2014年08月
2014年08月31日
四谷シモン人形館
ふすまを開けて、こんな人形が出てきたら驚く。
それが、四谷シモン人形館で、ここは鎌田醤油社長が昭和11年に造った自宅を改装した四谷シモン人形を集めた博物館である。個人宅としては、四国で一番古い鉄筋コンクリート建築らしい。（施工 清水組）床は全て寄木造と、贅を凝らしている。皇族だけのために使っていたという応接間もある。（登録有形文化財）残念ながら、現在「SIMON DOLL巡回展」に15体貸し出し中で、観れたのは8体のみ。同巡回展の前期（＠そごう横浜）は既に終わっていて、後期＠西宮大谷記念美術館が10月11日〜11月30日だとか。どうやら、23体がここ人形の館で再び揃って見れるのは来年になりそうだ。
2014年08月30日
弘法大師≠空海
合点がいく。いくら空海が偉くても、日本中で井戸を掘ったり、池を作ったり、政務も忙しい中で出来るわけがない。「弘法大師とは、空海をモデルにした物語の主人公であり、架空の人物」と考えれば、納得である。
7世紀に勃興したイスラームの東進に抗してインド仏教は大きく変化する。マントラ（真言）を中心に据え、それを唱える身体的修行によって精神の在り様の根本的転換を図ろうとする新しい仏教が姿を現す。それは「密教」と呼ばれ、7世紀中頃から8世紀初めに中国に伝播する。その仏教の激動期に空海は生まれ、新しい教えを求めて入唐する。21:弘法大師≠空海弘法大師＝空海をモデルにして、中世(10-16c)の日本人が作り上げた物語の主人公145:即身成仏「一切の仏法、この一句を出でず」263:沙門空海沙門＝シュラマナ＝努力する人＝仏教に限らず広く出家する修行者シャーギャムニ（釈迦族の聖者)は北インドの各地を遊行してダルマを説き、同じ頃、ギリシャではソクラテスが広場をうろつきながら青年たちにソフィアを説いていた。
空海もベルクソンも、智を求めて努力する自由の境地を共有
2014年08月29日
鎌田醤油
香川県醤油醸造協同組合で生揚醤油の製造工程を学んだあとは、タンクローリーの後を追って、鎌田醤油の港工場に向かった。ここで、生揚醤油は火入れされて発酵が止まり、また、ダシが加えられて、だし醤油となる。
鎌田醤油は寛政元年（1789)創業というから、フランス革命と同じ年に創業されている。江戸中期だ。当時既に坂出では塩田が始まっていたから、塩づくりが醤油づくりに結び付いたのは間違いない。明治35年(1905)には現在も使われているマークが商標登録されている。
讃岐うどんブームで「うどんつゆ」と、「だし醤油」がネット通販で人気だが、実は消費者への直接販売には長い歴史があった。30年前に前社長（現会長）が始められたそうで、そこには、大手醤油メーカーの寡占体制が強まる中で、「良い商品を作っても、直接消費者に売らなければそれが理解されない」という危機感があったという。
鎌田醤油は時代に合わせた新商品の開発を続け、販売方法も変えた。変化対応できる企業だけが「老舗」として生き残っていける。
2014年08月28日
なぜ、“うどん県”からチェーン店が出てこないのか
ついにYahoo!ニュースデビュー！？先日のインタビューが記事になりました。
昨日の正午にリリースされ、午後は一時、Yahoo!トップページに表示されていたらしいのですが、自分自身は外出中で知らず。夕方になって、友達から、「出てる！」と言われて観た次第。今朝見たら、既にトップからは落ちていたものの、「経済」では2位。STAPよりは上だ。
Yahoo!トップのスクリーンショット撮っておくんだった。（笑）ベースになっているのは、昨年の日本ベンチャー学会で発表した「うどん県からは、なぜ、うどん屋チェーンが出ないのか？」 予定されているインタビュー「後編」では、7-8月と夏休み返上で取り組んでいた続編「うどん屋とラーメン屋比較」を行います。でもね、日常的に食べているうどんと違って、ラーメンは殆ど自分で食べないので、今一つ自信がない。
今年の学会発表まではまだ時間があるので、ご意見＆情報などいただければ幸いです。
2014年08月27日
醤油の歴史
香川県醤油醸造協同組合で醤油の製造工程についても勉強。
材料は、三つある。それは、大豆と小麦と塩。大豆は「畑の肉」と言われるくらいたんぱく質が豊富。このたんぱく質が発酵により分解されて、うまみ成分のグルタミン酸になる。小麦の主成分はでんぷんであり、これは分解されて糖となり、甘みの元となる。塩はその物自体が調味料であり、また、微生物の発生を妨ぐ天然の防腐剤である。
では、大豆以外のたんぱく質が原料でもいいのか？
答えはYES
で、・果実､野菜､海草などを材料にした「草醤（くさびしお）」
・魚や肉を使った「魚醤（うおびしお）肉醤（ししびしお）」
・穀物を原料とする「穀醤（こくびしお）」
の4つがある。醤油は穀物を原料とした穀醤の一種ということになる。果物を原料としたものの代表はウスターソースだろう。魚醤にはタイのナンプラー、ベトナムのヌックマムがある。肉醤というのは私自身知らないが、肉自体が高価なものだから、世界的にもあまりないということなのだろう。調味料は食材を引き立てるものであるから、それ自体があまり高価であっては意味がない。
面白かったのは、「丸大豆醤油」の意味を初めて知ったこと。ここで使われているのは脱脂大豆なのだが、店では「丸大豆」から作られた醤油があたかも高級品であるかのように売られている。これは、脱脂してない大豆を丸々原料として使った醤油ということなのだ。
それで、大豆の油脂は醤油に必要かというと不必要で、元々、もろみを絞った後に分離して浮いてきたものを取り除いていたということ。それが、戦争中に、「もったいない」ということで、原料段階で脱脂加工した大豆を原料として使うようになったのだという。
日本の調味料の代表醤油も、こうしてみると、原料は殆どを輸入に頼っている。従って、円安が進むと値上げすることになりそうだ。
2014年08月26日
弘仁のモダニスト
著者の竹内先生は、香川の出身で、高松高校→東大文学部。その後、東大のフランス文学の教授を長年務められた。定年後は、私大に転職せず、空海研究に没頭されるため地元に戻られている。
先生は50歳の時のサバティカルを空海研究に当てられ、半年間を高野山で過ごしている。その研究結果として出版されたのが本書。地元におられるということなので、会ってみたい。
空海は生まれながらに真言宗祖だったのではなく、自身の自己探求の歩みの帰結としてそうなったにすぎない。山と都市、高野山と平安京、唐代中国と日本、重なり合う複合的な磁場のなかで自らを形づくり、日本文化の設計者となった天才的個性の生涯。
21:頂上を目指すよりも、山に深く分け入ること。山を征服するのではなく、山と一体となること、それが「修験者風」147:観想の対象である尊格を呼び出し、語りかけるのが真言の基本的な機能178:弘仁のモダニズム（平安初期）�仝沈�豊かな「個人」皇帝：桓武、平城、嵯峨仏教：空海、最澄、円仁�△修譴蕕痢峺沈�」によって、それまでとは違っていた新しい地平がそれぞれの分野で切り開かれた��モダニズムの特徴である国際性、通文化性180:空海＝デュモンのいう仏教的「個人」ブッダという規範は、社会的死と身体的死との間の短い時間に、問題が何であるかを認識した上で選択肢決断する人間には、自由のための場所が存在することを教えている。
2014年08月25日
香川県醤油醸造協同組合
香川県の醤油醸造企業33社のうち、半数の16社の醤油の元は同じ場所で造られていた
先週、鎌田醤油の鎌田社長のご案内で、香川県醤油醸造協同組合を見学した。組合自体は明治44年(1911)に設立され、昭和16年に共同で製麹工場を稼働させている。
生揚（きあげ）醤油製造を開始したのは昭和41年で、ここで年間に4000kl製造しており、これを組合員である各社が購入する。生揚醤油というのは、熱処理される前の醤油のことで、これに各社が火入れと独自の「味付け」を行い、完成品となる。
組合の「事業の背景」にはこうある。
醤油業界は、都市化の流れや大量の広告宣伝により、大手５社で全国生産の約５割を占めるまでになっており、中小メーカーの多くは苦しい立場に追い込まれていた。そこでスケールメリットが活かせ、熟成期間も長くかかる生揚醤油の生産を組合で行い、各組合員が生揚醤油の精製・火入れ（殺菌）、検査、瓶詰めをすることとなった。工場建設時、既に製麹までの工程は組合で実施していたので、生揚醤油生産の共同化は比較的スムーズに開始することができた。1955年に全国に6000社あった醤油メーカーは、都市化の流れで、「醤油は地元のものを使うもの」という習慣が廃れ、そこに大手メーカーの広告宣伝戦略で、寡占化が進んだ。最大手のキッコーマンが自らの製法をJASとして定めてしまったことも大きいという。これにより、独自のつくり方が出来ずに、全国画一的になってしまった。差別化が出来なければ、規模の経済を活かせる大手が有利になる。現在では、大手5社で全国生産の半分以上になるという。
2014年08月24日
オーバーヒート
なめてました。これまで走行距離１０万kmを超える車に乗ったことが無く、メンテナンスは自分でもやるほうなので、車が故障した経験なし。
それが、一昨日、走行中にバッテリー警告灯が点き、「あれ？」と思ったものの、あまり気にせず目的地へ。アポがあったので、急いでいたのだ。次に水温計が上昇し、レッドゾーンへ
それでも楽観的な私は、警告灯の間違い？位に思っていた。兎に角、一旦エンジンを切ってリセットしようと。目的地での会議が終わり、帰ろうとしたところ、やはり警告灯が点いているし、パワステが効いてない。これはいよいよおかしいと思い、２０分ほどのところにある車屋に持ち込むことに。
５分ほど走ったところで、ボンという軽い爆発音とともに、水蒸気が噴き出す
流石の私も、これでオーバーヒートを確信し、目前の知り合いの店の駐車場へ入れてエンジン停止。E46はファンベルトで、冷却ファンも、発電機も回しているんですね。だから、先にバッテリー警告灯が点いた。 せめて、市役所に着いたとき、JAFを呼ぶべきだった。今、ハラハラしながら修理見積もりを待ってます。(^_^;)
2014年08月23日
昭和の宿
今週、何があったのか知らないけど、高松市内の宿が全て満室！かろうじて見つけたのが隣の坂出の宿で、「この時期に売れ残っているのは期待できないだろう」と思っていたら、全く違っていた。「旅館 みき」は楽天トラベルでの評価も最上級
駅から徒歩１０分。車は５台の駐車スペースがある。周辺には空き地が目立ち、あるいは再開発でマンションが建ち、ここだけが取り残されたように建っている。
女将さんに聞いたところ、お母さんが４０数年前に創業されたとか。それを受け継いだのが平成元年。「立て直すお金もないので、建物と自分の健康が続く限りやろうと思っています」とのこと。
食事が美味しい。素朴な瀬戸内の魚料理。部屋は和室で、温泉旅館のようにピカピカではなく、家にいるように寛げる。
宿泊客の中進は、かっては建設工事の下請け・孫請けで中期で働きに来ている人だったそうだ。今では、工事が減り、半分「遍路宿」になっているという。その遍路さんも、多くは駅前のビジネスホテルに泊まるのだそうだ。
こういった「昭和の宿」が無くなるのは寂しい。皆でもっと利用しよう。WiFiは入れるようにアドバイス（笑）。
2014年08月22日
「好き嫌い」と経営
20万部売った『ストーリーとしての競争戦略』の著者による最新刊。欧米の経営学者は、毎年論文を書いて学会発表する大多数の「研究者」と、HBSを中心に一部いる論文はほとんど書かないが、経営者に影響を与える本を書く人に分かれる。楠木氏は後者を目指しているようだ。
まえがき：誘因と動因は異なる誘因＝人の行動や意思決定をある方向へと「誘うもの」動因＝人の内部から自然と湧き上がってくるもの＝その人の「好き嫌い」行動のリーダー⇔状態のリーダー好き嫌いだけでは経営できない。しかし、好き嫌いを抜きにして経営を語れない。１．永守重信 「何でも一番」が好き30:株主総会のマイクは誰にも渡さない２．柳井正 「デカい商売」が好き47:創業者というものは全部を自分でするもの３．原田永幸 「雷と大雨とクライシス」が好き72:苦しければ苦しいほど、楽しい結果が出る４．新浪剛史 「嫌いなやつに嫌われる」のが好き101:自分自身に不安がある。時たま自分が言った言葉に対して、「おまえ、何様なんだ」と思う。カチンと来て何か言ったりした後、「言いすぎたな」と思う数が増えてきた。もう一回、新たなスタートを作らなければいけないと感じる。５．佐山展生 「偉そうにする」のが嫌い127:とんでもなくひどい社長が、世の中に結構いる。面白いことに、そんな社長と一緒に出てくるNo.2の人も、まったく例外なくとんでもない人。６．松本大 「小トルク・高回転」が好き155:僕は1963年生まれ、63年式の車なのです。63年式のコルベット・スティングレーは超カッコいい。今でも走るし、味もあるけれど、63年式です。性能で2012年式の車に勝てるわけがない。だから、自分は63年式だという事実は絶対忘れてはいけないと思っています。自分は陳腐化しているという自覚です。ビジネスの対象は「今」です。７．藤田晋 「今に見てろよ！」が好き182:僕もそんなにモテなかった。まあ、堀江さんよりはだいぶモテましたけど。８．重松理 「一番好きなことを最初にやる」のが好き204:本当に幸運だった。ほかの人からも、運がよかったねとよく言われるのですが、本人が一番自覚している。自分の運のよさを確信しているといっていい。９．出口治明 「活字と歴史」が好き208:一番つまらない生き方は、人生の目的のために一心不乱になること。川の流れのように自然に流れていくのが、一番素晴らしい。１０．石黒不二代 「理系のギーク」が好き232;本人もギークだと言っているし、仕事で朝から晩までゲームを作って、夜はゲームで遊んで、暇があればアニメを見たりマンガを読んだりという生活ですから、ギークでしょうね。オタクに育てたかったんですよ。思った通りに育ちました。１１．江端哲也 「図面を引く」のが好き262:私なりの営業のノウハウを体系化したハンドブックを作って、若手を集めて教えた。私が売れているのに、他に売れない営業マンがいるという状態が嫌だった。売れていなかった営業マンが売れるようになるのがとても面白い。１２．前澤友作 「人との競争」が嫌い271:ゴルフでも競技でも、「このなかで一番になってやろう」というより、「今日はこういうスコアで上がりたい」という自分の目標との闘い。１３．星野佳路 「スキーと目標設定」が好き306:スキー場のリフトの上が考え事の場１４．大前研一 「実質を伴わないもの」が嫌い野球とかサッカーとか、チームスポーツは嫌い。4人でトロトロ競うゴルフも嫌いだが、ゴルフの話をゴルフ以外の時にする奴はもっと嫌い。
131：「みんな普通の人間だから、本人は偉くない。ただ、大きな組織のトップにいると、周りが注目する。その注目が光になって集まり、自分はそれを反射しているだけだ。いくら偉くても自分からは光が出ていないが、光が集まれば自分から光が出ている気になる」（ある昭和の大バンカー）
182:モテないということは、人間にとってすごく重要。僕も若いころからとにかくモテなかった。デフォルトが「モテない」なので、物事が自分の思い通りにいかないものだというのが染みついている。（楠木）
2014年08月21日
不可解中国人の行動原理
2006年から中国で働いているコバジュンこと小林純子さんが香川に一時帰国し、今月地元で再会。前回会ったのは移住前だったので、もう10年近く前だ。
その小林さんからお土産に貰ったのが、昨年出した処女作となる本書。先日書いたように、私が初めて中国を訪問したのは社会人初めての夏休みであった1986年の夏。香港から広東に鉄道で入り、そこから北京に飛行機で飛んだ。
首都北京で見たのは、「人民」の自転車の洪水と、ガラ空きの車道を我が物顔に走るベンツSクラスと国産の「紅旗」。共産党幹部が新たな「皇帝」になっただけ、という共産主義中国の真実を見たようで、それ以来、中国に対して興味を持たなくなってしまった。
次に行ったのは、それから10年後の上海で、これは出張。この時は、週末に蘇州見物に出かけた途中で見た、列車からゴミを平気で捨てる中国人にげんなりした。鉄道の旅で風景を楽しもうとするのだが、線路沿いはゴミの山だ。挙句、寒山寺では土産物屋に取り囲まれ、ガラクタをつかまされてしまう。
中国では、「嘘をつくのは悪」が常識でないとすれば、それを受け入れない私は「中国には合わない人」ということになる。私も数十か国に友人がいるが、様々な価値観や文化を持っているとはいえ、「嘘をつくのは悪」という認識は共通している。英語で、Liar!（嘘つき）と言えば、最大級の侮蔑になる。
その中国に日本は1979年からODAを始め、その額は3兆円を超えている。この額は、東南アジアへの戦争「準賠償」総額2453億円の10倍以上になる。昨年の中国の経済規模（GDP）は日本の2倍になるが、驚いたことに、日本のODAは続いている。その額は技術供与を中心に年間300億円にも上る。
176:中国に合う人、合わない人合う人＝日本より功利主義で女性でも働きやすく、裏表がなく、はっきりしている合わない人＝「こうでなければいけない」と常に自分の常識やスタイルを崩せない人110:嘘をつくのは悪ではない「嘘をつかれるのが悪い」というのが一般的な考え方112:中国人が謝らないのはなぜか面子＝自分の命を懸けても守らなければならないもの107:愛国教育日本＝悪い軍人、罪悪の国抗日ドラマ年間200本（2012)それでも、4:日本のメディアで反日デモの嵐が吹き荒れているという報道の最中、実際に中国に行ってみると、驚くほど何も起こっていない
2014年08月20日
日系移民の歴史
これが日系移民の歴史。明治元年に早くもハワイ移民が始まっている。その待遇は劣悪極まりなく、奴隷のような扱いであったようだ。1865年に南北戦争が終わるまで正式に奴隷制度があったわけだから、さもありなん。
それでも、経済発展著しいアメリカを日系移民の多くは目指すが、徐々に対日感情が悪化する。ついには、1924年の排日移民法により、完全に締め出されてしまう。そこで始まったのが中南米への移民で、ブラジルを中心に多くの日本人が海を渡る。
その音頭を取ったのは、日本政府であり、具体的には現在のJICA（国際協力機構）。先日のNHK番組にもあった通り、宣伝された内容と、実態は大きく違っていた。移民の多くは、数年間の出稼ぎのつもりで来ていたが、過酷な労働環境と待遇で、「話が違う、帰ろう」と思っても、帰国する船賃すら貯めることができなかった。
当時、日本領であった満州にも、国策移民として27万人が渡る。敗戦後、満州にいた移民は多くの犠牲を出しながら日本に引き上げた。それを聞いたブラジルの日系移民は、「我々にも迎えの船が来る」と思ったそうだが、それはついに来ることが無かった。
2014年08月19日
深夜特急６＜南ヨーロッパ・ロンドン＞
先週、労働後の楽しみに読んでいた『深夜特急』も最終巻。イタリヤ→スペイン→フランス→イギリス。
目的地のロンドンに着いた後、どうしたかは本で明らかにされていない。船に乗ってアイスランドに行ったのか？それとも、アエロフロートで帰国したのか？
アエロフロートと言えば、私が留学後、最初の冬休みに帰国したのもアエロフロートだった。本にある通り、ロンドン⇔成田路線で一番安かったのである。アエロフロートに乗るのはこれが初めて。一時帰国も予定外で、留学した時は2年間そのままロンドンに居るつもりで、片道切符で来た。それが、MBA1学期目の余りの大変さと、どんどん短くなる日照時間にうつ状態となり、たまらず冬休みの一時帰国を決めたのだった。
見たことのないソ連製の小さな機体に、CAの派手な化粧と、ひどい機内食が忘れられない。今のアエロフロートはどうなんだろう？
24:ローマとかミラノとかいった大都市ではなく、一昨日まで名前も知らなかったイタリアの小さな町に、これほど熱心な日本製格闘技の信奉者がいる。それは辺境の地でセイコーやパナソニックの広告を見るよりはるかに感動的なことだった。
33:＜こんなものがこの世に存在していいのだろうか・・・・・＞
私は胸の裡で呟いた。この世の中に天才などというものがいるとは信じたくはないが、この「ピエタ」を作った人物にだけはその呼称を許さざるをえない、と思った。「ピエタ」は、天才が自分の才能を開花させていく過程での一作品という以上の意味を持っている。恐らくは、それが天才の出発点であり、到達点であり、同時に全てでもあるという作品なのだ。しかし、二十代の半ばにこのような作品を作ってしまったミケランジェロは、それ以降の長い人生の中で、果たしてこれ以上のものを生み出すことができたのだろうか。
110:「知らなければ知らないでいいんだよね。自分が知らないということを知っているから、必要なら一から調べようとするだろう。でも、中途半端に知っていると、それにとらわれてとんでもない結論を引き出しかねないんだな」
そういうことはあるかもしれませんね、と私は相槌を打った。
「どんなにその国に永くいても、自分にはよく分からないと思っている人の方が、結局は誤らない」
188:パリで調べたところ、日本に帰る最も安い方法はアエロ・フロートの格安チケットを買うことだとわかった。モグリのチケット屋では、ヨーロッパに渡ってきて金がなくなった日本人から安く買い取った帰りのチケットが、破格の値段で売りに出されていた。
2014年08月18日
遠い祖国〜ブラジル日系人抗争の真実〜
先月ブラジルを中心とした日系中南米人MBA研修を担当したのをきっかけに、日系移民に興味を持った。そこで、ちょうど先週放映されていたNHK BS1スペシャル「遠い祖国〜ブラジル日系人抗争の真実〜」（前後編）を見る。
そこにあったのは、日本政府の移民宣伝に「騙され」、数年間の出稼ぎのつもりで戦前にブラジルに渡った19万人もの日本人の姿。実態は農奴のように働かされ、出稼ぎどころか、帰りの船賃を貯める余裕もない。過労と病気でどんどん人は死んでいく。
そこに起こったのが大東亜戦争。ブラジルは米国側に付き参戦し、敵国人となった日系人差別を強めていく。日本語新聞は禁止され、日本語学校は強制閉鎖される。ラジオまで取り上げられ、サンパウロ州の奥地で開墾していた日系人は孤立する。
そして、終戦。奥地で情報遮断されていた日系人は、「日本の敗戦は米国とブラジル政府が仕組んだデマではないか」と敗戦を認めようとしない。これを「勝ち組」と呼び、一方、都市部で商店などを営んでいた日系人はポルトガル語のできる人が多く、戦況に触れていたので、敗戦を認め、奥地の日系人にもそれを知らせようと「認識運動」を展開する。ところが、「勝ち組」はこれを裏切りととり、彼らを「負け組」と呼んで、対立する。ついには、この対立は何十人もの殺人事件にまで発展する。
という、いたたまれない事件。「勝ち組」の多くは、奥地で情報遮断されていた貧しい農民。一方、「負け組」の多くは都市部で商店を経営し、比較的豊かな日系人であった。この経済格差、情報格差がそれまで日本の勝利を信じて一つになっていた日系人社会を分断してしまう。
私はまだ見てないが、これを題材にした「汚れた心」という映画もある。機会があれば見てみたい。
2014年08月17日
霧の森
お盆中、蒸し暑い中、ずっと出勤していたら、流石に疲れがたまり、生産性が落ちてきた。そこで、週末、地元遊びの先達である高校先輩の案内でお隣愛媛県の「霧の森」へ温泉に浸かりに行く。市町村合併で四国中央市新宮町となったこの村は、香川から高知に抜ける高知道の途中にある。四国山地の愛媛側で、ここを抜ければ高知。
高速道路が出来るまでは、香川の西部にある実家から数時間掛かった場所。一度も行ったことが無かった。どうやら、高速ICが出来るのを機会に、IC近くに、この道の駅＋温泉＋レストラン＋カフェ＋コテージが出来たらしい。今では、家から1時間掛からずに行ける。
温泉は400円。ナトリウムの冷泉を沸かしたもの。午前中に行ったので、空いていて気分がいい。しかし、外にあるのはジャグジーで音がうるさくて、せっかくの谷川のせせらぎが全く聞こえない。他が容易に真似できないここの最大の強みは谷川（馬立川）であるのに、それを活かさず、台無しにしているのは如何にも補助金に頼った施設らしいことである。（要確認だが）
ともあれ、久しぶりに温泉とサウナに入り、スッキリ。ここの名物らしい、茶そばとおぼろ豆腐をレストランで食べ、昼過ぎに戻った。
2014年08月16日
深夜特急５＜トルコ・ギリシャ・地中海＞
この巻に出てくる土地には行ったことがない。知り合いはいる。LBSの後輩はトルコで携帯電話会社を経営しているし、イギリスへ留学した当初、語学研修のためにひと夏を過ごしたSwanseaでは当初クレタ島出身のギリシャ人と同居した。
「チャ」「チャイ」
アジアではどこでも茶をこう発音するが、ヨーロッパでは「ティー」「テ」。従って、「C」の茶の国と「T」の茶の国との違い、と本書に出てくるイスタンブールのハナモチ氏は言う。ドロドロしたトルココーヒーも有名だが、トルコ人はチャイハネと呼ばれる喫茶店でチャイを飲むのが大好きらしい。
日本では、お茶一辺倒だったのが、戦後コーヒーが一般家庭にまで普及して、一時は年間支出額がお茶を上回ったらしい。スタバなどの繁盛ぶりを見ていると、その後も差が開いているのかと思ったが、ペット飲料では茶系が人気で、お茶は意外と健闘しているようだ。
59:チャイハネの前の通りは、突如、記念撮影の会場になってしまった。しかし、トラブゾンの人々のカメラ好き、記念写真好きには桁外れのところがあり、撮っても撮ってもきりがない。それもそのはずで、ひとりの男を撮ると、ちょっと待ってくれと言い残してどこかの路地の奥に走っていき、しばらくして戻ってくるとその腕には赤ん坊が抱かれていたりする。
94:旅は人生に似ている。以前私がそんな言葉を眼にしたら、書いた人物を軽蔑しただろう。少なくとも、これまでの私だったら、旅を人生になぞらえるような物言いには滑稽さしか感じなかったはずだ。しかし、いま、私もまた、旅は人生に似ているという気がしはじめている。たぶん、本当に旅は人生に似ているのだ。どちらも何かを失うことなしに前に進むことはできない・・・・・。
167:いずれにしても、私はトルコからギリシャに入ることで、アジアからヨーロッパへ、イスラム教圏からキリスト教圏へ、茶の国からコーヒーの国へ、「C」の茶の国から「T」の茶の国へと、違う種類の国へ来てしまっていたのだ。
198:旅がもし本当に人生に似ているものなら、旅には旅の生涯というものがあるのかもしれない。人の一生に幼年期があり、少年期があり、青年期があり、壮年期があり、老年期があるように、長い旅にもそれに似た移り変わりがあるのかもしれない。私の旅はたぶん青年期を終えつつあるのだ。何を経験しても新鮮で、どんな些細なことでも心を震わせていた時期はすでに終わっていたのだ。そのかわりに、たどってきた土地の記憶だけが鮮明になってくる。年を取ってくるとしきりに昔のことが思い出されるという。私もまたギリシャを旅しながらしきりに過ぎてきた土地のことが思い出されてならなかった。ことあるごとに甦ってくる。それはまた、どのような経験をしても、これは以前にどこかで経験したことがあると感じてしまうということでもあった。
2014年08月15日
深夜特急４<シルクロード>
シルクロードはまだ行ってない場所。沢木が絶賛するアフガニスタンの風景はどうなっているのだろうか？バーミヤンの仏像はタリバンによって破壊されてしまった。せめて、「山河」はそのままであってほしいが。
55:アフガニスタンの風景は心に染み入るようだった。とりわけ、ジャララバードからカブールまでの景観は、「絹の道」の中でも有数のものなのではないかと思えるほど美しいものだった。
鋭く切り立った崖が、果てしない壁のように続く奇勝。やがてそこを脱すると済んだ水が流れる谷間の川に遭遇する。さらに上流に向かって進んでいくと、透明な水をたたえた湖がある。東南アジアからインドにかけての泥のような水しか見られなかった目には、動悸が激しくなるほどの新鮮さがあった。
81:カブールに届いていた家族からの手紙によれば、東京を出てくる時、浜松町にある中華料理店で二人だけの壮行会を開いてくれた建築家の磯崎新と彫刻家の宮脇愛子の夫婦が、シルクロードの遺跡を見るたびの途中でテヘランに立ち寄ることになったという。
164:「アリー！」
彼らの声には誇らしさが溢れていた。その時はじめて、イスラム圏の子供たちにとって、アリがどれほど大きな意味を持つ存在になっているかが理解できた。そして、私もまた、アリの奇跡的な復活を目の当たりにして、彼らと一緒にアリーと叫びたいような気持になった。
176:若いうちは若者らしく、年をったら年寄らしくせよ。
この平凡で、力強い言葉の中に、あるいは「老い」の哲学の真理があるのかもしれなかった。少なくとも、「王のモスク」の老人たちは、その言葉のように老いていた。年を取ったら年寄らしく、年を取ったら年寄らしく・・・・・。
「カーブース・ナーメ」にはこうも書いてある。
老いたら一つ場所に落ち着くよう心掛けよ。老いて旅するは賢明ではない。特に資力のない者にはそうである。老齢は敵であり、貧困もまた敵である。そこで二人の敵と旅するは賢くなかろう。
2014年08月14日
落とすべきか、救うべきか
今週前半は前期科目の採点。私の授業では、事業計画のプレゼンを最後にしてもらい、さらにその後、事業計画書を提出してもらい試験に代えている。
今年はどうしたわけか履修者が少なく、そのせいか、授業の活気がいま一つだった。学生から質問が出ないのである。授業中にグループディスカッションをさせ、発表してもらうので、やはり5人ｘ3チーム位あった方が盛り上がる。
困るのは、私の絶対基準で「落第」レベルの学生をどうするかだ。「可」を付けて通すのが楽なのは言うまでもない。「不可」にすれば、説明責任が生じる。努力はしない癖に、その結果をすんなり受け入れない学生もいるので、相手が悪いと面倒なことになる。
しかし、学生のことを思えば、今のうちに「世の中甘くないよ」と知らせておいた方がいい。私が今も懐かしく思い出すのは、「さぼった」と自覚している授業であっさりと落としてくれた先生で、大教室でなんだかわからないうちに単位を貰った先生ではない。
「頑張れば報われるし、サボっていればそれなりの報いがある」というルールが決まっているほうが世の中安心でやりやすい。実際は、「頑張れば」ではなくて、「結果を出せば」で頑張るか頑張らないかは関係ないわけだけど。
もう一つ採点をやりにくくしているのは、大学としての統一基準が無いこと。相対評価でやる先生も居れば、絶対評価で採点する先生もいる。さらに、その評価基準がマチマチ。「優」が大半といういい加減な先生も居れば、「良」を中心にキチンと正規分布させる先生もいる。
私はもちろん後者なのだが、そのためには事業計画を全て読み込み、矛盾点・不足点の指摘をし、授業中の「貢献点」についても全て記録しておかなければならない。それで、それが評価されるかというと、そもそも教員のチェック項目にも入ってないのだ。教育機関としての「基礎」を疎かにして大丈夫かと思ってしまう。
今年はどうしたわけか履修者が少なく、そのせいか、授業の活気がいま一つだった。学生から質問が出ないのである。授業中にグループディスカッションをさせ、発表してもらうので、やはり5人ｘ3チーム位あった方が盛り上がる。
困るのは、私の絶対基準で「落第」レベルの学生をどうするかだ。「可」を付けて通すのが楽なのは言うまでもない。「不可」にすれば、説明責任が生じる。努力はしない癖に、その結果をすんなり受け入れない学生もいるので、相手が悪いと面倒なことになる。
しかし、学生のことを思えば、今のうちに「世の中甘くないよ」と知らせておいた方がいい。私が今も懐かしく思い出すのは、「さぼった」と自覚している授業であっさりと落としてくれた先生で、大教室でなんだかわからないうちに単位を貰った先生ではない。
「頑張れば報われるし、サボっていればそれなりの報いがある」というルールが決まっているほうが世の中安心でやりやすい。実際は、「頑張れば」ではなくて、「結果を出せば」で頑張るか頑張らないかは関係ないわけだけど。
もう一つ採点をやりにくくしているのは、大学としての統一基準が無いこと。相対評価でやる先生も居れば、絶対評価で採点する先生もいる。さらに、その評価基準がマチマチ。「優」が大半といういい加減な先生も居れば、「良」を中心にキチンと正規分布させる先生もいる。
私はもちろん後者なのだが、そのためには事業計画を全て読み込み、矛盾点・不足点の指摘をし、授業中の「貢献点」についても全て記録しておかなければならない。それで、それが評価されるかというと、そもそも教員のチェック項目にも入ってないのだ。教育機関としての「基礎」を疎かにして大丈夫かと思ってしまう。
2014年08月13日
深夜特急３<インド・ネパール>
インドには計5回行っていて、本に出てくるカルカッタでも1週間過ごした。と言っても、本書と違って、LBSの同級生宅でずっといたので、快適そのもの。5階建ての自宅のワンフロアをあてがわれ、食事は彼の家族とともにダイニングで摂るのだが、給仕が付く。それ以外にも、門番や運転手など合計5人くらいの使用人がいた。
高い塀で囲まれた彼の家を一歩外に出ると、本にある通りの、喧騒の中。香港の喧騒と違うのは、「動」と「静」が近接していること。車やバイクがけたたましくホーンを鳴らして通り過ぎていく道端には、「ひょっとして死んでいるのでは」と思うような動かない人が横たわり、かと思うと、その動かないと思っていた人がスッと手を差し出してくる。
インドは先住民であるドラビダ族を、アーリア系民族が支配して作った国だ。そして、その支配手段として自分たちに都合のいいように、宗教的階級制度を作った。宗教と絡めたところが、インド支配民族の賢いところだ。政治体制だけなら打破できても、宗教を変えることは容易ではない。
28:私が眉をひそめるようにしていったのを、女に対する不満と取ったらしく、親父は奥から別の女を二人連れてきた。彼女らは前の女たちよりさらに幼そうだった。私は東南アジアの売春宿では決して感じなかった陰惨さを感じた。ここに比べれば、ペナンの宿など天国のようなものだ。
33:下半身の動かない女が、手でいざるようにゴミの小山に近づき、その中から残飯をあさっていると、どこからかふわりとカラスが舞い降り、同じように嘴を突っ込みはじめた。女は追い払う気力もないらしく、黙々と野菜の切れ端のようなものを選り分けている。人とカラスが一緒にゴミをあさる。これもまたインドのようだった。
43:皮膚の色が濃くなれば濃くなるほど、身なりがみすぼらしいものになっていくのだ。それは残酷なくらいはっきりしていた。皮膚の色と服装のよしあしとの間にはかなり深い相関関係があるようだった。
64:カルカッタにはすべてがあった。悲惨なものもあれば、滑稽なものもあり、崇高なものもあれば、卑小なものもあった。だが、それらのすべてが私にはなつかしく、あえて言えば、心地よいものだった。
115:「ありがとう、すみません、どうぞ、の三つよ」
この三つの言葉は本来は存在するのだが、使われないためほとんど死語になっているという。使われない理由はやはりカーストにあるらしい。異なるカースト間では、たとえば下位のカーストに属するものに対してすみませんなどとは言えない、ということがあるらしいのだ。そう言われてみれば、確かにインドでその種の言葉を耳にしたことはなかった。
135:ヒッピーたちが放っている饐えた臭いとは、長く旅をしていることからくる無責任さから生じます。彼はただ通過するだけの人です。今日この国にいても明日はもう隣の国に入ってしまうのです。どこ国にも、人々にも、まったく責任を負わないで日を送ることが出来てしまいます。その無責任さの裏側には深い虚無の穴が空いているのです。深い虚無、それは場合によっては自分自身の命をすら無関心にさせてしまうほどの虚無です。
157:ベナレスでは、聖なるものと俗なるものとが画然と分かれてはいなかった。それらは互いに背中合わせに貼りついていたり、ひとつのものの中に同居していたりしていた。喧騒の隣に静寂があり、悲劇の向こうで喜劇が演じられていた。ベナレスは、命ある者の、生と死のすべてが無秩序に演じられている劇場のような町だった。私はその観客として、日々、街のあちこちで遭遇するさまざまなドラマを飽かず眺めつづけた。
164:この心優しいニーランニャムにも、カーストというものは絶対的な支配力があるらしく、小さなほうきを持って部屋の掃除をしにくる、明らかに下のカーストに属すると思われる同じ年恰好の少年に対しては、軽蔑の色を隠そうとしなかった。その少年が私の部屋で少しでも長居しているのを見かけると、蹴っとばさんばかりにして追い出してしまう。そのたびに、ニーランニャムおまえもか、と暗い気持ちになった。
2014年08月12日
日本語学校
海外の友人から連絡があり、「日本語の勉強に3か月間秋に行きたい」という。彼は多国籍企業で働いているが、日本企業の担当として会社から語学研修費と3か月間の時間が与えられるらしい。
香川で語学学校と言えば、穴吹ビジネスカレッジ。私の知っている留学生も大抵、最初ここで日本語を勉強し、その後受験して日本の大学に入っている。
驚いたのは、現在、順番待ちで希望の日程で入れるかどうかわからないこと。円安とLCC就航で訪日外国人旅行者が増えているが、留学生も増えているのかもしれない。何しろ、どこの大学も、「（出すのも、受け入れも含め）留学生を増やす」 と言っている。
「それなら」と大学の日本語コースに入れないか聞いてみたが、「留学生でないとダメ」とのこと。「規則だから」だそうだ。
本来、考えるべきは、大学の存在目的に照らし合わせ、
・その学生を入れることが日本語コースのプログラム効果を上げるのにプラスかマイナスか
・そうすることでコスト増が生じるのか
・そのコストはどう賄われるのか
で判断すべきである。
彼のような海外の名門大学を出て、しっかりした専門職として働いている社会人がクラスに入ることは、クラス全体に好影響を及ぼすのは間違いない。そうでなければ、ほとんどが目的意識も希薄なまま、「タダだから」と交換留学でやってきた学部生が大半だ。彼が入ることで覚醒する学生も出るだろう。勿論、一人学生が増えても教える側のコストは変わらない。おまけに、交換留学生ではないので、堂々と学費を取れる。
私からすれば、「断る理由が分からない」のだが、どうも、この組織は、組織目的がないがしろにされ、規則と前例が優先される。 「税金をどう有効に使うのか」という観点で考えてほしい。
2014年08月11日
深夜特急２＜マレー半島・シンガポール＞
2巻目の主要滞在地は、バンコク、ソンクラー、ペナン、クアラルンプール、マラッカ、シンガポール。この中で私が行ったことがあるのはバンコクとKL、そしてマラッカだけ。
バンコクに最初に行ったのは5年ほど前で、バンコクで仕事を済ませた後、友人のいるパタヤへ向かった。さらに、そこから彼の仕事場であるカンボジアとの国境近くにあるエビの養殖場へ。途中の海岸にある食堂で食べたエビや魚は美味しかった。あの時は、あらかじめ、「辛くしないでくれ」と頼んだので大丈夫だったが、普通だったら食べられなかっただろう。それでも、普通に辛かったので。（笑）
37:チュラロンコーン大学の学生食堂は設備も整っており、明るく、安く、申し分がなかった。しかし、にもかかわらず、どこか不潔な感じがするのだ。それはたぶん学生たちが驚くほど食べ残しをするからに違いなかった。私はこれほど無造作に食べ物を残す学生を他に知らなかった。しかも、セルフ・サービスということになっているのに、食べ終わった食器を誰ひとり片づけようとしない。
152:ところが、最初はそれほどではないと思っていた辛さが、中盤を過ぎるころから激しく効いていた。体中から汗が吹き出してくる。食べるスピードが鈍ってきた私を、周りの人たちがまた心配そうに見はじめた。
どうしても食べると主張した手前もあり、やはり外国人にマレー料理は食べられないのかと失望させるのも悪いような気がして、私は必死に口を動かしつづけた。途中で休むと、もう一口も入らなくなりそうだった。
2014年08月10日
レインメーカー
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台風で学生と行く予定だった直島への調査旅行が中止になった。そこで、今週BSで録っておいた映画「レインメーカー」を見た。大昔見た覚えがある。
ジョン・グリシャムの『原告側弁護人』を原作に、巨匠フランシス・フォード・コッポラが映画化した法廷ドラマ。正義感と野心に揺れる若き弁護士を通し、今日的テーマを描いてゆく。マット・デイモン、クレア・デーンズ共演。理想に燃える若き法学部卒業生ルーディ。しかし現実は彼が抱いていた理想とはかけ離れていた。大手保険会社から支払いを拒否された貧しい家族や、社会的に弱い立場の依頼人が溢れる中、やがて彼は世の正義に疑問を持ち始める。
Matt Damonは初々しいし、Claire Danesがすごくカワイイ。Danny DeVitoは可笑しく、Mickey Rourkeはいい加減だかいざという時役に立ったりと、登場人物のキャラが立っていて、流石コッポラと思わせる。
2014年08月09日
国際競争力ランキング
今年もIMD（スイスのビジネススクール）の国際競争力ランキングが発表された。他にも、よく引用される国際競争力ランキングは世界経済フォーラム（WEF）や国際金融公社（世界銀行グループ）によるものがあり、私も良く講演などで引用する。
よく見ると、ランキング上位には小国が多いことに気づく。人口１千万人以下の国が、スイス、シンガポール、香港、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドと過半を占める。逆に1億人以上の人口を擁する国で10位以内に入っているのは米国だけである。その米国も連邦制であるので、国防と外交以外のことはほぼ平均人口数百万人の50州単位で決めている。
結局、国の行く末について、「政治的合意形成が容易な国は競争力がある」というのが私の持論。小さいから普段から危機感があるし、取るべき戦略について小国は意見が一致しやすい。企業経営でもそうだが、決断して前へ進めない組織に未来はない。間違えた時は方向転換も辞さない。一番まずいのは、環境が変化する中で、あーでもないこーでもないと動きが取れなくなることだ。
もう一つ、1年ほど前に気づいたのが、これらの国には「徴兵制度」を取っているところが多いこと。先ほどあげた国の中で徴兵制度を持たないのは、2010年になって廃止したスウェーデンと共産国中国の中で「特別行政地区」として徴兵が免除されている香港だけだ。「平和国家」としてのイメージが強い北欧諸国（除くスウェーデン）やスイスは徴兵制度を敷いており、よく日本で言われるように、「徴兵制度＝軍国主義」ではないことがわかる。
こんなことを書く気になったのも、今朝の朝日新聞で「（インタビュー）夏のきわみに思う 映画作家・大林宣彦さん」を読んだから。映画監督として著名であり、私も好きな監督でもあるのだが、そのインタビュー中で、「北朝鮮、ロシアには徴兵制があるし、アメリカや中国には強大な軍隊がある。武器があるから平和が保てるという理屈上は憲法9条は非常識なんでしょう」とあった。徴兵制で、好戦的で怖いイメージのある北朝鮮とロシアだけを上げるのは公平を欠く。ここに、「スイス、フィンランドには徴兵制があるし」とあったら、どうだろう？
2014年08月08日
深夜特急１＜香港・マカオ＞
実はまだ読んでなかった。（笑）
言い訳めいたことを言うと、この本が出版されたのは私が社会に出た1986年。それも、5月なので、4月の新入社員研修を終え、配属された投資部で、「さあ、やってこい」と都心に放り出されていたころだ。それから2年間は仕事を覚えるのに手一杯で、仕事関係の本しか読まなかった。そして、3年目には、留学することを決め、なるべく早く仕事を切り上げては、TOEFL/GMAT/小論文の準備をしていた。私の読書の空白時期だ。
しかし、入社一年目の夏休みは香港に行った。北京に駐在していた高校＆大学の先輩を訪ねていくことを決め、香港から鉄道で入り、広東経由で行くことにしたのだ。そうしたところ、偶然、同じ部の先輩が香港に行くという。「それなら」と、香港での初日は同じホテルに泊まることにした。その先輩がこの本を読んでいたのかどうか知らないが、泊まったのは、本に出てくるような、九龍のペンシルビルにある安宿。何十階もある高層ビルなのに、隣のビルに手が届きそうな距離で、窓から様々な生活が見える。下を見れば、目がくらむような高さにも関わらず、窓は普通に開く。そして、ビルとビルの間はゴミだらけ。
それから何度か、香港に行く機会があったが、行くたびにこの街は発展していった。今では、一人当たりGDPは日本と並ぶ4万ドル。購買力平価では$45000で、日本をも凌駕する。
25:私は「真剣に酔狂なことをする」という甚だしい矛盾を犯したかったのかもしれない
111:英語で訊ね、答えが返ってくる。すると、その中に、英語に独特の言い回しが含まれていることに気づく。記憶し、今度はそれを人に対してすぐに使ってみる。通じれば、それで確実に言葉を一つ覚えたことになる。そうしているうちに、英語に対して萎縮していた心が伸びやかに広がってくる。少なくとも、私はそうだった。
2014年08月07日
ブラジル最大の農機具メーカーJACTO
もう一社、日系ブラジル人起業家として、学生から発表があったのがジャクト農機。こちらも全く知らなかったが、ブラジル最大の農機具メーカーだという。
創業者の西村俊治氏は京都府宇治市の出身。京都から移民した人は少ないらしい。日系人らしく教育熱心で、経営者を引退した後は農業技術専門学校を設立した。この学校は、現在ではサンパウロ技術大学の一キャンパスとなっている。同校の指導は厳しいことで知られ、晩年の西村氏は毎日学生と過ごしていたという。
日本力行会を通じ１９３２年に渡伯、３８年にポンペイアに移り西村鉄工所を開業した。農薬噴霧器など農機具製造に従事した後、４９年にジャクト農機株式会社に改組。７９年に世界初となる大型コーヒー自動採集機を開発し、伯国農業の発展に貢献した。同社は８０年代の経済危機などの困難を超え、１０６カ国へ製品を輸出する世界有数の農機メーカーとしての地位を確立している。
７９年に社長を退任後は教育にも力を注ぎ、８２年に西村俊治技術財団による全寮制３年間のポンペイア農業技術専門学校を設立。同校が今年からサンパウロ技術大学（FATEC）ポンペイアキャンパスに変わるまで、計２５期、８４３人の農業後継者を社会に送り出した。（ニッケイ新聞2010年4月）
2014年08月06日
Blue Tree Hotels
今回の日系人MBA研修の「起業家論」のなかで、日本人起業家について発表してもらった。「日本人なら誰でもいい」と言っておいたので、誰を選んでくるのか楽しみだったが、意外だったのは、トヨタもホンダもソニーもなかったこと。「日系人でもいいのか」というので、それは面白いと思い、楽しみにしていた。２社出てきたブラジルの日系人企業の一つがBlue Tree Hotelsであった。
創業者で社長の青木智栄子さんは、Forbesのブラジルを代表する女性経営者にも選ばれている。
写真は、ブラジルに帰ったばかりの日系人研修生の山本さんが、日系人チャリティ会場で青木社長と先週撮ったもの。来年はブラジルに行こうと思う。
2014年08月05日
県立美術館をどうするのか？
昨日行った美術ギャラリーの社長が面白いことを言った。
私が、
「殆どの県立美術館が薄っぺらで面白くない。幅広く持っているが、特定のテーマが揃っていない。あれだけの予算を使っていながら何なのか？」
と言ったら、
「解決策はある。日本の全ての地方美術館のコレクションを集めて、テーマごとに５館くらいに再配分したらいい。そうすれば、海外からも人を呼べる美術館が出来る。」
なるほど、これは面白い。日本全体のコレクションは世界有数だ。ところが、各県ごとにある県立美術館が分散して所有しているため、一つや二つしかない目玉の所有作品を見るために、わざわざ遠方から足を運ぶ人はいない。これを、４５都道府県から、５つくらいの大きなテーマの美術館と、さらに小さなテーマの地方美術館に分ければ、特色が出せる。
そうして、これまで収集にかけたコストが変わるわけでも、今後の維持費が変わるわけでもないのだから、新たな投資の要らない美術館活性策だ。
ちなみに、高松市美術館は市立ということもあり地方美術館としては特色ある収集をしているが、それでも、常設展での入場者数は一日平均43人。全員が大人料金だとしても、＠200円で、8600円。一日の電気代にも満たないのではないか。さらに、半数は65歳以上で無料になっている可能性大。
地方で人口が減り、税収が減っていく中で、「人が入らない＝地元から支持されてない」美術館を今後どうするのか、議論の無い方がおかしい。
2014年08月04日
DATSUNブルーバード410
引越先が余りに狭いので、丸で荷物が入らず、仕方なしに近所に倉庫を借りました。たまたま、至近距離にシャッター付の車庫が空いていて、安かったので、そこを借りたのです。
何故安かったかというと、2台置ける車庫なのですが、昔の5ナンバーサイズで、東京の人はほとんど3ナンバーですから入らないんですね。それで、需給関係で安かった。
半分はオーナーさんが使っていて、そこにあったのがDATSUN Bluebird 410(1963)です
うーん、同い年というのはなかなかヨロシイ。聞いてみれば、その前の初めてのマイカーがスバル360。これは、父が買った最初のマイカーと同じ。日本のモータリゼーションの歴史そのままですね。最初は同じでしたが、父が次に買ったのはコロナ。ここで、トヨタと日産に道が分かれたわけです。うちは田舎なので、その後も、Mark�兇覆匹隼�代とともに変わっていくのですが、こちらのお家では、交通至便な都心のため、一時期の車の物珍しさが終わると、ほとんど乗らなくなったようです。それで、50年前の車がそのままガレージにある
流石、車庫代を気にしないオーナーです。もう何十年も乗ってなくて、今では動かないようですが、これをリストアしたら面白そう。その価値があるのかどうか分かりませんが。
2014年08月03日
Advantage Matrix
これが今回の投稿のカギになるチャート。BCGのAdvantage Matrixに基づく、麺チェーン店業界の分析である。このマトリックスは、業界の競争要因の数と優位性構築の可能性の二つの変数により4つの事業タイプに分けるものである。
ラーメン業界企業は売上規模が226-372億円と比較的近いが、その収益力（ROA）はまちまちである。古い業界であるにもかかわらず、ずば抜けた規模の企業は無く、規模を大きくすると儲からない「分散型事業」であるといえる。
うどん業界では、トリドール（丸亀製麺）が他を圧倒している。業界第2位のはなまるが吉野家傘下でROAの計算が出来ないため、代わりにやはり麺が主力のサガミチェーンとグルメ杵屋を入れた。うどん大手チェーン店では規模が大きいほど儲かる「規模型事業」になっていると考えられる。
しかし、うどんの中でも、香川県に限ると、県内に6店舗以上のチェーン店は存在しない。従って、「うどん県」では、規模の経済が成り立たない「分散型事業」であると言える。
勿論、これは大規模なチェーン店市場での話で、個人店まで含めた業界全体でみれば、両業界とも、やり方によっては規模に関わらず儲かる「特化型事業」と推定される。
2014年08月02日
暑中お見舞い申し上げます
怒涛の7月はついに4週間連続勤務でヘロヘロです。しかし、10人の日系中南米人との出会いと、彼らの研修成功という成果がありました。昨日の朝提出した学会発表原稿は、採用されるかどうかの結果が出るまでもう一月ほど掛かります。
7月の最終日は、2年前に転職した香川大学での最後の授業の日でもありました。後期は担当授業はなく、前期から続いているゼミとインターンシップだけなので、授業はこれで終わりだったのです。
私の授業は、地元企業のケーススタディを中心にやっています。2コマ連続で、一コマ目はケースのグループディスカッションとグループごとでの発表。二コマ目に、ケースの当事者に出てきてもらい、本人と学生がやり取りします。さらには、希望学生は授業後に残り、私の研究室でゲストと懇親会があります。昨年からは、Facebookで授業のグループをつくり、FB上での議論をさらに深めています。
こうして、�ー�分でケースを読んで考える、�▲哀襦璽廚妊妊�スカッションして互いに刺激し合い、よりよい結論を導く、��プレゼンテーションでより効果的な発表の仕方と、他のグループとの意見交換でさらに考えを深める、�ぅ院璽垢療�事者とのやり取りで「臨場感」を味わうことで、理解がさらに深まる、�ズ�親会のインフォーマルな場で、ウラ話も聞くことで、ケースの教訓が「知恵」となる、��FB上での後日のやり取りで記憶に深く刻み込まれる、という仕組みにしています。
全ては、将来、実践の場でケースの教訓を現実の状況に合わせて、応用して使えるようにするためです。人が実経験から学ぶことには限界があり、それを補うのが、本を読んだり学校で学ぶことですが、単なる「知識」レベルでは、経営という実践の場では役に立ちません。現実の問題は教科書通りに出てこないからです。そのため、ケーススタディで疑似体験をし、実践で使える「智慧」といえるレベルまで徹底的に考えさせるには、1コマの授業でケースをなぞるだけでは無理です。
多大な税金を使って運営しているにも関わらず、多くの大学がそれだけの教育効果を上げてないのは残念なことです。
動画：同じく今年で最後だった「高瀬空射矢まつりFinal」で踊る「みとよん」
2014年08月01日
幸楽苑
幸楽苑は2003年3月にラーメン業界で初めて東証1部に上場した最大手である。しかし、その営業利益率は2.4%と麺チェーン店上場4社の中で最低になっているのは一昨日書いた通り。同社の業績推移を表したのが上図である。
幸楽苑の利益率は2003年から下落している。1店舗当たりの平均売上高は2002年の113百万円をピークに下がり始め、現在では74百万円であり、経営効率が下がっていると考えられる。
2003年から店舗数を急速に増やした幸楽苑は業績が悪化、起死回生を狙い2006年5月に主力の中華そば価格を390円から290円に値下げした。集客力アップと、セントラルキッチンの稼働率向上などで吸収できるとみていたが、原価率の高いラーメンに注文が集中しさらに業績が悪化、当時の社長は半年後に退任した。
小規模経営の店がひしめく飲食業界で、余程の規模の経済が実現できなければ、安易に価格競争に走ってはいけない実証がまた一つ出来たことになる。飲食店業界は元来が「分散型事業」なのである。
