2016年07月
2016年07月31日
Le Tour de France 2016
毎年7月の楽しみであるTour de Franceが終了。Team SkyのChristopher Froome（イギリス人）が連覇した。Froomeは2013年にも優勝しているから3回目の個人優勝。
世界で行われる自転車レースの最高峰がTour de France。Grand Tourと呼ばれる大自転車レースはTour de France以外にも、イタリアを舞台とするGiro'd Italiaと、スペインが舞台のVuelta a Espanaの三つがある。その中で最も歴史が長く、1903年に始まり今年103回目のレースだったのがTour de Franceである。
期間：23日間
競技距離：約3300km
高低差：2000m＋
賞金総額：約€2M
観客数：1500万人
関連売上：200億円
放送：190か国
視聴者：35億人
2016年07月30日
急がば座れ！
５月に読んだ『命もいらず名もいらず』で、実は山岡鉄舟が再建した「全生庵」が近所にあることを知り、遅ればせながら、座禅会に申し込んでみた。初心者は最初日曜日1800-2000に行われる座禅会の30分前に集合して説明を受けることになっている。それ以降は、日曜日夕方の座禅会でも、もしくは月曜日から土曜日まで朝5-7時に解放される座禅堂で好きなだけ座禅をしてよい。
その全生庵の平井住職が、電子雑誌に連載しているコラムのタイトルが「急がば座れ！」。住職は大学卒業と同時に静岡県龍沢寺（三島）の修行道場に入ったということ。以来、11年後の2001年に下山するまでここで修業を積む。龍沢寺は鉄舟が修行した寺でもあるので、その縁なのだろう。
初めて1週間、まだ胡坐がうまく組めない。15分くらいなら問題ないのだが、その後だんだん足が痛くなる。座禅では、「何も考えずに集中する」状態を作ることが大事なのだが、なかなかそこまで行かない。
今週から小学校の夏休みで、全生庵では、朝のラジオ体操が始まった。これまでは朝時間があるときは、不忍池でジョギング→上野公園でラジオ体操というパターンだったが、夏休みの間は全生庵で座禅→ラジオ体操になりそう。
2016年07月29日
巨大地震は発生30分前に予測できる
Independents Club東京でもう一社発表したのが、みらい地震予想。M8.2以上の地震であれば、その発生30分前に通知が可能だという。そのメカニズムは以下のとおり。
電離層下部（地上から１００km上空）において地震の４０分前から電子が集まってくる現象を発見。１９９４年以降のＭ８．２以上の世界の地震で検証した結果８件中７件で確認。８件中１件は、プラズマバブルという赤道直下の現象により確認できず。４０分前から異常が発生してくるので、１０分間観測・判別し、地震に対して３０分前に通知
この理論は、北海道大学大学院の日置幸介教授が発見し、論文発表されたもの。この理論にほれ込んだ犬伏社長が勤務していた東芝を退職して2015年1月に設立したのが当社である。
上記は30分前に「確実に」予報する試みだが、もっと前に予兆を捉えようという研究もされている。こちらで有名なのは、東海大学の長尾年恭教授。大地震が起きる前に、逆に地震が少なくなる現象を捉えて「地下天気図」を公開している（動画）。
2016年07月28日
科学者の「生産性」
著者はAndrew Young公共政策大学院（Atlanta, GA)教授で、「科学の経済学」分野の第一人者。アメリカの巨大研究機関NIH（国立公衆衛生研究所）の諮問委員として年間に$20億にも上る助成金配分にも携わっている。原書の出版から6年して日本語版が出たので読んでみる。
内容は、「こうすべきである」という主張よりも、過去20年ほどの間に行われてきた「科学の経済学」に関する解説に重点が置かれている。本分野は圧倒的に欧米での研究に依存しており、著者自身、「日本語版への序文」で、これらが日本を含め日欧米諸国で適合するのかどうかは分からないとしている。しかし、科学の国際化が加速的に進んでいることから、おそらく適合するのではないかと推察している。
それを受けてだろう、巻末の「解説」で訳者の後藤康雄氏（経済産業研究所）が、日本の状況を解説していて、私にはこちらのほうが面白かった。
日本では元々理工系の博士号取得者が少なかったのだが、1991年に文科省がこれを倍増させる方針を出し、大学院の定員を大幅に増やした。結果、博士号取得者は増えたものの、主な就職先である大学教員のポストは増えなかったため（少子化の上、既に大学進学率も50%を超え頭打ちだから当たり前だ）、深刻な就職難を生み出した。この状況を見て、2000年代になって再び博士号取得者は日本でのみ減少した。
その他にも、対GDP比のR&D支出は世界一なのに、それに見合う産業創出が出来ていないという問題もある。これには、R&Dの大半を担うのが大企業で、その多くの研究成果が死蔵されているためだろう。ベンチャー企業にとっては10億円の売上が見込まれれば挑戦する価値があるが、1000億円の規模があるだ企業にとってはやる気が起こらない。スピンオフが期待される。
１．利得とラグ構造（時間的なずれ）の双方の切り口による、科学と経済成長との関係の数量的な評価２．先取権（プライオリティ）に基づく報酬制度は、社会的に望ましい行動をとるインセンティブを科学者に与える３．名声だけでなく富４．科学者の労働市場がどのように機能するのか５．科学者や技術者の市場動向を高い精度で予測することは困難６．1990年代末から2000年代初頭にかけて行われた数多くの研究は、科学者や技術者の生産性を理解するうえで大きな貢献をなしてきた2010-2015の変化（日本語版への序文）�（胴颪膿径寛奮惻圓凌執錣塀⊃ζ顴�ポスドク増�▲帖璽襪凌癖癲文Φ羌ヾ錣侶狹�な性能向上）��Big Data活用
＊科学の国際化で、科学者たちはますます多くの習慣や価値を共有する一方で、国ごとに異なる研究組織間の役割分担と助成金制度
2016年07月27日
自転車に30分で乗れるようになる！
Independents Club東京で鮫島先生の後に「事業計画発表」されたのが、ビタミンiファクトリーの 渡辺社長。現在の主力製品は、練習用自転車「へんしんバイク」。
幼稚園の頃、自転車に乗れるまで、何度も転びながら1日中自転車と格闘した人も多いと思う。それが、たったの30分で半分の子供は乗れるようになるというのだからオドロキだ。
仕組はこう。まずは、自転車に中々乗れるようにならない原因分析だが、
・自転車特有の難しさ＝バランスを取るのとペダルをこぐのを同時にしなければならない
・自転車が重くて大きい（乗れるようになってから小学校低学年までは使えるように大きめのサイズを買う親が多い）
にあるということ。これは、納得だ。
では、その要因を取り除けばいい。そこで、
・ペダルを取ってしまって、まずはバランスを取ることだけに集中する
・バランスを取れるようになったら（ここまで数十分）、ペダルを取り付けこぐのを練習するという二段階にする
・小学校に上がるまで数年乗れれば十分と考え、4-5歳児の体に合った大きさにし、重量も軽くする
というコンセプトで作ったのが「へんしんバイク」だという。結果はビデオの通り。
私の疑問は、「ペダルを取れば同じことではないか」というものであった。質問したところ、「多くの子供用自転車は重い」ということであった。大きめのサイズを買うこともあって15kg位あることも多いという。へんしんバイクは半分の7.5kgだ。
面白かったのは、内田・鮫島法律事務所による同社の「知財戦略」解説。まず、自転車に関する特許取得状況を調べると、
１．シマノ
２．ブリジストンサイクル
３．パナソニック
４．三洋電機
５．ヤマハ発動機
であった。「大手が活発に特許を出している市場に入るのは難しい」というのが基本である。
しかし、子供用自転車に絞ってみると、特許数は極端に減り、各社ともほとんど出してない状況であった。子供用自転車の市場は小さくて伸びてないので、各社とも力を入れてないのだ。
へんしんバイクの特許は二つ。革新性は、ペダル＋クランク＋フロントギヤ＋チェーンが丸ごと外れ、また、それを簡単に取り付けられるようにした点にある。これは、子供用自転車に関して何年かぶりに出た特許であるらしい。
2016年07月26日
下町ロケット「リアル神谷弁護士」
Independents Club東京の事業計画発表会へ。今回は、弁護士・弁理士である鮫島先生の「知財データ分析」の講演付。鮫島先生には、私が大学退任直前の昨年3月に香川大学で実施したIndependents Club初めての高松開催にも来ていただいた。下町ロケットに出てくる技術に強い神谷弁護士のモデルとなった「リアル神谷弁護士」と言われる弁護士である。
知財訴訟が得意な大手事務所出身で、虎ノ門に事務所（神谷・坂井法律事務所）を構え、年令は佃航平とほぼ同年代で、人なつこい雰囲気。技術系の大学を出た後、しばらくメーカーに勤務しながら一旦弁理士になり、その後法律を勉強して司法試験を突破した
というのが原作の設定。実際の鮫島先生は、東京工業大学の出身で、当初、藤倉電線に勤務。弁理士資格を取ったのを機にIBMに転職。知財部に勤めながら司法試験に挑戦し、合格して弁護士になったのは36歳の時だったという。
今回の講演では、「ニッチトップになるための道筋」として、技術のマネタイズ要件が説明された。「必須特許ポートフォリオ論」がとても面白かった
2016年07月25日
ミュージックセキュリティーズ
NBC勉強会のもう一人の講師はミュージックセキュリティーズの小松社長であった。2001年会社設立だから15年目。これまで何年かおきに2度ほど講演を聞く機会があり、その事業発展を見てきた。注目する一方、小口で投資して管理するのが面倒で自分では投資してないのだけど。
クラウドファンディングと言っても幅広く、大きくは、
・寄付型（賛同する事業に見返りを求めずに寄付する）
・購入型（欲しいものを購入希望者が集まることで実際に製造する）
・投資型（融資もしくは投資で金銭的リターンを求める）
に分かれる。
ミュージックセキュリティーズのファンド「セキュリテ」は、基本投資型だが、ファンド投資者にはその投資先が製造する商品が届くので購入型、さらには事業に賛同する人が投資するので寄付型の要素もある。このバランスが同社ファンドの特徴ともいえる。
資本金は知らない間に327Mに増えていて、318Mの資本準備金を合わせて、6億円以上の資金調達をしていることが分かる。主要株主は、モバイル・インターネット・キャピタル、フィンテックグローバルなど。西京銀行、滋賀銀行、伊予銀行、静岡銀行など地銀が直接あるいはグループのVCで多数参加している。同社が地方ファンドに力を入れていて、これらの銀行と協力関係にあるらしい。
資本金が増えて、経営陣も大幅に強化されている。創業者の小松社長のほかに、
景山知明（東大卒 元Mckinsey）
赤井厚雄（慶應卒 三菱銀行→Morgan Stanley）
矢坂 修（慶應卒 日興証券→日興SSB→日興IR→丸の内キャピタル）
朝香達也（慶應卒 公認会計士）
以上が取締役。慶応＆金融機関出身者多し。
それはいいのだけど、余り豪華経営陣を揃えると、力が拮抗してチームが崩壊する危険もある。少なくとも創業期は社長のトップダウンでやるほうが成功確率が高い。ミュージックセキュリティーズは創業期を乗り越え、発展期に入ったということなのだろう。次はIPOだな。
2016年07月24日
シリコンバレーでの起業体験
昨日のblogでNuCORE Technologyのことを調べていて、國土さんと共同創業者である渡辺誠一郎さんのインタビュー記事が面白かった。昨日もリンクは張ったのだけど内容を改めて紹介したい。記事が載っているのは、SVJEN（Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network)のサイトで、シリコンバレーにおける日本人起業家支援のネットワークとして曽我弘さんらによって設立された。
1997年 シリコンバレーでNuCORE Technology創業
2006年 出資VCから投資後7年になり売却圧力
2007年 台湾半導体メーカーMediaTekに会社売却
売却は、MediaTekが350万株の普通株式を発行し、NuCORE Technologyの69%の株と交換。買収額は$37Mということなので、時価総額は$54M（約55億円）ということになる。NuCORE Technologyの売上高は$20M近くまで行っていたが、同社はそれまでに$80MをVCから調達していたというから、投資としては回収できなかったということになる。
以下インタビュー記事から。
・当初の事業計画は1.5年くらいで全部飛んだ
当初は画像認識チップを作ろうとしていたが、市場が小さくVCが興味を持ってくれなかったのでデジカメ用の画像処理チップ事業に転換→10社に2社くらいのVCが興味を持ってくれた。
・VCが出資してくれる事業なら実際にやってみようと起業の基準にしていた
そのために現地でもトップクラスのVCに選択的に当たった 。
・日本での資金調達は全く考えなかった
日本には半導体ベンチャーの経験値が少ない。経験値の高いネットワークはシリコンバレーにしかなかった。
・VCの技術的DDが危険
米VCはNDAも交わさない。プレゼンに行ったVCから情報が流れて、全く同じコンセプトで2社会社を作られた
・生き残れたのは創業メンバーの結束が固かったから
SVでは、経営がうまく行かない状況になると他社からどんどん誘いがかかり、チームが崩壊する。
・CEOは最初から外部から
日本人創業メンバーが全員エンジニアのため、最初からVCにCEO探しを頼んだ。その後、会社の成長ステージに合わせてCEOを変えていった。大喧嘩になったが、創業者である自分を取るかCEOを取るかと譲らなかった。CEOは特殊技能者で、エンジニアに兼ね備えろというのは無理。
・アメリカは変化に強い
アメリカ人は変化のにおいを嗅ぎつけると一気呵成に集まってパラダイムをつくってしまう。日本人があらあらっと言っている間に、先端部分はアメリカ人に食い尽くされてしまう。
・もっとSVに日本人は来るべき
日本を相対的に見られる人数を増やさないと、日本はあまりに狭い世界に浸りきっていて危険。色々な価値観を持つ人と接して、多様な視点を持つ必要。
2016年07月23日
TX アントレプレナーパートナーズ
昨日のJNBセミナーでTX アントレプレナーパートナーズ（TEP）代表理事の國土晋吾さんにお会いした。
「つくばエクスプレス（TX）沿線に集う大学や研究機関などから生まれた技術を基に事業を立ち上げたベンチャーを中心に支援する。そんなユニークな活動を続けているのが、TX アントレプレナーパートナーズ（TEP）である。投資家や相談役（メンター）、ベンチャーとの連携を望む大手企業などが会員として名を連ねる」
参加者を見てみると、
・大企業で活躍後定年を迎えた方
・外資系企業で若くして成功し、早期退職した方
・起業家→オーナー経営者
など。
國土さんご自身は、インテルジャパンを経て、1997年にシリコンバレーで画像処理プロセッサのNuCORE Technologyを共同創業者として設立している。ハイテクベンチャーの本場シリコンバレーで日本人がいきなり操業するという嚆矢である。その後現地のVCから$80Mを調達
当時話題になった。その後知らなかったが、2007年に台湾の半導体メーカーMediaTekに買収されている。エンジェル（個人投資家）による技術系ベンチャー支援を核としている。こうした取り組みはITバブルのころから日本でもあるのだけど、うまく行かなかった。当時見ていて思ったのは、参加者の多くが日本の伝統的大企業出身の技術者で、�〃弍跳亳海頬海靴ぁ↓⊆�分の成功体験に拘る、�５�業経験がない、という状態で、スタートアップの経営に関して誤ったアドバイスをすることが多かった。受け入れ側経営者が経営経験豊富で、お金だけありがたく貰って後はハイハイと聞き流すことができる人ならいいが、若い経営者がいちいち真に受けていたら悲劇である。
TEPの場合は、上記の通り、エンジェル投資家のバランスが取れていてその心配はなさそうだ。支援企業に興味を持ったエンジェルでチームを組み、そのリーダーも決めて、一貫性を持ったアドバイスができるように心がけているそうだ。
2016年07月22日
「われわれは地球を支配しなければならない」
国共内戦に勝利し、中国を統一した毛沢東が次に考えていたのは世界制覇だった。1950年の朝鮮戦争は毛沢東がソ連の武器技術を引き出すために仕掛けた戦争だった。アメリカとの直接戦争を避けていたスターリンに、「中国が代わりにやるから」と武器援助を引き出した。
その後も、「大躍進」による大飢饉の間、数千万人の自国民が飢え死にするのをしり目に、なけなしの食料をソ連に輸出して武器代金の支払いに充てた。この方針に反対した国家主席の劉少奇を毛沢東は忘れなかった。その後の文化大革命で劉少奇は「『毛沢東語録』を振り回す職員ら」に打ちすえられ、地面に倒され踏みつけられた。監禁されたまま苦悶の末に果てた。
さらに、ベトナム戦争も毛沢東が仕掛けた。これはベトナム戦争への中国の直接介入をちらつかせることで、当時中国がソ連の技術供与で進めていた原爆開発阻止をアメリカに思いとどまらせるためだった。「中国が支援するから」とホーチミンをけしかけ南ベトナムに侵攻させて、アメリカを戦争に引き込んだのだ。
恐るべき毛沢東の悪知恵。本書は480人にも上るインタビューとアメリカやロシアで情報公開された資料によって構成されている。共著の夫でイギリス人のHalliday氏はロシア語に堪能な歴史学者ということ。出版されて10年以上たつ今も、本書が中国で出版禁止になっているのはうなづける。
54:ソ連訪問中に毛沢東は考えを変え、アメリカと正面から対決する決意を固めた。中国を世界一流の軍事大国にするために必要な援助をスターリンから引き出す方法はこれしかない、と考えたからだ。中国がスターリンに代わってアメリカと戦い、それと引き換えにソ連が技術と装備を提供する。61:毛沢東には、自分がアメリカに負けるはずがない、という確信があった。中国には何百万人もの兵隊を使い捨てにできるという基本的な強みがあるからだ。ちょうど厄介払いしたいと思っている部隊もあった――朝鮮戦争は、国民党部隊の敗残兵を戦場に送って始末する格好の機会になるだろう。彼らは内戦末期に部隊ごとまとまって投降してきた国民党軍兵士で、毛沢東は意図的に彼らを朝鮮の戦場に送り込んだ。万が一国連軍が始末をつけてくれなかった場合に備えて、後方には特別の処刑部隊が待機して戦線から逃げもどってきた兵士たちを始末することになっていた。208:毛沢東の女漁りはますます人目を憚らぬものになっていた。中南海ではではダンスホールに新しくラウンジが併設され、ベッドが据え付けられた。毛沢東は一人または数人の女性をこの部屋に連れ込み、性の戯れや乱交に及んだ。229:国際社会における毛沢東の自己宣伝を後押ししたのは、ますます派手になった三点セットーー武器、金、食料ーーの大盤振る舞いだった。1960年1月21日、対外貿易部や外交部と同列の組織として対外経済連絡総局が新設され、対外援助の拡大を担当することになった。対外援助額は一気に増大した。毛沢東がこうした大盤振る舞いをした時期は、中国で世界史上最悪の飢饉が起きた時期と重なっている。1960年だけで、2200万人以上の中国人が餓死した。263:万一ワシントンが中国の核施設を攻撃した場合、中国軍はベトナムになだれこんで朝鮮戦争のときのように人海戦術でアメリカ軍を殲滅できる。こうした状況を作り出すために、1964年にはいって、毛沢東はインドシナにおける戦争を拡大するようにベトナムに強い圧力をかけはじめた。272:毛沢東の趣味は寝床で読書にふけることだった。しかし、毛沢東は中国人民には無知を望んだのである。指導部内で、毛沢東は、「わが国には『愚民政策』が必要だ」と発言している。364:当局は最も残酷に人を殺害する方法を人民に教えるために「殺人様板会」（殺人模範会）を開き、警察が殺害を監督指導するケースさえあった。残虐な殺し方が助長される中、自治区の各地で喫人（人肉食）がおこなわれた。最もよく知られているのは武宣県で、毛沢東の死後におこなわれた公式調査では犠牲者76人の氏名が明らかにされている。喫人は、まず毛沢東政権お定まりの行事である「批闘会」から始まった。犠牲者たちは批闘会の終了直後に殺害され（中略）、その場で料理して食べられた。426:「ニクソンは、ピンポン外交がスポーツ面を飛び出して一面に躍り出た展開に目をみはっていた」と、ある評論家が書いている。たったひとつの決定で、毛沢東は、1972年に大統領選挙を控えるニクソンにとって訪中を重要な政治イベントにしてしまったのである。
504:1975年にカンボジアを制圧したクメール・ルージュ政権の確立に、毛沢東は重要な役割を果たした。クメール・ルージュの指導者で数年間に25万人近いカンボジア国民を虐殺したポル・ポトは、毛沢東をそのまま投影したような人物だった。クメール・ルージュがカンボジアを制圧した直後、毛沢東はポル・ポトと直接会って、「きみは偉大なる勝利をおさめた。ただの一撃で階級を消滅させた」と、強制労働収容所国家の成立を祝福した。つまり、国民全員を奴隷化した快挙を祝福したのである。
2016年07月21日
惜福・分福・植福
明治文学はやはり読みにくい。意味は通じるのだが、慣れてないので時間が掛かる。面倒くさくなってやめてしまう。幸田露伴も教科書で名前だけ知っていて著者を読んだことがなかったが、現代語訳が出た。
「努力」をまず二種類に分けている。
・直接の努力：当面の努力で、一所懸命に頑張るときの努力。
・間接の努力：準備段階における努力。基礎であり、自分の源泉。
＊努力の結果が望んだものとならないのは、努力の方向が悪いか、関節の努力が足りていないから
＊「努力している」ということを忘れてしまい、「気がづいたら自分がやっていることが、いつの間にか努力になっている」という状態にする。
幸福を得る人は、「惜福」「分福」「植福」の工夫をしている。
・惜福：福を使い果たし、取り尽さないようにする。
・分福：自分が得たものを他人に分け与える。
・植福：自分の力や感情や知恵を持って、世の中に幸福をもたらすものや知識、情報などを与える。「福を植える」
2016年07月20日
LINEの経営
先日上場したLINEの社長を2007-2015/3の8年間務めた森川氏による「LINEの経営論」。経営理念も、ビジョンも、事業計画も要らない等、一般的な経営理論とは逆をいく。
しかし、これは変化の激しい、したがって未来予測が難しいインターネットビジネスでは当たり前でもある。以前紹介した、『戦略にこそ「戦略」が必要だ』における「アダプティブ戦略」領域である。予測不可能で市場に与える自社の影響力も限られている中では、市場環境変化に臨機応変に対応していくしかない。「LINEの経営」は典型的なアダプティブ戦略だ。これは未来を予測可能という前提でビジョンを掲げて事業計画に沿って経営していく従来のベンチャー企業とも違う。
アダプティブ戦略では、ビジョンも中長期計画も役に立たないため、これらを求める上場審査は難航しただろう。IPOを前に社長交代したのは、それも理由かもしれない。
はじめに＊会社にとっていちばん大切なことは「ヒット商品を作り続けること」（これが出来てはじめて、利益、社員の幸せ、ブランドなどが実現できる）そのために、＊ユーザーが本当に求めているものを提供し続けるそのために、＊ユーザーのニーズに応える情熱と能力をもつ社員だけを集め、その能力を最大限に発揮できる環境を提供する×あれも大事、これも大事○「何が本質であるか」を考え尽す→最も大切なことにすべての力を集中させる会社では、・人材、資金、時間などの限られたリソースを分散させない・「ユーザーのニーズに応える」という「本質」に全力を集中させるLINEの経営128:「経営理念」は文章にしない（形骸化を避ける）132:「ビジョン」は要らない（未来予測より、目の前のことに集中する）146:事業計画は要らない（インターネットの世界は変化が速い）
2016年07月19日
プロの残業術
筆者（本名：荻原秀介）は1965年生まれで、慶応義塾大学卒業。三井銀行を経て、ラスベガスで対米進出コンサルタント会社Nevada Japan Conferenceを設立とある。ビジネスマンなのになぜ別名を名乗っているのかは不明（しかも、自社HPでそれを明かしているのに！）。
「残業＝悪」の見方に真っ向から挑んでいるのが面白い。アメリカでは、大卒で入ったときからexempt（免除）と呼ばれ、私は何の事か最初分からなかったのだが、これは「 労働基準法から免除」される人のことだと教わった。日本風にいえば、大卒で入れば全員が最初から管理職扱いで「残業代はつかない」ということである。
これに対して、残業の付く人たちはnon-exemptと呼ばれ、週休で働く現場の人たちである。こちらは時間給なので、働いただけ給与が増える。
それで、残業代が付かないからのんびり働いているのかというと、上を目指している人はよく働く。日本のように終身雇用ではないから、まずはプロとしてスキルを身につけなければ生き残れない。転職するにも元の職場から推薦状が必要だ。管理職から経営陣と登っていけば、日本以上に給与も上がるので、飴も鞭も日本よりメリハリがある。
本blogでも何度か書いたが、まだ一人前になっていない新卒が残業を避けていたら、結局は一人前になるのが遅れ後でつらい目に合う。最初は少しの違いと思っているものが、5年経てば1.5xの違いとなり、10年経てば2xとなる。あとは加速度がついて差が開いてしまう。
若い人は、いい加減なことを言うマスコミに躍らせられない方がいい。
・グローバル経済の中、人材競争を勝ち抜くには、自身をスキルアップさせる戦略性の高い残業、私的残業が欠かせない
・「労務時間を短くすればストレスがなくなる」と言われるが、実際には、ストレスの原因の多くは職場の人間関係や過剰なノルマである
・「ノー残業論」は、日々の仕事量が一定であるかのような前提に立つ。そして、ライバルの存在が想定されていない。現実のビジネスの世界では、あなたが今夜やらない仕事はライバル企業がやっている。
・考えるプロセスが重要になる仕事の場合、考える時間を短縮すると、仕事の質が低下する
・本当の熟考は個室環境がないとできない。大部屋の日本企業では、熟考が必要な時は、部下が帰った後か、朝残業でしかできない。
2016年07月18日
文化大革命
下巻で扱われるのは11年にも及んだ「文化大革命」による狂気と混乱である。共産党の高級幹部だった両親は文化大革命による権力闘争に巻き込まれ、失脚する。正式な裁判のないまま取り調べを受け、同僚や部下から「階級敵人」のレッテルを張られ、暴行を受ける。拷問を受けた父親は精神に異常をきたしてしまう。
驚くべきは、こうした暴行や私刑、もちろん殺人も、当時の中国にあっても違法行為であるのは間違いないが、毛沢東の政治的威光を背景に、誰も裁かれなかったということだ。一言でいえば無法地帯。当初、ソ連的「修正主義」や「走資派」が狙われたが、文化大革命後半では、「造反派」同士の内ゲバになっていく。
文化大革命による犠牲者数は7000万人と言われ、「大躍進」による飢饉の犠牲者3-4000万人を合わせると、毛沢東の共産中国による死者は1億人を超える。これはヒットラー、スターリンを超える20世紀最大の虐殺者だ。ヒットラーは戦後ドイツで完全否定され、スターリンもロシアでほぼ否定されている。しかし、毛沢東は共産中国の建国者として現在も天安門広場に巨大肖像が掲げられ、見下ろしている。こんな不思議なことはない
なぜそうなのか、と言えば、長い中国の歴史の中で、1億人の虐殺者といえども、「異常ではない」ということなのだろう。毛沢東の愛読書は『資治通鑑』であったらしい。本書にも出てくるが、毛沢東はこの1万ページ全294巻にも及ぶ大著を17回通読したと言われる。これを読めば、文化大革命で繰り広げられた熾烈な権力闘争、徹底的な粛清、残虐な拷問も「いつものこと」と思えてくる。それでも、1億人は桁違いなのだが。
16:皇帝としての毛沢東は、つねに共産主義者としての毛沢東よりも上位にあったのだ。たとえ自分に全面的な忠誠を誓う人間をゆえなく傷つけることになったとしても、毛は平気だった。後漢末期の武将曹操の「疑わしきは討つ。さすれば、討たれる心配はない」という至言を座右の銘に挙げてはばからなかった毛であれば、不思議はない。曹操は、自分の命を救ってくれた老夫婦を裏切り者と思いこんで殺してしまい、あとで過ちに気づいてこう言ったと伝えられている。28:林彪の呼びかけにこたえて中国各地で紅衛兵が街にとび出し、破壊と無知と狂信の限りをつくした。民家に押し入って家じゅうをひっくり返し、骨董品を打ちこわし、書画を引き裂いた。焚火を燃やして、本を投げこんだ。またたく間に、各家庭で大切に所蔵されていた文化財の大半が破壊され焼失した。作家や芸術家のなかには、残虐に打ちすえられ辱められたうえに目の前で作品を焼き捨てられて、絶望のあまりみずから命を絶った人たちも多かった。39:古い文化を代表するものはすべて打ちこわせという林彪の号令に呼応して、生徒は片っぱしから文物をたたきこわしはじめた。二千年以上の歴史を持つ第四中学には古いものが山ほどあり、格好の攻撃目標となった。瓦ぶきの屋根と廂の彫物がみごとだった正門は、打ちこわされて瓦礫になった。卓球室として使われていた孔子廟の優美な瑠璃瓦の屋根も、同じ運命をたどった。廟の正面にあった大きな青銅の香炉は引き倒され、男子生徒のなかにはそれに小便をひっかけるものもいた。96:私たちが住んでいたアパートのすぐ近く、「省委大院」の塀の外側の樹木や電柱に「八・二六」と「紅成」がそれぞれ拡張期をくくりつけ、昼となく夜となく相手を非難する放送を大音量で流した。ある晩の放送では、「八・二六」が数百人の支持勢力を終結して「紅成」の基地となっていた工場を襲撃した、と伝えていた。「八・二六」は工場に立てこもっていた「紅成」派の労働者を捕え、「噴泉」（頭蓋骨を割って噴水のように血しぶきを飛ばす）や「風景画」（顔を刃物で刻んで模様をつける）などの拷問にかけた。146:共産中国建設のために地下活動員となって働いた勇敢な人々が何十万人も「裏切り者のスパイ」呼ばわりされ、隔離審査に付されたり、批闘大会で殴るけるの暴行を受けたり、拷問にかけられたりした。のちの公式統計によれば、四川省に隣接する雲南省では14000人以上の死者が出ている。北京がある河北省では、84000人が拷問され数千人が死亡した。198:こうした迫害は、文化大革命のあいだ典型的に使われた粛清方法であった。死刑執行命令に署名しなくても、毛沢東がただ意向を示しさえすれば、標的を念入りにいたぶって死に至らしめる役目を買って出る人間がいくらでもいた。方法は、精神的に圧力をかける場合もあれば、肉体的に虐待する場合もあった。治療を受けさせないという方法もあったし、さらには命を縮める薬品を使うこともあった。237:男性か女性かを別にすれば、一日働いてもらえる「工分」にはさほど個人差がないから、一年間でどれだけ「工分」がたまるかは、どのくらい一所懸命働くかではなく、何日働いたかで決まる。これは、農作業の効率をいちじるしく落とした。それだけでなく、村人どうしのいさかいの原因にもなった。毎日毎日、農民たちは他人より余計に働いて馬鹿をみることのないよう、他人がどれくらい働いているかばかり気にしていた。どうせ同じ「工分」しかもらえないなら自分だけ余計に働くことはない、というわけだ。242:多くの農民が、自分の名前も書けないようなありさまだった。共産党政府が成立当初にかかげていた文盲撲滅の方針は、うちつづく魔女狩りのあいだにどこかへ押しやられてしまった。この村にも、かつては人民公社が金を出して作った小学校があった。しかし文化大革命が始まると、子供たちは心ゆくまで教師に乱暴した。教師の頭に思い鋳鉄製の中華鍋をいくつものせ、顔をすすで真っ黒に塗って、村中をひきまわした。一度など、あやうく頭蓋骨を打ち砕くようなことまでした。それ以来、だれも教師を引き受けようとしなくなった。325:食べ物も、いちばん上等なものは外国人向けだった。中国をおとずれたヘンリー・キッシンジャーが連日連夜フルコースのおもてなしを受けて腹が出てきたといったと、新聞各紙が誇らしげに報道した。「天府之國」とうたわれた四川省でさえ一般人民の肉の配給が一月わずか200グラムだった時期の話、中国北部から飢饉をのがれて来た農民が成都の街路にあふれかえって物乞いをしていた時期の話である。340:揚子江を下った先々で、文化大革命の残した醜い傷あとを見た。廟宇はたたきこわされ、彫像は引き倒され、古い町並みは見るかげもなくなっていた。これが古代に高度の文明を誇った国の姿だとは、とても思えなかった。だが、中国が失ったものは、もっと根深い。中国人は美しいものをすべてたたきこわしてしまっただけでなく、美しいものを愛でる心も、美しいものを作る技術も失ってしまったのである。
359:毛沢東の思想は、あるいは人格の延長だったのかもしれない。私の見るところ、毛沢東は生来争いを好む性格で、しかも争いを大きくあおる才能にたけていた。嫉妬や怨恨といった人間の醜悪な本性をじつにたくみに把握し、自分の目的に合わせて利用する術を心得ていた。毛沢東は、人民が互いに憎みあうようにしむけることによって国を統治した。ほかの独裁政権下では専門の弾圧組織がやるようなことを、憎しみあう人民にやらせた。憎しみという感情をうまくあやつって、人民そのものを独裁の究極的な武器に仕立てたのである。
2016年07月17日
中国の3人の娘
1991年に発表された本作は世界で翻訳され、1000万部を超える大ベストセラーとなった。日本語訳が出たのは1993年で日本でも大ヒットした。私はイギリス本国で発売されたとき（筆者はイギリスに留学し、イギリスで執筆）LBS卒業の年で、卒業試験の準備と就職活動、その後のあわただしい帰国で読む機会を逃した。2年後に日本語版が出た時は、米国駐在中でこちらも読む気機会がないまま今日まで来てしまった。
圧巻。イギリスで「20世紀ノンフィクションの最高傑作」と評されているのもうなづける。中国伝統の「纏足」を施し、将軍の妾となることで一家を繁栄に導いた祖母。国民党の腐敗に嫌気がさし、共産党を選んだ母。母は共産党で知り合った高級幹部と結婚するが、父は仕事第一で家庭を顧みない。
背景には、中国が歩んだ激動の20世紀がある。その間に、中国は清朝の封建時代から、辛亥革命、日本による満州国支配、国共内戦、共産党による中華人民共和国設立と目まぐるしく変わった。PRC設立によっても変わらなかったのは、相変わらずの権力闘争と、それに翻弄される庶民の姿だ。
上巻が扱うのは、祖母の生まれた満州での暮らしから、毛沢東の誤った政策で4000万人が餓死したと言われる大飢饉、それがやっと終わって時代が安定したと思われた1960年代初頭まで。共産党の高級幹部となり、恵まれた生活をしながらも、「いつ何時誰から理由もなく告発される」恐怖の中で暮らす両親と、毛沢東思想に洗脳されていく筆者。毛沢東が文化大革命で復権を図るのはこの後だ。
19:何といっても、祖母の最大の強みは纏足した小さな足であった。（中略）中国では昔から、「春風にそよぐ柔らかな柳のような」歩き方が美しいとされてきた。纏足した女性がおぼつかない足取りで歩く姿は、男性をエロチックな気分にさせるという。
49:祖母は、意趣返しに明け暮れる妾の世界など、もうたくさんだった。やるか、やられるか。妾どうしの争いには、ほどほどに収めるということがない。祖母が望んでいたのは、だれにも邪魔されず心しずかに娘を育てたい、ということだけだった。
94:日本の降伏から二、三日たった日の朝、夏家のとなりの日本人一家が死んでいるのが発見された。服毒自殺をしたという噂であった。錦州のいたるところで、日本人が自殺したり暴行されたりしていた。日本人の家は、例外なく略奪された。そこらの貧しい中国人が、ある日突然高価な品物をたくさん売り歩くようになる。
96:ロシア兵は工場に残っていた物資を分配するだけでなく、工場そのものを解体しはじめた。錦州に二つあった製油施設も、解体してソ連に持ち帰ってしまった。ロシア兵は賠償金のかわりだと言ったが、中国人から見れば産業に大打撃を与える略奪行為にほかならない。
101:国民党の将校たちが先を争って妾を囲ったことも、母の嫌悪をさそった。1946年初めごろには、錦州のあちこちに国民党の部隊が駐留していた。母が通っていた学校は錦州で唯一の女学校だったので、国民党の将校や高官が群れをなして妾さがしにやって来た。
121:当時の国民党組織では、特務のポストさえも、いちばん高い値段をつけた者が「落札」するようなありさまだった。軍隊に強制徴用されるのを避けるため、あるいはチンピラの脅しから逃れるため、さらには他人から金をしぼりあげるためなどいろいろな目的で、人々は金を積んで地位や肩書を買った。
129:満州北部を占領した共産党は、しばしば過酷な政策を打ち出した。地主の多くが処刑され、町では零細な工場主や商店主まで糾弾され財産を没収された。
244:共産党が実権を握って間もないころから、すでに腐敗の兆候は見えはじめていた。（中略）国の名と国の金において放蕩をむさぼり権力を誇示したがる役人の性癖は、ほとんど病気ともいうべき中国の悪しき伝統だ。
278:国民党時代の最後の痕跡まで消し去ろうとする運動は、家庭的背景や血縁関係を前面に押し出す結果となった。中国には、ひとり罪人を出すと老若男女を問わず一族全員が処刑される、という歴史があった。（中略）毛沢東がつぎからつぎへと気に入らない人間の追放運動を打ち出すごとに、犠牲者の数は雪だるま式に増えた。しかも、ひとりが失脚するたびに、家族をはじめとする周囲の人々が巻き込まれていった。
295:1957年の反右派闘争は、沈黙だけでなく、もっと深刻な打撃を社会に与えた。告発の「割り当て」があり、告発で私怨を晴らそうとする人間がいるかぎり、いつ何時理由もなしに地獄に落とされるかわからない、という不安だ。
320:彼らあちこちで幼児をさらってきて殺し、その肉をウサギの肉と偽って法外な値段で売りさばいていたのだ。犯人夫婦は処刑され事件は口止めされたが、当時こうした犯罪が横行していたことは、だれもが知っていた。（「大躍進」による大飢饉）
378:「毛主席の偉大な時代に生きられるなんて、私はなんと幸せなんだろう。信じられないような幸福だわ」。私は心の中でそうくりかえしていた。「毛主席のいない世界で、いつの日か毛主席の姿を仰ぎ見る希望さえ持たずに生きていかなければならない資本主義世界の子供たちは、なんと気の毒なことだろう」。不幸な資本主義世界の子供たちのために何かしてあげたい、あの子供たちを苦難の人生から救ってあげたい、と思った。
2016年07月16日
小学校の教科書で学ぶ政治の基礎知識
子どもたちがもっと小さかったとき、小学校や中学校の教科書をたまに見るととてもよくできている。昔も悪くなかったと思うが、今では全ページカラー化され、写真も豊富。一言でいえば、分かり易い。
著者は「小学校6年生の社会科の内容を消化すれば、ニュースのほとんどを理解できる」という。その通りだろう。断片的情報はマスコミやネットからどんどん入ってくるが、政治の構造が分かっていなければ、そこから有用な見通しを導き出すことは不可能だ。
問題は、日本国民全員が理解しているはずの義務教育内容が、中学レベルどころか小学校レベルでも習得されずに児童生徒が毎年自動的に「卒業」していっていることだろう。民間企業が継続的に不良品を出荷すれば、たちまち倒産してしまうが、潰れないのが学校のすごいところである。
文部科学省は毎年400億円余りを使って、小中学生約1000万人に教科書を無償配布している。一人当たり4000円ということになる。内容を考えると、国内で売られている中で最も安い本だろうと思う。
はじめに：＊小学校6年生の社会科の内容を消化すれば、ニュースのほとんどを理解できるｘ断片的情報 ＋ 構造 ＝ 見通し日本は「学歴社会」にすらなっていない「入学歴社会」・早大政経3年生＋慶応大学院生に歴史年号問題を解かせたところ、正解率5%！日本社会を覆う「反知性主義」・・・実証性と客観性を軽視もしくは無視202:官僚は「収奪する階級」共同体の関係の中で、奴隷を生かしておくことから国家は始まるそれが形を変えたのが税金税金の本質は官僚が食べていくため223:男子普通選挙に大杉栄などのアナーキストたちは反対した⇔制限選挙（納税している人に選挙権がある）＊市民社会では、平等なところからスタートして競争→有産階級には能力があって、教養があって、責任感がある
2016年07月15日
未来の兵器
異例なほど長くこの本の紹介が続いた。それでも、書かれた内容のほんの一部である。これまで嫌になるほど兵器の発達を見てきたが、止まるところはない様だ。
本書の最後で紹介されているのが、「未来の兵器」。実現可能性が高いのが、「電磁波爆弾（e爆弾あるいはEMP）」だという。人を殺傷させずに電子機器を強力な電磁パルスで破壊する。製作に必要なのは、大型の銅線コイルと爆発物だけなので、テロリストでも簡単に作れそうだ。
電磁パルスによる攻撃から電子機器を守るには、電磁シールドしかないが、全ての電子機器を物理的にシールドするのは高価であり、無理だ。
調べてみると、小池百合子代議士が4年前に国会質問していた。
2016年07月14日
潜水艦
潜水艦が初めて実戦に用いられたのは、「最初の近代戦」と言われた南北戦争である。潜水艦という乗り物が登場したのはそれよりはるか前で、1776年アメリカで一人乗りの手動式潜水艦が建造された。
南軍は海上で北軍にとても敵わないと見るや、潜水艦を使うことにした。1862年南軍はDavidと名付けた数隻の潜水艦の第一号を製造したという。Davidは上記期間を動力としていたため煙突を水上に出さなければならず、潜行可能深度は極めて限られていた。主な武器は潜水艦の舳に装着した外装水雷だった。
翌年には、はるかに大型の潜水艦H.L.Hunleyを建造している。全長約12m、直径約1.2mで、8人の乗組員が手でクランクを回してプロペラを回転させた。1864年H.L.Hunleyはサウスカロライナ州沖で北軍のスループ型帆船を沈め、自身も海の藻屑と消えた。H.L.Hunleyは世界で初めて敵艦を撃沈した潜水艦となった。
潜水艦隊が初めて大規模に活躍したのは、第一次世界大戦におけるドイツ海軍のUボートである。1914年9月22日にはU-9によって1時間のうちにイギリスの巡洋艦3隻が撃沈した。1400人が溺死し、イギリス海軍にとってそれまでの300年間で最悪の惨事となった。Uボートによる魚雷攻撃に対して、誰もまだ対処法を知らなかった。
1915年ドイツはイギリスとアイルランド周辺の海域を交戦地帯に指定し、中立国も含めたすべての国の商船も警告なしに攻撃すると宣言した。これに巻き込まれたのがアメリカの豪華客船ルシタニア号で、タイタニック号に匹敵する1198人の死者を出した。アメリカはドイツに激しく抗議し、ドイツ軍はその後1.5年近く無差別攻撃を停止した。
この間に、イギリスは水中聴音器と爆雷を開発し、1917年にドイツが無差別攻撃を再開したときには準備が出来ていた。イギリスは「護送船団方式」を導入し、爆雷を装備した駆逐艦に船団を守らせた。また、北海に機雷を敷設しUボートの活動を完全に封じ込めたのだ。
第二次世界大戦で最も活躍したのは米軍の潜水艦だ。潜水艦の戦力はアメリカ海軍の2%を占めるに過ぎなかったが、日本海軍の航空母艦8、戦艦1、巡洋艦11を撃沈し、それは日本海軍の損失の3割に当たった。商船に至っては6割が潜水艦に撃沈されており、シーレーンを絶たれた日本は間もなく深刻な資源不足に陥った。
ドイツのUボートが戦果を挙げられずに、アメリカの潜水艦が好き放題出来たのは、イギリスには高性能レーダーとソナーがあり、日本にはなかったから。さらにイギリスはハフタグ（短波方向探知機）で、三角測量によって無線の発信源を特定した。
第二次世界大戦で最も活躍したのは米軍の潜水艦だ。潜水艦の戦力はアメリカ海軍の2%を占めるに過ぎなかったが、日本海軍の航空母艦8、戦艦1、巡洋艦11を撃沈し、それは日本海軍の損失の3割に当たった。商船に至っては6割が潜水艦に撃沈されており、シーレーンを絶たれた日本は間もなく深刻な資源不足に陥った。
ドイツのUボートが戦果を挙げられずに、アメリカの潜水艦が好き放題出来たのは、イギリスには高性能レーダーとソナーがあり、日本にはなかったから。さらにイギリスはハフタグ（短波方向探知機）で、三角測量によって無線の発信源を特定した。
2016年07月13日
自分の人生を「成功」に導く
『イノベーションのジレンマ』で有名なクリステンセン教授の『自分の人生を「成功」に導く』という論文が選ばれている。その中に、「『例外』が人生を混迷に陥れる」といいう項があり、ここでのエピソードが極めてモルモン教的。
クリステンセン教授はモルモン教系の大学であるブリガムヤング大学（ユタ州）を首席で卒業。世界最古の国際的フェローシップとして有名なローズ奨学生に選ばれ、オックスフォード大学大学院に留学している。この時のアメリカ人同級生は32人。うち二人は後に服役したそうだ。エンロン事件のジェフ・スキリングCEOもHBSの同級生だったそうだ。皆超優秀だったが、どこかで道を間違えた。
教授はオックスフォード大学でバスケットボール部に所属し、毎日必死で練習し、大学選手権の決勝戦に進出できた。ところが、その試合は日曜日に開かれることが分かった。最も注目される決勝戦だから多くの人が集まれる日曜日に、という判断だったのかもしれない。
しかし、クリステンセン教授は16歳の時に、日曜日には球技をしないと神に誓っていた。監督にそのことを話すと、信じられないといった様子だったそうだ。それはそうだろう。今のヨーロッパは日本同様、宗教の影響力はほとんどなくなっている。チーム全員が「今回だけ、そのルールを破れないか」と言ったそうだ。しかし、教授は「誓いを破るべきでない」と感じ、決勝戦に出なかった。
教授は、「『この状況なら一度くらい許されるだろう』という誘惑に打ち勝ったことが、私の人生で最も重要な判断の一つであった」と振り返っている。高い才能に加えて、これだけの規律があれば、確かに何をやっても成功しそうだ。実際、BCGのコンサルタントを経験したのち、運輸省長官、MITの教授と設立したベンチャー企業の社長を経験した後、HBSの教員になったのは40歳になってからだ。
「日曜日に球技をしない」と聞いて思い出したのは、映画「炎のランナー」に出てくるスコットランドの宣教師エリック。1924年のパリオリンピックの100m英国代表に選ばれたエリックはフランスへの船上で100m予選が日曜日に開かれることを知る。英国選手団長を通じて掛け合うが日程変更は認められない。
エリックは祖国と国王への忠誠のため出場するよう、皇太子や貴族など英国オリンピック委員会の役員から説得されるが、神への信仰はそれに勝るとして拒否するのだ。この時は、400m出場予定だった貴族の選手仲間がその出場権をエリックに譲り、100mには出ないが400mに出場して世界新記録で優勝する（史実）。
�，匹Δ靴燭藕�せなキャリアをしっかりと歩めるか人生で大切なのは、お金を得ることや契約をまとめることではない。学び、成長し、責任を担い、チームの成功に貢献し、成果を認められる仕事から、深い喜びは生まれる。�△匹Δ靴燭蕾搬欧箸隆愀犬鬚罎襪�ない幸福の源にできるか他人に勝ろうとする人は、自分のキャリアに時間とエネルギーを投資しがち。だが、幸福になるためには、家族との愛に満ちた関係を構築することに投資すべき。��どうすれば誠実な人生を送れるか一度だけの誘惑に負ければ、その後の人生で繰り返し同じことをして、最後には後悔する。
2016年07月12日
「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門
実績に基づくブランドが重視され、なかなか新興企業が入っていけないのが、金融コンサルティングの世界。そんな業界で2004年に設立されて10年で企業価値評価でトップクラスになったのがプルータス・コンサルティング。M&Aアドバイザリーランキングにも独立系機関として最高位にランクされている。同社の創業社長による最新刊。
「あとがき」によれば、30代をJPMやGSでがむしゃらに働いた野口真人氏は、40代前半でアーリーリタイアメント。不動産所得で余生
を楽しく生きて行こうと考えていたという。ところが、憧れていた引退生活はあまりにも退屈で、起業を決意したということ。「入門」というだけあって、これまでファイナンス理論に触れたことのない人にも分かり易く書かれている。例えば、オプション理論と聞くと多くの人は敬遠しそうだが、実際は、あらゆる人が人生の様々な局面でオプション（的なもの）を利用していることが分かる。
学生や金融が苦手な社会人にオススメ。
57:アミューズの株価が、2015年9月末に大暴落した。一時は前日比500円（9.4％）安の4810円まで下落し、終値は8.3%安の4870円を記録。発行済み株式数が約93万株であることを考えると、同社の時価総額は1日で40億円以上も下落したことになる。もちろん、同社のバランスシート上で資産価値が下がったわけではない。そうではなく、バランスシートに表せない無形資産の領域で何かが起こったのである。（アミューズ所属の福山雅治さんの結婚報道発表）74:「起業した会社を上場させる」ということは、その会社が将来に稼ぐ利益（キャッシュフロー）を前倒しで手にすることを意味する。これがお金持ちになるための早道だ。年間1億円を稼げる会社をつくっても、30億円の利益を得るには30年かかる。だが、上場させれば瞬間に30億円を手にすることができる。株式上場とは、将来の利益を現在に連れてくるためのタイムマシンなのである。265:オプション取引と同時に現物株式を売買することで、株価が上がっても下がっても損益がブレない状態＝リスク中立を実現できる。このリスク中立状態を実現するために、現物株式を売買することをデルタヘッジと呼ぶ。
2016年07月11日
重要文化財「豊稔池堰堤」
昨日FB投稿した「豊稔池」への反響が予想外に大きかったので紹介。なにしろ、重要文化財なので、誰でも知っていて、香川県人なら一度は行ったことがあると思っていたが、どうやらそうではないらしい。昨日は日曜日で、ゆめタウンも綾川イオンも賑わっていたが、重要文化財「豊稔池堰堤」は我々以外は数名だった。
豊稔池堰堤は県の水事業として、大正15年に起工し昭和4年に竣工した観音寺市にあるダム。中央部に5個のアーチとそれを支える6個の扶壁を持つ「マルチプルアーチ式」のダムは、中世ヨーロッパの古城を思わせ、風格がある。堤長145.5m 堤高30.4m 貯水量159万トン
建築当初は設計の簡単な重力式ダムとして計画されたらしいが、準備のため岩盤を削ってみたところ、弱い部分があるとのことで、途中でマルチプルアーチ式に変更された。マルチプルアーチ式としては島根県の神戸堤が昭和3年竣工で最古だが、これは現存しないため、現存するマルチプルアーチ式では日本最古となる。
特筆すべきは、着工から3年8カ月にわたる建造作業のすべてを地元農家の出役で行い、しかも無事故で紛争もなく竣工に至ったことだろう。香川は瀬戸内海式気候で雨が少なく、度々干ばつに見舞われていた。水の確保は地域農民にとっての悲願であった。それが、長年にわたる工事でも規律を保ち、結果、無事故で竣工できた理由なのだろう。
2016年07月10日
地域と人間のつながりを取り戻す
フラムさんは香川大学大学院の客員教授もされていて、毎年大学院で公開講座を開いている。その際に、私が「お世話係」を担当したこともあり、授業は何度か見せていただいた。
本書の話の中心となっている越後妻有での「大地の芸術祭」は2000年から3年ごとに開かれている。それを見て感動したベネッセの福武オーナーが福武財団が長年運営している直島を中心に「瀬戸内海でも」と始まったのが、瀬戸内国際芸術祭（セトゲイ）だ。第一回目が2010年に開かれ、今年は3回目が開かれている（春夏秋の三シーズン）。
大地の芸術祭でも、「集落の男性とうちのスタッフが結婚した」という話が出てくるが、セトゲイでも「直島の中年漁師と都市部から見学に来ていた若い女性が結婚した」そうだ。どちらも来場者数は順調に増えていて経済効果も上がっているが、地域が見直された結果の、こうした「成果」も嬉しい。
はじめに：「描く対象があり、その描き方が評価される」という芸術系大学のカリキュラムを拒否し、明治以来の国の権威をバックにした美術界のあり方を批判して、私は学校を出ていきました。美術は人と異なったことをして褒められることはあっても叱られることはありません。美術は一人ひとりが異なった人間の、異なった表現だと考えられているからです。それおれ違う一人ひとりが一緒に生き、何かをやっていくことは大変手間のかかることです。だから尊い。36:奇跡的な越後妻有の風景棚田：440年前、信長に追われた一向宗門徒が逃れてきて開墾62:集落の男性とうちのスタッフが結婚96:自分の土地に現代美術のアーティストという得体のしれない人が来て、妄想の種を植え（中略）そのうえ、それを見に来る有象無象の人たち。110:2000年 大地の芸術祭� 〕莨貅埒堯�162,800人2012 ��488,848人
176:公金の使い方にしても、他にかけるお金よりはずっとマシ。美術は出発時点では個人的なものだし、少なくとも直接的な役に立たないし、その分害もない。
2016年07月09日
手仕事の国
昨年、講談社から新装で出版されたのを機に読んでみる。これも、「教科書だけで知っていたが読んだことがなかった」本の一つ。
筆者は言わずと知れた「民藝」運動の中心人物。失われつつある日本の手仕事を憂い、大正末期から昭和にかけて日本各地で手仕事の「用の美」を調査・収集した。本書は昭和18年に書かれたものだが、戦争の影響で実際に出版されたのは昭和23年であった。
日本各地の素晴らしい手仕事が紹介されている。自然と香川県の項に目が向かう。丸亀の団扇に「手がどんな奇蹟を行うかが目前に見られます」と最大限の賛辞を述べる一方、高松の漆器については、「態々削り目を出すのですから、どこか作りものに落ちて、自然さを持ちません。それに新しい思いつきで歴史も浅い」とそっけない。
高松で褒めているのは、凧。「模様が他の国にないものが多い」という。「蝉だとか牡丹だとか中でも不思議なのは猩々で杯を手に持つ図柄」らしい。
丸亀の手作り団扇も今や「伝統工芸」として細々と作られているに過ぎない。高松の凧に至っては、見たことがない。ビニールとプラスチック製の洋凧に押されて、和凧そのものが壊滅状態と言っていいだろう。
小学校のころ、冬の稲刈り後の田んぼでの遊びと言えば、凧揚げだった。考えてみれば、うちの子供達は凧揚げをしたことがない。
30:百姓をして暮らす人の作ったものの方に、ずっと正直な品が多い正直な品物の多い地方を見ますと、概して風習に信心深いところ31:遠く深い歴史を持つ国こそ、倒れない力に樹つことが出来る186:産額で一番大きなものの一つは団扇丸亀市 300万円 工人3000人 家内工業187:高松市 漆塗 刀の削り跡を残したやり方で一時は随分盛んな売行き新しい思い付きで歴史も浅い188:近年各地の凧は絵が粗末になってきましたが、高松のばかりは少しも格が落ちておりません。239:無名の職人だからといって軽んじてはならない彼ら自身は小さくとも、伝統は大きな力241:実用と美
245:健康の美
2016年07月08日
不愉快な現実
昨日は『タックス・ヘイブン』の筆者だったが、こちらは小説『タックス・ヘイヴン』の筆者。ノンフィクションの『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』では、小金持ちの資産運用を伝授してベストセラーとなった。
本書は、「世界は本来、残酷で理不尽なもの」という前書きから始まる。アメリカでの調査から導き出された「美人とブスの経済格差は3600万円」など、「残酷すぎる真実」がこれでもかと突きつけられる。
日本は甘い社会になっていて、自助努力より「かわいそう」が優先されがち。現実に目をつぶって、きれいごとで済まそうとする傾向が目に付く。
正しいやり方は、現実から目を背けず、「世界は本来、残酷で理不尽なもの」という前提から出発することだと思う。上の例でも、「美人とブスの経済格差は3600万円」だからといって絶望する必要はない。これは推定生涯賃金の差で、20代女性の平均年収が300万円とすると、美人は年間に24万円余計に稼ぎ、不美人は12万円平均より少ないというだけに過ぎない。この調査は「他の条件が同じで容姿だけの違い」がもたらす年収差を測ったものだから、能力差で幾らでも挽回できる範囲だ。
その他、様々なマスメディアには載りにくい話があるので、中々面白い。ただ、根拠がうすい話も多いので注意しないといけない。
＊世界は本来、残酷で理不尽なもの69:日本社会に潜む「最貧困層」都市部に暮らす20代女性「最貧困層女子」多くは、精神障害＋発達障害＋知的障害136:美人とブスの生涯経済格差は3600万円外見以外がすべて同じ男女を集めて収入差を比較美人 ＋8%ブス -4%162:男女別の教育の方がよいモントリオールの低所得地域にある共学公立校で男女別クラスに分けたら、・常習欠席 1/3・標準テスト +15%・大学進学率 倍近く・10代での妊娠 年15人→2人＊共学では、男女は、それぞれが属するグループの地位によって付合う相手を選ぶ→社会圧力からセックス172:避妊法の普及が望ましい妊娠を激増させる��1900年19歳の未婚女性のうち性体験のある女性はわずか6%だったが、１世紀後には75%��避妊技術は過去半世紀に向上の一途をたどったが、未婚女性による出産数は同期間に5%→41%＊一部の女の子がカジュアルセックスを楽しむようになると、それにひきずられて性市場における女の子のセックス価値も下落。このようにして、保守的で道徳的な社会でも、多くの女の子が婚前交渉に応じざるを得なくなる。195:賢いサイコパス・養子に出されたり、孤児院などの施設で育てられ、親密な社会関係を形成する機会を逃した・心拍数の低さ愚かなサイコパス（逮捕され収監）：発汗のない低い値（良心を学習する能力がない）
2016年07月07日
消えていく税金
話題になった『タックス・ヘイブン』の続編。惜しいことに、この本が出た1年後の昨年末、癌で急逝してしまった。元大蔵官僚の弁護士で、本分野の第一人者であっただけに残念だ。
志賀氏があげる対策はひどく基礎的なもの。正直、こんなことさえ行われてなかったのかと衝撃を受けた。結局、「政官業のトライアングル」は税金を使いたいタックス・イーターの集まりで、そうした対策に興味を持たないということなのだろう。
それを実施させるには、有権者がそうした投票行動をとり、制度導入を図らなければならない。有権者はファーストクラスとか五つ星ホテルとか分かり易い話にはすぐ反応するが、実はそんなことは枝葉末節にしか過ぎない。数百億円、数千億円という税金が無駄に使われているのに、そちらは何十年も変わってないのだ。
・日本の財政はほとんど破綻�｜映�度の公債依存度43%（H26予算 96兆円中税収は50兆円）�∪�府長期債務残高の対GDP比 202%（同1010兆円）・高度経済成長期の終わりから慢性的な財政金融政策→依存体質救われるのはオールドエコノミーで、淘汰され退場すべきはずの産業や企業がゾンビとなって生き延び、ニューエコノミーの足を引っ張る・タックス・イーター＝我利我欲の亡者国民の税金に群がり私腹を肥やすシロアリ政官業の鉄のトライアングル「規制に利益あり」・農水省、建設省（国土交通省）、厚生省（厚生労働省）が特に強力な権力機構社会保障予算毎年1兆円増（制度全体で毎年3-4兆円増）・対策��会計検査院の権限強化現状は会計監査に過ぎない→業務監査が必要��国会による監視機能の強化国会の議決に法律的効果がない！→ひとたび予算が成立してしまうと、誰も興味を持たない
2016年07月06日
強みを見出し、活かす
人の本当の「強み」になるのは、「天性の才能だ」という話。
「天性」といっても、実際には、主に3-15歳の間にどういうシナプス回路の使い方をしたかで決まってくるという。ニューロン連結は生まれてから最初の3年間で完成し、3歳の時点では誰でも1000億個のニューロンが互いに連結している。だが、回路は使われないと壊れるのだ。
つまり、人は誰しも同等の可能性を持って生まれてくるが、どんな能力が「残るか」は3-15歳の間のシナプス回路の使い方次第なのだ。その間に、親から譲り受けた遺伝的特性と幼児期の体験に基づき、遮断すべき回路と、流れが良い回路とが選別される。
ちょうどこの時期は就学して義務教育を終えるまでの時期と重なる。いかに教育が大切か。幼児教育から義務教育に至るまで、教師人材の確保、育成、あり方がもっと議論されていい。
強み＝常に完璧に近い成果を生み出す能力・弱点の克服＜強みを発見し、活用する�〆庸修函峽亳海砲茲辰匿箸砲弔い診塾蓮廚魘菠未垢�才能は天性のもの�∈庸修鯑団蠅垢�何かの業務を行うにあたり、いかに早くコツをつかみ、上達できるか、業務に没頭できるか？��才能を言葉で表す個人間の微妙な差まで表せ、誰にでもわかる肯定的な言葉で才能を表す・強みを築くのに必要な才能＝繰り返し現れる思考、感情および行動パターンであり、何かを生み出す力を持つ資質・才能を生み出すのはシナプス日々、人々が下す決断のほとんどを、脳の最強のシナプス結合（＝才能）が行っている。
2016年07月05日
グループシンクが日本を滅ぼす
私がこれまで経験した中で最悪のグループシンク（集団浅慮）は、大学の教授会で起こっていた。教授会は毎月、古参のコアメンバーによって決められたシナリオに沿って行われ、それに反した意見がでると、それは議論されているのではなく、無視される。
本書は、福島第一原発事故「国会事故調査委員会」の元委員長によって書かれた。国の原子力行政で起こっていたのも全く同じこと。
アメリカでは、9.11後、テロによる全電源喪失を想定し、非常用冷却装置やベント弁を主導でも操作できる対策を原子力施設に義務付けていた。そのことは2006年と2008年に原子力安全・保安院の審議官と原子力安全基盤機構からなる調査団が渡米し、NRCからブリーフィングを受けている。ところが、その内容は原子力安全委員会や電力会社にも伝えられず、したがって、規制にも反映されることはなかった。
これは、衝撃的だ。国費で出張しているのだから、その時の調査団のメンバーと上司は処罰されるべきだろう。
・人災原子力安全保安院と東電の関係が「規制の虜」（規制機関が規制される側の勢力に取り込まれ支配される状況）にアレバ（フランスの世界最大の原子力複合企業体）からの支援申し出に対して、日本政府は明確な反応を示さなかった・単純路線規制の虜が日本で起きやすい要因の一つは「単純路線エリート」異論を排除しようとする「グループシンク（集団浅慮）」→欠陥のある決定・2006年＆2008年、米国から原子炉の全電源喪失を想定した事故対策の説明を受けていたアメリカでは2001年の9.11後、テロリストがジェット機で原子炉にぶつかってきた場合を想定した「B.5.b」と呼ばれる対応をNRCが国内原子力施設に対して義務付け。全電源喪失を想定し、非常用冷却装置やベント弁を主導でも操作できる対策。→2006年と2008年に原子力安全・保安院の審議官と原子力安全基盤機構からなる調査団が渡米し、NRCからブリーフィング。→原子力安全委員会や電力会社にも伝えられず→規制にも反映されず
2016年07月04日
センサーネット構想
「米国が築いたインターネットに便乗する限り、日本は主導権を奪えない」「日本が強いセンサー技術とネットワークを組み合わせることで、プライバシー侵害の心配のない効率的社会を創る」というのが、著者の提案する「センサーネット構想」である。
センサー技術は多岐にわたり、求められる要素技術も多種多様である。一つ一つは大きな商売にならないので、大儲けを狙う米国企業にとってはあまり魅力のない分野だ。だから、日本企業は高いシェアを維持してきた。
ところが、センサーのほとんどはクルマや工場や家の中で単体で使われているだけで、ネットワークに繋がってない。これを繋げることで便利なサービスが提供でき、また社会全体の効率を上げることが可能となる。
これはIoT構想の一つだと思う。魅力的な提案だが、最近の統計を調べると既に半分のセンサーはスマホ搭載だと思われる（2014年金額ベースで既に45%）。ということは、アプリ次第でいつでもネットワークに繋がる状態。急がないと間に合わないし、一企業で実施するのは難しい。
こういうことには、国家予算を使っていいと思う。但し、誰がやるか次第。
センサー技術は多岐にわたり、求められる要素技術も多種多様である。一つ一つは大きな商売にならないので、大儲けを狙う米国企業にとってはあまり魅力のない分野だ。だから、日本企業は高いシェアを維持してきた。
ところが、センサーのほとんどはクルマや工場や家の中で単体で使われているだけで、ネットワークに繋がってない。これを繋げることで便利なサービスが提供でき、また社会全体の効率を上げることが可能となる。
これはIoT構想の一つだと思う。魅力的な提案だが、最近の統計を調べると既に半分のセンサーはスマホ搭載だと思われる（2014年金額ベースで既に45%）。ということは、アプリ次第でいつでもネットワークに繋がる状態。急がないと間に合わないし、一企業で実施するのは難しい。
こういうことには、国家予算を使っていいと思う。但し、誰がやるか次第。
・ビッグデータとプライバシー問題Googleはユーザーの検索行動を、Amazonはユーザーの知的関心を学習し、検索やお勧めの精度向上に反映させている。・米国が築いたインターネットに便乗する限り、日本は主導権を奪えない日本の活路は、プロトコールが組織や個人を特定できるインターネットの欠陥を突くことにある。・センサーネット構想センサーを使って、個人を識別しない「第二のネットワーク」を築く。日系メーカーのセンサー世界シェアは数量ベースで54%（2011）・便益「無駄をなくす」街灯→センサーで点灯信号→車の流れで最適化
2016年07月03日
山岡鉄舟
「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は始末に困るものなり」と言ったのは西郷隆盛だとは知っていた（『西郷南洲遺訓』）。これには、「此の仕末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬなり」と続くのだが、これは特定の人を評して言ったものだったのだ。それが山岡鉄舟。
江戸の無血開城は西郷と勝の直談判で決まったというのは誤りで、実際は、鉄舟が既に多摩川まで迫った官軍の中を西郷が駐屯する駿府まで逆走し（箱根までは薩摩藩士一人が同行したがそこからは単独）、西郷に直談判し既に決まっていた江戸総攻撃を中止させたのであった。冒頭の言葉は、西郷がその際の鉄舟の私心の無さ、人物の魅力を語った言葉だったのである。
江戸の無血開城は西郷と勝の直談判で決まったというのは誤りで、実際は、鉄舟が既に多摩川まで迫った官軍の中を西郷が駐屯する駿府まで逆走し（箱根までは薩摩藩士一人が同行したがそこからは単独）、西郷に直談判し既に決まっていた江戸総攻撃を中止させたのであった。冒頭の言葉は、西郷がその際の鉄舟の私心の無さ、人物の魅力を語った言葉だったのである。
その後、幕府の陸軍総裁であった勝が三田の薩摩藩邸で西郷と面談し、最終的に話をまとめた。絶体絶命の中、活路を開いて江戸を、日本を大規模な内戦（＝植民地化）の危機から救ったのは鉄舟だった。しかし、勝は後に江戸無血開城の手柄を全部自分のものにしてしまった。そして、そんなことに目くじらを立てる鉄舟ではなかったため、それが史実として定着してしまったということである。
旧幕臣に勝を嫌うものが多かったというのもうなずける。
下140:「先生が、もし、談判をうまく成し遂げようと思って来られたのなら、おいは動かんかった。総攻撃は、中止せなんだ」「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困りもす」（西郷隆盛）下242:勝負は時の運だ。勝っても驕らず、負けても卑屈にならず。下265:道を急ぐときは、大股ですばやく、ふつうの人間が走るくらいの速さで歩く。身のこなしがいいから、速いうえに、疲れない。左右同じほうの手足を同時に前に出し、無理なく体重を移動させて、すぃっ、すぃっ、と、水を切るようにして歩いていく。今ふうにいえば、時速10キロ以上で一日中歩き通すことができた。下387:薩摩藩士で、イギリス留学の経験があり、のちに初代の文部大臣となった森有礼は、まさしく天敵だった。森は、英語の国語化を唱え、日本的なものを、古くさいものとして排除しようとしていた。下487:外にあらわれた形が、実相である。実相にあらわれる以前の本源が、無相である。敵の実相を見て、その無相を明察すべし。わが無相を、敵に知らしめないことに習熟すべし。
2016年07月02日
禅の教え
著者は曹洞宗の住職にして、庭園デザイナーで、多摩美術大学教授である。庭園デザイナーとしての主な作品に、カナダ大使館、セルリアンタワー東急ホテル日本庭園、ベルリン日本庭園ということ。
・禅では「行動」を重んじる同じことを理屈抜きで繰り返すのが修行の基本あれこれ考えても、行動しないと答えは出ないまず「動く」それから「続ける」・脚下照顧自分の足下をしっかり見つめ、昨日の自分より「半歩」でも先に進む比較の対象を他人から自己へ切り替えると、生きるのが楽になる・一掃除二信心禅では「信心」より上位に「掃除」を位置づけているスッキリと片付いた部屋は、心のモヤモヤを洗い流してくれる・身心一如人の身体と心は一体であり、生活が乱れれば、心も乱れる心配事があって眠れないときは、眠りにつく前の30分間座禅をする・調身→調息→調心怒りの感情が湧いた時は、深呼吸する・即今、当処、自己たった今、この場所で、自分がその時できることをひたむきにやる
2016年07月01日
幻に終わった「新国立ジャイアンツ球場」
新国立競技場を東京オリンピック終了後改修して、読売巨人軍の本拠地として売却あるいはリースするという案が後藤田正純議員から出されていたらしい。こうすれば、建設費の国民負担は950億円で済むという試算だった。
ジャイアンツ側もこれには乗り気だった。現在の東京ドームは借りて使っているに過ぎない。球場の広告掲載料や飲食売上もドームに入ってしまうため、動員数の割に、球団収入は専用球場を持つ場合に比べて半分なのだそうだ。
予算超過が大問題になっていたのだから、良い解決策に思える。ところが本案は自民党内で握りつぶされる。「『国立』競技場が一球団に使われてはいけない」という理由だったそうだ。「財政危機」と言いながら、個別案件になれば一向に変えようとしない。
海外を見れば、最初から五輪後の民営化を前提にメーンスタジアムを建設している。「国立競技場」のままでは赤字を垂れ流すお荷物になるだけだからだ。
1996 アトランタ五輪メーンスタジアム→大リーグ Atlanta Braves
2000 シドニー五輪→ラグビー、サッカー、クリケット各チームのホームグランド
2012 ロンドン五輪→プレミアリーグ West Ham United 2004ギリシャと2008中国は「国立」のままだそうだが、両国とも役人天国で、ギリシャはその後財政破綻した。中国はまだ経済成長が鈍化したとはいえ続いているので、耐えられる。そもそも、両国とも日本のように国中に競技場が溢れているわけではない。
JSCが幅広く「国民の代表」の意見を取り入れた結果、予算は肥大化した。プロジェクトマネージャーであるにもかかわらず決定権限を持たないJSCは要請を断れなかった。巨大建設費が非難を浴びて、JSCは新国立競技場プロジェクトの任を解かれ、大規模プロジェクトに慣れた国土交通省が大ナタを振るって再出発した。結果、建設費は減ったが、今度はオリンピックは開催できるものの、その後の使い道は限定され、将来収益の可能性は減った。
「新国立ジャイアンツ球場」（イメージ図）が実現していれば、民間資金を取り入れることで、充実した設備を持つ競技場を国民負担を押さえて作ることが出来たのに、残念だ。こうして、今も赤字プロジェクトが全国で推進されている。
20:JSCが幅広く「国民の代表」から要望を聞いた結果肥大化・JSC理事長諮問機関である「有識者会議」・JSCの監督機関である「文科省」・予算を握る「財務省」JSC新国立競技場設置本部長である山崎雅男（文科省）はプロジェクト・マネージャであるのに権限がない33:JSCが関係者全員の要求を最後の最後まで満足させようとした結果建設費の削減が出来なかった・都倉俊一（日本音楽著作権協会）「開閉式屋根はマスト」・小倉純一（日本サッカー協会）「仮設式だとワールドカップを招致できない」108:全国の自治体はずさんな計画で不必要なまでに立派なスタジアムを造り続けた・宮城県総合運動公園 建設費270億円 年間維持費560M不便な場所にあり、大規模イベントは大渋滞を引き起こすため、開催できない・徳島ポカリスエットスタジアム収容能力4万人に対し駐車場500台
「都市公園」として整備されたため駐車場を増やせない
