2015年11月
2015年11月30日
リバースイノベーション
医療機器の開発に関わることになり、読み直してみた。著者はインド出身の公認会計士でTuck School of Business教授。GEで初の招聘教授兼Chief Innovation Consultantを務めた。「リバースイノベーション」とは、「途上国で生まれたイノベーションを先進国に逆流させる」ことである。
昔から、「イノベーションは制約の中から生まれる」と言われる。予算や期間、リソースに制約があってこそ、従来とは違う発想で革新的な製品が生まれるのだ。潤沢な資金で「のびのびと」運営されたXEROX PARCでは、ついにXEROXの次世代を担う製品は生まれなかった。世界中で、イノベーションの主役となっているのは、制約の多いベンチャー企業である。
「リバースイノベーション」もこの「制約」の一つと考えられる。新興国ではまだ貧しいがゆえに、低価格でなければならない。それも、桁違いにだ。従来品の3割減ではなく、1/10にしなければならないから、全く違う発想で臨まなければ実現できない。
交通が発達しておらず、貧しいから、医療従事者はこちらから患者のところまで足を運ばなければならない。そのためには、携帯性が必須だ。電気も来てないところが多く、また、来ていても供給が不安定だから電池式にする必要がある。
専門医が不足しているから、誰でも使えるものでなければならない。故障しても修理できるところが少ないから、メンテナンスと修理がユーザーでもできるくらい簡易でなければならない。
開発に成功した「褒美」は、桁違いの人口である。価格が先進国の1/10であっても、市場は10倍が見込める。さらに、安くて使いやすくて持ち運びしやすい医療機器は、先進国でも人気となり、新たな市場を開拓した。
37:GE中国で開発された小型超音波診断装置・携帯電話サイズの画像形成装置Vscan・電池式・イスラエル開発チームによるイノベーション・$15000：従来品の15%の価格・売上 2002 $4M 2008 $278M248:インドで生まれて世界に広がったGE Helathcareの携帯型心電計2000 John F. Welch Technology Centre (Bangalore)GE初のアメリカ国外の総合研究開発施設 4000人（内Healthcare1300人）2001 ハイエンド心電計（ECG)開発 $3000-10000MAC400開発チーム発足 目標：$800 開発予算$500K・携帯性・バッテリー駆動（電力供給不安定）・使いやすさ（専門医不足）・メインテナンス＆修理の容易さ2007/12 MAC400発売 検査料MAC400 従来都市部 $2 $20農村部 $1 $5→世界売上の半分が欧州に（個人開業医）374:「GEがアメリカで勝つためには、インドと中国で勝たなければならない」CEO Imelt
2015年11月29日
こんこん靴市
土曜日の昼のニュースで、「靴祭り」なるものを玉姫稲荷神社（清川）でやっているというので、陽気に誘われて出かけてみることにした。根津から、途中、吉原、山谷を通り、浅草まで徒歩45分であった。山の手とは雰囲気が違う。
なぜ浅草が「靴の街」になったか？それには、江戸幕府から「皮革取締り」の特権を与えられていた弾左衛門の影響が大きいという。明治になって西洋式の軍隊ができると、軍靴の需要が急増した。それまで草履と下駄でやってきた日本には靴作りのノウハウがない。弾はアメリカ人の製靴技師と中国人の職人を教師に雇い、浅草の自宅近くで靴工場を始める。この靴工場自体は軍が発注を破棄したせいで大打撃をこうむるが、ここで靴作りを学んだ職人が浅草で独立して靴産業を起こしたのである。
靴祭りでは、「こんこん靴市」なる靴の展示即売も行われる。地場の靴メーカー数十社が参加し、靴・ハンドバッグ・ベルトなどの皮革製品が定価の6-8割引きで売られていて、大人気だった。毎年5万人が集まるという。
2015年11月28日
歴史認識問題の解決は可能か
現在までに続く歴史認識問題の発端は、1995年8月に村山首相が内閣総理大臣談話として発表した「村山談話」だ。誰に頼まれて出したわけでもなく、戦後50周年にあたって「社会党の委員長が総理になった以上この程度の談話が出せなければ意味がない」（村山首相当時）として発表したものだ。
細谷教授は、「歴史認識が各国のアイデンティティと深く結びついている以上、そもそも国境を超えた歴史認識の共有は難しいという意識が、村山首相には欠けていたのだろう」という。「国家間の問題でも、誠意を示せば決着がつくと感じていたのかもしれない。ところが歴史認識問題という『パンドラの箱』を開けた結果、中国でも韓国でも歴史認識問題を封印しておくことが不可能になってしまった」。
つまり、歴史認識問題は日本のオウンゴールのようなもので、中韓はそれを利用しただけというのが細川教授の解釈。この程度の教養、外交センスしか持ってない人物を首相にしたことが間違いだ。
＊日本がかつて行った戦争をどう評価するか・1995年8月戦後50周年「村山談話」従来、歴史認識問題を外交問題化しないことが、日中・日韓の関係を維持する政治的叡智だったが、首相が自らの歴史認識を示した結果、外交問題化した。・歴史学の潮流は、時代、国によって大きく変化レオポルト・フォン・ランケ：歴史的事実E.H.カー：歴史家により、その歴史家の生きる時代により、歴史的事実が異なって記憶される1980〜ポストモダニズム：歴史的事実より「世界観」・慰安婦問題史実に基づいた歴史学ではなく、過去の「事実」をシンボルとして利用し、自らの望む方向へ現実を動かそうとする
2015年11月27日
成果を上げるリーダーの習慣
また、「ハーバードか！」と思うのだが、日本で売るためには仕方ないのだろう。米国での原著にはHarvardはどこにも入っていない。
カプラン先生は、ABC管理会計や、バランス・スコアカードで有名。
＊卓越したリーダーシップを発揮するカギは、答えを知っているかどうかではなく、「正しい疑問」を持てるか否か・リーダー：苦しい時期に物事を客観視し、分析し、立て直して前進するには、どうすればいいかを知っているかどうか・会社の土台：ビジョンと優先事項優れた企業のビジョンは明確で、迷走している企業のビジョンには混乱や迷いが見られる。「自分たちは何者で、どこへ向かおうとしているのか」・リーダーにとって、時間は、最も貴重な資産人間は、時間にルーズになりがち。定期的に仕事の状況を客観視して、時間配分を吟味しないといけない。・会社が成功するには、人材の育成・管理が不可欠部下を育てるにはコーチングを活用して、具体的で改善できる弱みを見つけ、実践可能なアドバイスを提供する。コーチングは年度が始まって早い時期に行う。・会社の内外で起こる変化に応じ、組織にズレが生じていないかチェックする
2015年11月26日
優秀なサラリーマン経営者＜ボンクラ二代目
週末、1年ぶりに「ひふみ投信」運用報告会に出席。運用成績にももちろん関心があるが、運用のプロの話を直接聞くのは面白い。以前は、「企業ホームページに、�ー卍垢般魄�の写真が掲載されている、�⊆卍垢里濕命新悩棔↓�写真掲載なし」の各グループの株価パフォーマンスを比べると、�，�業界に関係なく圧倒的にパフォーマンスがいい、というのが面白かった。これは、経営陣が「顔出し」して、「自分たちが責任を持つ」という覚悟の表れなのだろう。
今回面白かったのは、「以前は、カリスマ創業者が引退して、ボンクラ二代目になった時は自動的に売っていたが、今は違う」という話。ボンクラであっても、オーナー経営者として逃げなければ、長期的視点で本当に何が会社にとっていいのかを考える。
いくら優秀でも、あるいは、優秀であるが上に、2期4年位で交代するのが常態となっている大企業では、リスクを取ろうとしない。むしろ、自分の任期の間は無事に終わらそうとして、「問題の先送り」を選びかねない。東芝の粉飾問題にも、そういった背景があるのだろう。
従って、投資理論的には、「アクティブファンドが長期的にインデックスを上回ることはない」というのがセオリーなのだが、日本市場ではそれは当てはまらないという。なぜなら、日経225などを構成するのは日本を代表する大企業であり、東芝のような企業がたくさん入っていていつどこで「爆発」するのかわからない。
というわけで、投資では経営者の質を最重視しており、通常は、
（カリスマ）創業経営者＞（ボンクラ）二代目＞プロ経営者＞サラリーマン経営者
なのだそうだ。
イメージとしては、
ユニクロ柳井社長＞堀場製作所・堀場厚社長＞LIXIL藤森社長＞その他大勢
という感じか。あくまでイメージとして
2015年11月25日
コマツが目指す「日本国籍グローバル経営」
坂根正弘さんはオーナー経営者ではないので、柳井社長や孫社長程目立たないけど、現在の日本を代表するメーカー経営者だ。正確には、現役は引退した相談役なので、「であった」というべきか。
元々ブルドーザーの設計をしていた技術者で、製図の仕事が嫌で、クレームに対応に進んで出かけていたところ、顧客から「指名」がかかるようになったのが20代。ここでプロとしての基礎を作ったわけだ。出世する人は、やはり30歳までに頭角を現している。孫正義風に言えば、「20代で名乗りを上げる」ということだ。20代でプラプラしていたのに、30代になったら急に活躍し始めたという人には未だお目にかかったことがない。
そして、その後、40代で2度のアメリカ駐在で経営に開眼したという。特に、1991年から社長（COO）を務めたアメリカの合弁会社で、不況の中、大リストラの実行を迫られる。この経験が、10年後に社長に就任したとき、不況下で、しかも今後国内市場が全く伸びないと予想される中、迅速な決断に役立ったわけだ。
実は、コマツのB/Sはそれほど悪くなく、当時の他社のように、給与カットなどで乗り切ることも可能だった。しかし、それでは必要な改革を進められないと考え、敢えて、全社員に希望退職募集の手紙を出して危機感を醸成した。これがあったから、「ダントツ経営」を実施できたわけだ。
＊知行合一：行動のなかにしか、本当の知識はない（王陽明『伝習録』）
2:ブルドーザーの設計者としてクレーム対応「機械が壊れたので坂根君を寄こしてくれ」と指名4:中国は遅れた国ではない11:日本人の誰もが傍観者になってしまっている・リーダーシップの不在＆貧困133:2度のアメリカ駐在で企業経営に開眼138:QCDはボトムアップ＝日本の強みはものづくり←生産技術者だけは現地化できない「どんな優秀な経営者でも、QCDの問題は解決できない」Detroit Dieselペンスケ会長145:「自前主義」からの脱却・オランダERP BAAN採用第一号・コマツソフト→TISに売却205:都市化率が低い日本・欧米の80%に対して60%222:「会社がこういう状況になったのは、経営陣の責任が一番重い。しかし、皆さんも悪かった。それぞれが『何かできるはずだ』と考えるように意識を変えてほしい」（2001社長就任時の社内挨拶）223:コマツを「代を重ねるごとに強くなる会社」にしたい・社長と会長の役割を分ける（社長：CEO 会長：取締役会議長＝社長の監視）
2015年11月24日
日本農業への遺言
先日、香川大学で講演いただいた神門先生の著書を改めて読んでみる。内容はもちろん、講演内容と被るのだが、その筆致には、日本農業に対する絶望と、衰退を止められなかった研究者としての懺悔と、真実を書き記したいという覚悟があふれている。
神門先生は、日本農業を保護するべきという「保守派」でも、民間企業の参入によって成長産業にすべきだという「改革派」でもない。先生に言わせれば、それは補助金の出る先が変わっただけの話で、日本の農業問題の本質である「耕作技能の低下」を食い止めることにはならないからである。
この惨状を、神門先生は、「現状逃避的」だといい、戦前の状況に似ているという。「不快な事実は知りたくない」という大衆心理があり、政治家もマスコミも大衆迎合で「農業は成長産業」と持ち上げる。これは昭和不況の打開を戦争に求めた大衆に重なる。私見だが、戦争を求めたのは大衆で、マスコミはそれを煽り、軍部はそれに乗っかった。
「現実を見る」ことからしか問題解決はできない。それが、「農家、農地、消費者の惨状に正しく絶望する」ことなのだ。
＊いまの日本農業は（中略）、良い作物を作る魂を失い、宣伝と演出で誤魔化すハリボテ農業になりつつある。JAや農水省を悪者にしても事態は解決しない。農家、農地、消費者の惨状に正しく絶望する。そこからしか農業再生はあり得ない。まえがき：もともと日本には優れた耕作技能があった。おいしくて安全な作物を自然環境と調和しながら作る技能があった。（中略）農業者の耕作技能への関心が薄らいでいる。なにせ、耕作技能を磨いてよい農作物をこしらえたとしても、消費者の舌が愚鈍化したため、よしあしがきちんと評価されない。さらに、都市部でも農村部でも土地利用規制の骨抜きが進み、農業者は地力投資に専念できない。本人がどんなに農業に打ち込んでいても、周辺の農地が無計画に転用されれば、生活光などによって作物の生育障害は不可避だ。このようは状況では、まじめに農業に打ち込む者ほど馬鹿をみる。�‘�本農業の本来の強みは技能集約型農業にある。��耕作技能の発信基地化することにより、農業振興はもちろん、国民の健康増進、国土の環境保全、国際的貢献など、さまざまな好ましい効果が期待できる。��しかし、その農地利用の乱れという「川上問題」、消費者の舌の劣化という「川下問題」、放射能汚染問題の三つが原因となって、農業者が耕作技能の習熟に専念できず、肝心の耕作技能は消失の危機にある。�ぅ泪好灰澆筺崋閏圈廚蝋椋邉伺修両端困箸いμ簑蠅遼楴舛鯆昌襪擦此�現状逃避的に日本農業を美化するばかりで、耕作技能の低下を助長している。19:民主党と自民党が競って農業補助金のバラマキ日本の農業保護額4.6兆円＞農業付加価値3兆円（OECD推計）149:植物工場はうまくいかない←化石エネルギー多投入単年度黒字化は16%で、初期投資の大きさに見合っている例は皆無（野村アグリプランニング＆アドバイザリー調査2011/7）151:粗放農業「奇跡のリンゴ」の欺瞞地球上の人々が十分に少なく、前近代的な生活様式で構わないというのであれば、天然に自生するものの中から、食べどきのものだけを採取する「粗放」のスタイルのほうがよい。（中略）しかし、現実には、70億もの人口があり、しかもその人口が増え続けており（中略）また、好きな時に好きなものを食べるという習慣がしみついてしまった現代人が、収穫の時期や量が調整できない自然採取を食生活のベースにすることは考えがたい。粗放農業も、ハイテク農業と同様、現状逃避的な夢物語。
2015年11月23日
The Last King of Scotland
連休でもう一本映画を見れた。これも録画しておいたイギリス映画「ラストキング・オブ・スコットランド」。
主人公はスコットランドで医者になったばかりのニコラス。1971年冒険を求めて何も知らずにウガンダにやってくる。交通事故にあったアミン新大統領の治療をしたことがきっかけで大統領一家の主治医になり、豪華な家と車を与えられる。外国人で利害関係のないことが気に入られ、ついには大統領のアドバイザーになる。若くて無知なため、大統領が裏で大規模な反対派の粛清をしていることに気づかなかった。
映画では、大統領夫人ケイがニコラスの子供を妊娠したのが発覚して惨殺される。これは、アミン大統領と離婚したケイ元夫人が大統領の子を中絶した史実に基づいている。ケイ元夫人は両手両足を切断され、左右逆になるように縫い合わせられた上、見せしめのため、別の元夫人二人に見せられたという。
結局、アミン大統領は、アジア人追放（主にイギリス植民地化で入植していたインド人）などの無謀な経済政策、反対派及び他部族の虐殺（30万人）、西側諸国との対立（ソ連が支援）で、豊かなアフリカの国であったウガンダをめちゃくちゃにした挙句、 1979年に失脚した。
アフリカは人類発祥の地のはずなのに、植民地から独立して以来、ほとんどの国が、内戦と虐殺、汚職と腐敗を繰り返している。なぜなのだろう？
2015年11月22日
映画"BROKEN TRAIL"は実話か？
このところ忙しくて映画を見る暇がなかったが、東京に戻って録画していた映画「ブロークン・トレイル」を見た。2006年の制作当時、ゴールデングローブ賞やエミー賞を受賞あるいはノミネートされた作品。
舞台は1898年の西部。これまで見た西部劇と違うのは、映画の冒頭から始まるリアリズム。サンフランシスコでは中国から連れてこられた少女が売春宿に売られ、オレゴンの牧場では牛が去勢され、焼印を押されている。その睾丸を隣で犬が食べている。
当初5人いた少女のうち一人は旅の途中で病死、もう一人は2度のレイプでショックを受けて自殺してしまい、お姉さん格だった女性は主人公の一人と最後に結婚。残った二人がサンフランシスコの孤児院に預けられる。
フィクションかと思ってみていたら、映画の最後に、登場した中国娘の消息が紹介される。そのうちの一人はStanford大医学部に進んで、医者になった後に帰国する。新中国建設に共感して二人とも帰国したに違いないのだが、二人とも「英語を話すインテリ」＝反革命的とされ、1970年前後の文化大革命で殺されてしまったという。なんとも皮肉な話だ。
2015年11月21日
「値上げ」が正しい
12年前に『営業マンは断ることを覚えなさい』を読んでファンになり、その後、事務所に伺ってお話しし、会員になった。その石原先生の最新刊がこれ。
これまでの本は、日ごろ思っていることや指導している内容を書いていたので2週間くらいで書き上げていたらしい。今回は、2年間かけて作りこんだ初めての本だという。
日本では20年間デフレが続いたせいか、「安くなければ売れない」という思い込みは相変わらず強い。もともと、「安くするのが顧客奉仕」という考えもあって、値上げに対する心理抵抗は強い。実際は、世の中には様々な顧客がいて、様々なニーズがあるので、「高いものを買いたい」と思っている人も大勢いる。
本書でも紹介された例として、JR九州の「ななつ星」は、一人当たり75-130万円という国内旅行としては破格の高額設定にもかかわらず、競争率が数十倍という人気だ。誰に強制されるわけでもなく、顧客が設定価格以上の価値を認めているのだから、JR九州はもっと値上げしてもいい。
また、日本人形が売れない時代に会って、「ふらここ」（写真）は掌に乗るような小型の雛人形が対で6万円~、幅50cm程の小型の三段飾りが20万円するにも関わらず、毎年1月初旬には完売してしまうという。
同じ1000万円の売り上げを上げるのなら、1万円で1000個売るよりも、10万円で100個売るほうが簡単だ。原価も、販売管理費も安く上がり、収益力が向上する。経営者はその分、「会社の未来を作る」ことに時間を使える。
「そこそこのものを安く」が日本の高度成長を支えたが、低成長下では「良いものを高く」でなければならない。そして、何が良いかを決めるのは顧客で、その価値はモノだけでなく、付加される価値情報によって違ってくる。
欧米人と話すと、「どうやったら高く売れるか」に話が集中するが、日本人は「どうやったら安く売れるか」の話のほうが多い。「価格で勝負」なのだ。自然と数量増が期待できる高成長下では先にシェアを取るためにそれもいいが、低成長下ではじり貧になってしまう可能性が高い。
はじめに：4500社を超える企業コンサルティングで、9割以上の企業で値上げを実施値上げ→収益力が向上→経営者が「会社の未来を作る」時間ができる会社が儲かる体質に変わる４つのステップ�｜傭覆鮠紊欧���客層を変える��情報を加える�し弍弔魏鵑�24:中小企業は価格競争に加わってはいけない43:上流層が「買い物難民」と化している49:「安く売ることが企業の務め」という間違った思い込み133:価値をきちんと伝達できているか村上隆「自分がその作品の価値を丁寧に説明するから」「どんなに優れた作品であっても、その価値が人々に伝わらなければ無価値」164:他社が軒並み安いと、値上げはとても上手くいく消費者心理「高いものには高いなりの理由がある」184:クロージングは質問系の言葉や表現で締めくくり「○○という金額ですが、いいかがですか？」「大丈夫ですか？」「問題ないですか？」
2015年11月20日
石の城
丸亀城は、「石の城」あるいは、「石垣の城」とも呼ばれる。それだけ、石垣が有名なのだ。4重に重なる石垣の高さは合わせて60mあり、これは日本一である。日本一の高さの石垣の上に立つ天守閣（1660）が、全国にある現存木造天守の中で日本一小さいというのも面白い（国指定重要文化財）。
ところが、その石垣の一部が崩壊の危機にさらされており、この度、大規模修理が決まった。石垣の傷みは城の南側が激しく、これは、城郭の北部基盤が固い安山岩で、南部は花崗岩の崩壊土であることが影響している。
石垣は、「野良積み」「打ち込みハギ」「切り込みハギ」が使い分けられている。「野良積み」は生駒時代の古いものが多く、大部分は「打ち込みハギ」である。大手門など特に人目につくところには見栄えのいい「切り込みハギ」が使われている。
見た目は、切り込みハギ＞打ち込みハギ＞野良積みの順にいいのだが、実は、石垣としての強度は逆。様々な石を組み合わせた野良積みの方が、石を精緻に加工して、隙間なく積んだ切り込みハギより強いというのは面白い。石垣の最大の敵である「水圧」に対して、隙間の多い野良積みは、水はけが良い。但し、野良積みでは数十メートルもある高い石垣は出来ないので、必然的に打ち込みハギを使うことになる。
丸亀城の石垣に使われている花崗岩には、「刻印」が見られるものがある。「井」「九」の刻印は、丸亀沖の本島の石切丁場のもの。黒田、毛利、有馬などの雄藩の刻印がついたものもあり、これらは、小豆島にあった各藩の石切場のもの。これらの藩は、徳川大阪城建築（1620-1629）のために各藩で石垣建築を分担した。
現在の丸亀城は、山崎氏時代の1643-49にかけて建築されており、どうやら、大阪城建築のために切り出された石材も流用されたらしい。その代金を山崎氏が各藩に支払ったかどうかは不明。大阪城建築で余ったものを大阪から運んだ石もあり、その場合は、幕府から無料でもらったのかもしれない（幕府から築城のため銀300貫の現金も得ている）。
2015年11月19日
なぜ「丸亀」？
うどんチェーン店「丸亀製麺」の全国展開で一気に有名になった「丸亀」。丸亀製麺は神戸の会社が運営する、実は、丸亀とは関係のないチェーン店なのだが（詳しくは、「なぜ、うどん県からはチェーン店が出てこないのか」を参照いただきたい）、それだけ、「丸亀＝讃岐」というイメージが強いことの表れでもある。
丸亀城のふもとにある高校に通った私にとっては、丸亀は子供の時から当たり前に思っている地名だが、考えてみると、全国あちこち訪問したが、他の地域で「丸亀」とは聞いたことがない。「三島」なら全国あちこちにあるし（愛媛県には、「伊予三島」）、「松山」だって全国にあるから、「東松山」も出来た。
実は、丸亀に出来た城だから「丸亀城」なのではなく、亀山に出来た城を「丸亀城」と呼んだことから、一帯の地名が「丸亀」になったのである。つまり、城の名前が先で町の名前が後。「亀山」ならシャープの液晶工場で有名な三重県の亀山市ほか全国にある。
先週末、香川大学公開講座「讃岐ジオサイト探求」で、初めてガイド付きで丸亀城を見学した。灯台下暗し。これまで何十回となく登っている丸亀城も知らないことばかりだった。
まず、丸亀平野の地形を見ると、丸亀城は土器川扇状地の張り出した部分にある。従って、標高66mの亀山だけでなく、周囲は海抜5m程あるので、水害を受けない。
亀山には、安山岩の火山岩頸が見られ、「讃岐平野のミニ富士の一つだったと推定される」（長谷川修一教授）。 つまり、丸亀城は自然の地形をうまく生かして建てられているのだ。
2015年11月18日
宦官
『三国志』といえば、日本では昭和14年から18年にかけて新聞連載（「中外商業新報」現在の日本経済新聞）され、戦後単行本となって絶大な人気を博した吉川英治版と、それを基調にしながらも独自の解釈を加えた横山光輝の漫画版が有名。今回は、北方謙三版を読んでみる。
内容は皆さん知っての通り、後漢末の中国を舞台にした英雄物語。西暦3世紀ごろの話で、天下を狙う各将軍が数万〜数十万の軍隊を組織して覇を競い合う。その訓練、命令系統、歩兵や騎馬兵、装備、兵站など、技術こそ違え、考え方は現代にも通じる。恐るべき文明の発達だ。
中国宮廷の歴史を紐解いて、必ず出てくるのが宦官。後宮で仕える「去勢された官吏」のことだが、これほど多数の宦官を擁した国は中国以外にない。しかも、紀元前14世紀の殷王朝で既に宦官が使われていた記録が残り、以来、中国では各王朝で重要な役割をはたしてきた。これは、世界に類がない。
中国でこれほどの数の宦官が必要とされたのは、それだけ中華皇帝が妻妾を抱え込んだから。その数は数千人から多いときは数万人に及んだという。やはり、中国は桁違いだ。
57:盧植解任の報が飛び込んできたのは、そういう時だった。聞いた瞬間に、なにが起きたのか曹操には理解できた。多分、軍情視察に、朝廷から宦官が派遣されたのだ。要求する金を渡せば、手柄のひとつもでっちあげてくれる。拒絶すれば、なにを言われるかわからない。
101:宦官とは、そういう権謀の動物だった。欲望の対象が、権力と金にしかむかわないのだ。権力への欲望も、戦で果たそうというのではない。権謀がすべてだった。もとより、金には貪欲すぎるほどである。
2015年11月17日
義和団事件
1900年の「義和団事件」中に起こった、珍妃の殺害事件をモチーフとした小説を週末に読んだ。義和団事件は高校の歴史教科書ではわずか数行だったと思うが、改めて考えるとひどい事件である。
1636年に満州の地に建国された清は、1644年に首都を北京に移し、中国全土を支配するようになる。その後200年に渡る平和を享受した清では武器や軍隊組織が旧式のままであった。その間に、戦争を繰り返し、さらには産業革命を成し遂げた西洋列強の前に、清は無力であった。
清が阿片輸入を禁止したことに端を発する1840年の「阿片戦争」で、清はイギリスに完敗する。これ以降、清は西洋列強のなすがまま。清は半植民地と化す。
珍妃は光緒帝の寵愛を一身に受けたと言われる側室。1898年の「戊戌の政変」の際に捕らえられ、監禁される。義和団事件の際に、珍妃は西太后の命令で宦官に井戸に落とされ殺害されたというのがこれまでの定説である。珍妃の遺体を井戸から引き上げて弔ったのは日本軍であった。
その定説に異を唱えて、小説の形で謎解きをしたのが本書。歴史上の実在人物で構成され、「そうだったのかも」と想像を巡らせるのが面白い。
15:ともあれ八か国連合軍は、その軍紀のよしあしにかかわらず個人的な略奪を続けました。彼らは自らが犯した婦女子をさらって、裱背胡同に慰安所をこしらえましたのよ。136:十数年前、初めて北京を訪れたときはこの光景に仰天した。官僚が登庁前に街路で朝食を立ち食いするなど、霞が関では有りうべくもない。要するに恥という概念が、この国にはないのだろう。庶民から大官に至るまで、ことさら礼を重んずるのに、なぜか体面には無関心なのだ。そう思えば、すっかり旧に復した公使館街に引き較べて、官衙の壁がまだ焼けこげたままになっていることも、何となく説明がつくが。267:アヘン戦争、清仏戦争、アロー号戦争、日清戦争、義和団戦争と、清国は戦に敗れるたびに巨額の賠償金を支払う羽目になった。もちろん病み弱まった清国のどこにもそんな金はないから、すべて割賦払いである。しかしその分割金も条約通りに支払うどころか、利息すらも覚束ない。そこで債権者である列強諸国は当然の権利として、清国政府の財源である関税を差し押さえた。つまりロバート・ハートは列強諸国の全権として「清国海関総税務司」の要職に就いたのである。いわば倒産寸前の大国の歳入を勝手に操作できる管財人だった。386:洋人たちはこの国にひどいことをしました。茶葉や器や絹のかわりに阿片を持ち込み、それを拒めば、鋼鉄の船を並べて、大砲を撃ちこみました。大勢の人々を、犯し、かどわかし、傷つけ、殺しました。自らの利のために人を殺す。ひどいことですね。でも、彼らは貧しいのだから仕方がない。かの国にはおいしい茶葉がないから、それを欲した。美しい器も、暖かな絹もないから、それを欲した。そして、見返りに渡すものがないから、インド産の阿片を置いていった。
2015年11月16日
アベノミクスと農協改革
「農家は（補助金が出るので）生き延びるが、農業は死んでいく」
明治学院大学経済学部教授である神門先生が香川県で初めて講演した。小さな体で朴訥と話されるのだが、その切り口は素晴らしく新鮮だった。
「農業の主人公は動物であり、植物」
だから、「人が手間をかければよいものができる」ということではない。「有機栽培だからいい」というものでもない。よい農作物や良い家畜を育てるには、その対象物をよく理解するしかないのだという。このあたり、「奇跡のリンゴ」の木村さんに似ている気もした。
「消費者はイメージだけで購買しており、リアルな農業に興味がない」
食事に占める加工食品の割合が一環として増えている。素材を直前に調理するのが味もよく、栄養価も高いが、家庭料理は廃れる一方だ。「日本人の舌は厳しい」というのは正しくない。
かっては、バイヤーがプロで農産物を見極めていたが、「北海道フェア」をやるのが仕事になっている。北海道は大規模農家がばかりで、周囲との軋轢や監視の目がないので、農薬や肥料の使用量も多い。北海道の農産物は一番危ない可能性がある。
神門先生は、農家としての技能を上げない農家にも、マスコミのイメージに踊らされる消費者にも厳しいので、なかなか発言の機会がないという。学会にも所属しない。
2015年11月15日
熊野古道の影響を受けた「四国遍路」
9月から始まった「讃岐アカデミー」第8回講座は「香川の札所」であった。講師は、香川県政策部文化振興課の北山健一郎さん。
今回の新たな発見は、「四国遍路の成立が、熊野古道の影響を受けていた」ということ。これまで、いつ、誰によって四国遍路が成立したかは正確にはわかっていなかった。しかし、ここ数年、四国遍路を世界遺産に登録する準備が始まり、その一環として、研究が進みだした。
これまではっきりしていたのは、「起源は平安時代の修行僧で、室町時代から江戸時代初めにかけて一般庶民にも広がった」ということ。それ以降、明治初めの廃仏毀釈令で愛媛県の1神社が寺社に分けられて移転した以外は、同じ場所で続いている。
鎌倉時代や南北朝時代の史料に、四国と熊野との関りを示す文言があり、熊野信仰に基づく修験者が四国の遍路修行をしていたことは確実という。逆に、南北朝時代までの四国遍路史料に大師信仰を示す要素はないというのが、「四国遍路＝弘法大師」が常識となっている現在からすれば衝撃であった。
2015年11月14日
イーハトーボの劇列車
劇の脚本を読むというのは初めて。
宮沢賢治が生きていた大正時代にも、世界的な規模のバリ島ブームが起こったという。海外情報に敏感な彼が、その影響を受けたに違いないというのが、井上ひさしの見立て（p9）。
「野に立つ農夫も四六時中、農夫であってはつまらない。それでは人間として半端である。朝は宗教者、夕べは科学者、夜は芸能者、そういう農夫がいてよいのではないか」という下りで思い出したのが、小学校の頃よく見ていた米TVドラマ「大草原の小さな家」。西部開拓時代のアメリカ人一家を描いたものだが、マイケル・ランドン演じるお父さんは、敬虔な農夫で、夜になればバイオリンを弾いた。
8前口上: 科学と宗教とは、大雑把にいってしまえば、それぞれ反対の方角を目指しています。どちらへ行きすぎてもよくない結果がうまれます。ところが賢治のなかでは、このふたつのものがたがいのお目付役をつとめていたように思われます。そしてこのふたつのものの中間に、文学がありました。9前口上：野に立つ農夫も四六時中、農夫であってはつまらない。それでは人間として半端である。朝は宗教者、夕べは科学者、夜は芸能者、そういう農夫がいてよいのではないか。賢治はそう考えて羅須地人協会をはじめたのではないか。たぶん、賢治の頭のなかにはバリ島民の生き方が去来していたと思われます。49賢治：牛一頭を育てるためには8エーカー分の穀物だの野菜だのが要るんです。その8エーカーの畑に小麦をつくってみなさい。ヒト10人分の一年間の食料がとれるす。あのう、160キロの牛一頭で、十人が一年間、喰って行けますか？152第一郎: このところの日蓮大聖人の門下、法華経信仰者の台頭は目ざましいものがあるぜ。国柱会の会員ではないけれど、立正護国堂の指導者のあの井上日召も、それからいま、陸軍の青年将校たちに圧倒的な人気のある北一輝という思想家も、ともに日蓮宗なんだ。
2015年11月13日
マシンと分業する時代
かつてのコダックはスゴイ会社だった。写真用フィルムで世界一。富士フィルムが強かった日本以外の主要市場のほとんどでシェアトップを誇り、収益力は抜群であった。
実は、デジタルカメラを世界で初めて製作したのもコダックであった。しかし、その技術は、自社のフィルムビジネスを否定することになるもので、製品化されることはなかった。
急激な写真のデジタル化で、アメリカの名門企業コダックが破産申請に追い込まれたのは、1880年の創業から132年目の2012年であった。
写真がデジタル化された過程で、ハードメーカーはほとんど利益を上げていない。デジタル化によって、部品を買ってくればどこでもある程度のものが作れるようになったため、激しい価格競争に陥った。
デジタル化で一番収益を上げたのは、インスタグラムなどの画像共有サイトである。15人のチームが開発したインスタグラムを介して、1.3億人が160億枚もの写真を共有した。そして創業から15か月で、Facebookに10億ドル（1200億円）で買収された。
＊デジタル技術の発展は、豊かさと同時に、大量の失業者、格差の拡大をもたらす。・コダックはかつて14万人以上の人を雇用していた。FBなどの雇用者は、かつてのコダックの1/10以下だが、FBの時価総額は、ピーク時のコダックの7倍を上回る。
・1983-2009年の米国人の保有資産の価値は全体的に増えたが、所得分布の下位80%では資産が減り、上位20%では資産は2倍以上に増えている。
2015年11月12日
「これ」をやめれば腸が若返る
健康にあれがいいだの、これがいいだのと言われる度に、右往左往する日本人。何かを極端に摂食していいわけがない。この方の研究によれば、日本の伝統食を基本に、多少肉や乳製品も取るようになった1970年代くらいの食生活が一番バランスが取れていて、腸も健康であったということ。
かっては、世界最低水準であったがん死亡率は、食生活の洋風化とともに上昇し、現在では欧米並みになってきた。
＊免疫細胞の6割は腸に存在＊免疫機能だけではなく、アンチエイジングやうつ病、さらに糖尿病や肥満などの生活習慣病にも深く関係39:赤身肉をよく食べる→大腸がんリスクが確実に上がる92:明治以降の「食の三大革命」�）詼�・明治維新「肉食の解禁」取得食品 米53% 麦27% 雑穀14% 惣菜5% 昆布・木の実1%＊94%が穀物で、脂質はほとんどなく、タンパク質も穀物から��1970年代 ヨーグルトや乳製品の普及食の「北米化・北欧化」ｘ健康な地中海型食生活ではなかった��1990年代 ファストフードやコンビニ食の普及家庭食（和食）頻度の減少103:貝原益軒『養生訓』・病は口から・腹八分目（過食が一番いけない）
2015年11月11日
BCG流問題発見・解決の発想法
大手コンサルティング会社BCG日本法人代表から、早稲田大学ビジネススクールに転じた内田教授が、転職前に出した本。簡単に読めるが、「仕事の質とスピード」を高めるエッセンスの詰まった良著である。
「BCGのコンサルタントは仕事が早い」のだという。その理由は、BCG内で代々引き継がれてきた「仮説思考」にある。「この問題の本質はこれじゃないか」（仮説）と数多くある選択肢の中からあたりを付けて、その仮説が正しければ現れる現象の証拠を探す。分析よりも、解決策立案とその実施に時間をかけるためだ。
軌道修正をしながら課題解決に取り組むが、通常は2-3回の小規模な軌道修正で結果を出せる。たまには根本的な仮説訂正を行わなければならないこともあるが、それでも、毎回あらゆる情報分析をしてから解決に取り組むよりも、仕事は早くなる。当然、経験を積むにしたがって、軌道修正の回数は減り、大きく仮説を外すこともなくなる。
＊仕事の質とスピードを決める・問題発見が早くなる・解決策が早く立てられる・解決策が絞り込める50:仮説を一人で抱え込むのは危険126:ヒラメキを意図的に生む・反対側から見る（顧客・消費者・現場・競争相手）・両極端に振って考えてみる・ゼロベースで考える
2015年11月10日
小室直樹の遺言
1998年に初版が出た小室直樹の代表作が復刻されたので再読してみる。出版された当時の日本は、金融危機の真っただ中。今振り返って、その内容が真に慧眼であったことに驚く。
日本は金融危機の際に、その対応を誤った。資本主義の生命である「淘汰による自浄作用」を拒んでしまったため、その後もデフレを長引かせてしまった。先進国が更に経済発展したいなら、あるいは、少なくとも財政破綻したくないなら、「国が経済をコントロールしようとせず、自由市場に任せ、ベンチャー企業を中心としたイノベーションを起こすしかない」というのが結論である。
昨日紹介した野口悠紀雄『戦後経済史』と合わせて読むといい。
＊前期的資本の国 日本＊資本主義、即ち、自由市場の原理とは「淘汰」であり、淘汰とは、失業と破産にある＊日本ではそれが正しくなされてない・潰れそうな企業を国が守る・市場を国がコントロールして危機を防ぐ・経済行為に善悪や博愛主義を持ち込む6はじめに：1996�ー�由市場の本領たる淘汰を理解する��経済には法則がある（マルクス「疎外」Entfrendung）�７从冕‖Г箸蓮△匹鵑幣魴鏖爾乃’修垢襪里�＝資本主義生成と存続のための条件23:江戸町奉行大岡越前守忠相 享保8年(1723) 銀暴落 「銀相場を引き下げるよう」両替商「人為的なことではなく、相場のなりゆきだからしかたがない」267:利潤原理に基づく破産によって企業を淘汰するこの浄化作用こそ資本主義の生命346:大蔵キャリアもデフレを知らない692おわりに：ケインズ＋シュンペーター�．吋ぅ鵐此￣儿餮電鞠鼻‘�本は資本主義ではなく、「鵺経済」�▲ぅ鵐侫譟Ε▲譽襯�ーをなくす��ハーヴェイ・ロードの仮定 「役人が有能で忠実」�ぅ轡絅鵐據璽拭次ヽ弯靴僚斗彑�→ベンチャー・ビジネス
2015年11月09日
私たちはどこで間違えたのか
「1940年体制」という言葉を作った著者による、「経済学者としての集大成」ともいえる本。バブル崩壊から25年経っても立ち直れない日本を、「私たちはどこで間違えたのか」と問いかけ、自らの経済学者としての歩みと合わせて日本経済を振り返る。
著者の危機意識は、バブル崩壊以降一貫している。「（戦時体制である）1940年体制を捨て、市場経済に移行して、日本の将来を支える高付加価値産業を生み出さなければ日本は破たんする」である。
面白いことに「戦後レジームから脱却」を標榜する安部政権は、経済政策を見れば、「戦後レジームに執着」しているという。確かに、企業の賃金にまで口を出す姿勢は、まるで社会主義政権のようだ。「超保守的」と評さえる安部政権の姿勢は、経済政策においては社会主義的なのである。
＊私たちはどこで間違えたのか72:1940年体制史観：復興は戦時体制の最初の成功
戦時中に確立された体制は、来るべき総力戦に備えた戦争遂行のための経済システムだったが、戦後になってその目的が変更され、軍事力でなく経済力、特に生産能力の増強が目的となった。その目的の実現に当って、官僚を中心とする戦時体制がそのまま機能した。日本経済をリードした主要企業も、戦時期に再編・形成された企業群だった。つまり、戦後日本の復興を支えたのは、戦時下で確立された制度であった。316:経済政策の転換=将来において日本を支える産業を生み出す←市場の競争の中からアベノミクス：市場の役割を否定ｘ円安＝一時しのぎｘ物価上昇率2%＝無意味竹やりとバケツで超高齢社会に立ち向かう＝焼夷弾が落ちてもバケツリレーと日本精神で消火できる320:安部内閣による「40年体制の復活」本来は市場で決定されるべき賃金決定過程に政府が介入し、企業を指導して賃上げを実現しようとしています。また、日本銀行の独立性に否定的な態度をとり、巨額の国債購入によって国際市場を支配しています。現在の日本の国債市場は、本来の機能を喪失し、きわめて歪んだものになってしまいました。＊国家介入を進めようとする姿勢は、政治的イデオロギーの観点からすれば、保守主義のそれではなく、社会主義のそれ。322:「頭の中にある40年体制」を克服できるか40年体制「働かなければ豊かになれない」→組織依存
2015年11月08日
A Day in the Life
うーん、もう来たか誕生日。
3月に香川大学を退職以来、実は、他のビジネススクール移れないかとイロイロ画策していたのですが、全てダメ。博士号がないと、最初の書類選考が通らない。
この年になっても、挑戦すれば、挫折はあります。いつまでやっていても仕方ないので、半年で区切りにして、先月から民間活動？を再開。手始めに、高松のベンチャー企業に出資し、役員に就任しました。現在、資金調達中です。
A Birthday in the Life 2015
前日夜、成田→高松（Jetstar）、空港到着後近くの「かわたうどん」で鍋焼きうどん（風邪）
540 起床（日ごろ使わない目覚まし時計が動くかどうか心配で、夜中に2度目が覚めた）
610 Blog更新後、コーヒーだけ飲んで、実家を出発
630 NPO関係者6人で三豊市役所出発
1015 蒜山経由で出雲大社着、研修成功祈願
1210 雲南市の研修会場着、「香茸弁当」
1300-1600 「雲南市地域自主組織 取組発表会」
H27の過疎地域自立活性化優良事例表彰で総務大臣賞を受賞した地域自主組織です。
「地域づくりの基本的な考え」
“自らの地域の課題は、自らの責任で取り組み、汗をかき地域を守る。
困難な事柄については、行政と協働で課題解決に取り組む” 1915 三豊市役所着
2015年11月07日
限界芸術論
1942年ハーバード大学哲学科卒。最後の戦時交換船で帰国。その鶴見俊輔さんが亡くなられたのは今年7月。京都をベースに大衆文化論を論じただけでなく、「べ平連」を結成し、脱走米兵を援助するなど政治活動にも熱心であった。
これを機に代表作の一つを読んでみる。大仏次郎と吉川英治の対比、野坂昭如、五木寛之、井上ひさしをひっくるめて「地口、軽口の芸人」としているところなど、興味深い。
10:芸術＝楽しい記号16:限界芸術＝大部分の人間にとって、積極的な仕方で参加する芸術のジャンル生活の様式でありながら芸術の様式でもある。292:吉川英治読者：農村の中堅的位置の人々、戦前ならば高等小学校のみの学歴修養→農本主義→青年将校（復古的、村落共同体的、国家主義）293:大仏次郎ハイカラ、絵空事、迫力がない「自分たちと別の階級」363:野坂昭如も、小説を書き始める前にCMソングの作詩をしていたが、五木もまた同じようにCMソングから始めて童謡、流行歌など、日本語を音楽の流れの中で作ってゆくことを仕事にしていた。両者ともに、この種の大量生産が、のちの作品の語り口の基礎を作った。
374:冗談、地口、軽口は、いわば伝統的な民衆芸術で、特別の芸人がそれをたくにみにあやつるというのではなく、人が何人かあつまればそこに紋切型であっても冗談がかわされ、同じ紋切型を使っても、うまく自然に人をわらわせる腕をもつものもあらわれる。そういう人間の日常芸とひとつづきになる活動領域に、芸人としての野坂、五木、井上ひさしはおり、神戸育ちの野坂は関西、福岡生まれの五木は九州、山形生まれの井上は東北のそれぞれのところの地口、軽口の伝承の中から育った人たちと言えよう。
2015年11月06日
ひらめきはカオスから生まれる
結論は、「努力＋カオス＝ひらめき」と、極めて常識的だった。
「ディナー・パーティの達人」の話は、日本でも増えている立食パーティや、ネットワーキングのホスト側の考えとして参考になる。私も、同窓会長として同窓会開催時には、同窓生が「何か新しい考えを得られた」「誰か面白い人に会えた」結果、「満足した」と思って帰れるように工夫した。そのために、1部を同窓生による勉強会、2部を懇親会にした。懇親会では新たなネットワーキングにつながるように、同窓生が職場の同僚などのゲストを連れてくることを許可した。15年前のLBS日本同窓生は少なく、LBS間だけでは「顔ぶれがいつも同じ」になってしまうからだ。
遊びでも、「何となくやる」のではなく、「何のためにやるのか」目的があった方がいい。
＊自由時間（余白）と、よそ者（異分子）から、ひらめき（セレンディピティ）が生まれる！
・小さなカオスを意識的に導入することで、思いもよらない「偶然」が生まれる
123:最後の「仕上げ」に必要だったのが「余白」
そんな話を聞くと、自分は大したことをしなくても、すばらしいアイデアは向こうからやってくるものだ、と信じたくなる。しかし、それは間違いである。ローリングは、六歳のときから物語を書きつづけていた。メンデレーエフは、周期律の発見の契機ともなる名著『化学原理』の執筆に三年を費やした。アインシュタインは、日々を捧げつくしていた・・・。だれもが、突然のひらめきが訪れる前に、脳に山ほどの「仕込み」をしていたのである。
180:ディナー・パーティの達人
「うまくいくパーティには必ずセレンディピティの要素が加味されている」
そんな会は、思わぬ成果や収穫があるし、わくわくして楽しめる。
3つの秘訣
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2015年11月05日
本物の知性を磨く
リベラルアーツが見直されているようだ。昔、各大学に在った「教養学部」の多くは解体され各学部に組み込まれてしまったが、そうしなかった東大やICU、あるいは後から「教養」を前面に打ち出して、それを英語で教える国際教養大学（秋田）が人気になっている。
麻生川さんとは15年来の友人で、私が初めて「博覧強記」を現物で見た
と思った人。その頃から研究されていた「社会人にとってのリベラルアーツ」をまとめたのが本書である。歴史と世界を縦横無尽に駆け巡るスゴイ内容だ。英語教育については全く同感。一定レベル以上に達しなければ意味がないのに、甘やかし過ぎだ。TOEICで900点以下では「英語が出来ます」とは全く言えない。社会に出て使う人は1割程度だから、その人たちだけは最低限、そのレベルに達する必要がある。逆に9割の人にとっては関係の無い話だから、中学高校でも必修ではなく、選択制にするのがいいと思う。やりたくもなく、将来も必要ないのに強制するのは時間の無駄。その分、他のことをじっくりやったほうがいい。
＊リベラルアーツとは「奴隷的生き方」から脱するための武器＊リベラルアーツのゴールは、世界各地の文化のコアをしっかりつかむこと。その上で自分なりの確固とした世界観と人生観を作ること。＊リベラルアーツの目的：世界の在り方（世界観）や自分の生き方（人生観）に自信を持つことで、グローバル社会でも臆することなく活躍することができること。95:『資治通鑑』（司馬光）を読まずに中国は語れない。そして中国人を理解することも不可能である。・中国の伝統的な道徳は本質的に顔見知りの人々に対する礼儀や道徳を大切にせよ、と教えるだけで、それ以外の他人との付き合いにおける倫理はじつはどこにも規定されていない。268:ニーダムの疑問「中国の科学技術は早い段階で高いレベルに到達していたにもかかわらず、どうしてヨーロッパに負けたのか？」→文至上主義（実学＜経書・詩文）麻生川説：ヨーロッパは中国(及び日本)に対し、�仝桐�・法則の追求��各国の科学者たちが自由に情報交換�２奮惻圓燭舛錬欧弔離哀襦璽廚吠�かれて対立�げ奮悗筏蚕冏�展との相乗効果
したので、中国に追いつき追い越せた。302:TOEICが900点（TOEFL100点）以下はグローバル基準から言えば、一括して「未熟英語」、つまり箸にも棒にもかからない低レベル。こういった冷厳な現実を直視せず、少しでも点が上がれば「良く努力したね！」と誉める風潮。・中途半端な英語力しかない人間を増産して、一体どうしようというのだ？339:現代に活きるギリシャ語とラテン語・英語の語源本来語 14%ラテン語 35%フランス語 21%ギリシャ語 5%→学術用語
2015年11月04日
日本人の意識構造
外部環境はドンドン変化するものなのに、「外部の変化と無関係に現状が維持できると考える」というのは、今に始まったことじゃないんですね。原爆を落とされるまで方向転換できなかったというのは、平和憲法さえあれば平和が守れると考えるのと全く同じ意識構造ではないかと。
実際は、戦後平和を守れたのは、平和憲法のせいではなくて、日米安保協定のおかげなんですが。ところが、最初の安保協定から60年以上経って、冷戦は終わり、世界情勢は著しく変化している。その中で、自分さえ変わらなければ、相手も態度を変えないと根拠なく信じるのは、もはや宗教かも。
・敵は後ろからやってくる、あるいは、自分も後ろから攻めた方がいいという観念「背後主義」・かっての日本軍も背後主義 「奇襲作戦」・背後主義の欠点」正視できないため、忍び寄ってきた者が敵か味方は判別できない。敵の長所と弱点がわからず、戦法を状況によって変えられない。＊WW2で日本軍の戦術は始めから終わりまで変化がなかった！＊夜間奇襲は日本海軍のお家芸→レーダーが出来てダメになったのに、反省なし！＊対応能力の欠如＊経験から学ばない・平和を守る場合、外部の変化と無関係に現状が維持できると考える。一方、ヨーロッパ人は外部の状況変化に応じ、主体的に外に働きかけることで初めて守れると考える。＊現状維持＝平和を守ること
2015年11月03日
収穫祭
先週末、東京農業大学の大学祭に行ってみる。流石、農大、「収穫祭」というのだそうだ。来場者15万人、「学園祭が盛り上がる大学」ランキングでいつも上位らしい。
模擬店はどこの学園祭にでもあるホットドッグや焼きそばなどの他に、ちゃんこ鍋（相撲部）、豚汁、すいとんなどちょっと変わったものも。これが、どこもすごい人気で売切れ続出していた。尤も、素人なので、供給能力が追いついてないという面もある。
並ぶのは苦手なので、店が空いていたポップコーンで空腹を紛らわせることにしたが、これがなかなかのもの。きなこをまぶしたものと、ゴマをまぶしたものがあり、どちらも美味しかった。この点も、食物関係の勉強をしている影響だろう。
農大は、農業を専門に扱う日本で唯一の大学。1891年に榎本武揚によって設立された私立大学は来年125周年を迎える。時間の関係で、名物の大根踊りを見られなかったのは残念。来年も行こう。
2015年11月02日
観光の街「琴平」の栄枯盛衰
魅力的な観光資源にあふれる琴平なのだけど、それを活かしているかどうかというと疑問である。参道筋はともかく、いったん街に出るとさびれた商店街、一部撤去された江戸時代の「並び灯篭」、臭う金倉川と街歩きしてもあまり楽しくないのだ。
極め付けがことでん駅前。写真の通り、民間の廃品置き場になっている。時代の変化で自動車で来る人が大半になったとはいえ、ことでんは高松と琴平を結ぶ主要私鉄路線で、高松からことでんで訪れる人も多い。降りたとたん目に入るのがこの光景では観光気分も萎えるだろう。
そのせいか、香川県全体の年間観光客数がこの２０年間で７０万人から８０万人と上昇基調なのに対して、琴平の観光客数は５０万人から２５万人と半減している。昔は香川に訪れる観光客の2/3は琴平を訪れていたが、現在は1/3になっているということなのだ。
金毘羅さんという強力な観光資源に恵まれていたため、工夫が足りず、危機感に乏しかった結果がこの現状を招いた。町全体で取り組まないと、再生不可能なところまで来ていると思う。
2015年11月01日
象頭山金比羅大権現
うちの実家は金毘羅さんのある琴平の隣町なので、小さい頃から「町へ行く」といえば、琴平に行くことだった。県外から客人が来れば、まずは金毘羅さんに案内する。しかし、そんな琴平に、金毘羅さんにお参りしたり駅を使う以外で行かなくなって久しい。スーパーなら町内にもできたし、仕事関係は高松に集中している。
今回、香川県観光協会の「さぬきアカデミー」に申し込み、勉強し直してみることにした。土曜日の午前中2時間近くかけて、町内を歩いた。金毘羅さんには上がらずに、街歩きである。流石は、江戸時代から栄えた金毘羅さんの門前町である、スゴイものがそこかしこにある。
例えば、写真の高灯籠。万延元年（1860）に建築がはじまり慶応元年（1865）に完成した江戸時代の灯台である。27mの高さは木造灯籠としては日本一。完成までに6年の歳月と金3千両を要したという。 現在価値では3-6億円らしい。
この建設費は、金毘羅さんを信心する全国の「講」から集められた。講に入って寄付した人は、金毘羅さん参拝の折に、宿泊費や飲食代の割引があった。加えて、完成した高灯籠に無料で入ることができた。講に入っていない人は、入場料を払う必要があり、入場料で灯す油代などの維持費を賄ったという。他に高い建物の無かった江戸時代、はるか丸亀沖まで見えた高灯籠は人気だった。
面白いのは、この高灯籠、建設途中で「どうせ造るなら」と当初設計より高くしたらしい。そのため講で集めた資金だけでは足らなくなってしまった。そこで、どうしたか。その方法が、高灯籠脇の石碑に刻まれている。
「引請は茶屋ありたけに置屋中給仕めしもり跡は志らんぞ」 通人堂寓 志度 東呉楼
つまり、町内の茶屋や置屋、給仕さらには飯盛り女（私娼）にまで寄付を募り（勝手にピンはね？）、賄ったのである。そこまでやったのだから、「後は知らんぞ
」なのだ。交通が不便で貧しい江戸時代に参拝することは一大イベントで、お参りの後は「精進落とし」と決まっていた。門前町の隣が歓楽街なのは「お約束」。これだけのものがあるのに、観光客が来ているのを見たことがない。車で来て、金毘羅さんに参り、さっと帰ってしまうのはもったいない。
