2016年06月
2016年06月30日
「美しい数式」とは、野に咲く一輪のすみれの如し
実家に置いてあったのを読んでみる。
「風のCafe」というのは、五木寛之が、「各界で活躍する人物をゲストに迎え、年を重ねてなお瑞々しく、より豊かに楽しんで生きるヒントを探るBSフジのトーク番組です」とある。ということは、視聴者は70-80歳台が中心の番組だと思われる。五木寛之は1932年生まれの83歳で、今回のゲストで一番若い藤原正彦が1943年生まれの72歳だ（放映は2014年）。
パリ留学した結果、「自分がこれから取り組む分野は多変数解析関数論である。その前に蕉門の俳諧をすべて調べなければいけない」と言った、天才数学者岡潔のエピソードが面白い。実際に、帰国後、蕉門の俳句の世界を1年以上かけて徹底的に研究したという。それから20年かけて当時の世界の数学三大難問を非常に独創的なやり方で全部ひとりで解いてしまった。
多変数解析関数論と俳諧と何かつながりがあるのか。「美しい数式とは、野に咲く一輪のすみれの如し」と言った岡潔のことだから、そこにつながりを見出したのではないだろうか。
94:「美しい数式」とは、野に咲く一輪のすみれの如し（岡潔）20代末に3年間パリ留学「二つのことが分かりました」�ー�分がこれから取り組む分野は多変数解析関数論�△修料阿望嵬腓稜倬澆鬚垢戮督瓦戮覆韻譴个い韻覆�蕉門の俳句の世界を1年以上かけて徹底的に研究をして、それから20年かけて世界の三大難問を全部ひとりで解いてしまった。164:日中戦争がなぜあんなに泥沼になってしまったかというと、和平のいい機会をみすみす逃したから（半藤一利）蒋介石が、その条件なら和平しようという時に、南京を陥落させた。途端に、近衛内閣が条件を引き上げた。167:元凶は国際連盟の脱退（半藤一利）国際連盟脱退の論調はメディアがいちばん先「栄光ある孤立」満州事変については、日本が一生懸命説明すれば、ある程度は世界でも理解されたはず
2016年06月29日
思いついたアイデアを形にする
Tina Seeligの最新刊。
Invention Cycle：Imagination→Creativity→Innovation→Entrepreneurship
とし、「思いついたアイデアを形にする」方法を具体的に示している。彼女がExecutive Directorを務めるStanford Technology Ventures Programで実施している方法だ。
�〜杼�力：存在してないものをイメージする力・一つのことに、どっぷり浸かる。じっくり観察することで、少し見ただけではわからないチャンスに気づく。・大胆な未来像を思い描く。自分がどんなビジョンを描けるかで、成し遂げられる成果が決まる。�▲�リエイティビティ：想像力を駆使して課題を解決する力・「絶対に問題を解決する」という、やる気をもつ。・実験を繰り返し、アイデアの方向性が正しいかどうかを確認する。（プレトタイピング）��イノベーション：クリエイティビティを発揮して、独創的な解決策を編み出すこと・目標達成に向けて、優先順位が最も高いものに集中・フレームを変える。現在の環境や状況を捉え直し、ユニークな解決策を生み出す。�さ�業家精神：イノベーションを活用してユニークなアイデアを形にし、他の人たちの想像力をかきたてる・粘り強く、ぶれることなく取り組み続ける・自身のプロジェクトに周りを巻き込む。そのためにも、何をしているのか、なぜそれをしているのか、ビジョンを周囲にはっきりと伝える。（ビジョンが明確な説得力ある物語）
2016年06月28日
今年の株主総会総括
総会日程が分散しつつあるとはいえ、今も最も総会が多いのは29日。まだ1日残しているが、明日は香川なので、出席予定はなし。
毎日各社の総会に出ていると、自ずと違いが分かってくる。最も特徴が出るのは質疑への応答。社長が一人で的確に答えるところもあれば、担当役員が中心に回答するところもある。会社規模によっても違うのでそれはどちらでもいい。それよりも、正面から丁寧に答えようとしているか、ありきたりの回答で済ませようとしているかが問題。
今年出た中でよかったのはアルコニックス。「非鉄金属の総合企業」を標榜している。元々、非鉄金属商社だが、商社事業だけでは利益が確保できず、メーカーを買収して垂直統合戦略をとっている。正木社長は75歳で年齢的に懸念を持っていたが、株主からのどんな質問にも（私のも含めて）的確に回答されていた。資源安で業績は悪化傾向だが、安心した。
逆にひどいと思ったのは住友金属鉱山。売上1兆円近い大企業だ。前期の過去最高益から赤字に転落。こういう時こそ丁寧に説明してほしいものだが、想定問答集通りの紋切り型で、質問にまともに答えていないケースもあった。第5号議案の「買収防衛策」に至っては、何の説明もなしに、質疑応答後にいきなり採決であった。その仕組みは複雑であり、今回最も説明が必要な議案であったはずだ。
社外役員に秋田大学の泰松教授（鉱山学）が入っているのはいいとして、その理由が「大学教授としての学識を背景に、コーポレートガバナンスの強化のための適切な役割を果たしていただいている」とあるのも気になる。私の知る限り、大学組織程コーポレートガバナンスから遠いところはない。選任理由が間違っている。
2016年06月27日
社外取締役報酬の相場
日立は外国人を複数社外取締役に入れている珍しい日本企業である。その結果、8名いる社外取締役の報酬金額合計は2.8億円で、一人当たり35百万円にもなる。
１．勝俣宣夫（丸紅相談役、元丸紅社長）
２．Cynthia Carroll（BP取締役、元Anglo American CEO）
３．榊原定征（東レ会長、元東レ社長）
４．George Buckley（Arle Capital Partners会長、元3M CEO）
５．Louise Pentland（Ebay Paypal部門General Counsil、弁護士）
６．望月春文（東京中小企業投資育成社長、元通産省事務次官）
７．Philip Yeo（Spring Singapore会長、元シンガポール科学技術研究庁長官）
８．吉原寛章（元KPMG International VP）
これを手元に資料がある他社と比べてみる（監査等委員を除く）。（金額単位：百万円）
会社名 社外取締役数 報酬総額 平均報酬
ヤマックス（熊本） 1 1 1
ベルーナ（埼玉） 2 3 1.5
サトーホールディングス 6 42 7
アルコニックス 2 2 6
HUG 2 11 5.5
日本アジアグループ 2 15 7.5
Oakキャピタル 2 10 5
イハラサイエンス 3 16 5
UACJ 2 13 6.5
SMFG 9 97 10
住友金属鉱山 2 24 12
JXホールディングス 4 52 13
タダノ 2 26 13
シャクリー・グローバル 5 82 16
富士重工業＊ 5 62 12
丸紅＊ 5 60 12
三菱UFJ＊ 10 114 11
＊社外取締役と社外監査役を分けて開示しておらず、社外役員全員の数字
というわけで、私の知る限り90%以上の上場企業社外取締役の年間報酬は5-12百万円の間に入っている。デロイトトーマツの調査も社外取締役平均報酬600万円であり、それを裏付けている(表)。
安いのは地方企業で熊本本社のヤマックスは年俸1百万円。地方とは言えないが、埼玉県上尾のベルーナは1.5百万円。逆に、企業規模の割に高いのはシャクリーで、これは社外取締役が全員外国人であるからと思われる。
日立の社外取締役だけが仕事内容が違うということは考えにくい。突出して高い報酬を支払っているのであれば、それだけ突出して高い成果を出してもらわなければならない。しかるに、日立の業績はEBITでも当期利益でも過去三期下がり続けている。ライバルのGEと比べても営業利益率は半分だ。より一層、事業の取捨選択が必要だと思う。
2016年06月26日
日本最古の湯宿建築
「現存する日本最古の湯宿建築」として有名な四万温泉の「積善館」へ。東京から車で関越自動車道経由で3時間であった。
積善館の歴史は元禄4年に始まる。運営する関家は代々、四万村の名主を世襲している家系で、その名前が「関 善兵衛」であることから、「せきぜん」と呼ばれるようになったとのこと。明治になって、15代目当主が易経の言葉「積善の家に余慶あり」に意を重ねて「積善館」となった。
元々は新湯川の底より湧出する熱いお湯が、川の水とまざることで適温になっていたらしい。現在では、川底から汲み上げた源泉の湯を水に沈めたパイプに通して冷ました「源泉かけ流し」ということ。
創業当初から使われている「本館」、昭和11年に出来た桃山様式の「山荘」、昭和61年建築の「桂松亭」と、江戸・戦前・戦後の館が全部現役で使われている
そして、館によって値段設定が違う。歴史的価値が最も高いのに、設備の点で最も劣る「本館」がいちばん値段が安い。どの館に泊まっても、４つある温泉のどれにでも入れる。
2016年06月25日
THE RIPE STUFF
BSで録画していた"SPACE COWBOYS"を週末に見る。2000年のClint Eastwood主演・監督・製作作品なのでもう16年前か。2003年Mystic River、2004年Million Dollar Baby、2006年硫黄島からの手紙、2008年Grand Torinoと2000年代のイーストウッド作品は大好きなのだが、その出発点はこれか。
1958年アメリカ空軍の高高度極超音速機X-15のテストパイロットチーム「ダイダロス」は米国発の宇宙飛行士になるはずだった。しかし、丁度NASAが発足し事業見直しとなり、まずはチンパンジーを宇宙に送ることになる。タイミングを逃したダイダロスは解散、その後メンバーは宇宙に行くことはなかった。
40年余りたち、空軍を退役したメンバーは70歳前後に。思い思いの人生を送っているのだが、ある事情で再度宇宙を目指すことになる。NASAのエリート飛行士からは「老人」とバカにされるが、マスコミからは”The Ripe Stuff"（「完熟」資質）と面白く取り上げられる。
驚くのは、70歳になって体力はそれなりに衰えているものの、明晰な頭脳。空軍の精鋭部隊であり、博士号を持った技術者も二人いる設定だが、その記憶力や分析力などが素晴らしいのだ。
勿論、「それは映画の話」といえばそれまでなのだが、実際に、70歳を過ぎて立派に経営している経営者と話すと、「頭のいい人は年をとってもスゴイ」と実感する。こうした「トップ3%」の人に敵うのは壮年の「トップ3%」の人だけで、「トップ10%」位の若者では全く無理。
ただそれも80歳位までで、先日退任したセブンイレブンの鈴木敏文会長（83）や燃費不正問題でCEOを退任したスズキの鈴木修会長（86）は結果的には、退任するよいきっかけが出来たのではないか。キヤノン御手洗CEOも次の成長戦略の道筋を付けたら早めに退任した方がいい。
2016年06月24日
誰も知らなかった毛沢東
世界的大ベストセラー『ワイルド・スワン』の著者による「毛沢東伝」。「十余年にわたる調査と数百人におよぶ関係者へのインタビュー」にもとづいている。
中国国内では、毛沢東の親族、秘書、通訳、護衛、医療関係者、家政担当者、愛人、そして若いころの友人など、毛沢東のすぐ近くにいた100人ほどの人々にインタビューを実施している。その多くは、これまで一度も口を開いたことのなかった人々で、1990年代になって毛沢東の呪縛が解けて初めて可能になった真の毛沢東像に迫る本だと言える。
そうして明らかになるのは、狡猾で非道、冷徹で貪欲な独裁者である。大きな転機になっているのは、周到な工作で戦中戦後とアメリカを手玉に取ったことだ。ナイーブなアメリカ人ジャーナリスト「エドガー・スノー」に書かせた『中国の赤い星』(1937)は中国共産党の血塗られた過去を消して、アメリカの支援を決定づけた。
日本にとって重要なのは、毛沢東は日本による中国占領を歓迎していたということである。毛沢東にとって中国支配のための最大の障害は蒋介石の国民党であり、日本軍に国民党軍を攻撃させるように仕向けた。国共合作後も、共産党軍は日本軍との戦いを避けていたので、共産党軍が「抗日」したわけではない。しかし、第二次大戦後、国民党との内戦に勝って中国を手中にしたのち、歴史を書き換えてしまったのだ。
4: 毛沢東は抗日に熱心だったと信じられていますが、事実はまったく逆で、毛沢東は日本が中国を広範に占領する展開を歓迎していました。日本軍が自分に代わってライバルの国民党指導者蒋介石を打ち負かしてくれればいい、と考えていたのです。後年、毛沢東は、国民党政府の戦時首都であった重慶まで日本軍が攻め込む展開を望んでいた、と語っています。毛沢東は、後ろ盾であるスターリンが中国に干渉して日本とソ連で中国を分割する、という状況を作り出そうと画策しました。326:『毛沢東自伝』の大部分を構成するのは、1936年夏に毛沢東がアメリカ人ジャーナリスト、エドガー・スノーのインタビューに応じた際の内容である。毛沢東が自分の人生について後半に語ったのは、このときだけだった。スノーはまた、毛沢東および他の共産党員とのインタビューに圧倒的に依拠した内容の著書『中国の赤い星』を発表し、中国共産党の血塗られた過去を消してイメージ回復の基礎を作った。327:毛沢東は、貴重な情報とまったくの虚構をないまぜにしてスノーに聞かせた。スノーはこれをそっくりそのまま呑み込んで、毛沢東と中国共産党指導部を「素直で、腹蔵なく、気取らず、潔い」と評した。毛沢東はAB（アンチ・ボルシェビキ）団の粛清など拷問や殺人の歴史を隠し、中国を横断した行軍に「長征」という巧妙な名前を付け、盧定橋のような戦闘や英雄譚をでっちあげた。（中略）モスクワとのつながりを完全に隠し、アメリカとの友好関係を望んでいる、とも語った。多くの人々が、これに完全にだまされた。558:毛沢東が飛行機で移動するときは、中国領内の飛行機は全機着陸させられた。毛沢東の専用列車が動くとき（連絡はいつも出発直前だった）は、それ以外の列車はすべて待避しなければならないので、国の鉄道網は大混乱に陥った。561:毛沢東は国の資産を横領した人間を処刑する一方で、自分はその何倍もの金を使って快楽を追求していた。人民に節制禁欲を強制する一方で自分は快楽を追求し、しかも表向きは「為人民服務」の手本を演じていた。毛沢東ほど自分の欲望を際限なく追及する一方で人民の欲望を徹底的に否定した矛盾だらけの支配者は、ほかに例を見ない。
562:軍の文工団から若い女性たちが次々に選び出された。歌い手や踊り手のほかに、別荘に待機する看護師や女中も精選され、毛沢東はその中からセックスの相手に好きな女性を選ぶことができた。
2016年06月23日
戦後史の開放��
「戦後史の開放� 廚搬蠅靴討い襦�「戦後史」とあるが、�，�扱っているのは太平洋戦争敗戦まで。この後、本当の戦後史である�△�出版されるらしい。
では、「解放」とは何からの開放かというと、
・イデオロギー的束縛
・時間的な束縛
・空間的な束縛
ということ。これらのために、戦後、特に学校教育において現代史が十分に教えられることはなかった。
多くの人たちは社会に出てから、偶然や自分の興味に応じて本や他のメディアから情報を得て自分なりの「戦後史観」を作っているのだと思う。いや、そんな史観を持っている人のほうが稀かもしれない。
改めて戦後史をバランスよく俯瞰するのにとても良い本だ。
はじめに：「戦前の日本外交の失敗は、国際政治に対する日本人の想定と国際政治とのずれに根ざしていた」「日本の政治家も国民も、平和への志向とイデオロギーという二つの要因が加えられることによって大きく変わった国際政治を正しくとらえる想定を持っていなかった」高坂正尭＊「国家主義」より致命的だった「国際主義」の欠如105:1915二十一ヵ条の要求帝国主義的→国際的批判161:1940/9日独伊三国同盟冷静な情勢分析や、長期的な外交戦略に基づいたものではなく、あくまでイギリスが苦境であるという「好機便乗的」判断176:南部仏印進駐首相としての近衛の国際情勢判断はあまりにも浅く、またその政治的責任感はあまりにも軽かった。179:1941/4内閣直属「総力戦研究所」設立8月図上演習「開戦後2年間は戦えるが、4年後には国力を使い果たし、最後にはソ連の日ソ中立条約破棄による満州侵入で日本が敗北する」
2016年06月22日
株主総会の「お土産」
三井物産の株主総会に初出席。昨年の資源価格下落で株価も下落。配当利回り4%につられて買ってみたが、今年に入って更に下落。
雨の中総会に向かうが、品川駅から会場のグランドプリンスホテル新高輪まで行列が出来ている
大企業の総会であることを実感。ところが会場に近づくと、三井物産のロゴ入り手提げ袋を持った人たちがどんどん駅に向かって下りてくる。株主総会開始10分前でまだ総会は始まっていないのになぜ
受付に到着して謎は解けた。議決権行使書を渡すと引き換えに総会の入場票をもらえる。帰りにこの入場票を渡すと「お土産」（記念品）がもらえるのだが、受付を済ませた株主たちが続々とその場でUターンしてお土産をもらって帰っているのだ
総会会場に入って周りで数えたところ、男女比は８：２。標準的な比率だろうと思う。一方、総会会場まで来たにも拘らず、お土産だけもらって帰っていた人たちは思い出すと、７：３位で女性の方が多かった。
総会自体に興味がないのに、雨の中電車代を掛けて来るほど魅力のあるお土産なのか？帰って開けてみらところ、写真の商品。気仙沼鹿折加工協同組合オリジナル商品の詰め合わせであった。推定価格1000-1500円。謎の株主行動であった。
赤字決算で今年だけが特別なのか？と調べてみたが、例年、同じようなお土産のようである。同業他社を調べてみると、総合商社収益力No.1となった伊藤忠商事は「自社取り扱いの紅茶・クッキーセット」だが開催地は大阪。丸紅はクオカードらしい。商事は不明。お土産はないのかもしれない。
会社四季報で「株主総会のお土産特集」まであって、一部株主にとってはお土産は重要らしい。株主優待制度すら日本独特の風習？で、海外の上場企業にはないと思う。その上、「総会でお土産が出て、それをもらうためだけにわざわざ来て総会に出ずに帰る株主が居る」と聞いたらどう反応するだろう。
投票とおなじで、出席率は高い方がいいと思うのだが、お土産まで渡して集める必要はないだろう。ましてや、お土産だけを目当てにして、総会に出ずに帰るのであれば本末転倒だ。厳密にいうと、総会に出てないのだから、総会出席者に入れてはいけないのではないか。
2016年06月21日
高校生・大学生の経営学入門
同じ四国の出身で、VCから大学に転じたという経歴も似ている小野さんから献本いただいた「高校生・大学生のための経営学入門書」。
ほとんどの人は民間企業で勤めることになるし、そうでなくても、日本経済は民間企業の経済活動によって支えられている。こんな基礎的なことも知らずに社会に出るのはマズイから、新入社員やうっかり学ぶ機会がないまま来てしまった社会人にもオススメ。
「おわりに」にケインズの引用が出てくる。もし、ケインズが居なかったら、あるいはマルクスが出てこなかったら世界はどう変わっていたのか？
共産主義国家のほとんどは専制主義となった。市場に任せず、国が決めた通り強制しようというのだから、共産主義国家が専制主義となるのは必然だ。その結果、ソ連でも中国でも数千万人と言われる市民が政争や誤った経済政策による飢饉の犠牲となった。その数は戦死者より多いといわれる。
経営学者や政治哲学者の思想は、それが正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えられているよりもはるかに強力である。事実、世界を支配するものはそれ以外にはないのである。どのような知的影響とも無縁であるとみずから信じている実際家たちも、過去のある経済学者の奴隷であるのが普通である」（ジョン・M・ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』）
2016年06月20日
社外取締役の在任年数
サトーホールディングスは私の好きな会社の一つ。父はサトーが発明したハンドラベラー（スーパーなどで商品に値札を張る機械）を仕入て売っていた。なので子供の頃からなじみがある。30年前にVC新入社員として「上場しませんか」と尋ねたこともある。その時は「うちは上場しない」と断られたが、4年後に上場した。
今年、第6回「日本でいちばん大切にしたい会社」大賞を受賞するなど、経営に工夫を重ねている会社でもある。社員全員が毎日127文字以内で社長に直接提出する日報「三行提報」が有名。
さて、そのサトーの取締役候補者は10名。うち半分の5名が社外取締役である。海外売上高が37%あるから一人くらい外国人がいてもよさそうなものだが、全員日本人。まあ、それは、コミュニケーションの問題、報酬や経費の問題等々あるから、一概に言えない。一緒に経営するのだから、多様性と共にコミュニケーションも大切だ。
社外取締役候補者と在任期間
１．鈴木賢（バイタルケーエスケー社長） 14年
２．田中優子（法政大学総長） 12年
３．伊藤良二（元ベイン&カンパニー日本支社長） 2年
４．嶋口充輝（慶應義塾大学名誉教授） 2年
５．山田秀雄（弁護士） 1年
ここで問題なのは、在任期間が10年を過ぎて「社外」取締役と言えるのかどうかだ。日本証券取引所上場規定には次のようにある。
上場会社は、一般株主保護のため、独立役員（一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役 （会社法第２条第１５号に規定する社外取締役であって、会社法施行規則（平成１８年法務省令第１２ 号）第２条第３項第５号に規定する社外役員に該当する者をいう。）又は社外監査役（同条第１６号に 規定する社外監査役であって、会社法施行規則第２条第３項第５号に規定する社外役員に該当する者を いう。）をいう。以下同じ。）を１名以上確保することが義務づけられています。ここのポイントは、「一般株主保護のため、一般株主と利害相反が生じるおそれのない社外取締役」という点だ。10年もやっていれば経営陣と親しくなるのは必然だ。お二人も立派な方だろうが、今回は反対票を投じようと思う。
2016年06月19日
粟島
志々島を午前中に訪問した後、西隣の粟島へ。ここは瀬戸内国際芸術祭（セトゲイ）にも参加し、3年前にも多数の観光客を集めた。今年も秋会期に開催。
前回のセトゲイに合わせて「開局」したのが、漂流郵便局。住民減少と共に、港に移った粟島郵便局の旧局舎を利用してアート作品として企画された。局員は、本局の企画制作にあたった現代美術家の久保田さん（写真右）と、45年間粟島郵便局局長を実際に勤めていた中田さん（写真左）。
粟島は船のスクリューの様な不思議な形をしている。それは、城山（222m）、紫谷山（145m）、阿島山（182m）の三つの独立峰が、西浜と中新田の二つの砂州によってつながった陸繋島であるから。
島は江戸時代から明治にかけ北前船の寄港地として長年栄えた。明治30年（1897年）には国立粟島海員学校が出来、昭和62年に廃止されるまで90年に渡って多くの海員を育成してきた。卒業生の多くは当時の花形職業の一つであった外国航路の船員として働き、定年後、粟島に戻って暮らしている卒業生も多い。
2016年06月18日
志々島
香川に戻って4年経つので、県内の有人島にはほとんど行ったが、取り残されていたのが地元三豊市の志々島。すぐ隣に粟島という藤井フミヤが時々来るので有名な島があるが、こちらは粟島よりさらに小さな島で人も十数名しか住んでいない。
かっては200戸以上1000人以上の住民が住み、戦後は除虫菊、その後は花卉栽培を行い京阪神方面に出荷していた。「花の島」として知られていたという。その島のシンボルになっているのが、樹齢約1200年と言われる大楠。香川県の天然記念物に指定されている（写真）。
今回、香川大学公開講座「讃岐ジオサイト探訪」で訪れた。面白いのはここの地質で、隣の粟島はほとんどが瀬戸内海の島々に多い花崗岩なのに、志々島（と粟島の南岸の一部）は砂質片岩なのだ。ジュラ紀の砂岩に白亜紀の花崗岩類が貫入して熱で変成を受けたらしい。つまり、讃岐平野の基盤岩である花崗岩よりさらに古い時代の地層でできた島ということになる。
島には遺体を埋葬する「埋め墓」も残っていて興味深い。
2016年06月17日
日本の国是
2014年に出た中教審の答申に関するエッセー。陰湿ないじめ、親殺し、子殺しの横行など精神の荒廃を見て、「道徳」を教科とするよう答申した。答申に対し反対論があちこちから出た。
「道徳教育が、自由かつ多様であるべき価値観や思想信条を一律に統制する」というものだ。著者が言う通り、「よくぞこのような愚論が数十年もの間性懲りもなく繰り返されるものだ」と思う。
欧米の良家は中学校から子供を寄宿学校に入れる。寮生活を通して「全人格」教育をするのが目的だ。知識だけなら通学で可能だが、それ以上のものを教えようとすると生活習慣から叩き込まないとダメだという考えで、源流は、教会付属学校にある。
43:明治10年に来日した当代のお雇い教師アメリカの動物学者モース「なぜ日本人が我々を南蛮夷狄と呼ぶようになったか、段々判ってくる」「貧乏人は存在するが貧困は存在しない」欧米での貧困は惨めな生活や道徳的退廃など絶望的状況を意味する＊16世紀以降訪日した多くの日本人が、日本人の類い稀な道徳、礼節、品性を賞賛45:基本的な道徳や価値観は自由であったり多様であってはいけないのだ。嘘をついてはいけない、弱い者いじめなど卑怯はいけない、正義、誠実、惻隠、慈悲の尊さなどは徹底的に叩き込まなければならない。これら人間としての土台が確立されたうえで、初めて子供達はそれらを跳躍台として自由な個性や多様な価値観を獲得していくのだ。
2016年06月16日
英語教育の愚論愚策
これも共感する話。「まず断言できることは、小学校の英語教育導入を主張する人達のほぼ全ては英語ができず国際人でもない」というのには、私の周りの賛成論者・反対論者を見ても納得である。語学は一時期集中的にやらない限り身に付かないから、週に１，２時間ではどうしようもない。
「英語を使う職業につく希望を持つ者だけが中学から全力で始めればよい」を実施するためには、英語を選択制にするのが良いと思う。日本人の9割は英語と関係のない人生を過ごす。仕事で日常的につかわない限り、学生時代にソコソコでも、どうせ忘れる。それなら、教養とか論理性とか体力とか、身につければ誰もが一生の宝となるもっと重要なことに時間を使った方がいい。
選択制にすることで、本人も「自分はどういう職業に就きたいか、どんな人生にしたいか」を考えるきっかけにもなる。その上で英語を学ぶことを自分で選択したら、結果的には今よりも多くの人が使えるレベルに達すると思う。今は、必修科目だから、「自分は興味ないのに強制される」というイメージから必要以上に英語を遠ざけている生徒も多い気がする。
57:かって英語の小学校導入が決められた頃、私はこう書いた。「5年生から英語を週一、2時間教えても話せるようにはならないから次には3，4年からとなる。それでもだめだから１，２年からとなる。すると1，2時間では足りないのだ、２，３時間にしようとなる。それでも日本人は話せるようになれない」。その通りの進行だ。58:一つ目は、日本人の大半は小学校1年から毎週3時間ずつ英語を学習しても話せるようにはならないということだ。幻想を国民に抱かせるのは罪である。日本語と英語はあらゆる点でそれほどかけ離れている。英語を使う職業につく希望を持つ者だけが中学から全力で始めればよい。授業だけでは到底足りず独力で猛勉するしかない。
59:さらに困ることに小学校から長年英語にかまけていると、古今東西の名著を読む時間がとれず教養が身につかない。例外的に有能な者を除き、「教養と外国語並び立たず」なのだ。かつて英文学者の中野好夫氏は「語学ができるほどだんだん馬鹿になる人間の方がむしろ多い」と述べた。
2016年06月15日
神様の御高見
2014年の中村修二氏のノーベル賞物理学賞受賞を取り上げている。私もあの記者会見は酷いと思った。「研究の原動力は怒り」と言い放ち、10数年前の前職企業との訴訟をめぐって、「日本の司法は腐っている」とも言った。
以前も書いたが、日本企業の正社員は身分を保証されているから、会社命令に背かなければ、成績不振だけで解雇されることはない。全員がいわば契約社員である米国とは全く違う。身分が保証されているのだから、会社のカネを使い行われた社員の発明は会社に属すると考えるのが合理的だ。
さらに中村氏は、「アメリカでは優秀な研究者はコンサルティングやベンチャーをしている。上場すれば何十億、何百億にもなる。日本の研究者は永遠のサラリーマンだ」とも言っている。これは事実と異なる。アメリカの研究者は、「これは行ける！」と思ったら発明する前に、独立してベンチャー企業を自ら興したり、研究成果を企業にライセンスしたりする。自らリスクを取った代償として大きな成功報酬が望めるのであって、そうするかどうかは本人が決めることだ。
3MのPost-itは20世紀の大ヒット商品の一つだが、あるTV番組で発明者が「いくらもらったんですか？」とインタビューされていた。答えは「数百万円のボーナスだけ」であった。雇用契約でそう決まっているのだから仕方ない。嫌なら辞めてから自分でリスクを取ってやれ、ということである。
51:英米では(ノーベル賞）受賞決定の日にニュースになるだけで、以後は誰も騒ぎ立てない。受賞者だって論文を書かなくなると、秘書までが冷たくなる。
53:我が国はこれまでノーベル賞をとった「神様達」に文化、教育、社会などについてご高見を拝聴したり、審議会や組織の長として祭り上げたりしてきた。素晴らしい人もいたが浅薄な自説を自信満々に語る人もいた。輝かしい専門的業績はすぐれた叡智や人格を意味しないのだ。
2016年06月14日
ノーベル賞を培う風土
ノーベル賞には6部門あるらしい。経済学賞は正式には「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」というらしく、本当のノーベル賞ではない。「真のノーベル賞は物理学、化学、生理学医学の自然科学三賞につきる」ということだ。
アジア諸国の経済発展は目覚ましく、シンガポールや香港、台湾の実質所得水準は日本を上回る。しかし、ノーベル賞受賞者が居るのは日本だけ。研究者をきちんと国内で育成できる体制があるのは、世界でも米英独仏露と日本だけだという。
そうした研究教育水準に加えて、著者は二つの本質的な要素が必要だという。一つは、美しい自然、芸術、文学などが身近に存在すること。もう一つは、精神性を尊ぶ風土。
20世紀初頭に活躍したインドの天才数学者ラマヌジャンを調べにインドに行った際の事。彼ゆかりのチェンナイ、カルカッタ、ムンバイなどの都市は混沌と不衛生があるばかりだったという。ところが、彼の聖地タミルナドゥ州では、1000年前のチョーラ王朝時代に建立されたブリハディシュワラ寺院の幾何学的な美しさに息を呑む。
自然科学でノーベル賞をとったインド人３人と数学者のラマヌジャンを含む4人全員の出身地が「半径50km以内」だというのはスゴイ。「人間は環境の生き物」であることを再認識させられる。
41:数学や物理学における世界の天才を調べたことがあるが、私得意の独断によるとまず美の存在である。美しい自然、芸術、文学などが身近に存在することだ。自然科学の独創に最も大切な美的感受性がこういったもので培われる。次いで精神性を尊ぶ風土である。金銭に結びつかず役に立つかどうかさえ分からないことをも尊重する風土、すなわち人間性がそれの生み出す普遍的価値に敬意を払う気風のあることだ。
42:カーストの最上位だが貧富とは無関係で、バラモンのラマヌジャン家も空腹を抱える生活を送っていた。そんな貧困の中で働きもせず、何やら高尚らしきことに没頭している言わば穀つぶしの青年ラマヌジャンを、周囲は温かく見守っていたのだ。この州からはノーベル物理学賞のラマン、同じく物理学賞のチャンドラセカール、化学賞のラマクリシュナンも出ていて、ノーベル賞をとったインド人は自然科学ではこの三人だけなのだ。しかもラマヌジャンを含むこれら四人の出身地は半径50キロの円内に入る。
2016年06月13日
管見妄語
『週刊新潮』に連載されている著者の表記エッセーを集めた最新刊。週刊誌を読まないので知らなかったが、既にこれが第6巻というから、6年以上続いていることになる。
数学者としてケンブリッジにも留学していたので、イギリス関係の話題もいくつか収録されている。その一つが、2014年9月に行われたスコットランド独立の住民投票。結果はご存知の通り、僅差で独立反対派が勝った（55%）。
既に、スコットランド出身のトニー・ブレア政権時代の1999年、およそ300年ぶりにスコットランド議会が復活されて、自治の度合いは相変わらず中央集権の日本とは比べものにならないほど高い。アメリカやドイツのように「連邦制」になるのが自然だと思うがその後どう動いているのだろう。
日本でもとっくの昔に中央集権制度の限界が来ていて、現状を打破するには「道州制」しかないと思っている。北から南、西から東にこれだけ広がる国家で、これだけ豊かになった国民を一つの政策でまとめることなど無理だ。誰にも世論がまとめられないから、結局は、どこが政権をとっても反対の少ないバラマキ政策に落ち着いてしまう。未来を見通した長期投資に耐えられない政治体制なのだ。
イギリスのEU残留か否かを決める国民投票は今月26日。どうなるか？
22:スコットランドの人材
英国ブラウン前首相、ブレア首相
蒸気機関のワット、電話のベル、『シャーロック・ホームズ』コナン・ドイル、『宝島』スティヴンソン
経済学アダム・スミス、思想家ヒューム、短剣かリヴィングストン電磁気学マクスウェル、対数創始ネイピア、ペニシリンのフレミング
2016年06月12日
西長尾城跡
一月前になるが、GW最終日「香川大学のブラタモリ」こと、工学部の長谷川修一教授と綾歌の城山・猫山へ向かう。長谷川先生は10年近く「讃岐ジオパーク構想」を推進されていて、私も大学在籍中に一緒に活動した。今回は、公開講座「讃岐ジオサイト探訪」の一環で、こちらには引き続き参加させてもらっている。
城山・猫山は東西に連なる標高400-500mの丘陵地で、地質は典型的な讃岐平野の里山。基盤は領家変成岩類の砂質片岩、領家花崗岩類で、山頂付近には讃岐岩質安山岩が載ったキャップロック構造になっている。この讃岐岩質安山岩のうち、特にガラス質が多いものがサヌカイトである。
城山の山頂には西長尾城という山城が築かれていた。山頂からは、北には讃岐平野(写真)、南には阿讃山脈が一望でき、戦略的によく考えられている。以下、丸亀市の観光案内から（平成の大合併で丸亀市に編入）。
ここには落差30mという香川では最大級の琴ケ滝もある。普段の水はチョロチョロで徳島県人には「これが滝？！」と笑われるが。
讃岐を代表する著名な山城の一つとして、綾歌町南部の城山山頂付近に所在する「西長尾城跡」が挙げられる。西長尾城は、白峰合戦での軍功を認められた三野郡詫間郷筥御崎領主海崎伊豆守が長尾大隈守元高と名乗り、応安元年（1368）に城主となり、中讃の拠点として活躍した城である。以来、代々の長尾一族によってこの地で勢力を拡充しており、炭所、岡田、栗隈などに支城を構え、阿野、鵜足、那珂郡の南部で勢力を誇った。
天正六年（1578）からの土佐の長宗我部元親による讃岐侵攻によって、長宗我部氏の重臣である国吉甚左衛門が城主となる。この際に城域の拡大・整備を図っており、国吉城とも呼ばれている。天正十三年（1585）、豊臣秀吉の四国征伐によって廃城となる。
2016年06月11日
遠隔農場「テレファーム」
同じく先週のIndependents Club四国でパネルディスカッション「ベンチャー企業のEXIT戦略」に出演頂いたのが��テレファーム（松山）。インターネットを利用した「有機栽培の契約栽培サイト」を運営している（上記動画）。
会員は会費を払い契約栽培農家が実際は栽培するのだが、両社のインターフェイスが「栽培ゲーム」になっているところがミソ。バーチャルとリアルの融合なのだが、リアルを組み合わせたことでコストは増大する。付加価値をどうつけるかとコスト管理が大変そうだ。
実は、先日、大手上場IT企業との資本提携が決まり、遠藤社長は持ち株を売却して雇われ社長になった。儲からない農家が多い一方、農業を最後のフロンティアと考え新規参入したい企業もある。しかし、農地法の規制もあり、参入は容易ではない。そこを結び付ける役割を期待されての買収となった模様。
2016年06月10日
M&Aブティック
Independents Club四国のパネルディスカッションに参加いただいたもう一社は今月21日にマザーズに上場する��ストライク。中小企業のM&A仲介を専業で手掛けるいわゆる「M&Aブティック」である。この分野での上場は4社目。
先に、上場しているのは、日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、GCAサヴィアン。このうち、GCAは正確には「仲介」ではなく、買い手か売り手どちらかにつく「アドバイザリー」業務であるので、直接の競合ではない。対象は大企業・中堅企業で、海外案件にも強い。
残る2社がストライクの同業ということになる。
設立 売上 経常利益 従業員（平均年間報酬）
日本M&Aセンター 1991/4 14,778M 7,116M 240名（1385万円）
M&Aｷｬﾋﾟﾀﾙﾊﾟｰﾄﾅｽﾞ 2005/10 2,847M 1,524M 43名（2253万円）
ストライク 1997/7 1,423M 547M 36名（1640万円）
GCAサヴィアン 2004/4 13,159M 2,734M 244名（2153万円）←参考
比較してみると、上場2社は経常利益率が50%
従業員平均年俸は軽く1000万円を超えている。新入社員も含めてだから、管理職は数千万円の年収、役員は億単位になるだろう。それでも、これだけ利益を出していれば、株主も文句は言わない。ストライクの前期経常利益率は38%と上場2社に対して劣るが、上場申請に当たり売り上げを伸ばそうと地方拠点を設けたり、採用を増やしたり先行投資費用がかさんでいるものと思われる。事実、前々期の売上は590Mで、今期は中間期で既に10億円の売上を達成しており、伸び率は上場2社に対して高い。興味深いのは、規模がほぼ同じ日本M&AセンターとGCAサヴィアンの比較だ。売上も従業員もほぼ同等。しかし、GCAの経常利益率は21%と劣る。GCAの平均給与は2000万円を超え、従業員の給与差だけで18億円以上あるから経常利益率が劣るのも道理である。では、給与を下げられるかというとGCAの場合それも難しい。アドバイザリー業務は野村証券やGSなど外資も入り混じっての激戦区なので、業界相場を払わなくては人材が確保できない。
日本M&Aセンターは、案件が小さすぎてアドバイザリー業者が入ってこない分野に、全国の会計事務所や地方金融機関をネットワークしたM&A「仲介」のビジネスモデルを確立したところに革新性がある。売り手と買い手の間に立つ「仲介」で双方から手数料を取り、M&A情報は提携機関から入ってくる。売り手と買い手が互いにアドバイザーを立てて丁々発止やりあう上場企業同士のM&Aと違い、必要とされる専門性はそこそこでいいので、給与も抑えられる。
高度な仕事だから儲かる、というわけではないのだ。
2016年06月09日
事業所内英語保育園
先週、高松で開かれたIndependents Club四国。そこで発表したのがうち（Melody International）と��リノヴェ（徳島）。リノヴェは元々阿南市の英会話学校だが、全国初の「事業所内英語保育園」を始めた。この仕組みが面白い。
優秀な女性確保のため事業所内に私設の保育園を設ける会社は徐々に増えているが、9割以上が赤字と言われる。利用者が社員に限られるためスケールメリットが出ないのだ。通常の預かり保育のみだと認可保育所に空きができると移っていくので、安定して児童を確保する仕組みがない。「日本死ね」事件？でますます助成金は増えることになり、閉園する事業所内保育所は増えそうだ。
リノヴェが提案しているのは、「インターナショナル事業所内保育所」。要するに、英語で行う保育所だ。こうして付加価値を付けることで、社員以外の児童も受け入れ経営の安定を図る。
日本人の英語コンプレックスは相当なものだから、我が子をインターナショナルスクールに入れたいと思っている親は多い。しかし、インターナショナルスクールは都会に集中しているうえ、費用が私立大学並みだ。保育所段階であれば、企業内施設の一室で実施できるし、ネイティブあるいはバイリンガルの保育士を確保できれば始められる。
企業側にとっては、
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�∈陵冦呂慮�上
�Ｊ欅蕷牘娠弔旅�字化
が期待できるという。
実は私は、小学校での英語教育には反対だ。週に1時間や2時間で効果は出ないし、他に学ばなければならないことは沢山ある。英語が喋れなくてもノーベル賞は取れるが、英語がうまいだけで世界で評価されることはない。表現のツールに過ぎない英語よりも、義務教育では考える力の基本となる数学や母国語、そして体力づくりに時間を使った方がいい。英語に限らず語学習得にはある時期集中的に行うことが必要で、週に1，2時間行うより、仮にそれで年に100時間使うなら、夏休みにでも1日10時間ｘ10日間の英語合宿に入れた方が絶対効果が出る。
リノヴェの「インターナショナル事業所内保育所」がいいと思ったのは、毎日過ごす保育所で集中的に英語が学べる事。この時期に一定の高みに達すれば、あとはそれを維持するだけでいいし、仮に小学校になって興味を失っても、中学校で再び学び始めるときに違うと思う。そして、保育所段階なので他の勉強を犠牲にすることがない。
どうやって優秀なネイティブ保育士を確保し問題が起きないよう管理しているのかが疑問だったが、柏木社長は前職が大手英会話学校のリージョナルマネージャーでそれ依頼のノウハウに更に磨きをかけてマニュアル化しているという。現在のところ十分な応募が集まり、独自のスクリーニングを経て、優秀なネイティブを採用できている。日本人の保育士も「英語が勉強できる」のでこちらの採用も好調だという。
2016年06月08日
命のヴィザ
ヘルシンキからの帰りのJAL便で見たのは映画『杉原千畝』。杉原はリトアニアの領事代理として「命のヴィザ」を発給する前はフィンランド公使館に通訳館として一時滞在していたから今回の旅の最後にふさわしい映画。
杉原千畝については、かなり有名になり、私もこれまで記事やTV番組である程度知っていた。早稲田大学には顕彰碑もある。杉原は18歳で上京し、早稲田大学高等師範部（現在の教育学部）英語科に入学している。しかし、働いて学費を自分で払いながらの勉学は困難で、外務省の留学生制度に応募し、猛勉強して合格。早稲田を1年で退学して、ロシア語専門家を養成する外務省の日露協会学校（ハルピン学院）に移った。ハルピン学院の水準は非常に高く、杉原はロシア語を聞いただけで、その人がどの地方の出身か言い当てられるようになったという。
映画は当然、リトアニアで領事館を開き、元ポーランド軍情報将校を雇い諜報活動を行い、葛藤の末、ユダヤ人のために本省に無断で日本の通過ビザ発給を決断することを描く。1940年リトアニアはソ連に併合され、各国領事館は閉鎖されることになる。杉原は領事館が実際に閉鎖されるまでの一か月間、さらにホテルで汽車を待つ間の一週間、さらに出発当日のカナウス駅でもヴィザを発給し続ける。その数2139枚。その家族も入れこれで助かったユダヤ人は6000人以上になるという。
意外だったのは、その後の杉原もかなり詳しく描いていること。私は知らなかったのだが、リトアニア領事館閉鎖後はドイツ大使館、プラハ大使館を経て、東プロイセンのケーニヒスベルグに総領事館を開設している。この際に、再びリトアニアで雇っていた元ポーランド軍将校と組んでドイツ軍の動きを探り、東に向かって大量の軍事物資を輸送していることから、「対ソ戦準備中」との情報を本省に送っている。しかし、その情報は本省でも、ドイツ大使館でも無視された。
終戦をルーマニアで迎えた杉原はブカレスト郊外のソ連収容所に収容される。1年余りの抑留後、1947年シベリア鉄道経由で帰国。流石に、外交官であったから強制労働にはつかされなかったようだ。外務省では大量のヴィザを独断で発行したことが問題になり退職勧告を受け、退職する。
戦後の杉原だが、ロシア語教師、ロシア貿易関連会社を転々としている。モスクワ駐在も2度渡り10年以上におよんでいる。戦前、外交官としてのソ連駐在を望みながら、それはソ連からのヴィザ発行拒否で一度も叶わなかった。貿易会社駐在員としての杉原はどういう思いで働いていたのか興味がある。
杉原を退職させた外務省は一貫して杉原一家に冷たかったという。日本政府がイスラエルはじめ各国の外圧をうけて杉原の名誉回復をしたのは2000年になってからであった。
— 杉原のヴィザで助けられ、その後イスラエルの宗教大臣になっていたゾラフ・バルハフティク実際には、日本政府の許可なしであったことを私たちが知ったのは、1969年に杉原氏とイスラエルで再会した時である。杉原氏が訓命に背いてまで、ビザを出し続けてくれたなんてことは、再会するまで考えられなかったので、とても驚いたことを覚えている。杉原氏の免官は疑問である。日本政府がすばらしい方に対して何もしていないことに疑問を感じる。賞を出していないのはおかしい。表彰していないのは残念である。杉原氏を支持している方は多くいるが、私は20年前から、日本政府は正式な形で杉原氏の名誉を回復すべきだといっている。しかし日本政府は何もしていない。大変残念なことである。
1998年5月25日のエルサレム郊外でのインタビュー
2016年06月07日
グレービジネスでボロ儲けする人々
日本人は、「暴走族やヤクザにいたるまで、大きな集団の悪事に対して寛容すぎる」と書いたのは、以前紹介した『「ニッポン社会」入門』のコリン・ジョイス。確かにイギリス人は信号は守らないし（歩行者の場合）、地下鉄の中もゴミだらけだが、集団犯罪に対しては厳しい。
様々なグレービジネスで大成功した9人が登場。家庭背景はむしろ豊かなところが多く、50万円や100万円の月収ではとても自分のライフスタイルが実現できない。それで頑張って知恵を絞る。
登場するのは通常のビジネスをやっても成功しそうな人たち。ただ、大きな違いは税金を払っていないこと。誰かに損をさせて自分が儲ける「犯罪」はいけないが、「グレー」で誰にも迷惑が掛からない商売は表に出して徴税したほうが社会としては得策だ。
例えば、下の例のFXの帝王I氏は、暴走族上がりのヤクザ。暴走族としては周辺住民に迷惑をかけ、携帯品詐欺では保険会社に損害を与え、盗難車転売では所有者と保険会社に損害を与え、ハイカ偽造では道路公団に250億円の損害を与えている。何れも捕まっておらず、もちろん、税金も払っていない。これはいけない。
結果、保険料も通行料も上がり、一般顧客が迷惑する。本来上がるはずの利益が上がらず、税収も減る。日本の地下経済規模については、少し古いが門倉貴史氏の推計がある。
まえがき：一般人が密かに抱く欲望や需要を敏感に察知して、それを商行為に結びつけるビジネスモデルを作り上げる。グレービジネスは多くの人が争っては参加しない。税務署に対する過度と思われるほどの警戒感。（中略）彼らはホワイト以上に税務調査が警察の捜査を呼び込むきっかけになるのではないか、と恐れている。139:FXの帝王I1965生まれ 暴走族 母親はキャバレー経営で成功 中2でZ400FXを買い与える6歳上の兄も大宮の暴走族JOKER'S146:携帯品詐欺で月30Mの儲けカップルに声をかけ、フェイクの時計や指輪を身につけさせる→グアムで盗まれたと保険詐欺（半年後、保険会社の対策で終焉）147:盗難車で月20-30Mの儲け外国人窃盗団から1台5万円で高級車を買い取り→車体番号を偽造して転売148:ハイウェイカード偽造で数十億円の儲け韓国人偽造屋に2億円出資し技術開発5万円のハイカを1万円で卸（原価500円）道路公団累計被害額250億円
2016年06月06日
「スリッパの法則」最新版
2004年にベストセラーとなったレオスキャピタルワークス藤野CIOによる『スリッパの法則』の最新版。
2003-2012年の10年間で株価が上昇した会社が65%というのはオドロキ。その間のTOPIXはトントンで、日本を代表する大企業で構成されるTOPIXコア30は-24%であった。東証小型株は+49%で、二部指数は+67%だったというから、要するに、大型株がダメで、小型株のパフォーマンスが良かったのがこの10年だったということになる。
2003年から2012年ということは、その間にライブドアショックもリーマンショックも、そして東日本大震災もあったから（二つの間には円安プチバブルもあった）、一概に小型株に有利で、大型株に不利な状況ということもなかった。勿論、大型株の中にもソフトバンクのように、この間に小型株から出発してコア30に入った銘柄もある。
逆に、新興市場の小型株は相当数が業績不振や、一部には不祥事で上場廃止になったから、「2012年末の上場企業」を対象にした統計にはバイアスがある。10年前に上場していた企業のかなりの数（1/4?）は上場廃止になっているからだ。
それはともかく、「20年以上にわたって、のべ5300社を訪問し、5700人の社長と会った」という筆者の優良企業の見分け方には大いに賛同する。私も未上場企業ばかり数千社を訪問したが、同じ見方をしている。
「おわりに」の、「投資的に生きる人は、未来を信じられる人」「成長を望み、努力する人」というのもいい。挑戦すれば勝者も敗者も生まれる。挑戦する人が居なければ経済成長は望めず、税収は上がらない。そうすると増税しなければ福祉は維持できなくなる。挑戦する人が減り、経済は停滞し、税収は上がらず、なのに社会保障費だけが増大して借金が積みあがったのがこの25年間である。
結果に関わらず挑戦した人を称え、望む人には再挑戦の機会を与える社会にすることは社会全体のためでもある。
はじめに：世間一般で優良企業と思われている会社の中にはダメ企業がある。
17:2012年末の上場企業10年間で株価が上昇したのは65%
この間のTOPIXトントン
TOPIX CORE30 -24%
東証小型株指数 ＋49%
東証二部指数 +67%
64:社長メッセージは、社長自身の個性がにじみだしていて、企業理念が分かりやすく示されているのがよい
70:社長の自伝を本人がプレゼントしてきたら、その会社は伸びない
93:晴れているのにカサ立てにカサがいっぱいある
129:社内結婚が多い会社は儲かっている
女性社員は会社に将来性がないと思えば、社内結婚しない。
170:上場2年目のジンクス（下方修正→株価下落）
・上場準備で忙しく将来への種まきがおろそか
・上場で気が緩みコスト増←上場後1年間は上場前と変えるな！
2016年06月05日
本山寺五重塔 平成大修理
地元の三豊市には、四国霊場の三つの札所がある。そして、第70番札所の本山寺には88か所の寺のなかに4つしかない五重塔がある。また、鎌倉時代に出来た本堂は国宝に指定されている。
現在の五重塔は明治末期の建立で、約100年が経過した。傷みが目立ってきたということで、今回の「平成大修理」 となった。
その修理の現場を見てもらおうと、現場見学会が行われている。昨日は檀家と関係者を対象とした「内覧会」で、今日一般公開が行われる。興味のある方はぜひ
2016年06月04日
現実歪曲空間
先日のパリ行きJAL便で見た映画。最初の『オデッセイ』は宇宙への旅だったが、同じOdesseyというタイトルで、かってAppleの社長だったJohn Sculleyが書いた本がある。自分の半生を振り返って社長時代に書いた本で、WhartonでのMBA学生時代の話や、ペプシに入社して王者コカ・コーラに対して真っ向から戦いを挑み、「コークは古い、ペプシこそ若者の飲み物」というイメージキャンペーンに成功して、米国でのシェアを逆転する話など。
若くしてペプシの社長に上り詰めたスカリーは、Jobsに有名なセリフで口説かれる。
"Do you want to sell sugared water for the rest of your life, or do you want to come with me and change the world?"（このまま一生砂糖水を売りたいのか、それとも私と一緒に世界を変えたいのか）
大企業になろうとしていたAppleは専門経営者を必要としていた。Jobsは自分の見方にこだわり、さらにそれを周りにも信じることを強制した。これはSteve's Reality Distortion Fieldと呼ばれる。日本語に訳せば「現実歪曲空間」か。
映画の筋になっているのは、JobsのApple �兇魍�発したWozniacやMcintoshを開発したAndy Hertzfeldなど古参社員との対立と、認知をずっと拒否していた娘Lisaとの和解。Appleファンとしては必見だろう。
2016年06月03日
GE Health Innovation Village
GE Healthcareが実施しているOpen Innovation世界初の拠点はフィンランドにある。2014年に現地従業員の発案で空きスペースを利用して「勝手に」始まったのがGE Health Innovation Village。その後フィンランド訪問した役員の了解を取り付け「正式」に始まったのが2014年9月。
ヘルスケア関連のスタートアップ企業20社ほどが入居している。入居企業は募集→選考するものと、GEから声を掛けるものと両方あるという。入居企業のメリットとしては、�．�フィスが無料で使える、��地下にあるカフェが無料（写真）、��GEが業界に持つネットワークにアクセスできる。投資はしないとのことだった。それは事業部からではなく、GE Venturesからということなのだろう。
実は、これが今回のHelsinki訪問の目玉だった。LBS現地同窓会の人脈をたどって訪問の了解をもらう。あらかじめこちらの興味を伝え、入居企業7社のプレゼンテーションを受けた。
発案者でプロジェクトマネージャーのMikkoはコーヒーに特別こだわりがあるようで、専任のバリスターを雇用している。カフェの名前は、その名も、Warrior Coffee Houseであった。
2016年06月02日
アメリカの真の支配者
リンカーン・センターの劇場、メトロポリタン美術館、スミソニアン博物館、その他の美術館や医学研究センターに共通する名前の建物がある。アメリカに多い、多額の寄付者の名前が付けられた建物群だ。それが、David Koch。彼は男ばかり4人兄弟で、カンザス州ウィチタの地方財閥コーク家に生まれた。
長年にわたり、「人々が名前など聞いたこともない企業の中で最大の企業」がコーク社であった。しかし、コーク社の製品をアメリカの全国民は毎日使っている。ガソリン、ステーキ、肥料、石こうボード、窓ガラス、カーペット、ブラウニーペーパータオル、ディキシー紙コップ・・・。こうした日常品でコーク社は大きなシェアを持っている。
その「知る人ぞ知る」コーク社がアメリカ国民に知られるようになったのは、Tea Party。アメリカ独立のきっかけとなった「ボストン茶会事件」をもじって、最大限の個人や経済活動の自由と、最小限の政府を求める運動だ。この運動の最大の支援者がコーク一族だったのである。
読んでいると、中西部の保守的な価値観を大切にする企業であり、そのオーナー一族である。父親のFredはMITボクシング部の選手で、兄弟のうち3人は父を見習ってMITに進学している。本書では触れれていないが、この分では、MITにも一家の名前の付いた建物がありそうだ。
1: 「坊ちゃんたち、車から出て気が済むまで殴り合いなさい」デイヴィッドとビルは、コーク家の双子の兄弟で、当時は10代の少年だった。彼らはまた激しい喧嘩を始めたのだ。6:チャールズとデイヴィッドは目立たないように経営することを望んだ。デイヴィッドはかつて、自分たちは「人々が名前など聞いたこともない企業の中で最大の企業」を経営しているのだ、と語ったことがある。（中略）コーク社は世界最大の天然資源と農産物の取引業者である。7:「政府は悪だ」という考えを保守的な父親から叩き込まれたために、チャールズはリバータリアニズムに魅かれるようになった。リバータリアニズムは、個人と企業の自由の最大限化と、そうした自由を守るだけの機能を持つ最小国家（政府）を主張する哲学である。354:コーク社の外側では、市場に基づく経営管理法を強制しようとして失敗していたが、会社の内部ではこの経営哲学は着実に浸透してきている。（中略）2007年にチャールズは自身の経営哲学をまとめた『成功の科学』を出版した。この本はコーク社の新入社員にとって必読の書となった。また１０ヵ条からなる「指導原理」は、工場労働者のタイムカードや会社内のコーヒーカップに印刷されている。
355:「コーク・インダストリーズはつねに、グラフの象限で右上にランクされる人を探しているんです。グラフの縦軸に謙虚さ、横軸に能力の高さを取った場合、会社はこの二つが共に最高点に近い人を採用したがっているのです」（ナンシー・フォーテンハウワー）
2016年06月01日
世界最大のソブリンファンド
「最悪の事態を想定し、準備と計画に全力を注ぐ」に出てくる政府系ファンドの話が面白い。
北海油田は1969年に発見され、1970年代から主にイギリスとノルウェーで生産が始まる。イギリスは1980年に石油輸出国となり、その後の10年間で2500億ドル相当の大金を手に入れた。これは丁度サッチャー政権の頃に重なる。
著者は、「そのお金を何に使ったのかという点では諸説あるが、とにかく確実なのは、お金を使ってしまったということだ。いざというときの備えにするのではなく、すべて消費してしまった」と書いているが、1950-60年代の労働政権下での福祉政策充実と（「ゆりかごから墓場まで」）、同時に起こった大英帝国の解体で、イギリス財政は破たんの危機に瀕していた。大半は財政破たんを回避し、改革を支えるための財源に使われたと思う。サッチャー改革の成果が出たのは20年後の労働党ブレア政権下である。
一方、イギリスと同様に油田の発見で大金を手に入れたノルウェーは、基金を設立して収入の大半を運用に回した。現在、その価値は7200億ドルに達し、世界でも最大級の政府系ファンドとなっている。人口500万人のノルウェーの福祉制度は安泰だ。
この件に関しては、「イギリスはそれまでの債務の返済と構造改革に使った。人口規模が1/10以下のノルウェーは国民一人当たりの石油収入がはるかに多く、政府系ファンドを設立し、しかもそれを上手に運用して膨らませた」ということだと思う。
224:最悪の事態を想定し、準備と計画に全力を注ぐ急にまとまったお金が入ってきたとき、非エッセンシャル思考の人はすぐにパーッと使ってしまう。エッセンシャル思考の人は、いざというに備えて貯蓄する。249:仕組化子供たちのデジタル機器既存→チケット制を導入週の初めに子供たちに10枚のチケットを与える（チケット1枚で30分間TVやネット可能）使わずにとっておくと、1枚につき50cと交換ボーナスポイントとして30分間読書をすれば1枚おまけのチケット→TVやネットの時間は1/10に250:最小限の進歩を重ねるシリコンバレー「完璧を目指すよりまず終わらせろ」スタートアップMVP(Minimum Viable Product)
