでは、誰とつながり、誰を知っているか、誰から投資を受けたかで人が測られる。SVが「米国一のコネ社会」と呼ばれるのもその所以だ。米国外からその輪の中に入ることは簡単なことではないが、こうした文化に溶け込み組織的に適応することで大きくなったのが、インド人コミュニティーだ。75:SVの平均世帯年収は約116千ドル。これは全米平均の約2倍にあたる。29%は15万ドル以上の年収があるのに対し、19%は35千ドル以下で生活している。そして、全世帯の約3割は、公的補助なしには生活できない状態だ。170:グオさんは、スタートアップの最高峰と言われるアクセラレーター（短期養成所）の「Yコンビネーター（YC)」に応募し、合格した。YCは有名な起業家や投資家が会社の育て方を指南してくれる場所で、スタートアップに積極的な投資をしていることで知られる。中に入れた起業家だけがノウハウを共有し、大物起業家が「ここだけの話」をするのも売りだ。YCに入るというのは、あまたあるスタートアップの中で、ほんの一部に与えられる特権を手にするようなものだ。（中略）これまでYCを巣立った会社には、「民泊」で知られるAirbnb、Dropboxなど1千社以上あり、合計すると650億ドルの企業価値を生み出している。YCが育てたというだけで、まだ海の物とも山の物ともつかないスタートアップに、投資家が集まってくると言われる。177:高校時代からプログラミングを学んでいたロスマンさんにとって、MITの授業は退屈すぎた。同時に、プログラミングをまったく知らない学生はついていくのに必死だ。そんな授業のやり方にも疑問をもっていた。197:技術基準の証明を取る手間が大きいうえに、開発段階で電波を発するだけでも問題になりかねない。「手続きや試験段階で費やす費用や時間を考えると、海外のベンチャー企業は日本を敬遠し、他の国に行ってしまう」（Z-Works社長 小川誠）
203:誰もが最低限の生活を保障されるという考え方は、「ベーシックインカム（最低限所得保障）」と呼ばれ、これまでもいくつかの国で似たような実験が試みられたことがある。ただ、財源をどうするかが、常に問題になってきた。通常は政府が税金を財源に支給するが、それを今回は、一企業であるYCがすべて支払うという、聞いたことのないプロジェクトだ。
2016年09月20日
ジュリーちゃんとミス香川
「青い目の人形」のことは聞いたことがあると思う。昭和初期、アメリカの排日を目的とした新移民法(1924)の成立で日米関係は悪化していた。親日家で日本に25年間住んでいた宣教師シドニー・ギューリックはこのことを懸念し、日本のひな祭りの行事にちなんで人形を贈ることを思いつく。昭和2年、それに賛同した民間の寄付で12,739体もの人形が日本各地の学校に贈られた。それぞれの人形には名前が付けられ、手作りの服が着せられ、本物そっくりのパスポートまで持たされていたという。
外務省の依頼を受けて受け入れに尽力したのは経済界の長老・渋沢栄一であった。到着した人形は3月3日、日本青年館で歓迎会を受けた後、日本各地に送られる。香川県に来たのはそのうちの108体。現在の香川県の人口は99万人。全国が12700万人だから、これは当時も人口比ということだったのだろう。
ギューリック氏からは「お礼不要」の申し添えがあったが、贈り物をもらえば、返礼するのが日本のしきたり。人形が贈られた幼稚園や小学校で寄付が募られ、日本からは当時の１道３府４３県と、６代大都市、樺太、台湾、朝鮮、関東州の外地に、皇室御下賜の１体を加えて、５８体の市松人形が贈られることになった。それぞれの県の名前にミスをつけて贈られた。そして、ミス香川は他の人形たちと全米各地を回ったのち、ノースカロライナ州立自然科学博物館に落ち着くことになる。
関係者の願いむなしく、日米関係はさらに悪化して、ついに戦争がはじまる。「青い目の人形」は敵国の人形ということになり、廃棄されたり、痛めつけられる。2010年、全国で現存が確認されているのは323体に過ぎないという。323/12739=2.5% 香川では、なんと、1/108
日本一狭い県香川県では隠れるところがないので、やることが徹底するのか
緻密で合理的な県民性と言われる。その1体だけ残った青い目の人形がアナマ・ジュリーちゃん。仁尾の吉祥院に保存されている。なんでも、1980年代に青い目の人形のことがTVで放映され、それをみていた住職のお母さんが「それならうちにもあったで」と何十年もの間しまわれていた人形を出してきたのだという。同院では戦前幼稚園を経営していたのだ（戦後、町立になり、現在は市町村合併で三豊市立）。
「ミス香川」は戦争中もそのままノースカロライナ州自然科学博物館で展示されていたらしい。「今は戦争をしていますが、日本人を信じましょう」という解説付きで
合理的なアメリカ人は日系人を強制収容所に入れる一方で、人形に当たっても意味がないと無視。一方、日本では感情的になって人形に八つ当たり。どちらが勝つかは自明。 2016年09月19日
2016年09月18日
仁尾八朔人形まつり
隣町の仁尾町。ここでは、ひな祭りをこの時期に一緒に行う。何故かというと、戦国時代、ここにあった仁尾城（領主：細川頼弘）が長曾我部の軍勢に攻め落とされたのが天正7年(1579)3月3日だったから。天正7年といえば、安土城が完成した年だ。落城の日に祝い事をするのはよくない。それ以来437年、八朔の日（旧暦の8月1日）に男の子の馬節句と女の子の節句を一緒に祝うのだ。
明治・大正・昭和と塩田で大変栄えた仁尾では、この日、商家が代々伝わる雛人形や鎧兜を店先や玄関に展示する。人形を飾るだけでなく、舞台をつくってジオラマふうに場面を作るという凝りよう。高度成長期以降一時廃れていたが、「八朔人形まつり」として復活して今年は第19回。
街中の商店や家が参加して、あちこちで作品を見ながら回遊できるようになっている。国道沿いのショッピングセンターやコンビニに客を取られてしまって、普段は閑散としている仁尾の町もこの日は旧道を歩き回る見物客で賑わう。
2016年09月17日
オンボロ「軽トラ」が人気沸騰
木曜日帰宅してふと見たTV番組NHK「所さん！大変ですよ」 実は、初期の「ブラタモリ」に出ていた久保田アナウンサーが好みなので、ついそのまま見てしまう。去年結婚しちゃったのね
（静岡にも雙葉があったとは）。オンボロの軽トラックが異常な人気なのだという。それを買い漁っているのはアメリカ人バイヤーで、オンボロもオンボロ、25年以上経ったものを中心に買っている。当然、それだけの年数が経っているものはほとんど残っていないから、買おうとすれば値段は高くなる。こうして、つい最近までスクラップにするしかなかった軽トラが数十万円で売れている。
その理由は、アメリカでは製造から25年以上経った車には現在の安全基準が適応されないのだそうだ。従って、アメリカの安全基準を満たさない軽トラでもナンバーが取れる。新しい車のほうが程度はよいに決まっているが、アメリカでは公道は走れない。
車体が軽く4WDもある軽トラの走破性能は高い。エンジン音も静かで、テキサスの愛好家は「ハンティングに最高」と言っていた。確かに、何事も大きい方が好まれるアメリカにはない。
軽トラは日本にしか存在しないから、ニッチ市場向けに人気が出るのは分かるが、もう一つ面白かったのは、ドイツ人が中古ドイツ車を買いに日本に来ていること。何故かというと、中古車の品質が日本は高いからだ。世界一厳しい車検制度があるので、クルマの状態がよい。さらに、ドイツ高級車は日本では特に大切にされる。それでいて、日本では中古車価格が安いから、ドイツに持ち帰っても利益が出るというわけだ。
2016年09月16日
フラット化しない地域経済
第3章は、早稲田大学ビジネススクールの入山准教授。
価値創造の源がイノベーションにあり、イノベーションが起こるには、多様な人材のインフォーマルな交流が必要だから、世界中で都市への人口集中が進んでいる。インターネットビジネスを生み出したのはシリコンバレーだが、シリコンバレーの最大の魅力は世界中から起業人材が集まる点にある。
そうすると、田舎では難しいのは間違いない。しかし、シリコンバレーの人口は約300万人。それも、近年急拡大してからの話で、HPが創業した1939年は人口50万人に満たないオレンジ畑であった。つまり、日本の地方中核都市ならやり方によって十分なチャンスがあるということだ。カギは何かで「世界トップクラス」を狙えることだろう。
入山晃栄149:不確実性が高まる世界で知識の重要性が増すときに、ますますインフォーマルなやり取りや偶然の出会いが必要とされて集積が起こっている。都市に人が移動し、さらに東京へと一極集中していく流れそのものは、このようは観点からもう止まらない。151:Spiky Globalization153:米国 移民ネットワークの強さeg.台湾人→米大学留学→起業→成功→台湾で投資cf.高田馬場にミャンマー人の集積SVにツアーに行くのではなく、SVの投資家に京都に住んでもらう158:アメリカで部長クラスの人にとって大事な仕事の一つは「週末のワインパーティに誰を呼ぶか」162:大都市近郊の可能性（鎌倉、軽井沢）面白法人カヤック 「カマコンバレー」
2016年09月15日
地方の税収を増やす
第2章は、東洋大学経済学部の川崎一泰教授。
地方自治体の収入源となっているのは、
�｜亙�交付税交付金
�⊇嗣雲�
�８把蟷饂裟�
が大きい。問題は、財源の不足分が地方交付税を通じて補填されるから、真剣に税収を上げるインセンティブがないことである。苦労して稼がなくても誰かから貰えるのであれば、大抵、貰う方を選択する。
さらに、固定資産については行き過ぎた優遇措置が続いていて、まちづくりで固定資産価値が上がっても、直ちに税収増に結びつかない。本来、土地の有効活用を目的とすれば、用途に限らず固定資産税は一律であるべきだが、200m2以下の「小規模住宅用地」は固定資産台帳価格の1/6、それ以上の部分でも1/3となっているから、何年も住んでないボロ屋が放置される。
高松の丸亀町商店街が商店街活性化の「成功例」としてここでも出てくるが、以前書いた通り、90億円にも上る補助金を投入した（民間主導の）大公共プロジェクトである。69億円も投入すればしばらく賑わうのは当たり前なので、本当に成功するかどうかは90億円が回収できた後、幾らのリターンになるかに掛かっている。
川崎一泰93:地方議員は増税を考える必要もなく、使うことだけ考えていればいい財源の不足分は地方交付税を通じて補填されるから、税収を上げるインセンティブがない。105:「公共性」の名の下で採算を度外視したとんでもない事業が行われている民間投資であれば初めから儲かる見込みのない事業は絶対に行われないが、公共投資ではむしろ儲からないことほど行われてしまう。117:「なぜ人は商店街に行くのか」という問いが決定的に欠けている地元の要望を聞いてしまう議員の存在が、問題から目を背けて行われる「公による活性化」を助長している。「地元優先」の大義名分のもと、市場を歪めてしまっている。134:成功している商店街にはアーケードがあるからといって、まず屋根からつくってしまう
2016年09月14日
まちおこしブーム、まちおこしバブル
第1章は、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事の木下斉さん。補助金に頼るのではなく、裏通りの安い不動産を借りて流行る店を作り、一店ずつそれを増やしていくという地味な方法で地域再生の実績を上げている。
私も、何度も地域再生がうまくいかない理由を問われ、そのたびに、「誰も困ってないから」と答えてきた。商店街がシャッター通りになってようが、そこで良い時期に商売していた人たちは資産家であったりする。何とかしようとする人がいても、困ってない人達が動かない。そこに住む人たちが本気になってないところに、補助金をつけても金をドブに捨てるようなものだ。
ところが、こうした「地域活性」「地域再生」は聞こえが良くて、反対する人がいない。「予算を付けない方が成功する」というのにも賛成したい。お金を掛けずに稼ぐ方法を作ってなければ、拡大再生産は不可能だ。ゼロ予算でいいから「規制緩和」を
である。24飯田:まちおこしブーム、まちおこしバブル24木下:「B級グルメ、ゆるキャラ、イベント」は地域のためになっていない税金を投入して、一時的にお客さんを集めてはいるけど、かけたお金以上にお金が戻ってこない26木下：まちおこし策分野においては、厳しい経済効果議論ってのはなかなか起きない広告効果、経済効果で皆が納得してしまう。そしてさらに多額の予算をつける根拠にされてしまう。32木下：私は意味のあることをやっているから赤字でもいいのだ、とか開き直ったりする人が、一番地域を衰退させているという自覚を持たなくてはなりません。32飯田：昔から一定規模のイベントになると外注でしたが、最近のイベント企画の丸投げはすごいですね。すでに活性化を諦めている商店街でも、イベントだけはやったりする。自分たちのお金ではやらないけど、国から補助金が流れてくる。38木下：日本の商業活性化のためには相続課税と、休眠中の事業資産への課税を強化すべき資産を放置していることが合理的になる環境を変えないと、結局「動かないのが得」になってしまう。だからシャッター通りのまま商店街を放置しても生活にまったく困らない人たちは、地方における資産家の象徴。46木下：地域活性化に取り組むプレーヤーも「競争」という意識が欠如している自分たちの活性化事業が他地域と競合しているかどうかなんて、ほとんど考えない。64木下：最初に「稼げる仕組み」をつくらない限り、どうにもならないそもそも民間も資金を出さないような活性化を目的とした公共事業への補助金は、予算を突ければつけるほど、儲からない活性化事業が乱発されて、結果として地域は衰退していってしまう。72木下：膨大な予算を投じない事業のほうが、投じた事業より成果が生まれるゼロ予算事業でいいから、できないことをできるようにしてほしい。75木下：地方でも場所によっては昭和30年代から人口減が起こっているのに、今から急に増えることに賭けるなんてクレイジー
2016年09月13日
地域再生の失敗学
本blogの愛読者ならよくご存じの通り、大学在職中に見た「地域再生」政策の実態に呆れ、度々書いてきた。自分がそれまで収めてきた税金がこうして使われていたのかと思うと、納税者として怒りを覚える。なにしろ、税金を納めている側より、税金を使っている側のほうが偉いという世界である。
意味のない政策に毎年税金が投入され、効果を偽造する。そもそも、どうやって効果を測るかが決まってないので、後付けでいくらでも「実績」をつくれるのだ。では、なぜそんな施策が続いているかというと、その施策で便益を受けている特定の団体が居る。行政側にとっても、「政策＝予算＝権限」なので他に変わるものがない限り、止める理由がない。本来なら、財源確保のため毎年増税されなければならない状況なのに、国債で未来から借金しているので、納税者の懐も痛まないから、自分の事と思えないのだ。
本書は1970年代生まれの気鋭の若手学者を中心に、編者の飯田泰之氏（明治大学政治経済学部准教授）が対談する。興味あるテーマなので、これから章ごとに紹介していきたい。
はじめに：地域再生施策は失敗の歴史毒饅頭のように地域を衰弱させる口当たりのいい政策�‖仂櫃箸覆襦崔楼茵廚猟蟲羨�人口10万人以上の市の中心街とその通勤圏�◆嶌得検廚猟蟲羨�平均所得向上1960年代の高度成長→地域間経済格差拡大1962 全国総合開発計画（一全総）「日本のあらゆる地域を工業化させる」付加価値は製造ではなく、企画・開発、デザインに変わったのに、相変わらず工業誘致の手法「大規模なインフラ整備によって（何らかの）集積を目指す」＊インフラ整備では経済振興はできない＊＊何が流行るのかわからないという状況に対応できるのは、雑多なアイデアを小さく実行し、ダメならば早めに撤退することが可能となるような民間だけ
2016年09月12日
独立系日本株アクティブファンド比較
週末、さわかみファンド運用報告会へ。さわかみ投信はそれまで証券や銀行、保険会社など金融グループの投資信託会社しかなかった中で、日本で初めて独立系として設立された投資信託会社である。実はファンドの設立間もなく創業者の澤上篤人さんに会う機会があり、「長期投資を通じてよい会社を応援する」という理念に共感して、以来長年定期購入していた。
「いた」と過去形で書いたのは、5年ほど前に積立てを止めたから。当初10年ほどは市場を上回る成績（α）を出せていたが、ファンドが有名になり、運用資金が3000億円を超えて成績が上がらなくなった。投資信託ビジネスとしては大成功だが、これだけの資金が集まると運用は逆に難しくなる。
銘柄を分散させては市場パフォーマンスを上回ることは不可能だし、絞り込むと1社あたりの投資額が巨額になり、自社の動きが相場に影響を与えてしまう。従って、買おうとすると株価は上がり、売ろうとすると株価が下がる。仮に100社に分散させると、1社あたりの平均投資額は30億円ということになる。流動性基準の緩い日本株では買える対象はおのずと限られてくる。
そこで、やはり、レオスの藤野英人さんに会ったのを機に、ひふみ投信に乗り換えることにした。上図は過去5年間のTOPIXファンドと、各独立系アクティブファンドのパフォーマンス。青色の一番成績がいいのが「ひふみ」で、黒の一番成績が悪いのが「結い」（鎌倉投信）。線が重なっていてほとんど区別がつかない残りの3本が、「さわかみ」「コモンズ」「ニッセイTOPIX」である（TOPIXと比較してもいいのだけど、TOPIXには配当が反映されないので、実際に銘柄を保有して配当収入があるTOPIXファンドにした）。基準価格だけでなく、価格変動の標準偏差（リスク度合い）も考慮すべきだが、それほど差がないので省略した。
そう考えたのは私だけではないらしく、さわかみファンドの純資金流入（ファンドの買付から解約金を引いたもの＝ファンドの軍資金）は過去3年間減少した。初期からの投資家が利益確定して解約を進めた一方で、パフォーマンスの低下で新たな顧客が開拓できなかったのだ。株価の下落もあり、現在のファンド純資産は2675億円だ。ピーク時の3350億円に対して、2割減の水準にある。
会社側でもそのことを気にしているらしく、今回の運用報告を行った投資責任者の草刈貴弘さん（2013年からCIO）は、
・投資先を絞り込んだことによるパフォーマンスの改善（一時は300を超えていた銘柄数を100以下に）
・資金流出に歯止めがかかったこと
を強調していた。
現在は予想される相場暴落局面に備えて現金比率を高く（15%）しているとのこと。私もなんのかんの言って、積立ては止めたが、解約はしてない。日本初の独立系投資信託会社の行く末を見てみたいという気持ちがある。
過去10年間のTOPIXとの比較では、リーマンショック後のリバウンドでTOPIXに差をつけている（下図）。3000億円でもこれだけできる、というところを見せてほしい。
2016年09月11日
ガーデンシティ札幌
札幌を訪問して感じたのが、都市公園の多さと大きさ。市内いたるところに公園があり、市民と観光客が楽しんでいる。検証しようと例によってウェブ上の資料を探したが、見つからないので、統計資料から作成したのが上図。
やはり公園面積が大きい。東京都区部にあるのと同じくらいの公園面積がある。人口は4倍違うので、一人当たりの公園面積を取ると4倍の差がある。
「緑がない」という印象の大阪だが、公園面積は東京に比べて1/3。しかし、人口も1/3なので、一人当たりにすると東京都区部を若干上回る。一体どこにあるのだろう？仕事で訪れる都心部に少ないのは確か。
上記の都市以外にも政令指定都市すべてを比べてみたが、堂々の一人当たり公園面積第一位は神戸
公園面積で札幌や東京都区部に比する面積を有している。それでいて人口が相対的に少ないので、一人当たり公園面積では政令指定都市第一位となった。こちらも、それほど公園が多い印象はなかったが、六甲山に隠しているのかでは、これは海外の都市と比較してどうなのか？こちらは少し古いが比較資料があったので借用させてもらう。原典が明らかにされてないのだが、どこからかの引用と思われる（下図）。
よく言われるように、東京の公園面積はNYやロンドン、パリなどに比べて少ない。一人当たり公園面積で見ると1/6〜1/3程度しかない。先ほどの国内都市数字と比べると、欧米都市水準の都市公園が整備されているのは、国内ではかろうじて札幌、仙台、神戸位ということになる。
2016年09月10日
北海道各市の栄枯盛衰
歴史の浅い北海道は都市人口の変遷も激しい。上図は過去約100年間の主要都市の人口変遷である。
驚いたことに、100年前の都市人口は順に、
１．函館 14万人
２．小樽 11万人
３．札幌 10万人
であった。
現在は、
１．札幌 190万人
２．旭川 35万人
３．函館 28万人
と札幌が圧倒している。
当時の北海道経済は海運に頼っていたから、本州との旅客・物流の窓口であった函館がいちばん栄え、次に栄えたのが開拓使が置かれた札幌の港町であった小樽であった。これは、明治になってから高松が「四国の玄関口」として栄えたことや、あるいは、リバプールが英国産業革命の中心地であったマンチェスターの港町として栄えたのに似ている。さらに、小樽は北海道各地で採れた石炭の積み出し港であり、ニシン漁の最大拠点であった。
北海道で取れる石炭、ニシン、豆類は相場商品でもあったので、実需に加えて投機資金が小樽に全国から集まる。明治から大正にかけ日本銀行はじめ20以上の銀行が小樽に支店を出し、「北のウオール街」と言われるようになる。
当時の銀行は、信用力の象徴として建物にも金をかけた。木骨石造の倉庫ではなく、本当の石造りあるいは後年には鉄筋コンクリート造りとなる。おかげでその多くが現在でも残っており、見学が可能だ。
建物が残ったのには、元の建物が立派であっただけでなく、戦後、小樽経済が急激に悪くなったため、再開発が行われなかったことも大きい。東京の建物を見ていれば分かるが、築数十年のまだ使えるビルでも建て替えが進むので、何年がたつと街の景観が変わる。需要があるので、まだ使えるビルでも壊して高層ビルに建て替えてしまうのだ。
同様の例は、四国でも「うだつの町並み」で知られる脇町（現：美馬市）に見られる。江戸時代から脇町は周辺の農地で取れる藍の積出港として豪商が軒を連ねた。その富の象徴が「うだつ」をあしらえた立派な商家であった。ところが、明治になってドイツで合成染料が発明され、徳島の藍産業は一気に廃れてしまう。このため、江戸から明治にかけての街並みが残ったのだ。
2016年09月09日
彼の僧の娘―高代覚書
高校同級生が主役を演じる芝居を観に明大前へ。先ほど終了して帰ってきたところ。
丸亀高校に入って演劇を始めた明樹由佳さん、大学に進学して一旦は演劇から離れたものの、思いが募り大学3年時に劇団四季に入団する。当時、Catsのロングランが始まったばかり。若い時から劇団四季で俳優を目指す人は多く、既に20歳となっていた彼女は猛特訓で追いつこうとする。そのかいあって、Cats他多数の演劇に出場の機会を得る。
その話は同期が幹事年であった4年前の東京同窓会で、「おどって うたって ころんで おきて 〜自分らしく生きる〜」でしてもらった。例年、研究者となった同窓生の講演が多い中、踊りの実演に同窓生もそれに参加するという異例の展開。大いにウケタ。
さて、今晩の芝居「彼の僧の娘―高代覚書」は、明治末期に起こった幸徳秋水の「大逆事件」に関与したとして逮捕され、死刑判決を受けた僧侶・高木顕明の養女・加代子の数奇な運命を描く。顕明は新宮にある自分の寺で幸徳秋水の談話会を開いたが、事件への直接関与は無かったとされる。しかし、明治政府始まって以来の大逆事件に浮足立った政府は秋水と交友があった関係者を全員逮捕し、死刑にしてしまうのだ（約半数は後に恩赦で無期懲役に減刑）。顕明も減刑された一人だったが、真宗大谷派から僧籍を剥奪され、それを苦にして獄中自殺してしまう。
残された家族は寺を追われ、生活苦から、加代子は9歳で大須の芸者置屋に売られる。長じた彼女は売れっ子の芸者となり、浜松で成功したという。その資金で小料理屋を始め、不幸な身の上の女性をどんどん雇い入れた。その間も、加代子は「大逆事件の罪人の娘」として、定期的に警察署への出頭が命じられ、常時特高警察の監視下に置かれていたという。
作・演出の嶽本あゆ美さんがお孫さんに聞いたところでは、戦後の加代子は、「それは明るく過去も語らない、粋なおばあちゃんだった」とのことだ。浜松祭では元浜町の山車に乗り、三味線を引いていたらしい。
真宗大谷派が僧籍はく奪の過ちを認め、顕明が名誉回復を果たしたのは死後85年もたった1996年の事であった。
2016年09月08日
木骨石造
小樽の倉庫群の特徴は、「木骨石造」。構造材は地元の松材で、外装がやはり地元でとれる軟石（凝灰岩？）。ブラタモリ＃23小樽にも出てきた。
小樽は冬の風が強く、度々大火に見舞われた。明治時代に北海道随一の港町として発展した小樽には倉庫が立ち並び、その中の商品が火事で焼けては大変だ。そこで、従来通り材木で構造を作ったうえ、耐火性の高い軟石で外装する工法が生み出された。明治20年（1887）年ごろから木骨石造は始まり、明治37年（1904)の稲穂町の大火後、一気に増えたという。
大正中期以降はモルタル塗りやタイル張りの建物が出現し、木骨石造の建物は次第に建てられなくなった。さらにお金を掛けられる建物は鉄筋コンクリートになっていった。
それから１００年経った今でもあれだけの木骨石造の建物が残っているということは、結果的に、長寿命であったわけだ。自重の思い鉄筋コンクリート製は、埋め立て地の軟弱地盤には向かない。
2016年09月07日
ニッカウヰスキー余市
ニッカウヰスキー余市蒸留所を初めて訪れた。近代産業遺産は大好きなので、世界中機会があればたいてい訪れているのだが、自分でウイスキーを飲まないものだから、これまで興味を持たなかったのだ。
それが今回行くことにしたのは、もちろん、朝ドラ「マッサン」の影響。あれは、当時非常にまれであった国際結婚の話であると同時に、国産初のウイスキー造りに情熱を燃やす技術者が、独立して経営者として成長していく物語でもあった。
サラリーマンが成長できるかどうかに上司の果たす役割は大きい。ごく一部の人は自分に何が必要か考えて自ら環境を変えていけるが、凡人は与えられた環境で成長速度が大きく変わる。竹鶴政孝の場合は、11年間働いた寿屋(後のサントリー）の創業者である鳥井信治郎の影響が大きかったものと思う。
ドラマが史実に基づいているとすれば、本格的スコッチウイスキーに拘った竹鶴は、鳥井の現実路線（日本人の好みに合わせたウイスキー）に反発し、寿屋を辞める。ウイスキーが売れるようになるまで熟成が必要で、5年以上かかることを知った投資家は難色を示す。しかも、日本人には本格的ウイスキーはなじみがない。そこで、現地で豊富に取れるリンゴを使ったリンゴジュース製造販売でスタートする。だから、社名が大日本果汁株式会社。これを略して日果、つまり、ニッカとなったわけだ。最初の商品は、「ニッカ林檎汁」であった（1935)。「ニッカウヰスキー」が発売されたのは1940年だ。
ニッカは幸運にも助けられる。1940年に発売されたニッカウヰスキーは売れなかったが、第二次世界大戦の勃発でスコッチウイスキーが入ってこなくなった海軍の御用達となる。戦前のウイスキーの最大の需要家はイギリスに学んだ海軍であった。戦後は占領軍が買い求め、占領軍が去ったころには生活の様式化が本格化し、洋酒を飲むことが広まっていった。巧みな宣伝で洋酒市場を広めたのも鳥井のサントリーであった。
因みに、ニッカウヰスキーがアサヒビール傘下に入ったのは、設立時に資金を出し70%を占める大株主であった加賀正太郎（加賀証券他のオーナー経営者）が、1954年、自らの死期が近いことを悟り、株式の散逸を防ぐため、朝日麦酒（現アサヒビール）に一括売却してから。アサヒビールは2001年に残りの株式も全て買い取り、以来、完全子会社となっている。
2016年09月06日
スープカレー
札幌は、「スープカレー発祥の地」らしい。ということは、インドにもないのか
今回の札幌訪問にあたり、LBS同窓生で札幌出身の高野さんにお店を推薦してもらったところ、スープカレーの店があるという。カレーのスープ？よくわからなかったけど、初日ランチは味噌ラーメンにして、2日目に教えてもらったPICANTEに行ってみた。
ホテルで仕事があったので家族を先に行かせたところ、平日なのに30分待ちという。後から合流したが、最初、道路の反対側にあった店を通り過ぎて、はす向かいの店に入ってしまった。
「スープカレー」の幟がたっていたので、ここだと思って迷わず入ったら、別の店だった。
それだけ、市内にはスープカレーの店が多い。スパイスの効いたサラサラのカレースープに、大きな具材。味はイリコ出汁に慣れた身には強烈。サラサラのカレーは南インドでイロイロ食べたが、具材は一緒に煮込んである。こちらは、具材は別途調理してあるので原型のまま。野菜は素揚げ。
昨日の濃厚味噌ラーメンといい、スープカレーといい、味が濃いのは北海道の特徴なのか？寒いうえ、開拓で肉体労働者が多かったから、説明はつく。
2016年09月05日
大地の彫刻
イサム・ノグチが設計したモエレ沼公園。札幌市の郊外にあり、出張の合間に行くには少し遠くて、これまで行く機会がなかった。
そのスケールに驚く。1982年に着工し、完成したのが2005年だというから半端ではない。公園面積188.8ha
国営讃岐まんのう公園は350haあるらしいが、人口200万人近い大都市にある公園としては最大級だろう。ロンドン最大のHyde Parkが140haというからそれより広い。因みに、Central Parkは341haというから、桁違いだ。歴史を調べてみると、ここは元々札幌市のごみ処理場であったらしい。昭和53年から平成2年にかけて埋め立てた量273万トン。1988年、既に公園建築が一部始まっていたモエレ沼に来たイサム・ノグチははゴミの舞う大地に立ちこういったそうだ。
「人間が傷つけた大地をアートで再生する。それは僕の仕事です」
ノグチが出したコンセプトは、「公園全体がひとつの彫刻作品」。マスタープランが出た翌月、ノグチは急逝するのだが、プランに従って公園造成は進められた。従って、モエレ沼公園はノグチの最後の作品となった。
2016年09月04日
モアイ像
遅い夏休みで札幌へ。3年前に洞爺湖有珠山世界ジオパークの調査で北海道には来たが、同地だけのとんぼ帰りだったので、札幌は2009年以来７年ぶりになる。
新千歳空港からレンタカーで支笏湖に寄り道しながら札幌を目指していたところ、突然あらわれたのが写真のモアイ像
高松の女木島にも一体だけモアイ像があるが、こちらはなんと33体もある本家イースター島以外では最多だろう。停車して見学したところ、これは真駒内滝野霊園という巨大な霊園だった。その広さ95万�屐�東京ドーム20個分という。よく見ると、モアイ像の下には仏像とマニ車まである。日本人の宗教観を表す、「何でもあり」だ（笑）。
モアイ像の巨大さに驚いていたが、ふと後ろを振り返ると、大仏の頭だけが見える。こちらは「頭大仏」というのだそうだ。度肝を抜かれた後は「？？？」と思ったモアイ像だが、頭大仏は緻密に計算されていることが見て取れる。大仏をほぼ覆いつくしているラベンダーの丘からちょこんと頭を出す大仏は人の好奇心をくすぐる。
調べてみたら、安藤忠雄設計。考えてみると、「光の教会」「水の教会」「風の教会」などキリスト教教会や「本福寺」「光明寺」などのお寺と、安藤作品には宗教施設が多い。資金があって、シンボル性を求める宗教施設が白羽の矢を立てるのは当然なのかもしれない。
2016年09月03日
寄生虫を食べる
タイトルは「暗闇世界」だが、エッセイ集なので、いろんな話が入っている。興味深かったのは、『寄生虫は飲めばいいのか。食えばいいのか。』というのも、以前、寄生虫博士として有名な藤田絋一郎先生の話を直接聞いたことがあるから。この項には、藤田先生も登場する。
藤田先生の場合は、寄生虫と人間が共存する社会には、アトピー性皮膚炎も花粉症もないという観察から、自らサナダムシを体内で飼っていた。サナダムシは高カロリーのものが大好きで、体内で宿主が食べたものを横取りして成長する。従って、免疫系の病気にならないだけでなく、ダイエットにも効果抜群ということ。実際、スーパーモデルにはそうしている人が多いというのだが、本当か
肥満はあらゆる成人病に繋がるので、医療費削減のため、国を挙げて、サナダムシを奨励したほうがいいかもしれない。
76:1メートルぐらいの小型のハイイロアザラシだった。仰向けにしてお腹をまっぷたつに裂いていく。北極海に生きる海獣の皮の下の脂肪は厚い。それをめくりあげいくと脂肪の下の筋肉のあいだにイモムシ型をした3センチぐらいの寄生虫がいて、これが生まれてはじめて外気に触れたものだからびっくりしてモコモコとけっこうなスピードでめくりあげた脂肪と筋肉の奥に逃げていく。エスキモーはその寄生虫を目にもとまらぬ早さでつまむと次々に食べてしまった。
82:サナダムシは貪欲で人間の食べるものを腸のなかでどんどん食べていく。とくにカロリーの高いものが大好きなので、それが宿主のダイエットに有効作用する。さらにサナダムシは宿主の体内にいろんな物質をだしてアトピー性皮膚炎とか花粉症とか小児喘息といったむかしは無かった免疫系の病気の原因になるものを排除する。
81:「美」の価値をとにかく優先するスーパーファッションモデルなどという人をはじめとして、肥満体の対策、花粉症や各種アレルギーの治療、など様々な理由で世界にはそういう究極の人体実験的治療に寄生虫を利用する人がまさしく沢山いる。
2016年09月02日
鉄道は誰のものか
日本の鉄道システムは、その全国に広がるサービス網、時間の正確さ、そして年間に3億人以上（延べ）もの人を運ぶ新幹線網で、世界一と言われる。それに、「日本の鉄道は人を大切にしない」と真っ向から挑んだ本。ベースにあるのは、「交通（つまり、移動の自由）は人権」だという意識だ。
日本の鉄道の混雑は異常で、人権がないがしろにされているという。確かに、大都市の通勤時間帯の混雑は徐々に緩和されているとはいえ、未だにひどい。私は耐えられなかったので、都心に家を買った上、早めに出勤していた。
日本の多くのことについて言えるのだが、問題は、混雑が特定の路線と時間帯に集中していることである。混雑する時間帯は決まっているのだから、避けることも可能だ。ところが、混雑を嘆く人に聞いてみて驚くのは、�，修發修盧�まない路線を選んで住んでいない、�∋�差通勤をしようという工夫がないことだ。結局、混雑を避ける工夫よりも混雑を受け入れる選択をしている。
なので、あまり著者の「鉄道会社が投資して混雑を緩和すべき」という意見には賛成できない。民間企業なのだから、投資してリターンがあると思えばそれぞれの判断で投資するだろう。リニア新幹線も、私自身はそれだけの投資をして回収できるのか大いに疑問に思っているが、JR東海が政府支援を受けず、自前でやるというなら、上場企業であるJR東海の株主が決めることだ。
混雑緩和には、それより、通勤手当を給与とみなすことだろう。通勤手当の非課税限度額は月10万円で、これがあるため、日本人は通勤時間が長くなる。もし、これに所得課税されるとすれば、どれだけの人が遠距離通勤するだろう？首都圏がこれだけ広がったのは日本独特の通勤手当を経費として認める税制がある。どこから通っていようが仕事の成果には関係がないから、非課税制度は廃止していいと思う。その上で人材確保のため出すか出さないかは企業の自由だ。
「せまい車内も譲って広く」という標語は実は1939年にできた政府標語なのだそうだ。つまり、戦時体制に向かっていく中で、鉄道も軍事優先になり、「民間人は我慢しろ」という意味であった。これも、「1940年体制」の一つだったのだ。
はじめに：日本の鉄道の混雑は異常�〕�用者の協力は限界��交通政策「せまい車内も譲って広く」1939/6『写真週報』（政府広報誌）18:地球上の鉄道利用者総数の6割が日本38:東京都市圏の鉄道の存在価値は年に45兆円
58:欧州の高速鉄道料金は日本の新幹線の約半額
2016年09月01日
出会いの場としてのセトゲイ
今年で瀬戸内国際芸術祭（セトゲイ）も3回目。定期的に行われる香川県で最大のイベントとなった。日本政策投資銀行では、前回2013年の総来場者数107万人から、実質来場者数を30万人と推定し、さらにアンケート調査から県外来場者や宿泊を伴うかどうかなどで分類し、経済波及効果132億円（直接効果77億円）と試算している。
こちらは「経済効果」だが、個人レベルでは、「セトゲイで知り合って結婚した」という話をよく聞く。直接聞いただけで数組。おそらく数十組が結婚し、交際中も入れると数百組になるのではないか。組み合わせも、来場者と地元の人、作家と小エビ隊（ボランティア）、小エビ隊同士などいろいろ。
「出会いの場」となる要素は満載だ。（数字は、瀬戸内国際芸術祭実行委員会『総括報告書2013』より来場者のアンケート結果）
・テーマは現代アートであり、女性来場者が68%
・20代＆30代の「適齢期」が半数以上
・瀬戸内の島を舞台に行われ、非日常感がいっぱい
・作品を鑑賞しながら、あるいは、休憩しながらと立ち止まり話しかけられるきっかけが多数
・島まで、あるいは島と島の間をフェリーで約1時間かけて移動するので、その後ゆっくり話ができる
・もちろん、小エビ隊としてボランティアに参加すれば「共同作業」でじっくり知り合える
今や、自治体が婚活支援を行う時代だから、「経済効果」に加えて、「婚活効果」も測定すべきなのかもしれない。一方、中途半端な婚活イベントは税金の無駄だからやめた方がいい。
