2016年04月
2016年04月30日
おいしさ表現「うどん対そば」
『おいしさ表現辞典」に載っているうどんとそばのサンプル数には大きな隔たりがある。
うどん：13
そば：29
先日、「うどん県のそば屋」で書いた通り、全国でうどん屋とそば屋の数は拮抗している。それなのに、この差はどうしたことか？しかも、「うどん」には「うどんすき」から「皿うどん」まで含んでの話しだ。
一つには、東京に出版社が集中していることの弊害が考えられる。この本の出版社その名も「東京堂出版」だ。集めたという「八人の有志」は年齢層は20代から70代まで意図的に分散させてあるが、出身地は不明。「そば文化圏」に偏っている可能性がある。
二つ目には、調査対象とした「350冊の文学作品、エッセイおよび新聞」に、そもそもうどん表現が少なく、蕎麦表現が多い可能性がある。
これもまた「うどん県のそば屋」で書いた通り、「うどんは官能的で、そばは哲学的」だ。うどんは、「早くて、安くて、おいしければ文句ないだろ！」という感じだが、そばはうんちくを言いながら、味わって食べることが多い。その分、文学作品にも好んで取り上げられているのではないか。
残念ながら、不忍池の「藪」は閉店したようだ。
私は時折、東京に行くごとに、上野不忍池の「藪」で、そば味噌をさかなに菊正を飲むが、あそこの菊正は樽のにおいがしみこみ、えもいわれず、うまい。（遠藤周作『ぐうたら人間学』）
日本でだけ蕎麦が発達したのは、日本の夏が暑く、湿気が多かったからであろう。それといま一つ、蕎麦のような微妙な風味がわかるのは、日本人の舌しかなかったのであろう。（渡辺淳一『これを食べなきゃ』）
天麩羅そば・・・、はこばれて来た貝柱の「かき揚げ」を浮かせたそばをやりはじめ、（む・・・うまい）否応なしに舌へ来る味覚と同時に、またも、・・・。（池波正太郎『蛇の目（鬼平犯科帳）』）
2016年04月29日
昔は「あっさり」だったおいしさ表現
「このたび、８人の有志が集い、350冊の文学作品、エッセイおよび新聞などのなかから『おいしさ表現』約3000の用例を抜粋し1冊の辞典としてまとめた」という本。
「最近の引用文献中には、数多くの豊富なおいしさ表現の用例が見られるが、古き時代の作品中には遠慮深い表現が多かった」らしい。単に「何を食べたか」というようなことを記述するにとどまっているというのだ。
この「おいしさ表現」というと、私が忘れられないのが映画「おくりびと」でのフグの白子を食べるシーン。こっちは映像表現ですが。
「生き物が生き物を食って生きている」
「死ぬ気にならなきゃ、食うしかない」
「うまいんだよな・・・困ったことに」
お焦げおにぎり：祖母に、お焦げを作ってくれたかどうか尋ねる。「パリパリいってから七つ数えたから大丈夫だよ」・・・。祖母は、父に隠れて、お焦げで小さな塩むすびを一つ作ってくれて、そっと私に呉れるのである。（向田邦子『父の詫び状』）かき揚げ丼：サクサクのコロモが、口の中でシャクシャクとくずれ、油を吸った小麦粉香ばしく、甘から醤油のしみこんだマダラボハンホクホクと口に甘く、ところどころの小エビムチムチと歯と歯の間でつぶれ、小柱キシキシと歯にきしむ。そしてときどきミツバの香り。（東海林さだお『駅弁の丸かじり』）
2016年04月28日
ライト兄弟
こうしてライト兄弟について読むのは、小学生の時の伝記以来。改めて読むとスゴイ兄弟だ。大人になってからの方がどれだけすごいか分かる。
二人は「エンジン駆動式の飛行機で世界初の有人飛行」に目標を置くが、そのために必要な手順をきちんと考えている。
�．哀薀ぅ澄爾任隆袷汗�御の実現
�▲┘鵐献鶻�発
�Ｍ�人飛行
パイロットが機体の安定を保ちながら航空機を効果的に操縦できる「三軸制御」を発明したことによるその後の航空機産業への貢献は著しい。何しろ、それから100年以上たった今でも、全ての飛行機がこれを使って飛んでいるのだから。
・1903年12月17日エンジン駆動式の飛行機で世界初の有人飛行・パイロットが機体の安定を保ちながら航空機を効果的に操縦できる「三軸制御」を発明・1892自転車店開業・1896自転車製造開始・1899オットー・リリエンタールのグライダーに刺激され、飛行実験開始・1901風洞を自作→スミートン係数と式の誤りを証明・1903Flyer1で飛行実験に成功も、地元紙Dayton Journalは距離が短すぎるとして掲載拒否・他紙の記事への反応もほとんどなし・1904Flyer2空中で円を描きながら5km・1905Flyer3ピッチ、ロール、ヨーという三つの軸の回転をそれぞれ独立して制御できる機構40km
2016年04月27日
最初の近代戦争
世界で最初の「近代戦争」（総力戦）と言われるのが、アメリカの南北戦争である。1860年就任したばかりのリンカーン大統領が奴隷制への反対表明をしたことで、翌年、一部の南部州が合衆国から脱退して「アメリカ連合国」を結成する事態となる。これに他の南部州も加わり、アメリカ合衆国始まって以来の国を南北に分けた内戦となる。
4年間にわたる237回もの戦闘では、それまでのどんな兵器よりも殺傷能力が高い兵器が大量に使用される。また、科学の発展で電信や発電機、気球、魚雷、大型船や望遠鏡なども初めて実戦で利用された戦争であった。
悲劇だったのは、19世紀になってから銃の性能が飛躍的に向上していたにもかかわらず、両軍がとった戦法はマスケット銃しかなかったナポレオン時代のままであったということだ。
マスケット銃は射程距離が90mほどしかなく、かつ命中精度が低いため、横一列に並んで90mまで接近して一斉射撃を行い、あとは白兵戦となる。ところが、南北戦争までにライフル銃が発明され、180mの距離から殺傷が可能になっていた。そんな中で正面攻撃するのは自殺行為に等しい。
信じられないことだが、両軍の将校とも、戦争が後半に入るまで自分たちが陸軍士官学校で学んだやり方を捨てなかった。 その頃のWestpointでは、「現実から学んで進化する」ということは教えてなかったようだ。
こうして南北戦争における死者の数は両軍合わせて50万人に上った。これは今までアメリカが戦ったどの対外戦争よりも大きい。アメリカ軍の戦死者数は第二次世界大戦で416千人、ベトナム戦争で57千人である。
2016年04月26日
「近代化学の父」アントワーヌ・ラヴォアジェ
1774年に王位に就いたルイ16世は、軍隊が火薬不足に陥っていることを知り愕然とする。火薬庫はほとんど空で、原材料も枯渇しつつあった。とりわけ不足していたのが硝石で、それまでは馬小屋と古い建物から採取するのが長年の慣行だった。
ルイ16世は、当時のフランス随一の化学者であるアントワーヌ・ラヴォアジェに白羽の矢をたてる。ラヴォアジェは火薬の製造法を徹底的に分析し、大幅に改良する。4年後にはフランスの火薬製造量は飛躍的に伸び、輸出されるようになる。
こうして、フランスに多大な貢献をしたラヴォアジェだが、フランス革命の中で逮捕される。多くの著名な科学者がラヴォアジェが成し遂げた無数の功績をあげて、死刑を取りやめるよう議会に求めた。言い伝えでは、裁判官はこう返答したという。
「共和国には科学者も化学者も必要ない。正義は遅れてはならない」
1794年5月8日、ラヴォアジェは50歳で断頭台の露と消えた。著名な数学者であるラグランジュはこう述べている。
「首を斬るのは一瞬の出来事だが、フランスは彼のような人物を今後一世紀は排出できないかもしれない」
ルイ16世は、当時のフランス随一の化学者であるアントワーヌ・ラヴォアジェに白羽の矢をたてる。ラヴォアジェは火薬の製造法を徹底的に分析し、大幅に改良する。4年後にはフランスの火薬製造量は飛躍的に伸び、輸出されるようになる。
こうして、フランスに多大な貢献をしたラヴォアジェだが、フランス革命の中で逮捕される。多くの著名な科学者がラヴォアジェが成し遂げた無数の功績をあげて、死刑を取りやめるよう議会に求めた。言い伝えでは、裁判官はこう返答したという。
「共和国には科学者も化学者も必要ない。正義は遅れてはならない」
1794年5月8日、ラヴォアジェは50歳で断頭台の露と消えた。著名な数学者であるラグランジュはこう述べている。
「首を斬るのは一瞬の出来事だが、フランスは彼のような人物を今後一世紀は排出できないかもしれない」
・1789フランス革命・1793ルイ16世が斬首刑→2年間で2-4万人が断頭台の露・ラヴォアジェ火薬の製造法を改良→フランスの輸出産業に・化学者だが物理学にも大貢献（物理化学＆熱力学)・「質量保存の法則」・酸素と水素の発見
2016年04月25日
メタ戦略
2月に著者の講演を早稲田大学ビジネススクールで聞くことが出来た。イギリス出身の元生物学者で、BCG東京事務所駐在中は、日経新聞を読みながら地下鉄で通う目立った外人だったという。趣味は、尺八とのこと。
優れた経営者は、事業の特性、そして、置かれた環境の違いに応じて、自社に即した「戦略タイプ」を選び取っている。（中略）戦略タイプ選択のための戦略（御立尚資による「まえがき」）
ということで、「メタ戦略」を扱ったのが本書である。英語版は昨年6月に出版されて大評判となった。その著者の日本語版に寄せたメッセージは以下のとおりである。
かつて輸出産業を反映に導いた規模、効率、品質だけでは、将来にわたって勝ち続ける処方箋にはならない。むしろ、旧来のビジネスモデルを一層効率化し、規模の利益を甘受して安穏としていれば、現在進行形の変化に適応する機会を逃しかねない。面白いと思ったのは、ベンチャー企業経営でよく言われる「ビジョナリー型」。これについて、「現実には起業家の80%近くは失敗する」とし、その主原因を、ビジネスアイデアのまずさだけではなく、「実際の状況にかかわらず、自社にとっての事業環境がビジョナリー型であると認識されている」ことにあるとしている。つまり、可変可能性および予測可能性を実際よりも高く評価する心理的傾向があるわけだ。
これは、起業家に典型的で、「こうしたら、こうなる」と過信するわけだ。ところが、こうした過信がなければ、起業する人もいなくなるだろうし、難しいところ。そのために、「ビジョナリー型の時機を見極める３つのサイン」は役に立ちそう。
8:企業は、「戦略パレット」に基づいて最適なアプローチを選択し、領域ごとに異なる戦略アプローチを組み合わせて「コラージュ」経営を行っていくべき。そのような組織ではリーダーの役割も再定義する必要がある。Classical Type54:規模が勝敗を決める前提：安定的で予測可能性の高い市場組織：戦略が滞りなく効率的に実行されるよう規律と構造重視→明確な業務手順が整った階層的な体質Adaptive Type143:外部指向性と柔軟性の高い組織・アダプティブな環境で優位性を獲得するのは、他社に先駆けて市場の変化を読み取り、行動に移す企業→異質なデータをリアルタイムで把握し活用する高度な分析力150:企業文化・市場における変化の兆しに素早く対応して実験を行うには、外部指向性を保ち、方法論に主眼を置く・多様な視点を許容し建設的な反対意見を受け入れる企業文化・アイデアの創出と素早い学習を促進するコンテクストVisionary Type170:多くのビジネス・リーダーがビジョナリー型の戦略を実践しているというが、予測可能かつ改変可能であると客観的に評価できる環境はそれほど頻繁には生まれない。こうした認識と現実の不一致は、リーダーたちが市場の改変可能性とビジョナリー型の適用範囲を過大評価していることを意味する。ビジョナリー型の時機を見極める３つのサイン�．瓮�トレンドの出現�⊃卦蚕僂療仂��８従�の商品・サービスをめぐる消費者の不満あるいは満たされないニーズ173:代表的経営コンセプト・『ブルー・オーシャン戦略』・・・競争のない市場空間創出・『コア・コンピタンス経営』・・・組織が未来を形成する能力201:現実には起業家の80%近くは失敗する・実際の状況にかかわらず、自社にとっての事業環境がビジョナリー型であると認識されている・可変可能性および予測可能性を実際よりも高く評価する心理的傾向
2016年04月24日
不動産投資1年目の教科書
引き続き勉強中。この著者がいいのは、不動産が好きだから不動産投資しているのではなく、他の投資機会と同じ基準で評価して、「今は東京で不動産を買うのがいい」と投資している点。
地方物件投資のリスク例として出されているのが高松市。高松市では2004年に市街化区域と市街化調整区域の線引きがはずされ、原則、どの場所にも建物が建てられるようになった。その結果、北部の市街化区域から、南部のそれまで農地であった場所への人口移動が起こった。それまでは、坪15万円で仕入れた市街化区域
にアパートが立っていたのが、その向かいに坪3万円で仕入れた田んぼに新築アパートが建ったのである。
人口が増えてないのに供給が増えたため、市街地の土地は10年連続で下落し、10年前のほぼ半値になった。「底打ち感があると言われる地方の地価は、じつは法規制によりかろうじて維持されている」のが実態だ。
4はじめに：不動産投資のいい点は、銀行から借りた資金という、いわば他人のお金で大きな利益を得ることができる点。借り入れた資金は証券投資と違い、物件価格が値下がりしてしまった場合でも、返済を迫られることがないという点に集約される。63:地方物件は賃料が安いため、賃料収入との比率でいえば、屋上防水や設備交換のコストが非常に高くなる121:いまの都心の相場環境から考えると更地に1棟マンションを新築したほうが中古よりも利回りが良いことがある
147:地方物件は、表面利回り15-20%以上で購入するのが基本
2016年04月23日
大盛は冲しきが若し
以前見逃していたNHK「伊藤若冲 神の手を持つ絵師」を週末の再々放送？でやっと見れた。2時間にも及ぶ大作。若冲の人となりから、その作品の秘密（技法、絵具）、若冲最大のコレクターであるアメリカ人Joe Priceのことまで余すところなく描かれている。
この番組で若冲の名前が、「大盛（たいえい）は冲（むな）しきが若（ごと）し」という老子の言葉から来ていることを知った。名付けたのは、元は高名な禅僧でありながら、60歳を過ぎてから京都各地を放浪しながら煎茶を淹れて売るようになった「売茶翁」であるということ。
それにしても、これだけ魅力のある絵が明治以降100年間に渡り日本でほとんど忘れられていたというのは信じがたい。ブームに踊らされやすい日本人の特性発揮というところか。明治になり、西洋趣味がブームになると、日本画は二束三文で海外に売られていったという。
若冲を再発見し、熱心に紹介したのが若冲コレクターであるアメリカ人富豪Joe Price氏。24歳の時、家族で親交のあった建築家Frank Lloyd Wrightが趣味の日本の浮世絵を見るのに付き合っていて、NYの古美術店で若冲の絵に惹かれたのだという。それまで絵の趣味は全くなかったそうだ。
2016年04月22日
上場企業の「新事業」
PPHDの株主総会に出席。投資先上場企業の経営者に一般株主が会える機会は総会くらいしかないので、経営者の顔色とか覇気とか総会運営の仕方などを見て、データを補完することは必要だと思う。
私が質問したのは以下の2点。
�．優奪抜濃觧�業の利益率が下がっており、前期は営業利益率1%以下と事業利益がトントンの状況。何が起こっているのか？
�◆屮�ロスセールスで顧客当たりのBPO売上を上げる」「既存事業のシェア拡大」「海外事業拡大」という大方針が出ているが、その他事業との関連性が分からない。売上187Mと全社売り上げの約1%で、営業損失が81M。新事業なので先行投資による赤字だが、本業とのシナジーはあるのか？
�，砲弔い討蓮�競争激化と、一部顧客からの業務縮小による稼働率低下という答え。売上の81%を占めるデバッグ事業は16%の営業利益率を保っているので、競争環境が違うようだ。デバッグ事業ではHUGと2社での寡占化が進んでいるが、ネット看視は参入障壁が低いのかもしれない。「対応策をすすめている」ということであったが、具体策は聞けなかった。
��TV番組や映画のバリアフリー字幕や音声ガイド制作のPalabra社については、「インバウンド需要などで今後大きな市場が見込まれる」とのことであったが、本業とのシナジーについてはよくわからず。
医療関連人材紹介サービスのIMAidについては、「海外人材を育成して国内で紹介」する事業に取り組んでいて、これは「将来の本業での人材不足解消策に繋がる」という回答であった。しかし、それなら、回り道をせず、最初から本業での海外人材育成＆登用に取り組めばいい。医療人材紹介については、東証一部上場に売上188億円、経常利益34億円のSMSがある。専業で業界一位の会社にどう立ち向かうつもりなのか、そこまで聞く時間はなかった。
上場して資金が出来ると、「次の成長の種まき」というもっともらしい理由をつけて、新事業に手を出し、失敗する事例が多い。本業で成功したから上場できたわけで、その成功体験から、他の事業でもウチがやれば成功すると安易にやったうえでの失敗だ。本業とシナジーのない事業は厳に慎むべきだと思う。
� ��△�ROA&ROEを継続的に悪化させている。上場直後24%あったROAは前期18%、ROEは15%→12.5%。注意して見守りたい。
2016年04月21日
航海王子
うっかり投稿の順番を間違えてしまった。本当は15世紀のこちらが三十年戦争やライフルの発明より先。
ポルトガルの「エンリケ航海王子」といえば、リスボンの「発見の記念碑」が有名（写真）。船の先端に立っているのが王子だ。王子の後にはバスコ・ダ・ガマなど27人が続いていて、これは、エンリケ王子が先鞭となって後に続くものが現れ、ポルトガル大航海時代が開かれたことを表している。ポルトガルが喜望岬にたどり着いたのも、バスコ・ダ・ガマがインド航路を開いたのも、エンリケ王子の死後になる。
不思議なのは、大航海時代を切り開いたポルトガルがその後パタリと世界史の表舞台から消えてしまうこと。ヨーロッパ経済の中心が南欧から中欧に移った17世紀から400年間ずっと停滞しているとも、1755年に起こったリスボン大震災後、その痛手から立ち直れなかったともいわれる。大前研一氏は、現実から目を背け、産業構造転換が出来ずに衰退を続けたポルトガルに日本がなる危険性を指摘している。
114:エンリケ航海王子（ポルトガル）・1394生まれ・1418海軍研究所→航海技術＆船の性能向上・ヨーロッパ最高の数学者、天文学者、地図製作者、地理学者・目標�．▲献△悗旅厦� �▲▲侫螢�西海岸探検・従来の船よりも速く、機動性が高い新型帆船「カラベル船」
2016年04月20日
ライフル銃の誕生
銃や大砲の命中度を飛躍的に向上させ、戦争に革命をもたらしたのはたった一人の数学者であった。それが、1707年イングランドのBathで貧しいクエーカー教徒の仕立て屋に生まれたBenjamin Robinsである。彼は数学の才能に恵まれていた。スポンサーを見つけたロビンズは10代でロンドンに出る。20歳で世界最古の科学学会である王立協会のフェローに選ばれているから、とんでもなく優秀であったことが分かる。
それまでの銃や大砲は、どちらも丸い弾丸を使っていた。弾丸の直径は銃身より少し小さくつくられていた。そうしないと爆発ガスの圧力で銃身が壊れる恐れがあったからだ。90m先の標的に対して1-2mも弾丸は逸れ、しかも、逸れる距離も方向もバラバラであった。従って、マスケット銃は兵団が兵団に対して一斉射撃するものとして使われていた。
ロビンズは銃身の内部に溝を刻み込み、また、弾丸を細長くして、直径を銃身の口径よりわずかに大きくした。これによって、弾丸は爆発力を無駄にせず運動エネルギーに変えることができる。弾丸が自転することで弾道は飛躍的に安定した。弾丸形状が「砲弾型」となり、空気抵抗が減った。これで飛躍的に有効射程距離が伸びた。
143:Benjamin Robins・1707Bathクエーカー教徒の仕立て屋に生まれる・数学が得意で医師のスポンサーを得て、ロンドンに出る・20歳で王立協会のフェロー・銃の命中精度が低いことに驚く（戦闘によっては敵兵一人殺すのに250発)・世界で初めて弾丸の速さを計算して測定・弾丸は銃口を離れた後急速に減速・ライフリングの発明→弾丸に回転を与える・弾丸を細長くして、直径を銃身の口径よりわずかに大きくする
2016年04月19日
三十年戦争
真田幸村が大坂夏の陣で散ったのが1615年。これで徳川幕府は安泰となり、太平の世を迎えるが、ヨーロッパでは大戦争が始まろうとしていた。それが1618年ベーメンの反乱から始まりその後30年も続くことになる三十年戦争。当初は、キリスト教の新旧派（プロテスタントとカトリック）間の宗教戦争であったが、後にはヨーロッパ主権国家間の覇権をめぐる国際紛争となった。
そのころまでに大砲と銃は改良されて殺傷力を上げ、戦場での犠牲者数は増加した。接近戦は減り、遠くから打ち合うわけだが、こうした攻撃を防ぐ術はほとんどない。この結果、戦争が勃発する頻度は増した。
この頃の兵士のほとんどは傭兵で、占領した村での蛮行が後を絶たなかったようである。三十年戦争は戦場となった国々に壊滅的な被害をもたらす。特に主戦場となったドイツでは、人口が1600万人から600万人にまで激減したと言われている。
三十年戦争の悲惨さを描いてよく知られるのがロレーヌ公国に生まれたジャック・カロによる『戦争の惨禍』。下記の絵はフランス軍によるロレーヌ侵略を描いたもの。現在、ロレーヌはフランスの一地方となっているが、当時は独立国であった。
125:三十年戦争（1618-1648)・いくつかの国で男性人口が激減するほどの深刻事態・当初はプロテスタント対神聖ローマ帝国のカトリックの間で起きた宗教戦争・政治的利害が絡む国際紛争へと発展・1625年まではプロテスタント側が敗北に敗北・1630年カトリックの増長を懸念したスウェーデンのグスタフ二世が参戦→勝利・グスタフ二世＝近代戦争の父
2016年04月18日
監査等委員会設置会社
1月決算の会社の株主総会招集通知が到着。1月決算は珍しいので、私の保有銘柄ではPPHDのみ。この会社、今回「監査等委員会設置会社」への移行が議案に入っている。2年前の「改正会社法」で、この制度が出来た。
これが決議されると、取締役3名以上（過半数は社外取締役）で構成する監査等委員会が取締役の業務執行を監査することになる。PPHDの場合は、4名が候補として上がっておりうち3名が社外取締役だ。
これまでほとんどの上場企業は、監査役会を置いてきた。それと、どう違うのか？
任期：これまで監査役の任期は4年であったが、監査等委員会の取締役の任期は2年と短縮された
意見：監査等委員会の取締役は、株主総会において、監査等委員会以外の取締役の選任について意見を述べることができる
利益相反取引：監査等委員会が事前に認めた場合は、監査等委員会以外の取締役が会社と取引できる（これまでは、実態がどうであれ、利益相反と推定される恐れがあり出来なかった）
見た限り、任期が短縮された以外は従来の監査役の身分保障と同等である。 これまでも、社外取締役の制度はあったが、他の取締役と全く同じ立場であった。つまり、経営の執行と監督が同じ組織で行われていた。これが、監査等委員会制度では、社外取締役は監査等委員会に所属することになり、取締役会内部での、執行と監督の役割が分かれることになった。
この制度が従来の監査役会制度より良いかどうか？現在のところ、監査等委員会設置に移行した会社は少数派にとどまっている。
2016年04月17日
ブタの貯金箱
「冒険投資」として日本でも有名なJim Rogers。George SorosとQuantam Fundを共同経営し、10年間で40倍のリターンを実現した。37歳で引退し、1988年にBMWのバイクでガールフレンドと世界一周。10年後にはまた別の女性と、今度はベンツの改造車で世界一周している。
Jim Rogers が生まれたのはアラバマ州の片田舎。家は貧乏で、早くお金を儲けて「自由になりたい」と夢見ていたという。5歳から空き缶拾いなどの商売を始めて、投資家となった。勉強はできたようで、地元の公立高校を首席で卒業し、アイビーリーグの名門Yale大学に奨学金を得て進学することが出来た。その後、さらに奨学金を得てOxford大学に留学し、哲学を学んでいる。
米陸軍で勤務した後、ウオール街に転身。ソロスと出会いヘッジファンドを創設し、その大成功で伝説となったのは冒頭に書いた通り。その間、1日15時間働き、1分たりとも時間を無駄にできなかったという。
そんなJim Rogersは娘たちをどう教育しているか？2003年にNYで長女が生まれた時から中国人の子守を付け、北京語を教えていた。2007年には娘をこれからの経済成長の中心になるアジアで育てたいとシンガポールに移住した。税金の関係もあったのではないかと思うが、そのことには本書では触れられていない。
小遣いは与えてないという。生まれてすぐにブタの貯金箱を与えて、ベッドメーキングなどの仕事をするたびに小銭を渡して、そこに入れるように教育している。銀行口座も持たせていて、貯金箱がいっぱいになったとき、一緒に銀行に行き、彼女らの口座に入金する。
この方式は、英米では一般的。富裕層ほど、お金は労働の対価でしか与えられないことを小さい時から教える。日本式に「毎月小遣い」というのは聞いたことがない。小遣い制度が毎月給与がもらえるサラリーマン＆公務員を中心とした日本社会を作り、起業家精神を殺いでいるのかもしれない。
・メールにはすぐに返信せよ相手が誰であっても、メールは、できるだけ早く返事を出す・効率的に働けるのは本当に忙しいとき暇な人のほうがいつも「時間がない」と言っている。要するに、忙しくな人というのは怠惰で時間管理能力が低い。・歴史と哲学を学べ投資家として成功したいなら、投資の神様と言われている人々の話を聞くよりも、歴史や哲学を学んだ方がいい。そのために欠かせないのが読書。歴史書や哲学書から歴史的教訓を学び、物事に対する洞察力を磨く。そうすれば大局をつかむことができるし、生来の変化も予測できる。歴史は繰り返す。・わからないことをわからないままにしない調べたり、考えたりするのが面倒だと思うのであれば、最初から投資なんかしない方がいい。・安易な増税は狂気の沙汰私が日本の政治家だったら、お金を刷るのをやめて債務を減らす努力をし、減税して大幅に支出を減らし、関税も減らす。そして移民を受け入れる。・食料を生産できれば、あなたの将来は安泰であるこれからは農業の担い手が不足するので、食料を生産できる人の将来は安泰。・水にまつわる問題は、戦争よりも深刻中国に関して、長期的な懸念は水不足。飲料水だけでなく、工業用水、農業用水などすべてが問題。（中略）もし水問題がうまく解決できなければ中国の成長の物語は終わってしまう。・お金で買えるものは自由私の目標は人生でやりたいことができる「自由」を手に入れることであり、そのためにお金を稼いだ。
2016年04月16日
Lincoln
2012年のスピルバーグ映画。BSでやっていたのを先週末に見た。
時は1865年のアメリカ。南北戦争は当初誰もが想像しなかったほど長く続き、60万人近い戦死者とおびただしいい数の負傷者を出した。犠牲者の数はアメリカが欧州と太平洋両方で戦った第二次世界大戦よりも多く、未だにアメリカが経験した最悪の戦争である。
この戦いは産業革命が起こり工業化を進める北部州と、奴隷労働を使ったプランテーションによる農作物の輸出で成り立つ南部州の対立によっておこる。4年続いた戦争は工業力が高く、また黒人も軍人として取り入れた北軍優勢となり、リンカーンは大統領再選を果たす。
ここで、リンカーンは勝負に出る。奴隷解放のため憲法改正案第13号と通そうとするのだ。
しかし、これには大きな壁があった。上院は与党共和党が優勢ですんなり通ったが、下院は与野党の勢力が均衡している。しかも、共和党内部でもいきなり400万人にも上る奴隷を解放したら社会に大混乱が起こると反対する議員がいた。
リンカーンは党内の反対派を粘り強く説得する。ロビイストを雇い、民主党で次の選挙で落選しそうな議員に連邦政府のポストを約束して寝返りを図る。おカネで買収したら法律違反だが、これならあからさまな買収ではない。
リンカーンが言う。
「ひょっとしたら50年後、100年後には黒人も投票しているかもしれない。いや、女性だって投票できるようになっているかもしれない。」
アメリカで実際に黒人に投票権が与えられたのは1965年。南北戦争による奴隷解放から100年経っていた。実質的に黒人全員が投票できるようになったのは1971年に「文盲テスト」が廃止されてからの事である。女性参政権はそれより早く、1919年の憲法修正を受け1920年代に各州で実施された（一部州はそれ以前に実施）。
2016年04月15日
日本人はなぜ中国のステレオタイプをつくりだすのか
昨日の本は『歴史とプロパガンダ』だったが、今度は『革命とパンダ』🐼。どちらも昨年発表されたメディア論を扱った本。著者は南京出身、北京師範大学卒業後、東大で修士号を取得し、現在はTV朝日報道局で働くという。修士論文がこの本の元になっているということ。
こうしてみると、逆に、尖閣問題などで中国イメージが悪くなるまでの日本での「中国イメージの美化」に驚く。やはり、人民による共産革命への憧れがあったのか。その間に、共産中国はチベットに侵攻し、「大躍進」で数千万人の人民を餓死させたが、毛沢東は一切責任を取らなかった。流石に、政治の第一線からは退いたが、カムバックを狙って仕掛けたのが「文化大革命」で、洗脳した紅衛兵に自分の政敵を攻撃させる。
これら一連の動きは国交がなくとも漏れ伝わってきていたが（日本のマスコミも何度も取材に行っている）、日本人は共産主義中国にあこがれ続けた。それも、高学歴のインテリ程そうであったというのだから、日本の高等教育は知識を教えていても、何が真実で何がプロパガンダなのか、自分で判断できる能力を教えることには完全に失敗していた。
作家の高橋和巳は1967年に「朝日ジャーナル」誌上で『中国報告 新しき長城』と題し、「一見異様にみえる、しかし方法や範疇を異にする別な論理、別な合理性が確かにありうる」と書いているが、本当にあったのは「合理性」ではなく、集団暴力と恐怖による支配だった。共産党一党支配である中国は、建国以来一貫して、海外に対しても自国民に対してもプロパガンダを行っている。それを見抜けないのでは「インテリ」と言えないだろう。それとも、日本語のインテリとは英語の意味と違うのか
内閣府による「外交に関する世論調査」で親近感推移をみると、かって米国と並ぶ好印象を持たれていた中国支持が激減している。もともと、戦後同盟国となった米国と同レベルであったというのがすごいことなのだが、「（人民）革命の国」→かわいい「パンダの国」というステレオタイプから、交流が深まるにつれ、実態が分かってきたということなのだろう。
48:戦後の日本における中国観・1950年代半ばから中国に関する書籍雑誌が大量発行・共産主義的文芸書の売れ行きも東京・京都で極めて盛ん・共産党の宣伝機関である「中国研究所」が学究部門で大きな勢力『新中国』49:朝日系列の媒体で中国文化大革命を支持・1967高橋和巳『中国報告 新しき長城』（朝日ジャーナル）「一見異様にみえる、しかし方法や範疇を異にする別な論理、別な合理性が確かにありうる」51:文化大革命への疑問（朝日新聞1966/8/25社説）「党内民主主義が円滑に動いていないことが、ほぼまちがいなく推測される」57:1971藤子不二雄A『劇画 毛沢東伝』「ぼくが毛沢東にひかれるようになったのは、エドガー・スノーの『中国の赤い星』を読んでからだ」60:東京大学中国研究会1968/10/1「ここで私たちが確認しなければならない事は、中国革命の全過程を通じて、『人民、ただ人民のみが世界の歴史を動かす原動力である』という毛沢東の言葉を私たちが確信できること」113:1972日中国交正常化・8日間連続衛星中継！116:「パンダの国」・11/5-30にパンダを見た人は15万人（展示時間1000-1200のみ）！・パンダ新居建設工事（床面積153m2、運動場面積243m2、笹倉庫12m2、寝室冷暖房完備）
2016年04月14日
今そこにあるプロパガンダ
以前紹介したケント・ギルバート氏の『まだGHQの洗脳に縛られている日本』のタネ本の一つ。著者は早稲田大学社会科学部の教授でメディア研究が専門。フルブライト留学生で、以降、アメリカ政府の第一次資料を基に現代史を研究している。
プロパガンダには、誰が行っているかを明らかにして行うWhite Propagandaと、誰が行っているかを隠して行うBlack Propagandaがあるという。戦時中の大本営発表も戦後のGHQによるWGIPも情報源は明らかになっていたからWhite Propagandaなのだが、GHQは検閲を行っていることを日本人には隠していた。実際には、マスコミはおろか個人の書簡まで検閲していた。
その点で、WGIPは大本営発表より悪質であった。日本のメディアにPress Codeを課し、連合国や占領軍に対する批判を禁止し（同様に、放送コードは当時唯一の放送局であったNHKに対し）、GHQが行うプロパガンダに、日本政府及び日本人は一切反論できない状況を作り上げたのである。
1まえがき:プロパガンダとは、民主主義国では、敵に対して行うもの中国や韓国やロシアは独裁体制の名残で自国民に対しても行っている。2まえがき：占領中GHQは日本のマスコミと教育機関をターゲットにしてプロパガンダ・戦争に負けたこととその不幸と苦痛は侵略戦争に走った日本のせい・占領が終わった後もマスコミと教育機関によって再生産され現在も流通3まえがき：朝日新聞の「従軍慰安婦」報道・もとになった談話そのものがねつ造・日本軍の関与がなかったことが明白になると、狭義の強制はなかったが広義の強制はあったと主張を変更＊歴史的事実など問題でなく、軍国主義日本が多くの悪をなしたという主張がしたい「自分の主張自体は間違っていない」と開き直り・こんな新聞を600万人が批判もせず、ボイコットもせず読んでいた！74:ヤルタ会談・米国務省「南千島は、歴史的にも住民の実態からも北海道の一部なので、ソ連への引渡し対象から除外すべき」→ローズヴェルトに提出→会談で持ち出さず！・大統領が読んでなかった？←国務省に居たソ連スパイ「アルジャー・ヒス」・もしくはローズヴェルトの体調が悪く、注意散漫になっていたため89:ポツダム会議でトルーマンとスターリン決裂・原爆実験の成功→降伏勧告→日本「黙殺」→原爆投下・8月9日（長崎に原爆投下）ソ連、満州と南樺太に侵攻開始・8月15日千島列島に攻撃開始→9月5日占領完了・満州の工業施設接収＆60万人シベリア送り・日本の共同占領をアメリカに提案→トルーマンが拒否←米に原爆があったのでソ連強行せず144:Black PropagandaとWhite Propaganda・Black Propaganda:情報源を明らかにせず行うプロパガンダ・White Propaganda：情報源を明らかにして行うプロパガンダ＊GHQによるWGIPは戦時中の大本営発表より悪質両方とも情報源を明らかにしているが、WGIPではGHQが検閲を行っていることを日本人に秘密にしていた（マスコミはおろか個人の書簡まで検閲）・日本のメディアにPress Codeを課し、連合国や占領軍にたいする批判を禁止（放送コード→NHK）・GHQが行うプロパガンダに、日本政府及び日本人は一切反論できない状況175:ソ連、中国、韓国はサンフランシスコ条約に署名してない・ソ連が南千島軍事占領・韓国が竹島不法占拠・中国はチベット併合238あとがき：尖閣列島領有の正当性・「キッシンジャー文章」によって証明→野田内閣が国有化決定
2016年04月13日
レオナルド・ダ・ヴィンチ
今では、芸術家としてしられるレオナルド・ダ・ヴィンチだが、その人生の大半は発明家、特に軍事技術の発明家として過ごしている。1499年にフランス軍がミラノを占領した後はヴェネツィアの軍事技術総監督に、その後はやはりローマ教皇の軍事技術者として働いている。
裕福な公証人が農家の娘に産ませた子で、そのためすぐには家には迎え入れられなかったらしく、5歳までは農家で母親と暮らしている。その後は父親と同居するが、私生児のため正式な教育は受けられなかった。彼に大きな影響を与えたのは一緒に暮らしていたおじと祖父だったという。
彼にはおじから教えられた自然科学への深い探求心があり、また、祖父から日々の出来事や発想を記録することを学んだ。 レオナルドは生涯、日記兼アイデア帳を書き続けた。
・1452裕福な公証人と農家の娘の間に非摘出子として生まれる・5歳までは母親と住んでいたが、その後は父親と同居・同居したおじ（自然科学）と祖父（日記）が知的生活に強い影響・1466画家ヴェロッキオに弟子入り・1478独立（芸術家ギルド・マスター）・1482-1499ミラノ発明家・1499フランス軍がミラノに到達→ヴェネツィアに避難→軍事技術総監督
2016年04月12日
火薬と大砲
いよいよ火薬と大砲が登場。これによってそれまでの弓矢だけの飛び道具が根本的に変わる。火薬は元々中国人が発見したが、数百年に渡っておもちゃとして使われるだけだった。北方から侵入する蒙古の騎兵隊に対抗するため「火槍」が発明される。
現在の形の大砲がつくられたのは13世紀ドイツとイタリアで、1453年のコンスタンティノープル包囲戦ではオスマン帝国によって当時世界最大級の大砲が使われ、城壁を崩す成果をあげている。製作したのはハンガリーの技術者ウルバン。まだ、この頃飛ばしていたのは、ただの石だ。
71:火薬と大砲・1205チンギス・ハン中国に侵入・捕虜をとることなく、村全体を壊滅させる・中国軍が「火槍」という武器を投入（火薬で矢を飛ばす）・アラブ1250年までに「マドファ」と呼ばれる単純な大砲で火薬を使用・現在の形の大砲がつくられたのは13世紀ドイツとイタリア78:ウルバン砲とコンスタンティノープル包囲(1453)・オスマン帝国イフメト二世の命でハンガリー人ウルバンが世界最大級の大砲を製作（ウルバン砲）・8mの砲身で、270kgの巨石を1.6km先まで投射・50日間の激戦の末コンスタンティノープル陥落→イスタンブールに
2016年04月11日
Longbow
シャーウッドに住むRobin Hoodが得意なのがこれ。時はNorman Conquestの後。イングランド軍はフランスから来たノルマン軍に敗れたが、ゲリラ的反抗が続いていた。ロビン・フッドの物語は、そんな背景の中で、侵略者の圧政に反抗する民衆のヒーローとして誕生したようだ。
Longbowは弓の長さが150-190cmもあり、引ききるためには怪力が必要。イングランドの少年は7歳になる頃には訓練を始め、村という村でロングボウの競技会が開かれていたという。最長射程距離370m、90m以内であれば騎士の鋼鉄製の鎧も射貫くことが可能な、当時最強の飛び道具であった。
61:百年戦争・イングランドを征服したウイリアム一世はノルマンディ公の地位にとどまり、イングランド王がフランス王に忠誠を誓うことに・1337年エドワード三世がフランス王への忠誠拒否・1346年クレシーの戦いでイングランド軍が「ロングボウ」を投入・ウェールズ人が開発→イングランドとの戦闘で投入・弓の長さ150-190cm→引ききるために怪力が必要・イングランドの少年は7歳になる頃には訓練を始め、村という村でロングボウの競技会・最長射程距離370m 90m以内であれば鋼鉄の板を射抜くことも可能
2016年04月10日
Trouble with the curve
月曜日にNHK BSでやっていた映画『人生の特等席』を視聴。原題は、"Trouble with the curve" 「カーブが苦手」だね。原題は、「それってどういう意味？」と思わせるようなものが多く、邦題になるときには映画のテーマを暗示させるものが多い。
主人公（イーストウッド）は大リーグのスカウトマン。長年この仕事をやっているが老齢で、球団はそろそろ契約更改はないかと思っている。 33歳になる一人娘が居て、優秀な弁護士。6歳の時に母親を亡くして、小中学校にかけて父親の仕事に付いて回っていたので滅法野球に詳しい。父親はそんな生活を続けていては娘の将来がないと思い寄宿舎付の高校に入れて、電話もしない。娘はそのことを、「私が何か気に障ることをしたから？」と悩み、大学に入ったころから精神セラピーを受けるようになる。そのことで、父親と確執が生じて、未だに関係がギクシャクしている。というのがストーリー。 娘は、「高校大学と連絡もなかった」というのだが、送金していたわけだから娘のことを忘れていたわけではあるまい。思春期になった娘にどう話していいのかわからなかったのかもしれない。
娘を持つ父親にとっては、感情移入しやすい映画だった。 イーストウッド、映画製作に関わり始めてからの映画の方がいいな。
2016年04月09日
歴史の裏の会計士
著者は南カリフォルニア大学の会計学の教授。会計の歴史を専門としている。著者によれば、「会計を重視した企業や国家は栄え、軽視したところはほどなく滅亡する」ということになる。1340年に世界で初めて複式簿記を国家財政に採用したジェノヴァでは、自国の財政状態を常時把握できたため、他国と全く違う政治観を持つにいたったという。
確かに、会計を軽視するということは、「現実を見ない」という態度の表れであるから、現実を見ずに自分に都合のいい情報選択をしている組織はやがて滅びるだろう。私も経営の現場に居て、会計を軽視する経営者が破綻する姿を何度も見てきた。自分で始末がつけられなければ、最終的に従業員と取引先に大迷惑をかける。おカネに執着のない経営者はダメだ。
そこで気になるのは日本の国家会計。日本も2003年から「国の財務書類」という複式帳簿を発表している。しかし、予算編成とその執行は引き続き単式で行われている。3月に発表された平成26年度の最新版（なんと出るまでに1年掛かる
）を見てみる。いきなり債務超過である。
それも、総資産932兆円のうち半分近い432兆円の大幅な債務超過だから企業ならとっくに倒産している。国が倒産しないのは、お札を刷れるからである。中央銀行と政府の「独立」が前提となっている現代国家では本来違うはずなのだが、事実上日銀が国債の引き受けをしている現在、そういっても間違いではないだろう。
13:なぜルイ16世は断頭台へ送られたのか・最初に会計システムを開発し、財政と政治の責任を明確にしたのは、繁栄する商業国家・1340ジェノヴァ複式簿記で財政を記録→他国とはまったく異なる政治観・自国の財政状態を常時把握・16世紀になるとイタリアの共和国全体の衰退と絶対君主制の台頭→会計への関心が薄れる・政治の場から会計士が消える（共和制を維持したスイスとオランダだけが例外）・臣下が国家財政を厳正に記録しようものなら君主に報復されかねない22:透明性の高い精密な会計を自身の政治的正当性と功績に結びつけたAugustus・会計知識はローマの家長教育の一旦・会計技術は古代メソポタミア、ギリシャ、ローマでゆっくりと進歩し、中世イタリアで複式簿記が出現したことにより企業経営や政権運営の強力なツールに42:14世紀ヨーロッパ経済の中心となった北イタリア・複式簿記、為替手形、海上保険が存在・イングランド、フランダース、カスティーリャから来た毛織物とお金の大半が北イタリアを通過・フィレンツェは金融の中心→フロリン金貨がヨーロッパの基準通貨201:イギリスの産業革命を支えた会計・オランダ以上に会計の文化と教育が浸透・中世以降Grammar Schoolで会計教育・会計は商業を重んじるエリート層の必須の知識206:経営者としてのWedgewood・非国教徒の模範的成功者・陶芸技術に様々な革新＋効率的経営に情熱・緻密な原価計算（生産時間、賃金、原料費、機械設備費、販売費などを綿密に計算）
2016年04月08日
クロスボウの発明
「史上最大の軍事国家」であったローマ帝国が崩壊し、歴史も科学もほとんど進歩しなかったヨーロッパ中世「暗黒時代」が訪れる。そんな中でも、唯一発展を続けたのが冶金学で、それは戦争のために最重要であったからに他ならない。
その頃までに騎兵は当たり前になっていて、歩兵はこれに対抗する術がなかった。しかし、騎兵は馬から武具まで整備し維持するのに大変おカネがかかる。富んだ領主しか大規模な騎兵隊を持つことはできなかった。
騎兵に対抗すべく考え出されたのがクロスボウ。鋼鉄製の太い矢（ボルト）を用いるクロスボウは騎士の鋼鉄製の鎧をも射貫くことができる。クロスボウでは矢を引き絞るのに多大な力が必要で、そのため発射までに時間が掛かるのが問題だった。11世紀になると機械式のウインチが導入されて、この問題は解決される。
但し、ボルトの空気抵抗が通常の矢より大きく、また、カタパルト発射のため最小限の羽しかついておらず、弾道が安定しない。従って、通常の弓より命中精度が低い。
1307年11月18日、ウイリアム・テルが息子の頭上のリンゴを射たのがこのクロスボウだ。その後、テルはこの命令を出したオーストリアの代官ゲスラーを射殺する。この騒動がきっかけになり、スイスはハプスブルク家から独立することになる。
命中精度の低いクロスボウでリンゴを射抜くのは至難の業。息子が死ななくてよかった
58:英仏の初期の戦い・476年西ローマ帝国崩壊→暗黒時代・科学の進歩がほとんど見られず（唯一冶金学）・騎兵隊が当たり前に・クロスボウの発明（鋼鉄製の太い矢を放つ）→騎士に対抗・1066ヘイスティングズの戦いに勝利したノルマンディ公ギョーム二世がウイリアム一世に
2016年04月07日
史上最大の軍事国家
当時の文明世界の大半を征服し、「史上最大の軍事国家」と言われるローマ帝国。
意外なのは、「科学を軽蔑」していて、ギリシャやアレクサンドリアを征服したときも、何十万冊もの科学文献を一冊も翻訳してないということ
ローマ人はギリシャ人が使っていたバリスタやオナガーなどの攻城兵器を利用したが、それを改良しようとはしなかったらしい。ローマ人は優れた土木建築技術を持っていたところで知られるのに、これはどうしたことなのだろう？
54:ローマ軍とその武器・当時の文明世界の大半を征服・武器も戦術も当時の最高・鎧は数多くの板を重ねて（ブロンズか鉄）・攻城戦ではバリスタやオナガー（投石機）・概して科学を軽蔑（ギリシャやアレクサンドリアを征服しても何十万冊の科学文献を一冊も翻訳せず）
＊ローマ人は兵器に関してほとんど何の進歩も生み出していない
2016年04月06日
銅→ブロンズ→鉄
先週インフルエンザで寝込んで進まなかった『戦争の物理学』の続き。
EUの起源は、大戦後の「石炭と鉄鉱石の共同管理」（欧州石炭・鉄鋼共同体）にある。武器のほとんどは鉄からつくられるので、これを管理することが戦争再発防止に最も有効と考えられたわけだ。ここから欧州連合が始まった。
その位、鉄器の利用は人類発展の基盤をつくると共に、一方で大量の武器となった。鉄鋼生産が自国でできるかどうかは国家にとって最重要事項であったわけだ。「鉄は国家なり」（ビスマルク）の時代である。
現在の世界の粗鋼生産量はというと、16億トン。10年で1.5倍にも増えている。その伸びのほとんどは中国。世界の生産量の半分が中国という状況だ。作りすぎで、安い中国製製品が出回り、鉄鋼価格が暴落しているという。
・BC5000ペルシャやアフガニスタンで自由に成型できる奇妙な塊発見（銅）・錫を銅に溶かして加えるとはるかに硬くなる（青銅）・「驚異の武器」斧、短剣、盾、兜・BC1200鉄の精錬技術確立・矢を跳ね返す盾と鉄兜＋鉄製の長い剣と槍→歩兵がChariotと互角に渡り合えるようになる
2016年04月05日
「国家崩壊」の悲劇
米国を代表する歴史家のティモシー・スナイダー氏（米エール大学教授）の新著”Black Earth"が先月アメリカで発売された。本書はまだ読んでないのだが、今朝の朝日新聞にインタビュー記事が出ていた。
第二次大戦後その実態が明らかになり、世界が驚愕したホロコーストだが、衝撃的な結果に焦点が当たり、「全てはナチスのせい」にしてしまった。そのため、事実が解明されてなかったり、そこに至るメカニズムの解明が十分でなかったようだ。
ホロコーストで犠牲になったユダヤ人の97%はドイツ外に居たという。それも、大半が占領下にあったフランス側ではなく、ソ連侵攻で国家が崩壊したウクライナと東欧。モチベーションとなったのは、ドイツの「生存圏」確保で、肥沃な黒土地帯が欲しかったわけだ。本書のタイトルはそこから来ている。
著者は、将来その悲劇を起こしかねないのは中国だと見る。世界最大の人口を抱え、為政者の失政で数千万人にも上る餓死者を出した中国は「生存圏」に敏感だ。一旦上がった生活水準を落としたくはない。そう考えると、チベットを併合して漢人の入植を進める動機も理解できる。
ロシアは2013年のウクライナ危機以来、主権国家をないがしろにする傾向を強めており、かつてのソ連がホロコーストを容認していたことを考えると、「破壊的国家」の伝統は引き継がれているようだ。「強い方が正しい」というマッチョ文化は国家が変わろうと、健在のようだ。
＊国家の有無がホロコーストの決め手となった
・ 犠牲者の大半はドイツとは関係がない（殺されたユダヤ人の97%はドイツ外
・ 「アウシュビッツの逆説」犠牲者の半数は収容所ではなく、公衆の面前で殺された（当然、市民は知っていた）
・ドイツが虐殺を本格するのは国外に出た後（ソ連侵攻で破壊されて生まれた無法地帯）
・国家が破壊されなかったドイツ占領下のフランスと、国家が破壊されたポーランドやソ連領内では、ドイツ人は全く違う振る舞いをしている
＊ヒトラーが確保しようとしたのは「ドイツ民族の生存圏」
・多くのユダヤ人が住むウクライナや東欧の肥沃な土地（黒土地帯）確保が目的
＊「生存パニック」＋「国家の崩壊」＝虐殺
・ルワンダ、スーダン
・大躍進や文化大革命で大量犠牲者を出した中国は食糧問題に敏感
・ロシアは2013年のウクライナ危機以来、主権国家をないがしろにする態度
＊米国の問題は「科学の否定」
・ヒトラーの「生存圏」発想の背景に科学不信
・現在の米国にも科学の基礎を信じない一派
・先進国で唯一、人口の相当部分が地球温暖化を信じようとしない国
2016年04月04日
創作和太鼓
こうした創作和太鼓の流れはいつから出来たのだろう？おそらくは日本でもっとも有名な鼓童の結成は1981年。その前の10年間は「佐渡の國 鬼太鼓座」として活動とある。1980年代からは海外公演を多数行っていて、これが海外で大評判となる。「世界で人気」となれば、国内でも見直される。今も昔も、日本は「世界」に弱い。
ただ、この創作和太鼓ブーム？が祭りでの太鼓の伝承に繋がっているかどうかは不明。うちの近所では、本来子供が担うはずの太鼓を引き続き手がなくて大人がやっているという話も聞く。
かつて、村祭りで太鼓がたたけるかどうかは元服式的意味合いを持っていたようで、うちの死んだ父など亡くなるまで（といっても若くして亡くなったが）、祭りで太鼓をたたけなかったことを最後まで根に持っていた。祖父が一升瓶を下げて部落の顔役のところに頼みに行ったのだが、その年は子供の数が多かったようで、養子の父は選考に漏れたらしい。
それが、私が子供の頃には世の中高度経済成長で浮かれていて、何でも新しいものが良くて、伝統的価値が下がっていた時代。「太鼓をやってみるか」と聞かれた記憶もないし、「やりたい」と申し出たこともなかった。祭りに遺恨を持っていた父が情報遮断したのかもしれない。
そうこうしているうちに子供の数は半減し、年に一度の祭は、TVとマンガとやがてはゲームとケータイに取って代わられた。
創作和太鼓ブームを背景に、祭りの復活もあるのだろうか？
2016年04月03日
和太鼓集団「響屋」（おとや）
地元、三豊市高瀬町が誇る和太鼓集団「響屋」（おとや）＆子ども太鼓「童響」（どん）の年に一度のコンサートを聞きに風邪を押して詫間マリンウェーブへ。地元のイベントあちこちに引っ張りだこで、野外での演奏は何度か聞いたことがあるが、ホールで聞くのは初めて。
スゴイ
野外イベントで短い演奏を聴くのとは全く違う。代表の詫間さんや川江さんは中学校の先輩で、「何度言っても『発表会』と間違われてしまう」と嘆いていたが、これは確かに「コンサート」だ。響屋は2000年の結成で今年で16年。童響＆響屋出身者には佐渡の「鼓童」（こど）に移ってプロになった住吉君のような例も出ている。
今回のコンサートには同じく響屋に10年在籍の後プロになった奈尾知弥さんと、マリンバやサヌカイト奏者として有名な臼杵美智代さんも特別出演。二人ともうちのご近所さんなのだ。
2016年04月02日
MTB
3年前にイタリア人の友達Lucaに誘われて始めたMTB。小学生の頃、たんぼのあぜ道などを自転車で走っていた感覚が思い出されて楽しい。
しかし、仕事での移動にも使っているロードと違い、MTBは山での遊び専用。一人で山に入って楽しむほどのスキルもないことから、子供が出来たLucaが真面目に？働き出してからはほとんど乗ってなかった。
最近、地元のMTBグループを知り、先週初めてメンバーの方と一緒に走らせてもらった。マナーの徹底に関心した。ハイカーの方が居れば、必ず自転車を降りて道を譲る。そして、挨拶する。私はこれまですれ違える道幅があれば、そのまますれ違っていた。
聞いてみれば、ハイカーからすれば、自転車がすれ違うだけで脅威と感じる人もいるので、そうしているのだそうだ。それは、MTBがトレイルから排除されないための自衛策でもある。
写真：新旧のKona3台
フルサスのKonaめちゃ早かった！但し、スピードが出るので転倒すると大けがをする危険性が増す。オジサンライダーは止めておいた方がよさそう。(^^;2016年04月01日
中小・零細、果実が落ちてこない？
今週の朝日新聞のトンデモ記事。アベノミクス「分断」の現場と題したシリーズ記事の「上」のタイトルは、「中小・零細、果実が落ちてこない」。
まるで、「中小・零細には経営能力がなくて、（景気の）果実が落ちてこない限り未来はないのだ」 と断定しているかのよう。これほど、世の99%を占める中小企業をバカにした話もないだろう。
記事によれば、
・ある滋賀県の金属加工会社では従業員の2割が残業月100時間以上
・生産しているのは大手ゼネコンから受注した建設用資材
・それなのに「下請け同士の競争が激しくて」利益が出ない
ということ。仕事は繁忙なのに利益は出ないという「バタ貧」状態。
これは第一義的には経営者の責任なので、横並びではない競争力のある開発するとか、生産方式を見直すとか、交渉力を高めるとか（これが費用対効果は一番高い）何かしなければいけない。ライバルが多くて困っているなら、相手も困っているだろうから、合併することも考えられる。
欧米がこういう状態になりにくいのは、資本家の力が強いので、「儲からなければ事業をやる意味がない」 と考え、�〃弍勅圓鵬�革の圧力をかける→��経営者を替える→��事業を売却するか止める、という経路をたどる。結果として、弱小企業が淘汰され業界の利益は守られる。
一方、記事の後半にある、「ライバル多さ」の直近の原因が、中小企業金融円滑化法にあるとの指摘は正しい。 いわゆる「平成の徳政令」だ。主導したのは当時鳩山政権下の金融担当大臣であった亀井静香氏。
あれで、バブル崩壊以降なかなか変わらない産業構造を一気に変えるのに千載一遇のチャンスを自ら逃してしまった。あの時なら、失業率が10%超えても、中小企業が1万社倒産しても「リーマンショックのせい」に出来たのに、この広島出身の懲りない政治家のせいで日本経済の再生は10年遠のいてしまった。
亀井静香は元警察官僚。警察官僚として優秀だったのかもしれないけど、どうしてその人が金融相になったのか理解に苦しむ。2013年のインタビューを読んでも、直接効果だけしか見ておらず、その政策がもたらすもっと大きな広範囲にわたる長期的な影響について全く理解してないことが分かる。
「08年のリーマン・ショック後、貸し渋りどころか貸しはがしが横行しました。資産内容が多少悪くても、頑張っている中小企業にリスクをとって資金を貸し、もうけていくというのが金融機関の本分です。金融機関がやるべきことをやっていたら、こんな法律は必要ありません」
世界中で一番中小企業に貸し出しているのは日本の銀行である。1-2%の粗利で「リスクを取れ」というのは経済原則に反している。まずは、自分が1-2%の金利で中小企業にお金を貸してから言ってもらいたい。リスクに見合ったリターンを求めるなら5%以上になるはずだ。実際、クラウドファンディングでの投資家利回りは短期でも5%以上に設定されている。
