2015年10月
2015年10月31日
画商が語る戦後70年の美術潮流
日本で最初の現代美術の画廊「東京画廊」の山本社長による「戦後70年の美術潮流」。山本氏は創業者の長男で二代目。20代は大蔵大臣村山達雄秘書として過ごすなど、異色の経歴を持っている。
アートは数万円で売買されていたものが、時をへて、何億円、何十億円になることがある。山本氏は、「そうした変動が起こること自体が、我々が今生きる資本主義社会の仕組みだ」という。「その資本主義社会の特性を、もっとも先進的なかたちで表しているのが、アート」なのだと。
26: 希少性と有用性は相反する有用性の低いもの、「使用価値」の低いものこそ、「交換価値」が高くなる。
65: 作家として印象的だったのは、先ほども触れたフンデルトワッサーです。ヨーロッパでもあまり知られていない彼を父が見出し、日本に連れてきました。大の日本びいきで半年ほど日本に滞在し、その間、画廊のスタッフ全員で彼の嫁さん探しをし、とにかく日本人女性と結婚しました。
110: あとで聞いたら福田先生にしても大平先生にしても、その世代の東大出身者たちはマルクス経済学を勉強した後にケインズ経済学を勉強したからです。一方の学生はどうか？マルクスだ、レーニンだ、革命だと威勢はいいけれど、運動家たちのほとんどは『資本論』さえまともに読んだことがない人が多い。社会主義にしても共産主義にしても、自民党の人達の方が実は理解が深かったのです。150: 日本のハコモノは”公共事業”を中心に据えた”国内政策”なのです。一方のポンピドゥー・センターやテート・モダンは”外交”なのです。東京都現代美術館をつくるときに、あの施設の半分くらいのサイズにして、その予算で日本の大使館が世界中で「東京メトロポリタン美術館ができるから来てください」とPRしたらどうだったでしょうか？世界中から少なくとも何十万人かが東京に来てお金を落とし、日本の現代アートの宣伝もできたでしょう。それが本当の国家戦略
165: 主観の世界と客観の世界がせめぎ合って、初めて作品としても商品としても価値のある芸術が生まれると考えます。それが「開かれた作品」であるのに対して、客観性を顧みず、自分の主観の世界だけで作られたものを「閉じた作品」と私は呼んでいます。
2015年10月30日
SRI Five Disciplines of Innovation
受けた研修がこれ。昨年のSRI売上$540M、うち委託研究開発が$530Mとすれば、$10Mが研修売上と云う事になりそう。SRIが何十年にも渡って行ってきた「イノベーションの法則」を実施するWorkshopである。これと同じことを社内でも繰り返して、その結果、きのう書いたような、「VC投資による3-5社の商業化、50件以上のライセンス」を実現しているわけだ。
『５つのイノベーションの原則』とは、
-Important Customer and Market Needs
-Value Creation
-Innovation Cahmpions
-Innovation Teams
-Organizational Alignment
で、一般的に言われることと特に変わったところはない。
その特徴は、Workshopで特にNeedsとValue Creationのところを繰り返し、徹底的にやるところだ。Pitchを作っては皆の前で発表し、何が良かったか、何が悪かったかのフィードバックを受け、作り直す。SRIではVCに持っていくまでに、これを数十回繰り返すという。繰り返すうちに、中身もテクニックも良くなるのは当たり前。
当たり前だが、日本では軽視されがちである。
2015年10月29日
加島屋と広岡浅子
大阪での研修中、ホテルから研修会場までの間に、「大同生命保険本社」があった。そこでやっていたのが、NHK朝ドラ「あさが来た」のモデルとなった「加島屋と広岡浅子」展。土佐堀川に面した肥後橋こそ江戸時代の豪商「加島屋」が店を構えていた場所であり、その後、浅子が創業した生命保険会社（後に他社と合併して大同生命に）の本社となった。
江戸時代初期に精米業から身を起こした加島屋が豪商となったのには、当時「世界最先端の金融市場」と言われた堂島米会所のシステムと大名貸しなどの画期的なビジネスモデルがある。堂島米会所では、米を証券化し、その現物取引が行われるとともに、世界で初めての先物取引も行われていた。加島屋はその取次を行うとともに、米証券を担保に貸金業も行った。これは今でいう「投資銀行」に他ならない。
いわば、日本のGSが加島屋であったわけで、ライバルの鴻池屋はMSといったところか。会場には、両社の江戸時代のB/Sも展示されていて興味深い。江戸中期以降は「大名貸し」が収益の中心になっていることがわかる。加島屋や鴻池屋は、個人ではなく組織を対象に貸し付けるホールセールバンキングであった。
2015年10月28日
SRI International
大阪で二日間缶詰めになってSRIの研修を受けてきた。SRIというと、今ではSocial Responsible Investmentの方が有名だろうが、こちらは元Stanford Research Institute。1946年にスタンフォード大学の研究機関として設立され、その後1970年に独立して、その後SRI InternationalとなったNPOである。
コンピューターマウスも、音声認識のSIRIも、手術用ロボットもここで発明されたということ。マウスの場合は、1968年にSRIで原型が開発されたものの商品化されないままXEROXの研究所PARCに3万ドルで売却された。マウスがPCに標準装備されたのは1984年のMacintoshだから、発明から商品化まで3つの組織が16年かかったことになる。
SRI Internationalの事業は、自社での研究開発と他社の研究開発を助けること。2100人のスタッフ（半数は大学院卒）が働き、昨年の売上高は$540Mであったらしい。一人当たり売上3000万円位であったことになる。商品化される場合は別会社になり、SRIはその会社の株式を保有したり、ロイヤリティをもらう立場になる。
SRIでは、年間$530Mの研究開発委託を受け、500件の特許情報公開をして、200件が特許成立し、3-5社がVCの投資を受けてスピンオフされ、50件以上が他社にライセンスされるそうだ。
戦前の理化学研究所が近いか。戦前、民間の財団として活動していた時代の理化学研究所では多くの技術が商業化され、リケン、リコー、理研ピストンリング、協和発酵などの企業群を生み出した。戦後、国有化されてからはそんな話を聞かないと思っていたら、一番話題になったのは、STAP細胞事件であった。
2015年10月27日
人類最悪にして最後の発明
あれだけ技術を進めることに熱心なElon MuskがAIについてだけは、その開発に警鐘を鳴らしている。しかし、「危ないかも」と分かっていても、好奇心に勝てないのが人類。今日も世界中でAIの研究開発に心血を注いでいる人が居る。
・AIは、人間の知能レベルを超える「人工汎用知能」(AGI)に、さらに人間の1000倍の知能を持つ「人口超知能」(ASI)へと進化。・2028年までに人口汎用知能がつくられる確率は10%、2050年までなら50%強。・人口超知能が実現すると、進歩のルールが変わる。超知能自体が発明を生み出して技術進歩のペースを決める。・人工知能が高度になっていくと、自らの行動がどのような結果を生むかを認識し、自らの目標に最も合致する行動を判断できるようになる。すなわち、自己進化していく。・自己進化するシステムは、目標を達成する上で予期される問題を避けるため、次の４つの「衝動」を持つようになる。�仝�率性：効率を最大限に高めるため、自信をコンパクトで高速にする�⊆�己保存：目標を達成するため、自身のコピーを大量に作るなど、自身の消滅を避けようとする��資源獲得：目標達成の確率を高めるため、より多くの物質、エネルギー、空間を欲しがる�ち和だ�：目標をより効率的に達成するため、新たな方法を生み出す。その結果、人工知能システムのふるまいは予測不可能になる。
2015年10月26日
親の言うこと
古今東西、親の言うことを子供はなかなか素直に聞けない。私も、思春期の中学校から高校にかけて、親、特に父親とほとんど会話していない。それが、大学になって離れて暮らし始め、休暇で家に戻ったら、急に男同士として対等に話しかけられたので面食らった。以前書いた通り、そんな、ある意味幸せな時期は父の突然死で1年で終わってしまった。
まあ、それはそうと、現役の父親としてどう自分の経験を子供たちに伝えるかは悩むところだ。そこで、自分で伝えるのではなく、友達を自宅に呼んで彼らから言ってもらったり、あるいは自分の言いたいことを書いてある本をさりげなく机の上に置いたりする（笑）。幸い子供たちは本好きなので、タイトルに興味を持てば、チラチラと読んでいる。
今、思春期真っただ中の末っ子に選んだのはこれ。2年前の新刊の時読み、今回、また、「机の上に置くため」に読み返してみた。明日の日本を担う？子供たちに勧められる。
25: やってみる価値がある、面白そうだと思ったことは、恥をかいてでも、とりあえずやってみる（中略）取り返しがつかない、という意味では、やったこともやらなかったことも同じです。やってしまった過去を悔やむ心からはちゃんと血が出て、かさぶたができて治っていくけれど、やらなかった取り返しのつかなさを悔やむ心には、切り傷とはまた違う、内出血のような痛みが続きます。
31: 「今のままじゃだめだ。もっと成功したい」と願う野心は、自分が成長していくための原動力となりますが、一方で、その野心に見合った努力が必要になります。野心が車の「前輪」だとすると、努力は「後輪」です。
63: 運と努力の関係とは面白いものです。自分でちゃんと努力をして、野心と努力が上手く回ってくると、運という大きな輪がガラガラと回り始めるのです。一度、野心と努力のコツをつかむと、生き方も人生もガラッと変わってくる。
180: 本当に恐ろしいのは「止まっている不幸」だと思います。出口が無くて、暗く沈んでいくだけのモヤモヤとした不幸。望んでいた仕事には就けず、無力感のまま働く若い人が、資格を取るとか転職しようという努力も何もせず「こんなはずじゃなかった」と社会を恨むことしかしない。
2015年10月25日
松代大本営
本土決戦の拠点は松代（長野市）に造られていた
この話はどこかで読んだことがあって、「いつか行きたい」と思っていたのが、先日実現した。総延長5.8km、掘削土量59,635�屐⊂果明�23㎢というスケール。ここに大本営はじめ天皇、政府機関などの施設、放送・通信などの関連施設を移設する計画で、1944年秋から用地買収が進められ、終戦の日まで工事が行われた。正に、戦時下の「首都移転計画」である。
管理は長野市がやっているようなのだが、NPO松代大本営平和祈念館ガイドの説明にはイデオロギー色が強く、史実に基づいているのか不安な点があった。NPOの説明は一部の労働者の、それも戦後何十年も経ってからの証言に頼っていて、それが全体像なのかどうか不明である。しかし、NPOガイドの話を聞いた人は、間違いなく、これが真実だったと思ってしまうだろう。実はWikipediaの説明が一番詳しい。
長野市の説明
松代大本営地下壕は、舞鶴山(まいづるやま)（現気象庁松代地震観測所）を中心として、皆神山(みなかみやま)、象山(ぞうざん)に碁盤の目のように掘り抜かれ、その延長は約10キロメートル余りに及んでいます。
ここは地質学的にも堅い岩盤地帯であるばかりでなく、海岸線からも遠く、川中島合戦の古戦場として知られている要害の地です。
第二次世界大戦の末期、軍部が本土決戦の最後の拠点として、極秘のうちに、大本営、政府各省等をこの地に移すという計画のもとに、昭和19年11月11日から翌20年８月15日の終戦の日まで、およそ９箇月の間に建設されたもので、突貫工事をもって、全工程の約８割が完成しました。
この建設には、当時の金額で１億円とも２億円ともいわれる巨費が投じられ、また、労働者として多くの朝鮮や日本の人々が強制的に動員されたと言われています。
なお、このことについては、当時の関係資料が残されていないこともあり、必ずしも全てが強制的ではなかったなど、様々な見解があります。
松代象山地下壕は、平和な世界を後世に語り継ぐ上での貴重な戦争遺跡として、多くの方々にこの存在を知っていただくため、平成元年から一部を公開しています。
NPOの説明
大本営の現場作業は、強制連行されたり、日本各地の工事現場から移された朝鮮人労働者や、勤労動員された日本人が当たった。固い岩盤を相手に発破を使う、昼夜二交替の最も過酷な労働を強いられたのは朝鮮人労働者たちであった。その数は今だに定かではないが、7,000人以上ともいわれている。（中略）食事はコーリャン七分、米三分の粗末なもの。空腹のため、ダイナマイトに使ってあるモチ米を食べたという。大本営工事の犠牲者の数は全く明らかにされていない。「多い日には５、６人が死んだ」などの証言もあるが、遺体の埋葬場所さえほとんどわかっていない。
Wikipediaの説明
当時飯場で賄いをしていた人からの証言では地下壕掘削のために働いていた朝鮮人労働者には1日に白米7合、壕外での資材運搬で働く朝鮮人労働者には白米3合が配給、他にそれぞれ麦やトウモロコシなどが配られるという破格の待遇であった。朝鮮人労務者は体が丈夫なせいかあまり風邪を引かず、規則正しく礼儀正しかったといわれる。家族ぐるみで働きに来ている者もおり、子弟は日本人と一緒に学校に通った。松代住民と朝鮮人との仲は比較的良く、朝鮮人が農業を手伝ったり、西条地区の強制立ち退きも手伝った。また朝鮮人名で預金通帳をつくることができなかったため、松代住民が代わりに名前を貸したという。また日本人と朝鮮人の恋愛結婚もあった。朝鮮人労務者の食事事情は（密殺した）牛肉を食べるなど、国内での炭鉱や土木工事などに徴用された朝鮮人労務者と比較して待遇面では悪くはなかったようで、日本人よりも良好だった。終戦後、朝鮮半島出身の帰国希望者には列車、帰還船を用意し、一人当たり250円の帰国支度金が支払われ1945年の秋にはほとんど富山港から帰国させることができた。
2015年10月24日
「ニッカリ青江」と「刀女子」
丸亀市立資料館は、丸亀市の歴史的資料を保存・展示している地味な資料館。企画展も含めて無料なのだが、これまで混んでいるのを一度も見たことがない。
それが、今回は、初日に1889人が小さな展示室に押し寄せ、2時間待ちの騒ぎになったという。正に、開館以来初めての賑わい
10日の開会から既に来館者は1万人を超えているという。全国から押し寄せたのは、丸亀藩京極家に伝わる名刀「ニッカリ青江」目当ての「刀女子」。なんでも、オンラインゲーム「刀剣乱舞」に、この名刀を擬人化したイケメンキャラが出ているのだそうだ。このシュミレーションゲームでは、名刀キャラを育て強化して戦わせるらしい。
この名刀は、京極家が、大坂冬の陣の後、豊臣家と徳川家の調停に功績があり、豊臣秀頼から贈られたもの。名前の由来は、夜中にニッカリ笑う女の幽霊を切ったところ、翌朝見たら石塔が真っ二つに切れていたことから。確かに、うっとりする美しさの刀であった。
驚くのは、これだけの人気展示も無料なのだ。どうも、丸亀市は「無料」が正義だと勘違いしているようだ。資料館は日頃１円も稼いでないのだから、市外から人が殺到する機会には入場料を取るべきなのだ。それで、市民には割引すれば市民としての有難味もわくというもの。
2015年10月23日
ベンチャー企業と中小企業がごっちゃ
地元自治体が主催している「創業塾」に参加した。通常は講師側だが、今回は関わっているベンチャー企業の役員として出席したので、久しぶりに受講者としての参加。自治体レベルの塾がどう運営され、講師がどう教えているのかにも興味があった。
結論としては、まるでダメ。県が税金を投入している事業なのだから、是非改善してほしい。出来ないなら止めた方がいいと思う。
その状況は以下の通り。
・質問できない
講師にもよるのだが、基本的に質問時間が取られてない。あるいは、受講者が質問をしない前提で講義が進んでいく。こんな一方的な講義は大学以来だ。民間企業の研修の類では、受講者の理解度を確かめながら進んでいく。基本的にいつ質問してもいいし、質問しやすいように、定期的に確認するのが当たり前だ。
・参加者のレベルがあっていない
参加している人は、起業を検討中の人から、すでに創業している人まで様々。経験も様々なら、知識レベルも様々。どう見ても、1/3は付いていけてないし、1/3は退屈している。終了後に運営担当者に聞いたら、受講者のプロフィールも講師には伝えてないという。私は講演の依頼を受けたら、真っ先にその目的と、参加者の属性を聞いて、内容を調整する。その位はしないと、民間の仕事でお金は貰えないだろう。
・目指すところが違う
ベンチャー企業と自営業、同族企業を区別しておらず、ごっちゃになっている。「自分が食うためにやる」自営業、「家族が食うためにやる」同族企業と、「社会を変えるためにやる」ベンチャー企業とでは、目指すところが違うので、当然アプローチも違ってくる。それが、主催者側で区別できてないので、ベンチャー企業にとってはほとんど意味のない内容になっている。
地方自治体にとって最大の課題は少子高齢化による税収減と社会保障費増のはずだ。働く人が減る一方で、税金による支援を必要とする人は増える一方だ。その是正のために必要なのは、高付加価値を生み出すベンチャー企業であるはずだ。
ところが、こうした高収益のベンチャー企業群は大都市に集中しており、大企業だけでなく、こうした新興企業が引き続き、地方の優秀な若者を大都市に引き付けている。大企業が今更地方に本社を移すことはあり得ないが、ベンチャー企業であれば、地方発は可能だ。
そうした地方発ベンチャー企業を支援することは税収減に悩む地方自治体にとって数少ない投資対効果が見込まれる事業である。一方、「年収500万円でいい」と思っている自営業者を増やしてもほとんど意味はないだろう。従って、地方自治体はただでさえ少ない資金を投じるなら、ベンチャー企業を対象にすべきで、限られた財源をばら撒くような使い方はすべきでないと思う。
結論としては、まるでダメ。県が税金を投入している事業なのだから、是非改善してほしい。出来ないなら止めた方がいいと思う。
その状況は以下の通り。
・質問できない
講師にもよるのだが、基本的に質問時間が取られてない。あるいは、受講者が質問をしない前提で講義が進んでいく。こんな一方的な講義は大学以来だ。民間企業の研修の類では、受講者の理解度を確かめながら進んでいく。基本的にいつ質問してもいいし、質問しやすいように、定期的に確認するのが当たり前だ。
・参加者のレベルがあっていない
参加している人は、起業を検討中の人から、すでに創業している人まで様々。経験も様々なら、知識レベルも様々。どう見ても、1/3は付いていけてないし、1/3は退屈している。終了後に運営担当者に聞いたら、受講者のプロフィールも講師には伝えてないという。私は講演の依頼を受けたら、真っ先にその目的と、参加者の属性を聞いて、内容を調整する。その位はしないと、民間の仕事でお金は貰えないだろう。
・目指すところが違う
ベンチャー企業と自営業、同族企業を区別しておらず、ごっちゃになっている。「自分が食うためにやる」自営業、「家族が食うためにやる」同族企業と、「社会を変えるためにやる」ベンチャー企業とでは、目指すところが違うので、当然アプローチも違ってくる。それが、主催者側で区別できてないので、ベンチャー企業にとってはほとんど意味のない内容になっている。
地方自治体にとって最大の課題は少子高齢化による税収減と社会保障費増のはずだ。働く人が減る一方で、税金による支援を必要とする人は増える一方だ。その是正のために必要なのは、高付加価値を生み出すベンチャー企業であるはずだ。
ところが、こうした高収益のベンチャー企業群は大都市に集中しており、大企業だけでなく、こうした新興企業が引き続き、地方の優秀な若者を大都市に引き付けている。大企業が今更地方に本社を移すことはあり得ないが、ベンチャー企業であれば、地方発は可能だ。
そうした地方発ベンチャー企業を支援することは税収減に悩む地方自治体にとって数少ない投資対効果が見込まれる事業である。一方、「年収500万円でいい」と思っている自営業者を増やしてもほとんど意味はないだろう。従って、地方自治体はただでさえ少ない資金を投じるなら、ベンチャー企業を対象にすべきで、限られた財源をばら撒くような使い方はすべきでないと思う。
2015年10月22日
THE UNIFIED FIELD THEORY OF ELON MUSK
Muskの最終目標は、人類が他の惑星に移民できること。地球環境が悪化し、住めなくなった時に備えて、その準備をしておかなければならないという。当面は火星が目標で、「一人当り6000万円―1.2億円位に費用になれば、火星居住地が出来るだろう」という。
当然、これには批判もあって、"Made in the USA"の著者Smil教授は、「5000万人が食品補助券で暮らし（日本の生活保護みたいなもの）、毎月10兆円国の借金が増えている国で、宇宙開発が何の役に立つのか？超金持ちの道楽なんて」という。
興味深いのは、彼の教育観。5人の男の子の父親であるMuskは、直ぐに子供を守ろうとするアメリカの学校に批判的だ。彼は南アフリカの中学校時代ひどいいじめを受けている。石で顔面を殴られて何度も血を流しながら帰ったそうだ。マッチョ文化で暴力が日常的な南アフリカではその程度では誰も助けてくれない。
Muskは、「その時の苦しみが今の僕を作った。それに強い力と意志を与えられている」という。だから、子供が通うアメリカの学校で、誰かが他の子供の悪口を言ったくらいで注意される環境で、強い子どもが育つのかと心配している。
331: Musk's ultimate goal, though, remains turning humans into an interplanetary species.
333: "The thing that's important is to reacn an economic threshold around the cost per person for a trip to Mars. If it costs $1 billion per person, there will be no Mars colony. At around $1 million or $500,000 per person, I think it's highly likely that there will be a self-sustaining Martian colony.
335: Theil has watched Musk go through this maturation - from the driven but insecure CEO of Paypal to a confident CEO who commands the respect of thousands....Most impressive to Theil has been Musk's ability to find bright, ambitious people and lure them to his companies.
340: "Many of us worked tirelessly for him for years and were tossed to the curb like a piece of litter without a second thought. Maybe it was calculated to keep the rest of the workforce on their toes and scared; maybe he was just able to detach from human connectins to a remarkable degree. What was clear is that people who worked for him were like ammunition: used for a specific purpose until exhausted and discarded."
346: Steve Jurvetson, the venture capitalist who has invested in SpaceX, Tesla, and Solar City, worked for Jobs, and know Gates well, also described Musk as an upgraded mix of the two. "Like Jobs, Elon does not tolerate C or D players," said Jurvetson. "But I'd say he's nicer than Jobs and a bit more refined than Bill Gates."
349: "The last thing a country with 50 million people on food stamps and 85 billion dollars deeper into debt every month needs is anything to do with space, especially space with more joyrides for the super rich." (Professor Vaclav Smil)
357: It bothers Musk a bit that his kids won't suffer like he did. He feels that suffering helped to make him who he is and gave him extra reserves of strength and will. "They might have a little adversity at school, but these days schools are so protective," he said.
363: I'm more convinced than ever that Musk is, and has always been, a man on a quest, and that his brand of quest is far more fantastic and consuming than anything most of us will ever experience. It seems that he's become almost addidted to expanding his ambitions and can't quite stop himself from announcing things like the Hyperloop and the space Internet.
2015年10月21日
THE REVENGE OF THE ELECTRIC CAR
SpaceXは未上場だが、上場しているTeslaの株は誰でも買える。上記のチャートは2013年5月までのもので、その後も株価は上昇を続け、現在は$210位である。時価総額は$28B（3兆円超）、赤字である。
本社工場はカリフォルニア州のフリーモント。GEとトヨタの合弁会社NUMMIがカローラなどを生産していた工場が閉鎖されたのに伴い、2010年にタダ同然で入手した。ここで高級車Model Sが昨年3.4万台生産された。今年は同社初のSUV Model Xが発表された。
日本メーカーから一番買っているパーツは、リチウムイオン電池。Model Sには車一台当たり約7000本のPanasonic製小型Li-Ion電池が積み込まれている。
電池のコストを下げるため、Panasonicと共同で隣のネバダ州に電池工場を建設中。この巨大電池工場の稼働率を上げるため、家庭用蓄電池の販売も始めた。これがPowerWallで、10kwhのモデルで$3500（約40万円）だという。これは、既存の日本製品に比べると数分の一だ。
過去2年間は、$190-280のボックス圏で推移している。Teslaは買いなのか、売りなのか？
268: Consumer Reports gave the Model S itshighest car rating in history -- 99 out of 100 -- while proclaiming that it was likely the best car ever built. It was at about this time that sales of the Model S started to soar alongside Tesla's share price and that General Motors, among other automakers, pulled together a team to study the Model S, Tesla and the methods of Elon Musk.
289: in January 2010, the Department of Energy struck a $465 million loan agreement with Tesla. The money was far more than Tesla had ever expected to get from the government. But it still represented just a fraction of the $1 billion plus that most carmakers needed to bring a new vehicle to market.
292: "The guys from Toyota and Daimler were blown away," Javidan said. "They might have two hundred alpha cars and several hundred to a thousand beta cars. We were doing everything from crash tests to the interior design with about fifteen cars. That was amazing to them."
299: The buy who was always promising, promising, promising was doing - and doing spectacular things. "I may have been optimistic with respect to the timing on some of these things, but I didn't overpromise on the outcome," Musk told me during an interview after the Model S launch. "I have done everything I said I was going to do."
305: Musk pulled people from recruiting, the design studio, engineering, finance, and whereever else he could find them and ordered them to get on the phone, call people with reservations, and close deals. "If we don't deliver these cars, we are fucked," Musk told the employees. "So, I don't care what job you were doing. Your new job is delivering cars."
312: It did not just sell someone a car. It sold them an image, a feeling they were tapping into the future, a relationship. Apple did the same thing decades ago with the Mac and then again with the iPod and iPhone. Even those who were not religious about their affilication to Apple were sucked into its universe once they bought the hardware and downloaded software like iTunes.
2015年10月20日
課題解決が好きな経営者は楽観的
週末、稲門祭（早稲田祭と違い、OB向けのイベント）の大隈塾稲門祭スペシャル2015「次世代ベンチャーのトップランナーたち」を見に出かけた。司会は、大隈塾塾頭の田原総一郎氏（1960一文卒）。パネリストは以下の通り。
LINE取締役CSMO 舛田淳（社会科学部）
リブセンス代表取締役 村上太一（政治経済学部）
VOYAGE GROUP代表取締役 宇佐美進典（商学部）
ティルス代表取締役 大冨智弘（政治経済学部）
何れも時代を反映して、ネット系の経営者である。そして、全員が早稲田起業家養成講座のスポンサー。村上社長は講座の第一期生で、ここのビジネスプランコンテストで優勝、大学1年の時に起業した。24歳でMothers上場、25歳で東証一部に最年少で上場して話題になった。
それぞれの経営者が起業の経緯や、事業内容を説明してセッションは始まった。面白かったのは、会場からの質問で、「少子高齢化問題」へのパネラーの回答。全員が「解決策はある」と楽観的なのだ。
LINE舛田氏がこうまとめた。
「皆、経営者なので、課題解決が好きなのです。課題があれば、それを解決できると思っている」
それを受けた、田原氏がこう繋いだ。
「Panasonic創業者の松下幸之助は人の採用にあたり、重要なのは、能力でも、健康でも、誠実さでもなく、運がいいかどうかを重視した。運がいい人というのは、逆境にあっても諦めず、解決策を探す人だ。課題解決が出来る人と言ってもいい。こういった人がわが身を振り返って『自分は運がいい』という」
2015年10月19日
ある物理学者の回想
今年も日本人の物理学者がノーベル賞を取った。勿論、日本人で初めてノーベル賞を受賞したのは湯川秀樹博士である（1949）。
この湯川博士が自伝を書いていたことは知らなかった。それは、本書の副題にある通り、「湯川秀樹自伝というよりは、小川（旧姓）秀樹とその周辺」の回想という風に書かれている。理論物理学者だから硬い文章を書くのかと思ったら、平易で読みやすい。
48: この欧州旅行は、父にとって大成功であった。出発するときの条件は、往復、滞在をふくめて、旅費は打ち切りの二千円。日数に制限はなかった。だから父の帰朝は翌年の五月なかばになった。―つまり一年三か月近く、各地を遍歴して来たわけだ。54: しかしある日、―私が五つか六つの時だったろう―父は祖父に、「そろそろ秀樹にも、漢籍の素読をはじめて下さい」と言った。99: 小学校の何年だったか、もちろん、上級に近くなってからだが、等差級数の総和を求める方法を、私は自然に考えついていた。それが小学生としては、やや程度の高い数学だということにも、私は気づかなかった。143: その時、工藤君が突然、「小川君はアインシュタインのようになるだろう」と言った。その瞬間私は何のことかわからなかった。私はまだ自分が理論物理学者になるだろうとは、全然思っていなかったのである。物理実験の時間が終わってから、工藤君の言葉を思い出した。私は何となくうれしくなってきた。168: 町の人は、学生と、学生の持つインテリジェンスに、打算を超えた好意をよせていたのであろう。やはり京都は、人間の知恵に対して敬意を払うという伝統が、古くから存在している土地なのかもしれない。211: 岡氏の身なりは、しかし、大学の先生らしくなかった。背広の腰にきたない手ぬぐいをぶらさげている所は、まるで参考の応援団員みたいであった。入学早々出された演習問題が、また恐ろしく難しかった。学生の知識の程度など全く無視したような問題であった。私たち学生は最初、途方にくれたが、そういう難しい問題にぶつかって行くことが、また私に一種のスリルを味あわせてくれることにもなった。290: これから先のことは、私はいま書く気持ちがない。いちずに勉強していた時代の私が、無性になつかしいからである。そして、これから先を書けば書くほど、勉強以外のことに時間をとられてゆく自分が、悲しくなってきそうだからである。
2015年10月18日
真田十万石
松代といえば、真田十万石。来年のNHK大河ドラマは「真田丸」ということ。これは大阪冬の陣(1614)で真田信繁（幸村）が豊臣大阪城の唯一の弱点であった三の丸の南側に築いた出城だ。この出城は、講和後に真っ先に取り壊された。
それに遡ること14年。関ヶ原の戦いでは、幸村は父昌幸とともに西軍として戦った。但し、関ケ原の決戦ではなく、徳川方の主力部隊であった家康の三男秀忠を上田城で迎え撃ったのだ。上田城攻略にてこずった秀忠は、家康の命令で上田城攻略をあきらめて関ケ原に向かうが、到着したのは戦いが終わった後だった。本来なら、秀忠の35000人の兵を足止めしたのだから、西軍は勝ってなければならない。それでも負けたのは、西軍のまとまりのなさと、家康の調略が功を奏したということなのだろう。
そして、幸村の兄信幸は、妻が徳川家の重臣、本多忠勝の娘「小松姫」だったため、徳川方に付く。勿論、これは、信州の豪族としての生き残り作戦でもあったのだろう。負けた昌幸と幸村は本来なら死罪だが、忠勝のとりなしで紀伊国九度山に幽閉となる。
信幸は戦後、父や弟との決別を示すため、「信之」と改名。領地は上田から松代に移封され、江戸時代を通して、10代250年に渡って、信州の雄藩真田十万石を築くわけだ。「真田十万石まつり」（上の写真）で信之役をやっているのは、現在の松代真田家第14代当主の真田幸俊氏。なんと、慶応義塾大学理工学部の教授である。
残念ながら松代城の建物は全て明治になって取り壊されてしまった。永らく石垣だけが当時を偲ばせるものだったが、最近、 大手門は再建されている。
2015年10月17日
蔦谷本店
「蔦谷本店は本屋ではなかった！」
というのは冗談だが、こちらは、松代にあるおやき＆スイーツの店。TSUTAYAの方は、枚方で創業して間もないころ増田社長を仕事で訪ねたことがあり、「文化を手軽に広げるということから、江戸時代に出版で大衆文化を広めた蔦谷重三郎にあやかった」と聞いている。
北信濃ではこの「おやき」がおやつだったということ。「おやき」には、具を別にして、揚げたものと蒸したものがある。今回食べたのは、蒸したうえで焼いて軽く焦げ目をつけたもの。地元出身の友人にいわせると、「これがおばあちゃんの味」ということらしい。
そして、この「おばあちゃんの味」を出しているのが、松代の蔦谷本店なのだ。揚げ物が苦手の私には食べやすかった。定番の具には、ナス、野沢菜、キャベツ、ニラ、粒あん、しめじ入り切干大根、かぼちゃがある。それ以外に、季節の野菜。基本はみそ味で、ちょっと濃い。腹にも貯まるので、農作業の合間に食べるものだったのだろう。
季節の野菜や、ちょっとした間に合わせの材料で簡単に作ったのが始まりで、それが家々の風習、食文化、地方の行事や文化とまじり合い、今の「おやき」としての型になった。（蔦谷本店）
2015年10月16日
LIFTOFF
Elonのモチベーションには、厳しい少年時代を背景にした自己実現のエゴがあるとともに、国益や人類のためにという意識もある。Teslaで電気自動車を開発するモチベーションには、「米国が中東の石油に依存しなくてもよくなるように」という国益があるし、SpaceXにも、「米国が宇宙ステーションに人や物を送り込むのに、ロシアのロケットに頼らなくてもいいように」という国益が絡んでいる。勿論、そのために、Teslaは連邦政府から数百億円を借金できたし（返済済み）、SpaceXはNASAからの業務委託を受けられた。
日本でなら、「国益に適うなら補助金で」となると思うのだが、貸付や投資であるところがよい。自治体になんどかこういう話をしたが、「貸付や投資より、補助金の方がお金を出しやすい」とのことであった。なぜなら、単年度会計なので、出しっぱなしの補助金の方が、期をまたいで長期で管理しなければならない貸付や投資よりやりやすいのだ。
税金で成り立っている組織は、使い方に様々な制限がある一方、形式的なルールにあっていれば、驚くような無駄遣いをすることがある。NASAで24年間働いた後SpaceXに転職したKevin Watsonは、Elonから「100万円でロケットのコンピュータシステムを作ってくれ」と言われて驚く。NASAでは10億円以上かけていたからだ。「それまでは、コンピュータシステムに幾らかかるかを議論する会議の食費だけで100万円使っていた」
215: Because of its low costs, SpaceX has once again made the United States a plyaer in the worldwide commercial launch market. Its $60 million per lauch ocst is much less than what Europe and Japan charge and trumps even the relative bargains offered by the Russians and Chinese, who have the added benefit of decades of sunk government investment into their space programs as well as cheap labor.
217: the retirement of the space shuttle made the United States totally dependent on the Russian to get astronauts to the ISS. Russia gets to charge $70 million per person for the trip and to cut the United States off as it sees fit during political rifts.
230: "Elon has always been optimistic," Brogan said. "That's the nice word. He can be a downright liar about when things need to get done. He will pick the most aggressive time schedule imaginable assuming everything goes right, and then accelerate it by assuming that everyone can work harder."
236: Musk wanted the bulk of a rocket's computing systems to cost no more than $10,000. It was an insane figure by aerospace industry standards, where the avionics systems for a rocket typically cost well over $10 million. "In traditional aerospace, it would cost you more than ten thousand dollars just for the food at a meeting to discuss the cost of the avionics," Watson said.
243: "Life with Elon is like being in a very intimate married couple. He can be so gentle and loyal and then really hard on people when it isn't necessary." One former official felt that Musk would need to temper himself better in the years to come if SpaceX was to keep currying favor with the military and goverment agencies in its bid to defeat the incumbent contractors. "His biggest enemy will be himself and the way he treats people."
247: SpaceX spent $2.5 billion to get four Dragon capsules to the ISS, nine flights with the Falcon 9, and give flights with the Falcon 1. It's a price-per-launch total that the rest of the players in the industry cannnot comprehend let alone aspire to.
2015年10月15日
PAIN, SUFFERING, AND SURVIVAL
人間の真価が出るのは苦境に立たされた時だろう。そこから逃げずに、どれだけやれるか。
現在はヒーローのように讃えられるMuskも、ほんの5年前までは、公言していたことが実現せずうそつき呼ばわりされていた。それどころか、数百億円もつぎ込んだ資金を使い果たしてしまい、SpaceXもTeslaも倒産しかかっていた。
そんな時に起こったのが初婚のJustineとの離婚騒ぎ。Justineは家、生活費と5人の子供の養育費、7億円の現金、Muskの持つTesla株式の10%、SpaceX株式の5%と一台のTesla Roadsterを要求する。しかし、Muskの資産は大部分が自社株式で流動性がなかった。交渉の結果、家と2億円の現金、月100万円の生活費、17年間の養育費に一台のTesla Roadsterで決着した。Muskは自社株式に拘った。それは会社を自分でコントロールしたかったからだ。
Teslaは月に5億円の赤字を出していて、毎週の給与支払いをElonは友達からの借り入れに頼っていた。数十億円に上る1200台分のRoadsterの予約金は既に使い果していたのに、まだ50台しか納車できてなかった。投資家巡りをするが、新規で投資する者は誰もいなかった。Elonは自己資金をなんとか$20Mかき集め、他の株主にも同額を出すように求める。「そうでなければ、倒産だ
」2008年のこの苦境を最終的に救ったのは、12月23日のNASAの発表だった。NASAは国際宇宙ステーションへの12回のフライトを$1.6B（約2000億円）でSpaceXに委託することを決めた。
185: "Elon Musk has been called 'part playboy, part space cowboy,' an image hardly dispelled by a car collection that has boasted a Porsche 911 Turbo, 1967 Series 1 Jaguar, a Hamann BMW M5 plus the aforementioned McLaren F1," a British reporter gushed in 2007.
190: Justine took to her blog in an entry titled "golddigger," and said she was fighting for a divorce settlement that would include their house, alimony and child support, $6 million in cash, 10% of Musk's Tesla stock, 5% of Musk's SpaceX stock, and a Tesla Roadster.
192: "He grew up in a tough culture and tough circumstances. he had to become very tough to not only thrive but to conquer the world. He doesn't want to raise soft overprivileged kids with no directioon." Comments like these seemed to indicate that Justine still admired or at least understood Musk's strong will.
199: "He said, 'Look. We are going to do this. It's going to be okey. Don't freak out'," Singh recalled. "It was like magic. Everyone chilled out immediately and started to focus on figuring out what just happend and how to fix it. It went from despair to hope and focus."
203: the Falcon 1 shut down just as planned and reached orbit, making it the first privately built machine to accomplish such a feat. It took six years - about four and half more than Musk had once planned - and give hundred people to make this miracle of modern science and business happen.
205: "We have over 1,200 reservations, which means we've taken multiples of tens of millions of cash from our customers and have spent them all," the Tesla employee wrote. "Meanwhile, we only delivered less than 50 cars. I actually talked a close friend of mine into putting down $60,000 for a Tesla Roadster"
207: Burning through abut $4 million a month, Tesla needed to close another major round of funding to get through 2008 and stay alive. Jusk had to lean on friends just to try to make payroll from week to week, as he negotiated with investors.
208: Musk had cobbled together $20 million, and asked Tesla's existing investors - since no new investors materialized - to match that figure.
210: On December 23, 2008, however, SpaceX received a shock. People inside NASA had backed SpaceX to become a supplier for the ISS. The company received $1.6 billion as payment for twelve flights to the space station.
211: "What he went through in 2008 would have broken anyone else. He didn't just survive. He kept working and stayed focused." That ability to stay focused in the midst of a crisis stands as one of Musk's main advantages over other executives and competitors. "Most people who are under that sort of pressure fray," Gracias said. "Their decisions go bad. Elon gets hyperrational. He's still able to make very clear, long-term decisions. The harder it gets, the better he gets."
2015年10月14日
ALL ELECTRIC
PayPalの売却益$250Mを用いて、もう一つ始めた会社がTesla。尤も、Elonが始めたのはバッテリー開発の会社で、別に設立されていた電気自動車開発メーカーTesla社と合併したのだ。ElonはやがてTeslaの創業者Eberhardと対立し、合併会社の筆頭株主であることを背景に、彼を会社から追い出してしまう。
TeslaでもSpaceXと同様、従業員は週に100時間以上働くことを求められていた。米国企業では珍しく、Stanford出の新卒を年収500万円で採用し、働かせた。実績のある技術者は1500万円払っても、そんなに働いてくれないからだ。
アメリカではExemptとNon-Exemptに雇用体系が分かれていて、Exemptは現場労働者で労働時間で賃金が払われる。大卒のホワイトカラーはNon-Exemptで、最初から「残業代」はない。OECDの労働時間統計では、日米の年間労働時間は約1800時間でほぼ同じなのだが、日本では隠れた「サービス残業」がある一方、アメリカではそもそも残業代の払われないNon-Exemptが多いので、この扱いはどうなっているのかと思う。
154: "He wanted to change the energy equation of the country." With an investment of $6.5 million, Musk had become the largest shareholder of Tesla and the chairman of the company. Musk would later wield his position of strength well while battling Eberhard for control of Tesla.
161: Musk once again put money into Tesla - $12 million - and a handful of other investors, including the venture capital firm Draper Fisher Jurvetson, VantagePoint Capital Partners, J.P.Morgan, Compass Technology Partners, Nick Pritzker, Larry Page, and Sergey Brin, joined the $40 million round.
169: Tesla had done a decent job of keeping its employee costs down. It hired the kid fresh out of Stanford for $45,000 rather than the proven guy who probably didn't want to work that hard anyway for $120,000.
179: Heading into 2008, the company was running out of money. The Roradster had cost about $140 million to develop, way over the $25 million originally estimated in the 2004 business plan.
2015年10月13日
MICE IN SPACE
31歳になったばかりのElonは、PayPalの筆頭株主として、会社のeBayへの売却で$250M（税引き後$180M）を得る。前回のZip2のCompaqへの売却同様、彼が大半の.com長者と違っていたのは、またしても、その売却益の大半を投資して次の事業を始めたことだ。しかも、複数。
その一つがSpaceXで、これは「地球が破滅することがあっても、人類が火星に住めるようにする」ことが目的の会社だ。真剣にそうなのだ。そのためには、これまでより桁違いに安く人類を宇宙に送り込めなければならない。その手始めに始めたのが、衛星などを安く打ち上げるためのロケット開発だ。
SpaceXの技術者はロケットの発射実験を成功させようと毎週100時間以上働いていた。Elonが公言していた期日からは2年以上遅れることになったが、それでも、衛星を打ち上げ、国際宇宙ステーションに補給物質を届けられるロケットをゼロから作り上げたことはスゴイ。
下の写真は今年5月に公開された有人宇宙船Dragon V2のコクピット。「2015年に無人打ち上げを実施し、2016年には最初の有人打ち上げを開始。2017年以降ISSへの有人輸送をロシアが独占している状態を打破したい」「現在NASAは、ISSへの人員輸送でロシアに1人当たり7000万ドル以上払っているが、ドラゴンV2では2000万ドル以下を提示したい」
114: At a time when the cost of sending a 550-pound payload started at $30 million, he promised that the Falcom 1 sould be able to carry a 1,400-pound payload for $6.9 million.
128: This marketing song and dance didn't sound sensible to SpaceX's engineers. They were working more than one hundred hours per week to make the actual rocket that SpaceX would need to be in business. Musk wanted them to do that and build a slick-looking mock-up.
2015年10月12日
イマドキの高速バス
今回の連休は松代（長野）へ出かけた。今年知り合った友人がこちらの出身で、誘ってくれたのだ。長野には学生の頃から何度も行っているが、何しろ広い。松代は初めてだ。調べてみると、長野県は面積が13590km2あり、1862km2の香川県の7倍だ。
これまではレンタカーで行くことが多かったのだが、今回はその友達が車で行っているので、現地での足はある。あれこれ比較し、高速バスで行くことにした。関東で路線高速バスに乗るのは何十年ぶりだろう。Willer Expressというピンク色のバス。何しろ、＠1500円（特価）と安かったので、特に期待は無かった。
ところが乗ってみると、シートはゆったりしていて、フットレストまである。飛行機でいえば、JALのClass Jくらいの感じ。写真では見れないのだが、シート上にはフードがあって、寝るときは周囲から遮断されるようになっている。特に一人で乗って、隣が他人の場合、寝るときにこれは役に立ちそう。
極めつけは、プライベートモニター。国際線の飛行機さながらに、前のシートに埋め込んである。飛行機と違うのは、地上波TVが見れることと、映画の数が20程度と少なく且つ新作はない事。音楽が聴けて、ゲームができるのは同じだが、ゲームは12月1日で終了するらしい。各シートにゲームコントローラまで付いているのに、どうするんだろう？
新宿から松代までは4時間弱。途中2回の休憩が入る。専用軌道を自前で整備しなければならない鉄道に対し、高速バスは使用料を払うとはいえ、他の車と共用する高速道路を使うので、安い。「4時間の壁」を超えれば、飛行機より新幹線が有力になるとよく言われる。高速バスでも、4時間以内であれば、安さで新幹線と競合できるということだろう。
2015年10月11日
PAYPAL MAFIA BOSS
ペンシルバニア大学を出たElonはシリコンバレーを目指す。おりしもインターネットの波が来るところだった。最初に創業したのは、Zip2というGoogle MapとYelpのようなサービス。この会社は1999年にCompaqに買収され、Elonは27歳にして億万長者となる。
ここまでは、良くある話。Elonが違っていたのは、Zip2の売却で得た$27Mの大半（$24M）を直ぐに、次のベンチャー創業につぎ込んだこと。これはオンライン銀行X.comであった。これには、金融は数字が支配する世界で、インターネットとの相性が良いという理由と、カナダの銀行でのインターン経験があった。
銀行インターンをしていたとき、Elonは驚くべき発見をする。当時、北米の銀行の多くが南米に貸し込んだ金が不良債権になっていた。債権は元本に対し1/4位で取引されていたという。ここで、南米の経済状況がこれ以上悪化することを恐れたアメリカ政府が元本の1/2まで政府保証をすることにする（Brady Bond）。しかし、債券価格はほとんど反応しなかった。そこでElonは買えるだけの中南米債券を買うことを銀行に提案するのだが、中南米で既に大損害を受けていた銀行は、「中南米は見たくもない」と却下する。
この経験から、「銀行マンは横並びしているだけのバカだ」とElonは確信し、次のターゲットを銀行業務に定める。ところが、X.comはライバルとの顧客獲得競争で疲弊し、その競合他社と合併することになる。ElonはX.comの大株主だったので、新会社のCEOに就任するのだが、Elonの独断的で高圧的なスタイルが従業員の反発を買い、追い出される
この辺りは、Appleを追い出されたJobsとそっくり。新会社PayPalはElon無しで順調に成長し、やがて、eBayが$1.5 billionで買収する。Elonは$250Mを手にする。つまり、Elonは経営者としてほとんど貢献することなく、株主として持ち株がテンバガーとなる。
77: "Later in life, as I competed against the banks, I would think back to this monent and it gave me confidence. All the bankers did was copy what everyone else did. If everyone else ran off a bloody cliff, they'd run right off a cliff with them. If there was a giant pile of gold sitting in the middle of the room and nobody was picking it up, they wouldn't pick it up, either"
83: The squabble between Friker and Musk came to a quick, nasty end. Just five months after X.com had started, Fricker initiated a coup. "He said either he takes over as CEO or he's just going to take everyone from the company andcreate his own company," Musk said.
87: What followed was one of the nastiest coupos in Silicon Valley's long, illustrious history of nasty coups. A small group of X.com employees gathered one night at Fanny & Alexander, a now-defunct bar in Palo Alto, and brainstormed about how to push out Musk. They decided to sell the board on the idea of Theil returning as CEO.
89: In July 2002, eBay offered $1.5 billion for PayPal, and Musk and the rest of the board accepted the deal. Musk netted about $250 million from the sale to eBay, or $180 million after taxes - enough to make what would turn out to be his very wild dreams possible.
92: Both Musk and Thiel had a keen eye for young, brilliant engineers. The founders of start-ups as varied as YouTube, Palantir Technologies, and Yelp all worked at PayPal. Another set of people - including Reid Hoffman, Theil, and Botha - emerged as some of the technology industry's top investors.
2015年10月10日
ELON in CANADA
母方の祖父がカナダから移住してきたことで、カナダ国籍を手に入れたElonは高校卒業後カナダに向かう。そこで様々なバイトをしながらお金を貯め、1989年Ontario州のKingstonにあるQueen's大学に入学する。そこでの行動が面白い。
新聞を読んでは、面白いと思った人に片っ端からアポを取って会いに行くのだ。そのうちの一つが、Bank of Nova Scotia重役のPeter Nicholsonで、これが縁で、銀行でインターンをすることになる。これが後にオンライン銀行の創業、そしてPayPalにつながるのだ。
大学での成績は良かったようで、3年目に名門のペンシルバニア大学に編入する。Ivy Leagueの方が卒業後のチャンスが広がるとみて転校したのだ。経済学と物理学両方の学位を持っている。そして、その間の学費は、友達と借りた家で毎月有料のパーティを開くことで賄っていた。
家庭環境のせいもあり、最初から「自分でやっていく」という覚悟があったのだ。
47: Elon would read the newspaper alongside Kimbal, and the two of them would identify interesting people they would like to meet. They then took turns cold-calling thesepeople to ask if they were available to have lunch.
50: Musk was more ambitious in college than he'd been in high school. He studied business, competed in public speaking contests, and began display the brand of intensity and competitiveness that marks his behavior today.
53: "I was paying my own way through college and could make an entire month's rent in one night. Adeo was in charge of doing cool shit around the house, and I would run the party."
2015年10月09日
ELON in AFRICA
Elon Muskは南アフリカ生まれだ。その後、カナダとアメリカの大学を出て、シリコンバレーで起業する。なぜ北米を目指したのかというと、Elonの母方の祖父がアメリカ生まれで、その後カナダに移住しており、Elonもカナダのパスポートを入手できたからということ。
その祖父はカナダで成功した医者＆政治家だったが、戦後、社会主義的政策を取ったカナダに嫌気がさして南アフリカに移住している。大変な冒険家でもあり、自家用飛行機でアフリカ大陸を縦断して、イギリスまで飛んだりしている。
少年時代のElonは「本の虫」。小学校の図書室と、近所の図書館の本は全て読んでしまった。愛読書はブリタニカ百科事典だったという。
この頃、両親が離婚し、当初は母親と、後には父親と暮らすことになる。父親と暮らすと言い出したのはElonなのだが、気難しい父親との暮らしは精神的に大変なものだったらしい。それは、「精神的拷問」であったと言っているが、その経験が兄弟の今日をつくり、また、その性格を2人は受け継いでいるということ。（p37 Elonの弟Kimbal）
そして、9歳のときのコンピュータとの出会いが運命を決める。1980年にCommodore VIC-20を父親に買ってもらい、通常数か月掛かるBASICを三日間徹夜してマスターしてしまうのだ。
28: Haldeman seems to have everything going for him when, in 1950, he decided to give it all away. The doctor-cum-politican had long railed against government interference in the lives of individuals and had come to see the Canadian bureaucracy as too meddlesome....And so, over the course of a few months, the family sold their house and dance and chiropractic practices and decided to move to South Africa.
33: "At one point, I ran out of books to read at the school library and the neighborhoold library," Musk said. "This is maybe the third or fourth grade. I tried to convince the librarian to order books for me. So then, I started to read the Ecyclopaedia Britannica. That was so helpful. You don't know what you don't know. You realize there are all these things out here."
38: "I just got super OCD on it and stayed up for three days with no sleep and did the entire thing. It seemed like the most super-compelling thing I had ever seen."
2015年10月08日
ELON'S WORLD
先日香川に遊びに来たフランス人の友達が、「読んだから」と置いて行ってくれたのが本書。英文の大著を読むのは久しぶりで時間が掛かっている。
「当代一のシリアルアントレプレナー」とも言われるMUSKはPayPal、Tesla Motors、SpaceX、SolarCityという大成功した、あるいは少なくとも"make a dent in the world" （世界に影響を与えた）ベンチャー企業のオーナーである（PayPalは売却済み）。
大著で、私の専門分野でもあるので、シリーズで紹介したい。今日は先ず第一章。自信家で頑固で妥協しないところなど、「空間を曲げる」と言われたJobsとも通じる。
ELON'S WORLD
14: Musk should have been partof the malaise. He jumped right into dot-com mania in 1995, when, fresh out of college, he founded a company called Zip2 -- a primitive Google Maps meets Yelp. That first venture ended up a big, quick hit. Compaq bought Zip2 in 1999 for $307 million. Musk made $22 million from the deal and poured almost all of it into his next venture, a start-up that would morph into PayPal. As the largest shareholder in PayPal, Musk became fantastically well-to-do when eBay acquired the company for $1.5 billion in 2002.
16: Musk has built two of the most successful clean-tech companies in the world. The Musk Co. empire of factories, tens of thousands of workers, and industrial might has incumbents on the run and has turned Musk into one of the richest men in the wolrd, with a net worth around $10 billion.
17: When Musk sets unrealistic goals, verbally abuses employees, and works them to the bone, it's understood to be - on some level - part of the Mars agenda. Some employees love him for this. Ohers loathe him but remain oddly loyal out of respect for his drive and mission.
2015年10月07日
香川県産「生キャビア」
年初に行われたSVS.COMビジネスプランコンテストで審査員として同席させていただいたCAVIC松田社長を、東かがわの養殖場に訪ねた。松田社長は、29年間香川県漁連に勤めた方で、大変なアイデアマン。その最大のヒットは今も全国で流れる「おさかな天国」だろう。
その養殖場は、旧引田中学校。松田社長の母校でもある。中学校が別の場所に移転新築されることになり、旧校舎と敷地は売りに出された。当初入札価格は2億円だったらしいが買い手が付かず、5000万円に。それでも応札がなく、1000万円に下げたところ、 数社が応札し、コンペになった。これを、「太陽光発電＋キャビア生産」で落札したのがCAVIC。
稚魚のチョウザメがキャビアを生むまで7年かかるそうで、問題は、養殖のための設備投資とキャビアが採れるまでの資金をどうするか、そしてどう販路を開拓し付加価値高く売っていくかというマーケティングの問題になる。
松田社長は、校庭と校舎屋上に太陽光発電を入れて売電（42円/kw）することで7年間の運転資金を確保した。20gで1万円近くする高級食材にふさわしく、写真のようなビンと化粧箱にした。パンフレットを含め、全てのプロモーション・ツールも高級感で統一した。実は、CAVICは国内のキャビア生産では後発だったのだが、圧倒的なマーケティング力で2年間で全国1位になった（現在販売しているのは、稚魚から育てたものでなく、同業他社から途中で買ったチョウザメを継続養殖したもの）。
今年取得した鳴門養殖場（元は養鰻場）での生産も近々始まるそう。東かがわ市の「ふるさと納税」返礼品でも一番人気だそうだ（寄付額45000円以上）。
2015年10月06日
アイデアのヒント
「アイデアとは既存の要素の組み合わせ以外の何ものでもない」（James Web Young『アイデアのつくり方』）ということで言えば、もっといい本がある。これを機に再読したので、再度紹介したい。著者はアメリカで数々のキャンペーンを成功させた広告代理店マン。原書は1996年に出版されている。
著者に初めてコピーライティングを教えた上司が机に貼っていたという言葉が紹介されている。結局は、アイデアも諦めずに考え続ける「根気」なのだと思う。
何より肝心なのは「根気」だ。
才能じゃない―才能があって成功しない人はうようよいうる。
金じゃない―金持ちに生まれて、貧しさの中で死ぬ人はたくさんいる。
天才じゃない―天才が報われないのは、ほとんど常識だ。
教育じゃない―世の中には学のある落伍者があふれている。
運じゃない―運命のきまぐれは何人もの王の命を奪ってきた。
根気と決意だけがすべての道を拓く。
�．▲ぅ妊△録癖發鮴犬狄篆蔑��▲灰鵐團紂璽燭砲禄侏茲覆ぅ�リエイティブな作業��情報化時代→情報が別の情報と組み合わされて新しいアイデアが生まれる・アイデアとは、既存の要素の新しい組み合わせである・アイデアを思いつく上で、「答えは一つ」という考えを捨てる「答えはたくさんある」と考えること自体が、アイデアを引き寄せる力になる・アイデアを生む方法子供に戻る：大人の常識を捨て、子供のように、見るもの全てについて「なぜそうなのか」と考える「知りたがり」になる：日常とは異なることをし、意識して新しいことに目を向ける心がけ一つで、今まで考え付かなかったくらいにものが「見える」ようになり、「見た」ものを記憶できる→アイデアを生み出すための「組み合わせ」素材（p106）笑われることを恐れない：たとえ人が笑うような考えでも、そこに新たなアイデアの芽が潜んでいることがある「考え方」のヒントを知る：言葉でなくビジュアルで考えるなど、これまでとは違うやり方で考えるいろいろなものを組み合わせてみる：似たものを比較したり、他分野に目を向けるなど、多くの組み合わせを考える質問を変えてみる：同じ問題でも、それを違う言い方にして考えることで、正解への道が開ける情報をかき集める：｢意識を集中」して問題を考えるようにすると、それに関連する情報が自ずと集まる「ある考えで頭がいっぱいになっていると、どちらを向いてもそれが見える」トーマス・マン(p195)
数で勝負する：分析や評価は後回しにし、まずはできる限り多くのアイデアを出す
2015年10月05日
アイデアは才能では生まれない
筆者は、元々、花王で洗剤の商品開発をしていた方。自らの体験を基に、「他社、他業界ではどうなのか？」をインタビューし、「才能ではなく、手法を学んで、身につけていけば、どの業界でもアイデアを出すことができる」と結論付けている。アイデアとは、言ってみれば、これまで世の中にあるものの「新たな組み合わせ」にしか過ぎず、その組み合わせ方を考えるには「手法」があるということである。
これは、「電話を再発明した」とジョッブズ自らが言ったiPhoneでもそう。よく言われるように、iPhoneには新しい技術などどこにもなかった。タッチパネルは既にiPodで使われていたし、それを発明したのは日本メーカーだ。携帯電話はもちろん世界中で使われていた。タッチパネルというインターフェースと、携帯電話と、音楽再生装置を高いレベルで組み合わせたから大ヒットしたのだ。
ただ、その確立された「手法」が本書で明かされているとは思えない。本書の大半を占めるのは、ヒット商品を各企業でどう開発したかのインタビューで、そのエッセンスが十分に抽象化されていない。強いて言えば、「皆、悩みに悩んで、智慧を振り絞った」から成功したということになってしまう。
普通の企業（サントリー、セガ、花王、ワコール、松井証券、クリナップ、デジタルフォレスト、カルビー）の中で、商品を改良したり、開発したり、デザインしたり、新事業を立ち上げたりという仕事で実践してきた人たちのアイデアの出し方。116:単なるアイデアではなく、ストーリーとしてつながるように、抜け落ちたポイントをさらにデータやアイデアで埋める（サントリー風間茂明）180:PDCA「早く失敗する」（DF清水昌浩）195:発想を広げるこれまでと同じ（キッチンの）「調理から後片付け」という役割範囲で考えている限り、これまでと同じような考え方の商品から抜け出せない （クリナップ）
2015年10月04日
高知県立牧野植物園
こちらも、これまで幾度となく高知に行きながら、通り過ぎていた施設。「高知といえば、飲んで食って踊ってでしょう
」と思い、美術館や博物館の類には全く期待してなかったのだ。入ってみて、その充実ぶりに驚いた。ただ、訪問時にFacebookで書いた通り、庭園はそこそこの人が入っているが、展示室内は閑散。牧野富太郎記念館本館（写真）に居たのは私一人だし、展示館の方も同時に見ていたのは5人程度。最も混んでいるはずの日曜日の午後である
企画展示室にはボランティアガイドが居たのでガイドをお願いしたが、やはり30分ほどの滞在中、他に誰も来なかったどれだけ県内で人気のない施設なのか
まず、テーマとなっている牧野富太郎博士の人物が魅力的だ。小学校を中退して、独学で植物分類学に打ち込んだ。比較的豊かな家に生まれた牧野は全ての財産を研究につぎ込み、実家は破たんする。後先構わず没頭する人の多い土佐人が良いことに没頭すればここまで出来る、という見本だろう。
次に、庭がスゴイ。植物園なのだから当たり前かもしれないが、その規模と植物の種類の豊富さに圧倒される。世界一と評されるロンドンのKEWには流石に規模で敵わないが、あちらは入場料£15なので、3000円する。こちらは、720円で済む（笑）。しかも、65歳以上の高知県民は無料
KEWでは60歳以上で£14と、ほとんど違わない。最後に、建物。「これはいいなー」と思ったら、やはり賞をもらっていた。内藤廣設計で村野藤吾賞などを受賞しているということ。自然と調和していて、心地いい。
2015年10月03日
高知県立美術館
先に「その経済規模に比して立派過ぎる」と指摘した高知県立美術館。しかし、あるものは仕方ない（笑）。高知県民が関心ないなら、関心ある人が利用させてもらうのが日本全体として善い。
中に入る前に、まずその建物を鑑賞（写真）。壁面には土佐漆喰、屋根には土佐瓦が用いられており、伝統的土佐の土蔵造りを巨大化した感じ。伝統を活かしているのは、県立美術館として好ましい。
敷地内は公園化されていて、建物の廻りを散歩するだけでも楽しそう。実際、カフェでモーニングを食べていたら、散歩している人がかなりいた。
さて、美術館として肝心の展示だが、コレクションの柱になっているのは、マルク・シャガールと写真家の石元泰博。この二つは常設になっていて、展示は定期的に入れ替えられている。特に、シャガールのコレクションは1500点に上り、これは世界有数である。なぜ高知が、このロシア生まれのユダヤ人作家の作品をコレクションすることになったのかは知らない。
１８８７年、シャガールはロシアの街、ヴィテブスク（現在のベラルーシ共和国）の貧しいユダヤ人の家庭に生まれました。１９１１年からパリに出て、ラ・リューシュ（ハチの巣）というアトリエで制作に励む一方、アポリネール、サンドラールら詩人たちとも交流しました。キュビスムやフォーヴィスムを中心とする最新の美術に影響を受けるものの、恋人や花束といったモティーフが浮遊する独自の表現を確立していきます。 １９１５年には、生涯シャガールが愛し、創造の源泉となった同じユダヤ人のベラと結婚します。翌年には娘イダが生まれ、画家としての名声も高まりますが、ナチによるユダヤ民族の迫害政策や、ロシア革命、二度の世界大戦などの苦難に見舞われ、ヨーロッパ各地を転々としたのちアメリカへ亡命、その地でベラを失くします。ベラの死後、しばらく筆を取れなくなっていましたが、イダをはじめとする周囲の支えにより制作を再開し、「色彩の魔術師」と呼ばれるような鮮やかな色彩表現を深めていきます。１９５０年から南仏のヴァンスに定住し、晩年にいたるまで旺盛な制作意欲を発揮しましたが、１９８５年に惜しまれつつ逝去しました。享年９７歳でした。 （美術館HPより）
2015年10月02日
政権を滅ぼす宿命の都
日本最大の宗教団体である本願寺（浄土真宗）の教団としての発足経緯がスゴイ。宗祖の親鸞はその生存中、「親鸞ハ一人ノ弟子モモチ候ハズ」と言い、思想として教団を否定した。教団を起こしたのは、親鸞からかぞえて八世の孫にあたる蓮如で、貧窮の中成人したことをバネに布教と子孫繁栄に精力的に活動したようだ。
親鸞自らの意思に反して日本史に最大の影響を与えた宗教団体となったのも、元はといえば、親鸞が妻帯を認めたからである。現在に至るまで、浄土真宗のトップには親鸞の子孫が就いている。結局は、この「世襲」が日本人にはしっくりくるのかもしれない。
269:とにかく日本の（あるいは世界の）どの都会にくらべても都市としての立地条件のよさは、大阪はあるいは最高かもしれない。その価値は、まず日本列島のやや西寄りの中央に位置しているということであろう。ついで琵琶湖という巨大な貯水池をもち、淀川が天然のパイプをなし、下流で数百万の人口をうるおしうること。さらには後背地がひろく、地味が豊沃で、食料の供給力が大きいこと。さらにそれらをそうわしてもうわまわるほどの価値は大阪湾と瀬戸内海であろう。272:本願寺は親鸞によって興ったのではなく親鸞の教団否定の遺訓を無視してこの宗祖の名を担ぎまわった蓮如によって興ったのである。蓮如はその84年の生涯で6，70人の子を産ませ、27人成人したといわれるほどの精力家だったが、そのなみはずれた体力で天下を布教してまわり、各国各郡各村に講を組織し、ついにはそれまでにかつてなかった民衆の全国組織を完成した。
274:南北にほそくのびたナマコ形の大地で、そのナマコの南のはしに聖徳太子のたてた四天王寺があり、中央に仁徳天皇の高津ノ宮あとがあり、北端に蓮如の石山本願寺つまり秀吉の大阪城がある。地震のほうの専門家にいわせると、大阪に最大級の地震があったばあい、安全なのはこの大地だけだという。
2015年10月01日
忘れられた徳川家のふるさと
名古屋城は見に行き、徳川資料館も見学したが、三河に「松平郷」があるとは知らなかった。司馬遼太郎が調査に訪れた昭和42-3年頃は、誰も訪れる人のない寂れた場所だったというが、今はPRに務めているようだ。
徳川家の始祖が、松平郷に流れ着いた遊行僧「徳阿弥」で、逗留した村の豪家の娘に生ませた子だというのが面白い。先に子をうませた酒井家については、「腹違いの兄弟」ということで、徳川家の家来にしている。そうした血が無ければ、天下を狙ったりはしないということなのかもしれない。
227:徳阿弥はよほど才知もあり弁舌もすぐれ、魅力のあった男らしく、近所の松平郷の豪家である太郎左衛門という屋敷に出入りし、そこのひとり娘にも子を産ませてしまった。やむなく太郎左衛門家ではこの徳阿弥を婿にせざるをえなくなり、相続させた。徳阿弥は髪をのばして松平親氏と名乗り、さきに子をうませた酒井家については、その縁でこれを松平氏の下に属さしめた。松平・酒井のつよい紐帯はこのときに成立し、徳川家が天下をとったあとも酒井家は譜代大名のなかでも別格とし、大老の地位の約束された家柄になる。233:――三河の兵こそ、東海一である。ともいわれ、「三河者一人のねうちは尾張者三人に匹敵する」とすらいわれた。（中略）家康は年若のころは信長ほどの天才的な戦略家ではなかったから、かれが三河以外の地で出生すれば、あるいは天下の五分の一もとれなかったかもしれない。
235:今川氏はこの三河衆を容赦なく戦場で追いつかった。戦いは織田家が相手であり、年に数度、12年の間の回数は数えきれない。つねにかれらに先鋒をつとめさせた。先鋒はいわば玉ふせぎであり、犠牲は当然大きい。「今川氏は三河衆を根だやしにするつもりではないか」とさえささやかれた。こういう今川氏のやりかたは、ある時期の英国のインド人に対するやりかたとそっくりであった。
