2013年04月
2013年04月30日
羊をめぐる冒険
羊をめぐる冒険 [単行本]
連休なので、珍しく小説を読んだ。経営って半分以上は組織問題なので、経営者にとって、人の感情を理解するのに小説を読むことも大事だと思っている。（というか、人に興味のない人が経営者を勤めるのは難しい)
巷では、『多崎つくる』が話題だが、何のきっかけか忘れたけど、評価の確立している昔の本から。
物語展開がウマいし、思わずひざを打つような比喩が「村上ワールド」か。印象に残るんだよね。
・747はいつも僕に昔近所に住んでいた太った醜いおばさんを思い出させる。はりのない巨大な乳房とむくんだ足、かさかさした首筋。空港は彼女たちの集合場所みたいに見えた。
物語の時代背景は村上が青年期だった1970-1980年代が多いのだけど、ファンはどういった層なんだろう?
2013年04月29日
ユニクロ衝撃の「世界同一賃金」
ユニクロの「世界同一賃金」が話題になっているが、これは先日紹介した『１０年後に食える仕事、食えない仕事』の文脈で考えると分かりやすい。（チャート出所：NAVER)
ユニクロは日本企業としては珍しく？本気で世界展開を目指している。本気で世界展開しようとしたら、「日本人社員と言うだけで厚遇される」という大半の日本企業の実情は許されなくなる。幹部社員の給与は当然、世界同一賃金になるだろう。世界中のグローバル企業が何十年も前から行ってきたことだ。そうでなければ、世界から優秀な人材を集められない。
こちらの藤原和博さんの記事でも、「自分は絶対、人の100倍努力してグローバルで成功し、年収を今の10倍から100倍に持って行く」と言う人はあらゆる分野で増えているという。「え、一般的には、日本人は内向化しているというではないか」と思うが、ここでも二極化が進んでいると言うことなのだろう。
ユニクロの「完全世界同一賃金」の対象となる執行役員･上級部長の平均報酬は2000万円。LBS卒業生の平均年収と図らずしも同じ。これでやっと、世界トップクラスのMBA卒業生の就職対象先に、ネスレやP&Gと並んでユニクロが入ることになる。
2013年04月28日
TPP大歓迎
井上社長は1996年にイタリア、1997年にスペインのオリーブの大生産地の視察に出かけている。
その時、地平線の彼方まで延々と広がるオリーブ畑を見て、「これは1000年経っても敵わない」と暗澹たる気持ちになったそうだ。 しかし、帰りの飛行機の中で、オリーブを大切に育て、収穫時期を気遣い、実を傷つけないよう手摘みする父親の姿を思い出す。
「こんなことはイタリア人やスペイン人には絶対出来ない」
「ならば、日本人にしか出来ないやり方で最高の製品を作ろう」
生産規模が全く違うため、イタリアやスペインではオリーブの収穫は、木を揺らしたり、熟して自然落下するのを待って、下でシートで受ける。当然、実は痛みやすい。実が痛むと酸化が進む。オリーブオイルは酸化度によってバージンや、エキストラバージンなどに分類される。
今では、井上誠耕園のやり方をスペインの提携農家に指導し、輸入して井上誠耕園ブランドで販売している。また、小豆島産のオリーブオイルを本場ヨーロッパに化粧品として輸出も始めている。
そんな経験から、井上社長は、「TPP大歓迎」なのだそうだ。私の知っている、真面目に工夫してやっている専業農家はどこもTPP賛成だ。数だけ多い兼業農家の戯言で国の判断を誤ってはいけない。
2013年04月27日
井上誠耕園
今週の授業では井上誠耕園のケースを取り上げた。1940年の創業。初代はご近所と協力して集団農場でみかんを作った。当時のみかんは貴重品である。
戦後、香川県農業試験場の勧めでオリーブを作り始める。ところが1959年にオリーブの輸入が自由化され、価格は大暴落。付加価値をつけるために二代目が中心になって開発したのが、オリーブを浅漬けした「新漬け」。オリーブを食べなれてない日本人にも合う新商品だった。
以降、1960年代1970年代と国内観光旅行が盛んになり、小豆島への観光客も増える。井上誠耕園もオリーブ加工品を土産物屋に売って伸びてきた。
1980年代、豊かになった日本人は海外旅行に目覚める。国内の団体旅行は減り、観光地はさびれ始める。小豆島も例外ではなかった。売上が減った土産物屋からは値下げを求められ、それを断ると取引を切られてしまう。当時の売上の2/3である。
この危機感が、丁度神戸での勤めを辞め、島に帰ってきた三代目に戦略の転換を促す。三代目は、「観光地の土産物」ではなく「洗練された化粧品」として、消費者に直接通信販売することを1994年に始める。
試行錯誤で自社で通信販売すること10年。2004年には「単品リピート通販」のコンサルタントの指導を得て、通信販売体制の再構築。以来10年で売上は100倍近くになっている
私が始めて農園を訪れ、井上社長に会ったのは3年前。その時からでも売上は倍増している。その時も本blogに書いたが、こんな会社が10社、20社と香川にあれば、香川の農業も安泰だ。
井上誠耕園は「小豆島」を前面に出している。瀬戸内海＆小豆島は大変よいイメージをもたれるからだ。考えてみれば、四国も｢島」で、概ね良いイメージを持たれている。四国全体でイメージ統一し、継続的なマーケティングをやって、こんな会社が100社出来ればというのが私の夢。
2013年04月26日
日本三大水城「高松城」跡＝玉藻公園
日曜日、女木島からフェリーで高松に戻った足で、フェリー乗り場近くの玉藻公園へ。ここは、日本三大水城といわれた高松城跡。（後は、今治城と中津城）
明治になって鉄道が導入され、そして、戦後になって安い石油が入り道路交通が輸送の主役になるまで、世界の交通の主役は水運だった。特に、気候が温暖で海の静かな瀬戸内海は、交通の要衝。ここを制するかどうかが統治の要。
そんなわけで、高松城は海を向いている。そこを統治したのは徳川家康の孫で、光圀（水戸黄門）の兄である頼重。(初代) 以来11代228年間に渡り治世。そのせいだろう、沖にある瀬戸内海の島々の殆どが高松藩の領地となり(一部は天領)、それが今でも香川県として続いている。例えば、アートで有名な直島も香川県だが、水道は対岸の玉野市から供給を受け、電力も中国電力だ。
堀の水は海水で、中ではチヌが泳いでいる。最近では養殖した真鯛を放ち、「鯛願城就」としてエサやりができる。
2013年04月25日
鷲が峰展望台
女木島の鬼の洞窟があるのは鷲が峰。洞窟上の展望台からは瀬戸内海のパノラマが楽しめる。
写真中央を航行するのは、高松から乗ってきたフェリー「めおん」号。女木島を経て、男木島に向かっています。
高松港1号浮棧橋からフェリーでたったの20分！ 1日6便（夏季は12便)
2013年04月24日
オーテ
女木島では、冬になると北西方向の季節風が山頂にあたり、オトシと呼ばれる強風が山頂から東岸に吹き込む。これを防ぐために積まれた石垣が「オーテ」。オーテには、女木島の讃岐岩質玄武岩（写真で黒く見える）や、直島・庵治から運んできた花崗岩類（白く見える）が使われている。
2013年04月23日
鬼が島
高松沖には、本当の鬼ガ島がある。週末、工学部長谷川先生のお供で、公開講座の生徒たち（全員私より年上！）と、瀬戸内芸術祭で賑わう女木島へ地質研究へ。アート作品を横目に、｢鬼の洞窟」といわれる大洞窟へ向かう。
讃岐平野にはポコポコ山が点在し、瀬戸内海には島が点在する。よく、県外の方から「讃岐平野も瀬戸内海も風景が似てますね｣と言われるが、実際、地質も似ている。
両方とも基盤岩は花崗岩類。頂点部は讃岐岩質玄武岩溶岩。この頂点部は堅くて、水が浸透しにくいため、玄武岩層が厚いと、浸食されにくく、屋島のように溶岩台地になる。層が薄いと浸食されて、女木島や男木島のように山になる。
女木島、男木島、そして、小豆島と豊島には、花崗岩層と玄武岩層の間に、火山礫凝灰岩層があり、「鬼の洞窟」はこの層を掘ったもの。讃岐岩質玄武岩は堅くて掘れないし、砕石しても加工が難しい。花崗岩もそれについで硬いので、砕石や加工の技術が進むまでは利用が難しかった。
洞窟の歴史は古く、紀元前100年ごろと言われている。長年、交通の要所であった瀬戸内海に造られた要塞であったらしい。おそらく、当時は小規模で、江戸時代になって世の中が安定し、砕石が盛んに行われた採石場跡というのが長谷川教授の見立て。
大正3年、香川県鬼無町の郷土史家、橋本仙太郎先生によって発見され10数年後の、昭和6年に鬼ヶ島として公開されました。洞窟が造られたのは、紀元前100年頃と言われ古代中国の要塞型によく似ていると言われています。入口から中ほどまでを防禦の構えに造られ、中程から出口までを脱走の構えに造られております。入口から出口までの長さは延長約400m、面積は約4,000�屬任后�
2013年04月22日
沙弥島
男木島の次は、沙弥島へ。「島」といっても、ここは陸続き。1967年、対岸と島の間に広がる「番の州」の埋め立てで陸続きになった。かっての遠浅の番の州は、今では香川県最大の工業地帯だ。沙弥島の展示は春会期だけ。今週末で終わるので慌てて見に行った。週末はかなり混雑するだろう。
残念ながら、屋内展示の終わる17:30には間に合わず、屋外展示のみを見学。その代わり、キレイな夕日が見えた。
2013年04月21日
ONBA FACTORY
男木島では森田さんの友達の大島さん夫妻のところも訪問。ONBA FACTORYという工房＆Cafeをやっている。オンバとは乳母車のこと。元は乳母車なのだけど、子供の居ない島では、それは主に老婆の「杖」兼「台車」になっている。
同じ田舎でも、うちの方だと、最近は補助金が出るのか、電動カートが増えている。しかし、島の狭くて急な坂ではカートが転倒したら危ないし、これからもオンバは活躍しそう。
坂道や細い路地が多い男木島では､オンバ(乳母車)は必需品｡島の人たちのオンバにカラフルなペイントを施し､島の風景を賑やかに彩る｡今回はオンバを特産品とするためのショースペースを開設。
2013年04月20日
2013年04月19日
GSM公開講座「事業創造論」
MBA正規授業の一部を一般に公開する「公開講座」を昨晩実施。MBA生以外は10人ほどが参加。
MBA生を2チームに分け、外部参加者で1チームを作ってもらい、まずはケースのディスカッション。外部参加者は事前にケース配布が出来ないので大きなハンデだが、仕方ない。学部生6人は2人ずつ3チームに分かれてもらう。
終了後、個別に聞いた感想。
MBA生：
・これまで受けた授業の中でダントツに難しかった
・会社の成長の中で、その時期に応じて求める人物像も変化することも再確認できました。そして、その成長をさせるのは新卒のプロパー社員だということも。ケーススタディはなかなか面白く、三枝匡さんの本を読んでいるような気がしました。
・ケースメソッドの後に当事者から当時の状況を直接お話いただけたことは、グループで討議されたことをその場で振り返ることができるため、貴重な経験
外部参加者：絵空事ではない、現実味ある授業です。さすが！
MBAといっても、うちは大半の授業が講義形式。言われたことを学んでいけばいいのに対して、私の授業はそれまで学んだ知識やツールを総動員してケースに挑んでいく応用編。
現実のビジネスの世界は、常に｢応用」。知識的なことはググってもいいし、専門家に聞いてもいい。なので、授業への積極的参加と、プレゼン、そしてチームで作る事業計画での評価で、試験は課していない。
2013年04月18日
JAL再生
JAL再生―高収益企業への転換 [単行本（ソフトカバー）]
やはり、この人はスゴイな。現役では日本でTOP10に入る経営者だな。「アメーバー経営」勉強しないとな。普通、部門別採算制度を取り入れると、セクショナリズムに陥り、必ずしも全体最適にならないが、「価値観の共有」と組み合わせることで防いでいるのか？
・JAL破綻の原因
経営基盤
�＿礎祐僂龍ν�が出来てない
��現場の経営参画意識が乏しい
�７弍弔噺従譴傍�離感がある
現場の課題
�仝楜匯訶世卜�ってない
��現場のリーダーシップの不在
�２�のリーダーシップの不在
・稲盛氏が最初に手をつけたのは社員の意識改革
経営幹部から課長クラスまでを対象に「リーダー教育｣
経営１２か序＋会計７原則＋６つの精進
・「JALフィロソフィ」＝社員の行動指針→手帳
・採算意識の欠如←組織体制＋権限問題
→採算責任を明確にする組織改正「部門別採算制度」
教育をやりすぎて潰れた会社はない（小山昇） 2013年04月17日
世界の99%を貧困にする経済
世界の99%を貧困にする経済 [単行本]
WW2後の30年間、米国では全ての所得層で所得が上昇し、しかも上層より下層の方が成長が速かった。だが、過去30年間では、上層の所得が増える一方、下層では所得が減少し、格差が拡大している。
米国社会の不平等の背景
・米国の政治制度は、上層の人々に過剰な力を与え、その結果、彼らは政治経済のルールを自分たちに都合よく作り上げ、自らの努力とは関係なく生み出される富を得ている。
・グローバル化が脅しとなり、賃金水準を低く抑えた
・企業統治法が企業の経営陣にかなりの裁量を与えている。この法律のおかげで、米国の重役は他国の重役よりたやすく、労働者と株主を犠牲にして自分たちの取り分をふやすことが出来る。
しかし、米国株の過去30年間のパフォーマンスは先進国で一番よかった。つまり、株主は恩恵を受けている。それでどうして、「株主が犠牲になった」といえるのか？ しかも、米国では株式保有率が高く、労働者の多くは直接的にか間接的にか(年金など)株主である。これをどう説明するのか?2013年04月16日
聞く力
聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書) [新書]
昨年の話題の書。実は、阿川さんの本を読むのは初めて。私にとっては、「TVタックル」で殆ど発言をしないにも関らず、やはり番組進行に欠かせない司会者。
聞くことって、大事だよね。聞いているようで、実は、｢聞きたいこと」しか聞いていない。見たいことしか、見ていない。
11:｢聞き書き甲子園」
全国の高校生が、それぞれ森で働く名人たちのところを一人で訪ね、｢聞き書き」をしてレポートをまとめる
「聞いてくれてありがとう」
41:自分の話を聞いてほしくない人は居ない
52:質問の柱は3本
「質問は一つだけ用意しなさい」（先輩アナウンサー)
103:「確かにXXさんのおっしゃるとおり！・・・おっしゃるとおりではありますが・・・」
間に割って入る方法
147:「人のアドバイスが有効に働いたときはいいのですが、何かがうまくいかなくなったとき、そのアドバイスが間違っていたのだと思い込んでしまう」河合隼雄
195:「パートナーの服の趣味や音楽の趣味が、突然、変わったときは要注意。誰かの影響があるということを疑ったほうがいいですね。」井上ひさし
人に一番影響を与えるのは人2013年04月15日
資本主義を動かした世紀の対決
ケインズかハイエクか: 資本主義を動かした世紀の対決 [単行本]
私の理解は、「ハイエクの方が、不況が起こる原因を研究し、ケインズは不況（というより恐慌）が起こった後、それをどう収束させるかに重点を置いた」というものです。従って、基本は、自由市場の尊重だと思っています。
ハイエク：国家が経済に介入するたびに、富を創出する自由市場の力が妨げられる
古典派・オーストリア学派
WW1後のインフレで苦しむ（ビール一杯10億マルク）
厄介な経済問題に単純な解決策はない
公共支出→インフレ＆独裁制
300:レーガノミクス1982
｢政府支出の削減には全面的に賛成だが、支出を減らす前に税率を下げるのはきわめて危険」
302:ロバート･ソロー
「1982-1990にかけての経済成長は、レーガン政権が支出を増やして税率を下げると言う、ケインズ学はそのものでたくみに実現させたものであり、拡張的な赤字財政の典型的事例である」
ケインズ：大量失業の解決策→総需要の増大
・金利引き下げ
・減税
・公共投資
184:「不況期には、物価上昇とともに産出量を迅速に増大させる確実な方法は、政府による公債支出しかない」ケインズ
189:「政府支出が毎年のように主要な役割を果たすのを皆が期待するのは、社会主義への移行段階」ハイエク
326:「われわれはみな『一般理論』の詳細な分析方法の多くを活用している。すなわち、『一般理論』が導入した、それまでと異なる分析・調査法の少なくとも大半を受け入れているのだ。」フリードマン1989
「ある意味ではわれわれはみなケインジアンであり、別の意味ではもはや誰もケインジアンではない。」フリードマン1966 2013年04月14日
鎖国シンドローム
鎖国シンドローム 「内向き」日本だから生きのびる [単行本]
こういった本が、国際派の「ミスター円」こと榊原氏から出てきたことが面白い。当然、本当に鎖国をすすめているわけではなく、「外に積極的に出なくてもいいじゃないか」ということ。
私も、昔から、｢英語教育は選択にすべき」と言ってきたので、無理やりな国際化には反対。そんなことしたって身につかないし、意識の低い日本人を無理やり海外に送ったって顰蹙を買うだけ。
人間だって、外向的な時期と内向的な時期を繰り返して成長する。日本という国も、「鎖国的時代」に入ったという捉え方も確かに出来る。
しかし、全員が内向きでは国は成り立たないだろう。バランスを取るだけのスーパー外向きも必要。LBSへの応募状況を見ていると、質量ともに年々向上しているので勝手に逆張りでバランスは取れつつあるのかもしれない。
・日本は｢開国的な時代」と「鎖国的な時代」を繰り返すことで成長してきた。その背景には、日本人特有の「鎖国メンタリティ」がある。
・鎖国メンタリティが弱い時代は、日本は諸外国との交易や文化の吸収を求めて海外に出て行った。一方、鎖国メンタリティが強い時代は、｢内向き」な成熟を求め、健康で幸福な生活を営む工夫がなされた。
・平成に入り、日本の成長率は落ち込んだが、｢成熟社会」という視点で見ると、環境、安全、健康のどれをとっても日本は世界のトップクラス（1991-2010 平均成長率0.9%)
・明治維新以来、日本は欧米を見習ってきたが、今度は欧米が成熟社会の先進国である日本を見習う時代。成熟国家としての日本は、世界の辺境から中心になってきている。
鎖国メンタリティは、グローバリゼーションに対するアンチテーゼ 2013年04月13日
下駄の製造工程
週末なので先月行った「はきもの博物館」（福山）再掲。写真は日本はきもの博物館の3号館。下駄生産で最大手だったマルヤマの旧工場を、そのまま展示室にしてあり、当時製造に使っていた機械もそのままです。近代産業史好きにとってはタマリマセン。
一方、原木引き込みに使われた水路が埋め立てられてしまったのが残念。
下駄の製造工程は、広島県はきもの協同組合HPに詳しいです。
2013年04月12日
「限界集落」の生まれた町
新学期が始まり、「四国経済事情」また開始。今期のトップバッターは、高知県大豊町の岩崎町長。
大豊町は四国中央部の山村。昭和30年に四村が合併して誕生。その時の人口は22,386人。その時がピークで以来減り続け、現在は4700人。人口は5/1になり、世帯は1/2になっている。それだけ高齢の一人暮らしが多い。
実はこの大豊町、「限界集落」という言葉が生まれた町。「限界集落」とは65歳以上の人口が住民の半数を超えた集落。町全体でそうなれば、「限界自治体」ということになる。この分類を提唱したのは、高知大学人文学部の大野晃教授（当時）で、正に大豊町を研究しての発表であった。大野教授によれば2000年の段階で「限界自治体」となっていたのは大豊町だけらしい。
そこで9年目3期目に入る岩崎町長。元々は林業で栄え、原木の輸入自由化とともに急速に衰退した町をなんとか立て直したい、せめて衰退を緩やかにしたいと頑張っている。来年には、森林資源を生かした「木質バイオマス発電所」を着工するそうだ。尤も、建築費は補助金に頼るしかない。
そこまでして、地元住民が離れて行っている村や町を立て直さないといけないのか？という声も町長のところに寄せられるらしい。プレゼンでは、「それが自然なんだから、自然に任せればいいではないか」という声も紹介され、それに真摯に答えれおられたのが印象的だった。
2013年04月11日
地域活性化バブル？
昨晩は、MBA2年生の「卒論テーマ発表会」。うちはビジネス･スクールなので、事業計画も卒論として認めているため、学内では｢プロジェクト」と呼んでいるが、大半の学生は論文形式で出している。これには、指導する側の教員の大多数が研究者であり、事業に携わったことがないことも少なからず関係しているだろう。
そのテーマを見ると、大半が、「地域活性化」。当研究科自体の目的が「地域活性化」なので、当然と言えば当然なのだが、こういった「誰も反対できないが、実は大変曖昧な言葉」には気をつけないといけない。皆、都合よく解釈しており、後で大変なことになる。定義をはっきりさせ、測定可能な目標を定めることだ。
思い出すのが、2000年前後のITバブルと、その後も続いた「ベンチャー支援バブル」。ベンチャー企業は増えないのに、「ベンチャーを応援したい」という投資家や、専門家、官僚が増えた。投資家は自己責任なのでいいのだが、官僚は「社会的意義がある」と補助金を付けたがり、その補助金と投資家の金を得たベンチャーに「専門家」が群がった。
この「ベンチャー支援バブル」は、2006年のライブドア事件で終焉する。それまでの経済だけでなく社会に対しても｢改革の旗手」として見られていたイメージが一変。ベンチャー企業は「胡散臭いもの」になってしまう。
これを機に、上場のハードルが上がり、同時に株価も低迷し、新規上場数はそれまでの1/10水準にまで激減する。それでも、その厳しい上場審査を潜り抜けて2009年に上場した半導体製造装置のFOIの売上の殆どが虚偽だったことが明らかになり上場半年で破綻したり、他にも数社の証券スキャンダルが発生した。結局、どんな制度にしても裏をかいくぐる悪いヤツはいるし、大半のまともな会社は最初からそんなことをしないので、非合理的なほど上場審査を厳しくしたことは経済力をそいだだけでムダだったことが分かる。
さらに、その後、オリンパスや大王製紙の事件など、東証一部上場企業も一部ベンチャー企業と変わらないガバナンスレベルだったことが判明。ここに来て東証もようやくMothersの上場審査方針を改めた。
考えてみれば、ベンチャーも地域も「自立」が原則で、支援に頼ったベンチャーや地域は支援がなくなった途端に破綻する。ベンチャーなら｢独立」、地域なら｢自治」。これを否定することは、自らを否定することだ。
「地域活性化バブル」もその道を辿らないことを祈る。
2013年04月10日
アートでたんぼ
うちの近所に変な人が居る。毎年、「アートでたんぼ」をやっている。その合間にも、「ジャズ餅つき」をやったりとご活躍。その名も、「ぴょんぴょんAｒｔ」
瀬戸芸で香川を訪れる方
海もいいですが、山にも足を運んでみませんか
2013年04月09日
Margaret Thatcher 1925-2013
今日これを書かない訳には行かないだろう。英国のサッチャー元首相が昨日亡くなった。
私がロンドンに留学したのは11年半続いたサッチャー政権末期の1989年。Gatwick空港から市内に向かうバスに乗ったら大渋滞。市内まで3-4時間掛かったと思う。原因は鉄道のスト。民営化に対する反対ストであった。サッチャー政権の歴史は、労働組合をはじめとする「既得権益」との戦いだった。
金融面では金融街シティの"Big Bang"(大爆発)といわれる大改革を1986年に実施した。証券手数料が自由化され、単一資格制度は廃止、また外資制限がなくなり、時代についていけなくなったイギリスの伝統的Marchant Bankの多くは合併や買収で姿を消した。
しかし、この改革のおかげでシティは、かっての「地球上で最も価値のある1平方マイル」と言われた栄光を取り戻した。ビッグバン直前の1985年当時、イギリス証券取引所の株式売買高は、世界第一位のニューヨークの13分の１、第二位の東京と比較しても５分の１まで落ちていたのが、現在は再び世界一の座をNYと争っている。
以下、以前に書いたblogの再掲。
サッチャー政権も11年だった。その後、1997年に保守党から政権を奪還した労働党のブレア政権も10年。ブレアは「第三の道」として、サッチャリズムの弊害除去で財政支出を増やしたが、それが出来たのも、サッチャー政権が「英国病」と言われた英国経済と国家財政を立て直していたから。サッチャー政権が無ければ、1992年から17年間にも及ぶ戦後最大の英国の好景気も無かったはず。
一人当たりGDP推移（米ドル） 総務省統計局
1985 1990 1995 2005
日本 $11,381 $24,815 $41,952 $35,675
英国 $8,079 $17,410 $19,688 $37,241
私が1990年、英国に留学していた当時、その慎ましやかな生活に驚いたものだが、所得に4割の違いがある上、税金も日本より高い（VAT＝消費税に相当が当時から17.5% 所得税も課税下限が低い）ので当然だった。それが今では、日本は同情されるときしか話題にも上らなくなっている。サッチャー政権誕生前の英国の閉塞感と、今の日本の状況はかなり似ている。今こそ日本に必要なのはThacherismだ。
2013年04月08日
張子虎
週末の突風で桜が終わり、次の季節行事と言えば端午の節句。私が住む三豊市は「張子虎」で地元では有名です。
当然、昔、うちにもあったのですが、こんな顔だったっけ？時代を経て顔も変わってきているようです。
かつては讃岐の方言の「がいげ」（強そう）な虎が好まれたが、平和な時代を反映して、優しい表情の虎が人気という。（讀賣新聞3月25日)
2013年04月07日
まちづくり推進隊高瀬｢座談会」
今年2月に発足した「まちづくり推進隊高瀬」が、職員採用や町内各団体へのアンケート実施を経ていよいよ本格活動の時期へ。週末の昨日、初めての「座談会」を実施。
これから様々な事業を企画し実施していくには、度々話し合いを繰り返さなければならない。その時に、会議の効率的・効果的やり方を全員が理解しているのと、そうでないのとでは大きく違いが出る。人は誰でも、「着実に進んでいる」「結果が出る」「自分の意見が反映されている」という実感があれば参加意識は高まるが、そうでなければ参加するのが苦痛になってくる。最悪、「こんな時間の無駄に付き合っていられない」とソッポを向かれる。これまで多かった現役を引退された方中心の地域活動ではなく、現役世代も含めた幅広い年齢層に参加してもらおうと思ったらなおさらだ。
そこで、第一回目の座談会では、「ファシリテーションの練習」を実施した。昔勉強したWork-Out（GE)に基づき、参加者の役割を決めて、時間厳守で実施。決められた時間に、期待される結果を出す練習。ゴールに向けて参加者の意識を合わせていく。
初回としては合格点？だったように思うが、考えてみれば、内容作りに夢中で、参加者アンケート取るのを忘れていた。
2013年04月06日
下駄のルーツ
先日行った「日本はきもの博物館」の続き。下駄は、古代エジプトから使用されている一方、中国･朝鮮では使用されなかったらしい。
これも、朝鮮と中国の歴史的関係を象徴していて面白い。
写真：鎌倉〜室町時代の下駄
2013年04月05日
心をつかみ人を動かす
心をつかみ人を動かす 説明の技術 [単行本（ソフトカバー）]
LBS同窓の木田さんの新刊。
「スポーツで言えば説明の技術は『基本』だ」という。経団連の会員企業に対するアンケートでも、「社員を採用する際に何を重視するか」で、「コミュニケーション能力」が8年連続一位（2004-2011）。それも、年々その割合が高まっていることから、企業は余程新入社員とのコミュニケーションに困っているのだろう。
うちのMBAでも学生のプレゼン能力が驚くほど低い。これは、世界のビジネス界の「共通言語」となっている基本的なフレームワークを学んでなかったり（必須科目になっていない）、日本ではBSと言いながら、伝統的な大学院教育を引きずっているため、論文を書くことに重点が置かれ、「人を動かし、事をなす」ための実践教育が軽視されているためであったりする。
大変分かりやすく書かれており（説明の技術の本だから当然か！）、しかし、奥は深い。MBA新入生の必読書。
第1章 「説明ベタ」に明日から使える特効薬
�＼賁舁儻谿預絃柊�あと出し法
・たとえ話
・モノサシの提供
�▲瀬薀瀬蘋睫西標�群→情報のグルーピング
�Ｂ仗祐愀故笋╂�→Story telling
45：８大ビジネス･フレームワーク
��Marketing 3C
��Marketing 4P
��Porter 5 Forces
�だ鑪�のトライフォース
��McKinsey 7s
��Value Chain
�Щ饂�=資本+負債
��利益＝売上-費用
人間は論理で納得し、心理で動く2013年04月04日
食べるまも惜しんで働く「うどん県」
本の紹介が続いたので、昨日の讀賣新聞（香川版）の記事「県民 食べるまも惜しんで働く」から。これは総務省が行っている「社会生活基本調査」の調査結果に基づくもの。
記事の内容を紹介すると、47と土府県中香川県民は、
・ 仕事に費やす時間は3番目に長い（週休二日換算で勤務一日当たり約9時間 男性は同約10時間）
・ 食事の時間は5番目に短い（一日平均1.5時間）
・ 交際や付き合いは4番目に短い（一日平均16分）
ということ。
これは私の実感からも正しい。そうやって働いた金はしっかり貯金している。（貯蓄率全国第一位）世帯年収では東京の800万円に対して689万円しかないものの、東京に匹敵する世帯当たり貯蓄残高１８６３万円を誇っている。
穏やかな気候風土に恵まれ、そんなにあくせくしなくて良さそうなものだが、私の推察は「そんな気候風土だからそうなった」というもの。つまり、台風や地震で蓄えがご破算になり、あるいは命を落とすことも多かった高知などと違い、「働けば働いただけ豊かになれる」将来設計がしやすい風土だったからこうなったのではないか？と考える。
うどんが大好きなのも、「安くて早く（てウマい）」から。観光客がかけうどんを前に写真を撮ったり、友達と駄弁りながらのんびり食べていると、「そういうものではない！」とイライラするのが実はうどん県民なのである。
うどんが100-200円で食べられるのは高回転率を前提にしているからで、昼のピーク時に10分以上かけて食べられては店も迷惑する。地元客同様さっと食べて、友達とワイワイやるのは店を出てからが正しい。
写真：最近よく行く吾里丸
2013年04月03日
これからの戦略的職業選択
１０年後に食える仕事、食えない仕事 [単行本（ソフトカバー）]
昨年話題の書。四象限の職業分類は分かりやすい。学生や、これからまだまだ職業選択余地のある人はこのフレームワークを頭に入れた上で、「自分は何をやりたいか」を考えることは有効だろう。
例え� 崕杜呂寮こΑ廚傍錣燭箸靴討眤臂翩廖５般邁箸琉打楴卍垢賄垢離▲襯丱ぅ判仗箸世掘∧胴颪任和霰枴愃蚤膽蠅�UPSの社長が代々配達員上がりであることが有名。どんな世界でもトップ3%に入れば、�△侶弍勅圓瞭擦漏�ける。才能と努力と運は要るだろうが。
一方、巻末の政策提言は幼稚。「経済的規制の撤廃」を言う一方で、XX税の導入とか、XX法制化とか、一歩間違えれば規制強化に繋がる政策提言が多く、矛盾している。
例えば、「平均よりも雇用している企業には減税」とか、どうやって「平均よりも雇用」を測るのか? こういう恣意的な目標値を定めることは、官僚の仕事を増やすことであり、非効率な官僚組織を増大させるだけ。そんなことより、人材の流動性を促したり、経営の自由度が高まるよう労働基準を緩めるべきだろう。
�―杜呂寮こΑ平Χ帆澗里�72.5%) 技能集約的ｘ日本人メリット小
・グローバルの最低給与水準に収斂
・平均賃金が日本の1/20のインド人、中国人との勝負
�¬宜饑劵献礇鵐哀襦｜亮噂弧鹽�ｘ日本人メリット小
・世界70億人との仁義なき戦い
・超世界主義
・勝ち残れば青天井
・才能＋運
・顧客との直接接点のない職種が多い
��グローカル 知識集約的ｘ日本人メリット大
・日本人の強みを活かしつつ高付加価値スキルで勝負
・日本人向けの高度専門職
・高度な日本語と日本での人的ネットワークを活かす
・「士」業
�ぅ献礇僖鵐廛譽潺▲燹ゝ伺十弧鹽�ｘ日本人メリット大
・日本人ならではの高いサービスマインド、職人気質、チームワーク
・[同じ日本人」という信頼感を利用した対面サービス
・営業マンや旅館の女将
202: 国としてすべきこと
�〔宜饑劵献礇鵐哀訖雄爐陵ザ�
・研究開発投資減税の恒久化
・企業内研究者の「業務発明｣対価に有利な条件を確立する法制化
��経済的規制の撤廃
・医療、農業、福祉、教育→無国籍ジャングルの活性化
��[負の雇用貢献税」導入
・平均よりも雇用している企業には減税
�っ噂穗�働者受入禁止
・労働力不足の分野には、韓国のように「3-5年の期間限定」はあり
��[負の所得税」導入
・所得補填で働く意欲を促進⇔生活保護「働かないほうがトク」
217:このままでは、「民間企業の業績はまずまず好調だけれど、雇用は海外に流出し、国内の失業率は高止まりで所得格差が拡大」という現在の米国の状況に日本もなる
2013年04月02日
自分たちで「まち」をつくる
コミュニティデザインの時代 - 自分たちで「まち」をつくる (中公新書) [新書]
先日カンブリア宮殿で著者の活動が紹介されていて、面白かったので著書を読んでみた。結局、コミュニティデザインって、「住民の意識改革の手伝い」なんだね。
8:「お客さん化」する社会 → 主体的にまちへ関る人
協同の風景がなくなった
道路普請→道路は行政が専門家に頼んでアスファルトを敷いて作るもの
218:コミュニティデザイナーの資質＝社会的知性
読み取り能力
・他人の感情を読み取る能力
・人の話をしっかり聴く能力
・相手の意図や思考を理解する能力
・社会の仕組みを知る能力
その上でどう行動するか
・相手と同調する
・自分の意図を効果的に説明する
・他者に影響を与える
・人々の関心に応じて行動する
238:熱い行政職員
2013年04月01日
失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇
失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇 [単行本]
昨年、野中先生の新聞インタビューを紹介したが、やっと本を読んだので、再紹介。
176:石原莞爾 満州事変の首謀者 「天才」
関東軍12000人で張学良軍20万人に勝利
明治以降の日本軍人の中で最も優れた戦略家だが、性格上の致命的欠陥
『最終戦争論』『戦争史大観』
スケールの大きな構想力、圧倒的な知識に裏打ちされた戦略眼
米国との最終戦争に備え、アジアの盟主となるべく、本気で、「五族協和」「王道楽土」を実現しようとするが、東條英機と対立（盧溝橋事件でも不拡大方針をとる）
45:フロネティック･リーダー（日本より明らかに英米に多かった）
� 崛韻ぁ很榲�を作る能力
�⊂譴鬟織ぅ爛蝓爾砲弔�る能力
��ありのままの現実を直観する能力
�つ彰僂遼楴舛魍鞠芦修垢詛塾�
�コ鞠阿鮗存修垢訐�治力
��実践知を組織化する能力
48:ミッドウェーの敗因
山本五十六が、大切な戦いで部下に作戦目的をしっかり伝えることが出来なかった。
